審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-003721

パルス式電子常磁性共鳴分光計

審判番号
2021-003721
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-509501
請求日
2021年03月22日
審決日
2021年09月27日
公報発行日
2022年03月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】中国科学技▲術▼大学
  • 【請求人代理人】伊藤 茂
  • 【請求人代理人】海老 裕介
審判長/審判官
  • 審判長 井上 博之
  • 審判官 樋口 宗彦
  • 審判官 伊藤 幸仙
分類
P18 .121-Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R) / P18 .572-Z (G01R)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-509501「パルス式電子常磁性共鳴分光計」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月14日国際公開、WO2019/029161、令和2年2月6日国内公表、特表2020-504286〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願は2018年(平成30年)3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月10日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和2年3月5日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月3日に手続補正書及び意見書が提出され、同年11月12日付けで拒絶査定がなされ、令和3年3月22日に手続補正書(これによる補正を以下「本件補正」という。)の提出及び拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の記載を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、令和2年6月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下「本件補正前特許請求の範囲」という。)における下記(1)アのもの(以下「本件補正前請求項1」という。)から、下記(2)の本件補正後の請求項1(以下単に「本件請求項1」という。)のものへ補正された。ここで、各構成単位冒頭の「A」、「A0」などは当審が付与した分説記号であり、以下当該構成単位を「構成A」、「構成A0」などという。 (1)本件補正前特許請求の範囲 ア 請求項1(本件補正前請求項1) 「【請求項1】 A0 少なくとも一種のマイクロ波パルスを生成するマイクロ波励起発生手段と、 B0 サンプルを載置するように配置される共鳴室、及び前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送線、を含むマイクロ波伝導手段と、 C0 円柱形の末端を有し、前記末端内に前記共鳴室が設置され、前記共鳴室に載置されたサンプルに対して0.1ケルビンオーダーの極低温冷却を実現する冷凍機と、 D0 磁気共鳴試験条件を満たす磁界を提供する磁石と、 を備え、 E0 前記マイクロ波伝送線が前記冷凍機に貫入しかつ前記共鳴室に接続されるように設置されており、 F0 前記磁石が、前記冷凍機の外側で前記末端の周りに位置するように配置された、 I0 ことを特徴とするパルス式電子常磁性共鳴分光計。」 イ 請求項4(本件補正前請求項4) 「【請求項4】 前記共鳴室は、Q値が50-500のマイクロ波共鳴室であり、電子・核二重共鳴試験および電子・電子二重共鳴試験をサポートし、L、S、Xを含む複数種の動作周波数帯を有する、 ことを特徴とする請求項1に記載のパルス式電子常磁性共鳴分光計。」 ウ 請求項10(本件補正前請求項10) 「【請求項10】 前記磁石の磁界均一度は、10ppm@40mmDSVである、 ことを特徴とする請求項1に記載のパルス式電子常磁性共鳴分光計。」 (2)本件補正後の請求項1(本件請求項1) 下線部は補正箇所を示す。 「【請求項1】 A 少なくとも一種のマイクロ波パルスを生成するマイクロ波励起発生手段と、 B サンプルを載置するように配置される共鳴室、及び前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送線、を含むマイクロ波伝導手段と、 C 円柱形の末端を有し、前記末端内に前記共鳴室が設置され、前記共鳴室に載置されたサンプルに対して0.1ケルビンオーダーの極低温冷却を実現する冷凍機と、 D 磁気共鳴試験条件を満たす磁界を提供する磁石と、 を備え、 E 前記マイクロ波伝送線が前記冷凍機に貫入しかつ前記共鳴室に接続されるように設置されており、 F 前記磁石が、前記冷凍機の外側で前記末端の周りに位置するように配置され、 G 前記磁石の磁界均一度は、10ppm@40mmDSVであり、 H 電子・核二重共鳴試験および電子・電子二重共鳴試験をサポートするようにされた、 I ことを特徴とするパルス式電子常磁性共鳴分光計。」 2 補正の適否 (1)本件補正 本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。 補正事項ア 本件補正前請求項1に構成Gを加入する補正 補正事項イ 本件補正前請求項1に構成Hを加入する補正 (2)補正の適否 上記補正事項アは、本件補正前請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「磁石」について、本件補正前請求項10(上記1(1)ウ)の特定事項の一部を加入することで限定するものである。 また、上記補正事項イは、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文【0023】の「前記マイクロ波励起発生手段11、マイクロ波伝導手段12及びマイクロ波検知手段13は、走査フィールド常磁性共鳴検出、電子スピンエコー、電子・核二重共鳴等の完備した試験機能を備える。」なる記載に照らせば、本件補正前請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マイクロ波励起発生手段」・「マイクロ波伝導手段」について、本件補正前請求項4(上記1(1)イ)の特定事項の一部を加入することで限定するものである。 また、本件補正前請求項1に記載された発明と本件請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件請求項1に係る発明は、上記本件請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 3 本件補正発明の独立特許要件についての検討 (1)本件補正発明について 本件補正発明は、上記1(2)に示したとおりのものである。 (2)引用文献1に記載された発明 原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、「Yung Szen Yap et al.,A Ku band pulsed electron paramagnetic resonance spectrometer using an arbitrary waveform generator for quantum control experiments at millikelvin temperatures,Rev.Sci.Instrum.,2015年6月24日,Vol.86 No.063110,pp.1-7」(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。各記載事項の摘記には当審訳を付し、以下では当該当審訳を引用することとする。また、下線は特に当審決にて引用した箇所を示すべく当審にて付した(以下、他の引用文献についても同様。)。 ア 記載事項 ・「The ability to create complex pulses to precisely control initialized spins has motivated us in our present work. In this paper, we present an arbitrary waveform EPR spectrometer, operating at ca. 17 GHz (Ku band) for experiments with the resonator placed either in a room temperature magnet or in a dilution refrigerator for low temperature experiments. Using spin echoes on a γ-irradiated quartz glass sample, we show that signal intensities increase with decreasing temperature in accordance with Eq. (1) and demonstrate almost unity polarization by cooling the sample down to millikelvin temperatures. Next, we demonstrate the ability to create and apply shaped pulses to the cooled sample. To do so, we superpose three Gaussian shaped pulses, each at a different frequency, to obtain three coherent and well-resolved excitations at millikelvin temperatures.」(1頁右欄下から4行目~2頁左欄11行) (当審訳:「初期化されたスピンを正確に制御するための複雑なパルスを作成する能力は、私たちの現在の研究を動機づけている。