特許拒絶査定不服審判
2022-015486
反射率可変ミラー
- 審判番号
- 2022-015486
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-171165外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月29日
- 審決日
- 2023年09月08日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】渡部 崇
- 分類
- P18 .121-Z (G02F) / P18 .537-Z (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-171165「反射率可変ミラー」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021- 2071〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月22日(優先権主張 2016年12月23日、韓国)を国際出願日とする特願2019-518386号の一部を令和2年10月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 2年10月12日 :手続補正書の提出
令和 3年12月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 3月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 5月19日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年 9月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 3月 3日 :上申書の提出
第2 令和4年9月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「液晶および異方性染料を含むゲストホスト液晶層を有する第1液晶セル、
一方向に形成された第1反射軸を有する第1反射型偏光フィルム、
線偏光の振動方向を90度回転させる位相差モードと非位相差モードを切り替える位相差可変液晶層を有する第2液晶セル.
前記第1反射軸と平行な第2反射軸を有する第2反射型偏光フィルムおよび
吸収板を順に含む、反射率可変ミラーであって、
前記反射率可変ミラーは、電圧が印加されているか否かに応じて鏡モードと反射防止モードとを切り替え、
前記反射率可変ミラーは、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々に電圧が印加されていない状態において前記第1液晶セルが垂直配向状態にあり前記第2液晶セルが前記位相差モードにあるときに前記鏡モードを具現し、
前記反射率可変ミラーの前記鏡モードと前記反射防止モードとの間の反射率差は、50%以上であり、
前記反射率は、正反射光を含む前面光反射率であり、前記前面光反射率は、前面光入射光量を100%にした場合の数値であり、
前記第2液晶セルは、90度TNモード液晶セルであり、
前記第2反射軸は、前記第2液晶セルの前記第2反射型偏光フィルムの側の配向方向と直交し、
前記第2反射型偏光フィルムは第2反射軸と直交する第2透過軸を有し、前記第2反射軸と第2透過軸は水平方向に形成され、
前記ゲストホスト液晶層の前記異方性染料の含量は1.0重量%以下である、反射率可変ミラー。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は、次のとおりである。
「液晶および異方性染料を含むゲストホスト液晶層を有する第1液晶セル、
一方向に形成された第1反射軸を有する第1反射型偏光フィルム、
線偏光の振動方向を90度回転させる位相差モードと非位相差モードを切り替える位相差可変液晶層を有する第2液晶セル.
前記第1反射軸と平行な第2反射軸を有する第2反射型偏光フィルムおよび
吸収板を順に含む、反射率可変ミラーであって、
前記反射率可変ミラーは、電圧が印加されているか否かに応じて鏡モードと反射防止モードとを切り替え、
前記反射率可変ミラーは、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々に電圧が印加されていない状態において前記第1液晶セルが垂直配向状態にあり前記第2液晶セルが前記位相差モードにあるときに前記鏡モードを具現し、
前記反射率可変ミラーの前記鏡モードと前記反射防止モードとの間の反射率差は、50%以上であり、
前記反射率は、正反射光を含む前面光反射率であり、前記前面光反射率は、前面光入射光量を100%にした場合の数値であり、
前記第2液晶セルは、90度TNモード液晶セルであり、
前記第2反射軸は、前記第2液晶セルの前記第2反射型偏光フィルムの側の配向方向と直交し、
前記第2反射型偏光フィルムは第2反射軸と直交する第2透過軸を有し、前記第2反射軸と第2透過軸は水平方向に形成された、反射率可変ミラー。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ゲストホスト液晶層」の「異方性染料」について、「含量は1.0重量%以下である」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2015-511329号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、窓、サンバイザ、ヘルメット、携帯電話、及び様々な他のアプリケーションに使用するための様々な反射偏光子、吸収偏光子、及び偏極回転子構成を使用する電子的調光可能反射又は透過光学装置に関する。」
