特許拒絶査定不服審判
2022-012202
検査治具
- 審判番号
- 2022-012202
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-241392
- 請求日
- 2022年08月05日
- 審決日
- 2023年06月14日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ヨコオ
- 【請求人代理人】村井 弘実
- 【請求人代理人】村井 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 田邉 英治
- 審判官 後藤 慎平
- 分類
- P18 .121-Z (G01R) / P18 .572-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-241392「検査治具」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-109103〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成29年12月18日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年11月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月17日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年8月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月5日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年8月5日にされた特許請求の範囲の請求項1についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
リジッド基板と、
前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して第1方向に突出した状態で支持する支持体と、
前記支持体を前記リジッド基板に対して前記第1方向に付勢する付勢手段と、
前記フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられたコンタクタと、を備え、
前記コンタクタは、
コンタクトハウジングと、
前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有し、
前記プローブは伸縮性を有さない部材からなる、検査治具。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
リジッド基板と、
前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して第1方向に突出した状態で支持する支持体と、
前記支持体を前記リジッド基板に対して前記第1方向に付勢する付勢手段と、
前記フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられた、コンタクタと、を備え、
前記コンタクタは、
コンタクトハウジングと、
前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有し、
前記プローブは、伸縮性を有さない部材からなり、
前記支持体は凹部を備え、前記付勢手段は前記凹部に侵入し、
前記フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有し、
前記フレキシブル基板上に設けられた少なくとも1つの電子部品が前記傾斜部に配置される、検査治具。」
2 本件補正の目的
(1) 補正事項について
ア 本件補正は、次に示す二つの補正事項を含むものである。
補正事項1:「前記支持体は凹部を備え、前記付勢手段は前記凹部に侵入し」との記載を請求項1に加入する。
補正事項2:「前記フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有し、前記フレキシブル基板上に設けられた少なくとも1つの電子部品が前記傾斜部に配置される」との記載を請求項1に加入する。
イ 補正事項1は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「支持体」及び「付勢手段」について、「前記支持体は凹部を備え、前記付勢手段は前記凹部に侵入し」と限定するものである。
ウ 補正事項2は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「フレキシブル基板」について、「前記フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有し、前記フレキシブル基板上に設けられた少なくとも1つの電子部品が前記傾斜部に配置される」と限定するものである。
(2) 解決しようとする課題の同一性について
ア 本件補正前の課題
本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、本願明細書【0004】~【0005】の「フレキシブル基板の接点部が1つでも破損すると、フレキシブル基板全体を交換しなければならないため、交換にかかる時間と費用が膨大になる。本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、フレキシブル基板の接点部の破損を抑制可能な検査治具を提供することにある。」との記載からみて、フレキシブル基板の接点部の破損を抑制可能な検査治具を提供することである認められる。
そして、当該課題を解決するために、本件補正前の請求項1に係る発明は、フレキシブル基板のリジッド基板に対して突出した突出部にコンタクタを設け、前記コンタクタは、コンタクトハウジングと、前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有するようにしたものである。
イ 本件補正後の課題
(ア) 本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題は、本件補正前の発明特定事項に加えて、前記補正事項1及び補正事項2の発明特定事項も考慮して把握されるべきものである。
(イ) ここで、特に、補正事項2の発明特定事項については、本願明細書【0016】の「フレキシブル基板20の左右両端部と突出部21との間の傾斜部22には、高周波ライン25上に実装される整合回路や、電源ラインとグランドラインとの間に接続される電子部品28(例えばチップコンデンサ)が必要に応じて設けられる。」との記載からみて、測定信号の整合の問題(例えばインピーダンスマッチング)や、電源ラインのノイズの問題に対処するために必要となる整合回路やチップコンデンサのような電子部品をフレキシブル基板の傾斜部に設置することを特定したものであると認められる。
(ウ) この点に関して、請求人は審判請求書において、「本願発明は、相違点2の構成(当審注:補正事項2に係る構成)を有しており、フレキシブル基板の両端部と突出部との間の傾斜部に電子部品を配置することで、コンタクタの近くに電子部品を設けることが可能で、高周波信号の測定に有利となります。」との主張をしていることを踏まえると、少なくとも前記補正事項2の発明特定事項を考慮して把握される本件補正後の発明の解決しようとする課題には、高周波信号の測定における電子部品の配置の最適化という課題が含まれるといえる。
ウ 課題の同一性についての当審の判断
前記ア及びイにおいて検討した事項を踏まえると、本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、フレキシブル基板の接点部の破損を抑制可能な検査治具を提供することであるのに対して、本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題には、高周波信号の測定における電子部品の配置の最適化という課題が含まれるから、本件補正後の課題には、本件補正前の課題とは異なるものが追加されていることは明らかである。
そして、本件補正後の課題は、本件補正前の課題を概念的に下位にしたものでも、同種のものでもないなど、技術的に密接に関連しているとはいえないから、本件補正の前後において、発明の解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
(3) 本件補正の目的についての当審の判断
以上によれば、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法17条の2第5項1号、3号又は4号に規定するいずれを目的としたものに該当しないことも明らかである。