本稿では、室温磁石または低温実験のための希釈冷蔵庫のいずれかに配置された共振器を備えた実験のための17GHz(Kuバンド)で動作している任意の波形EPR分光計を提示する。γ線照射石英ガラスサンプル上のスピンエコーを使用して、信号強度が式(1)に従って温度の低下と共に増加することを示し、また、サンプルをミリケルビン温度に冷却することによるほぼ一様な偏極を実証する。 次に、冷却されたサンプルに成形パルスを作成して適用する能力を実証する。そうするために、それぞれ異なる周波数の3つのガウス形状のパルスを重ね合わせて、ミリケルビン温度で3つのコヒーレントでよく分解された励起を得る。」) ・「 The home-built setup is presented in Fig. 1. First, frequency and amplitude modulated pulses were numerically designed and digitally generated at 2.5 GHz (1.5 GHz bandwidth) using an arbitrary waveform generator (AWG). Next, it was upconverted by mixing it with a ca. 14 GHz signal generated from a local oscillator. The resulting signal was filtered using a high pass filter, amplified using a broadband traveling-wave tube amplifier (TWTA), and directed into the resonator. The setup has an operating frequency range of 16.5-18.0 GHz, determined by the cutoff frequency of the high pass filter (16.5 GHz) and the upper frequency limit of the TWTA waveguide output (18.0 GHz). The TWTA output was attenuated using a variable attenuator (CVA13-20D) and an isolator was installed after the variable attenuator to prevent any reflected signals from re-entering and damaging the TWTA (refer to Fig. 1). The setup was configured for transmission measurements with the resonator placed either in a room temperature magnet or in a cryogen-free dilution refrigerator.」(2頁左欄13~30行) (当審訳:「自家製の機構を図1に示す。まず、周波数・振幅変調パルスが数値的に設計され2.5GHz(1.5GHz帯域幅)で任意の波形発生器(AWG)を使用しデジタル的に生成される。次に、それが局部発振器から生成された14GHz信号と混合してアップコンバートされる。得られたシグナルをハイパスフィルタを用いて濾過し、広帯域進行波管増幅器(TWTA)を使用して増幅され、共振器に向けられる。機構は、ハイパスフィルタ(16.5 GHz)のカットオフ周波数(16.5 GHz)とTWTA導波路出力(18.0 GHz)の上限周波数で決まる16.5~18.0GHzの動作周波数範囲をもつ。TWTA出力は可変減衰器(CVA13-20D)を使用して減衰され、可変減衰器の後にアイソレータを設置し、反射信号がTWTAの再入射および損傷を与えるのを防止した(図1参照)。 機構は、室温磁石または極低温希釈冷凍機のいずれかに配置された共振器を用いて透過測定用に構成された。」) ・「 This configuration, however, can be easily converted to a reflection system by using a circulator and a reflection-type resonator. A 3.5m long low-loss coaxial cable was used to connect theTWTAoutput to the SubMiniature version A (SMA) port of the dilution refrigerator; excluding the variable attenuator, the total attenuation was around 2.8 dB. The room temperature SMA ports in the dilution refrigerator were connected to the Pulse-Tube 2 (PT2) stage (see Fig. 1) using low thermal conductivity coaxial cables, consisting of a silver-plated phosphor bronze core with an outer stainless steel shield (TCR219CG/SUS by Kawashima Manufacturing Co., Ltd.). Superconducting Nb coaxial cables (SC-219/50-Nb-Nb by Coax Co., Ltd.) were installed from the PT2 stage to the mixing chamber (MC) stage. To thermally anchor the cables to their respective stages, 1 dB attenuators were installed at PT1, PT2, still, and MC stages. These attenuators helped to conduct heat away from the inner conductor and prevent a direct thermal connection from room temperature to the MC stage through the superconducting coaxial cables. At 12.5 mK, the total attenuation from the room temperature SMA ports to the MC stage was approximately 6.5 dB. In addition, the dilution refrigerator was fitted with a 5 T superconducting magnet (resolution = 1 G), which was attached to the PT2 stage. At the MC stage of the dilution refrigerator, the lowest attainable temperature was about 10 mK and the cooling power at 100 mK was about 300 μW (with 3 mW of power applied to the heater installed at the still stage). The resonator was thermally connected to the MC stage (see Fig. 2), where precise and stable temperature control was achieved using a temperature controller (Model 370AC by Lakeshore). Temperatures up to 8 K were obtained by direct heating of the MC stage, while other stages (except PT1 stage) remained well below 4 K; hence, superconductivity of the magnet and cables was not lost.」(2頁左欄30行~同右欄下から5行目) (当審訳:「ただし、この構成は、サーキュレータと反射型共振器を用いて反射システムに変換することができる。3.5mの低損失の同軸ケーブルを使用して、希釈冷凍機のサブミニチュアバージョンA(SMA)ポートへTWTAを接続した。可変減衰器を除くと、総減衰量は約2.8dBだった。 希釈冷凍機内の室温SMAポートは、外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブル(Kawashima Manufacturing株式会社によるTCR219CG/SUS)を用いてパルス管2(PT2)段に接続された(図1参照)。 PT2段から混合室(MC)段に超伝導Nb同軸ケーブル(SC-219/50-Nb-Nb)を設置した。ケーブルをそれぞれの段階に熱固定するために、1dB減衰器がPT1段、PT2段、分溜器段、およびMC段に設置された。これらの減衰器は、内側導体から熱を放つために、そして超伝導同軸ケーブルを通って室温からMCステージへの直接熱接続を防止するのを助けた。 12.5mKでは、室温SMAポートからMCステージへの総減衰量は約6.5dBだった。さらに、希釈冷凍機には、PT2段に5T超伝導磁石(解像度= 1G)を取り付けた。希釈冷凍機のMC段では、最低の達成可能な温度は約10mKであり、100mKの冷却電力は約300μWであった(分溜器段に設置されたヒーターには3mWの電力が印加されている)。 共振器はMC段(図2参照)に熱的に接続され、ここで、温度コントローラ(Lakeshoreによるモデル370AC)を使用して正確で安定した温度制御が達成された。MC段の直接加熱によって8Kまでの温度が得られ、一方、他の段(PT1段を除く)は良好に4K以下であった。