特許拒絶査定不服審判
2022-015905
非接触動き検出方法、動き検出装置、および緊急事態検出方法
- 審判番号
- 2022-015905
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-211606
- 請求日
- 2022年10月05日
- 審決日
- 2023年10月18日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】緯創資通股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 九鬼 一慶
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .121-Z (G01S) / P18 .575-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-211606「非接触動き検出方法、動き検出装置、および緊急事態検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月11日出願公開、特開2022- 41812〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年(2020年)12月21日を出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約の例による優先権主張 2020年9月1日 台湾)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 2年12月22日 :翻訳文の提出
令和 3年11月15日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 2月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 7月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月21日付け:前置報告書
令和 5年 2月21日 :上申書の提出
第2 令和4年10月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月5日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年10月5日にされた補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前(令和4年2月24日にされた手続補正後をいう。以下同様である。)の特許請求の範囲の請求項5の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項5の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項5
「【請求項5】
反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップと、
前記生データ信号を処理して、領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップと、
第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
前記生データ信号を人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズムに従って処理して、第2の検出結果を取得するステップと、
第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
を含む、緊急事態検出方法。」
(2) 本件補正後の請求項5
「【請求項5】
周波数変調連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップと、
前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップと、
第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
前記生データ信号を人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズムに従って処理して、第2の検出結果を取得するステップと、
第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
を含む、緊急事態検出方法。」
2 本件補正の目的
本件補正による本件補正後の請求項5に係る補正は、冒頭に「周波数変調連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する」との記載を追加することにより、本件補正前の請求項5に記載された「反射無線周波数信号」について、実質的に、「周波数変調連続波レーダーにより」「領域に送信された」「検出信号」に対応するものであることを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項5に記載された発明と、本件補正後の請求項5に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項5に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)「本件補正後の請求項5」で示した記載により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2012-5745号公報(以下「引用文献1」という。)には、次に摘記する事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様である。)。
a 【請求項1】、【請求項3】
「【請求項1】
照射波と反射波の位相差を検知するドップラーセンサー(1)と、時間を計るタイマー(2)と、照射波と反射波の位相差及び時間から看護対象の動作時間、動作速度、及び看護対象の動作方向を導く検波部(3)と、看護対象の動作速度及び動作方向から看護対象の動作周期及び動作量を導く演算手段(4)と、ドップラーセンサー(1)、検波部(3)、及び演算手段(4)から得た情報から看護対象の異常を検知して報知指令を出力する信号処理部(5)と、報知指令を受けてアラームを発する報知手段(6)を備え、
信号処理部(5)は、呼吸検知手段(7)と、寝返り検知手段(8)を備え、
呼吸検知手段(7)は、安静呼吸状態を含む人の呼吸を反映した動作周期、動作量、規定時間、及び動作欠落時間を含む呼吸に関する基準情報を有すると共に、
看護対象の動作周期に基づき、基準情報に含まれた人の呼吸を反映した動作周期の範囲内であり、且つ当該動作周期がその動作周期の範囲で規定時間以上継続している看護対象の動作を呼吸候補として選択する手段と、
看護対象の呼吸候補の動作周期が安静呼吸状態の呼吸を反映した動作周期の範囲であることと、看護対象の動作量が安静呼吸状態の呼吸を反映した動作量の範囲にあることを満たすことを以って安静呼吸状態と判断する手段と、
安静呼吸状態が検出されない時間を計測し安静呼吸状態が動作欠落時間以上検出されなかった時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する手段を備え、
寝返り検知手段(8)は、
寝返りを反映した動作速度、動作周期、及び動作量、並びに、動作欠落時間、及び動作継続時間を含む寝返り時の基準情報を有すると共に、
看護対象の動作時間内に複数の動作速度、複数の動作周期、又は複数の動作量が混在していることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を呼吸以外の体動又は体位変化と判断する手段と、
看護対象の動作が前記呼吸以外の体動又は体位変化と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作速度又は動作周期が寝返りを反映した動作速度又は動作周期の範囲にあることと、看護対象の動作量が寝返りを反映した動作量の範囲にあることと、看護対象の動作時間が寝返りを反映した動作継続時間の範囲にあることの要件をみたすことを以って看護対象の動作を寝返りと判断する手段と、
