特許拒絶査定不服審判
2022-016062
非接触測定システムおよび操作方法
- 審判番号
- 2022-016062
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-218392
- 請求日
- 2022年10月07日
- 審決日
- 2023年09月20日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フルークコーポレイション
- 【請求人代理人】荒船 博司
- 【請求人代理人】荒船 良男
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 田邉 英治
- 審判官 九鬼 一慶
- 分類
- P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-218392「非接触測定システムおよび操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年7月5日出願公開、特開2018-105850〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成29年11月13日を出願日とする外国語書面出願であって(パリ条約による優先権主張 2016年11月11日 米国、2017年6月16日 米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
平成30年 3月 9日 :翻訳文の提出
令和 2年10月30日 :手続補正書の提出
令和 3年11月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 2月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 6月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年10月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月7日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年10月7日にされた特許請求の範囲の請求項1についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年2月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
非接触測定システムであって、
前端を含むハウジングと、
動作時に、絶縁電線内の電圧を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電圧センサーと、
動作時に、前記絶縁電線内の電流を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電流センサーと、
前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのプロセッサであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記電圧センサー及び前記電流センサーに動作可能に結合される、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、
測定時間間隔中に前記電圧センサーによって取得された電圧センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電圧を示す前記電圧センサー信号を、前記電圧センサーから受信し、
前記測定時間間隔中に前記電流センサーによって取得された電流センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電流を示す前記電流センサー信号を、前記電流センサーから受信し、
少なくとも1つの交流(AC)電気的パラメータを、前記電圧センサー信号及び電流センサー信号に少なくとも部分的に基づいて判定する、非接触測定システムであって、
前記非接触測定システムは、
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記非接触測定システムのハウジングの前端に近接して設けられた位置合わせ用フィードバックセンサーであって、動作時に、前記位置合わせ用フィードバックセンサーは、前記絶縁電線が前記位置合わせ用フィードバックセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサー及び前記電流センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す位置合わせフィードバックセンサー信号を生成する、位置合わせ用フィードバックセンサーと、
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合されたインジケータ装置と、を更に備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記位置合わせフィードバックセンサー信号を前記位置合わせ用フィードバックセンサーから受信し、前記インジケータ装置に、位置合わせ表示を、前記位置合わせフィードバックセンサー信号に少なくとも部分的に基づいて前記非接触測定システムのユーザーに提供させ、前記位置合わせ表示は、前記電圧センサー又は前記電流センサーに対する前記絶縁電線の位置合わせの程度を表示する、非接触測定システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
非接触測定システムであって、
前端を含むハウジングと、
動作時に、絶縁電線内の電圧を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電圧センサーと、
動作時に、前記絶縁電線内の電流を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電流センサーと、
前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのプロセッサであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記電圧センサー及び前記電流センサーに動作可能に結合される、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、
測定時間間隔中に前記電圧センサーによって取得された電圧センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電圧を示す前記電圧センサー信号を、前記電圧センサーから受信し、
前記測定時間間隔中に前記電流センサーによって取得された電流センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電流を示す前記電流センサー信号を、前記電流センサーから受信する、
非接触測定システムであって、
前記非接触測定システムは、
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記非接触測定システムのハウジングの前端に近接して設けられた、前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである位置合わせ用フィードバックセンサーであって、動作時に、前記位置合わせ用フィードバックセンサーは、前記絶縁電線が前記位置合わせ用フィードバックセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサー及び前記電流センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す位置合わせフィードバックセンサー信号を生成する、位置合わせ用フィードバックセンサーと、
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合されたインジケータ装置と、を更に備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記位置合わせフィードバックセンサー信号を前記位置合わせ用フィードバックセンサーから受信し、前記インジケータ装置に、位置合わせ表示を、前記位置合わせフィードバックセンサー信号に少なくとも部分的に基づいて前記非接触測定システムのユーザーに提供させ、前記位置合わせ表示は、前記電圧センサー又は前記電流センサーに対する前記絶縁電線の位置合わせの程度を表示する、非接触測定システム。」
2 本件補正の目的
前記のとおり、本件補正による請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1の「位置合わせ用フィードバックセンサー」について、「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件
前記のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2009-180630号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した(以下同様)。
a 【0001】~【0004】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象体についての所定の物理量を非接触で測定可能に構成された非接触型の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触型の測定装置として、センサを測定対象体に対向させて測定対象体の温度を測定する非接触型の温度測定装置(例えば、特開平8-136351号公報に開示されている小型放射温度計)や、センサを測定対象体に近接させて、測定対象体に供給されている電圧を測定する非接触型の電圧測定装置(例えば、特開平7-55852号公報に開示されている検電器)が知られている。この種の測定装置では、例えば、安全確保の観点からプローブ等を直接接触させるのが好ましくない測定対象体や、狭い場所に存在していてプローブ等を直接接触させるのが困難な測定対象体についての物理量(温度や電圧)を安全かつ容易に測定することが可能となっている。
