特許拒絶査定不服審判
2017-018798
導体を通る電流を感知する際に使用されるセンサデバイスおよび方法
- 審判番号
- 2017-018798
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-192742
- 請求日
- 2017年12月19日
- 審決日
- 2019年03月29日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アクララ ミーターズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】弟子丸 健
- 【請求人代理人】松下 満
- 【請求人代理人】倉澤 伊知郎
- 【請求人代理人】山本 泰史
- 【請求人代理人】磯貝 克臣
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 紀史
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .536-WZ (G01R) / P18 .121-WZ (G01R) / P18 .537-WZ (G01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-192742「導体を通る電流を感知する際に使用されるセンサデバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日出願公開、特開2013- 61327〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年9月3日
(パリ条約による優先権主張2011年9月9日、米国)
拒絶査定: 平成29年9月20日(送達日:同年同月25日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年12月19日
手続補正: 平成29年12月19日
拒絶理由通知: 平成30年10月23日
(発送日:同年同月29日、以下、「当審拒絶理由」という。)
手続補正: 平成31年1月29日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成31年1月29日(以下、「本件意見書」という。)
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであり、請求項1ないし6に係る発明はそれぞれ次のとおりのものである。
「【請求項1】
アパーチャ(110)を画定するロゴスキコイル(104)と、
前記ロゴスキコイルを少なくとも部分的に囲い、第1部分と第2部分とを有する誘電材料(108)であって、前記誘電材料は、10Hzから1000Hzにおいて3.5以上の選択された誘電率を有し、前記誘電材料は、導体が少なくとも部分的に前記アパーチャ内に挿入されるときに、前記誘電材料の少なくとも前記第1部分が前記ロゴスキコイルと前記導体との間に位置決めされるように構成される、誘電材料(108)と、
を含み、
前記誘電材料(108)の前記第1部分が、選択された第1の厚さを有し、
前記第1の厚さは、半径方向かつ前記導体(14)と垂直方向の厚さであって、0.5mm~3.0cmであり、
前記誘電材料(108)の少なくとも前記第1部分は、前記ロゴスキコイル(104)と前記導体(14)との間に画定されるエアギャップ(106)の少なくとも一部の中に位置決めされており、
前記誘電材料(108)の前記選択された誘電率及び前記選択された第1の厚さは、前記ロゴスキコイル(104)と前記導体(14)とが相対的に近接したままであることを許容しながら、前記ロゴスキコイル(104)と前記導体(14)との間の容量の減少に影響する
ことを特徴とする、導体(14)内の電流を検出する際に使用されるセンサデバイス(12)。
【請求項2】
前記ロゴスキコイル(104)を少なくとも部分的に囲うエンクロージャ(112)を更に備え、
前記エンクロージャは、前記誘電材料(108)の少なくとも一部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記誘電材料(108)は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)熱可塑性材料を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記エンクロージャ(112)は、第1エンクロージャ部分(118)と、前記ロゴスキコイル(104)を実質的に囲うために前記第1部分に解放可能に結合される第2エンクロージャ部分(120)と、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記誘電材料(108)の前記第1部分および前記第2部分のうちの少なくとも一部は、1.0mmと8.0mmとの間の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記ロゴスキコイル(104)を支持するように構成された非磁性基板(102)を更に備え、
前記基板は、複数のボビン(124、126、128、130、132、134)を含み、
前記複数のボビンは、第2誘電材料を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサデバイス。」
第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由の理由2の概要は、以下のとおりである。
「2 本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
「2 理由2について
本願明細書の【0016】~【0017】に、
「【0016】