(4) むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に規定するいずれを目的としたものにも該当しない補正であり、同項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正が、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮に認めたとしても、以下に詳述するとおり、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2014-1997号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した(以下同様)。
a 【0001】-【0008】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路のような平板状の被検査体の電気試験的試験に用いる垂直動作式プローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハに作り込まれた多数の集積回路は、一般的に、該ウエハから切断、分離されるに先立ち、仕様書通りの性能を有するか否かの電気的試験を受ける。そのような試験では、1枚のウエハの多数の集積回路は、一回で同時に、又は複数回に分けて試験を受ける。この種の試験に用いられるプローブカードの1つとして、棒状をした複数のプローブを用いた垂直動作式プローブカードがある(特許文献1)。
【0003】
この垂直動作式のプローブカードでは、各プローブは一組の線状部と一組の線状部間で両線状部を連結する「く」の字状の連結部(屈曲部)とで構成されている。各プローブは、該プローブの挿通を許すプローブ支持体により支持され、各プローブの一端は、プローブの基端としてプローブ基板の回路の接合パッドに、はんだ付けされている。また、各プローブの他端は、プローブの針先として被検査体の電極に押し付けられる。このとき、前記連結部は両線状部間で弾性変形を受けることから、その弾性力がプローブの針先に前記電極への押し付け力(オーバドライブ力)として作用するので、プローブと被検査体の電極とが電気的に確実に接続される。
【0004】
また、各プローブは、前記プローブ基板の対応する前記接合パッドに、はんだ付けされていることから、各プローブの回転運動が阻止されており、隣合うプローブの連結部間の当接による短絡が確実に防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7-29838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記プローブカードの製造で、多数のプローブを前記プローブ基板の対応する前記接合パッドにはんだ付けするとき、多数のプローブの前記連結部の干渉を防止すべく、該連結部の張出方向を少なくともグループ毎で整列させる必要があることから、はんだ付けの作業は手間取り、煩雑化する。
【0007】
しかも、各プローブは前記プローブ基板にはんだ付けされることから、プローブが例えば欠損を生じて新たなプローブに取り替える必要が生じた場合、欠損を生じたプローブのプローブ基板からの取り外し及び新たなプローブの前記プローブ基板への取付けにはんだを取り扱う作業が必要となり、プローブの取り替え作業が容易ではなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、プローブ基板の対応する接合パッドへのはんだ付け作業が不要な垂直動作式プローブカードを提供することにある。」
b 【0023】-【0032】、【図1】、【図2】
「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の特徴を図示の実施例に沿って、詳細に説明する。但し、各図面は本発明の特徴の理解に向けられており、それらは模式的であり、各図での各部の寸法及びそれらの比率等は図面間で必ずしも一致あるいは対応していない。各図で同一の機能を果たす部分には同一の参照番号が付されている。
【0024】
本発明に係る垂直動作式のプローブカード10が図1および図2に全体的に示されている。このプローブカード10は、例えば図2に示すように、昇降可能なチャック12の上方に図示しないフレームで保持される。図示の例では、被検査体はチャック12上に保持された半導体ウエハ14であり、半導体ウエハ14には多数の集積回路が集合的に組み込まれている。半導体ウエハ14は、前記集積回路の電気的検査のために、該半導体ウエハに設けられた前記集積回路の多数の電極パッド14aを上方に向けてチャック12上に保持されている。多数の電極パッド14aは、図示の例では、図2の左右方向に互い間隔をおく一対の電極パッド14a、14aが図2の紙背方向(図1の上下方向)に整列して配置されている。
【0025】
プローブカード10は、図1および図2に示されているように、円形のリジッド配線基板16と、該リジッド配線基板の下面に配置された矩形の支持ブロック18(図2参照)に矩形の中央部が支持される可撓性のプローブ基板20と、該プローブ基板に一端を当接して配置される多数のプローブ22と、これら多数のプローブ22をプローブ基板20に当接する所定位置に保持するためのプローブ支持体24とを含む。
【0026】
リジッド配線基板16の上面には、該リジッド配線基板を補強するための従来よく知られた補強板26(図2参照)が配置されている。リジッド配線基板16は、該リジッド配線基板及びその上面の補強板26を貫通しまたその下面の支持ブロック18に先端が螺合するボルト部材28により、補強板26及び支持ブロック18と一体に結合されている。
【0027】
リジッド配線基板16には、図示しない複数の配線路が設けられ、リジッド配線基板16の下面の外縁部には、各配線路に接続された接続部16aが設けられている。これら接続部16aは、前記配線路を経て前記集積回路の試験のための図示しないテスタに接続される。
【0028】
可撓性のプローブ基板20は、導電路が設けられた従来よく知られたフレキシブルプリント配線板(FPC)から成り、前記矩形の中央部の下面には、各導電路に接続された多数の接合パッド20aが設けられている。これら接合パッド20aは、電極パッド14aの配列に対応して前記中央部の下面に二列に整列して配置されている。
【0029】
プローブ基板20の前記中央部は、支持ブロック18に確実に支持されるように従来におけると同様に例えば接着剤で該支持ブロックの下面に固着されている。プローブ基板20の前記中央部の各辺から外方に延在する各延長部の外縁部は、該外縁部、リジッド配線基板16を貫通して先端が補強板26に螺合するボルト部材30の締め付け力を受けるリング部材32によって、リジッド配線基板16に結合されている。
【0030】
プローブ基板20の前記外縁部には、リジッド配線基板16の接続部16aに対向する接続部20bが設けられている。各接続部20bは、前記導電路を経て対応する接合パッド20aに接続されている。したがって、前記したボルト部材30の締め付けによって、リジッド配線基板16の前記配線路と該配線路に対応するプローブ基板20の前記導電路が確実に接続されることから、プローブ基板20の各接合パッド20aは、前記導電路及び配線路を経て前記テスタに接続される。
【0031】
各プローブ22を支持するプローブ支持体24は、図2に示すように、プローブ支持体24及びプローブ基板20を貫通して先端が支持ブロック18に螺合するボルト部材34により、支持ブロック18に取り外し可能に結合されている。
【0032】
支持ブロック18は、例えばセラミック板のような電気絶縁材料から成る硬質の一対の板36、38と、両板36、38を互いに所定の間隔をおいて平行に保持するための筒状のスペーサ40とを備え、ボルト部材34は一対の板36、38及びスペーサ40を貫通して配置されている。(当審注:この段落の「支持ブロック18」は、図2の記載からみて、「プローブ支持体24」の誤記であると認められる。)」
「【図1】
[図:0001401281000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001401281000002.jpg]
」
c 【0035】、【0042】―【0048】、【図3】、【図5】、【図6】
「【0035】
各プローブ22は、図3、図5(a)及び図5(b)に示されている例では、円形横断面を有するタングステン線のような棒状の金属線から成る。プローブ22は、一組の線状部22a、22bと、両線状部22a、22bを連結する弾性変形可能の連結部22cとを備える。図示の例では、両線状部22a、22bは、一端が互いに間隔をおいて対向するように軸線上に配置される一対の直線部からなり、連結部22cは「く」の字状の屈曲部から成り、該屈曲部が両直線部22a及び22bを連結する。」
「【0042】