【特許文献1】特開平8-136351号公報(第2-3頁、第1図)
【特許文献2】特開平7-55852号公報(第2-3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の非接触型の測定装置には、以下の問題点がある。すなわち、この種の測定装置では、プローブ等を測定対象体に直接接触させるタイプの測定装置とは異なり、例えば、測定対象体が狭い場所に存在していたり、測定対象体の近傍に障害物が存在していたりするときには、センサと測定対象体とが対向しているか否か、またセンサが測定対象体に十分に近接しているか否かを認識するのが困難なことがある。この場合、センサと測定対象体とが対向していなかったり、センサが測定対象体に十分に近接していなかったりするときには、センサが測定対象体の物理量を確実に検出することができずに、例えば、規定された測定可能範囲よりも信頼性が低い不正確な値が測定値として測定装置に表示されることとなる。したがって、従来のこの種の測定装置には、このような使用状況において正確な測定が困難となるなるおそれがあり、この点の改善が求められている。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、測定対象体における所定の物理量を正確に測定し得る非接触型の測定装置を提供することを主目的とする。」
b 【0013】~【0026】、【図1】~【図3】、【図5】、【図6】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る測定装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
最初に、電圧測定装置1の構成について説明する。図1に示す電圧測定装置1は、本発明に係る非接触型の測定装置の一例であって、測定対象体(例えば同図に示す被覆電線100)に供給されている交流電圧(本発明における所定の物理量の一例)を非接触で測定可能に構成されている。具体的には、電圧測定装置1は、図2に示すように、検出部2、測定部3、表示部4、操作部5、記憶部6、発光部7および制御部8を備えて構成されている。
【0015】
検出部2は、例えば、センサ21(図1参照)および増幅回路(図示せず)を備えて構成され、測定対象体としての被覆電線100との間の静電容量に基づき、被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して検出信号Sd(具体的には交流電流)を出力する(図2参照)。この場合、センサ21は、図1に示すように、電圧測定装置1の先端部(同図における左側端部)に配設されている。測定部3は、検出部2から出力された検出信号Sdに基づいて被覆電線100に供給されている交流電圧の値(物理量の値)を測定して(以下、測定部3によって測定された交流電圧の値を「測定値Vm」ともいう)、測定値Vmについての電圧データDvを出力する。表示部4は、制御部8の制御に従って測定値Vmを表示する。操作部5は、図1に示すように、電源ボタン31およびホールドボタン32などの操作ボタンを備えて構成され、各操作ボタンが操作されたときに、各操作ボタンに対応する操作信号Soを出力する。この場合、ホールドボタン32は、その内側に配設された後述する発光部7から光の透過を可能とするために、例えば、透明または半透明の樹脂などで形成されている。
【0016】
記憶部6は、測定可能範囲データDmを記憶する。この場合、測定可能範囲データDmは、測定部3による所定の確度(測定値が真の値にどれだけ近いかを表すパラメータ)での測定が可能な交流電圧の値の範囲(以下、この範囲を「測定可能範囲Rm」ともいう)を示すデータであって、制御部8によって実行される第1測定処理50(図3参照)において用いられる。ここで、この電圧測定装置1では、所定の高い確度での測定が可能な交流電圧の測定可能範囲Rmの範囲が性能試験等によって予め規定されており、製造時においてこの測定可能範囲Rmが記憶部6に書き込まれている。
【0017】
発光部7は、本発明における報知部として機能し、例えばLEDで構成されている。この場合、発光部7は、操作部5におけるホールドボタン32の内側(ホールドボタン内)に配設されて、制御部8の制御に従って発光することにより、測定値Vmが測定可能範囲Rmの範囲内であることを報知する。制御部8は、操作部5から出力される操作信号Soに従って図3示す第1測定処理50を実行することにより、測定部3による交流電圧の測定、表示部4による測定値Vmの表示、および発光部7の発光等を制御する。この場合、制御部8は、第1測定処理50の実行時において、測定部3によって測定された測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるときに発光部7を発光させることにより、使用者に対して所定の高い確度での測定が可能な旨を報知させる報知処理を実行する。また、制御部8は、この報知処理を実行した状態において操作部5のホールドボタン32が操作されたときに、その時点における測定値Vmをホールド(内部メモリに一時的に記憶)すると共にその測定値Vmを表示部4に表示させる表示処理を実行する。
【0018】
次に、電圧測定装置1を用いて測定対象としての被覆電線100に供給されている交流電圧の値を測定する方法、およびその際の電圧測定装置1における各部の動作について、図面を参照して説明する。
【0019】
まず、操作部5の電源ボタン31(図1参照)を操作する。この際に、制御部8が、操作部5から出力された操作信号Soに従って図3に示す第1測定処理50を実行する。この第1測定処理50では、制御部8は、まず、電圧測定装置1を構成する各部を初期化する(ステップ51)。次いで、制御部8は、記憶部6から測定可能範囲データDmを読み出す(ステップ52)。続いて、制御部8は、図4に示すように、測定の準備が完了した旨を示す文字(例えば同図に示す「READY」の文字)を表示部4に表示させる(ステップ53)。これにより、電圧測定装置1において測定の準備が完了した旨が使用者に報知される。
【0020】
一方、図5に示すように、測定準備を完了した電圧測定装置1における検出部2のセンサ21を被覆電線100に近付けた際に、センサ21による交流電圧の検出が可能な第1検出領域A1(同図参照)内に被覆電線100が位置したときには、検出部2が、被覆電線100との間の静電容量に基づいて被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して(例えば、特開2007-132926号公報において出願人が開示した公知の検出方法による検出)、検出信号Sdを測定部3に出力する。また、測定部3が、検出部2から出力された検出信号Sdに基づいて交流電圧の値を測定して(例えば、上記の公報において出願人が開示した公知の測定方法による測定)、その測定値Vmについての電圧データDvを制御部8に出力する。
【0021】
次いで、制御部8は、記憶部6から読み出した測定可能範囲データDmに基づいて測定可能範囲Rmを特定すると共に、測定部3から出力された電圧データDvに基づいて測定値Vmを特定する。続いて、制御部8は、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを判別する(ステップ54)。具体的には、制御部8は、所定の下限値から所定の上限値までの間の範囲が測定可能範囲Rmとして規定されているときには、測定値Vmが下限値以上かつ上限値以下であるか否かを判別する。この場合、例えば、測定値Vmが測定可能範囲Rm外であるときには、制御部8は、電圧データDvによって特定される測定値Vmが変化する度にこのステップ54を繰り返して実行する。
【0022】
次に、図6に示すように、電圧測定装置1のセンサ21を被覆電線100にさらに近付けた(近接させた)際に、センサ21による交流電圧の確実な検出が可能な第2検出領域A2(同図参照)内に被覆電線100が位置したときには、検出部2が、被覆電線100に供給されている交流電圧を確実に検出して検出信号Sdを出力し、測定部3が検出信号Sdに基づいて電圧データDvを制御部8に出力する。この場合、制御部8は、上記したステップ54において、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であると判別したときには、操作部5におけるホールドボタン32の内側に配設されている発光部7を発光させる報知処理を実行する(ステップ55)。
【0023】
この場合、図6に示すように、発光部7の発光によって発光部7からの光がホールドボタン32を透過して、ホールドボタン32が明るく視認される結果、測定値Vmが測定可能範囲Rm内となった(所定の高い確度での測定が可能となった)旨が使用者に対して確実に報知される。したがって、使用者は、そのことを確実に認識することができるため、例えば、被覆電線100が狭い場所に存在していたり、被覆電線100の近傍に障害物が存在していたりして、センサ21と被覆電線100とが対向しているか否か、またセンサ21が被覆電線100に十分に近接しているか否かを認識するのが困難な使用状況においても、電圧測定装置1とセンサ21との位置関係が、所定の確度での交流電圧の測定が可能な状態にあることを確実に認識することができる。
【0024】
次いで、制御部8は、ホールドボタン32が操作されたか否かを判別する(ステップ56)。この場合、ホールドボタン32が操作されたときには、制御部8は、操作部5から出力された操作信号Soに従い、その時点で測定部3から出力されている電圧データDvに基づいて特定した測定値Vmを内部メモリに記憶させることにより、測定値Vmをホールドする(ステップ57)。続いて、制御部8は、ホールドしている測定値Vmを表示部4に連続的に表示させる(ステップ58)。これにより、被覆電線100に供給されている交流電圧の測定値Vmが使用者に報知される。なお、ステップ57(測定値Vmのホールド)およびステップ58(ホールドしている測定値Vmの表示)が本発明における表示処理に相当する。