寝返りが動作欠落時間以上検出されなかった時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する手段を備えることを特徴とする寝床看護システム。」
「【請求項3】
信号処理部(5)は、呼吸検知手段(7)と、寝返り検知手段(8)と、落下検知手段(9)を備え、
前記落下検知手段(9)は、
寝床からの落下を反映した動作速度、動作方向、及び動作量、並びに動作継続時間を含む落下時の基準情報を有すると共に、
看護対象の動作が前記呼吸以外の体動又は体位変化と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作量が寝返りを反映した動作量を超えることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を落下と判断する手段と、
看護対象の動作が上記落下と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作速度が寝床からの落下を反映した動作速度の範囲であることと、看護対象の動作時間が寝床からの落下を反映した動作継続時間の範囲にあることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を急落下と判断する手段と、
落下と判断された時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する手段とを備えることを特徴とする前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載の寝床看護システム。」
b 【0002】-【0006】
「【背景技術】
【0002】
従来、寝床看護システムは、褥創の予防、ベッドからの落下検知、又は呼吸の検知を目的として行われる。
寝たきり高齢者が褥創を発症すると、組織の壊死、感染症などにより、高度な治療が必要となる場合があり、これが悪化すると死に至る場合もある。
【0003】
また、施設では、ベッドからの落下事故が多く、骨折などの重篤な状態ともなる場合も発生し、骨折部位によっては、救急対応が必要な場合があるにも関らず、落下状態のまま、発見されるまで放置される場合もある。寝たきり高齢者や無呼吸症候群患者などにあっても、呼吸停止を長時間放置されることにより死に至ることから、落下や呼吸停止の早期発見は、人の命を護る上で極めて重要な問題である。
〔…中略…〕
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
褥創予防には、体位変化(寝返りを含む)が重要である。
一般的には、寝たきり高齢者の寝床上における体位変化等を検知して一定間隔以内に体位変化等が無い場合にアラームを発し、看護・介護者が寝返り介助を行なうことで褥創を予防する。
【0006】
しかしながら、施設では人手不足から、在宅では介護者の負担軽減のため、自律的に寝返りができた場合には定期的な寝返り介助を行なわず、一定時間以上寝返りがない場合などのみアラームを発し、寝返り介助を行なう方法が望ましい。
高齢者が就寝中の場合には、寝返り介助により高齢者を頻繁に起こすことになりQOLが低下するとの見方もある。従って、どの程度の頻度で寝返り介助を行なうかと同様に、誤報又は誤検知の発生が、寝返り介助を増加させ、又は怠らせる点で、介護者と被介護者双方にとって大きな問題となる。」
c 【0026】-【0029】、【図1】、【図2】
「【発明の効果】
【0026】
本発明に依る寝床看護システムによれば、照射波と反射波の位相差と時間から、ドップラーセンサーに対する遠近方向への動作速度と時間を検知すればよく、設置すべき設備も比較的簡素なものとなる。また、それらの設備から得た動作速度と時間のみから、比較的簡単な演算を以って的確な判断を導くことが可能となり、寝たきり高齢者、無呼吸症候群患者などの呼吸をモニタすることが可能となる。それによって、生命の安全を確保することができることはもとより、褥創防止し、ベッドからの落下を早期に検知して救助することにより、決め細やかな看護が可能となる。
【0027】
以下、本発明による寝床看護システムの実施の形態をベッドに寝床を設けた例に基づき図面を示しつつ説明する。
本発明による寝床看護システムは、照射波と反射波の位相差を検知するドップラーセンサー1と、時間情報を出力するタイマー2と、検波部3と、看護対象の動作速度、及び看護対象の動作方向から看護対象の動作周期、及び動作量を導く演算手段4と、検波部3、演算手段4、及びタイマー2から与えられた情報から看護対象の異常を検知して報知指令を出力する信号処理部5と、報知指令を受けてアラームを発するスピーカーや電話端末等の報知手段6から構成する(図1参照)。」
「【図1】
[図:0001408478000001.jpg]
」
「【0028】
本実施の形態では24GHz帯直交検波のドップラーセンサーを使用する。
本実施の形態におけるドップラーセンサー1は、送信部及び受信部を備える。
送信部は、正弦波(以下照射波と記す)を照射し、受信部は、それらの反射波を受信する。
【0029】
ドップラーセンサー1は、寝床の高さより上位、例えば、天井や壁面(斜め下向き)の上位等に設置し、ベッドを使用する場合にあっては、それに加えて、寝床の高さと床面との間、例えば、壁面(斜め下向き)の下位に設置すればよい。
本実施の形態では、天井における寝床中央の真上に、寝床及びその周囲を検知範囲としたドップラーセンサー1を下向きに設置する(図2参照)。」
「【図2】
[図:0001408478000002.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)で示した摘記事項を総合すると、引用文献1には、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「生命の安全を確保することができることはもとより、褥創防止し、ベッドからの落下を早期に検知して救助することにより、きめ細やかな看護が可能となる寝床看護システムであって、(【0026】)
寝床看護システムは、
照射波と反射波の位相差を検知するドップラーセンサー(1)と、時間を計るタイマー(2)と、照射波と反射波の位相差及び時間から看護対象の動作時間、動作速度、及び看護対象の動作方向を導く検波部(3)と、看護対象の動作速度及び動作方向から看護対象の動作周期及び動作量を導く演算手段(4)と、ドップラーセンサー(1)、検波部(3)、及び演算手段(4)から得た情報から看護対象の異常を検知して報知指令を出力する信号処理部(5)と、報知指令を受けてアラームを発する報知手段(6)を備えたものであり、(【請求項1】)
ドップラーセンサー(1)は、24GHz帯直交検波のものであって、送信部及び受信部を備え、送信部は、正弦波(照射波)を照射し、受信部は、それらの反射波を受信し、(【0028】)
ドップラーセンサー(1)は、寝床及びその周囲を検知範囲としたものであり、(【0029】)
信号処理部(5)は、寝返り検知手段(8)と、落下検知手段(9)を備え、(【請求項3】)
寝返り検知手段(8)は、
寝返りを反映した動作速度、動作周期、及び動作量、並びに、動作欠落時間、及び動作継続時間を含む寝返り時の基準情報を有すると共に、
看護対象の動作時間内に複数の動作速度、複数の動作周期、又は複数の動作量が混在していることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を呼吸以外の体動又は体位変化と判断する手段と、
看護対象の動作が前記呼吸以外の体動又は体位変化と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作速度又は動作周期が寝返りを反映した動作速度又は動作周期の範囲にあることと、看護対象の動作量が寝返りを反映した動作量の範囲にあることと、看護対象の動作時間が寝返りを反映した動作継続時間の範囲にあることの要件をみたすことを以って看護対象の動作を寝返りと判断する手段と、
