特許拒絶査定不服審判
2022-014245
導体を通る電流を感知する際に使用するためのセンサデバイスおよび方法
- 審判番号
- 2022-014245
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-144902
- 請求日
- 2022年09月09日
- 審決日
- 2023年08月16日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アクララ ミーターズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】倉澤 伊知郎
- 【請求人代理人】山本 泰史
- 【請求人代理人】鈴木 博子
- 【請求人代理人】渡邊 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 後藤 慎平
- 審判官 田邉 英治
- 分類
- P18 .575-Z (G01R) / P18 .572-Z (G01R) / P18 .574-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第50条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-144902「導体を通る電流を感知する際に使用するためのセンサデバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月26日出願公開、特開2020-190576〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月23日に出願した特願2015-145410号の一部を令和2年8月28日に新たな特許出願としたものであって(パリ条約による優先権主張2014年7月30日(以下「優先日」という。)、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 3年 9月29日付け:拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
令和 4年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 4月28日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月11日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月12日付け:前置報告書
令和 5年 4月 7日 :上申書の提出
第2 令和4年9月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月9日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年9月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、次の(1)に示す本件補正前(出願時のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正する補正事項を含むものである(なお、符号は削除した。)。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器であって、
導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイスであって、
非磁性基板、
前記基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイルであって、それを通して前記導体を受ける開口を画定するコイル、および
誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置された前記誘電材料を備えるセンサデバイスと、
前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤とを備える需給計器であって、
前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され、
前記電流範囲が、約2.0Aから約25,000Aまでである、需給計器。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器であって、
前記需給計器は、導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイスを備え、
前記センサデバイスは、
非磁性基板と、
前記非磁性基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイルと、
誘電材料と、を備え、
前記コイルは、前記導体を受ける開口を画定し、
前記誘電材料は、誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置され、
前記需給計器は、更に、前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤を備え、
前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され、
前記電流範囲が、2.0Aから25,000Aまでであり、
前記非磁性基板が、複数のボビンを備え、前記コイルの複数の巻数の少なくとも1つを、前記複数のボビンのそれぞれの周りに巻きつけ、前記コイルは、飽和にならない空芯を有し、前記センサデバイスは、飽和または過飽和の可能性がないインダクタとして連続的に働き、
各前記ボビンは、環状であり、前記コイルを周りに巻きつける円形領域を含む、需給計器。」
2 本件補正の目的
(1) 補正事項
本件補正による請求項1の補正は、以下のアからエの補正事項からなる。
ア 「需給計器」が「センサデバイス」及び「計器制御盤」を備える構成を変更することなく、構文を次の(ア)の構文から後記(イ)の構文に変更することにより、構成間の関係をより理解しやすい記載に変更すること。
(ア) 本件補正前の構文
「導体を…(中略)…センサデバイスであって、
…(中略)…センサデバイスと、
…(中略)…計器制御盤とを備える需給計器であって、」
(イ) 本件補正後の構文
「前記需給計器は、導体を…(中略)…センサデバイスを備え、
前記センサデバイスは、
…(中略)…を備え、
…(中略)…
前記需給計器は、更に、…(中略)…計器制御盤を備え、」
イ 「センサデバイス」が「非磁性基板」、「コイル」及び「誘電材料」を備える構成を変更することなく、構文を次の(ア)の構文から後記(イ)の構文に変更することにより、構成間の関係をより理解しやすい記載に変更すること。
(ア) 本件補正前の構文
「非磁性基板、
…(中略)…を備えるコイルであって、それを通して前記導体を受ける開口を画定するコイル、および
誘電率を有し、…(中略)…前記開口内に配置された前記誘電材料を備えるセンサデバイスと、」という記載を、
(イ) 本件補正後の構文
「前記センサデバイスは、
非磁性基板と、
…(中略)…を備えるコイルと、
誘電材料と、を備え、
前記コイルは、前記導体を受ける開口を画定し、
前記誘電材料は、誘電率を有し、…(中略)…前記開口内に配置され、」
ウ 「前記基板」を「前記非磁性基板」と補正することにより、その指す内容が直前に記載された「非磁性基板」であることを明確化するとともに、電流範囲について、「約2.0Aから約25,000A」の範囲を「2.0Aから25,000A」の範囲に補正することにより、数値の範囲を明確化すること。