【0025】
次いで、制御部8は、ホールドボタン32が操作(再操作)されたか否かを判別する(ステップ59)。この際に、例えばホールドボタン32が操作されたときには、制御部8は、測定値Vmのホールドを解除すると共に、表示部4に対して測定値Vmの表示を停止させた後に(ステップ60)、上記したステップ53を実行する。以後、制御部8は、電源ボタン31が操作されて第1測定処理50を終了するまで、上記したステップ53~60を繰り返して実行する。この場合、制御部8が第1測定処理50を実行することで、上記した表示処理の実行時にのみ測定値Vmが表示部4に表示される。つまり、制御部8によって報知処理が実行された状態においてホールドボタン32が操作された時点における測定値Vmだけが表示部4に表示される。
【0026】
このように、この電圧測定装置1によれば、制御部8が、測定部3によって測定された測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるときに報知部としての発光部7にその旨を報知させる報知処理を実行することにより、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを使用者に対して確実に認識させることができる。このため、例えば、測定対象体としての被覆電線100が狭い場所に存在していたり、被覆電線100の近傍に障害物が存在していたりして、検出部2のセンサ21と被覆電線100とが対向しているか否か、またセンサ21が被覆電線100に十分に近接しているか否かを認識するのが困難な使用状況においても、電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係が所定の確度での交流電圧の測定が可能な状態にあることを確実に認識させることができる。したがって、この電圧測定装置1によれば、制御部8によって報知処理が行われた時点で表示部4に表示された測定値Vmを読み取ることで、被覆電線100についての交流電圧の測定(所定の物理量の測定)を十分正確に行うことができる。」
「【図1】
[図:0001407271000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407271000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001407271000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001407271000004.jpg]
」
「【図6】
[図:0001407271000005.jpg]
」
c 【0032】
「【0032】
また、物理量としての交流電圧の値を測定する電圧測定装置1に適用した例について上記したが、本発明における物理量には、直流電圧、交流電流、直流電流、電力、静電容量、磁気および温度等の各種の物理量が含まれる。したがって、これらの各物理量を測定可能な測定装置に本発明を適用することができる。また、ホールドボタン32の内側に配設した発光部7を報知部して機能させる例について上記したが、本発明における報知部の構成はこれに限定されない。例えば、電圧測定装置1の表面パネルに配設したLED等の発光部を報知部として機能させることもできるし、音や振動を発生する装置を報知部として機能させることもできる。また、文字や図柄等を表示部4に表示させることによって報知を行う構成を採用することもできる。さらに、これら各種の報知部を組み合わせた構成を採用することもできる。また、この場合、報知の方法としては、発光、音や振動の発生、および図柄の表示等の処理について、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるときに実行する方法に限定されず、測定値Vmが測定可能範囲Rm外のときにこれらの各処理を実行し、測定値Vmが測定可能範囲Rm内のときにこれらの各処理の実行を停止することで報知する方法を採用することもできる。」
(イ) 引用発明の認定
a 前記(ア)bの【0015】及び【図1】からすると、電圧測定装置1は、センサ21が配設される部分を先端部とする筐体を有していることが見て取れる。
b 前記(ア)において摘記した事項及び上記aの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「測定対象体についての所定の物理量を非接触で測定可能に構成された非接触型の測定装置であって、(【0001】)
電圧測定装置1が、非接触型の測定装置の一例であって、電圧測定装置1は、検出部2、測定部3、表示部4、操作部5、記憶部6、発光部7および制御部8を備えて構成され、(【0014】)
検出部2は、センサ21及び増幅回路を備えて構成され、測定対象体としての被覆電線100との間の静電容量に基づき、被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して検出信号Sdを出力し、
センサ21は、電圧測定装置1の先端部に配設され、(【0015】)
電圧測定装置1は、センサ21が配設される部分を先端部とする筐体を有しており、(認定事項a)
測定部3は、検出部2から出力された検出信号Sdに基づいて被覆電線100に供給されている交流電圧の値(物理量の値)を測定して、測定値Vmについての電圧データDvを出力し、(【0015】)
制御部8は、測定部3による交流電圧の測定、表示部4による測定値Vmの表示、および発光部7の発光等を制御するものであり、(【0017】)
電圧測定装置1を用いて測定対象としての被覆電線100に供給されている交流電圧の値を測定する際の電圧測定装置1における各部の動作として、(【0018】)
操作部5の電源ボタン31が操作されると、制御部8が、操作部5から出力された操作信号Soに従って第1測定処理50を実行し、この第1測定処理50では、制御部8は、まず、電圧測定装置1を構成する各部を初期化し(ステップ51)、次いで、記憶部6から測定可能範囲データDmを読み出し(ステップ52)、続いて、測定の準備が完了した旨を示す文字を表示部4に表示させ(ステップ53)、これにより、電圧測定装置1において測定の準備が完了した旨が使用者に報知され、(【0019】)
測定準備を完了した電圧測定装置1における検出部2のセンサ21を被覆電線100に近付けた際に、センサ21による交流電圧の検出が可能な第1検出領域A1内に被覆電線100が位置したときには、検出部2が、被覆電線100との間の静電容量に基づいて被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して、検出信号Sdを測定部3に出力し、また、測定部3が、検出部2から出力された検出信号Sdに基づいて交流電圧の値を測定して、その測定値Vmについての電圧データDvを制御部8に出力し、(【0020】、【図5】)
制御部8は、記憶部6から読み出した測定可能範囲データDmに基づいて測定可能範囲Rmを特定すると共に、測定部3から出力された電圧データDvに基づいて測定値Vmを特定し、続いて、制御部8は、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを判別し(ステップ54)、測定値Vmが測定可能範囲Rm外であるときには、制御部8は、電圧データDvによって特定される測定値Vmが変化する度にこのステップ54を繰り返して実行し、(【0021】)
電圧測定装置1のセンサ21を被覆電線100にさらに近付けた(近接させた)際に、センサ21による交流電圧の確実な検出が可能な第2検出領域A2内に被覆電線100が位置したときには、検出部2が、被覆電線100に供給されている交流電圧を確実に検出して検出信号Sdを出力し、測定部3が検出信号Sdに基づいて電圧データDvを制御部8に出力し、
この場合、制御部8は、上記したステップ54において、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であると判別したときには、操作部5におけるホールドボタン32の内側に配設されている発光部7を発光させる報知処理を実行し(ステップ55)、(【0022】、【図6】)
このことにより、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを使用者に対して確実に認識させることができ、電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係が所定の確度での交流電圧の測定が可能な状態にあることを確実に認識させることができる、(【0022】、【0026】)
非接触型の測定装置。」
イ 引用文献6、7に記載された事項と周知技術1の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2008-107289号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【0012】~【0019】、【図1】
「【0012】
最初に、検電器1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
この検電器1は、本発明に係る検電器の一例であって、図1に示すように、検出部2、音出力部3a~3b(以下、区別しないときには「音出力部3」ともいう)、発光部4a~4b(以下、区別しないときには「発光部4」ともいう)および処理部5を備え、検出対象体100に所定電圧以上の交流電圧が供給されているか否かを検査可能に構成されている。この場合、検出対象体100は、本発明における検出対象体の一例であって、例えば絶縁材料で被覆された電線等が該当する。検出部2は、センサ部21、増幅部22および整流平滑部23を備えている。この場合、センサ部21は、図3に示すように、金属材料で形成された検電板24、および高抵抗値の検出抵抗25を備えている。また、センサ部21は、検電板24が検出対象体100との間で容量的に結合することによって生じる交流電流を検出抵抗25に流して電流-電圧変換することにより、検出抵抗25の両端に発生する交流電圧を出力する。増幅部22は、センサ部21から出力された交流電圧を増幅して出力する。整流平滑部23は、増幅された交流電圧を整流すると共に平滑して、後述する基準電圧範囲と比較するための検出電圧Viを出力する。