「【0026】
また、本明細書で企図されるのは、上述のような反射装置又はミラーであるが、加えて、装置又はミラーの非可視側に置かれたディスプレイを有する反射装置又はミラーであり、ディスプレイから放射された光の少なくとも一部が光学装置の可視面(viewing surface)まで透過されるように構成される。
【0027】
上述の装置のいずれも、最大反射率状態にあるときに装入射光の50%超を反射することができるように構成される。いくつかの例では、装置の反射率は、その最大反射率状態にあるときには60%、70%、80%、又は90%より大きい。
【0028】
装置はまた、その最大及び最小反射状態間の振幅(又はコントラスト)が50%より大きくなるように構成することができる。いくつかの例では、振幅又はコントラストは60%、70%、又は80%より大きい。装置はまた、その最小反射率状態にあるときに、入射光の30%、20%、又は10%未満又はそれらの間の任意の%を反射するように構成することができる。」
「【0057】
本発明による反射装置のいくつかの実施形態では、装置は、入射光のほぼ100%(V=0、すなわちミラーが「明」である場合)から入射光のほぼ0%(Vmaxが印加されたとき、すなわちミラーが「暗」である場合)まで反射する能力を有することになる。したがって、最大反射状態と最小反射状態間の反射率振幅(又はコントラスト)は、50%超に設定されることができる。これは、ミラーがその最大反射率状態にある場合に入射光の50%超を反射することができるからである。この効果は、通常の偏光子がミラーと共に使用される場合(いくつかの従来技術の装置と同様に)、偏光子が入射光の50%を効果的に吸収し、したがって常に入射光の50%未満が反射されるので、達成可能ではない。」
「【0076】
用語「x」及び「y」方向偏極は、任意であり、互いに直角である光の第1及び第2の直交又は円偏極方向を指す。「x」及び「y」方向偏極は、本発明の説明を簡単にするためにだけ、例えば「第1」及び「第2」偏極方向と呼ぶ代わりに使用され、方向のいかなる固定された値も指さない。
(当審注:「第1及び及び第2の直交」は、「第1及び第2の直交」の明らかな誤記であるため、誤記を正して摘記した。)
・・・(中略)・・・
【0078】
通常、用語「偏極」は入射光の電界の振動方向を指す。線偏極、円偏極、非偏極間の差異は、どのように偏極の一意的表現が判断されるかにある。特に、線偏極システムでは、振動は単一軸方向x又はyに発生する。円偏極では、振動は、円又は楕円を描きながら時間又は空間において回転する。未偏光では、振動方向を一意的に定義することができない。未偏光は、(i)等量の両直交偏極が存在し、(ii)偏極の方向が常にランダムであり定義することができない光とみなされる。」
「【0083】
本明細書に記載の装置では、二色性染料分子(dichroic dye molecule)がネマチック(nematic)又はキラルネマチック(chiral nematic)液晶(LC:liquid crystal)層中に溶解されるゲストホストシステムを使用することにより、切り替え可能偏光子を提供することができる。染料分子(ゲスト)はLC分子(ホスト)の有無により配向される。層に電界を印加することでLC分子を再配向し、染料分子はこの再配向に従う。このようなスタックは、1つの偏極の光を吸収し、又は透明であるかのいずれかである。この目的のために混合液晶に添加することができる好適な染料は当該技術領域で知られている。1つの偏波の他に対する優先的吸収の程度は印加電圧に依存する。
【0084】
本発明の吸収偏光子は、その偏極/吸収特性を外部電界(電圧)の印加により変えることができるという点で能動的であると考えられる。さらに、この能動偏光子は、ホメオトロピック整合セル(homeotropically aligned cell)内の正の二色性染料と合成される負の誘電体異方性ホストを含むゲストホスト液晶システム又はセルに基づく。または、正の誘電体異方性ホストは、プレーナ整合セル(planar aligned cell)内で正の二色性染料と共に使用することができる。自動車において使用されるものなどの自動調光反射装置については、ホメオトロピックベースのシステムが電圧オフ状態においてほぼ100%反射率を与えるのにより適している。液晶セルは、電圧の印加がセルを通る光の透過の変化となるように設計される。より具体的には、電圧の印加は、1つの偏波の吸収を他のものより多く、優先的に増加するだろう。優先的に吸収された偏波の軸は能動偏光子の吸収軸に一致する。
【0085】