エ 「基板」について「複数のボビンを備え、前記コイルの複数の巻数の少なくとも1つを、前記複数のボビンのそれぞれの周りに巻きつけ[た]」ものに限定するとともに、「前記コイル」について、「飽和にならない空芯を有[する]」ものに限定し、さらに「前記センサデバイス」について、「飽和または過飽和の可能性がないインダクタとして連続的に働[くもの]」に限定し、さらにまた、「各前記ボビン」について、「環状であり、前記コイルを周りに巻きつける円形領域を含む」ものに限定すること。
(2) 補正の目的要件についての判断
ア 補正事項ア及びイについて
a 前記(1)ア及びイの補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、請求項1全体としての記載の意味は補正の前後で変更されないから、特許請求の範囲の減縮には該当しない。
b また、前記(1)ア及びイの補正事項に係る本件補正前の請求項1の記載は明瞭であり、また、令和3年9月29日付けの拒絶理由通知に係る理由4(明確性)の拒絶理由に示す事項についてした補正ではないから、前記(1)ア及びイの補正事項は、特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものには該当しない。
c さらに、当該補正事項が、「請求項の削除」(同項1号)又は「誤記の訂正」(同項3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
d なお、補正事項ア及びイについて、請求人は審判請求書において何も根拠を示しておらず、その補正の目的も明らかにしていない。
e したがって、補正事項ア及びイは、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
ただし、補正事項ア及びイは、請求項1に係る発明の内容を変更するものではなく、それを特定する表現を補正するだけのものであるから、ほかの補正事項についても進んで以下検討する。
イ 補正事項ウについて
前記(1)ウの補正事項について、当該補正事項は、令和3年9月29日付けの拒絶理由通知に係る理由4(明確性)の拒絶理由に示す事項について明確化するためにする補正であるから、特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当する。
ウ 補正事項エについて
補正事項エは、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、前記(1)エの補正事項に係る補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。
(3) 補正の目的要件についての判断のまとめ
前記(2)アにおいて検討したとおり、補正事項ア及びイについては、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しないから、本件補正は、厳密には、同項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものとなる。
しかしながら、前記(2)アにおいて検討したとおり、補正事項ア及びイは、請求項1に係る発明の内容を変更するものではなく、それを特定する表現を補正するだけのものであり本件補正による請求項1の補正は、実質的には、補正全体として、令和3年9月29日付けの拒絶理由通知に係る理由4(明確性)の拒絶理由に示す事項について明確化するとともに、「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものである。
そこで、当審においては、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下、項を改めて検討する。
3 独立特許要件についての当審の判断
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用発明及び技術常識1の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願の優先日前に発行された文献である特開2013-61329号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0001】~【0006】
「【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般にセンサ装置および感知方法に関し、さらに詳細には、導体を流れる電流の感知に関する。
【背景技術】
【0002】
電力源から利用者に供給される電気を測定するために、少なくともいくつかの需給計器が使用されている。利用者に供給されるエネルギーの量を正確に計測できるようにするために、多くの需給計器は、電力源と利用者の間の導体を流れる電流を感知するためのセンサ装置を1つまたは複数含む。需給計器に含まれるセンサ装置は、電圧および/または電流の動作範囲で正確に機能するようになっている。
【0003】
需給計器では、様々なタイプの既知の電流センサ装置が使用される。例えば、少なくとも一部の既知の変圧器センサ装置は、導体を流れる電流を感知するためのマグネットワイヤが巻き付けられた磁心を含む。しかし、変圧器を含む電流センサ装置は、一般に、嵩張り、かつ高価であることが知られている。既知の電流センサ装置の別の例としては、ロゴスキーコイルがある。ロゴスキーコイルは、コイルを含み、一般に変圧器センサ装置よりも小さい。しかし、ロゴスキーコイルは、ある電圧範囲において低電流状態および/または高電流状態になると限られた精度しかもたらさないことが知られている。その結果、このような不正確さの影響を最小限に抑えるために、既知のロゴスキーコイルを備える需給計器に対しては、製造時に複数回の較正プロセスを行うことが多い。このように較正プロセスを繰り返すことによってセンサ装置の不正確さを低減することはできるが、これらのプロセスによって、需給計器の製造に要する時間およびコストも増大する。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、導体中の電流の検出に使用されるセンサ装置が提供される。このセンサ装置は、その中に導体を受けるように構成された開口を画定する非磁性基体と、該基体の少なくとも一部分の周りに巻き付けた複数のコイルターンからなるコイルと、該基体と該複数のコイルターンとの間の第1のシールドと、該複数のコイルターンが該第1のシールドと第2のシールドとの間に配置されるように該複数のコイルターンに近接して該第1のシールドとは反対側に配置される第2のシールドと、該第1および第2のシールドのうちの少なくとも一方に結合されるフィルタ要素とを備える。
【0005】
別の態様では、電力源から利用者に電気エネルギーを伝送するのに使用される需給計器が提供される。この需給計器は、導体と、少なくとも部分的に該導体の周りに配置されたセンサ装置とを含む。このセンサ装置は、開口を画定する非磁性基体と、該非磁性基体の少なくとも一部分の周りに巻き付けた複数のコイルターンからなるコイルと、該基体と該複数のコイルターンとの間にある第1のシールドと、該複数のコイルターンに近接して該第1のシールドとは反対側にある第2のシールドと、該コイルと該第1および第2のシールドのうちの少なくとも一方との間に結合されるフィルタ要素とを備える。
【0006】