本発明に係るプローブカード10の組立では、前記したように各プローブ22がプローブ支持体24に組み込まれた状態で、直線部22aの端末が対応する接合パッド20aに対向するように、プローブ支持体24はボルト部材34によって支持ブロック18に結合される。この結合状態では、他方の直線部22bの張出部48と長溝44bの底面46との当接によって直線部22bの軸線方向の移動が阻止される。また、プローブ22の基端となる一方の直線部22aの端末は対応する接合パッド20aに当接される。その結果、各プローブ22の屈曲部22cは、両直線部22a及び22b間で該両直線部の軸線方向へ圧縮変形を受け、その弾性力は直線部22aの前記基端を対応する接合パッド20aに押圧する。
【0043】
したがって、各プローブ22は、対応する接合パッド20aに圧接されることから、はんだ付けを用いることなく、対応する接合パッド20aに電気的に確実に接続される。
【0044】
しかも、プローブカード10は、その使用状態では、図6に示すように、プローブ22の針先が対応する電極パッド14aに当接した後、該電極パッドとプローブ22との電気的接続をより確実にすべく、さらにプローブカード10が半導体ウエハ14に近づくようにオーバドライブ運転を受ける。このオーバドライブ運転では、他方の直線部22bの張出部48は長溝44bの底面46から離れて例えば約500μmの距離を上方へ移動する。そのため、オーバドライブ運転によるオーバドライブ力で屈曲部22cがさらに大きく弾性変形を受けることから、この弾性変形の増大に伴い一方の直線部22aの前記端末の対応する接合パッド20aへの圧接力も増大する。その結果、各プローブ22と対応する接合パッド20aとの電気的接続がより確実になされる。
【0045】
各長溝44bの深さ寸法tは、前記したオーバドライブによる他方の直線部22bの移動によっても、その張出部48が長溝44bから逸脱しない深さに設定される。
【0046】
また、本発明に係るプローブカード10では、そのプローブ22に欠損が生じた場合、欠損を生じたプローブ22を取り替えることができる。この取り替え作業では、まずボルト部材34を緩めてプローブ支持体24が支持ブロック18から取り外される。各プローブ22はプローブ基板20の対応する接合パッド20aにはんだ付けされてはおらず、前記したように屈曲部22cの弾性力によって単に対応する接合パッド20aに押圧されているだけであることから、プローブ支持体24を支持ブロック18から取り外すことにより、すべてのプローブ22をプローブ支持体24と共にプローブ基板20から分離することができる。
【0047】
したがって、欠損を生じたプローブ22を新たな健全なプローブ22に差し換え、差し換えられた新たなプローブ22の張出部48を適正に対応するプローブガイド穴44の長溝44bに係合させることにより、この新たなプローブ22を他のプローブ22と同様に適正な姿勢に保持することができる。これら適正な姿勢に保持されたプローブ22が組み込まれたプローブ支持体24は、各プローブ22の一方の直線部22aの前記端面が対応する接合パッド20aに対応するように、ボルト部材34を支持ブロック18に螺合し、締め付けることにより、支持ブロック18に組み付けられる。この組み付け状態では、前記したように各プローブ22は、その屈曲部22cの弾性力によって適正に対応する接合パッド20aに押圧される。
【0048】
このように、各プローブ22は対応する接合パッド20aにはんだ付けされていないことから、はんだ作業を必要とすることなく、したがって、プローブ22の取り替え作業を容易に行うことができる。」
「【図3】
[図:0001401281000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001401281000004.jpg]
」
「【図6】
[図:0001401281000005.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
a 前記(ア)bの【0029】、【図1】及び【図2】からすると、プローブ基板20の中央部の各辺から外方に延在する各延長部は、中央部の各辺から、リジッド配線基板16に結合される各延長部の外縁部にかけて、傾斜していることが認められる。
b 前記(ア)において摘記した事項及び上記aの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「集積回路のような平板状の被検査体の電気試験的試験に用いる垂直動作式プローブカードであって、(【0001】)
垂直動作式のプローブカード10は、昇降可能なチャック12の上方にフレームで保持されており、被検査体は、チャック12上に保持され、多数の集積回路が集合的に組み込まれている半導体ウエハ14であり、(【0024】)
プローブカード10は、円形のリジッド配線基板16と、
該リジッド配線基板の下面に配置された矩形の支持ブロック18に矩形の中央部が支持される可撓性のプローブ基板20と、
該プローブ基板に一端を当接して配置される多数のプローブ22と、
これら多数のプローブ22をプローブ基板20に当接する所定位置に保持するためのプローブ支持体24とを含み、(【0025】)
リジッド配線基板16には、複数の配線路が設けられ、リジッド配線基板16の下面の外縁部には、各配線路に接続された接続部16aが設けられており、これら接続部16aは、前記配線路を経て前記集積回路の試験のためのテスタに接続されており、(【0027】)
可撓性のプローブ基板20は、導電路が設けられたフレキシブルプリント配線板(FPC)から成り、前記矩形の中央部の下面には、各導電路に接続された多数の接合パッド20aが設けられており、(【0028】)
プローブ基板20の前記中央部の各辺から外方に延在する各延長部の外縁部は、該外縁部、リジッド配線基板16を貫通して先端が補強板26に螺合するボルト部材30の締め付け力を受けるリング部材32によって、リジッド配線基板16に結合されており、(【0029】)
プローブ基板20の前記各延長部は、前記中央部の各辺から、前記各延長部の外縁部にかけて傾斜しており、(前記aの認定事項)
プローブ基板20の前記外縁部には、リジッド配線基板16の接続部16aに対向する接続部20bが設けられており、各接続部20bは、前記導電路を経て対応する接合パッド20aに接続されており、前記ボルト部材30の締め付けによって、リジッド配線基板16の前記配線路と該配線路に対応するプローブ基板20の前記導電路が確実に接続されることから、プローブ基板20の各接合パッド20aは、前記導電路及び配線路を経て前記テスタに接続され、(【0030】)
各プローブ22を支持するプローブ支持体24は、プローブ支持体24及びプローブ基板20を貫通して先端が支持ブロック18に螺合するボルト部材34により、支持ブロック18に取り外し可能に結合されており、(【0031】)
プローブ支持体24は、例えばセラミック板のような電気絶縁材料から成る硬質の一対の板36、38と、両板36、38を互いに所定の間隔をおいて平行に保持するための筒状のスペーサ40とを備え、ボルト部材34は一対の板36、38及びスペーサ40を貫通して配置されており、(【0032】)
各プローブ22は、円形横断面を有するタングステン線のような棒状の金属線から成り、一組の線状部22a、22bと、両線状部22a、22bを連結する弾性変形可能の連結部22cとを備え、両線状部22a、22bは、一端が互いに間隔をおいて対向するように軸線上に配置される一対の直線部からなり、連結部22cは「く」の字状の屈曲部から成り、該屈曲部が両直線部22a及び22bを連結するものであり、(【0035】)
各プローブ22がプローブ支持体24に組み込まれた状態では、直線部22aの端末が対応する接合パッド20aに対向するように、プローブ支持体24はボルト部材34によって支持ブロック18に結合され、この結合状態では、他方の直線部22bの張出部48と長溝44bの底面46との当接によって直線部22bの軸線方向の移動が阻止され、プローブ22の基端となる一方の直線部22aの端末は対応する接合パッド20aに当接され、各プローブ22の屈曲部22cは、両直線部22a及び22b間で該両直線部の軸線方向へ圧縮変形を受け、その弾性力は直線部22aの前記基端を対応する接合パッド20aに押圧するため、各プローブ22は、対応する接合パッド20aに圧接されることから、はんだ付けを用いることなく、対応する接合パッド20aに電気的に確実に接続され、(【0042】、【0043】)
プローブカード10は、その使用状態では、プローブ22の針先が対応する電極パッド14aに当接した後、該電極パッドとプローブ22との電気的接続をより確実にすべく、さらにプローブカード10が半導体ウエハ14に近づくようにオーバドライブ運転を受け、オーバドライブ運転によるオーバドライブ力で屈曲部22cがさらに大きく弾性変形を受けることから、この弾性変形の増大に伴い一方の直線部22aの前記端末の対応する接合パッド20aへの圧接力も増大するため、各プローブ22と対応する接合パッド20aとの電気的接続がより確実になされ、(【0044】)
プローブ22に欠損が生じた場合、欠損を生じたプローブ22を取り替えることができ、この取り替え作業では、まずボルト部材34を緩めてプローブ支持体24が支持ブロック18から取り外されることにより、すべてのプローブ22をプローブ支持体24と共にプローブ基板20から分離することができる、(【0046】)
