2022-017133
耐油剤および耐油組成物
- 審判番号
- 2022-017133
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-168638外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月26日
- 審決日
- 2024年12月02日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】川本 真由美
- 【請求人代理人】式見 真行
- 【請求人代理人】畠中 省伍
- 分類
- P18 .121-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、2021年(令和3年)10月14日(優先権主張 令和2年10月15日、令和3年9月1日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年12月14日付け 拒絶理由通知書
令和4年 4月15日提出 意見書及び手続補正書
同年 7月28日付け 拒絶査定
同年10月26日提出 拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書
令和5年 1月19日付け 前置報告書
令和6年 1月25日提出 上申書
同年 7月16日付け 拒絶理由通知書
同年 9月24日提出 意見書及び手続補正書
第2 本願に記載された発明
請求項1~14に係る発明は、令和6年9月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「耐油性ポリマーの量が0.1~1.0g/m2である、耐油層を形成するための耐油組成物であって、(1)炭素数3~40の炭素水素基である疎水基を有する疎水化変性澱粉、酸化澱粉、デキストリン、およびアルファ化澱粉からなる群から選択された少なくとも1種である多糖類、および(2)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位、及び親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有し、重量平均分子量900000以上である非フッ素共重合体である耐油性ポリマーを含んでなり、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、50~85重量%であり、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、10~40重量%である、耐油組成物。」
第3 拒絶の理由
令和6年7月16日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。
●理由1(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1~14
・引用文献等
1.国際公開第2020/054856号(令和4年7月28日付け拒絶査定の「引用文献1」)
3.特開2013-237941号公報(令和4年7月28日付け拒絶査定の「引用文献3」)
2.特開2020-122250号公報(令和3年12月14日付け拒絶理由通知書の「引用文献2」)
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定
1 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、および(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位を有する非フッ素共重合体を含んでなる紙用耐油剤。【請求項2】続きを表示(全47行)長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、kは1~3である。]で示される単量体である請求項1に記載の紙用耐油剤。・・・【請求項4】長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、(a1)式:CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、Y2は、-O-または-NH-である。]で示されるアクリル単量体、および/または(a2)式:CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、Y3は、-O-または-NH-であり、Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、nは、1または2である。]で示されるアクリル単量体であり、親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)および/またはCH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)[式中、X2は、水素原子またはメチル基、X3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基Rは、炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである、請求項1~3のいずれかに記載の紙用耐油剤。・・・【請求項11】水または水と有機溶媒の混合物である液状媒体をさらに含んでなる請求項1~10のいずれかに記載の紙用耐油剤。【請求項12】請求項1~11のいずれかに記載の紙用耐油剤および澱粉または変性澱粉を含む耐油層を紙の表面に有する耐油紙。・・・【請求項15】食品包装材または食品容器である請求項12~14のいずれかに記載の耐油紙。【請求項16】請求項1~11のいずれかに記載の紙用耐油剤で紙を外添処理または内添処理により処理する紙の処理方法。」