寝返りが動作欠落時間以上検出されなかった時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する手段を備え、(【請求項1】)
前記落下検知手段(9)は、
寝床からの落下を反映した動作速度、動作方向、及び動作量、並びに動作継続時間を含む落下時の基準情報を有すると共に、
看護対象の動作が前記呼吸以外の体動又は体位変化と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作量が寝返りを反映した動作量を超えることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を落下と判断する手段と、
看護対象の動作が上記落下と判断する要件を満たすことと、看護対象の動作速度が寝床からの落下を反映した動作速度の範囲であることと、看護対象の動作時間が寝床からの落下を反映した動作継続時間の範囲にあることの要件を満たすことを以って看護対象の動作を急落下と判断する手段と、
落下と判断された時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する手段とを備える、
寝床看護システム。(【請求項3】)」
イ 引用文献9及び引用文献10の記載事項並びに周知技術の認定
(ア) 引用文献9の記載事項
当審において新たに引用する特開2016-217992号公報(以下「引用文献9」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0040】
一方、被監視者10が移動している場合の移動速度の検知を考える。これに対しては、FM-CWレーダ1は、図4に示すドップラー周波数26の影響を無視できる間隔でスイープを繰り返し、被監視者10が同一のレンジビンにいる間に蓄積した、各スイープの当該レンジビン(周波数)成分の位相の時系列から、微細な距離変動を検知し、さらに、各スイープの当該レンジビン(周波数)成分の位相の時系列を周波数解析することで、速度成分を検知する。これにより、被監視者10の移動速度が検知できる。」
「【図4】
[図:0001408478000003.jpg]
」
「【0076】
[検知対象として想定される状態や事象]
この実施の形態の状態事象識別装置1Aによって検知できる被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象として、例えば、被監視者10の寝返り(寝床上の動きの頻度や速度で検知)、部屋11内の所定位置(例えばトイレ)への移動(移動先にて検知)、転倒や転落、複数の被監視者10(例えば個々の家族構成員)のうち特定の被監視者10の識別(例えば身長や部屋11内の居住位置で識別)、部屋11内での衝突(移動方向の急激な変化や停止で検知)、座り込み(高さや移動速度の急落で検知)、咳、ぜんそく等の発作(身体特に上半身の特徴的な動作で検知)、入浴時の状態(浴室内の存否や浴槽内での高さの急減等で検知)、スリップ(高さの急減で検知)、立入禁止区域への侵入(位置情報で検知)、立ち往生(移動速度の急減等で検知)、落下物への衝突(急激な高さの減少等で検知)、体の各部の動き(位相情報の変動状況で検知)、所在(位置情報で検知)、移動経路(位置情報の履歴で検知)、通常と異なる状態やその状態にかかわる事象(履歴との照合等で検知)、等が挙げられる。」
(イ) 引用文献10の記載事項
当審において新たに引用する特表2018-531055号公報(以下「引用文献10」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0132】
本システムは、室内の2人以上の対象間を区別し、非接触センサーを用いて特定の人を特定するように、構成され得る。例えば、本システムは、動き特徴、活動特徴、心臓心弾動図特徴および/または呼吸特徴を処理し得る。このような方法は、活性RF感知システム(例えば、連続波(CW)、パルスCW、周波数変調周波数変調連続波(FMCW)、周波数シフトキーイング連続波(FSKCW)、周波数ホッピング、および超広帯域(UWB)システムへ適用され得る。(ほとんどの人間にとって)非可聴である18~22KHZの範囲の信号を用いたCW、パルスCW、FMCW、FSKCW、周波数ホッピングおよびUWBスキームを用いたソナー方法も、用いられ得る。どちらの種類のセンサーのFMCWアプローチも、多様な変調スキーム(例えば、ランプ(チャープ)信号、三角、正弦波)を用い得る。これらの処理アプローチは、単一の人を検出し、第2の人または後続の人を除外するかまたは感知フィールド内の複数の人を検出し得る。」
「【0146】
420において、システムは、収集されたデータに少なくとも部分的に基づいて、ユーザの慢性疾患または関連治療について決定を下す。このような決定は、状態の現在の重症度を検出すること、状態の悪化の危険性を検出または予測すること、当該状態に対する現在の一連の治療を決定することなどを含み得る。例えば、システムは、1つ以上のプロセッサを介して、パラメータ(例えば、決定されたおよび/または導出された生理学的および/または環境パラメータ(複数)のうち任意の1つ以上)を評価して、パラメータ(複数)のトリガパターンを(例えば1つ以上の閾値を用いたパラメータの評価によって)検出し得る。ここで、検出されたパターンはユーザの慢性疾患に関連するため、パターンは、慢性疾患の悪変または悪化に対応する1つの反応または一連の反応を開始させ得るかまたは早め得るトリガ状況を示す。このようなパターン検出は、本明細書中により詳細に説明するパラメータ分析のいずれかと共に、具現され得る。このような分析のためのパラメータは、1つ以上の生理学的パラメータに関する情報を含む受信されたセンサー信号から1つ以上のプロセッサによって導出され得る。例えば、心拍数パラメータ(例えば、心拍数変動測定)は、パルスオキシメータによってセンサー信号の処理によって生成された信号から導出され得る。同様に、心拍数パラメータおよび呼吸速度パラメータは、例えば、非接触RFモーションセンサーによって動き信号の処理によって生成されたモーション信号から導出され得る。このようなパラメータは、分析のためにリアルタイムまたはリアルタイムに近い様態で決定され得、かつ/または、データ保存部からの決定されたパラメータ値(例えば、メモリまたはデータベース中のもの)として取り出され得る。このようなセンサーは、信号(複数)および任意選択的にパラメータを周期的にまたは連続的に経時的に生成する1つ以上のモニタにおいて具現され得る。」
「【0166】
生理学的動きは、例えば浴室/トイレまたは寝室環境において分析され得、上記したモニタを用いて決定してもよい。これらのモニタは、異常なパターン(例えば、スリップおよび落下)を検出し得る。特に、RFセンサーは、空間内(例えば、センサーのフィールド内の室内)の動きの検出に適している。例えば、RFセンサーは、特性落下パターンの検出に用いられ得る。特性落下パターンが検出された場合、この検出は、落下(例えば、ベッドからの落下、浴室からの落下/トイレからの落下)を含む示すアラートをトリガし得る。モーションセンサーおよび関連付けられた感知フィールドは、ユーザが感知フィールド内において落下する(例えば、センサーのそばのベッドから落下する)可能性がより高くなるように、配置され得る。より詳細には、モーションセンサーは、大きな振幅/高速モーション信号が全般的動きを示しかつおよび対象から呼吸信号も検出されるように、配置され得る。
【0167】
落下の検出は、モーションセンサーおよび別のモニタからのデータの組み合わせに基づき得る。例えば、モーションセンサーによって検出された大きな動き(全般的動き)および呼吸信号からの振幅変化が揃った場合、落下を示し得る。閾値レベルは、双方の信号について、例えば当該ユーザまたは他のユーザの以前のデータに基づいて決定され得る。次に、測定された動きおよび/または呼吸振幅は、それぞれの閾値と比較され得る。第2の容量センサーが、特定の領域における検出を増強するために用いられ得る(例えば、短距離非接触容量センサーが、落下の可能性が最も高いベッドサイドへ配置され得、これにより、対象が落下し、このセンサーの範囲内に居る場合、落下アラートがシステムによってトリガされ得る)。