【0014】
音出力部3は、例えば、ブザー、およびブザーを駆動するためのブザー回路(いずれも図示せず)をそれぞれ備え、互いに異なる複数の出力態様で音を出力可能に構成されている。具体的には、各音出力部3は、互いに出力周期の異なる同一周波数の音を出力可能に構成されており、それぞれの音の出力周期が、音出力部3a、音出力部3bおよび音出力部3cの順に短くなるように(つまり、音出力部3a,3b,3cの順に音を出力する繰り返し周波数が高くなるように)設定され、かつそれぞれの音の音量が、音出力部3a、音出力部3bおよび音出力部3cの順に大きくなるように設定されている。また、音出力部3は、後述する検出信号S1~S3が処理部5から出力されたときに、それぞれ音を出力する。具体的には、音出力部3aは、第1の検出信号S1が処理部5から出力されたと
きに音を出力し、音出力部3bは、第2の検出信号S2が処理部5から出力されたときに音を出力し、音出力部3cは、第3の検出信号S3が処理部5から出力されたときに音を出力する。
【0015】
発光部4は、例えば、LED、およびLEDを発光させるための発光回路(いずれも図示せず)を備え、それぞれ異なった発光色(色相)で、すなわち互いに異なる複数の発光態様で発光可能に構成されている。この場合、発光部4aの発光色が黄色、発光部4bの発光色が橙色、発光部4cの発光色が赤色にそれぞれ規定されている。また、発光部4は、検出信号S1~S3が処理部5から出力されたときに、それぞれ発光する。具体的には、発光部4aは、第1の検出信号S1が処理部5から出力されたときに発光し、発光部4bは、第2の検出信号S2が処理部5から出力されたときに発光し、発光部4cは、第3の検出信号S3が処理部5から出力されたときに発光する。
【0016】
処理部5は、抵抗51~54、電源55、コンパレータ56~58および論理回路59~61を備えている。抵抗51~54は、電源55の出力部とグランド電位との間において、抵抗54、抵抗53、抵抗52、抵抗51の順に電源55からグランド電位に向けて直列に接続されている。電源55は、直流の電源電圧V4を生成して出力から出力する。コンパレータ56~58は、検出部2によって出力された検出電圧Viが反転入力端子にそれぞれ入力されると共に、抵抗51~54によって分圧された基準電圧V1~V3が非反転入力端子にそれぞれ入力されて、検出電圧Viの電圧値と基準電圧V1~V3の電圧値とを比較してハイ電圧またはロウ電圧をそれぞれ出力する。具体的には、コンパレータ56は、検出電圧Viが反転入力端子に入力されると共に抵抗51と抵抗52との接続点における基準電圧V1が非反転入力端子に入力されて、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V1の電圧値よりも低いときにハイ電圧を出力して基準電圧V1の電圧値以上のときにロウ電圧を出力する。また、コンパレータ57は、検出電圧Viが反転入力端子に入力されると共に抵抗52と抵抗53との接続点における基準電圧V2が非反転入力端子に入力されて、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V2の電圧値よりも低いときにハイ電圧を出力して基準電圧V2の電圧値以上のときにロウ電圧を出力する。また、コンパレータ58は、検出電圧Viが反転入力端子に入力されると共に抵抗53と抵抗54との接続点における基準電圧V3が非反転入力端子に入力されて、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V3よりも低いときにハイ電圧を出力して基準電圧V3以上のときにロウ電圧を出力する。
【0017】
ここで、基準電圧V1~V3の電圧値は、基準電圧V1、基準電圧V2および基準電圧V3の順に高い電圧値となるように予め定められている。具体的には、基準電圧V1の電圧値は、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V1の電圧値未満のときに検出対象体100が交流電圧の供給されていない状態(以下、非活電状態ともいう。)であると断定することができる電圧値に設定されている。また、基準電圧V2の電圧値は、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V1の電圧値以上かつ基準電圧V2の電圧値未満のときに検出対象体100について非活電状態である可能性が高いが非活電状態と断定することはできない電圧値であって、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V2の電圧値以上基準電圧V3の電圧値未満のときに検出対象体100が交流電圧の供給されている状態(以下、活電状態ともいう。)である可能性が高いが検出対象体100について活電状態と断定することはできない電圧値に設定されている。また、基準電圧V3の電圧値は、検出電圧Viが基準電圧V3の電圧値以上のときには検出対象体100が活電状態であると断定することができる電圧値に設定されている。
【0018】
論理回路59~61は、コンパレータ56~58から出力されるハイ電圧およびロウ電圧に従って検出信号S1~S3をそれぞれ出力する。具体的には、論理回路59は、論理積回路であって、コンパレータ56からロウ電圧が出力されると共にコンパレータ57からハイ電圧が出力されたときに、第1の検出信号S1を出力する。すなわち、論理回路59は、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V1の電圧値以上かつ基準電圧V2の電圧値未満で規定される第2の基準電圧範囲Bに属するときに電圧信号S1を出力する。また、論理回路60は、論理積回路であって、コンパレータ57からロウ電圧が出力されると共にコンパレータ58からハイ電圧が出力されたときに、第2の検出信号S2を出力する。すなわち、論理回路60は、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V2の電圧値以上かつ基準電圧V3の電圧値未満で規定される第3の基準電圧範囲Cに属するときに電圧信号S2を出力する。また、論理回路61は、ノット回路であって、コンパレータ58からロウ電圧が出力されたときに、第3の検出信号S3を出力する。すなわち、論理回路61は、検出電圧Viの電圧値が基準電圧V3の電圧値以上かつ電源電圧V4の電圧値以下で規定される第4の基準電圧範囲Dに属するときに電圧信号S3を出力する。なお、論理回路59~61は、コンパレータ56~58のすべてからハイ電圧が出力されときには、検出信号S1~S3をいずれも出力しない。すなわち、論理回路59~61は、検出電圧Viの電圧値が0ボルト以上かつ基準電圧V1の電圧値未満で規定される第1の基準電圧範囲Aに属するときには、検出信号S1~S3をいずれも出力しない。
【0019】
これにより、処理部5は、第1の基準電圧範囲A、第2の基準電圧範囲B、第3の基準電圧範囲Cおよび第4の基準電圧範囲Dという予め定められて互いに重なり合わない4つの基準電圧範囲と、検出電圧Viの電圧値とを比較して、検出信号S1~S3のうちのいずれか1つの信号を出力するか、あるいは検出信号S1~S3をいずれも出力しないかを実行することにより、検出電圧Viの電圧値が属する基準電圧範囲に予め対応付けられている出力態様で音出力部3に音を出力させると共に発光態様で発光部4を発光させる。」
「【図1】
[図:0001407271000006.jpg]
」
b 【0025】、【図4】
「【0025】
さらに、検出対象体100と検電板24とが接触しない状態であっても、容量の小さな静電容量C1が両者の間に形成される。このため、検出対象体100が活電状態のときには、検出対象体100に検電器1を近付けたり遠ざけたりする際にも、図3に示す電流経路に微少な交流電流が流れて検出抵抗25の両端に交流電圧が発生する。この際には、検出対象体100と検電器1の検出部2との距離Lに応じて検出電圧Viの電圧値が変化するため、音出力部3の音の出力態様および発光部4の発光態様が、例えば、図4に示すように、距離Lの長さに応じて変化する。具体的には、距離LがL1、L2およびL3の順に長くなる場合、距離Lが0以上でL1未満のときには検出電圧Viの電圧値が基準電圧範囲Dに属して音出力部3cが音を出力すると共に発光部4cが発光し、距離LがL1以上でL2未満のときには検出電圧Viの電圧値が基準電圧範囲Cに属して音出力部3bが音を出力すると共に発光部4bが発光し、距離LがL2以上でL3未満のときには検出電圧Viの電圧値が基準電圧範囲Bに属して音出力部3aが音を出力すると共に発光部4aが発光し、距離LがL3以上のときには検出電圧Viの電圧値が基準電圧範囲Aに属してすべての音出力部3が音を出力ぜずにかつすべての発光部4が発光しないというように、音出力部3による音の出力態様と発光部4による発光の態様とが順次変化する。このため、例えば、検出対象体100に検電器1を近付けるに従って音出力部3bから音が出力されるようになると共に発光部4bが発光するようになるときには、検出対象体100が活電状態にある可能性が高いと判断することができる。同様にして、検出対象体100から検電器1を遠ざけるに従って音出力部3bから音が出力されなくなると共に発光部4bが発光しなくなるときには、検出対象体100が活電状態にある可能性が高いと判断することができる。」
「【図4】
[図:0001407271000007.jpg]
」
(イ) 引用文献6記載事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献6には、次の引用文献6記載事項が記載されていると認められる。
[引用文献6記載事項]
「検出対象体100に所定電圧以上の交流電圧が供給されているか否かを検査可能に構成されている検電器1であって、
検出部2、発光部4及び処理部5を備え、
検出部2は、検出電圧Viを出力し、
発光部4は、互いに異なる複数の発光態様で発光可能に構成されており、
処理部5は、検出電圧Viの電圧値が属する基準電圧範囲に予め対応付けられている発光態様で発光部4を発光させ、