「[0005]本開示の目的は、紙に対して優れた耐油性と耐水性を与えることができる耐油剤を提供することにある。」
「[0067]非フッ素共重合体の重量平均分子量は、1000~1000000または10000000、好ましくは5000~800000または8000000、より好ましくは10000~400000または4000000であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。」
「[0087]紙には必要に応じて、通常使用される程度の製紙用薬剤として、澱粉、変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂等の紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留り向上剤、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤等の紙の製造で使用される添加剤を使用することができる。澱粉および変性澱粉を用いることが好ましい。必要により、澱粉、ポリビニルアルコール、染料、コーティングカラー、防滑剤等を用いて、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等によって、耐油剤を紙に塗布することができる。[0088]外添においては、耐油層に含まれる非フッ素共重合体の量が0.01~2.0g/m2、特に0.1~1.0g/m2であることが好ましい。耐油層は、耐油剤と澱粉および/または変性澱粉によって形成されることが好ましい。耐油層における紙用耐油剤の固形分量は2g/m2以下であることが好ましい。内添においては、紙を形成するパルプ100重量部に対して、耐油剤の量が0.01~50重量部または0.01~30重量部、例えば0.01~10重量部、特に0.2~5.0重量部となるように、耐油剤をパルプと混合することが好ましい。外添および内添において、澱粉および変性澱粉と非フッ素共重合体との重量比は、10:90~98:2であってよい。」
「【0093】・・・実施例[0094]続きを表示(全123行)次に、実施例、比較例および試験例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本開示を限定するものでない。以下において、部、%または比は、特記しない限り、重量部、重量%または重量比を表す。[0095]以下において使用した試験方法は次のとおりである。[0096]動的粘弾性(複素粘性率)非フッ素共重合体水分散液を約130℃のオーブンで30分間乾燥し、測定用サンプル共重合体を得た。共重合体の複素粘性率(Η*)を動的粘弾性測定装置RHEOSOL-G3000(株式会社UBM製)によって、昇温速度1℃/分で測定した。重量平均分子量の測定含フッ素共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めた(ポリスチレン換算)。耐油性(KIT)耐油性(KIT法)は、TAPPIT-559cm-02に従って測定した。KIT試験液はひまし油、トルエン、ヘプタンを表1の比率で混合した試験液である。表1に示す試験液1滴を紙の上におき、15秒後に油の浸透状態を観察した。浸透を示さないKIT試験液が与える耐油度の最高点を耐油性とした。KIT試験液の番号が高いほど耐油性が高い。[0097][表1][図:0001418461000001.jpg][0098]耐水性(Cobb値)耐水性(Cobb値)は、JISP8140に従って測定した。1センチメートルの水の高さを支える100平方センチメートルの紙により1分間に吸収される水の重量(g)を測定し、その数値を1平方メートルあたりの重量(g/m2)に換算した。耐油性(実用油試験1)得られた紙皿または処理紙に市販のオリーブオイルを約1g(処理紙は約0.1g)たらし、室温(20℃)で15分放置した後に、紙皿または処理紙の裏側の染込み具合を観察した。裏側の染込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。5:0-5%4:6-20%3:21-50%2:51-75%1:76-100%耐油性(実用油試験2)実用油試験1で、オリーブオイルをたらした処理紙または紙皿を70℃のオーブンに入れて7分後に取り出して染込み具合を観察した以外は実用油試験1と同じ方法で評価した。[0099]合成例1撹拌装置、温度計、還流冷却器、滴下漏斗、窒素流入口および加熱装置を備えた容積500mlの反応器を用意し、溶媒のメチルエチルケトン(MEK)を100部添加した。続いて、撹拌下、ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)78部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)16部、およびメタアクリル酸(MAA)6部からなる単量体(単量体計100部)、および開始剤のパーブチルPV(PV)1.2部をこの順に添加し、この混合物を65-75℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行った。得られた共重合体含有溶液の固形分濃度は50重量%であった。得られた共重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析したところ、ポリスチレン換算の質量平均分子量は230,000であった。後処理として、得られた共重合体溶液の50gに0.3%のNaOH水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱しながら減圧下でMEKを留去し、乳白色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。