それ故、磁石およびケーブルの超伝導は失われなかった。」) ・「 The paramagnetic species used in all of the experiments reported here were defect centers found in γ-irradiated quartz glass. This material was chosen because it is widely used as a standard sample for pulsed EPR, has long relaxation times, and the defects are stable over several years. Two millimeter cube of quartz glasses with known OH contents (160 ppm) were purchased (S-grade by TOSOH Quartz Co., Ltd) and irradiated using Cobalt-60 for 24 h to an estimated dosage of 8 MGy to produce a spin density of about 1022 spins/m3; the spin density was estimated by comparing it with DPPH using continuous wave EPR. For smaller sizes, the irradiated sample was broken into smaller pieces. Next, the sample was fixed to a quartz glass rod using small amounts of cryogenic grease (Apiezon N grease by M & I Materials Ltd) and placed into the resonator (see Fig. 3).」(3頁右欄5行~4頁左欄7行) (当審訳:「ここで報告されているすべての実験で使用された常磁性種は、γ線照射石英ガラスにみつかる欠陥中心であった。この材料は、パルスEPRの標準試料として広く使用されており、長い緩和時間を有し、欠陥は数年間安定しているために選択された。既知のOH含有量(160ppm)を有する石英ガラスの2ミリメートルの立方体を購入し(Tosoh Quartz Co.Ltd.)、COBALT-60を用いて24時間照射して8MGyの推定照射量で照射して約1022スピン/m3のスピン密度を生成する。スピン密度は、連続波EPRを用いてDPPHと比較することによって推定された。サイズが小さいほど、照射されたサンプルはより小さな部分に分割さた。 次に、試料を少量の極低温グリース(M&I Materials Ltd Apiezon N Greaseによる)を用いて石英ガラス棒に固定し、共振器に入れた。」) ・「Two types of resonators were built and tested down to millikelvin temperatures: a TE011 cylindrical cavity and a loop-gap resonator (LGR) consisting of 3 loops and 2 gaps (see Fig. 3). Both transmission-type resonators were made of oxygen-free copper (minimum purity of 99.96% based on JIS C1020P standards). In the dilution refrigerator, the resonators were connected to waveguides, which were then connected to the superconducting cables via cryogenic coaxial cables (see Fig. 2). For both resonators, irises were used to couple the waveguide to the resonators. The resonant frequencies of the sample-loaded cylindrical cavity and LGR at room temperature were 16.89 GHz and 17.48 GHz, which increased slightly to 16.93 GHz and 17.5 GHz at around 10 mK, respectively. At room temperature, the sample-loaded TE011 cylindrical cavity was overcoupled (Q factor ≒ 800), whereas the sample-loaded LGR was almost critically coupled (Q factor ≒ 410). When cooled down to low temperatures, there was no noticeable improvement in the cylindrical cavity’s Q factor; any improvement was hidden by the initial overcoupled condition of the resonator. However, the LGR’s Q factor increased to around 715 at 12.5 mK.」(5頁左欄1~21行) (当審訳:「2種類の共振器(3ループと2のギャップからなるTE011円筒形キャビティとループギャップ共振器(LGR))が作成され、ミリケルビン温度で試された(図3参照)。両方の透過型共振器は無酸素銅(JIS C1020P規格に基づく最低純度99.96%)で作成された。希釈冷凍機では、共振器は導波路に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続された(図2参照)。両方の共振器の場合、アイリス(結合孔)を使用して導波路を共振器に結合した。 室温での試料を搭載した円筒形キャビティおよびLGRの共振周波数は、それぞれ16.89GHzおよび17.48GHzであり、それぞれ約10mKでは16.93GHzおよび17.5GHz程度にそれぞれ増加した。室温では、試料搭載TE011円筒形キャビティはオーバーカップルした(Q値≒800)が、試料搭載負荷LGRはほとんどギリギリ結合されていた(Q値≒410)。低温に冷却すると、円筒形キャビティのQ値に目立った改善はなかった。共振器のはじめのオーバーカップル状態によって、あらゆる改善が隠されていた。しかし、LGRのQ値は12.5mKで715に増加した。」) ・「By superposing two or three of the different singlefrequency Gaussian π/2 pulses, dual- and triple-frequency shaped pulses were created (see Fig. 6). These superposed shaped pulses were used to obtain dual- and triple-frequency excitations at 8 K ・・・, which were phase coherent ・・・. For these experiments, the π pulse was not changed so as to have a broad bandwidth, which in turn was limited by the resonator’s bandwidth. Finally, the experiments were repeated at 1 K and 14 mK using single-shot measurements with only one amplifier in the receiver (the second BZ1218LC1 LNA and AD8353 amplifier were removed). Similarly, three wellresolved excitations were obtained at 1 K and 14 mK (Fig. 7).」(6頁左欄1~13行) (当審訳:「異なる単数周波数ガウスπ/2パルスのうち2つまたは3つを重ね合わせることによって、二重周波数形状のパルスが作成された(図6参照)。これらの重ね合わされた形状のパルスを使用して、8Kで二重周波数および三重周波数励起を得る・・・。これは、位相コヒーレントであった・・・。これらの実験のために、πパルスは広い帯域幅を有するように変化しなかった。これは、共振器の帯域幅によって制限された。 最後に、受信機内の1つの増幅器(第2のBZ1218LC1 LNAおよびAD8353増幅器を取り除いた)を用いて1Kおよび14mKで実験を繰り返した。 