検出対象体100と検電器1の検出部2との距離Lに応じて検出電圧Viの電圧値が変化するため、発光部4の発光態様が、距離Lの長さに応じて変化する
検電器1。」
(ウ) 引用文献7に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2001-13173号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【0019】~【0022】、【図5】
「【0019】本発明の充電検出器は、図5に示すように前述の検出電極16に、レベル検出回路20、断続音周期変化回路21及び発振回路22が順次接続され、発振回路22にブザー4及び発光ダイオード3が接続された回路構成を具備する。各レベル検出回路20、断続音周期変化回路21及び発振回路22には電源であるボタン電池7が接続されている。また、検出電極16と発振回路22との間には、テストボタン11が挿入接続されている。
【0020】充電検出器は、充電状態にある被検出部Eへの接近により被検出部Eと検出電極16との間に浮遊静電容量C01が形成され、この浮遊静電容量C01及び人体アースとの間に形成される浮遊静電容量C02により被検出部Eから人体アースへ流れる静電誘導電流I0を検出し、その検出信号に基づいて断続音を発することにより被検出部Eの充電状態を報知するものである。
【0021】前述した充電検出器の回路構成のうち、レベル検出回路20は、図6に示すように検出電極16からの入力信号S1である微小な静電誘導電流I0を増幅して所定のしきい値Lとの比較により、被検出部Eの充電状態の検出レベルに応じたパルス幅を持つ検出信号S2を出力する。被検出部Eの充電状態の検出レベル(入力信号S11)が低い場合(被検出部Eが低充電電圧の場合、或いは被検出部Eとの距離が大きい場合)、小さいパルス幅を持つ検出信号S21を出力する。逆に、被検出部Eの充電状態の検出レベル(入力信号S12)が高い場合(被検出部Eが高充電電圧の場合、或いは被検出部Eとの距離が小さい場合)、大きなパルス幅を持つ検出信号S22を出力する。
【0022】断続音周期変化回路21は、レベル検出回路20から出力される検出信号S2のパルス幅に応じてコンデンサ(図示せず)の充電時間を決定し、このコンデンサの充電電圧により断続音の断続周期が決定され、その断続音の断続周期に応じた出力信号が送出される。発振回路22は、ブザー4を駆動するための低周波発振信号を出力すると共に、検出レベルに応じた断続周期の断続音を発生させるための発振信号を出力する。」
「【図5】
[図:0001407271000008.jpg]
」
(エ) 引用文献7記載事項の認定
前記(ウ)において摘記した事項を総合すると、引用文献7には、次の引用文献7記載事項が記載されていると認められる。
[引用文献7記載事項]
「充電状態にある被検出部Eへの接近により、被検出部Eから人体アースへ流れる静電誘導電流I0を検出し、その検出信号に基づいて断続音を発することにより被検出部Eの充電状態を報知する充電検出器であって、
充電検出器は検出電極16に、レベル検出回路20、断続音周期変化回路21及び発振回路22が順次接続され、発振回路22にブザー4及び発光ダイオード3が接続された回路構成を具備し、
レベル検出回路20は、被検出部Eの充電状態の検出レベルに応じたパルス幅を持つ検出信号S2を出力し、被検出部Eの充電状態の検出レベル(入力信号S11)が低い場合(被検出部Eとの距離が大きい場合)、小さいパルス幅を持つ検出信号S21を出力し、被検出部Eの充電状態の検出レベル(入力信号S12)が高い場合(被検出部Eとの距離が小さい場合)、大きなパルス幅を持つ検出信号S22を出力し、
断続音周期変化回路21は、レベル検出回路20から出力される検出信号S2のパルス幅に応じて、断続音の断続周期に応じた出力信号が送出され、発振回路22は、検出レベルに応じた断続周期の断続音を発生させるための発振信号を出力する、
充電検出器。」
(オ) 周知技術1の認定
前記(イ)及び(エ)において認定した事項から、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
[周知技術1]
「検出対象と検出部との距離に応じて、発光態様や音の発生態様を変化させて報知すること。」
ウ 引用文献8、9に記載された事項と周知技術2の認定
(ア) 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する文献である特開平4-233470号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【0008】~【0009】、【図1】、【図2】
「【0008】
【実施例】以下、第1の発明を非接触式電圧センサに具体化した実施例を図1及び図2に従って説明する。この非接触式電圧センサ(以下電圧センサという)1は携帯型であって、先端に設けた検知部2と、基端に設けた把持部3と両部2,3を連結する長扞状の連結部4とからなっている。
【0009】検知部2は電圧検出部5と、距離検出器6の距離検出部6aとを備えており、電圧検出部5はその電極7が絶縁ゴム8を介してシールド金具9によりシールドされて構成されている。そして、電圧検出部5は絶縁性合成樹脂10により一体的にモールドされてユニット化されている。このモールド部の先端面の両側は角状に突設され、その角部には距離検出部6aを構成する発信器12と受信器13とが埋め込みされている。この発信器12の発信方向と受信器13の受信方向とは被測定物においてθの角度で交わるように配置されている。」
「【図1】
[図:0001407271000009.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407271000010.jpg]
」
b 【0013】~【0015】
「【0013】又、前記カウンタ回路31はパルス発生回路25からパルス列Pと同期して出力されるスタートパルスによりカウントを開始し、前記受信パルスによりカウントを停止する。これによって、超音波パルスが発信器12から放射され、被測定物によって反射され、受信器13によって受信されるまでの時間Tがカウントされる。これによってカウンタ回路31のカウント値、すなわち時間Tに基づいて被測定物間での距離が検出できる。前記マスキング回路30は駆動回路26からの直接波による誤動作を防止するため超音波の発信開始から発振器12の振動が充分に小さくなるまでの期間、受信パルスを遮断(マスク)するためのものである。
【0014】比較回路32はそのカウント値と予め設定された設定値(距離M、この実施例では300mm)とを比較して、設定値に達したとき駆動回路33を作動する。そして、スピーカ19は駆動回路33により鳴動するようになっている。さて、上記のように構成された電圧センサ1の作用について説明する。今、課電部である電線Lの電圧を測定する場合、操作回路ボックス15のメインスイッチ16及び超音波距離検出器用スイッチ17をオン操作するとともに、接地線39を接地させた状態で電圧センサ1の検知部2を電線Lに向けて徐々に接近させる。メインスイッチ16がオン操作されているため、電圧センサ1の電圧検出部5は検出動作し、リアルタイムに電圧表示器18に電圧値を表示する。また、距離検出器6も作動するが、電線Lとの距離がM以上の時には、距離検出器6はその比較回路23に入力されるカウント値が設定値に達しないため、駆動回路33を作動させず、スピーカ19は鳴動しない。
【0015】そして、電線Lと検知部2との距離がMに達すると、距離検出器6はその比較回路32に入力されるカウント値が設定値に達するため、駆動回路33を作動させ、スピーカ19を鳴動させる。作業者はこのスピーカ19が鳴動したとき電圧センサ1の電圧表示部18に表示された電圧値を読取れば、その時の値は電圧センサ1を課電部(電線L)から一定距離離間したときの電圧値となる。従って、異なる測定点にて電圧値を測定する場合でもそれぞれの測定箇所で常に一定の距離から離間したときの電圧値を正確に測定することができる。」
(イ) 引用文献8記載事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献8には、次の引用文献8記載事項が記載されていると認められる。
[引用文献8記載事項]
「非接触式電圧センサ1の先端に、電圧検出部5と、距離検出器6の距離検出部6aとを備え、
発信器12と受信器13が距離検出部6aを構成し、
超音波パルスが発信器12から放射され、被測定物によって反射され、受信器13によって受信されるまでの時間Tに基づいて被測定物間での距離が検出でき、
電線Lと検知部2との距離がMに達すると、距離検出器6はスピーカ19を鳴動させ、
スピーカ19が鳴動したとき電圧値を読取ることで、常に一定の距離から離間したときの電圧値を正確に測定することができる、
非接触式電圧センサ1。」
(ウ) 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用する文献である特開平10-96756号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【請求項3】
「【請求項3】導体(1a)に交番電流を流した際に発生する磁界を電圧に変換して検出する磁界センサ(2)と、導体表面までの距離を計測する距離センサ(7)とを絶縁電線(1)の長手方向に並列状態に配置し、磁界センサで検出した誘起電圧と、距離センサの距離データにより計算して求めた磁界センサの誘起電圧とを比較することを特徴とする絶縁電線の欠陥検出装置。」
b 【0006】~【0010】、【図1】~【図3】
「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る絶縁電線の欠陥検出方法およびその装置の一実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。図1ないし図3において、符号2は磁界センサ、7は距離センサ、10は支持具、11はハウジング、12は押え板を示している。
【0007】前記距離センサ7は、例えば渦電流変位センサで、コイルに電流を流した際に、その近傍に存在する導電体に渦電流が発生することに基づくインピーダンスの変化により、導電体、つまり導体1aまでの距離を検出するものが採用される。