この共重合体の融点は、48℃であった。この共重合体の複素粘性率を測定した。結果を図1に示す。この共重合体をクロロホルムに溶解し、PETフィルムにスピンコート後、風乾させた表面の接触角を測定すると、水に対する接触角は108°、n-ヘキサデカンに対する接触角は57~59°であった。[0100]合成例2撹拌装置、温度計、還流冷却器、滴下漏斗、窒素流入口および加熱装置を備えた容積500mlの反応器を用意し、溶媒のメチルエチルケトン(MEK)を100部添加した。続いて、撹拌下、ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)78部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)16部、およびジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)6部からなる単量体(単量体計100部)、および開始剤のパーブチルPV(PV)1.2部をこの順に添加し、この混合物を65-75℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行った。得られた共重合体含有溶液の固形分濃度は50重量%であった。後処理として、得られた共重合体溶液の50gに0.4%の酢酸水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱、減圧下でMEKを留去し、乳白色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。この共重合体をクロロホルムに溶解し、PETフィルムにスピンコート後、風乾させた表面の接触角を測定すると、水に対する接触角は106°、n-ヘキサデカンに対する接触角は62°であった。[0101]合成例3合成例2のStAを60部、HEAを34部用いる他は、合成例2と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0102]合成例4合成例1のメタアクリル酸(MAA)に代えて、アクリル酸(AA)を6部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0103]合成例5合成例1のヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)に代えて、ヒドロキシルエチルメタアクリレート(HEMA)を16部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。この共重合体をクロロホルムに溶解し、PETフィルムにスピンコート後、風乾させた表面の接触角を測定すると、水に対する接触角は102°、n-ヘキサデカンに対する接触角は48°であった。[0104]合成例6合成例1のStAに代えて、ラウリルメタアクリレート(LMA、融点:-7℃)を78部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0105]合成例7合成例1のStAに代えて、ステアリルメタアクリレート(StMA、融点:18℃)を78部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0106]合成例8合成例1のStAに代えて、ステアリン酸アミドエチルアクリレート(C18AmEA、融点:70℃)を78部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0107]合成例9合成例1のStA78部に代えて、合成例8のC18AmEAを39部、StAを39部用いる他は、合成例8と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。[0108]合成例10合成例8のMAAに代えて、DMを6部用いる他は、合成例8と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。この共重合体の融点は、64℃であった。この共重合体の複素粘性率を測定した。結果を図1に示す。[0109]合成例11合成例10のHEAに代えて、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA、Tg:-40℃)を16部用いる他は、合成例10と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。この共重合体の融点は、66℃であった。この共重合体の複素粘性率を測定した。結果を図1に示す。[0110]合成例12合成例11のC18AmEAを49部、HBAを27部用いる他は、合成例11と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。・・・[0112][外添法での評価]実施例1木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力増強剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cm3の坪量45g/m2の紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/m2であった。[0113]合成例1で得られた共重合体の水分散液を耐油剤として用い、以下の処方により、耐油紙(加工紙)を得た。処理液は、合成例1で得られた共重合体の水分散液を固形分濃度が2.4重量%、かつ、澱粉の固形分濃度が7%となるように調製し、サイズプレス機で処理した後、ドラムドライヤーで乾燥し、耐油紙(加工紙)を得た。