【0168】
別の例示的システムにおいて、ユーザは、通常ベッドから出る場合に感知フィールドの特定の領域を横断することが期待され得る。そのため、期待される横断が検出されていないのに、モーションセンサーが大きな動き、位置変化または呼吸/バイタルサイン(複数)の消失、このような事象(複数)を示す場合、これは、ユーザが動こうとしたが落下したことを示すものとしてみなされ得る。次に、落下検出および/またはアラートがトリガされ得る。
【0169】
モーションセンサー(複数)は、ベッド内におけるユーザの寝返りの検出にも用いられ得る。寝返りについては、動きおよび/または呼吸信号の振幅(例えば、非接触バイオモーション信号の振幅)の特性変化がある。例えば、信号のエンベロープ(例えば、ピークホールドまたはヒルバート変換アプローチを用いて推定されたもの)により、呼吸の相対振幅の推定が得られ得る。このような推定を用いて、呼吸における大きな振幅は、ユーザ胴体が監視センサーに対向している(例えば、ユーザが横向きに寝てセンサーに対向している)場合と関連付けられ得、より小さな振幅は、ユーザが仰向けに寝ている(例えば、胸部がセンサーに対して垂直である)場合と関連付けられ得、さらに小さな振幅は、ユーザがうつぶせに横向きにセンサーから顔が離れて寝ていると関連付けられ得る。このような振幅(およびその変化)は、呼吸時のユーザの胸部の動いている表面領域に関連し得、センサー(または複数のセンサーモジュールまたは複数の対象を同時に検出するセンサー)に相対するユーザの位置に基づいて変化し得る。ここでも、1つ以上の閾値レベルが、呼吸信号の振幅について、例えばユーザまたは他のユーザの以前のデータに基づいて決定され得る。次に、ユーザがベッド内の特定の位置にいる可能性を推定するために、測定された呼吸振幅と、決定された1つ以上の閾値とが比較され得る。同様に、第2のユーザまたは後続ユーザがベッド内において検出された場合、ユーザの相対的位置を推定することができる。」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す技術事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「周波数変調周波数変調連続波(FMCW)レーダーを用いて、非接触で対象者の寝返りや落下の動きを検出すること。」
ウ 引用文献2及び引用文献8の記載事項並びに周知技術の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第2016/136400号(以下「引用文献2」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「[0068] 図14は、第2実施形態の生体監視システムにおける第2判定部の構成を示す図である。この第2実施形態の第2判定部23bは、第2判定部23aと同様に、前処理部21のパワー算出部212に接続され、第1判定部22の前記第1判定処理に用いられた前記所定時間のドップラ信号を前記信号強度で正規化した正規化信号に基づいて、前記監視対象の生体OJにおける前記第1種類と異なる第2種類の第2動きの有無を判定する第2判定処理を行うものである。より具体的には、第2実施形態の第2判定部23bは、第1判定部22の前記第1判定処理に用いられた前記所定時間のドップラ信号を前記信号強度で正規化した正規化信号の多次元の特徴量に基づいて前記第2動きの有無を判定する。このような第2実施形態の第2判定部23bは、例えば、図14に示すように、正規化部231と、特徴抽出部232と、第2動き有無判定部233bとを備える。この第2実施形態の第2判定部23bにおける正規化部231は、その出力を特徴抽出部232へ出力することを除き、第1実施形態の第2判定部23aおける正規化部231と同様であるので、その説明を省略する。
[0069] 特徴抽出部232は、正規化部231に接続され、正規化部231で生成された正規化信号に基づいて、前記正規化信号の多次元の特徴量を抽出するものである。より具体的には、特徴抽出部232は、例えば、前記正規化信号のパワースペクトルを所定の周波数間隔で区切ることによって生成された複数のスロット(複数の区間)それぞれでのパワースペクトル(スロットのパワースペクトル)の平均値を前記多次元の特徴量として求める。前記多次元の特徴量は、正規化信号のプロファイル(形状)を表す複数の特徴量であり、前記スロットのパワースペクトルにおける平均値の他、前記スロットのパワースペクトルにおける最大値、中心値および最小値等である。前記所定の周波数間隔(1つのスロットの範囲)は、例えば、前記正規化信号のパワースペクトル全体に亘って一定であって良く(等間隔)、あるいは、不定であって良い(不等間隔)。また例えば、前記所定の周波数間隔は、例えば所定の周波数閾値より低周波数側を第1間隔とすると共に前記周波数閾値より高周波数側を前記第1間隔より広い第2間隔とする等の、周波数に応じて可変としても良い。特に、呼吸等に起因するドップラ信号は、上述したように、約1Hz以下の低周波数範囲にパワーが偏るため、約1Hz以下の低周波数側の第1間隔を、約1Hzを超える高周波数側の第2間隔よりも狭く(細かく)しても良い。
[0070] 第2動き有無判定部233bは、特徴抽出部232に接続され、特徴抽出部232で抽出された前記正規化信号の多次元の特徴量に基づいて前記第2動きの有無を判定するものである。図9Bと図13Bとを対比すると分かるように、第2の動きの一例としての呼吸信号における周波数空間のドップラ信号(パワースペクトル)のプロファイルは、外乱信号における周波数空間のドップラ信号(パワースペクトル)のプロファイルと異なるため、第2動き有無判定部233bは、前記多次元の特徴量を用いることで、第2の動きの一例としての呼吸信号の有無を判定できる。より具体的には、第2動き有無判定部233bは、公知の、学習による認識技術を用いて構成される。この認識技術として、例えば、最近傍決定則(NN法)、ニューラルネットワークおよびSVM(Support Vector Machine)が挙げられる。学習には、体動信号、呼吸信号、センサノイズ信号および外乱信号の教師データ(正解データ)が用いられる。またより高精度な判定が可能となるため、これら各信号の教師データにさらに加えて、外乱がある状態での呼吸信号が教師データとして用いられることが好ましい。」
(イ) 引用文献8の記載事項
当審において新たに引用する前置報告書で引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2020-71226号公報(令和2年(2020年)5月7日発行。以下「引用文献8」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0021】
本実施例では、予め設置されたマイクロ波レーダにより検出対象(人間)に例えば周波数変調連続波(Frequency-Modulated Continuous Wave:FMCW)などのマイクロ波信号を送信してもよい。該マイクロ波信号が環境内の障害物及び該検出対象により反射された後に反射信号が得られ、該反射信号がマイクロ波レーダにより再度受信される。図2は該マイクロ波レーダによる信号の送受信を示す図である。図2に示すように、該マイクロ波レーダは、マイクロ波信号Aを送信し、反射された後の反射信号Bを受信する。マルチアンテナ技術を用いる場合、該マイクロ波信号Aは、異なる送信アンテナにより送信された異なるマイクロ波信号であってもよい。マイクロ波信号Aと反射信号Bとは周波数及び位相が変化したため、該マイクロ波信号A及び反射信号Bに基づいて検出対象に属するレーダ反射点情報を取得することができ、以下は該マイクロ波レーダにより得られた1回の測定結果を1つのフレームのレーダ反射点情報とする。」
「【0024】