媒体中を伝播するにつれて入射光の偏極を回転する「偏極回転子膜」又は層は、ツイストネマチック(TN:twisted nematic)ベースの装置、又は電子的制御複屈折(ECB:electronically controlled birefringenceとして広く分類された)ベースの装置において使用されるようなより波長選択性である装置などの広帯域回転子装置(broad band rotator device)である可能性がある。この膜はその性能が印加電圧に依存するという点で能動的であると考えられる。適正な性能では、偏極回転子の軸は光の偏極の軸に対して特定角度になるということが知られている。例えば、広帯域装置では、TNの軸は入射光の偏極軸に対して平行である。偏極回転子は、電界又は電圧の印加により活性化されると偏極回転を行うように設計することができる。これは、例えばホメオトロピック配向層と共に負の誘電体異方性液晶を使用することにより、又は逆もまた同様で、正の誘電体異方性液晶とプレーナ整合層(planar alignment layer)を使用することにより実現される。一般的に、電圧の印加は、液晶の配向としたってシステムの全体複屈折とを変える。この変化は前者では正、又は後者では負である可能性がある。したがって、例えば、正の誘電体異方性液晶とプレーナ整合層において、電圧の印加は、異なる偏極により観測される複屈折を低減し、したがって2つの偏極間の位相遅延を低減する。複屈折が最大印加電圧においてほぼ零近くである場合、位相遅延は観測されず、したがって偏極回転はセル内で発生しない。」
「【0100】
実施例2
図3及び図4に示される別の実施形態では、調光システム用に設計された第2の構成が示される。システム50は、活性化されるとx方向に吸収軸を有する能動偏光子52、x方向に反射軸を有する隣接する第1の静的反射偏光子54、隣接する能動偏極回転子56、続いてx方向に反射軸を有する第2の静的反射偏光子58を含む。能動偏光子52と能動偏極回転子56は独立に動作され得るということに注意すべきである。
【0101】
図3及び表3に、オフ(v-0すなわち電圧オフ)状態で機能している装置を示す。x及びy偏極の両方を有する未偏極光30はx方向に配向された能動吸収偏光子52へ入射する。印加電圧の無い状態では、能動吸収偏光子52は入射偏波に対して最小限の影響を有する。したがって、両偏波は主に、次の表面まで通過することになる。次に、光は、x方向に配向された第1の静的反射偏光子54に当たる。反射偏光子54は、光のX軸偏波を主に反射し、y方向偏波を主に透過する。x方向偏光は、不変のまま能動偏光子52を通過して戻り、装置から出る。したがって、未偏極光の約50%は最初の2層内で反射される。y方向偏光は第1の反射偏光子を通過し、能動偏極回転子56に当たる。電圧が印加されていないとき、偏極回転子(PR2)56は偏極を変える。したがって、y方向偏光は今やx方向偏光に配向され、第2の静的反射偏光子58へ続く。第2の反射偏光子58はx方向に配向され、したがってx偏光を反射し戻すことになる。この光は偏極回転子56を通過し、再びY方向に変えられる。y方向光は、x方向に配向されてy方向偏光を透過する第1の静的反射偏光子54へ続く。能動偏光子52はオフ状態にあるので、y方向偏光は当該層を通り続け装置から出る。これは、光の残りの50%もまた反射されることを意味するが、第2の反射偏光子58を横断した後である。全体として、x方向及びy方向偏光の両方は主に、電圧オフ状態で反射される。
(当審注:「x及びy偏極の両方を有する未偏極光30はx方向に配向された第1の(能動吸収偏光子)へ入射する」の「第1の(能動吸収偏光子)」は、「能動吸収偏光子52」の明らかな誤記であるため、誤記を正して摘記した。また、「y方向光は、x方向に配向されてy方向偏光を透過する第1の静的反射器54へ続く。」の「静的反射器54」は、図3にも照らせば、「静的反射偏光子54」の明らかな誤記であるため、誤記を正して摘記した。)
【0102】
図4及び表4に、最大電圧(VmaxすなわちV=1)最小反射率状態で機能している装置50を示す。x及びy偏極の両方を有する未偏極光がx方向に配向された能動吸収偏光子52へ入射する。電圧印加状態で、能動吸収偏光子52は従来の偏光子と同様な方法で振る舞うことになる。これは、x方向偏波を吸収する一方でy偏波が伝播できるようにすることを意味する。したがって、光のx偏波は大部分は消滅する。y方向偏波は、第1の能動偏光子52と第1の静的反射偏光子54の両方により主に透過されるだろう。次に、y方向偏波は活性化された偏極回転子56に当たる。その能動状態の偏極回転子は偏極を回転させないので、y方向偏光は影響されること無く通過することになる。次に、このy方向偏光は、x方向に設定された第2の静的反射偏光子58に当たる。したがって、y方向偏光は通過することになる。
【0103】
反射(例えば、ミラー)アプリケーションでは、ビームブロック60は、この透過光を消滅させるために使用することができる。したがって、x方向及びy方向偏光の両方が主に吸収され、いかなる光も装置から反射されない(又は最小限の光量だけが反射される)。
(当審注:「ビームブロック20」は、図3及び図4にも照らせば、「ビームブロック60」の明らかな誤記であるため、誤記を正して摘記した。)
・・・(中略)・・・
【0106】
【表3】
[図:0001407252000001.jpg]
【0107】
【表4】
[図:0001407252000002.jpg]
」
図3は次のものである。
[図:0001407252000003.jpg]
図4は次のものである。
[図:0001407252000004.jpg]