さらに別の態様では、導体中の電流を検出するセンサ装置を作製する方法が提供される。この方法は、開口を画定する非磁性基体と、該非磁性基体の少なくとも一部分の周りの複数のコイルターンからなるコイルと、該基体と該複数のコイルターンとの間に配置される第1のシールドと、該複数のコイルターンに近接して該第1のシールドとは反対側に配置される第2のシールドとを備えるセンサ装置を設けるステップを含む。この方法は、第1のリード線を該第1のシールドおよび該第2のシールドのうちの少なくとも一方に結合するステップと、第2のリード線を該コイルの第1の端部に結合するステップと、第3のリード線を該コイルの第2の端部に結合するステップと、該第1、第2および第3のリード線で撚りリード線セットを形成するステップとを含む。」
b 段落【0008】~【0017】、【図1】~【図3】
「【0008】
図1は、例示的な需給計器10を示すブロック図である。この例示的な実施形態では、需給計器10は、センサ装置12、導体14、およびセンサ装置12に結合された計器制御盤17を含む。導体14としては、母線、マルチストランドワイヤ、シングルストランドワイヤ、ケーブル、またはその他の、電力源から電力利用者に電気を伝送する適当な導体などが挙げられる。電力源としては、ガスタービンエンジン、水力発電タービン、風力タービン、ソーラーパネル、ならびに/あるいは別の適当な発電および/または伝送システムなどの、電力網および/または発電システムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。電力源としては、計器制御盤17と通信するスマートグリッドもある。利用者としては、一般家庭利用者、商用利用者、および/またはその他の任意レベルの任意の電気利用者が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。センサ装置12は、導体14に結合されて、導体14を流れる電流を感知する。センサ装置12は、感知した電流を表す信号を、計器制御盤17に提供する。センサ装置12から受信した信号に基づいて、計器制御盤17は、ある期間にわたって電力源から利用者に導体14を通じて伝送される電気の量を決定する。
【0009】
課金は、電力源から利用者に伝送される電気に対して行われることがあるので、センサ装置12の精度を高くして、電力源の運営業者が当該利用者に伝送した実質的に全ての電気に対して課金されるのではなく、当該利用者が実質的に受け取った電気に対してのみ課金されることが確実になされるようにすることが望ましい。
【0010】
この例示的な実施形態では、需給計器10は、導体15および16と、導体15に結合された別のセンサ装置12とをさらに含む。なお、他の需給計器の実施態様では、任意数の導体および/またはセンサ装置(例えば、1つでも、3つでも、6つでもよい)を使用することができることを理解されたい。さらに、センサ装置12は、需給計器10内の使用のみに限定されず、発電分野、公共事業分野、自動車分野、電化製品分野、電気通信分野など、実質的にどのような適用分野でも、導体を流れる電流を感知するために利用することができることも理解されたい。」
「【図1】
[図:0001405398000001.jpg]
」
「【0011】
図2は、例示的なセンサ装置12を示す部分分解図である。この例示的な実施形態では、センサ装置12は、基体102、基体102の周りに巻き付けた複数ターンからなるコイル104、および誘電材料108を含む。コイル104には開口110が画定されており、この開口110は、その中に導体14を受けるように(例えばサイズ、向き、および/または形状などが)構成されている。誘電材料108は、コイル104に近接して、少なくとも一部が開口110内に入るように位置決めされる。さらに詳細には、本実施形態では、誘電材料108は、導体14を開口110に通して位置決めしたときに、少なくとも一部がコイル104と導体14の間に位置決めされる。
【0012】
誘電材料108としては、様々に構成される様々な特徴を有する1つまたは複数の誘電材料が挙げられる。例えば、誘電材料108は、約10~1000Hzで約3.0以上の誘電率を有することができる。実施形態によっては、誘電率は、約3.5、約4.0、約5.0、約8.0、約12.0、約17.0および/またはその他の任意の適当な値を超えることもある。例示的な1実施形態では、誘電材料108の誘電率は、約3.5に等しくすることができる。別の例示的な実施形態では、誘電材料108の誘電率は、約6.0に等しくすることができる。
【0013】
さらに、誘電材料108は、少なくとも1つの厚さを有するが、複数の厚さを有していてもよい。例示的な本実施形態では、コイル104に近接して少なくとも一部が開口110の中に位置決めされる誘電材料108の厚さは、約3.0ミリメートルである。また、本実施形態では、コイル104に近接するが開口110に対向して位置決めされる誘電材料108の厚さは、約1.2ミリメートルである。誘電材料108は、任意の1つまたは複数の厚さを有することができ、それによってセンサ装置12が本明細書に記載するような機能を発揮することができることを理解されたい。一般に、誘電材料108の厚さは、少なくとも部分的には、誘電材料108の誘電率、コイル104の1つまたは複数の導体14、15および16に対する近さ、および/または所期の環境内におけるセンサ装置の設置に利用できるスペースなどに基づいて選択される。いくつかの例示的な実施形態では、誘電材料108の厚さは、約1.0ミリメートルから約3.0ミリメートルの間とすることができるが、他の実施形態では、それより大きいこともある。
【0014】
例示的な本実施形態では、誘電材料108は、プラスチック材料、熱可塑性材料、熱硬化性材料、セラミック材料、金属材料、木材料、粘土材料、有機材料、これらの任意の混合物、および/または本明細書に記載するように作用するその他の適当な材料など(ただしこれらに限定されない)、いくつかのタイプの材料のうちの1つまたは複数から作製される。図2に示す例示的な実施形態では、誘電材料108は、Valox(登録商標)シリーズの材料として市販されているPBT熱可塑性材料を含む。様々な実施形態において、誘電材料108は、Kapton(登録商標)テープ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)材料、室温加硫シリコーン(RTV)ポリマー、Valox(登録商標)シリーズの材料として市販されているPBT熱可塑性材料(例えばValox(登録商標)365またはValox(登録商標)V9561など)、Rynite(登録商標)シリーズの材料として市販されているポリエチレンテレフタラート(PET)熱可塑性材料、Prime(登録商標)シリーズの材料として市販されているPPS熱可塑性材料、Zytel(登録商標)、Stanyl(登録商標)またはRTP(登録商標)シリーズの材料として市販されているナイロン熱可塑性材料、LCP熱可塑性材料(例えばSumitomo(登録商標)E5008LまたはE4008L材料など)など(ただしこれらに限定されない)のうちの1つまたは複数を含む。1つまたは複数のタイプの誘電材料108を、その1つまたは複数の材料の誘電率、1つまたは複数の製造技術に対する適合性、寸法安定性、コスト、成形性、加工性、剛性、および/またはその他の特徴に基づいて選択することができる。少なくとも1つの例では、誘電材料108は、少なくとも部分的には、誘電率の温度変動性に基づいて選択される。」
「【図2】
[図:0001405398000002.jpg]
」
「【0015】