本実施例では、図2に示すように、転倒時に、検出対象が直立状態から横になる状態に短時間で変化し、この時に、検出対象のマイクロ波信号に対する反射面が徐々に小さくなり、高さが低くなり、視線方向速度が増加し、X-Y平面上の軌跡が略直線状の形状となる。よって、該レーダ反射点情報を用いて、レーダ反射面の反射点の数又は反射信号強度の関連特徴、レーダ反射点の高さの関連特徴、レーダ反射点の速度の関連特徴、及びレーダ反射面の反射点軌跡の関連特徴のうち少なくとも2つの特徴値を計算し、少なくとも2つの特徴値に基づいて転倒検出を行ってもよい。」
「【0039】
ステップ403において、第1特徴値及び第2特徴値が算出された後に、該第1特徴値及び第2特徴値に基づいて、該検出対象が転倒したか否かを決定してもよい。1つの態様では、該第1特徴値及び第2特徴値と、各特徴値に対応する転倒判定閾値範囲とを比較し、比較結果に基づいて転倒の有無を決定する。ここで、転倒訓練反射点情報を予め取得し、機械学習アルゴリズムを用いて該転倒判定閾値範囲を取得してもよい。例えば、各特徴と対応する転倒判定閾値範囲との比較結果を統合し、最終的な判定結果を取得してもよい。具体的には、合計F個の特徴(Fは2以上である)を比較し、F個の特徴のうちL個の特徴の比較結果が転倒である場合、最終的な判定結果が転倒であると判定し、LとFとの比率は需要に応じて決定されてもよい。或いは、各特徴の比較結果について重み付け係数を設定し、転倒と非転倒について重み付け合計をそれぞれ算出し、転倒と非転倒との重み付け合計を比較し、値の大きい結果を最終的な検出結果としてもよい。本実施例はこれらの態様に限定されない。1つの態様では、転倒訓練反射点情報を予め取得し、機械学習アルゴリズムを用いて反射点情報に対してラベル付けを行い(付けられるラベルは転倒又は非転倒である)、転倒判定用のニューラルネットワークを形成し、ステップ403において算出された第1特徴値及び第2特徴値を該訓練されたニューラルネットワークに入力し、ラベル付けの結果を取得してもよい。該機械学習アルゴリズムは、サポートベクタマシン(SVM)又はランダムフォレスト等のアルゴリズムであってもよく、詳細は従来技術を参照してもよく、ここでその説明を省略する。」
(ウ) 周知技術2の認定
前記(ア)及び(イ)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す技術事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術2」という。)。
[周知技術2]
「機械学習したニューラルネットワークを用いて、非接触で検出した測定データを処理して特徴量の抽出等を行ってから人の動きを判定すること。」
エ 引用文献4の記載事項及び技術事項の認定
(ア) 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2016-177354号公報(以下「引用文献4」という。)には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0040】
(転倒監視)
転倒監視とは、上記制御部18の転倒監視部183が、加速度センサ11の出力に基づき、ユーザ(異常検出端末100の装着者)の転倒を自動検出し、転倒事故の発生を通報する機能である。」
「【0082】
(自動取消判定(体動検出))
次に、上述のように転倒が検出された後に当該検出を自動的に取り消す処理について説明する。
【0083】
転倒監視部183は、転倒を検出した場合、その後にユーザに動きがあれば、ユーザは危険な状態ではないと考えられるため、転倒検出を自動的に取り消す。」
【0084】
すなわち、転倒監視部183は、転倒を検出した時点(またはピーク時点)から、取消判定時間(例えば15秒)の間のユーザの動き(体動)の有無を、加速度のピークまたは変化量の観測によって判定する。なお、この場合、転倒監視部183は、転倒検出直後の所定の遅延時間(例えば3秒間)のユーザの動きは、転倒に伴う動きとして無視する。
【0085】
具体的には、転倒監視部183は、例えば以下の1)~4)の場合に転倒の検出を取り消す。自動取消判定には、以下の取り消し条件のいずれか1つを用いてもよく、また、複数条件を用いていずれかを満たす場合に転倒検出を取り消すようにしてもよい。
1)一定以上(例えば12m/s2)のピーク値が所定回数検出されたとき
2)上記ピーク値の合計が所定値を超えたとき
3)加速度変化量を積算した合計値が一定値を超えたとき
4)単位時間当たりの加速度変化量が一定値を超えたとき
【0086】
一方、転倒検出後、上記取消判定時間が経過するまでに、ユーザの体動が検出されていない場合には、転倒監視部183は、転倒異常を確定する。」
「【0094】
図7は、転倒監視部183による転倒監視処理の流れを示したフローチャートである。
〔…中略…〕
【0099】
転倒監視部183は、上記取消時間内に体動が検出されたと判断した場合(ステップ74のYes)、転倒の検出を一旦取り消した上で(ステップ77)、ユーザに日常レベルの体動が検出される否かについて、経過監視処理を実行する(ステップ78)。
【0100】
当該体動の検出方法は、上記生活監視部181による検出方法と同様である。ただし、ここで体動の不検出を判定する時間(静止状態の継続時間)は、上記生活監視における判定時間(例えば1時間)より短い時間(例えば15分)とされる。すなわち、この経過監視処理は、体動の不検出の継続に関する判定時間を短縮した生活監視処理を実行するものである。なお、経過監視処理における体動の検出方法は、生活監視処理とは異なり、上述した転倒監視部183の自動取消判定における体動検出と同じ方法としてもよい。」
「【図7】
[図:0001408478000004.jpg]
」
(イ) 引用文献4技術事項の認定
前記(ア)で示した摘記事項を総合すると、引用文献4には、次に示す技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献4技術事項]
「ユーザの転倒を自動検出し、転倒事故の発生を通報する転倒監視方法であって、(【0040】、【0100】)
転倒を検出した場合、その後にユーザに動きがあれば、ユーザは危険な状態ではないと考えられるため、転倒検出を自動的に取り消し、(【0083】)
転倒検出後、取消判定時間が経過するまでに、ユーザの体動が検出されていない場合には、転倒異常を確定すること。(【0086】)」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a(a) 本件補正発明は「緊急事態検出方法」の発明であるところ、本件補正発明における「緊急事態」という用語の意味を把握するために本願の明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると、明細書の段落【0002】及び【0037】には次の記載がある。
「【0002】
既存の動き検出技術では、検出対象(例えば、高齢者、患者または子供)が落下したか、滑り落ちたか、または衝突したかを、検出対象の速い動きに基づく動き検出技術によって決定することができるため、それに応じてアラームを検出対象の介護者に通報することができる。したがって、緊急事態の認識率をどのように向上させるかは、当業者の研究テーマの1つである。」
「【0037】
本発明の非接触動き検出方法、動き検出装置、および緊急事態検出方法は、検出対象が危険であるかどうかを検出し、正しいアラームを提供するために適用することができる。」
(b) 前記(a)に摘記した明細書の発明の詳細な説明の記載を踏まえると、本件補正発明における「緊急事態」という用語が示す意味の範囲には、検出対象者の状態がアラームを報知すべきほどに差し迫った状態であることが含まれると解釈するのが相当である。
b(a) 引用発明の「寝床看護システム」は、「生命の安全を確保することができることはもとより、褥創防止し、ベッドからの落下を早期に検知して救助する」ものである。
(b) したがって、前記a(b)の「緊急事態」という用語の意味についての検討結果を踏まえると、引用発明の「寝床看護システム」は、「緊急事態検出方法」を含むといえる。
c したがって、「緊急事態検出方法」の発明である本件補正発明と、「生命の安全を確保することができることはもとより、褥創防止し、ベッドからの落下を早期に検知して救助することにより、きめ細やかな看護が可能となる寝床看護システム」の発明である引用発明は、「緊急事態検出方法」の発明である点において一致する。