イ 上記アの【0101】には、「オフ(v-0すなわち電圧オフ)状態で機能している装置を示す。x及びy偏極の両方を有する未偏極光30はx方向に配向された能動吸収偏光子52へ入射する。印加電圧の無い状態では、能動吸収偏光子52は入射偏波に対して最小限の影響を有する。」と記載されているところ、当業者であれば、当該記載中の「x方向に配向された能動吸収偏光子52」について、「x方向に配向された」は明らかな誤りであり、正しくは、「いずれの偏波も優先的には吸収しないようにされた能動吸収偏光子52」の意味合いであるか、又は、その直後に記載された「能動吸収偏光子52は入射偏波に対して最小限の影響を有する」の文言と合わせ理解することを前提に、単に「能動吸収偏光子52」の意味合いとして理解するといえる。
すなわち、「能動吸収偏光子52」が「x方向に配向された場合」、入射偏波のうちいずれかの方向の偏光を強く吸収してしまうことから、その直後に記載された「能動吸収偏光子52は入射偏波に対して最小限の影響を有する」ことと整合しない。他方、【0102】には、最大電圧で機能しているときに未偏極光が「x方向に配向された能動吸収偏光子52」へ入射すると、当該「能動吸収偏光子52」は「従来の偏光子と同様な方向で振る舞う」ことが記載されている。そうすると、当業者であれば、上記【0101】において「x方向に配向された能動吸収偏光子52」が「入射偏波に対して最小限の影響を有する」旨記載されているのは、上記のとおりの意味合いと理解するといえるのであり、この理解に反する引用文献1の記載は存在しない。
そこで、以下では、上記【0101】の「x方向に配向された能動吸収偏光子52」の記載を、単に「能動吸収偏光子52」と解することにする。
ウ 上記ア及びイによれば、引用文献1には、実施例2(図3及び図4)に係るシステム50について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に根拠とした段落の段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
「システム50は、活性化されるとx方向に吸収軸を有する能動吸収偏光子52、x方向に反射軸を有する第1の静的反射偏光子54、能動偏極回転子56、x方向に反射軸を有する第2の静的反射偏光子58及びビームブロック60を順に含み、(【0100】、【0103】及び図3)
能動吸収偏光子52として、二色性染料分子がネマチック液晶層中に溶解されるゲストホストシステムが使用されており、(【【0100】、【0083】及び図3)
能動偏極回転子56として、ツイストネマチック(TN)ベースの装置が使用されており、(【0100】、【0085】及び図3)
x方向偏光及びy方向偏光は、光の振動方向が互いに直交しており、(【0101】、【0102】、【0076】及び【0078】、)
システム50が電圧オフ状態で機能しているとき、(【0101】)
x及びy偏極の両方を有する未偏極光30は能動吸収偏光子52へ入射し、印加電圧の無い状態では、能動吸収偏光子52は入射偏波に対して最小限の影響を有するので、両偏波は主に、次の表面まで通過することになり、(【0101】及び上記イ)
次に、光は、x方向に配向された第1の静的反射偏光子54に当たり、第1の静的反射偏光子54は、光のX軸偏波を主に反射するとともにy方向偏波を主に透過するものであり、x方向偏光は、不変のまま能動偏光子52を通過して戻り、装置から出る一方、y方向偏光は第1の静的反射偏光子54を通過し、能動偏極回転子56に当たり、
電圧が印加されていないとき、能動偏極回転子56は偏極を変えるので、y方向偏光は90°回転させられてx方向偏光に配向され、第2の静的反射偏光子58へ続き、(【0101】及び【0106】)
第2の静的反射偏光子58はx方向に配向されるので、x方向偏光を反射し戻すことになり、この光は能動偏極回転子56を通過し、再びY方向に変えられる一方、y方向偏光は、x方向に配向されてy方向偏光を透過する第1の静的反射偏光子54へ続き、能動吸収偏光子52はオフ状態にあるので、y方向偏光は当該層を通り続け装置から出るものであり、全体として、x方向偏光及びy方向偏光の両方は主に、電圧オフ状態で反射され、(【0101】)
システム50が最大電圧最小反射率状態で機能しているとき、(【0102】)
x及びy偏極の両方を有する未偏極光がx方向に配向された能動吸収偏光子52へ入射し、電圧印加状態で、能動吸収偏光子52は、x方向偏波を吸収する一方でy方向偏波が伝播できるようになっているので、光のx方向偏波は大部分は消滅し、y方向偏波は、第1の能動吸収偏光子52と第1の静的反射偏光子54の両方により主に透過され、
次に、y方向偏波は活性化された能動偏極回転子56に当たり、その能動状態の能動偏極回転子56は偏極を回転させないので、y方向偏光は影響されること無く通過することになり、
次に、このy方向偏光は、x方向に設定された第2の静的反射偏光子58に当たるので、y方向偏光は通過し、(【0102】)
ビームブロック60は、この透過光を消滅させるので、x方向偏光及びy方向偏光の両方が主に吸収され、いかなる光も装置から反射されない(【0103】及び図4)
システム50。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 本件補正発明の「液晶および異方性染料を含むゲストホスト液晶層を有する第1液晶セル、」との特定事項について
引用発明の「能動吸収偏光子52」には「二色性染料分子がネマチック液晶層中に溶解されるゲストホストシステムが使用されて」いるところ、当該「ネマチック液晶」は本件補正発明の「液晶」に相当し、当該「二色性染料分子」は本件補正発明の「異方性染料」に相当し、当該「二色性染料分子」が「溶解され」た「ネマチック液晶層」は本件補正発明の「ゲストホスト液晶層」に相当する。そして、当該「能動吸収偏光子52」は、本件補正発明の「第1液晶セル」に相当するといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