図3は、導体14が開口110を通して延在している状態のセンサ装置12の組み立てられた状態を示す斜視図である。上述のように、センサ装置12は、導体14を流れる電流を感知する。詳細には、導体14に電流が流れると、コイル104に電流が誘導される。コイル104に誘導された電流の量は、導体14に流れる電流の量を表している。センサ装置12が導体14の周りに位置決めされているとき、コイル104は、導体14からある距離だけ離間している。したがって、コイル104と導体14の間に静電容量が存在する。この静電容量は、様々な動作電圧(例えば約30Vから約277Vの範囲)でセンサ装置12の精度に影響を及ぼす可能性がある。例示的な実施形態では、誘電材料108は、コイル104と導体14の間に画定されたエアギャップ106の少なくとも一部分の中に位置決めされる。その結果、誘電材料108は、コイル104および導体14を近接させたまま、コイル104と導体14の間の静電容量の低下に影響を及ぼし、および/またはそれを促進する。
【0016】
このように静電容量を低下させることにより、センサ装置12は、既知のロゴスキーコイルまたはその他のエアギャップコイルと比較して、より高い精度で導体14を流れる電流を感知することができるようになる。さらに詳細には、コイル104と導体14の間の容量結合を低減することにより、動作電圧に対する感度を低下させる。その結果、高電流および定電流を含む様々な電流範囲にわたって、様々な動作電圧で、一貫した電流検知が行われる(当審注:「定電流」は「低電流」の明らかな誤記である。なお、引用文献1のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2013/0063131号明細書の段落[0024]を参照すると「As a result, consistent current sensing is provided at different operating voltages across a range of different currents, including high and low currents.」と記載されている。)。したがって、需給計器10がセンサ装置12を含む場合には、既知のセンサ装置の較正に必要な1つまたは複数のプロセスを省略することができる。具体的には、例示的な本実施形態では、様々な動作電圧にわたって正確に電流を検出するセンサ装置12の一貫性により、既知の需給計器を様々な電圧で使用するためには複数の較正係数が必要であるのに対して、計器制御盤17は、複数の動作電圧に対して較正係数を1つ使用するだけでよい。さらに、コイル104と導体14の間の静電容量が低下することにより、較正プロセスの削減および/または簡略化が容易になるだけでなく、動作電圧/電流範囲にわたって精度を最低でも同等に維持しながら、また多くの場合には向上させながら、製造に要するコスト、資源および/または時間を削減することが容易になる。
【0017】
図3に示すように、例示的な本実施形態では、センサ装置12は、筐体112を含む。筐体112は、様々な材料で、および/または様々な作製プロセスで形成することができる。例示的な本実施形態では、筐体112は、実質的に誘電材料108のみを含むので、誘電材料108は、コイル104の周りに、開口110と対向するように位置決めされる。したがって、センサ装置12は、3相導体14、15および16を有する需給計器10内で使用するときには、導体14の周りに、(図1に示すように)少なくとも1つの別の導体15に近接するように、また場合によっては導体16にも近接するように、位置決めすることができる。コイル104と導体14の間の相互作用と同様に、コイル104と導体15の間にも静電容量が存在し、これがセンサ装置12の精度に悪影響を及ぼし、および/または低下させることがある。誘電材料108は、開口110に対向する位置にあるので、コイル104と近接する導体15の間に位置決めされる。したがって、誘電材料108は、コイル104と導体15の間の静電容量を低下させるためにも設けられている。このようにして、センサ装置12は、複数の導体を有する需給計器10に使用されたとき、および/または1つまたは複数のその他の導体に近接して使用されたときに、既知のエアギャップコイルよりも高い精度を出すことができる。」
「【図3】
[図:0001405398000003.jpg]
」
c 段落【0026】~【0030】、【図4】、【図5】
「【0026】
例示的な本実施形態では、コイル104は、例示的なロゴスキーコイルを含む。ただし、センサ装置12は、ロゴスキーコイル以外のコイルを含むことができることを理解されたい。さらに、本開示の態様は、本明細書で説明および例示するようにロゴスキーコイルとともに使用する態様のみに限定されるわけではない。
【0027】
図5は、筐体112から分離した基体102およびコイル104を示す斜視図である。例示的な本実施形態では、基体102は、6個のボビン124、126、128、130、132および134(まとめてボビン124~134と記載する)を含む。各ボビン124~134は、ほぼ円形の断面を有し、さらに詳細には、両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱である。その他の実施形態では、基体102は、異なる数、形状および/またはサイズのボビンを有することができる。例えば、基体102が備えるボビンの数は、5個であっても、8個であっても、10個であっても、30個であっても、あるいはそれ以外の偶数または奇数の数であってもよい。さらに、基体102は、異なる形状を有し、および/または卵形、楕円形または方形の断面などを有するボビンを備えることもできる。さらに別の実施形態では、基体102は、フランジ35に加えて、またはフランジ35の代わりに、コイル104を支持する別の構造を備えることもできる。少なくとも1つの実施形態では、コイル104は、基体102を省略することができるだけの剛性を有している。
【0028】
例示的な本実施形態では、ボビン124~134は、ヒンジ接合137によって互いに結合される。さらに詳細には、ボビン124と126は、ヒンジで結合されてその間で枢動することができる。様々な実施形態で、ボビン124~134は、コイル104を効率的に巻くことができるように一直線に整列させ、その後互いに枢動させて、図5に示すようにほぼ円形の形状を形成することができる。
【0029】
基体102の各ボビン124~134は非磁性構造であり、ボビン124~134が、例えば熱可塑性材料、セラミック材料、木材料またはその他の1種類または複数種類の適当な材料などを含めて、1つまたは複数の非磁性材料で構成されるようになっている。例示的な本実施形態では、各ボビン124~134は、誘電材料で作製され、この誘電材料は、おそらく誘電材料108と一致している。非磁性基体102を使用することにより、1つまたは複数の磁心を備える既知のセンサ装置に優るコスト削減が可能になる。さらに、例示的な本実施形態では、基体102は、嵩張る磁心を備える既知のセンサ装置と比較して、需給計器10内および/または計器制御盤17への取付けが改善されるような形状および/またはサイズを有している。さらに、例示的な本実施形態では、ボビン124~134は、筐体112とは別個に形成される。ただし、その他のセンサ装置の実施形態では、ボビン124~134は、筐体112と一体的に形成し、および/または筐体112の1つまたは複数の部分を形成していてもよいことを理解されたい。
【0030】
例示的な本実施形態では、コイル104は、各ボビン124~134に複数のコイルターン巻き付けられる。さらに詳細には、例示的な本実施形態では、コイル104は、1本のマグネットワイヤを備え、これにより、コイル104を、各ボビン124~134にそれぞれ複数のコイルターン巻き付けながらボビン124から134に順に巻いていき、その後、各ボビン124~134にさらに巻き付けながらボビン124まで戻すことができる。その他の実施形態では、その他の異なるボビン124~134への巻き付けパターンを用いることもできることを理解されたい。ボビン124~134に対する上記の巻き付けパターンに従うと、コイル104の第1の端部および第2の端部は、ボビン124で終端する。図7に示すように、また以下でさらに述べるように、コイル104の第1の端部は、リード線136で終端し、コイル104の第2の端部は、リード線138で終端する。」