(イ)a 引用発明における「正弦波(照射波)」を照射する「ドップラーセンサー(1)」と本件補正発明における「周波数変調連続波レーダー」は、「連続波レーダー」である点において共通する。
b 引用発明における「正弦波(照射波)」は、本件補正発明における「検出信号」に相当し、引用発明における「検知範囲」は、本件補正発明における「領域」に相当する。したがって、引用発明において、「正弦波(照射波)」を「検知範囲」に「照射」することは、本件補正発明において「検出信号」を「領域」に「送信」することに相当する。
c 引用発明における「ドップラーセンサー(1)は、24GHz帯直交検波のものであり」、「反射波を受信[する]」から、引用発明における「ドップラーセンサー(1)」は、「反射無線周波数信号を受信する」ものであるといえる。
d 引用発明の「ドップラーセンサー(1)」は、「照射波と反射波の位相差を検知する」ものであり、この「位相差」の「検知」に際しては、反射波に対して「信号処理」が行われて、その結果として、測定データを得ていることは明らかである。ここで「測定データ」は、本件補正発明の「生データ」に相当する。
したがって、前記b及びcの検討結果も踏まえると、引用発明の「ドップラーセンサー(1)」は、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するものであるといえる。
e 前記aからdまでの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップ」を含む点。
(ウ)a 引用発明において、「寝床看護システム」の「検波部(3)」が、「看護対象の動作時間、動作速度、及び看護対象の動作方向を導く」に際して「照射波と反射波の位相差及び時間から」「導く」ためには、前記(イ)dで得た測定データ(本件補正発明の「生データ」に相当する。)を処理することが必要なことは自明である。
したがって、引用発明は、(イ)dの検討結果も踏まえると、前記生データ信号を処理しているといえる。
b(a) 本件補正発明に現れる「エネルギー応答」という用語の意味を把握するために本願の明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると、明細書の段落【0012】、【0013】及び【0035】には、次に摘記する事項が記載されている。
「【0012】
ステップS140において、プロセッサ220は、生データ信号SRDのエネルギー値が連続的に第1のプリセットエネルギー値未満であることに対応する第1の持続時間長を計算する。ステップS150において、第1の持続時間長が第1のプリセット時間長以上であることに応答して、プロセッサ220は、第1のイベントが領域内で起こったと判定する。第1の持続時間長TL1(生データ信号SRDのエネルギー値が連続的に第1のプリセットエネルギー値未満であることによって生成される)が第1のプリセット時間長以上である場合、プロセッサ220は、第1のイベントEV1が領域DR内で起こったと判定する。第1のイベントEV1は、領域DR内において速い動きが第1のプリセット時間内に発生しないイベントである。ステップS150において、プロセッサ220は、第1のイベントEV1に対応する第1のアラームALM1を提供する。
【0013】
例えば、第1のプリセットエネルギー値は35単位、例えば35ワットである(ただし、本発明はそれに限定されない)。第1のプリセット時間長は、たとえば30分である。30分は睡眠中に手足が動く期間より長いかそれに等しい。第1のプリセット時間長は、実際の適用状況に応じて調整することができ、本発明における第1のプリセット時間長は、上記に限定されない。ステップS130において、プロセッサ220は、生データ信号SRDのエネルギー値が35ワット以下であるかを決定する。生データ信号SRDのエネルギー値が35ワット以下である場合、プロセッサ220は、生データ信号SRDのエネルギー値が35ワット以下である間の持続時間を計時して第1の持続時間長TL1を生成する。生データ信号SRDのエネルギー値が35ワットより大きい場合、プロセッサ220は、第1の持続時間長TL1をリセットする。他方、第1の持続時間長TL1が30分以上であると決定されると、プロセッサ220は、第1のイベントEV1が領域DR内で発生したと判定する。第1のイベントEV1は、領域DR内において30分以内に速い動きが発生しないことを意味する。言い換えれば、第1のイベントEV1は、領域DR内において歩行、睡眠中の寝返りなどの動き、またはその他の物理的な動きが30分以上ないことを意味する。その結果、プロセッサ220は、第1のアラームALM1を提供する。」
「【0035】
本発明の一実施形態は、緊急事態検出方法をさらに開示する。この緊急事態検出方法は、図1~図3に示す動き検知装置10、20、30に適用することができる。この緊急事態検出方法は、反射無線周波数信号(図1~図3に示される反射信号SR)を受信し、その反射無線周波数信号を処理して生データ信号(図1~図3に示される生データ信号SRD)を取得するステップ、その生データ信号を処理して、領域に対応するエネルギー応答を取得し、そのエネルギー応答に従って第1の検出結果を決定するステップ、第1のイベント(例えば、図2に示される第1のイベントEV1)に合致するエネルギー応答に応じて、第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを判定するステップ、動き検出アルゴリズムに従って生データ信号を処理して第2の検出結果を取得し、異常な動き(例えば、落下、滑り落ち、衝突、または図2に示される第2のイベントEV2)と合致する第2の検出結果に応答して、第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップを含む。たとえば、緊急事態は、(1)第1のプリセット期間にわたって速い動きが発生しない事態、または(2)第1の動きの発生後、第2のプリセット期間にわたって速い動きが発生しない事態である。」
(b) 物理量の「エネルギー」は、ジュール(J)の単位に相当する次元を有する物理量である。しかし、本願の明細書の段落【0013】においては、「例えば、第1のプリセットエネルギー値は35単位、例えば35ワットである」と記載されているから、本件補正発明における「エネルギー」という用語は、通常の意味における、物理量である「エネルギー」の意味ではないことは、明らかである。
(c) 段落【0012】には、「ステップS140において、プロセッサ220は、生データ信号SRDのエネルギー値が連続的に第1のプリセットエネルギー値未満であることに対応する第1の持続時間長を計算する。ステップS150において、第1の持続時間長が第1のプリセット時間長以上であることに応答して、プロセッサ220は、第1のイベントが領域内で起こったと判定する。第1の持続時間長TL1(生データ信号SRDのエネルギー値が連続的に第1のプリセットエネルギー値未満であることによって生成される)が第1のプリセット時間長以上である場合、プロセッサ220は、第1のイベントEV1が領域DR内で起こったと判定する。」と記載されている。
そして、段落【0012】においては、上記記載された事項の意味として、「第1のイベントEV1は、領域DR内において速い動きが第1のプリセット時間内に発生しないイベントである。」と記載されている。
さらに、段落【0011】には、「領域DR内の検出対象U(例えば、高齢者、患者、子供または介護者)の速い動きまたは速い動作(たとえば、歩行、落下、転落、滑り落ち、寝返り)」との記載もある。
そうすると、本件補正発明における「エネルギー」とは、患者や介護者の寝返りの動作の程度の「速い動き」を検出するのに役立つ計測量であればよいことが理解できる。
(d) 前記(c)の検討結果を踏まえると、引用発明においては、「看護対象」の「動作速度」及び「動作量」を用いて「看護対象」の「動作」を「寝返り」と判断しているから、「動作速度」及び「動作量」は、「エネルギー応答」であるといえる。