イ 本件補正発明の「一方向に形成された第1反射軸を有する第1反射型偏光フィルム、」との特定事項について
引用発明は「x方向に反射軸を有する第1の静的反射偏光子54」を備えるところ、当該「x方向」の「反射軸」及び「第1の静的反射偏光子54」は、それぞれ、本件補正発明の「一方向に形成された第1反射軸」及び「第1反射型偏光フィルム」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
ウ 本件補正発明の「線偏光の振動方向を90度回転させる位相差モードと非位相差モードを切り替える位相差可変液晶層を有する第2液晶セル、」との特定事項について
引用発明の「能動偏極回転子56」には「ツイストネマチック(TN)ベースの装置が使用されて」いるところ、上記「ツイストネマチック(TN)ベースの装置」が液晶セルを備えることは明らかであるので、当該「能動偏極回転子56」は、本件補正発明の「第2液晶セル」に相当する。
そして、当該「能動偏極回転子56」は、「電圧が印加されていないとき」「y方向偏光」を「90°回転してx方向偏光に配向」する一方、「能動状態」では「偏極を回転させ」ないものである。そうすると、当該「能動偏極回転子56」は、「印加」される「電圧」に基づいて線偏光の振動方向を「90°回転」させるモードと線偏光の振動方向を変化させないモードとを切り替え可能であるものといえるところ、前者のモードは本件補正発明の「位相差モード」に相当し、後者のモードは本件補正発明の「非位相差モード」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
エ 本件補正発明の「前記第1反射軸と平行な第2反射軸を有する第2反射型偏光フィルムおよび吸収板」との特定事項について
引用発明は「x方向に反射軸を有する第2の静的反射偏光子58」を備えるところ、当該「x方向」の「反射軸」及び「第2の静的反射偏光子58」は、それぞれ、本件補正発明の「第2反射軸」及び「前記第1反射軸と平行な第2反射型偏光フィルム」に相当する。
また、引用発明の「ビームブロック60」は、「x方向及びy方向偏光の両方」を「吸収」するから、本件補正発明の「吸収板」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
オ 本件補正発明の「を順に含む、反射率可変ミラーであって、」との特定事項について
引用発明は「能動吸収偏光子52」、「第1の静的反射偏光子54」、「能動偏極回転子56」、「第2の静的反射偏光子58」及び「ビームブロック60」を「順に含」む。
そして、引用発明の「システム50」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「反射」し、「最大電圧最小反射率状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「吸収」するから、反射率が可変であるミラーを構成しているということができ、よって、当該「システム50」は、本件補正発明の「反射率可変ミラー」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
カ 本件補正発明の「前記反射率可変ミラーは、電圧が印加されているか否かに応じて鏡モードと反射防止モードとを切り替え、」との特定事項について
上記オによれば、引用発明の「システム50」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「反射」するモードと「最大電圧最小反射率状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「吸収」するモードとに切り替え可能であるといえるところ、前者のモードは本件補正発明の「鏡モード」に相当し、後者のモードは本件補正発明の「反射防止モード」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
キ 本件補正発明の「前記反射率可変ミラーは、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々に電圧が印加されていない状態において前記第1液晶セルが垂直配向状態にあり前記第2液晶セルが前記位相差モードにあるときに前記鏡モードを具現し、」との特定事項について
引用発明の「システム50」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」、「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「反射」するモードとなる(上記カ)ところ、このモードにおいては、「能動吸収偏光子52」(本件補正発明の「第1液晶セル」に相当。)は、「印加電圧の無い」状態であって、「入射偏波に対して最小限の影響を有する」一方、「能動偏極回転子56」は、「電圧が印加されていない」状態であって、「偏極を変える」ものとなっている。そして、当該「能動吸収偏光子52」は、「二色性染料分子がネマチック液晶層中に溶解されるゲストホストシステム」である以上、印加電圧の無い状態であっても、液晶が所定の配向状態にあることは明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記反射率可変ミラーは、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々に電圧が印加されていない状態において前記第1液晶セルが」所定の配向状態にあり「前記第2液晶セルが前記位相差モードにあるときに前記鏡モードを具現」する点で一致する。
