特許拒絶査定不服審判
2022-014069
酵素の処理装置、酵素の処理方法および抽出装置
- 審判番号
- 2022-014069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-051905
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2024年09月03日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社アルビオン
- 【請求人代理人】廣瀬 隆行
- 【請求人代理人】関 大祐
- 審判長/審判官
- 審判長 福井 悟
- 審判官 上條 肇
- 審判官 深草 亜子
- 分類
- P18 .113-WZ (C12M) / P18 .121-WZ (C12M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 51905「酵素の処理装置、酵素の処理方法および抽出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-150831〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年 3月19日を出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 3年 8月 3日付け:拒絶理由通知書
令和 3年12月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 2月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 5月25日付け:拒絶査定
令和 4年 9月 7日 :手続補正書の提出
令和 4年 9月 7日 :審判請求書の提出
令和 4年 9月15日 :審判請求理由を補充する手続補正書の提出
令和 5年12月13日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 2月15日 :意見書、手続補足書の提出
令和 6年 3月28日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「1~40℃のジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上とすることで生成した液化ジメチルエーテルを処理槽において対象物に接触させて、当該液化ジメチルエーテルが当該対象物と接触している状態を保持することで、当該対象物中に含まれる酵素を変性させることで失活させる処理を行い、前記液化ジメチルエーテルと前記対象物の抽出成分を含む抽出液を得る処理工程と、
前記対象物を前記処理槽内に残留したまま、前記抽出液を第1の導管を経由して前記処理槽から分離槽へ導出する導出工程と、
前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させて前記第2の導管から排出することにより、前記抽出液から前記液化ジメチルエーテルを分離させる分離工程と、
を含む酵素の処理方法。」
第3 拒絶の理由
令和 6年 3月28日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1(D) は、次のとおりのものを含むものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
令和 6年 3月28日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2(D) は、次のとおりのものを含むものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献4に記載された発明に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献4:国際公開第2015/152144号
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献4の記載
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(1)
「[0017]
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で用いた抽出装置の構成を図1に示す。微生物を充填する抽出カラム(HPG-10-5、耐圧硝子工業株式会社製、180mm×26mm(内径))の出口側と貯蔵容器(HPG-96-3、耐圧硝子工業株式会社製、容量96cm3)をステンレスチューブで接続する。抽出カラムと貯蔵容器はガラス及びポリカーボネートを用いた耐圧容器から成る。ジメチルエーテルタンクから液化ジメチルエーテルを微生物菌体を充填した抽出カラムに送液し、抽出カラムからの抽出液は、貯蔵容器内に回収する。抽出を所定時間行った後、貯蔵容器の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収する。
実施例1
[0018]
ラビリンチュラからの脂質の抽出