【0008】前記支持具10は、互いに並列状態の磁界センサ2と距離センサ7との2組を対向状態に配置したハウジング11と、該ハウジング11に組み合わせられた押え板12とを具備し、ハウジング11および押え板12は、ボルト等の締結具により一体化されている。
【0009】前記ハウジング11の中心部分には、図1に示すように、絶縁電線1を挿通させるための電線挿通穴11aが形成されており、該電線挿通穴11aの片側の内壁は、スリット11bの形成により削除された形状とされて、押え板12の取り付けにより閉塞されている。
【0010】そして、互いに並列状態の磁界センサ2および距離センサ7は、支持具10における電線挿通穴11aの内壁に内向状態に配され、図1に示すように、その2組のものが、電線挿通穴11aに挿入される絶縁電線1の円周方向に180度離れた状態に対向配置されている。」
「【図1】
[図:0001407271000011.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407271000012.jpg]
」
「【図3】
[図:0001407271000013.jpg]
」
c 【0014】、【図4】
「【0014】また、図4に示した一対の磁界センサ2による差電圧の検出とともに、距離センサ7による導体1aの表面までの距離の計測を行なって、距離センサ7の距離データにより交番電流Iに対応する磁界に基づく磁界センサ2の誘起電圧を計算する。この計算結果と磁界センサ2で実際に検出した誘起電圧とを比較して、有意義な差が生じているか否かにより、導体1aにおける応力腐食割れや素線切れ等の欠陥部の有無を判別する。このような欠陥部の有無の判別方法であると、一対の磁界センサ2による差電圧が、導体1aの異常によって生じているか、2個の磁界センサ2の片寄りまたは絶縁電線1の絶縁被覆1bの偏肉で生じているかを識別することが可能となる。」
「【図4】
[図:0001407271000014.jpg]
」
(エ) 引用文献9記載事項の認定
前記(ウ)において摘記した事項を総合すると、引用文献9には、次の引用文献9記載事項が記載されていると認められる。
「導体1aに交番電流を流した際に発生する磁界を電圧に変換して検出する磁界センサ2と、導体表面までの距離を計測する距離センサ7とを絶縁電線1の長手方向に並列状態に配置し、
一対の磁界センサ2による差電圧の検出とともに、距離センサ7による導体1aの表面までの距離の計測を行なって、距離センサ7の距離データにより交番電流Iに対応する磁界に基づく磁界センサ2の誘起電圧を計算する、
絶縁電線の欠陥検出装置」
(オ) 周知技術2の認定
前記(イ)及び(エ)において認定した事項から、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という)。
[周知技術2]
「電線の電圧又は電流を非接触で測定する構成において、電圧又は電流を測定するセンサとは別に設けたセンサにより、電線との距離を測定すること。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「非接触型の測定装置」は、「測定対象体についての所定の物理量を非接触で測定可能に構成された」ものであるから、本件補正発明の「非接触測定システム」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は「非接触測定システム」の発明である点で一致する。
b 引用発明の「非接触型の測定装置の一例」である「電圧測定装置1」は、「センサ21が配設される部分を先端部とする筐体を有して」いるところ、引用発明の「筐体」は、本件補正発明の「ハウジング」に相当し、引用発明の「筐体」が有する「先端部」は、本件補正発明の「ハウジング」に含まれる「前端」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前端を含むハウジング」を備える点で一致する。
c 引用発明の「検出部2」は、「測定対象体としての被覆電線100との間の静電容量に基づき、被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して検出信号Sdを出力」するものであるところ、引用発明の「測定対象体としての被覆電線100」は、本件補正発明の「絶縁電線」に相当し、引用発明の「被覆電線100に供給されている交流電圧」は、本件補正発明の「絶縁電線内の電圧」に相当する。
引用発明の「電圧測定装置1」は、「非接触型」であるから、引用発明の「検出部2」は、動作時に、被覆電線100に直接電気的接触することなく、被覆電線100に供給されている交流電圧を検出していることは明らかである。
また、引用発明の「測定部3」は、「検出部2から出力された検出信号Sdに基づいて被覆電線100に供給されている交流電圧の値(物理量の値)を測定して、測定値Vmについての電圧データDvを出力」するものであるから、引用発明の「検出部2」と「測定部3」は、一体のものとしてみると、「被覆電線100に供給されている交流電圧の値」を測定するものであるといえるから、本件補正発明の「電圧センサー」に相当する。
さらに、引用発明の「検出部2」に備えられた「センサ21」は、「筐体」の「先端部」に「配設」されているから、引用発明の「検出部2」は、「筐体」の「先端部」に近接して設けられたものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「動作時に、絶縁電線内の電圧を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電圧センサー」を備える点で一致する。
d 引用発明の「測定部3による交流電圧の測定」「を制御する」「制御部8」は、「測定部3から出力された電圧データDvに基づいて測定値Vmを特定」するものであるから、「測定部3」に動作可能に結合されているものである。また、引用発明の「制御部8」が「筐体」内に設けられていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「制御部8」は、本件補正発明の「前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのプロセッサ」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのプロセッサであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記電圧センサーに動作可能に結合される、少なくとも1つのプロセッサ」を備える点で共通する。
e 引用発明の「測定部3から出力された電圧データDv」は、本件補正発明の「前記電圧センサーによって取得された電圧センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電圧を示す前記電圧センサー信号」に相当し、引用発明の「制御部8」が「測定値Vmを特定」することは、「制御部8」が「電圧データDv」を受信することを前提としているから、本件補正発明の「前記少なくとも1つのプロセッサ」が「前記電圧センサー信号を、前記電圧センサーから受信」することに相当する。
引用発明の「制御部8」は、「測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを判別し(ステップ54)、測定値Vmが測定可能範囲Rm外であるときには、制御部8は、電圧データDvによって特定される測定値Vmが変化する度にこのステップ54を繰り返して実行」することを踏まえると、「制御部8」は、「ステップ54を繰り返して実行」する間隔で、「測定部3から出力された電圧データDvに基づいて測定値Vmを特定」しており、その前提として、「測定部3」は、「ステップ54を繰り返して実行」する間隔ごとに「電圧データDv」を取得しているといえる。
そうすると、引用発明の「ステップ54を繰り返して実行」する間隔は、本件補正発明の「測定時間間隔」に相当するものである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサ」が、「測定時間間隔中に前記電圧センサーによって取得された電圧センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電圧を示す前記電圧センサー信号を、前記電圧センサーから受信」する点で一致する。
f 引用発明では、「測定準備を完了した電圧測定装置1における検出部2のセンサ21を被覆電線100に近付けた際に、センサ21による交流電圧の検出が可能な第1検出領域A1内に被覆電線100が位置したとき」や、「電圧測定装置1のセンサ21を被覆電線100にさらに近付けた(近接させた)際に、センサ21による交流電圧の確実な検出が可能な第2検出領域A2内に被覆電線100が位置したとき」に、「検出部2」が「被覆電線100に供給されている交流電圧を検出して」、「測定部3」が「交流電圧の値を測定」しているから、動作時に、被覆電線100がセンサ21近くに位置決めされるとき、被覆電線100内の電圧を検出しているといえる。
そして、引用発明の「制御部8」は、「測定値Vmが測定可能範囲Rm内であると判別したときには、操作部5におけるホールドボタン32の内側に配設されている発光部7を発光させる報知処理を実行し(ステップ55)、このことにより、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを使用者に対して確実に認識させることができ、電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係が所定の確度での交流電圧の測定が可能な状態にあることを確実に認識させることができる」というものであるから、「測定値Vm」に基づいて、「電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係が所定の確度での交流電圧の測定が可能な状態にある」かどうかを判別して、その判別結果に応答して、電圧測定装置1のセンサ21に対する被覆電線100の現在の位置合わせの状態を発光部7の発光により報知するための信号が生成されるものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「動作時に、前記絶縁電線がセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す信号を生成する」点で共通する。