プローブカード。」
イ 引用文献3、4に記載された事項と周知技術1の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2013-120070号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の多層配線フィルムの配線(トレース)に接続される電極は、配線よりも幅が広いため、配線と電極との間でインピーダンスの不整合が生じる虞がある。
【0005】
インピーダンスの不整合が生じると、より高速な信号を用いる試験を行うことが困難になる場合があった。
【0006】
そこで、インピーダンスの不整合を低減したプローブカードを提供することを目的とする。」
「【0011】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のプローブカードを示す断面図である。」
「【0014】
実施の形態1のプローブカード100は、所謂メンブレン型のプローブカードであり、インターフェース基板10、プローブ基板20、プローブガイド30、異方性導電フィルム40、及び押圧部50を含む。」
「【0016】
インターフェース基板10は、剛性を有する第1基板の一例であり、例えば、FR-4規格のリジッド基板を用いることができる。インターフェース基板10の中央には開口部10Aが形成されている。開口部10Aには、プローブ基板20の突出部20Aが挿入される。
「【0023】
プローブ基板20は、可撓性を有する第2基板の一例である。プローブ基板20は、例えばポリイミド製のフレキシブル基板を基材とし、図2に示すように、中心にある矩形状の部分の各辺から、4つの延出部20Bが延出している。
「【0031】
押圧部50は、支持部50Aがプローブガイド30の貫通孔30Aに挿通されており、プローブガイド30の保持部30Bとの間に配設されるばね51の復元力により、プローブ基板20の突出部20AをZ軸負方向に押圧している。
【0032】
突出部20Aの先端にはプローブパッド23が形成されている。押圧部50は、突出部20Aの下方に置かれる半導体チップ又はパッケージ基板等の端子にプローブパッド23を押圧する。なお、押圧部50は、突出部20AをZ軸負方向に押圧できればよく、ねじ止めによって突出部20Aを押圧するものでも、ばねの弾性力を利用して押圧部20Aを押圧するものでも、どのような構成のものでもよい。」
「【図1】
[図:0001401281000006.jpg]
」
(イ) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である国際公開第98/58266号(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
a 明細書14頁13-19行
「この発明によるプロープカード3は、円板状のプリント基板4と、マウント12と、弾性を有する絶縁性薄膜よりなる十字形状のメンブレン5とを含み、プリント基板4の上面には例えば金のパッドよりなる接点4bが所定の角度間隔で円形に配列されている。既に説明したように、これら接点4bはフロッグリング2(図7参照)のプローブコンタクトビンと電気的に接触するためのものであり、従って、フロッグリング2のプローブコンタクトピンと対応する位置にこれら接点4bは形成される。」
b 明細書15頁最下行-18頁9行
「マウント12の突出部12dの下側の凹部12b内には圧縮コイルばね7とこのコイルばね7によって押圧力を受ける荷重ステム8の下側部分が収容される。荷重ステム8はその下端にステム径より大きな球状の押圧部8aを備え、この球状の押圧部8aの上部に押さえ板37が固定されている。この押さえ板37と突出部12dの下側の凹部12bの上部壁面(上底)との間において荷重ステム8の下側部分の外周に圧縮コイルばね7が装着されている。従って、コイルばね7の押圧力(偏倚力)が押さえ板37を介して荷重ステム8に加わり、荷重ステム8は常時垂直方向(Z軸方向)に下方へバイアスされている。
荷重ステム8の下端の球状の押圧部8aは、マウント12の下側に配置される断面ほぼ方形の角柱状のスチフナブロック(stiffener block)31の中心の周りに同心に、その上面から下部へかけて形成された円形の凹部31c内に回動自在に収容される。このスチフナブロック31はその上部にリング状のフランジ31bを備え、このフランジ31bはマウント12の基部12cに形成された円錐台形状の凹部12g内に配置される。従って、フランジの31bの外径は円錐台形状の凹部12gの内径より小さく、また、フランジ31bの厚さは円錐台形状の凹部12gの深さよりも薄くなっており、かつフランジ31bの外周面は円錐台形状の凹部12gの内周面と合致するようにテーパ面に形成されている。
この実施例では、中心部に角柱状のスチフナブロック31が嵌合するほぼ方形の貫通孔を有する円形の押さえ板33を設け、この押さえ板33の貫通孔にスチフナブロック31を挿通し、そのフランジ31bが押さえ板33の上面に係止した状態で、ねじ35によって押さえ板33をマウント12の基部12cの底面に取り付け、スチフナブロック31のフランジ31bを基部12cの円錐台形状の凹部12g内に配置している。従って、スチフナブロック31は、コイルばね7の偏倚力に抗してフランジ31の上面が円錐台形状の凹部12gの上底に当接するまで垂直方向に上方へ移動可能である。なお、押さえ板33の外径はマウント12の基部12cの外径とほぼ同じに選定され、マウント12と同心に取り付けられる。また、押さえ板33の貫通孔はスチフナブロック31の外形より所定の寸法だけ大きくなっており、従って、スチフナブロック31は押さえ板33の貫通孔に遊嵌状態にある。即ち、スチフナブロック31の外周面と押さえ板33の貫通孔との間には若干の遊隙Gがあり、スチフナブロック31が図1において水平方向へ若干の距離移動可能になっている。
プリント基板4の下側には、弾性を有する絶縁材から形成された円形の板状体を、複数個の位置でその厚さ方向に互いに絶縁状態で導通するように構成したコネクタ6が配置される。このコネクタ6の中心部にはプリント基板4の貫通孔4aよりも径が大きな(押さえ部材33の外径より大きな内径を有する)貫通孔が形成されている。
上記厚さ方向に導通するコネクタ6には種々の構造のものがあるが、図10A及び図10Bを参照して既に説明したように、例えば絶縁性シリコンゴムシートのような弾性を有する絶縁材から形成された円形のシート状体6cにその厚さ方向に互いに絶縁状態で多数個の金属細線6bを貫通させた構造のコネクタ6が使用できる。金属細線6bの長さはシート状体6cの上面及び底面から僅かに突出する程度の寸法に選定する。このコネクタ6は僅かな圧力をかけるだけでその両面に配置された部品を電気的に良好に接続することができる。
メンブレン5はこの実施例でもポリイミドフイルムより形成された絶縁性の弾性を有するシートであり、図2Aに示すように、この実施例ではほぼ正方形のメンブレン本体の各辺から方形の舌片5fがそれぞれ直角な方向へ突出したほぼ十字形状の部材である。
メンブレン5の中心5eを同じく中心とするメンブレン本体より小さなほぼ正方形の領域5aを除く底面全体に、例えば銅箔よりなる接地用導体(図示せず)が形成されている。接地用導体が形成されていないメンブレン5の中心部のほぼ正方形の領域5a(以下、中央領域と称す)の底面には下方へ突出する複数個のプローブ(この例では導体よりなる針状のバンプ(bump))5cが取り付けられている。これらプローブ5cは、ウエハプローバの上面のテスト位置に搬送されて来たウエハICの端子(リード)と接触するものであるから、ウエハICの端子と対応する位置に設けられている。
メンブレン5の上面には、メンブレン5の各舌片5fから中央領域5aに至る複数本の導電パターン(電気配線)5bが形成されている。各導電パターン5bの舌片5f上の一端は端子5dとして機能し、コネクタ6を通じてプリント基板4の底面に形成された対応する端子にそれぞれ接続される。また、メンブレン5の中央領域5a中に延在する各導電パターン5bの他端は、例えばスルーホールを通じてメンブレン底面のプローブ5cに電気的に接続されている。
この実施例では、メンブレン5の中央領域5aの上面は弾性シート44を介してスチフナブロック31の底面に接着される。スチフナブロック31の底面はメンブレン5の舌片5fを除くほぼ正方形の領域(中央領域5aを含む)とほぼ等しい形状及び面積を有するほぼ正方形の平面であるため、また、弾性シート44も対応的にほぼ同じ形状及び面積の正方形であるため、メンブレン5を弾性シート44を介してスチフナブロック31の底面に接着すると、メンブレン5は殆ど各舌片5fだけがひらひらと動く状態となる。」
c 図1
「
[図:0001401281000007.jpg]
」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
[周知技術1]
「メンブレン型のプローブカードにおいて、フレキシブル基板の一部をリジッド基板から離れる方向に突出させた状態で支持する支持体を、ばねの弾性力により前記方向に押圧し、プローブを試験対象に接触させること。」