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。得られた原紙を試験紙として用い、上記キット試験(Kit Test)を行った。評価結果を表2に示す。[0114]澱粉としては、一般的なヒドロキシエチル化澱粉(Penford290:Penford社製)を使用した。サイズプレス処理(Mathis社製のサイズプレス機を使用)としては、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いた。[0115]実施例2合成例2の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。実施例3合成例3の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。[0116]実施例4合成例4の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。実施例5合成例5の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。[0117]実施例6合成例6の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。実施例7合成例7の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表2に示す。[0118]実施例8合成例8の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表3に示す。[0119]実施例9合成例9の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表3に示す。実施例10合成例10の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表3に示す。実施例11合成例10の共重合体を用い、かつ、澱粉の固形分濃度が14%となるように処理液を調製した他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は2.2g/m2(共重合体の塗工量は0.32g/m2)であった。結果を表3に示す。実施例12合成例11の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表3に示す。実施例13合成例12の共重合体を用いる他は、実施例1と同様の処理を行った。得られた耐油紙の澱粉と共重合体の固形分の塗工量は1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)であった。結果を表3に示す。・・・[0122][表2][図:0001418461000002.jpg][0123] [表3][図:0001418461000003.jpg]」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の実施例1で使用した処理液に着目すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「合成例1で得られた共重合体の水分散液を固形分濃度が2.4重量%、かつ、澱粉の固形分濃度が7%となるように調製された処理液であって、該処理液を用いてサイズプレス機で処理した後、ドラムドライヤーで乾燥し、澱粉と共重合体の固形分の塗工量が1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)の耐油紙を形成するための、処理液。ここで、合成例1で得られた共重合体は、ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)78部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)16部、及びメタアクリル酸(MAA)6部からなる単量体(単量体の総計100部)、及び開始剤パーブチルPV(PV)1.2部をこの順に添加し、この混合物を65~75℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行い、ポリスチレン換算の質量平均分子量が230,000である。澱粉が、一般的なヒドロキシエチル化澱粉(Penford290:Penford社製)である。」(以下、「引用発明」という。)
2 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】紙支持体の少なくとも片面に耐油剤層を形成した耐油紙であって、前記耐油剤層が疎水基を含有する澱粉とワックスを含有したものであり、かつ前記耐油紙のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に準じて測定した王研式透気度が2000秒以下であることを特徴とする耐油紙。・・・【請求項3】前記疎水基を含有する澱粉が、澱粉と炭素数8~24のアルキル(メタ)アクリレート基を有するスチレン-アクリル系樹脂の混合物澱粉であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐油紙。【請求項4】前記疎水基を含有する澱粉が、アルケニル無水コハク酸エステル澱粉またはヒドロキシアルキルエーテル澱粉であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐油紙。【請求項5】請求項1~4のいずれか1項に記載の耐油剤層を、サイズプレスコーティングまたはバーコーティングで形成することを特徴とする耐油紙の製造方法。」