ク 本件補正発明の「前記反射率可変ミラーの前記鏡モードと前記反射防止モードとの間の反射率差は、50%以上であり、前記反射率は、正反射光を含む前面光反射率であり、前記前面光反射率は、前面光入射光量を100%にした場合の数値であり、」との特定事項について
引用発明が、本件補正発明の上記特定事項を満たしているか不明である。
ケ 本件補正発明の「前記第2液晶セルは、90度TNモード液晶セルであり、」との特定事項について
引用発明の「能動偏極回転子56」(本件補正発明の「第2液晶セル」に相当。)は「ツイストネマチック(TN)ベースの装置が使用でき」るものである。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記第2液晶セルは、」「TNモード液晶セルであ」る点で一致する。
コ 本件補正発明の「前記第2反射軸は、前記第2液晶セルの前記第2反射型偏光フィルムの側の配向方向と直交し、」との特定事項について
引用発明が、本件補正発明の上記特定事項を満たしているか不明である。
サ 本件補正発明の「前記第2反射型偏光フィルムは第2反射軸と直交する第2透過軸を有し、前記第2反射軸と第2透過軸は水平方向に形成され、」との特定事項について
引用発明の「第2の静的反射偏光子58」は、「x方向偏光は反射」し、「y方向偏光は通過」するものであり、「x方向偏光及びy方向偏光は、光の振動方向が互いに直交し」ているところ、引用発明の「第2の静的反射偏光子58」、「x方向」の「反射」軸及び「y方向偏光」を「通過」する軸は、本件補正発明の「第2反射型偏光フィルム」、「第2反射軸」及び「第2反射軸と直交する第2透過軸」に相当する。
引用発明の「第2の静的反射偏光子58」に接する「能動偏極回転子56」を通過した「x方向偏光及びy方向偏光」を「第2の静的反射偏光子58」は、反射及び通過させるものであるから、当該「x方向」の「反射」軸及び「y方向偏光」を「通過」する軸は、「第2反射型偏光フィルム」の水平方向(面方向)に形成されているといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
シ 本件補正発明の「前記ゲストホスト液晶層の前記異方性染料の含量は1.0重量%以下である」との特定事項について
引用発明が、本件補正発明の上記特定事項を満たしているか不明である。
ス 本件補正発明の「反射率可変ミラー」との特定事項について
上記オで説示したとおり、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(4)一致点及び相違点の認定
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致し、下記の点で一応相違するか、又は、相違する。
【一致点】
「液晶および異方性染料を含むゲストホスト液晶層を有する第1液晶セル、
一方向に形成された第1反射軸を有する第1反射型偏光フィルム、
線偏光の振動方向を90度回転させる位相差モードと非位相差モードを切り替える位相差可変液晶層を有する第2液晶セル.
前記第1反射軸と平行な第2反射軸を有する第2反射型偏光フィルムおよび
吸収板を順に含む、反射率可変ミラーであって、
前記反射率可変ミラーは、電圧が印加されているか否かに応じて鏡モードと反射防止モードとを切り替え、
前記反射率可変ミラーは、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々に電圧が印加されていない状態において前記第1液晶セルが所定の配向状態にあり前記第2液晶セルが前記位相差モードにあるときに前記鏡モードを具現し、
前記第2液晶セルは、TNモード液晶セルであり、
前記第2反射型偏光フィルムは第2反射軸と直交する第2透過軸を有し、前記第2反射軸と第2透過軸は水平方向に形成される、
反射率可変ミラー。」
【相違点1】
電圧が印加されていない状態において鏡モードを具現する第1液晶セルの所定の配向状態が、本件補正発明は、「垂直配向状態にあ」るのに対し、引用発明は、どのような配向状態にあるか不明である点。
【相違点2】
反射率可変ミラーの前記鏡モードと前記反射防止モードとの間の反射率差が、本件補正発明は、「50%以上であり、前記反射率は、正反射光を含む前面光反射率であり、前記前面光反射率は、前面光入射光量を100%にした場合の数値」であるのに対し、引用発明は、そのようなものか明らかでない点。
【相違点3】
TNモード液晶セルが、本件補正発明は、「90度TNモード液晶セル」であるのに対し、引用発明は、「ツイストネマチック(TN)ベースの装置」であるもののそのようなものか明らかでない点。
【相違点4】
第2反射型偏光フィルムの第2反射軸が、本件補正発明は、「前記第2液晶セルの前記第2反射型偏光フィルムの側の配向方向と直交し」ているのに対し、引用発明は、そのようなものか明らかでない点。
【相違点5】
本件補正発明は、「ゲストホスト液晶層の異方性染料の含量は1.0重量%以下である」のに対し、引用発明は、そうであるか不明である点。