「【図4】
[図:0001405398000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001405398000005.jpg]
」
d 段落【0040】
「【0040】
センサ装置12の精度は、導体14を流れる電流の実際値の百分率として理解することができる。例示的な本実施形態では、センサ装置12は、約2アンペアから約200アンペアの間の範囲内で実際値の約±0.2%の範囲内で動作する。さらに詳細には、センサ装置12は、Class 0.2の範囲内、すなわち約60Vから約600Vの間の動作電圧で200Aに対して0.4Aの精度の範囲内、さらに詳細には、約240Vで0.2%の精度の範囲内で動作する。本開示の1つまたは複数の態様と整合するセンサ装置12は、場合によっては所期の適用分野および/あるいは当該所期の適用分野に関連する1つまたは複数の精度要件に応じて、様々な動作電流/電圧で1つまたは複数の精度標準に従うことができることを理解されたい。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「電力源から利用者に供給される電気を測定するために使用される需給計器10であって、(【0002】、【0008】)
需給計器10は、センサ装置12、導体14、およびセンサ装置12に結合された計器制御盤17を含み、
導体14としては、電力源から電力利用者に電気を伝送する適当な導体などが挙げられ、電力源としては、ガスタービンエンジン、水力発電タービン、風力タービンなどの、電力網および/または発電システムが挙げられ、
利用者としては、一般家庭利用者、商用利用者、および/またはその他の任意レベルの任意の電気利用者が挙げられ、
センサ装置12は、導体14に結合されて、導体14を流れる電流を感知し、感知した電流を表す信号を、計器制御盤17に提供し、(【0008】)
センサ装置12は導体14の周りに位置決めされており、(【0015】)
センサ装置12は、基体102、基体102の周りに巻き付けた複数ターンからなるコイル104、および誘電材料108を含み、(【0011】)
基体102は非磁性基体を使用し、(【0029】)
コイル104には開口110が画定されており、この開口110は、その中に導体14を受けるように構成されており、(【0011】)
誘電材料108は、約10~1000Hzで約3.0以上の誘電率を有することができ、(【0012】)
誘電材料108は、コイル104に近接して、少なくとも一部が開口110内に入るように、さらに詳細には、誘電材料108は、導体14を開口110に通して位置決めしたときに、少なくとも一部がコイル104と導体14の間に位置決めされ、(【0011】)
センサ装置12から受信した信号に基づいて、計器制御盤17は、ある期間にわたって電力源から利用者に導体14を通じて伝送される電気の量を決定し、(【0008】)
誘電材料108は、コイル104と導体14の間に画定されたエアギャップ106の少なくとも一部分の中に位置決めされ、その結果、誘電材料108は、コイル104および導体14を近接させたまま、コイル104と導体14の間の静電容量の低下に影響を及ぼし、(【0015】)
コイル104と導体14の間の容量結合を低減することにより、動作電圧に対する感度を低下させ、その結果、高電流および低電流を含む様々な電流範囲にわたって、様々な動作電圧で、一貫した電流検知が行われ、計器制御盤17は、複数の動作電圧に対して較正係数を1つ使用するだけでよく、(【0016】)
センサ装置12は、約2アンペアから約200アンペアの間の範囲内で実際値の約±0.2%の範囲内で動作し、所期の適用分野および/あるいは当該所期の適用分野に関連する1つまたは複数の精度要件に応じて、様々な動作電流/電圧で1つまたは複数の精度標準に従うことができ、(【0040】)
基体102は、6個のボビン124、126、128、130、132および134を含み、各ボビン124~134は、ほぼ円形の断面を有し、両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱であり、(【0027】)
コイル104は、各ボビン124~134に複数のコイルターン巻き付けられ、(【0030】)
コイル104は、ロゴスキーコイルを含む、(【0026】)
需給計器10。」
イ 引用文献2に記載された事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2009-135523号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
空芯のコイルは鉄心が無いため軽量で、また鉄心による飽和がないという利点がある。その代表的な空芯のコイルとしてはロゴスキーコイルがある。このロゴスキーコイルは、分電盤内で主幹ブレーカだけでなく各々の分岐ブレーカに流れる電流計測に従来用いられていた変流器(CT)のような電流センサに代わり、電流検出用コイルとして用いられ、その特徴である鉄心の飽和がなく点を生かしたダイナミックレンジが広く、大電流まで検出できる電流センサを実現している。」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献2に示されているように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。
[技術常識1]
「電流検出用コイルとして用いられるロゴスキーコイルは鉄心が無い空芯のコイルであり、飽和がないこと。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「電力源から利用者に供給される電気を測定するために使用される需給計器10」に関し、引用発明の「需給計器10」、「電力源」及び「電気」は、本件補正発明の「需給計器」、「電源」及び「電気エネルギー」に相当するから、本件補正発明と引用発明は、「電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器」の発明である点で一致する。
b 引用発明において、「需給計器10」は、「センサ装置12、導体14、およびセンサ装置12に結合された計器制御盤17を含み」、「センサ装置12」は、「導体14に結合されて、導体14を流れる電流を感知し、感知した電流を表す信号を、計器制御盤17に提供し」、さらに、「センサ装置12は導体14の周りに位置決めされて」いる。
ここで、引用発明の「センサ装置12」及び「導体14」は、本件補正発明の「センサデバイス」及び「導体」に相当し、本件補正発明と引用発明は、「前記需給計器は、導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイスを備え[る]」点で一致する。
c 引用発明において、「センサ装置12」は、「基体102」を含み、「基体102は非磁性基体を使用し」ている。
本件補正発明において、「基板」は、その「周りに」複数の巻数を備える「コイル」が「巻きつけ[られて]」おり、本願の明細書の段落【0012】及び下記に摘記した【図2】を参酌すると、102の符号で示される部材を意味しており、板状の部材ではないことが分かる。
「【図2】
[図:0001405398000006.jpg]
」