ウ 引用文献6に記載された事項と技術常識1、2の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する文献である特開2007-71810号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路(以下、「IC」と示す)パッケージの電気的特性を検査する際に用いられるICソケットに関する。」
「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上側ハウジングを介して弾性支持部材の弾性力をコンタクトピンに付与することができる。即ち、本発明によれば、弾性支持部材を信号伝達経路から構造的に切り離すことができる。従って、弾性力を増加させたとしても信号伝達経路への影響はないことから、高周波動作を考慮に入れつつコンタクトピンと半田ボールとの充分な接触圧を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1を用いて本発明の実施の形態によるICソケットについて詳細に説明する。
【0012】
図1に示されるように、本実施の形態によるICソケット100は、コンタクトピン10A,10Bと、上側ハウジング20と、下側ハウジング30と、導通バネ40a,40bと、コイルスプリング50と、ガイド部材60と、上側ストッパ部70、下側ストッパ部80を備えている。
【0013】
コンタクトピン10A,10Bは、半田ボールに当接する先端部11a,11bと、導通バネ40a,40bと接続する後端部12a,12bと、先端部11a,11bと後端部12a,12bの間に位置する大径部13a,13bから構成されている。
【0014】
先端部11a,11bは、半田ボールを受けるべくV字状断面を有している。
【0015】
後端部12a,12bは、導通バネ40a,40bにより支持されている。」
「【0018】
上側ハウジング20には、ピン保持孔21a,21bと、円環溝22a,22bと、上側コイルスプリング穴部25と、上側ガイド部材保持孔26と上側ストッパ受部27が形成されている。」
「【0024】
以上から明らかなように、コンタクトピン10A,10Bは、第1張出部14A,14B及び第1受部23a,23b並びに第2張出部15A,15B及び第2受部24a,24bによって、上側ハウジング20に対する移動を所定範囲内に規定されている。即ち、第1張出部14A,14B及び第1受部23a,23b並びに第2張出部15A,15B及び第2受部24a,24bは、上側ハウジング20に対するコンタクトピン10A,10Bの垂直方向における移動を所定範囲内に規制するピン可動範囲規制手段として機能する。」
「【0026】
本実施の形態における上側コイルスプリング穴部25は、上側ハウジング20の下部から上部に向かって形成された穴であり、ピン保持孔21a,21bが複数配列されているエリアの外側に位置している。上側コイルスプリング穴部25の径は、ピン保持孔21a,21bの径より大きい。」
「【0032】
収容孔32a,32bに収容された導通バネ40a,40bは、一端をコンタクトピンの後端部12a,12bに接続されて、コンタクトピン10A,10Bを下側ハウジング30の下部まで電気的に延長している。
【0033】
この導通バネ40a,40bの他端は、自由端となっている。この構成から明らかなように、導通バネ40a,40bがコンタクトピン10A,10Bに弾性力を与えるのは、他端を何かしかに当接させた上でコンタクトピン10A,10Bを押し下げたときのみであり、その場合の弾性力は上向きのものである。このように導通バネ40a,40bはコンタクトピン10A,10Bに上向きの弾性力を与える補助弾性部としても機能する。
【0034】
コイルスプリング50は、一端を上側コイルスプリング穴部25に収容され、他端を下側コイルスプリング穴部35に収容されて、上側ハウジング20を下側ハウジング30に対して垂直方向に移動可能に支持する弾性支持部材として機能する。尚、本実施の形態におけるコイルスプリング50は、上側コイルスプリング穴部25と下側コイルスプリング穴部35の間に圧縮された状態で収容されている。
【0035】
コイルスプリング50は、コンタクトピン10A,10Bの径より大きい径を有している。このように本実施の形態においては、コンタクトピンの径とは構造的に切り離してコイルスプリングの径を確保することができることから、信号伝達経路におけるインダクタンス成分を不要に大きくすることなく、バネ係数を大きく確保して半田ボールに対して所望の接触圧を付与することができる。」
「【図1】
[図:0001401281000008.jpg]
」
「【0043】
次に、図2乃至図6を用いて、テスタ側測定基板に実装した本実施形態に係るICソケット100の動作について説明する。
【0044】
図2乃至図5には、半田ボールが形成されている箇所(実線で示す)及び半田ボールが形成されていない箇所(点線で示す)が混在しているICパッケージ200が示されている。ICパッケージ200には、外部接続端子として半田ボール210が形成されている。ICパッケージ200は、半田ボール210をコンタクトピン10Aの先端部11aに対向させるようにしてICソケット100の上側に配置される。
【0045】
図2で示すように、ICソケット100の下側ハウジング30の下部には、テスタ側測定基板90が配置されている。テスタ側測定基板90は、複数の端子91a,91bを有しており、それらの端子91a,91bは、収容孔32a,32bの下部に位置し、導通バネ40a,40bの一端と接続している。
【0046】
ICパッケージ200を更に押し下げると、コンタクトピン10Aの先端部11aに半田ボール210が接触する。ICパッケージ200を更に押下げると、コンタクトピン10Aが半田ボール210によって下方向に押し下げられ、コンタクトピン10Aの大径部13aの一部である第1張出部14Aの下面部14aが第1受部23aの上面に当接する(図3参照)。
【0047】
ICパッケージ200を押下げると、コンタクトピン10Aが下方向に向かい、それに伴って、上側ハウジング20がコイルスプリング50を圧縮しつつガイド部材60に沿って下方に移動する。
【0048】
ここで、本実施の形態においては、所定範囲(S2-S1)を適切な値に設定しているため、コンタクトピン10BがICパッケージ200に接触する前に、第2受部24bの下面がコンタクトピン10Bの第2張出部15Bの上面部15aに当接する(図4参照)。
【0049】
従って、図5に示すように、ICパッケージ200を更に押し込んでもコンタクトピン10Bの先端部11bがICパッケージ200を傷つけることはない。
【0050】
尚、コンタクトピン10Aに着目すれば理解されるように、コンタクトピン10Aは、上側ハウジング20の一部である第1受部23aを介してコイルスプリング50の弾性力受けており、それによって半田ボール210に対する接触状態が維持されている。」
「【図2】
[図:0001401281000009.jpg]
」
「【図3】
[図:0001401281000010.jpg]
」
「【図4】
[図:0001401281000011.jpg]
」
「【図5】
[図:0001401281000012.jpg]
」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)において摘記した事項(特に【0010】、【0034】、【0050】、【図5】)、引用文献3に関し前記イ(ア)において摘記した事項(特に【0031】、【0032】)及び引用文献4に関し前記イ(イ)bにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という)。
[技術常識1]
「コンタクトピンの支持部材にばねの弾性力が加えられた状態で、コンタクトピンが試験対象に接触するとき、コンタクトピンは、当該支持部材を介してばねの弾性力を受けること。」
(ウ) 技術常識2の認定
前記(ア)において摘記した事項(特に【0018】、【0026】、【0034】、【図1】)に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という)。
[技術常識2]
「ばねを用いて部材に弾性力を加える際、当該部材に凹部を設け、当該凹部にばねの一部を収容すること。」
エ 引用文献5に記載された事項と引用文献5技術事項の認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する文献である特開2005-24377号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プローブシート、プローブカード、および半導体検査装置および半導体装置の製造方法に関する。」
「【0017】