g 前記fを踏まえると、引用発明の「制御部8」は、「電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係」が所定のものであることを、「発光部7」を発光させることにより使用者に報知しており、引用発明の「発光部7」は、本件補正発明の「前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合されたインジケータ装置」に相当し、引用発明の「使用者」は、本件補正発明の「前記非接触測定システムのユーザー」に相当し、引用発明の「発光部7」を発光させることにより使用者に報知することは、本件補正発明の「前記インジケータ装置に、位置合わせ表示を」「前記非接触測定システムのユーザーに提供」することに相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合されたインジケータ装置と、を更に備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記インジケータ装置に、位置合わせ表示を、前記位置合わせを示す信号に少なくとも部分的に基づいて前記非接触測定システムのユーザーに提供させ」る点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「非接触測定システムであって、
前端を含むハウジングと、
動作時に、絶縁電線内の電圧を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電圧センサーと、
前記ハウジング内に設けられた少なくとも1つのプロセッサであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記電圧センサー動作可能に結合される、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、
測定時間間隔中に前記電圧センサーによって取得された電圧センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電圧を示す前記電圧センサー信号を、前記電圧センサーから受信する、非接触測定システムであって、
前記非接触測定システムは、
動作時に、前記絶縁電線がセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す信号を生成し、
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合されたインジケータ装置と、を更に備え、動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記インジケータ装置に、位置合わせ表示を、前記位置合わせを示す信号に少なくとも部分的に基づいて前記非接触測定システムのユーザーに提供させる、
非接触測定システム。」
b 相違点
相違点1:本件補正発明は、「動作時に、前記絶縁電線内の電流を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電流センサー」を備え、
「少なくとも1つのプロセッサ」が、
「前記電流センサー」にも「動作可能に結合され」、「前記測定時間間隔中に前記電流センサーによって取得された電流センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電流を示す前記電流センサー信号を、前記電流センサーから受信」するものであり、
「少なくとも1つの交流(AC)電気的パラメータを、前記電圧センサー信号及び電流センサー信号に少なくとも部分的に基づいて判定する」ものであるのに対し、
引用発明は、被覆電線100に供給されている交流電圧を測定して、測定値Vmの表示は行っているものの、「電流センサー」の構成を備えておらず、制御部8も電流センサーの存在を前提とした動作を行っていないため、「交流(AC)電気的パラメータ」を判定するようなものではない点。
相違点2:本件補正発明は、「前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記非接触測定システムのハウジングの前端に近接して設けられた、前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである位置合わせ用フィードバックセンサー」を更に備えており、
「動作時に、前記位置合わせ用フィードバックセンサーは、前記絶縁電線が前記位置合わせ用フィードバックセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサー及び前記電流センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す位置合わせフィードバックセンサー信号を生成する」ものであり、
「動作時に、前記少なくとも1つのプロセッサ」が、「インジケータ装置に、」「位置合わせ表示を、」「前記非接触測定システムのユーザーに提供させ」ることが、「前記少なくとも1つのプロセッサ」が「前記位置合わせ用フィードバックセンサーから受信」した「前記位置合わせフィードバックセンサー信号」に「少なくとも部分的に基づいて」おり、
「前記位置合わせ表示は、前記電圧センサー又は前記電流センサーに対する前記絶縁電線の位置合わせの程度を表示する」ものであるのに対し、
引用発明では、測定部3から出力される測定値Vmについての電圧データDvに基づいて、電圧測定装置1のセンサ21に対する被覆電線100の位置合わせを行っており、発光部7の発光は、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを示すものであり、「程度」を示すものではない点。
イ 判断
前記各相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 「電流センサー」を備えることについて
引用発明は、「測定対象体についての所定の物理量を非接触で測定可能に構成された非接触型の測定装置」であり、「電圧測定装置1」は「非接触型の測定装置の一例」として、引用発明の構成を有するものである。
ここで、引用文献1の段落【0032】には、次のような記載がある。
「また、物理量としての交流電圧の値を測定する電圧測定装置1に適用した例について上記したが、本発明における物理量には、直流電圧、交流電流、直流電流、電力、静電容量、磁気および温度等の各種の物理量が含まれる。したがって、これらの各物理量を測定可能な測定装置に本発明を適用することができる。」
当該記載を踏まえると、引用発明の「非接触型の測定装置」を、電力を測定可能なものとして構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきであり、一般に、電力は、電圧と電流に基づいて定義されるから、引用発明において、電力を測定可能なものとして構成した場合には、電圧を測定する「センサ21」に加えて、測定対象体としての被覆電線100に流れる電流を測定するための電流センサーが必要となることは、当業者には自明である。
また、電流センサーとして、磁場センサーを用いるなどによる非接触型の電流センサーは、慣用技術である。このような電流センサーを、引用発明に付加して電力を測定可能なものとして構成しようとするときに、電流センサーを設ける箇所や、制御部8への信号の出力態様を、引用発明において電圧を検出する検出部2、測定部3の構成に準じるようなものとすることは、当業者であれば適宜になし得た程度のことである。
そうすると、引用発明において、前記相違点1に係る「動作時に、前記絶縁電線内の電流を、前記絶縁電線に直接電気的接触することなく感知する、前記ハウジングの前記前端に近接して設けられた電流センサー」を備え、「少なくとも1つのプロセッサ」が、「前記電流センサー」にも「動作可能に結合され」、「前記測定時間間隔中に前記電流センサーによって取得された電流センサー信号であって、前記絶縁電線内の前記電流を示す前記電流センサー信号を、前記電流センサーから受信」するように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。
b 「交流(AC)電気的パラメータ」の「判定」について
(a) 「交流(AC)電気的パラメータ」の解釈
本件補正発明の「交流(AC)電気的パラメータ」がどのようなものかについて、本願の明細書の記載を参照すると、発明の詳細な説明における【課題を解決するための手段】の記載において、「少なくとも1つのAC電気的パラメータは、電力、位相、周波数、高調波又はエネルギーのうちの少なくとも1つを含むことができる。」(【0006】)と記載されていることからすると、「交流(AC)電気的パラメータ」は、「電力」を含むものと解される。
(b) 「判定する」の解釈
本件補正発明の、「少なくとも1つの交流(AC)電気的パラメータを、前記電圧センサー信号及び電流センサー信号に少なくとも部分的に基づいて判定する」の「判定する」がどのような意味であるかについて、本願の明細書の記載を参照すると、発明の詳細な説明において「判定する」の意味について具体的に説明している箇所はなく、【発明を実施するための形態】の記載において、「一部の実行例において、電圧センサー及び電流センサーは、測定値を指定の間隔にて(例えば、10ms毎に、100ms毎に、1秒毎に、10秒毎に)繰り返し取得するように動作することができる。一般的に、電圧センサー及び電流センサーは、いずれも測定時間間隔内にそれぞれの測定値を取得し、測定時間間隔は、電圧測定値及び電流測定値の対が互いに対応するように十分に短く、これによって、取得された電流測定値及び電圧測定値を使用した1つ又は2つ以上のAC電気的パラメータ(例えば、電力、段階)の導出又は判定が可能である。」(【0020】)、「一般的に、電圧センサー3702及び電流センサー3704は、両方とも、それぞれの測定値を測定時間間隔内に取得し、測定時間間隔は、電圧測定値及び電流測定値の対が互いに対応するように十分に短く、これによって、取得された電流測定値及び電圧測定値を使用する1つ又は2つ以上のAC電気的パラメータ(例えば、電力、位相)の正確な導出又は判定が可能である。」(【0181】)とあるように、「導出」と同格のものとして「判定」が記載されている。