同様に、3つの良分解能な励起が1Kおよび14mKで得られた(図7)。」) ・「 Pulsed EPR below 1 K remains largely unexplored but experiments at millikelvin temperatures may be beneficial to study the dynamics and properties of materials near the ground state in the fields of quantum chemistry, organic magnetism and electronics, protein research, and so on. Furthermore, for our target application of quantum computation and quantum information processing, lowering temperature reduces entropy and initializes the qubits. To that end, we have developed an arbitrary waveform pulsed EPR spectrometer at Ku band for millikelvin experiments. The ability to generate arbitrary waveform pulses is equally crucial for our target application, where precise spin control may take the form of composite pulses, multi-frequency shaped pulses or pulses designed using numerical calculations, or optimal control theory. Additionally, the proposed setup would also be useful for other EPR experiments. AWG-based spectrometers have been shown to improve the modulation depth of pulsed electron-electron double resonance (PELDOR) experiments. Furthermore, it has been suggested that through precise excitation, double quantum coherence (DQC) experiments could outperform PELDOR’s measurements. The ability to create selective and multifrequency pulses may also be useful to investigate multispin samples and to selectively address different qubits in a quantum computation experiment.」(6頁左欄15行~右欄9行) (当審訳:「1K未満のパルスEPRは、ほとんど未踏のままであるが、ミリケルビン温度での実験は、量子化学、有機磁性および電子機器、タンパク質研究などの分野における基材のダイナミクスおよび性質を研究することが有益であり得る。さらに、量子計算および量子情報処理の目的の適用のために、温度が低下すると、エントロピーが低減され、量子ビットが初期化される。そのために、ミリケルビン実験のためにKuバンドで任意波形パルスEPR分光計を開発した。任意の波形パルスを発生させる能力は、我々の標的とする用途にとって同様に重要であり、正確なスピン制御は、数値計算または最適な制御理論を使用して設計された複合パルス、多周波数形状パルスまたはパルスの形をとることができる。さらに、提案された機構は他のEPR実験にも役立つ。 AWGベースの分光計は、パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験の変調深さを改善することが示されている。さらに、正確な励起を通じて、二重量子コヒーレンス(DQC)実験はPELDORの測定値が優れている可能性があることが示唆されている。選択的および多周波のパルスを作成する能力はまた、マルチスピンサンプルを調査し、量子計算実験において異なる量子ビットを選択的にアドレス指定するのに有用であり得る。」) ・図1(Fig.1)は次のとおり。 「 [図:0001382217000001.jpg] 」 ・図1の説明は次のとおり。 「 FIG. 1. Schematic of the home-built pulsed EPR spectrometer. The major components labeled with italicized numbers in parentheses are: (1) microwave source (83623B by Agilent Technologies), (2) arbitrary waveform generator (AWG7102 by Tektronix, Inc.), (3) power divider (1515-1 by Aeroflex Weinschel), (4) triple balanced microwave mixer (M3206L by Advanced Microwave, Inc.), (5) variable attenuator (9804-20 by ARRA, Inc.), (6) traveling-wave tube amplifier (TWTA) (176 Ku by Applied Systems Engineering, Inc.),(7) variable attenuator (CVA13-20D by Microwave Communications Laboratories, Inc.), (8) magnet in dilution refrigerator (Triton 400 by Oxford Instruments) or room temperature magnet (9) Ku band low noise amplifier (BZ1218LC1 by B&Z Technologies), (10) high speed PIN switch (PSH-42 by Millitech, Inc.), (11) Ku band low noise amplifier (BZ1218LC1 by B&Z Technologies), (12) double balanced mixer (AM10620-LA by AtlanTecRF), (13) radio-frequency amplifier (AD8353 by Analog Devices, Inc.), (14) frequency mixer (ZX05-30W+ by Mini-Circuits, Inc.), and (15) oscilloscope (DPO7254 by Tektronix, Inc.).」 (当審訳:「図1 自家製パルスEPR分光計の概略図。括弧内のイタリック体の数字で標識された主たる要素は、(1)マイクロ波源(アジレント・テクノロジーによる83623B)、(2)任意波形発生器(テクトロニクス社AWG7102)、(3)電力分割器(Aeroflex Weinschelによる1515-1)、(4)三重平衡マイクロ波ミキサ(アドバンスト・マイクロウェーブ社M3206L)、(5)可変減衰器(ARRA社9804-20)、(6)進行波管増幅器(TWTA)(Applied Systems Engineering社176Ku)、(7)可変減衰器(Microwave Communications Laboratories社CVA13-20D)、(8)希釈冷凍機内の磁石(Triton 400 by Oxford Instruments)または室温磁石、(9)Kuバンド低雑音増幅器(B&Z Technologies BZ1218LC1)、(10)高速PINスイッチ(Millitech社PSH-42)、(11)Kuバンド低雑音増幅器(B&Z TechnologiesBZ1218LC1)、(12)二重平衡ミキサ(AtlanTec RFAM10620-LA)、(13)高周波増幅器(Analog Devices社AD8353)、(14)周波数ミキサ(Mini-Circuits社ZX05-30W+)、そして(15)オシロスコープ(Tektronix社DPO7254)。」) ・図2(Fig.2)の記載は次のとおり。 「 [図:0001382217000002.jpg] 」 (当審訳:図中「Superconducting coaxial cables」は「超伝導同軸ケーブル」、「Mixing Chamber」は「混合器(MC段)」、「Copper cold fingers」は「銅製コールドフィンガー」、「Cryogenic coaxial cable」は「低温同軸ケーブル」、「Waveguide」は「導波管」、「Resonator」は「共振器」、とそれぞれ訳される。) ・図2の説明は次のとおり。 「FIG. 2. The mounted resonator in the cryogen-free dilution refrigerator. This photo shows the bare dilution refrigerator without the superconducting magnet, radiation shields, thermal insulators, and vacuum cans. Below the MC stage, copper cold fingers supported and conducted heat away from the coaxial cables, waveguides, and resonators. The coaxial cables were thermally anchored to the cold fingers using uncoated copper wires and cryogenic grease was applied to all contact surfaces of the cold fingers.」 (当審訳:「図2 極低温希釈冷凍機内にマウントされた共振器。 この写真は、超伝導磁石、放射線遮蔽物、断熱材、および真空缶のない裸の希釈冷凍機を示す。MC段の下には、銅製のコールドフィンガーが、同軸ケーブル、導波管、および共振器を支持し、それらから熱を伝導除去した。コーティングされていない銅線を用いて、同軸ケーブルをコールドフィンガーに導熱固定し、極低温グリスをコールドフィンガーの全ての接触面に適用した。」) イ 図の看取事項 (看取事項ア)図2から、希釈冷凍機は、上方に赤銅色大径の円筒形の部材があり、その下の前記円筒形の部材より小径の範囲に、超伝導同軸ケーブル及び混合器(MC段)が懸下され、次いでMC段の下には2本の銅製コールドフィンガー・導波管・共振器が懸下されていることが看取できる。 (看取事項イ)図2と図2の説明とを合わせ見れば、図2は極低温希釈冷凍機の内部を示したものであり、共振器は、それを上方にある2本の銅製コールドフィンガーに結合する導波路と共に、当該希釈冷凍機内の相対的に下方部に位置することを看取できる。 ウ 認定事項 上記アの各記載事項から、次の事項が導かれる。 (認定事項ア)[3頁右欄5行~4頁左欄7行]の「試料を少量の極低温グリース(M&I Materials LtdApiezon N Greaseによる)を用いて石英ガラス棒に固定し、共振器に入れた。」なる記載から、共振器は試料を石英ガラス棒に固定して入れる共振器であることが導かれる。 (認定事項イ)[5頁左欄1~21行]の「希釈冷凍機では、共振器は導波路に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続された」、「試料搭載した円筒形キャビティおよびLGRの共振周波数は、・・・それぞれ約10mKでは16.93GHzおよび17.5GHz程度にそれぞれ増加した。」なる記載、及び[2頁左欄30行~同右欄下から5行目]の「希釈冷凍機のMC段では、最低の達成可能な温度は約10mKであり」なる記載によれば、MC段は10mKまで達成可能であり、実際に引用文献1の希釈冷凍機により、試料を搭載した各共振器は10mKまで冷却された(冷却した測定が行えた)ことを導くことができる。 (認定事項ウ)[図2の説明]には「真空缶のない裸の希釈冷凍機を示す」と記載されていることから、作動時には希釈冷凍機に真空缶が取り付けられることを導くことができる。 エ 引用発明 上記アの各記載事項、上記イ・ウの看取・認定事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(各構成単位冒頭の「a」などは分説記号であり、以下当該構成単位について「構成a」などという。また、各構成単位末尾の括弧内は、引用元の記載箇所等を示す。) 「a まず、周波数・振幅変調パルスが数値的に設計され、2.5GHz(1.5GHz帯域幅)で任意の波形発生器(AWG)を使用しデジタル的に生成され、次に、それが局部発振器から生成された14GHz信号と混合してアップコンバートされ、得られたシグナルをハイパスフィルタを用いて濾過し、広帯域進行波管増幅器(TWTA)を使用して増幅し、共振器に向ける機構と、(2頁左欄13~30行) b 試料を石英ガラス棒に固定して入れる共振器、(3頁右欄5行~4頁左欄7行、認定事項ア) 3.5mの低損失の同軸ケーブルを使用して、希釈冷凍機のサブミニチュアバージョンA(SMA)ポートへTWTAを接続し、 希釈冷凍機内の室温SMAポートは、外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブルを用いてパルス管2(PT2)段に接続され、PT2段から混合室(MC)段に超伝導Nb同軸ケーブルを設置し、(2頁左欄30行~同右欄下から5行目) 希釈冷凍機では、共振器は導波管に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続され、(5頁左欄1~21行) c 希釈冷凍機は、上方に大径の円筒形の部材があり、その下の前記円筒形の部材より小径の範囲に、超伝導同軸ケーブル及び混合器(MC段)が懸下され、次いでMC段の下には2本の銅製コールドフィンガー・導波管・共振器が懸下されており、(看取事項ア) よって希釈冷凍機内の下方部に共振器が設置されるものであり、(看取事項イ) 断熱材および真空缶を備え、(図2の説明、認定事項ウ) 希釈冷凍機のMC段では、最低の達成可能な温度は約10mKであり、(2頁左欄30行~同右欄下から5行目) 共振器はMC段に銅製のコールドフィンガーにより熱的に接続され、MC段は共振器から熱を伝導除去し、(図2の説明) 試料が搭載された共振器は10mKまで冷却され、(5頁左欄1~21行、認定事項イ) d 共振器をその中に配置する室温磁石または(2頁左欄13~30行、図1の説明(8)) 希釈冷凍機のPT2段に取り付けた5T超伝導磁石を備え、(2頁左欄30行~同右欄下から5行目、図1の説明(8)) e 希釈冷凍機内の室温SMAポートは、外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブルを用いてパルス管2(PT2)段に接続され、PT2段から混合室(MC)段に超伝導Nb同軸ケーブルを設置し、(2頁左欄30行~同右欄下から5行目) 希釈冷凍機では、共振器は導波管に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続され、(5頁左欄1~21行) f 磁石は、共振器をその中に配置する室温磁石である場合を含み、(2頁左欄13~30行、図1の説明(8)) h 前記AWGを用いた機構は他のEPR実験にも役立つものであり、AWGベースの分光計は、パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験の変調深さを改善すること、さらに、正確な励起を通じて、二重量子コヒーレンス(DQC)実験はPELDORの測定値が優れている可能性があることが示唆されている、(6頁左欄15行~右欄9行) i 任意波形パルスEPR分光計。(6頁左欄15行~右欄9行)」 (3)引用文献3の記載事項 拒絶査定において引用文献3として提示され、本願の優先日前に公知となった特許第3338381号公報(引用文献3)には、次の記載がある。 ア 明細書の記載事項 「【0015】 すなわち、従来の希釈冷凍機において可変コンデンサを混合装置直近に配置してNMR分析装置に用いる場合、具体的には図5に示すような構成が考えられている。この図5のNMR分析装置用希釈冷凍機について次に説明する。 【0016】 外側真空断熱層10によって取囲まれた有底円筒状の外側容器12内には冷媒としての液体ヘリウム14が注入されており、この外側容器12内の液体ヘリウム14中には有底円筒状の内側容器18が浸漬されている。さらにその内側容器18内には、図4について説明したと同様に、上方から1Kポット2、分留器5、熱交換器8、混合器9が配設されており、また凝縮器3が1Kポット2内に、分留器5内に熱交換器6がそれぞれ配設されている。これらの1Kポット2および凝縮器3から混合器9までの構成は、原理的には既に図4について説明したものと同様であるから、その詳細は省略する。内側容器18内における1Kポット2、分留器5、熱交換器8、混合器9の周囲の空間は断熱のための真空層11とされている。 【0017】 さらに図5において、内側容器18内における1Kポット2、混合器9の側方の真空層11中には、同軸ケーブル挿入管13および可変コンデンサ操作軸15が上方から垂直に挿入されている。そして混合器9の下方直近の位置に共振回路のコイル17が、また混合器9の側方直近の位置には共振回路の可変コンデンサ19が配設され、その可変コンデンサ19が前記操作軸15によって操作されるようになっており、またコイル17および可変コンデンサ19から伸びる同軸ケーブル21が前記同軸ケーブル挿入管13を介して外部のコネクタ21Aへ導かれている。なお可変コンデンサ操作軸15は、図示の例では外部上端のツマミ部15Aを操作して上下動させることによって可変コンデンサ19の容量を調整し得るように構成されている。なおまた、同軸ケーブル挿入管13および可変コンデンサ操作軸15、可変コンデンサ19とそれぞれ対応する位置の1Kポット2、分留器5、熱交換器8、混合器9との間は、銅等の熱伝導率が高い材料からなる熱アンカ23A,23B,23C,23Dによって結合されている。 【0018】 以上のような図5に示すNMR分析装置用希釈冷凍機においては、次のような問題がある。 【0019】 先ず第1に、同軸ケーブル挿入管13、可変コンデンサ操作軸15、可変コンデンサ19が、1Kポット2、分留器5、熱交換器8、混合器9の並ぶ列(上下方向の列)に対し側方に配設されるため、希釈冷凍機の外径(外側容器12の外径)が大きくならざるを得ず、そのため試料Sに磁場を印加するための超電導マグネットMの内径も大きくせざるを得ない問題がある。 すなわち、超電導マグネットMは外側容器12の下部を取囲むように配設され、その径が小さいほど強い磁場を試料に印加することができるが、外側容器12の外径が大きくなれば、それに伴って超電導マグネットMの内径を大きくせざるを得なくなり、その結果試料Sに印加する磁場を強くすることが困難となるとともに、超電導マグネットMのコストも高くらざるを得ない。そして上述のように試料に印加する磁場を強くすることができないことは、既に述べた如くNMR分析装置としてその感度が低くなってしまうことを意味する。 」 イ 図面の記載事項 ・図5は次のとおりである。 [図:0001382217000003.jpg] ウ 図面の看取事項 図5からは、上記アの摘記事項を合わせ読めば、1Kポット2・分留器5、熱交換器8・混合器9及び該混合器9の下方に取り付けられた磁気共鳴装置の試料S及び共振回路のコイル共鳴コイル17は、有底円筒状の内側容器18内にあり、それはさらに有底円筒状の外側容器12内にあって、何れの容器に対しても磁気共鳴装置の試料S及び共振回路のコイル共鳴コイル17は容器末端部近傍に位置し、試料Sに磁場を印加するための超電導マグネットMは、内側容器18・外側容器12双方の末端部の周りに配置されている、ことを看取できる。 (4)本件補正発明と引用発明との対比 ア 構成aの「まず、周波数・振幅変調パルスが数値的に設計され、2.5GHz(1.5GHz帯域幅)で任意の波形発生器(AWG)を使用しデジタル的に生成され、次に、それが局部発振器から生成された14GHz信号と混合してアップコンバートされ、得られたシグナルをハイパスフィルタを用いて濾過し、広帯域進行波管増幅器(TWTA)を使用して増幅し、共振器に向ける機構」は、構成Aの「少なくとも一種のマイクロ波パルスを生成するマイクロ波励起発生手段」に相当することが明らかである。 イ 構成bの「試料を石英ガラス棒に固定して入れる共振器」は、構成Bの「サンプルを載置するように配置される共鳴室」に相当する。 また、構成bでは、構成Bの「マイクロ波励起発生手段」の一要素に相当する(上記ア参照)「広帯域進行波管増幅器(TWTA)」と「希釈冷凍機のサブミニチュアバージョンA(SMA)ポート」とが「3.5mの低損失の同軸ケーブル」で接続され、該「SMAポート」と「パルス管2(PT2)段」とが「外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブル」により接続され、「PT2段から混合室(MC)段」が「超伝導Nb同軸ケーブル」で接続され、「共振器は導波管に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続され」る。これはすなわち、「広帯域進行波管増幅器(TWTA)」→「3.5mの低損失の同軸ケーブル」→「希釈冷凍機内の室温SMAポート」→「外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブル」→「パルス管2(PT2)段」→「超伝導Nb同軸ケーブル」→「混合室(MC)段」→「極低温同軸ケーブル」→「導波管」→「共鳴室」と順次接続がなされるということである。