「【0001】本発明は、動植物油等の油分の浸透を抑制する耐油紙およびその製造方法に関するものである。」
「【0011】本発明は、耐油剤として疎水化処理された澱粉系樹脂とワックスを用いて、紙支持体に耐油剤層を形成することにより、フッ素系化合物を用いない環境面での問題が少なく、高い通気性と高い耐油性の発現を両立させる食品用耐油紙を得ることを目的とする。」
「【0024】本発明においては、耐油剤層に疎水基を含有する澱粉およびワックスを含有させる必要がある。ここで、澱粉に疎水基を含有させる処理としては、澱粉をアルミン酸アルカリまたは水酸化アルカリの存在下でオルガノシラン水溶液と密に接触させる方法、シリコーンやアルケニル無水コハク酸化合物で誘導体とする方法等、水性系においてオクテニルコハク酸無水物やドデセニルコハク酸無水物などの有機酸無水物と澱粉を反応させ、アルケニル無水コハク酸エステル澱粉とする方法や、ヒドロキシアルキル基でエーテル化する方法、澱粉にアクリロニトリル等の疎水性モノマーや疎水性不飽和酸モノマーを共重合させる方法、コハク酸澱粉アルキルとする方法、特開2006-37316号公報に開示されている澱粉とC8-24-アルキルメタクリレート基を有するスチレン-アクリル系ポリマーを含有する混合物を用いる方法等を挙げることができる。粘度が比較的低く、高濃度の塗工液での塗布が行えること、および水に分散させやすいことから、疎水化処理された澱粉の中でも、C8-24-アルキルメタクリレート基を有するスチレン-アクリル系ポリマーを含有する混合物からなる澱粉、もしくはアルケニル無水コハク酸エステル澱粉、もしくはヒドロキシアルキルエーテル澱粉を使用することが好ましい。【0025】本発明において使用される澱粉の原料としては、例えばトウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、米澱粉等を挙げることができる。また、これらの澱粉を2種類以上組み合わせて使用することもできる。本発明において、使用される澱粉は、疎水化処理の他、その他の変性を行ってもよい。例えば、カチオン化、リン酸架橋化、アジピン酸架橋化、デキストリン化、マルトデキストリン化、酸化、酸変性、その他酵素変性等を挙げることができる。また、これらの変性を2種類以上組み合わせて加工することもできる。」
「【0035】本発明の耐油剤には前記疎水基を含有する澱粉、ワックスの他に、さらにバインダー、顔料などを含んでもよい。また、必要に応じて、分散剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の通常用いられている各種助剤が適宜使用できる。【0036】本発明に使用できるバインダーとしては、カゼイン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、またはポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の水溶液あるいは水分散液が使用できる。」
3 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、耐油紙に関する。」
「【0008】したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、高い耐油性と高い通気性を併せ持つ非フッ素樹脂系の耐油紙を少ない塗布量の耐油層で提供することを目的とする。」
「【0033】耐油層には、スチレン-アクリル共重合樹脂及びパラフィンワックスの他に、デンプンを含有することが好ましい。デンプンは、耐油紙の紙力を向上させることができる。本実施形態に係るデンプンとしては、特に限定はなく、例えば、トウモロコシデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、酸化デンプン、リン酸デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒド化デンプン、エステル化デンプン等の変性デンプン等を挙げることができる。【0034】耐油層におけるデンプンの含有量は、固形分換算で、0.05g/m2以上3.0g/m2以下であることが好ましい。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「合成例1で得られた共重合体」は、「ステアリルアクリレート」、「ヒドロキシエチルアクリレート」、「メタアクリル酸」に由来する構成単位を有するものである。
そうすると、上記「ステアリルアクリレート」に由来する構成単位は、本願発明の「炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位」に、上記「ヒドロキシエチルアクリレート」に由来する構成単位に由来する構成単位は、本願発明の「親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位」に、それぞれ相当する。
なお、引用発明の「メタアクリル酸」は、本願明細書において、「(c)イオン供与基を有する単量体」として例示されており(【0074】)、本願発明の「親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位(b)」には該当しないと解される。
そして、引用発明の「合成例1で得られた共重合体の水分散液」を、耐油剤として用いることが引用文献1に記載されており([0113])、該「合成例1で得られた共重合体」は、引用文献1の請求項1に記載された「(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、および(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位を有する非フッ素共重合体」であって、「紙用耐油剤」として用いられるものであるから、引用発明の「合成例1で得られた共重合体」は、本願発明の「非フッ素共重合体である耐油性ポリマー」に相当する。