また、引用文献1のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2013/0063131号明細書(段落[0019](引用文献1の段落【0011】に対応する。))及び本願のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2014/0340072号明細書(段落[0020](本願の明細書の段落【0012】に対応する。))においては、符号102で示される部材は、いずれも「substrate」という英単語を用いている。
そうすると、引用発明の「基体102」は、本件補正発明の「基板」に相当する。
ここで、引用発明の「基体102」は、「非磁性基体を使用し」ているから本件補正発明の「非磁性基板」に相当し、本件補正発明と引用発明は、「前記センサデバイスは、非磁性基板」を備える点で一致する。
d 引用発明において、「センサ装置12」は、「基体102の周りに巻き付けた複数ターンからなるコイル104」を含んでいる。
ここで、引用発明の「複数ターン」及び「コイル104」は、本件補正発明の「複数の巻数」及び「コイル」に相当し、本件補正発明と引用発明は、「センサデバイス」が「前記非磁性基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイル」を備える点で一致する。
e 引用発明において、「センサ装置12」は、「誘電材料108を含」み、当該「誘電材料108」は、本件補正発明の「誘電材料」に相当するから、本件補正発明と引用発明は、「センサデバイス」が「誘電材料と、を備え[る]」点で一致する。
f 引用発明において、「コイル104には開口110が画定されており、この開口110は、その中に導体14を受けるように構成されて」いる。
ここで、引用発明の「開口110」は、本件補正発明の「開口」に相当し、本件補正発明と引用発明は、「前記コイルは、前記導体を受ける開口を画定し」ている点で一致する。
g 引用発明において、「誘電材料108は、約10~1000Hzで約3.0以上の誘電率を有」し、「誘電材料108は、導体14を開口110に通して位置決めしたときに、少なくとも一部がコイル104と導体14の間に位置決めされ」、また、「誘電材料108は、コイル104に近接して、少なくとも一部が開口110内に入るように」位置決めされているから、本件補正発明と引用発明は、「前記誘電材料は、誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置され」ている点で一致する。
h(a) 引用発明において、「需給計器10」は、「計器制御盤17を含み」、「センサ装置12から受信した信号に基づいて、計器制御盤17は、ある期間にわたって電力源から利用者に導体14を通じて伝送される電気の量を決定し」ている。
ここで、引用発明の「計器制御盤17」は、本件補正発明の「計器制御盤」に相当する。
また、引用発明の「電気の量」は、本件補正発明の「電力の量」に相当する。なお、この点については、本願の明細書の段落【0009】の「電力の量」に対応する英語として、本願のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2014/0340072号明細書(段落[0017]を参照)においては「an amount of electricity」を用いているところ、引用文献1の段落【0008】の「電気の量」に対応する英語として、引用文献1のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2013/0063131号明細書(段落[0016]を参照)においても、「an amount of electricity」という同じ英語表現を用いていることからも明らかである。
(b) 前記bにおいて説示したとおり、引用発明において「センサ装置12」は、「導体14に結合されて、導体14を流れる電流を感知し、感知した電流を表す信号を、計器制御盤17に提供し」ているから、「計器制御盤17」はセンサデバイスから感知した電流を表す信号を受け取っていると認められる。
(c) また、前記(a)において説示したとおり、引用発明において、「計器制御盤17は、ある期間にわたって電力源から利用者に導体14を通じて伝送される電気の量を決定し」ており、これは、本件補正発明の「時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定する」ことに相当する。
(d) そして、前記bにおいて説示したとおり、引用発明の「計器制御盤17」は「センサ装置12に結合された」ものであるから、前記(a)から(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記需給計器は、更に、前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤を備え」る点で一致する。
i(a) 引用発明において、「誘電材料108は、約10~1000Hzで約3.0以上の誘電率を有」している。
(b) また、引用発明において、「誘電材料108は、コイル104と導体14の間に画定されたエアギャップ106の少なくとも一部分の中に位置決めされ、その結果、誘電材料108は、コイル104および導体14を近接させたまま、コイル104と導体14の間の静電容量の低下に影響を及ぼし」ており、「誘電材料108」の誘電率はコイル104と導体14の間の静電容量に影響を与えるから、前記(a)を踏まえると、本件補正発明の「前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように」「選択され」る構成を備えているものと認められる。
(c) さらに、引用発明において、「コイル104と導体14の間の容量結合を低減することにより、動作電圧に対する感度を低下させ、その結果、高電流および低電流を含む様々な電流範囲にわたって、様々な動作電圧で、一貫した電流検知が行われ、計器制御盤17は、複数の動作電圧に対して較正係数を1つ使用するだけでよく」する構成を有している。
ここで、引用発明の「較正係数」は、本件補正発明の「校正係数」に相当する。なお、この点については、本願のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2014/0340072号明細書(段落[0025](本願の明細書の段落【0017】に対応する。))及び引用文献1のパテントファミリー文献である米国特許出願公開第2013/0063131号明細書(段落[0024](引用文献1の段落【0016】に対応する。))においては、いずれも対応する英語表現が「calibration coefficient」という同一の表現であることからも明らかである。
したがって、引用発明の前記構成は、本件補正発明の「前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され」る構成に相当する。
(d) 以上から、本件補正発明と引用発明は、「前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され」る点で一致する。
j(a) 引用発明において、「基体102は、6個のボビン124、126、128、130、132および134を含み、各ボビン124~134は、ほぼ円形の断面を有し、両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱であり」、「コイル104は、各ボビン124~134に複数のコイルターン巻き付けられ」ている。
(b) ここで、引用発明の「6個のボビン」は、本件補正発明の「複数のボビン」に相当する。