本発明に係るプローブカードの構造について図2および図3を用いて説明する。図2(a)は、本発明に係るプローブカードの第1の実施の形態の要部を示す断面図であり、図2(b)は、その主要部品を分解して図示した斜視図である。本プローブカードの第1の実施の形態は、支持部材(上部固定板)7と、該支持部材7にねじ止めされる中間板24の中央部に高さ方向に調整可能に固定され、下部先端に突起部12aを有してセンターピボットの働きをし、該突起部12aの先端を支点として可動する押し駒22を介してプローブシート6に押圧力を付与するばね12bを装填したスプリングプローブ12と、該プローブシート6の複数個の接触端子4が形成された領域を囲むように裏面に接着固定された枠21と、プローブシート6の接触端子4が形成された領域の裏面との間にシリコーンシートなどの緩衝材23および押し駒22を中央部に有し、該枠21にねじ止めされる中間板24とを含み構成される。そして、この支持部材7は、該支持部材7に設けられた平行出し調整ねじ25により、プローブカードの接触端子4の面と半導体素子の対応する電極面の平行出しが実施される。」
「【0076】
より高速の電気信号検査を可能にするために、接触端子の近傍に、電気信号の乱れを防止する目的で、コンデンサあるいは抵抗器などの搭載部品72を設置するためのプローブシート6の一例を、図14に示した。図14(a)にグランド層70および電源層71をシート状にして、逐次積層形成したプローブシート6に搭載部品72を接続した断面図、図14(b)に、プローブシート6表面に搭載部品72を接続した平面概略図を示した。例えば、図14(b)のような状態でプローブシート6に搭載部品72を接続する場合は、グランド用および電源用配線の配線幅を可能な限り広くして配線抵抗値を下げ、グランド配線と電源配線が隣同士(ペア線)になるように配置し、各々の配線に搭載する部品の接続用電極となる部分の絶縁層を、レーザあるいはドライエッチングなどの穴あけ加工技術を用いて穴あけ加工して、ビア形成用穴72aを設け、その穴に、はんだあるいはめっきなどの導電材料72bを充填して、はんだ接合あるいは金属拡散接合などで搭載部品72をプローブシート6に接合すればよい。」
「【図2】
[図:0001401281000013.jpg]
」
「【図14】
[図:0001401281000014.jpg]
」
(イ) 引用文献5技術事項の認定
a 前記(ア)に摘記した図14(a)の記載から、図14(a)左側の搭載部品72は、プローブシート6の下面側傾斜部に設置されており、図14(a)右側の搭載部品72は、プローブシート6の上面側傾斜部に設置されていることが読み取れるから、引用文献5には、電気信号の乱れを防止する目的で、コンデンサあるいは抵抗器などの搭載部品72をプローブシート6の傾斜部に設置したプローブカードが記載されていると認められる。
b 前記(ア)において摘記した事項(段落【0017】、【0076】)及び上記aの認定事項を総合すると、引用文献5には、次の技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献5技術事項]
「押し駒22を介して、接触端子4が形成されたプローブシート6に押圧力を付与するばね12bを装填したスプリングプローブ12を含んで構成されるプローブカードであって、電気信号の乱れを防止する目的で、コンデンサあるいは抵抗器などの搭載部品72をプローブシート6の傾斜部に設置したプローブカード。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「プローブカード10」は、「集積回路のような平板状の被検査体の電気試験的試験に用いる垂直動作式プローブカード」であって、「昇降可能なチャック12の上方にフレームで保持されており、被検査体は、チャック12上に保持され、多数の集積回路が集合的に組み込まれている半導体ウエハ14」である。
ここで、本件補正発明の「検査治具」について、本願明細書【0001】において、「半導体集積回路の電気的特性の検査に使用されるプローブカード等の検査治具」と記載されていることを踏まえると、引用発明の「プローブカード10」は、本件補正発明の「検査治具」に相当するといえる。
よって、本件補正発明と引用発明は、「検査治具」の発明である点で一致する。
b 引用発明の「プローブカード10」に含まれる「リジッド配線基板16」は、本件補正発明の「リジッド基板」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「リジッド基板」を備える点で一致する。
c(a) 引用発明の「導電路が設けられたフレキシブルプリント配線板(FPC)から成[る]」「可撓性のプローブ基板20」は、本件補正発明の「フレキシブル基板」に相当する。
(b) 引用発明では、「プローブ基板20の前記中央部の各辺から外方に延在する各延長部の外縁部は、該外縁部、リジッド配線基板16を貫通して先端が補強板26に螺合するボルト部材30の締め付け力を受けるリング部材32によって、リジッド配線基板16に結合されて」いるから、「プローブ基板20」は「リジッド配線基板16」に機械的に接続されているといえる。
(c) また、引用発明では、「プローブ基板20の前記外縁部には、リジッド配線基板16の接続部16aに対向する接続部20bが設けられており、各接続部20bは、前記導電路を経て対応する接合パッド20aに接続されており、前記ボルト部材30の締め付けによって、リジッド配線基板16の前記配線路と該配線路に対応するプローブ基板20の前記導電路が確実に接続されることから、プローブ基板20の各接合パッド20aは、前記導電路及び配線路を経て前記テスタに接続され」るとしているから、「プローブ基板20」は「リジッド配線基板16」に電気的にも接続されているといえる。
(d) ここで、本件補正発明の「リジッド基板」と「フレキシブル基板」の「接続」の意味について検討してみると、本願明細書【0015】には「フレキシブル基板20は、押さえブロック50の押圧力により左右両端部がリジッド基板10の上面に接続され」と記載されており、これは、「リジッド基板」と「フレキシブル基板」が機械的に接続されていることを意味する。
他方、本願明細書【0016】には「フレキシブル基板20の下面には、高周波ライン(高周波用導電パターン)25が設けられる。高周波ライン25は、一端が高周波用のコンタクトパッド23に接続され、他端がリジッド基板10の高周波ライン12に接続される。」と記載されており、これは、「リジッド基板」と「フレキシブル基板」が電気的に接続されていることを意味する。
そうすると、本件補正発明の「フレキシブル基板」が「リジッド基板」に「接続」されるとは、機械的な接続のみならず電気的な接続もされることを意味すると解するのが相当である。
(e) 前記(b)及び(c)において検討した内容を踏まえると、引用発明においても、「可撓性のプローブ基板20」は「リジッド配線基板16」に機械的にも電気的にも接続されているから、「リジッド配線基板16」と「可撓性のプローブ基板20」は「接続」されていると認められる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板」を備える点で一致する。
d 引用発明の「矩形の支持ブロック18」は、「リジッド配線基板の下面に配置され」ており、「可撓性のプローブ基板20」の「矩形の中央部」が「矩形の支持ブロック18」に「支持される」ことにより、「可撓性のプローブ基板20」の「矩形の中央部」を「リジッド配線基板の下面」から離れる方向に突出した状態で支持しているといえる。
そうすると、引用発明の「可撓性のプローブ基板20」の「矩形の中央部」は、本件補正発明の「前記フレキシブル基板の一部」に相当し、引用発明の「リジッド配線基板の下面」から離れる方向は、本件補正発明の「リジッド基板」に対する「第1方向」に相当し、引用発明の「矩形の支持ブロック18」は、本件補正発明の「支持体」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して第1方向に突出した状態で支持する支持体」を備える点で一致する。
e(a) 引用発明の「プローブ22」に関し、「プローブ22の基端となる一方の直線部22aの端末は対応する接合パッド20aに当接され」、「接合パッド20a」は「前記矩形の中央部の下面」に「設けられて」いるから、引用発明の「プローブ22の基端となる一方の直線部22aの端末」は、本件補正発明の「プローブ」の「一端」に相当し、引用発明の「接合パッド20a」は、本件補正発明の「突出部上の接点部」に相当する。
そうすると、引用発明の「プローブ22」は、本件補正発明の「一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブ」に相当する。