(2)引用発明の「澱粉」は、「多糖類」であることが本願明細書の段落【0013】から明らかであり、引用発明の「合成例1で得られた共重合体」と「澱粉」を含む「処理液」は、本願発明の「耐油性ポリマー」と「多糖類」を含む「耐油組成物」に相当する。
(3)引用発明の「処理液をサイズプレス機で処理した後、乾燥させて得られた耐油紙を製造したとき」の「澱粉と共重合体との固形分」は、「耐油紙」の耐油性の機能を発揮する層を形成するものであるから、本件発明の「耐油層」に相当する。
そして、引用発明の「処理液」は、「耐油紙」を形成するために用いられるものであるから、本願発明の「耐油性を形成するための耐油組成物」に相当する。
(4)引用発明の「澱粉と共重合体との固形分の塗工量」が「1.1g/m2(共重合体の塗工量は0.28g/m2)」であることから、「(合成例1で得られた)共重合体」の「固形分の塗工量」が0.28g/m2であって、本願発明の「耐油性ポリマーの量が0.1~1.0g/m2である」ことに相当する。
(5)上記(2)に示したように、「澱粉」は「多糖類」の一種であるところ、引用発明の「ヒドロキシエチル化澱粉」は「変性澱粉」である「多糖類」であるから、引用発明の「ヒドロキシエチル化澱粉」と、本願発明の「炭素数3~40の炭化水素基である疎水基を有する疎水化変性澱粉、酸化澱粉、デキストリン、およびアルファ化澱粉からなる群から選択された少なくとも1種である多糖類」とは、「変性澱粉」である「多糖類」である限りにおいて一致する。
(6)引用発明の「合成例1で得られた共重合体」は、その原料が「ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)78部」、「ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)16部」、及び「メタアクリル酸(MAA)6部」からなるものである。
ここで、引用文献1には、「部」は、特記しない限り、重量部を表すことが記載されている([0094])。
そして、本願明細書には、「単量体(a)から形成される繰り返し単位の量」、「単量体(b)から形成される繰り返し単位の量」が、「非フッ素共重合体に対して(または繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の合計に対して)」と記載されていることから(【0081】)、上記「非フッ素共重合体に対して」は「繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の合計に対して」に同義であり、原料である単量体の仕込み量が非フッ素共重合体中の単量体に由来する構成単位量に相当するものと解される。
そうすると、引用発明において、原料の総計100重量部からなる共重合体に対して、「ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)」を78重量%、「ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)」を16重量%であることは、本願発明の「長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、50~85重量%であ」ること、「親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、10~40重量%であ」ることに、それぞれ相当する。
してみると、本願発明と引用発明は、
「耐油性ポリマーの量が0.1~1.0g/m2である、耐油層を形成するための耐油組成物であって、(1)変性澱粉等の多糖類、および(2)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位、及び親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成された繰り返し単位を有する非フッ素共重合体である耐油性ポリマーを含んでなり、長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、50~85重量%であり、親水性基を有するアクリル単量体(b)から形成される繰り返し単位の量は非フッ素共重合体に対して、10~40重量%である、耐油組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
変性澱粉である多糖類において、本願発明では「炭素数3~40の炭素水素基である疎水基を有する疎水化変性澱粉、酸化澱粉、デキストリン、およびアルファ化澱粉からなる群から選択された少なくとも1種である」のに対し、引用発明では、「ヒドロキシエチル化澱粉」である点
<相違点2>
耐油性ポリマーの重量平均分子量に関し、本願発明では、900000以上であるのに対し、引用発明では、230000である点
2 判断
(1)<相違点1>について
引用文献1には、実施例1で使用したヒドロキシエチル化澱粉のほかに、外添するとき、耐油剤と澱粉及び/又は変性澱粉により耐油層を形成することができること([0088])が記載されている。
ここで、外添により耐油層を形成する際に、澱粉及び/又は変性澱粉が使用されるところ、本願出願前にどのような澱粉及び/又は変性澱粉が使用されているかを確認してみると、以下のとおりである。