(c) また、引用発明の「各ボビン」は、「両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱であり」、「コイル104」は、「各ボビン124~134に複数のコイルターン巻き付けられ」ているから、「コイルを周りに巻きつける円形領域を含む」ことは明らかである。
(d) 以上を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記非磁性基板が、複数のボビンを備え、前記コイルの複数の巻数の少なくとも1つを、前記複数のボビンのそれぞれの周りに巻きつけ、各前記ボビンは、前記コイルを周りに巻きつける円形領域を含む」点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
a 一致点
「電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器であって、
前記需給計器は、導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイスを備え、
前記センサデバイスは、
非磁性基板と、
前記非磁性基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイルと、
誘電材料と、を備え、
前記コイルは、前記導体を受ける開口を画定し、
前記誘電材料は、誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置され、
前記需給計器は、更に、前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤を備え、
前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され、
前記非磁性基板が、複数のボビンを備え、前記コイルの複数の巻数の少なくとも1つを、前記複数のボビンのそれぞれの周りに巻きつけ、
各前記ボビンは、前記コイルを周りに巻きつける円形領域を含む、需給計器。」である点。
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するようにする対象である「電流範囲」が、「2.0Aから25,000Aまでであ[る]」のに対し、
引用発明においては、「コイル104と導体14の間の容量結合を低減することにより、動作電圧に対する感度を低下させ」、「高電流および低電流を含む様々な電流範囲にわたって、様々な動作電圧で、一貫した電流検知が行われ、計器制御盤17は、複数の動作電圧に対して較正係数を1つ使用するだけでよく」することが記載されているものの、具体的に設計する電流範囲が開示されていない点。
(b) 相違点2
本件補正発明においては、「前記コイルは、飽和にならない空芯を有し、前記センサデバイスは、飽和または過飽和の可能性がないインダクタとして連続的に働き、各前記ボビンは、環状であ[る]」構成を有するのに対し、
引用発明においては、「コイル104は、例示的なロゴスキーコイルを含」み、「各ボビン124~134は、ほぼ円形の断面を有し、両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱であ」ることが記載されているものの、前記構成を有することが明示されていない点。
イ 判断
前記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 引用発明における「センサ装置12」は、「約2アンペアから約200アンペアの間の範囲内で実際値の約±0.2%の範囲内で動作」するものであって、少なくとも2.0A以上の電流範囲における測定を想定しており、本件補正発明のように、2.0A以上の電流範囲を想定して設計することは、当業者であれば適宜なし得ることにすぎない。
b そして、引用発明は、利用者としては、「一般家庭利用者、商用利用者、および/またはその他の任意レベルの任意の電気利用者」を想定しているところ、一般に、製品の多くの目的で使えるようにするために動作レンジを拡大することは、当業者にとっては自明な設計指針であり、さらに、引用発明においては、需給計器10の測定の対象とする導体14としては、「電力源から電力利用者に電気を伝送する適当な導体などが挙げられ、電力源としては、ガスタービンエンジン、水力発電タービン、風力タービンなどの、電力網および/または発電システムが挙げられ」ているように、高電流への用途まで想定されているから、センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するようにする対象である「電流範囲」として、25,000Aまでの電流範囲に拡大することは、当業者が容易に想到し得ることである。
c したがって、引用発明において、相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2について
a 引用発明においては、「コイル104は、ロゴスキーコイルを含む」ものであり、「電流検出用コイルとして用いられるロゴスキーコイルは鉄心が無い空芯のコイルであり、飽和がないこと」は、本願の優先日の時点において技術常識であったと認められる(前記「技術常識1」を参照)。
そうすると、引用発明の「ロゴスキーコイル」である「コイル104」は、空芯であり、かつ、飽和のないものであることは自明である。
b また、引用発明において、「各ボビン124~134は、ほぼ円形の断面を有し、両端にコイル104を保持するためのフランジ135を備えた直円柱であ」り、前記のようにコイル104が空芯であることを踏まえると、引用発明における各ボビンを環状とすることは、当業者が適宜なし得る自明の設計事項にすぎない。
c したがって、引用発明において相違点2に係る構成を備えることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張等について
(ア) 審判請求書の主張について
a 審判請求書の主張内容
審判請求書において請求人は、概略次の主張をしている。
引用文献1は、コイルが磁心を開示しているが(段落[0030]参照)、「コイルの空芯」を開示していない。
引用文献1の明細書にコイルの空芯が記載されていないので、引用文献1の図5も、コイルの空芯を示しているわけではなく、環状でない(中実である)ボビンが凹んだ側面を有していることを示しているにすぎない。即ち、引用文献1は、環状のボビンについて何ら開示も示唆もしていない。
したがって、本件補正発明を当業者が引用文献1に基づいて容易に想到し得たものではない。
b 請求人の主張についての検討
引用文献1の段落【0030】においては、請求人の主張するような「コイルが磁心を開示」をしていない。むしろ段落【0029】に「非磁性基体102を使用することにより、1つまたは複数の磁心を備える既知のセンサ装置に優るコスト削減が可能になる。」と記載されるように、磁心を備えないことをその構成の本質とするものである。よって、当該主張は失当である。
また、引用発明においてコイル104が空芯であり、かつ、飽和のないものであることは自明であること、及び、ボビンを環状とすることが設計事項にすぎないことは、前記イ(イ)において説示したとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(イ) 上申書補正案について
a 上申書補正案の内容
請求人は、令和5年4月7日に提出された上申書(以下、単に「上申書」という。)において、次に示す補正案を示している。
[上申書補正案の補正内容]
本件補正発明に対し、次の(a)及び(b)に示す事項を補正する。
(a) 「非磁性基板」を「非磁性基材」とすること。
(b) 「各前記ボビン」が「前記センサデバイスに電圧非依存を提供する空芯」を更に含むように限定すること。