…したがって、静電容量が、コイル104と導体14との間に存在する。この容量は、異なる動作電圧(たとえば、約30Vから約277Vまでの範囲)でセンサデバイス12の正確度に影響する可能性がある。例示的実施形態では、誘電材料108は、コイル104と導体14との間に画定されるエアギャップ106の少なくとも一部の中に位置決めされる。その結果、誘電材料108は、コイル104および導体14が非常に接近したままであることを許容しながら、コイル104と導体14との間の容量に影響し、かつ/またはその容量の減少を容易にする。
【0017】
容量の減少は、センサデバイス12が、既知のロゴスキコイルまたは他のエアギャップコイルと比較して改善された正確度を伴って導体14を通って流れる電流を感知することを可能にする。より具体的には、コイル104と導体14との間の容量結合を減らすことによって、動作電圧に対する感度が下げられる。」
と記載されているが、技術常識をふまえれば、コイル104と導体14との間に誘電材料108を位置させれば、(誘電材料108が存在しないエアギャップ106に比べて)その容量は増大するものと認められるところ、どのようにすれば、容量が減少し、センサデバイス12が改善された正確度を伴って導体14を通って流れる電流を感知可能となるのかが不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 」
第4 当審の判断
当審拒絶理由の理由2において指摘した、発明の詳細な説明の段落【0016】及び【0017】は本件補正の対象とはされていない。
そして、当審拒絶理由の理由2については、本件意見書において、
「本発明の原理は、一方の導体を他方の導体から更に離間させて誘電材料を挿入することで、導体間に元々形成されていたコンデンサに誘電材料からなるコンデンサを直列に接続するものである。誘電材料の誘電率が大きくて当該誘電材料からなるコンデンサの容量が極めて大きかったとしても、原理的に、直列接続の全体の容量は元の容量よりも小さくなる(1/C=1/C1+1/C2の関係が成り立つ場合、C2が如何に大きくても、C<C1となる)。」
「(3) 特許法第36条第4項第1号に関する審判官殿のご指摘に対しては、以下の説明を補足する。
前述のように、本発明の基本原理は、一方の導体を他方の導体から更に離間させて当該更なる離間距離に応じて誘電材料を挿入することで、導体間に元々形成されていたコンデンサ(この部分は不変)に誘電材料からなるコンデンサを直列に接続するものである(そして、実用上有益な数値範囲として、3.5以上の選択された誘電率を有する誘電材料について、第1の厚さ0.5mm~3.0cmという範囲を規定している)。
審判官殿が指摘する通り、導体間の距離を変えないで、それらの間の空間であった領域の一部を誘電材料に置き換える場合には、空気よりも誘電材料の方が誘電率が大きいため、容量は増大することになるが、そのようなアプローチではエアギャップの寸法が減少することになって、コイルに対する導体の移動性能が維持できない(すなわち、本発明の技術分野に属する当業者は、そのようなアプローチを考慮しない)。」
と主張されている。
しかしながら、発明の詳細な説明においては、「コイル104と導体14との間の容量結合を減らす」(【0017】)という課題は記載されているものの、これを解決するための構成として、請求人の上記主張のように「一方の導体を他方の導体から更に離間させて当該更なる離間距離に応じて誘電材料を挿入する」ことは記載も示唆もされていない。
そればかりか、発明の詳細な説明においては、
「【0016】
・・・例示的実施形態では、誘電材料108は、コイル104と導体14との間に画定されるエアギャップ106の少なくとも一部の中に位置決めされる。その結果、誘電材料108は、コイル104および導体14が非常に接近したままであることを許容しながら、コイル104と導体14との間の容量に影響し、かつ/またはその容量の減少を容易にする。」(下線は当審による。)
として、誘電材料がエアギャップの全部の中に位置決めされた(すなわち、エアギャップが無い)形態を含むものが例示され、またコイルと導体とが非常に接近したまま(つまり、更なる離間がなされないまま)であることが許容されながら、容量を減少させることが記載されている。またこれらの点は、請求項1の記載にも含まれているものである。
しかしながら、請求人も上記主張において「導体間の距離を変えないで、それらの間の空間であった領域の一部を誘電材料に置き換える場合には、空気よりも誘電材料の方が誘電率が大きいため、容量は増大することになる」と認めているように、技術常識をふまえれば、上記例示された形態によって容量の減少を実現することはできない。
したがって、請求人の上記主張は、この出願の発明の詳細な説明の記載に基づかないものであって、これを採用することはできない。
なお、請求人は本件意見書において、「・・・そのようなアプローチではエアギャップの寸法が減少することになって、コイルに対する導体の移動性能が維持できない(すなわち、本発明の技術分野に属する当業者は、そのようなアプローチを考慮しない)。」とも主張しているが、「コイルに対する導体の移動性能」を維持する必要があるということは、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。また、このことが当業者にとって自明の事項であると認めるに足りる証拠もない。したがって、請求人の主張を認めることはできない。またこれを仮に認めたとしても、それにより得られるのは、容量の減少を実現できないという認識にとどまるのであって、請求人が本願発明の原理であると主張する、「一方の導体を他方の導体から更に離間させて当該更なる離間距離に応じて誘電材料を挿入する」という事項が、発明の詳細な説明から導き出せるものではない。
よって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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