引用文献3には、耐油紙に使用される耐油剤層に疎水基を含有する澱粉を用いること(請求項2)、前記疎水基を含有する澱粉がアルケニル無水コハク酸エステル澱粉であること(請求項4)、疎水化処理された澱粉としてアルケニル無水コハク酸エステル澱粉、ヒドロキシアルキルエーテル澱粉(当審注:「ヒドロキシアルキル化澱粉」と同じである。)の使用が好ましいこと(【0024】)、使用される澱粉として、疎水化処理の他、カチオン化、デキストリン化、酸化、酸変性等が挙げられること(【0025】)、実施例でスチレン-アクリル系ポリマーを配合された酸化トウモロコシ澱粉、オクテニルコハク酸エステル化変性された酸化ワキシーコーンスターチ、オクテニルコハク酸エステル化されたコーンスターチ、ヒドロキシプロピルエーテル化されたワキシーコーンスターチを用いて耐油剤層用塗液を形成したことが記載されている。
引用文献2には、紙基材と、前記紙基材の両面に耐油層とを有する耐油紙であること(請求項1)、高い耐油性と高い通気性を併せ持つ非フッ素樹脂系の耐油性を少ない塗布量で提供することを目的とすること(【0008】)、耐油層にはスチレン-アクリル共重合樹脂及びパラフィンワックスの他にデンプンを含有することが好ましいこと、そのようなデンプンとしてトウモロコシデンプン、ポテトデンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン等の変性デンプンが挙げられること(【0033】)が記載されている。
さらに、引用文献2及び引用文献3以外では、以下の先行文献もあり、次のとおりの記載がある。
特開2013-87371号公報には、その実施例で、酸化澱粉と非フッ素共重合体とを含む耐油性塗料を用いて耐油紙を作成し、キット法により、好適な耐油性を示すことが記載されている。
同様に、特開2015-190097号公報には、耐油性層に含有される澱粉としてヒドロキシプロピル澱粉、酸化澱粉等が使用できること(【0014】)、耐油性層に用いられる澱粉として好適には疎水化澱粉であること、例えば、オクテニルコハク酸無水物などの有機酸無水物と澱粉とを反応させたものであること(【0016】)、実施例で疎水化澱粉を用いた耐油性層を有するシートが、キット法により、好適な耐油性を示すことが記載されている。
同様に、特開2018-53374号公報には、澱粉誘導体の具体例として、酸化澱粉、疎水化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等が挙げられること、耐油性を一層高める観点から、酸化澱粉や疎水化澱粉が好ましいこと(【0023】)、実施例で酸化澱粉とパラフィンワックスを併用することでキット法により、好適な耐油性を示すことが記載されている。
これらの記載によると、耐油紙を構成する耐油層に澱粉を用いることは従来からよく知られていること、澱粉として酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉、アルケニル無水コハク酸エステル澱粉などの変性澱粉を適宜用いて、好適な耐油性を示すことが理解できる。
そうすると、引用文献3、同2及び上述の先行文献に見られるように、従来から、酸化澱粉、アルケニル無水コハク酸エステル澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉などの変性澱粉を、耐油性の機能を発現すべく耐油紙に用いることは周知の技術事項である。
してみると、引用発明において、澱粉として変性澱粉の一種であるヒドロキシエチル化澱粉を用いているところ、引用文献1~3及び先行文献に接した当業者には、耐油性の観点でヒドロキシエチル化澱粉以外の変性澱粉である酸化澱粉、アルケニル無水コハク酸エステル澱粉を用いることは、本願出願時点において、周知の技術事項を適用した程度のことに過ぎない。
また、引用文献1は、紙に対して優れた耐油性と耐水性を与えることができる耐油剤を提供することを目的とするものであって([0005])、耐油層が耐油剤と澱粉及び/又は変性澱粉によって形成されることが好ましいこと([0088])が記載されていることから、本願発明の効果は、当業者には予測可能である。
そして、引用発明は、共重合体の固形分の塗工量0.28g/m2であるところ、この点は、本願発明の「耐油性ポリマーの量が0.1~1.0g/m2である」ことを満たすものであるから、本願発明の効果として記載されていた「塗工量が少なくても、高い耐油性を示す」こと(【0008】)は、当業者が予測しうる程度のことである。
さらに、引用発明の耐油性(KIT値)は、引用文献1の表2より「4」、本願明細書の実施例において、引用発明と同じく、多糖類が変性澱粉だけであり、その固形分濃度が5%又は7%である実施例1、4、5、8の耐油性(KIT値)は、表2-1より「3」又は「4」であって同程度であることから、本願発明に特定された「多糖類」を使用することが格別効果を奏するものでないことも理解できる。
してみると、相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到しうることである。
(2)<相違点2>について
引用発明の「合成例1で得られた共重合体」の重量平均分子量が230000であるところ、引用文献1には、「非フッ素共重合体の重量平均分子量は、1000~1000000または10000000、好ましくは5000~800000または8000000、より好ましくは10000~400000または4000000であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。」こと([0067])が記載され、実施例の合成例1で得られた共重合体が230000の重量平均分子量を有すること([0099])が記載されている。
これらの記載によると、実施例の合成例1で得られた共重合体の重量平均分子量が、引用文献1に記載された数値範囲内のものであるように、上記数値範囲内で重量平均分子量を適宜最適化することは当業者が容易になしうることであり、その際に下限を900000にすることは、当業者にとって格別の困難性を有しないことである。