(5)判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明は、「能動吸収偏光子52」として「二色性染料分子がネマチック液晶層中に溶解されるゲストホストシステム」が使用されるものであるところ、当該「能動吸収偏光子52」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」、「入射偏波に対して最小限の影響を有する」ものである。そして、当該「ネマチック液晶層」及び「二色性染料分子」について、引用発明を開示する引用文献1の【0084】には、「この能動偏光子は、ホメオトロピック整合セル(homeotropically aligned cell)内の正の二色性染料と合成される負の誘電体異方性ホストを含むゲストホスト液晶システム又はセルに基づく。または、正の誘電体異方性ホストは、プレーナ整合セル(planar aligned cell)内で正の二色性染料と共に使用することができる。」と記載されている。このように、当該段落には、引用発明の「能動吸収偏光子52」のための「ネマチック液晶層」が、「ホメオトロピック整合セル」又は「プレーナ整合セル」のいずれかから構成されることが記載されているところ、引用発明の「能動吸収偏光子52」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」、「入射偏波に対して最小限の影響を有する」ものである。そうすると、当該「能動吸収偏光子52」のための「ネマチック液晶層」は、電圧が印加されていない状態において垂直配向状態にあると解されることになり、よって、「ホメオトロピック整合セル」であるといえる。
以上によれば、引用発明は相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ)仮に、相違点1が実質的でないとはいえないとしても、以下のとおり、相違点1は格別のものではない。
すなわち、上記のとおり、引用発明の「能動吸収偏光子52」は、「電圧オフ状態で機能しているとき」、「入射偏波に対して最小限の影響を有する」ものであるところ、当該「能動吸収偏光子52」において用いられるようなゲストホスト液晶システムにおいて、電圧が印加されていない状態で、液晶分子及び染料分子を垂直に配向させて、入射偏波に対して最小限の影響を有するようにすることは、周知技術(必要ならば、実願昭57-084463号(実開昭58-188603号)のマイクロフィルム(3頁10行~6頁12行、図2及び図3)及び中国実用新案第205273317号明細書([0025]~[0029]、図3~図5)を参照されたい。)である。したがって、引用発明に前記周知技術を採用し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。
イ 相違点3及び相違点4について
(ア)引用発明は、「能動偏極回転子56」として「ツイストネマチック(TN)ベースの装置」が使用されるものである。そして、当該「能動偏極回転子56」は「電圧が印加されていないとき」「y方向偏光は90°回転させられてx方向偏光に配向され」るものであるところ、そのようなツイストネマチック(TN)ベースの装置として、液晶層内の液晶分子が90度のねじれ角度でツイスト配向状態のもの(90度TNモード液晶セル)は、ごくありふれている(必要ならば、実願平5-14401号(特開平6-73731号)のCD-ROM(特に、【0005】~【0008】及び図11)を参照されたい。)。
以上によれば、引用発明は相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるといってよいから、相違点3は実質的な相違点ではないし、仮にそうとはいえないとしても、相違点3に係る本件補正発明の構成のようにすることは当業者が適宜なし得た事項である。
(イ)引用発明の「能動偏極回転子56」は「y方向偏光は90°回転させられてx方向偏光に配向され」るようにする機能を有するものであるところ、当業者であれば、当該「能動偏極回転子56」について上記(ア)のとおりに構成したもの、つまり、90度TNモード液晶セルを備えるようにした当該「能動偏極回転子56」について、上記機能を実現するように設計するといえる。そして、上記機能を有する90度TNモード液晶セルにおいて、「x方向偏光」が出射される側の配向方向を「x方向」又は「y方向」の一方とするものはいずれもありふれているといえる。また、引用発明では、当該「能動偏極回転子56」の当該「x方向偏光」が出射される側には、「第2の静的反射偏光子52」が設けられているところ、この反射軸は、上記(3)エで説示したとおり、「x方向」に存在する。
そうすると、90度TNモード液晶セルを備えるようにした当該「能動偏極回転子56」において上記機能を実現するために、当該90度TNモード液晶セルとして、「x方向偏光」が出射される側の配向方向を「y方向」とするものを採用して、相違点4に係る本件補正発明の構成のようにすることは、当業者が適宜なし得た事項である。
ウ 相違点2及び相違点5について
引用発明の「システム50」には、「電圧オフ状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「反射」するモードと「最大電圧最小反射率状態で機能しているとき」「x方向偏光及びy方向偏光の両方」を「吸収」するモードがあるところ、引用発明を開示する引用文献1の【0028】に「装置はまた、その最大及び最小反射状態間の振幅(又はコントラスト)が50%より大きくなるように構成することができる。」と記載されていることに照らせば、当業者は、当該「反射」するモードにおける反射率と当該「吸収」するモードにおける反射率との差(以下「両モード反射率差」という。)を50%よりも大きくなるように調整するといえる。