(e) そして、「動作速度」及び「動作量」は、「検知範囲」のものに対応するから、前記aの検討結果も踏まえると、引用発明は、「前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得している」といえる。
c 前記bの検討結果も踏まえると、引用発明において、「動作速度」及び「動作量」を用いて「寝返りが」「検出されなかった」と判断することは、本件補正発明において、「前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定する[こと]」に相当する。
d 前記b及びcの検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップ」を備える点。
(エ)a 引用発明において、「寝返りが動作欠落時間以上検出されな[いこと]」は、本件補正発明の「第1のイベント」に相当する。
b 引用発明においては、「寝返りが動作欠落時間以上検出されなかった時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する」から、前記(ア)a(b)で示した「緊急事態」という用語の検討結果及び前記(ウ)の検討結果も踏まえると、引用発明は、第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するものであるといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップ」を備える点。
(オ)a 引用発明における「落下」又は「急落下」があったことを判断するための「動作速度」及び「動作量」は、本件補正発明における「第2の検出結果」に相当する。
b 前記(イ)dにおける検討と同様に、引用発明において「動作速度」及び「動作量」は、生データ信号を処理して取得していることは、明らかである。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記生データ信号を処理して、第2の検出結果を取得するステップ」を備える点。
(カ)a 引用発明における「落下」及び「急落下」は、本件補正発明における「第1の動き」に相当する。
b 引用発明は、「動作速度」及び「動作量」を用いて「落下と判断された時に報知手段(6)に対しアラームの発生を要求する報知指令を出力する」から、前記(オ)及び(ア)a(b)で示した「緊急事態」という用語の検討結果も踏まえると、引用発明は、「第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定する」ものであるといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップ」を備える点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記の(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップと、
前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップと、
第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
前記生データ信号を処理して、第2の検出結果を取得するステップと、
第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
を含む、緊急事態検出方法」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
連続波レーダーが、
本件補正発明においては、「周波数変調連続波レーダー」であるのに対して、
引用発明においては、ドップラーレーダーである点。
b 相違点2
「第2の検出結果を取得するステップ」について、
本件補正発明においては、「前記生データ信号を人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズムに従って処理[する]」ことが限定されているのに対して、
引用発明においては、「人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズム」を用いていない点。
(4) 相違点についての判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
「周波数変調周波数変調連続波(FMCW)レーダーを用いて、非接触で対象者の寝返りや落下の動きを検出すること」は周知技術(前記「周知技術1」参照)であるから、引用発明の「ドップラーセンサー(1)」において、当該周知技術である「周波数変調周波数変調連続波(FMCW)レーダー」を適用することは、当業者が適宜選択できる設計変更にすぎない。
イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
「機械学習したニューラルネットワークを用いて、非接触で検出した測定データを処理して特徴量の抽出等を行ってから人の動きを判定すること」は、周知技術(前記「周知技術2」参照)であるから、引用発明における「落下」又は「急落下」があったことを判断するに際して、当該周知の技術を適用して当該相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。
ウ 総合評価
前記a及びbにおいて検討したとおり、相違点1及び2はいずれも当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないから、引用発明において相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 第2のプリセット期間について
(ア) なお、「第2のプリセット期間」を用いることは、本件補正発明に対応する、特許請求の範囲の請求項5の記載として特定される技術事項ではないが、前記(3)ウb(a)で摘記した発明の詳細な説明の段落【0035】の「緊急事態は、〔…中略…〕(2)第1の動きの発生後、第2のプリセット期間にわたって速い動きが発生しない事態である」との記載を参酌し、本件補正発明の「第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップ」において「決定」を行う判断基準として、「第2のプリセット期間」を用いて決定を行うという技術事項が更に含まれると限定解釈したとしても、次の(イ)に示すとおり、当該技術事項に係る構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献4記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)a 引用文献1と引用文献4は、ともに対象者の動きの異常を報知する技術に関するものであるところ、引用文献4には次に示す技術事項(前記「引用文献4技術事項」参照)が記載されている。
「ユーザの転倒を自動検出し、転倒事故の発生を通報する転倒監視方法であって、
転倒を検出した場合、その後にユーザに動きがあれば、ユーザは危険な状態ではないと考えられるため、転倒検出を自動的に取り消し、
転倒検出後、取消判定時間が経過するまでに、ユーザの体動が検出されていない場合には、転倒異常を確定すること。」
b そして、引用文献1の段落【0006】には次に摘記する事項が記載されており、誤報又は誤検知の発生が大きな問題であるから、検知対象の人の動きがどんなものであれ、誤報又は誤検知の発生を抑制すべきであることは、自明の課題である。
「【0006】
しかしながら、施設では人手不足から、在宅では介護者の負担軽減のため、自律的に寝返りができた場合には定期的な寝返り介助を行なわず、一定時間以上寝返りがない場合などのみアラームを発し、寝返り介助を行なう方法が望ましい。
高齢者が就寝中の場合には、寝返り介助により高齢者を頻繁に起こすことになりQOLが低下するとの見方もある。従って、どの程度の頻度で寝返り介助を行なうかと同様に、誤報又は誤検知の発生が、寝返り介助を増加させ、又は怠らせる点で、介護者と被介護者双方にとって大きな問題となる。」