そうすると、本件補正発明の「交流(AC)電気的パラメータ」を「判定する」ことは、例えば、電力を、取得された電流測定値及び電圧測定値を使用して導出することであると解するのが相当である。
(c) 前記aにおいて説示したとおり、引用発明において、電力を測定可能なものとして構成することは当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきであり、そのような電力の導出は電圧データ及び電流データに基づいて行われるものであるから、前記(a)及び(b)において示した解釈を踏まえると、引用発明において、前記相違点1に係る「少なくとも1つの交流(AC)電気的パラメータを、前記電圧センサー信号及び電流センサー信号に少なくとも部分的に基づいて判定する」ように構成することは、当該自明な設計変更に伴って当業者にとって自然に導かれる事項にすぎないことである。
(イ) 相違点2について
a 「別個」の「位置合わせ用フィードバックセンサー」を備えることについて
電線の電圧又は電流を非接触で測定する構成において、電圧又は電流を測定するセンサとは別に設けたセンサにより、電線との距離を測定することは、前記周知技術2のとおり、当業者における周知技術である。
引用発明における、測定部3から出力される測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かに基づいて行われる位置合わせは、測定対象の被覆電線100に供給されている交流電圧が極端に変動することなく、測定値Vmが専ら位置合わせの状態に依存することを前提とするものであるところ、例えば、測定対象の被覆電線100に供給されている交流電圧が極端に変動して想定した電圧と異なる場合には、想定した電圧データDv(測定値Vm)が得られず適切な位置合わせを行うための前提が維持されなくなるから、引用発明の位置合わせには、測定対象の被覆電線100に供給されている交流電圧の変動に由来する不確実性が内在しているといえる。
一方、前記周知技術2のように、電圧又は電流を測定するセンサとは別に設けたセンサにより、電線との距離を測定するものであれば、被覆電線100に供給されている交流電圧の変動に関わらず、電線との距離が測定できるものであり、引用発明の位置合わせに内在する不確実性を回避可能なものである。
また、1つのセンサに2つの機能を兼用させるよりも、それぞれの機能についての専用のセンサを2つ設ける方が、より正確な測定を行うための設計の自由度が向上し、さらに、故障時に一度に2つの機能が失われることがなくなる、ということも、当業者における技術常識である。
そうすると、引用発明において、電力を測定可能なように電圧センサーに加えて電流センサーを備える自明な設計変更を行うに際して、電線との距離を測定し、適切に位置合わせが行えるように、引用発明における位置合わせの構成として、前記周知技術2を採用して、前記相違点2に係る「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである位置合わせ用のセンサー」を備えるようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
その際に、前記周知技術2のセンサに合わせるように、引用発明を適宜改変することは、設計的事項にすぎないというべきであり、前記相違点2に係る「位置合わせ用のセンサー」が「前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記非接触測定システムのハウジングの前端に近接して設けられた」ものであること、「動作時に」、「前記絶縁電線が前記位置合わせ用のセンサー近くに位置決めされるとき、前記絶縁電線内の前記電圧を検出し、応答して前記電圧センサー及び前記電流センサーに対する前記絶縁電線の現在の位置合わせを示す位置合わせセンサー信号を生成する」ものであること、「前記少なくとも1つのプロセッサ」が「前記位置合わせ用のセンサーから受信」した「前記位置合わせセンサー信号」に「少なくとも部分的に基づいて」「インジケータ装置に、」「位置合わせ表示を、」「前記非接触測定システムのユーザーに提供させ」るように構成することは、当業者であれば容易になし得た範囲内のことである。
なお、引用発明においても、「電圧測定装置1と被覆電線100との位置関係」が所定のものであることを「発光部7」を発光させることにより使用者に報知しており、使用者に位置合わせ状態を「フィードバック」しているといえるから、引用発明における位置合わせの構成として、前記周知技術2を採用して、前記相違点2に係る「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである位置合わせ用のセンサー」を備えるようにした際の当該「位置合わせ用のセンサー」を「位置合わせ用フィードバックセンサー」とすることは、称呼の問題にすぎず、格別のことではない。「位置合わせフィードバックセンサー信号」についても同様である。
b 「位置合わせの程度」を表示することについて
検出対象と検出部との距離に応じて、発光態様や音の発生態様を変化させて報知することは、前記周知技術1のとおり、当業者における周知技術である。
引用発明は、発光部7の発光により、測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを使用者に対して報知しているが、測定対象体としての被覆電線100と検出部2との間の距離を、距離に応じた態様で報知することで、使用者が、適切な位置で測定しているかどうかがより把握しやすくなることは明らかである。
そうすると、引用発明において、電力を測定可能なように電圧センサーに加えて電流センサーを備える自明な設計変更を行うに際して、使用者が、適切な位置で測定しているかどうかがより把握しやすくなるように、周知技術1に倣って、発光部7の発光態様を、被覆電線100と電圧センサー又は電流センサーとの間の距離に応じて、変化させるようなものとすることにより、前記相違点2に係る「前記位置合わせ表示は、前記電圧センサー又は前記電流センサーに対する前記絶縁電線の位置合わせの程度を表示する」という構成を得ることは、当業者が適宜なし得た報知態様の好適化にすぎない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討結果を総合して検討しても、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
本件補正発明と、引用文献1に記載の発明とは、主として、「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである位置合わせ用フィードバックセンサー」及び「前記位置合わせ表示は、前記電圧センサー又は前記電流センサーに対する前記絶縁電線の位置合わせの程度を表示する」という構成の点で異なっており、本件補正発明によれば、上記相違点に係る構成によって、位置合わせの程度の表示を正確に行うことが可能となる。
また、引用文献1に記載の発明における位置合わせは、測定部3によって測定された測定値Vmが測定可能範囲Rm内であるか否かを判定するのみのものであり、このような判定は、センサ21によって感知された電圧から測定される値が測定可能範囲内であるかを判定することのみによっても行うことができることから、あえてさらなるコストをかけてまで、センサ21と別個の位置合わせ用のセンサーを設けることに対する動機付けは、引用文献1に記載の発明からは見出し難い。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
上記請求人の主張は、要するに前記ア(イ)bにおいて認定した相違点2についてのものであるところ、相違点2に係る構成は、前記イ(イ)において説示したとおり、当業者ならば容易に想到し得たものであって、動機付けについても、前記イ(イ)aにおいて説示したとおり、当業者にとって十分に存在するものである。
そうすると、請求人の主張はいずれも採用することはできない。
エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~18に係る発明は、令和4年2月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係るものは、概略次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2009-180630号公報
引用文献6 特開2008-107289号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7 特開2001-13173号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、周知技術1は、前記第2の3(2)イ(オ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明における「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである」との限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
(2) そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)において説示したとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術2は、前記第2の3(3)イ(イ)aで示したとおり、前記「前記電圧センサー及び前記電流センサーと別個のセンサーである」との限定に係る相違点2の判断において示したものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-016062