そこで、そのように調整するために当業者が具体的にどのようにするかについて検討すると、まず、引用発明の「システム50」においては、両モード反射率差が、「ゲストホストシステム」に係る「能動吸収偏光子52」の透過率差、つまり、印加電圧の無い状態での能動吸収偏光子52の状態(入射偏波に対して最小限の影響を有する状態であって、以下「透過状態」という。)のときの透過率と、電圧印加状態での能動吸収偏光子52の状態(x方向偏波を吸収する一方でy方向偏波が伝播できる状態であって、以下「吸収状態」という。)のときの透過率との差に依存することが明らかである。そして、上記の透過状態及び吸収状態における透過率が、いずれも異方性染料の含量に依存することが技術常識(必要ならば、特開昭56-500944号公報(特に、3頁右上欄下から6行~左下欄7行)、特開2010-145674号公報(特に、【0067】)、国際公開第2016/159671号(特に、[70]、及び特表2018-510383号公報の【0060】)を参照されたい。)であるところ、異方性染料の含量が多すぎる場合は、透過状態及び吸収状態のいずれの状態であっても透過率が相当に下がってしまうことになるし、逆に、異方性染料の含量が少なすぎる場合は、いずれの状態であっても透過率が相当に上がってしまうことになるのが、当業者にとって明らかである。このように、当業者は、両モード反射率差を調整するために、能動吸収偏光子52における二色性染料分子の含量を調整することを理解できるとともに、その含量が、多すぎても少なすぎても相当ではなく、適度の量があることも理解できる。加えて、両モード反射率差に関連する上記の透過率差に、セルギャップ又は二色性色素の種類といった要因も影響していることが周知(必要ならば、特開2004-333567号公報(特に、【0024】、【0040】~【0042】)及び特開2010-145674号公報(特に、【0067】)を参照されたい。)である。
以上によれば、当業者は、引用発明において、両モード反射率差を50%より大きくなるように調整するために、能動吸収偏光子52における二色性染料分子の含量やセルギャップ等を調整することができるといえるところ、その具体的な値は、実験等を通じて、適宜選定できるといえる。そして、防眩ミラーに関する技術において、ゲストホスト液晶層の異方性染料の含量として1.0重量%以下のものとした例も通常に存在する(必要ならば、国際公開第2016/159671号(特に、[70]、[118]及び[125]、特表2018-510383号公報の【0060】、【0097】及び【0100】)、国際公開第2016/159601号(特に、[161]及び[164]、特表2018-509658号公報の【0138】及び【0139】)及び特開昭60-254023号公報(特に、第2頁左上欄第17行~第3頁右上欄第5行)を参照されたい。)。よって、当業者が、引用発明の能動吸収偏光子52において、セルギャップ等も調整しつつ、二色性染料分子の含量として1.0重量%以下の値を選択することは、格別困難なことではなく、その結果、当業者は、相違点2及び5に係る本件補正発明の構成に至るといえる(さらにいえば、相違点5に係る本件補正発明で特定された異方性染料の含量自体は、上記のとおり他の要因にも依存するところ、それが特定されていないことからも、本件補正発明は、進歩性を認めるに足りないともいえる。)。
エ 本件補正発明の効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が予測し得た範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 請求人の主張について
請求人は、本件補正発明には、異方性染料の含量を1.0重量%以下にすることによって、鏡モードと反射防止モードとの間の反射率差を大きくする点に技術的意義がある一方、引用発明には、その旨が開示されていない旨主張するが、上記ウで説示したとおりである。この点、請求人は、異方性染料の含量を1.0重量%以下にすれば、必然的に、鏡モードと反射防止モードとの間の反射率差が大きくなるかのように主張するが、上記ウで説示したとおり、反射率差は、異方性染料の含量のみによって定まるものではないことから、失当である。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年9月29日に提出された手続補正書による補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年3月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという内容を含むものである。
3 進歩性について
(1)引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ゲストホスト液晶層」の「異方性染料」について、「含量は1.0重量%以下である」するとの限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2で認定判断したとおり、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015486