(b) 本件補正発明の「コンタクタ」及び「コンタクトハウジング」について、本願明細書【0018】には、「コンタクタ40は、コンタクトハウジング41と、複数のプローブ(ピン)42と、を含む。コンタクタ40は、フレキシブル基板20とは別体であって、フレキシブル基板20に対して着脱可能である。コンタクトハウジング41は、例えば絶縁性の樹脂成形体であり、各プローブ42を支持する。コンタクトハウジング41は、所定数のネジ47により台座ブロック30に着脱可能に固定される。」と記載されているから、「コンタクトハウジング」とは、「支持体」(台座ブロック30)に着脱可能に固定され、「プローブ」を支持する部材であり、「コンタクタ」とは、「コンタクトハウジング」と、複数の「プローブ」を含み、フレキシブル基板とは別体のユニットであって、フレキシブル基板に対して着脱可能なものをいうと解するのが相当である。
(c) 引用発明の「プローブ支持体24」は、「多数のプローブ22をプローブ基板20に当接する所定位置に保持するため」のものであり、また、「プローブ支持体24及びプローブ基板20を貫通して先端が支持ブロック18に螺合するボルト部材34により、支持ブロック18に取り外し可能に結合されて」いるから、支持ブロック18に着脱可能に固定され、プローブ22を支持する部材であるといえる。そうすると、引用発明の「プローブ支持体24」は、本件補正発明の「プローブ」を「支持」する「コンタクトハウジング」に相当する。
(d) 引用発明では、「プローブ22に欠損が生じた場合、欠損を生じたプローブ22を取り替えることができ、この取り替え作業では、まずボルト部材34を緩めてプローブ支持体24が支持ブロック18から取り外されることにより、すべてのプローブ22をプローブ支持体24と共にプローブ基板20から分離することができる」としているから、「プローブ支持体24」と「すべてのプローブ22」は、一体となって「プローブ基板20から分離することができる」ものであり、「プローブ基板20」とは別体のユニットであるといえる。
よって、前記(b)において示した「コンタクタ」に係る解釈を踏まえると、引用発明の「プローブ支持体24」と「すべてのプローブ22」を一体のものとしてみたものは、本件補正発明の「コンタクタ」に相当する。
(e) 以上(a)~(d)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「コンタクトハウジングと、前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有[する]」「コンタクタ」を備える点で一致する。
f 前記dにおいて説示したとおり、引用発明の「可撓性のプローブ基板20」の「矩形の中央部」は、「リジッド配線基板の下面」から離れる方向に突出した状態で支持されている。
また、前記eにおいて説示したとおり、引用発明の「プローブ支持体24」は、「プローブ支持体24及びプローブ基板20を貫通して先端が支持ブロック18に螺合するボルト部材34により、支持ブロック18に取り外し可能に結合されて」いる。
そうすると、引用発明の「プローブ支持体24」と「すべてのプローブ22」を一体のものとしてみたものは、「可撓性のプローブ基板20」の「リジッド配線基板の下面」から離れる方向に突出した「矩形の中央部」に設けられていることになるから、このことは、本件補正発明の「コンタクタ」が「フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられた」ことに相当する。
g 前記e及びfの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられた、コンタクタ」を備え、「前記コンタクタは、コンタクトハウジングと、前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有[する]」点で一致する。
h(a) 前記fにおいて説示したとおり、引用発明の「可撓性のプローブ基板20」の「矩形の中央部」は、本件補正発明の「フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部」に相当する。
(b) 本件補正発明の「フレキシブル基板」の「両端部」に関し、本願明細書の段落【0015】には、「フレキシブル基板20は、押さえブロック50の押圧力により左右両端部がリジッド基板10の上面に接続され[る]」ことが記載されており、また、段落【0019】には、「押さえブロック50は、所定数のネジ19により、フレキシブル基板20の左右両端部を挟んでリジッド基板10の上面に固定される。押さえブロック50の下面(リジッド基板10側の面)にはゴム等の弾性体51が設けられ、弾性体51がフレキシブル基板20の左右両端部をリジッド基板10の上面に弾性的に押し付ける。」ことが記載されていることからすると、本件補正発明の「フレキシブル基板」の「両端部」とは、「フレキシブル基板」の部分であって、「リジッド基板」に「接続される」部分であると解される。
(c) 前記cで説示したとおり、引用発明の「リジッド配線基板16」と「可撓性のプローブ基板20」は「接続」されているものであり、引用発明の「プローブ基板20の前記中央部の各辺から外方に延在する各延長部の外縁部」がその接続を行う部分である。
そして、前記(b)において示した解釈を踏まえると、引用発明の「プローブ基板20」の「各延長部の外縁部」は、本件補正発明の「フレキシブル基板」の「両端部」に相当する。
(d) また、引用発明の「プローブ基板20」の「前記中央部の各辺から、前記各延長部の外縁部にかけて傾斜して」いる「各延長部」の部分が、本件補正発明の「フレキシブル基板」が有する「両端部と前記突出部との間」の「傾斜部」に相当することは明らかである。
(e) 以上(a)~(d)を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、「フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有[する]」点で一致する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「リジッド基板と、
前記リジッド基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板の一部を前記リジッド基板に対して第1方向に突出した状態で支持する支持体と、
前記フレキシブル基板の前記リジッド基板に対して突出した突出部に設けられた、コンタクタと、を備え、
前記コンタクタは、
コンタクトハウジングと、
前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部に接触するプローブと、を有し、
前記フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有する、検査治具。」
b 相違点
相違点1:本件補正発明では、「前記支持体を前記リジッド基板に対して前記第1方向に付勢する付勢手段」を備えており、「前記支持体は凹部を備え、前記付勢手段は前記凹部に侵入」するものであるのに対し、引用発明では、付勢手段を備えておらず、「支持ブロック18」は付勢手段が侵入する凹部を備えていない点。
相違点2:本件補正発明では、「プローブは、伸縮性を有さない部材からな[る]」のに対し、引用発明の「プローブ22」は、「弾性変形可能」な「屈曲部22c」を備えている点。
相違点3:本件補正発明は、「前記フレキシブル基板上に設けられた少なくとも1つの電子部品が前記傾斜部に配置される」ものであるのに対し、引用発明は、「可撓性のプローブ基板20」の傾斜部に電子部品が配置されていない点。
イ 判断
前記各相違点について検討する。
(ア)相違点1及び相違点2について
相違点1と相違点2は、関連する事項を含むので、以下まとめて検討する。
a 「プローブ22の屈曲部22c」について
(a) 引用発明の「各プローブ22がプローブ支持体24に組み込まれた状態」では、「各プローブ22の屈曲部22cは、両直線部22a及び22b間で該両直線部の軸線方向へ圧縮変形を受け、その弾性力は直線部22aの前記基端を対応する接合パッド20aに押圧するため、各プローブ22は、対応する接合パッド20aに圧接されることから、はんだ付けを用いることなく、対応する接合パッド20aに電気的に確実に接続され」ることになる。
(b) また、引用発明の「プローブカード10」の「使用状態」では、「プローブ22の針先が対応する電極パッド14aに当接した後、該電極パッドとプローブ22との電気的接続をより確実にすべく、さらにプローブカード10が半導体ウエハ14に近づくようにオーバドライブ運転を受け、オーバドライブ運転によるオーバドライブ力で屈曲部22cがさらに大きく弾性変形を受けることから、この弾性変形の増大に伴い一方の直線部22aの前記端末の対応する接合パッド20aへの圧接力も増大するため、各プローブ22と対応する接合パッド20aとの電気的接続がより確実になされ」ることになる。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、引用発明の「プローブ22」に「屈曲部22c」が設けられた趣旨は、屈曲部22cの弾性変形から生じる弾性力をプローブ22に接する部材との圧接に利用して、プローブと当該部材との電気的接続を確実にするためであると認められる。
b 「屈曲部22c」の「弾性力」の置換可能性について