よって、「共鳴室」と「TWTA」とは、「3.5mの低損失の同軸ケーブル」、「外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブル」、「超伝導Nb同軸ケーブル」、「極低温同軸ケーブル」、「導波管」からなる一連の同軸ケーブル・導波路が順次連続的に接続されることによって接続されているということができ、一連の同軸ケーブル・導波路で結ばれた「TWTA」から「共鳴室」へ、構成aで「広帯域進行波管増幅器(TWTA)を使用して増幅し、共振器に向ける」とされるとおり、マイクロ波が伝送されるのであるから、構成bの前記一連の同軸ケーブル・導波管は、構成Bの「前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送線」とは、共に「前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送手段」である点で共通するといえる。 ウ 構成cの「希釈冷凍機内の下方部に共振器が設置され」ることは、構成Cの「冷凍機」に「前記共鳴室が設置され」ることに相当する。 構成cでは、「希釈冷凍機のMC段では、最低の達成可能な温度は約10mKであ」り、「共振器はMC段に銅製のコールドフィンガーにより熱的に接続され、MC段は共振器から熱を伝導除去し、試料が搭載された共振器は10mKまで冷却される」のであるから、共振器はゴールドフィンガーを介しMC段によって冷却されているといえ、よって、構成cの「希釈冷凍機」は構成Cの「共鳴室に載置されたサンプルに対して0.1ケルビンオーダーの極低温冷却を実現する冷凍機」に相当するといえる。 エ 構成dの「共振器をその中に配置する室温磁石または希釈冷凍機のPT2段に取り付けた5T超伝導磁石」は、これと構成cの「共振器」及び構成a・bで発生・伝導されるマイクロ波とで構成iの「パルスEPR分光計」を構成するのであるから、構成Dの「磁気共鳴試験条件を満たす磁界を提供する磁石」に相当することが明らかである。 オ 構成eで「希釈冷凍機内の室温SMAポートは、外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブルを用いてパルス管2(PT2)段に接続され、PT2段から混合室(MC)段に超伝導Nb同軸ケーブルを設置し、希釈冷凍機では、共振器は導波路に接続され、それは次に極低温同軸ケーブルを介して超伝導ケーブルに接続され」ることは、上記イで説示したとおり、少なくとも「外部ステンレス鋼シールドを有する銀メッキリン青銅心からなる低熱伝導率同軸ケーブル」、「超伝導Nb同軸ケーブル」、「極低温同軸ケーブル」からなる一連の同軸ケーブルが、「希釈冷凍機の室温SMAポート」から「パルス管2(PT2)段」を経て「混合室(MC)段」まで接続されている点について、構成Eの「前記マイクロ波伝送線が前記冷凍機に貫入し」に相当するといえる。 また、イに説示したとおり、構成b・eの一連の同軸ケーブル・導波管と構成B・Eの「マイクロ波伝送線」とは共にマイクロ波伝送手段である点で共通する。 カ 構成iの「任意波形パルスEPR分光計」が装置種別として構成Iの「パルス式電子常磁性共鳴分光計」に相当することは明らかである。 (5)一致点・相違点 上記(4)から、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、イの各点で相違する。 ア 一致点 「A 少なくとも一種のマイクロ波パルスを生成するマイクロ波励起発生手段と、 B’サンプルを載置するように配置される共鳴室、及び前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送手段、を含むマイクロ波伝導手段と、 C’ 共鳴室が設置され、前記共鳴室に載置されたサンプルに対して0.1ケルビンオーダーの極低温冷却を実現する冷凍機と、 D 磁気共鳴試験条件を満たす磁界を提供する磁石と、 を備え、 E’ 前記マイクロ波伝送手段が前記冷凍機に貫入しかつ前記共鳴室に接続されるように設置されている、 I ことを特徴とするパルス式電子常磁性共鳴分光計。」 イ 相違点 (ア)相違点1(構成B、E) 「サンプルを載置するように配置される共鳴室、及び前記マイクロ波励起発生手段と前記共鳴室との間に接続されてマイクロ波を伝送」し(構成B)、「前記冷凍機に貫入しかつ前記共鳴室に接続される」(構成E)のが、本件補正発明では、「マイクロ波伝送線」であるのに対し、引用発明では「混合室(MC)段」と「共振器」との接続に「導波管」を含む点。 (イ)相違点2(構成C) 本件補正発明では、冷凍機が「円柱形の末端を有し、末端内に前記共鳴室が設置され」るのに対し、引用発明では、「希釈冷凍機内の下方部に共振器が設置され、希釈冷凍機は断熱材及び真空缶を備え」るものの、「円柱形の末端」に対応する構成を明示的に備えない点。 (ウ)相違点3(構成F) 本件補正発明では磁石が「冷凍機の外側で前記末端の周りに位置するように配置され」るのに対し、引用発明は「磁石は、共振器をその中に配置する室温磁石である場合を含」むものの、冷凍機末端との位置関係については定かではない点。 (エ)相違点4(構成G) 本件補正発明は「前記磁石の磁界均一度は、10ppm@40mmDSVであ」るのに対し、引用発明は磁石の磁界均一度について特定がない点。 (オ)相違点5(構成H) 本件補正発明は「電子・核二重共鳴試験および電子・電子二重共鳴試験をサポートするようにされ」るのに対し、引用発明は、引用発明のAWGを用いた(マイクロ波励起発生)機構を用いた他の実験として「パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験の変調深さを改善すること、さらに、正確な励起を通じて、二重量子コヒーレンス(DQC)実験はPELDORの測定値が優れている可能性があること」、すなわち「パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験」への応用が示唆されるにとどまる点。 (6)相違点の検討 ア 相違点1について マイクロ波伝送手段として、同軸ケーブルのような伝送線も、中空金属管などの導波管も、共に周知慣用の手段であり、それぞれの伝送・物理特性や利点・欠点もよく知られており、何れを用いるかは、必要とする特性や便宜に応じて当業者が適宜選択すべき設計上の事項にすぎないし、それによる作用効果も予測可能なものにすぎない。 よって、相違点1は周知技術の選択における設計上の微差にすぎず、引用発明に基づき相違点1の構成とすることは周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2について (ア)引用発明の希釈冷凍機及び該希釈冷凍器内の共振器等は、室温の実験室内に設置するものであるから、全体を何らかの遮蔽容器に格納する必要があることは自明である。 (イ)そして、MC段を含む希釈冷凍機全体を、冷却対象物(試料)と共に有底円筒状の容器内に格納し、冷却対象物をMC段と共にその末端部に配置すること自体はごく周知の技術である。 このことは、上記(3)アに摘記した引用文献3の【0016】における、「外側真空断熱層10によって取囲まれた有底円筒状の外側容器12内には冷媒としての液体ヘリウム14が注入されており、この外側容器12内の液体ヘリウム14中には有底円筒状の内側容器18が浸漬されている。」、「内側容器18内には、・・・上方から1Kポット2、分留器5、熱交換器8、混合器9が配設されており、また凝縮器3が1Kポット2内に、分留器5内に熱交換器6がそれぞれ配設されている。」なる各記載事項、及び同文献の図5(上記(3)イ)、看取事項(3)ウによっても裏付けられる。 さらに、当該引用文献3の周知例は、希釈冷凍器内に磁気共鳴装置の試料や共鳴コイルを設置する事例に関するものでもある。 (ウ)また、上記(ア)、(イ)に照らせば、引用発明における構成cの「断熱材および真空缶を備え」なる特定事項も、引用発明の希釈冷凍機の各段及びその内部の共振器・同軸ケーブル・コールドフィンガーなどを包囲する、上記周知技術における有底円筒に対応する容器要素であると理解することが自然であるし、当該容器要素を円筒形状と推察することは、上記看取事項アによれば、希釈冷凍機が、上部に赤銅色大径の円筒形の部材を備えることとも矛盾しない。また、このことは、真空缶が、マホービン内筒の例に明らかなとおり、大気圧に抗するため一般に円筒面や球面など対称な外観形状が選択されるという技術常識に照らしても矛盾しない。 (エ)以上のとおりであるから、引用発明の希釈冷凍機は自明裏に「真空缶」として有底円筒状の末端部を有しその内部に共振器を備えるか、仮にそうとまで認定できないとしても、引用発明の希釈冷凍機を冷却対象物である共振器及び試料と共に有底円筒状の容器内に配置し、共振器及び試料を当該容器末端部に位置させるように配置し、相違点2の構成とすることは、周知技術に照らし当業者が容易に想到し得たことである。 (オ)作用効果についてみても、相違点2に係る構成を採用することの作用効果について本願明細書に特段の開示はないから、周知技術や技術常識から予測可能な範囲を超えて格別な作用効果を奏するものとは認められない。 ウ 相違点3について (ア)引用発明はパルスEPR分光計の磁石について、構成dとして「共振器をその中に配置する室温磁石」とする態様を含む。 この場合、室温磁石は、希釈冷凍機内に設置して室温を維持することは技術常識に反するから、希釈冷凍機の容器外に設けられることが自明である。 そうすると、上記イで検討した相違点2の希釈冷凍機及び共振器を内部に備える円筒状容器に係る構成が引用発明に自明裏に含まれるか周知技術に照らし容易想到であるかに関わらず、常温磁石はその共振器存在箇所である円筒状容器下部末端部の周りに配置するほかない。 よって、構成fの「磁石は、共振器をその中に配置する室温磁石」の「その中」とは、室温磁石の磁極間の空隙に共振器を容器と共に配置することを意味すると理解するのが自然であるといえる。 (イ)また、上記(ア)は、希釈冷凍機を用いた磁気共鳴装置に関する上記引用文献3の「磁気共鳴装置の試料S及び共振回路のコイル共鳴コイル17は容器末端部近傍に位置し、試料Sに磁場を印加するための超電導マグネットMは、内側容器18・外側容器12双方の末端部の周りに配置されている」なる看取事項によっても裏付けられ、希釈冷凍機を用いた磁気共鳴装置における室温磁石の配置として周知であるといえる。 (ウ)以上のとおりであるから、引用発明において、共鳴分光計の磁石の配置について相違点3の構成とすることは、引用発明から自明裏に導かれることであるか、そうとまでいえないとしても、周知技術に照らし当業者が容易に想到できたことであるといえる。 エ 相違点4について (ア)まず、引用発明の「パルスEPR分光計」(本件補正発明の「パルス式電子常磁性共鳴分光計」)を含む磁気共鳴装置において、磁石の高度な設計に基づく静磁界強度の高度な均一性が求められること、精密な測定には当該均一性が高いほど好ましいことは、下記(ウ)に挙げた引用文献4~6の記載を引用するまでもなく、技術常識である。 (イ)本件補正発明において、「磁界均一度は、10ppm@40mmDSV」が特定されているが、発明の詳細な説明においては、【0027】に「前記超均一磁石143は、高い均一度且つ高い安定した磁界を生成するために用いられる。室温電磁石であってもよく、超伝導磁石であってもよい。」、【0037】に「本実施例において、コイル型超均一超伝導磁石のパラメータとして、磁界均一度が1ppm@40mmDSVであり、最大磁界強度が1.8Tであり、空気間隙が100であってもよい。」なる希望的・抽象的・例示的な説明があるほか、当該特定された磁界均一度の数値を実現するための具体的な手段について特段の説明は見出せない。 よって、構成Gにおける磁界均一度の数値限定は、その実現のための具体的手段の提案を伴うものではなく、必要な、目標とすべき数値範囲を希望的に特定したものにすぎないといえる。 (ウ)また、特定された数値範囲に注目しても、磁気共鳴の技術分野において、サンプルを測定する領域(DSV)の磁界に、10ppm以下の高い均一度(低いppm)を求めることは従来周知である。 例えば、下記引用文献4の段落【0033】には、分極磁場領域40にわたって「~10ppmの均一性」を求めることや「サンプル寸法にわたって均一性が一般的に1ppmであ」ることが記載されているし、引用文献5の段落【0001】~【0002】には、広い測定空間(40cmDSV)において数ppmオーダーが求められることが記載されている。また、引用文献6の7頁左欄第24行-第26行にも、測定領域(1cm球体)における磁界均一度を10ppmとすることが記載されている。 a.特表2007-538244号公報(「周知文献4」という。)の記載事項 本願優先日前に公知となった周知文献4には次の記載がある。 「【0033】 ・・・分極中に、サンプルは、均一な磁場分極領域40(図3)内に位置決めされる従来技術に説明するものと同様のマイクロ波空洞11内に位置決めされる。~3.35Tの磁気磁束密度が好ましいが、これよりも低い磁場及び高い磁場(0.1T~6Tの範囲)も適切とすることができる。分極磁場領域40は、サンプルが確実にラジカルのESR線幅内になるように(一般的に10kHz)、サンプル容積にわたって~10ppmの均一性が必要である。マイクロ波照射は、適切に過分極にするために十分な時間にわたって行われる。固体状態NMR偏光計(図示せず)を任意的に用い、従来技術に説明するように、分極の増大をモニタすることができる。過分極の適切なレベルに達すると(一般的に飽和分極の70~90%であるが、以下に説明するようにこれよりも低いレベルも適切である場合がある)、サンプルプラス担体の管アセンブリ5は、サンプル容器7がRFアンテナ43内になるまで分極チャンバから迅速に引込められる。従って、固体過分極サンプルは、依然としてその容器内に存在しながら低温領域から磁石の低温槽2まで渡される。上述のように、サンプルが低温(<10K)のままであれば、0.1T未満の磁場になることは決してなく、移送は、迅速に(1秒又はそれ未満)で行われ、過分極の損失は殆ど起こらない。上述の装置は、これらの目的を達成し、2つの磁石間の最小磁場は、~0.3Tである。 RFアンテナ43は、NMRの均一な磁場領域44内に位置決めされる。NMR磁石は、サンプル寸法にわたって均一性が一般的に1ppmであり、一般的に7Tと16Tの間の磁場を発生する。従来技術から公知のように、室温シムコイルを用いて磁場均一性を微調整することができる。」 b.特開2014-200428号公報(「周知文献5」という。)の記載事項 本願優先日前に公知となった周知文献5には次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電子スピン共鳴や核磁気共鳴など、種々の磁気共鳴を利用して生体の組織画像を得る生体計測装置用の電磁石装置として好適に用い得る均等磁場発生電磁石装置に関する。 【背景技術】 【0002】 この種の磁気共鳴を利用した生体計測装置では、高強度且つ高均一度(数ppmオーダー)で、時間的に安定した静磁界発生源として、均等磁場を発生する均等磁場発生電磁石装置が用いられている。 特に、磁気共鳴画像診断装置(MRI(MagneticResonanceImaging)装置)に用いられる均等磁場発生電磁石装置では、精密でコントラストの高い生体断層像を高速で撮るとともに、高機能画像取得のために、撮像空間である電磁石中心部における球状空間(例えば直径40cm)内で、磁場の時間的安定度、磁場均一度(位置)が数ppmオーダーで要求される(例えば、特許文献1参照)。このように高い磁界均一度を達成するためには、複数のコイルを最適配置し、設計上の磁場均一性を磁界解析で最適化し、設計対応するのが一般的である。」 c.Alex I. Smirnov,Cryogen-free superconducting magnet system for multi frequency electron paramagnetic resonance up to 12.1T,Review of Scientific Instruments,2006年,Vol.77,pp.035108-1~035108-7(「周知文献6」という。)の記載事項 本願優先日前に公知となった周知文献6には次の記載がある。 「For example, magnetic field homogeneity of a typical HF EPR magnet is about 10 ppm in 1 cm sphere.」(7頁左欄第24行-第26行) (当審訳:「例えば、典型的なHF EPR磁石の磁場均一性は、1cm球中で約10ppmである。」) (エ)以上のとおりであるから、引用発明において、高い「磁石の磁界均一度」を実現することは、当業者が半ば当然に目指す事柄であり、構成Gで特定された「10ppm@40mmDSV」との数値範囲も、EPR分光計を含む磁気共鳴装置の分野において目指され、実現されている数値範囲に属するもので技術常識に外れたものではなく、周知技術の採用により当業者が容易に達成することが可能な数値範囲であるということができる。 よって、引用発明において相違点4の構成とすることは、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 また、それによる効果も自明で予測可能なものである。 オ 相違点5について (ア)引用発明も、構成hとして、引用発明のAWGを用いた(マイクロ波励起発生)機構を用いた他の実験として「パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験の変調深さを改善すること、さらに、正確な励起を通じて、二重量子コヒーレンス(DQC)実験はPELDORの測定値が優れている可能性があること」、すなわち、構成Hの「電子・電子二重共鳴試験」に相当する「パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験」への応用が示唆されるものである。 また、引用文献1の[6頁左欄1~13行]には二重・三重周波数励起についても言及がある。 (イ)さらに、電子常磁性共鳴の技術分野において、電子常磁性共鳴分光計(EPR)を用いて、電子-核二重共鳴試験(ENDOR法)や電子-電子二重共鳴試験(ELDOR法)を実施することは、従来周知である(例えば周知文献7の下記a.の抜記部分にはENDOR法について、周知文献8の下記b.の抜記部分にはELDOR法について記載されている)。 a.C. Bauer,Design of a permanent magnet with a mechanical sweep suitable for variable-temperature continuous-wave and pulsed EPR spectroscopy,Journal of Magnetic Resonance,2009年,Vol.198 No.2,pp.222-227(「周知文献7」という。)の記載事項 本願優先日前に公知となった周知文献7には次の記載がある。 ・「 ABSTRACT A magnetic system is introduced which consists of three nested rings of permanent magnets of a Halbach dipolar layout and is capable for EPR spectroscopy. Two of the rings can be rotated independently to adjust the magnetic flux in the center and even allow for mechanical field sweeps. The presented prototype achieves a magnetic flux range of 0.0282-0.3013 T with a minimal sweep of 0.15 mT and homogeneity of about 10-3. First applications with CW and pulsed Mims ENDOR as well as ESEEM experiments on a sample of a glycine single crystal doped with 1% copper nitrate demonstrate that flux range, sweep accuracy and homogeneity of this prototype is sufficient for EPR experiments on most solid samples. Together with a recently improved design magnets can be build which could serve as compact and easily transportable replacement of standard electromagnets with negligible consumption of power or coolants.」