c してみれば、引用発明が「落下」又は「急落下」があったことを判断するものであり、引用文献4技術事項が「転倒」があったことを判断するものであるという、人の動きについて判断対象となる現象は異なるものの、共に対象者の動きの異常を報知する技術であるという観点では共通するものであり、より確度を高めて誤報又は誤検知の発生を抑制するために、引用文献4技術事項である、「人の動きに伴う異常を検出した後に、取消判定時間(前記技術事項の「第2のプリセット期間」に相当)の間におけるユーザの動き(体動)の有無に応じて、異常を確定するか又は取り消すかを決定するという手法」を、引用発明に適用することは、当業者が適宜選択できる自明の設計事項にすぎない。
(5) 請求人の主張について
ア 請求人の主張1の内容
請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。
本願の補正後の請求項5に係る発明の緊急事態検出方法は、次の(ア)の「本願の補正後の請求項5に係る発明の要旨」に示すとおり、a-eの事項を要旨とするものであり、後記(イ)の「発明の効果」に示す有利な効果を奏するから、引用例1-6に基づいて当業者が容易に想到できたものではなく、進歩性を有している。
(ア) 本願の補正後の請求項5に係る発明の要旨
a 周波数変調連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップと、
b 前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップと、
c 第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
d 前記生データ信号を人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズムに従って処理して、第2の検出結果を取得するステップと、
e 第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
を含むこと。
(イ) 発明の効果
補正後の請求項5に係る発明の周波数変調連続波(FMCW)レーダーは、周波数変調した連続波を送信し、送信波と反射波の周波数差(ビート周波数)から距離と相対速度を求めるFMCW方式で、動いている対象については、送信する周波数を増加させながら測定したビート周波数と、減少させながら測定したビート周波数の両方を解析することで、距離と相対速度を求める。
引用例1-3のドップラーセンサは、ドップラー効果による周波数の変移を観察することで、対象の相対的な移動速度と変位量を検出するドップラー方式である。送信する周波数は一定で、距離の測定はできない。
イ 請求人の主張1に対する判断
前記(4)アの「相違点1について」において示したとおり、「周波数変調周波数変調連続波(FMCW)レーダーを用いて、非接触で対象者の寝返りや落下の動きを検出すること」は、周知の技術であり、引用発明の「ドップラーセンサー(1)」にかえて「周波数変調周波数変調連続波(FMCW)レーダー」を適用することは、当業者が適宜選択できる設計変更にすぎないから、請求人の主張1は採用できない。
(6) 令和5年2月21日に提出された上申書の補正案について
ア 請求人は前記上申書において、次のような補正案を示し、当該補正案の請求項5に係る発明は当業者が容易になし得たものではないと主張している。
[補正案]
「[請求項5]
周波数変調連続波レーダーにより、検出信号を領域に送信し、前記領域に対応する反射無線周波数信号を受信し、前記反射無線周波数信号を処理して生データ信号を取得するステップと、
前記生データ信号を処理して、前記領域に対応するエネルギー応答を取得し、前記エネルギー応答に基づいて第1の検出結果を決定するステップと、
第1のイベントと合致する前記エネルギー応答に応答して、前記第1の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
前記生データ信号を人工ニューラルネットワークによってトレーニングされる動き検出アルゴリズムに従って処理して、第2の検出結果を取得するステップと、
第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属するかどうかを決定するステップと、
を含み、
前記第2の検出結果が前記緊急事態に属するかどうかを決定するステップが、
前記第1の動きと合致する前記第2の検出結果に応答して、前記生データ信号のエネルギー値が連続的に第2のプリセットエネルギー値未満であることに対応する第2の持続時間長を計算するステップと、
前記第2の持続時間長が第2のプリセット時間長以上であることに応答して、前記第2の検出結果が緊急事態に属することを決定するステップと、
前記第1の動きと合致する前記第2の検出結果の場合、前記生データ信号のエネルギー値が連続的に第2のプリセットエネルギー値以上である時間長を計時して第3の持続時間長を生成するステップと、
前記第3の持続時間長が第3のプリセット時間長未満である場合、前記第3の持続時間長をリセットし、前記第2の持続時間長の計算を続行するステップと、
前記第1の動きと合致する前記第2の検出結果の場合、前記第3の持続時間長が第3のプリセット時間長以上になった時には、前記第3の持続時間長及び前記第2の持続時間長をリセットし、次の検出信号を前記領域に送信するステップと、
を含む、緊急事態検出方法。」
イ 上申書で示す補正案についての合議体の対応
上申書で示す補正案(以下「補正案」という。)の請求項5に係る発明は、令和4年2月24日にされた手続補正書(令和4年6月23日付けの原査定の対象となったもの)における請求項5に係る発明との間で、解決しようとする課題が同一ではなく、補正の要件を満たすものではない。
また、補正案においては、寝返りと落下の検出に限定する記載はないから、先行技術調査をやり直すことなく直ちに特許性があると評価できるものではなく、補正案は軽微な補正であるとはいえない。
これらの理由を総合的に勘案して、合議体は、補正案の請求項5を新たな審理対象として受け入れないこととした。
(7) 本件補正についてのむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1-5に係る発明は、令和4年2月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由2は、次のとおりである。
理由2(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2012-5745号公報
引用文献2:国際公開第2016/136400号
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ア)に示したとおりの摘記事項が記載されており、また、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
引用文献2には、前記第2の3(2)ウ(ア)に示したとおりの摘記事項が記載されており、また、周知技術2は、前記第2の3(2)ウ(ウ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、「反射無線周波数信号」について、実質的に、「周波数変調連続波レーダーにより」「領域に送信された」「検出信号」に対応するものである、という本件補正発明における限定を省いたものである(前記第2の2「本件補正の目的」参照)。
そうすると、前記第2の3(3)の対比の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の相違点は、前記第2の3(3)イ(イ)bに示した相違点2と同一であり、本願発明と引用発明は、前記第2の3(3)イ(ア)に示した一致点において一致すると認められる。
そして、前記第2の3(4)イにおいて検討したとおり、相違点2は、引用発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、前記第2の3(4)ウの結論のとおり引用発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015905