また、本願明細書や実施例をみても、「非フッ素共重合体の重量平均分子量」の下限を900000にすることの臨界的意義を把握することができない。
してみると、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到しうることである。
(3)令和6年9月24日提出の意見書に対して
令和6年9月24日提出の意見書において、審判請求人は、以下の主張をしている。
ア 引用文献1~3のいずれも、多様な澱粉が列挙されているに過ぎず、引用文献1に記載の発明において、敢えて具体的に本願発明の特定の多糖類を選択して、相違点1の設計変更を行う動機付けがない。
イ 引用文献1において、使用可能な非フッ素共重合体の分子量について、極めて広い範囲が記載されているに過ぎず、引用文献2、3では<非フッ素共重合体の分子量について記載も示唆も無いから、引用文献1に記載の発明において、重量平均分子量900000以上と特別に高分子量の非フッ素共重合体を採用して、相違点2に係る設計変更を行う動機付けがない。
そこで、順に検討する。
(ア)アについて
上記(1)に示した、引用文献1、同3、同2及び先行文献から把握できるように、耐油紙に耐油性を付与する層に、ヒドロキシアルキル化澱粉、酸化澱粉やオクテニルコハク酸エステル化澱粉などの変性澱粉を用いることは従来からよく知られていることである。
さらに、先行文献の実施例に見られるように、耐油性層に酸化澱粉やアルケニル無水コハク酸エステル澱粉などの変性澱粉を用いることで耐油性(キット法による)に優れることが従来からよく知られていたことといえるから、耐油性層における酸化澱粉やアルケニル無水コハク酸エステル澱粉などの変性澱粉の作用効果も予測可能である。
また、上述の先行文献では、耐油性層に用いられる澱粉として、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉又はヒドロキシプロピル化澱粉とは同列に記載される関係にある。
そうすると、引用発明では、ヒドロキシエチル化澱粉を用いてサイズプレス処理を行っているところ、引用文献3、同2及び先行文献によると、耐油性の観点から酸化澱粉等を使用することは、本願出願時には周知な技術事項であることが理解できる。
してみると、引用文献1のヒドロキシエチル化澱粉に代えて、耐油紙等の技術分野において、従来からよく知られている酸化澱粉等を選択する動機付けはあるといえる。
よって、当該主張は妥当でない。
(イ)イについて
上記(2)に示したように、引用文献1の段落[0067]には、「非フッ素共重合体」の重量平均分子量について記載されているところ、その記載内容は、本願明細書の段落【0082】と同じ記載であり、「非フッ素共重合体」が「重量平均分子量900000以上」とすることによって、本願発明の効果についての記載や示唆が、本願明細書にはないものであるし、本願発明における「非フッ素共重合体」が「重量平均分子量900000以上であ」ることによって、耐油性が顕著に優れることが、実施例において示されてもいない。
そうすると、本願明細書及び実施例では「900000」を境にして、効果が顕著に異なることを示していないため、「900000」以上であることの臨界的意義が不明であるから、引用文献1における上記記載に基づいて、重量平均分子量の下限を適宜設定する動機付けはあるといえる。
また、審判請求人は、本願発明における「重量平均分子量900000以上」と特別に高分子量の非フッ素共重合体を採用することの技術的意義を強調するも、本願明細書には、「900000以上」とすることの技術的意義に関する記載がないものであり、首肯できない。
この点については、令和6年1月25日付け上申書において、「比較実験データ」を提示して、同様の主張している。より詳細には、合成例2として、ステアリン酸アミドエチルアクリレート78部、ヒドロキシエチルアクリレート16部及びジメチルアミノエチル6部を用いて、本願明細書の合成例1と同様に共重合と後処理を行って、固形分濃度15重量%である水分散体を得、得られた共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量が690000であり、該水分散体を用いて本願明細書の実施例と同様にして耐油紙を作成したところ、重量平均分子量が900000の実施例4~7,10の方が、同690000の比較例1~5に比べて耐油性能が高いことから、重量平均分子量が900000以上であることに意味がある旨主張している。
しかしながら、上記「比較実験データ」に用いた共重合体の場合において、重量平均分子量が900000以上であることによる耐油性能における向上が理解できたとしても、該共重合体とは異なるモノマー(ステアリルアクリレート78部、ヒドロキシエチルアクリレート16部及びメタアクリル酸6部)からなる引用発明の共重合体をはじめ、上記合成例1とは異なるモノマーを用いた場合であっても、重量平均分子量の高低が発明の課題との関連性を有するものと直ちにいうことはできないし、本願明細書の記載をみても、そのような記載がないから、上申書の「比較実験データ」をみたとしても、重量平均分子量によって奏される効果が格別顕著なものであると認めることができない。
よって、当該主張は妥当でない。
(4)小括
以上から、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明及び引用文献3、2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到しうるものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-017133