(1頁「Abstract」欄全文) (当審訳:「概要 Halbach 双極レイアウトの永久磁石の3つのネステッドリングからなる磁気システムが導入され、EPR分光法が可能である。2つのリングを独立して回転させて中央の磁束を調整し、機械的視野掃引を可能にすることもできる。提示されたプロトタイプは、0.15mTの最小掃引および約10-3の均質性を有する0.0282~0.3013Tの磁束範囲を達成する。 最初のCWおよびパルスMims ENDORアプリケーションは、1%硝酸銅とグリシン単結晶ドープの試料に対するESEEM実験同様、このプロトタイプの磁束範囲、掃引精度および均一性が、ほとんどの固体試料上のEPR実験のために十分であることを示しています。 最近改良された設計磁石と共に、標準的な電磁石のコンパクトで容易に輸送可能な電力または冷却剤の消費量を兼ね備えた標準的な電磁石の交換を築くことができる。) ・「 To test resolution of nuclear frequencies and long-time stability of the magnet we could thus employ a commercial X-band EPR/ENDOR spectrometer and probe head.」(226頁左欄下から3行目~最下行) (当審訳:「核周波数の解像度と磁石の長時間の安定性をテストするために、我々は市販のXバンドEPR/ENDOR分光計とプローブヘッドを採用することができる。」) b.特表2000-512003号公報(「周知文献8」という。)の記載事項 本願優先日前に公知となった周知文献8には次の記載がある。 「 ある密接に関連する技術は、電子-電子二重共鳴(ELDOR)分光法と呼ばれている。ELDORには長い間、通常のEPRと比較して改善された有効分解能及び新規の緩和パラメータを解析する能力が期待されてきた。ELDORは2つ以上の電子常磁性共鳴周波数を有する試料において用いられている。過去において、ELDORは通常のEPR分光法と同様に、第1のマイクロ波周波数を印加して第1のEPR信号を第1のEPR周波数において励起することにより実施されていた。第2のマイクロ波周波数を第2の常磁性共鳴周波数により掃引する一方で、第1のEPR信号をモニタした。第2のEPR周波数を励起した際の第1のEPR信号の変化がELDOR現象である。」(11頁1~9行) (ウ)一方、本件補正発明は相違点5に係る構成Hに関し、その実現のための具体的な手段については、発明の詳細な説明において、電子-各二重共鳴(ENDOR)のみに関し、下記a.~c.に摘記するとおり、複数の周波数帯における励起・検出機構を有するとの自明な必要構成について簡単な言及があるにすぎない。 a.「【0009】 さらなる実施形態において、前記マイクロ波共鳴室は、L、S、Xを含む複数種の動作周波数帯および電子・核二重共鳴を有するマイクロ波共鳴室である。」 b.「【0023】 前記マイクロ波励起発生手段11は、様々な高エネルギーマイクロ波パルスを生成するために用いられる。 前記マイクロ波伝導手段12は、マイクロ波パルスの指向性伝送に用いられ、サンプルを取り付け、マイクロ波の発射及び収集を実現するために用いられる。 前記マイクロ波検知手段13は、マイクロ波信号の収集及び分析に用いられる。 前記マイクロ波励起発生手段11、マイクロ波伝導手段12及びマイクロ波検知手段13は、走査フィールド常磁性共鳴検出、電子スピンエコー、電子・核二重共鳴等の完備した試験機能を備える。・・・。」 c.「【0032】 それは主に以下のようなものを含む。 1)パルス式マルチバンドEPRシステム(ここでのEPRシステムは、マイクロ波励起発生手段と、マイクロ波伝導手段におけるマイクロ波サーキュレータ及びマイクロ波共鳴室、マイクロ波検知手段と、冷凍機及び磁石手段における磁石とを含む。)それは、主に、L/S/Xバンドマイクロ波ブリッジと、L/S/Xバンドマイクロ波増幅器と、任意の波形発生器によるマイクロ波変調器と、L/S/Xバンドマイクロ波共鳴室と、Xバンドマイクロ波検出システムと、電子・核二重共鳴(ENDOR)モジュールと、超均一磁石とを含む。」 (エ)よって、パルス電子-電子二重共鳴(PELDOR)実験など多重共鳴への応用が示唆される引用発明について、相違点5の構成とする程度のことは、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 (7)請求人の主張について 請求人は審判請求書(3(c))において、本件補正発明と引用発明との相違に関し、特に審判請求時の補正により追加した構成G、Hに関し非容易想到である旨主張する。 しかし、これらの追加構成については、上記(6)エ、オにおいて説示したとおりであり、請求人の当該主張は採用できない。 (8)小括 したがって、上記(6).(7)において検討したように、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術・技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび 上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、令和2年6月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)アに示した本件補正前請求項1に記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由(理由3)は、概略次のとおりである。 ア この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 イ 引用文献等一覧 1.Yung Szen Yap et al.,A Ku band pulsed electron paramagnetic resonance spectrometer using an arbitrary waveform generator for quantum control experiments at millikelvin temperatures,Rev.Sci.Instrum.,2015年6月24日,Vol.86No.063110,pp.1-7 2.特開2015-102409号公報 3.特許第3338381号公報 3 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、及び周知例としての引用文献3の記載事項は、それぞれ上記第2の3(2)・(3)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、実質的に、本件補正発明の発明特定事項から構成G・Hを省いたものである。 上記第2の3(4)・(5)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明の相違点は、構成G・Hに関する相違点4・5のほか、構成B・C・E・Fに関する相違点1~3であるから、構成G・Hを省いた本願発明と引用発明との間の相違点は相違点1~3のみである。 しかし、該相違点1~3に係る構成が当業者にとって想到容易であることは、上記第2の3(6)ア~ウで説示したとおりである。 したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-003721

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決4件(中国科学技▲術▼大学)
  • 2023-005230拒絶査定不服審判 / 2024-09-10 / 請求不成立パルス式電子常磁性共鳴分光計
    同じ当事者: 中国科学技▲術▼大学
  • 2021-009873拒絶査定不服審判 / 2022-06-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)画像予測方法および関連装置
    同じ当事者: 中国科学技▲術▼大学
  • 2021-002706拒絶査定不服審判 / 2022-01-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)三次元画像化可能な顕微鏡及び画像化方法
    同じ当事者: 中国科学技▲術▼大学
  • 2018-003731拒絶査定不服審判 / 2019-04-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)X線格子位相コントラストイメージング装置及び方法
    同じ当事者: 中国科学技▲術▼大学
同じ論点・分野の審決(審決分類)344件(121・G01R、572・G01R、575・G01R)
  • 2022-014245拒絶査定不服審判 / 2023-08-16 / 請求不成立導体を通る電流を感知する際に使用するためのセンサデバイスおよび方法
    共通の審決分類: 121・G01R、572・G01R、575・G01R
  • 2022-012202拒絶査定不服審判 / 2023-06-14 / 請求不成立検査治具
    共通の審決分類: 121・G01R、572・G01R、575・G01R
  • 2024-017677拒絶査定不服審判 / 2026-06-26 / 請求不成立双方向専用リアルタイムインターフェースを使用して被試験デバイスを試験するための自…
    共通の審決分類: 121・G01R、575・G01R
  • 2024-017749拒絶査定不服審判 / 2026-06-26 / 請求不成立試験サイト固有のシグナリングを使用して被試験デバイスを試験するためのハンドラ、自…
    共通の審決分類: 121・G01R、575・G01R
  • 2024-017750拒絶査定不服審判 / 2026-06-26 / 請求不成立追加のシグナリングを使用して被試験デバイスを試験するための自動試験機器、ハンドラ…
    共通の審決分類: 121・G01R、575・G01R

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存