b 上申書補正案についての検討
以下検討するように、上申書補正案では進歩性を有すると認められないから、当該補正案は受け入れることができない。
(a) 前記a(a)の補正事項は、「非磁性基板」を「非磁性基材」と補正するものであるところ、前記ア(ア)cにおいて説示したように、これが引用発明の「基体102」に相当するとした判断が変わるものではないから、当該補正事項をもっては、前記イ(ウ)の結論は変わらない。
(b) 前記b(b)の補正事項については、本願の明細書の段落【0050】に「空芯を有するインダクタとして、センサデバイス12は、電圧非依存である」とあるように、「空芯」を有するものであれば、「電圧非依存」である。
そうすると、引用発明の「コイル104」が「空芯」を有するものであることは、前記イ(イ)において説示したとおりであるから、引用発明のものも「電圧非依存を提供する空芯」を備えることとなる。
したがって、当該補正事項をもっては、前記イ(ウ)の結論は変わらない。
(c) 前記(a)及び(b)に検討したとおりであるから、上申書補正案によっては、進歩性を有するとは認められない。
(4) 独立特許要件の判断についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如)
本願発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2013-61329号公報
3 引用文献に記載された事項
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1) 対比
ア 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(ア) 前記第2の3(3)ア(ア)aにおいて説示したとおり、本願発明と引用発明は、「電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器」の発明である点で一致する。
(イ) 引用発明において、「需給計器10」は、「センサ装置12、導体14、およびセンサ装置12に結合された計器制御盤17を含み」、「センサ装置12」は、「導体14に結合されて、導体14を流れる電流を感知し、感知した電流を表す信号を、計器制御盤17に提供し」、さらに、「センサ装置12は導体14の周りに位置決めされて」いる。
ここで、引用発明の「センサ装置12」及び「導体14」は、本願発明の「センサデバイス」及び「導体」に相当し、本願発明と引用発明は、「需給計器」が、「導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイス」を備える点で一致する。
(ウ) 引用発明において、「センサ装置12」は、「基体102」を含んでおり、前記第2の3(3)ア(ア)cにおいて説示したとおり、引用発明の「基体102」は、本願発明の「非磁性基板」に相当し、本願発明と引用発明は、「センサデバイス」が、「非磁性基板」を備える点で一致する。
(エ) 引用発明において、「センサ装置12」は、「基体102の周りに巻き付けた複数ターンからなるコイル104」を含んでいる。
また、引用発明において、「コイル104には開口110が画定されており、この開口110は、その中に導体14を受けるように構成されて」いる。
ここで、引用発明の「複数ターン」、「コイル104」及び「開口110」は、本願発明の「複数の巻数」、「コイル」及び「開口」に相当し、本願発明と引用発明は、「センサデバイス」が「前記基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイルであって、それを通して前記導体を受ける開口を画定するコイル」を備える点で一致する。
(オ)a 引用発明において、「センサ装置12」は、「誘電材料108を含」んでおり、当該「誘電材料108」は、本願発明の「誘電材料」に相当する。
b 引用発明において、「誘電材料108は、約10~1000Hzで約3.0以上の誘電率を有」し、「誘電材料108は、導体14を開口110に通して位置決めしたときに、少なくとも一部がコイル104と導体14の間に位置決めされ」、また、「誘電材料108は、コイル104に近接して、少なくとも一部が開口110内に入るように」位置決めされているから、前記aを踏まえると、本願発明と引用発明は、「センサデバイス」が「誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置された前記誘電材料を備える」点で一致する。
(カ) 前記第2の3(3)ア(ア)hにおいて説示したとおり、本願発明と引用発明は、「需給計器」が、「前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤とを備える」点で一致する。
(キ) 前記第2の3(3)ア(ア)iにおいて説示したとおり、本願発明と引用発明は、「前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択され」る点で一致する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
(ア) 一致点
「電気エネルギーを電源から使用者に伝送する際に使用するための需給計器であって、
導体を流れる電流を感知するためにおよび前記感知した電流を表す信号を出力するために、少なくとも部分的に前記導体の周りに配置可能なセンサデバイスであって、
非磁性基板、
前記基板の周りに巻きつけた複数の巻数を備えるコイルであって、それを通して前記導体を受ける開口を画定するコイル、および
誘電率を有し、前記導体を前記開口を通して受けたとき誘電材料が前記コイルと前記導体との間にあるように前記コイルに隣接し、少なくとも部分的に前記開口内に配置された前記誘電材料を備えるセンサデバイスと、
前記感知した電流を表す前記信号を前記センサデバイスから受け取るためにおよび時間経過とともに前記導体を通して前記電源から前記使用者に伝送された電力の量を決定するために、前記センサデバイスに連絡した計器制御盤とを備える需給計器であって、
前記誘電材料の前記誘電率が、前記コイルと前記導体との間の容量結合を低減するように、およびその結果として、前記計器制御盤がある電流範囲にわたって前記センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するように選択される、需給計器。」である点。
(イ) 相違点
本願発明においては、センサデバイスを校正するための1つの校正係数だけを備えるように、前記センサデバイスの感度を低減するようにする対象である「電流範囲」が、「2.0Aから25,000Aまでであ[る]」のに対し、
引用発明においては、「コイル104と導体14の間の容量結合を低減することにより、動作電圧に対する感度を低下させ」、「高電流および低電流を含む様々な電流範囲にわたって、様々な動作電圧で、一貫した電流検知が行われ、計器制御盤17は、複数の動作電圧に対して較正係数を1つ使用するだけでよく」することが記載されているものの、具体的に設計する電流範囲が開示されていない点。
(2) 判断
ア 前記(1)イ(イ)に示された相違点は前記第2の3(3)ア(イ)b(a)の相違点1と同等のものであるところ、前記第2の3(3)イ(ア)において検討したのと同様に、前記相違点は、当業者が容易に想到し得たことである。
イ そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
ウ したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014245