(a) 前記aにおいて説示した、引用発明の「プローブ22」に「屈曲部22c」が設けられた趣旨を踏まえると、プローブ22に接する部材との圧接に利用される「弾性力」は、プローブ22自身の弾性変形から生じるものに限られず、要するに、プローブ22に接する部材との圧接が生じて確実な電気的接続が達成できるようなものであれば足りるのであるから、弾性力を発生させる手段として、プローブ22とは別の部材に置換することは可能であるというべきである。
すなわち、引用発明において、屈曲部22cの弾性力に代えて、例えば、「ばねの弾性力」を利用することによっても、プローブ22に接する部材との圧接が生じて、確実な電気的接続が達成できることは明らかである。
(b) ここで、「メンブレン型のプローブカードにおいて、フレキシブル基板の一部をリジッド基板から離れる方向に突出させた状態で支持する支持体を、ばねの弾性力により前記方向に押圧し、プローブを試験対象に接触させること」は、当業者における周知技術である(前記周知技術1を参照)。
(c) したがって、引用発明において、前記周知技術1を採用することにより、プローブ22の屈曲部22cの弾性力に代えて、プローブ22とは別の部材である「ばね」の弾性力を採用することにより、「可撓性のプローブ基板20」の一部を「リジッド配線基板16」から離れる方向に突出させた状態で支持する「支持ブロック18」を、「ばね」という付勢手段により前記方向に押圧(付勢)するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
c 「プローブ」の「伸縮性」について
(a) 「コンタクトピンの支持部材にばねの弾性力が加えられた状態で、コンタクトピンが試験対象に接触するとき、コンタクトピンは、当該支持部材を介してばねの弾性力を受けること」は、当業者における技術常識である(前記技術常識1を参照)。
(b) 前記技術常識1を参照すると、引用発明において、プローブ22の屈曲部22cの弾性力に代えて、ばねの弾性力を採用したとしても、プローブ22は、支持ブロック18を介してばねの弾性力を受けることになるから、プローブ22は対応する接合パッド20aに圧接され、はんだ付けを用いることなく、対応する接合パッド20aに電気的に確実に接続されることが維持される。
(c) そうすると、もはやプローブ22に屈曲部22cを設けておく必要はなくなるから、プローブ22を「伸縮性を有さない部材」として構成することは、当業者ならば自明な設計変更にすぎない。
d 「支持体」の「凹部」について
(a) 「ばねを用いて部材に弾性力を加える際、当該部材に凹部を設け、当該凹部にばねの一部を収容すること」は、当業者における技術常識である(前記技術常識2を参照)。
(b) 前記技術常識2を参照すると、引用発明に周知技術1を適用したとき、引用発明の「支持ブロック18」を押圧(付勢)する「ばね」(付勢手段)が「支持ブロック18」に弾性力を加える際、「支持ブロック18」に凹部を設け、当該凹部にばねの一部を収容すること(侵入させること)は、当業者であれば適宜なし得た設計事項にすぎず、格別のものではない。
e 以上のとおりであるから、相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点3について
引用文献5には、電気信号の乱れを防止する目的で、コンデンサあるいは抵抗器などの搭載部品72をプローブシート6の傾斜部に設置したプローブカードが記載されている(引用文献5技術事項を参照)。
ここで、引用発明のようなプローブカードは、集積回路などの電気試験を行う際に用いられるものであるから、電気信号の伝送特性をよくすることは、当業者における一般的な課題であるといえるところ、この点は、例えば、引用文献3に「インピーダンスの不整合が生じると、より高速な信号を用いる試験を行うことが困難になる場合があった。」(【0005】)と記載されることからも、裏付けることができる。
そして、引用発明のプローブ基板20の各延長部は、中央部の各辺から、前記各延長部の外縁部にかけて傾斜しているものであり、引用発明においても、電気信号の伝送特性をよくする必要があることは当業者には明らかであるから、引用文献5技術事項を適用し、プローブ基板20の各延長部の傾斜している部分に電気信号の乱れを防止するような電子部品を搭載することにより、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者において容易になし得たことである。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討結果を総合して検討しても、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献5技術事項、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
引用発明は、前記相違点3に係る構成を有しておらず、本件補正発明は、当該構成により、コンタクタの近くに電子部品を設けることが可能で、高周波信号の測定に有利となる。原査定の引用文献1-4に記載された発明は、いずれも、フレキシブル基板が傾斜を有しないか、あるいは傾斜部があっても電子部品を配置する構成では無いため、電子部品はコンタクタから離れた位置に配置することになり、電子部品に至る導電パターンが長くなり、導電パターンのインダクタンスやキャパシタンスの影響を受けるため高周波信号の測定の場合は不利となる。
また、本件補正発明は、前記相違点2に係る構成を有していて、プローブが伸縮性を有しないため、伸縮性のあるプローブと比較して、より短く、小径のプローブ構造が可能になり、コスト低減も可能になり、また、短縮化されかつ小径化されたプローブを用いることで、高周波を使用する、集積度の高い集積回路の検査に好適に使用できる。原査定の引用文献4に記載された発明は、フレキシブルなメンブレン5に直接プローブ5を設けた構成を示すのみで、「前記コンタクトハウジングに支持され、一端が前記突出部上の接点部(つまりフレキシブル基板の接点部)に接触するプローブ」を開示するものではない。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
上記請求人の主張は、要するに前記ア(イ)bにおいて認定した相違点についてのものであるところ、それぞれの相違点に係る構成は、いずれも前記イ(ア)及び(イ)において説示したとおり、当業者ならば容易に想到し得たものであって、効果についても、前記イ(ウ)において説示したとおり、当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
そうすると、請求人の主張はいずれも採用することはできない。
エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1-5に係る発明は、令和4年1月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1、4、5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1 特開2014-1997号公報
引用文献2 米国特許出願公開第2012/0313659号明細書
引用文献3 特開2013-120070号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4 国際公開第98/58266号(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、周知技術1及び技術常識1は、それぞれ前記第2の3(2)イ(ウ)及びウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明における「前記支持体は凹部を備え、前記付勢手段は前記凹部に侵入し」との限定と認められる事項(補正事項1)及び「前記フレキシブル基板は、両端部と前記突出部との間に傾斜部を有し、前記フレキシブル基板上に設けられた少なくとも1つの電子部品が前記傾斜部に配置される」との限定と認められる事項(補正事項2)を省いたものである(前記第2の2(1)参照)。
(2) そうすると、前記第2の3(3)ア(ア)の対比分析における検討結果も踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の相違点は、次の相違点A及びBのとおりであり、両者はその余の点で一致する。
<相違点>
相違点A:本願発明では、「前記支持体を前記リジッド基板に対して前記第1方向に付勢する付勢手段」を有しているのに対し、引用発明では付勢手段を備えていない点。
相違点B:本願発明では、「プローブは、伸縮性を有さない部材からなる」のに対し、引用発明の「プローブ22」は、「弾性変形可能」な「屈曲部22c」を備えている点。
(3) 前記第2の3(3)イにおいて説示した判断を踏まえると、前記相違点A及びBに係る本願発明の構成は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-012202