ラビリンチュラ類に属する微生物Aurantiochytrium limacinumの種菌をGY培地(30g グルコース、10g 酵母エキスを50%濃度の人工海水 1Lに溶解し、pH7.0に調整したもの)にて培養した。培養には50mLの三角フラスコを用い、これに30mLのGY培地を入れ、100rpmで振盪しながら28℃で3日間培養した。この培養液から遠心分離により菌体を回収し、回収した菌体を蒸留水で洗浄して培地成分を除去したのち、さらに遠心分離により菌体を回収した。回収した菌体を凍結乾燥に供して微生物バイオマスを得た。得られた微生物バイオマスは、抽出に供するまで-20℃の冷凍庫にて保管した。
凍結乾燥した微生物バイオマス0.33gに蒸留水1.263gを添加して良く撹拌したサンプルを、図1の抽出装置を用いて分画しながら抽出した。その際、液化ジメチルエーテルの流量を5mL/minに設定した。抽出カラムの温度は20℃に設定し、圧力は0.51MPaだった。なお、微生物バイオマスに蒸留水を添加し含水状態としたのは、培養液から回収した菌体に近い状態の再現を目的としている。この間、細胞の破砕を目的とした操作は行っていない。
抽出液は、表1に記載の時間ごとに分画した。液化ジメチルエーテルを流すことによって得た各フラクションを常温、常圧に戻すことでジメチルエーテルを気化させ、各フラクション中の抽出物からジメチルエーテルを除去した。さらに、乾燥した気体(本実施例ではジメチルエーテルを使用)を抽出物と十分接触させることにより各フラクション中の抽出物から水分を除去し、表1に記載の量のオイルを得た。
[0019]
表1
(略)
[0020]
このようにして得られた各オイルから脂肪酸メチルエステルを調製し、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成分析に供した。分析にはガスクロマトグラフ:Agilent Technologies 7890A GC System、カラム:J&W DB-WAX(内径0.25mm×長さ30m、膜厚0.25μm)を使用し、カラム温度(昇温条件)は140℃→240℃(4℃/分)、240℃で10分間保持、キャリアガスHe(1.05ml/min)の条件で分析を行った。その結果を表2に示す。各オイルの脂肪酸組成が大きく異なる結果が得られ、このことから液化ジメチルエーテルを溶媒とした抽出方法は脂質に対する分離選択性を有することが明らかになった。
表2のフラクション番号1および2のオイルでは、脂肪酸組成におけるパルミチン酸(C16:0)の値が約80%と極めて高かった。これは、本実施例の全てのフラクションのオイルを合計した場合のパルミチン酸の脂肪酸組成よりも高い値だった。したがい、液化ジメチルエーテルを溶媒とした抽出方法は、バイオ燃料として期待されるパルミチン酸を含有する脂質の割合を高める分画が可能な方法であることが明らかになった。
また、表2のフラクション番号3、4、5のオイルのDHAの脂肪酸組成は、本実施例の全てのフラクションのオイルを合計した場合のDHAの脂肪酸組成よりも高い値を示していた。したがい、液化ジメチルエーテルを溶媒とした抽出方法は、DHAを含有する脂質の割合を高める分画が可能な方法であることが明らかになった。」
(2)
「実施例3
[0024]
ヘマトコッカス藻からの脂質の抽出
バイオジェニック株式会社から購入したヘマトコッカス藻乾燥バイオマス(Haematococcus pluvialis、BM070828、未破砕品)を微生物バイオマスとして抽出に供した。微生物バイオマス0.403gに蒸留水2.317gを添加して良く撹拌したサンプルを、図1の抽出装置を用いた抽出に供した。その際、液化ジメチルエーテルの流量を10mL/minに設定した。抽出カラムの温度は20℃に設定し、圧力は0.51MPaだった。この間、細胞の破砕を目的とした操作は行っていない。実施例1と同様の操作を行って得たオイルの量を表4に、またこれらオイルを脂肪酸組成分析に供した結果を表5に示す。各オイルの脂肪酸組成が大きく異なる結果が得られ、実施例1と同様、液化ジメチルエーテルを溶媒とした抽出方法は脂質に対する分離選択性を有することが明らかになった。
実施例1及び本実施例の結果から、液化ジメチルエーテルを溶媒とした脂質に対する分離選択性を利用して脂質を分画する方法は、微生物の種類に依存することなく利用できることが明らかになった。」
(3)
「
[図:0001415670000001.jpg]
」
2 引用発明
引用文献4には、図1に示す抽出装置を実施例で用いることにより、ジメチルエーテルタンクから液化ジメチルエーテルを微生物菌体を充填した抽出カラムに送液したこと、抽出カラムと貯蔵容器はガラス及びポリカーボネートを用いた耐圧容器から成ること、微生物を充填する抽出カラムの出口側と貯蔵容器をステンレスチューブで接続すること、抽出カラムからの抽出液は、貯蔵容器内に回収すること、抽出を所定時間行った後、貯蔵容器の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収すること、(記載事項(1))、ラビリンチュラ類に属する微生物Aurantiochytrium limacinumの種菌を培養し、凍結乾燥した微生物バイオマスに蒸留水を添加して良く撹拌したサンプルを、図1の抽出装置を用いて抽出したこと、抽出カラムの温度は20℃に設定し、圧力は0.51MPaだったこと、抽出物からオイルを得たこと(記載事項(2))、図1の抽出装置に記載された、抽出カラムには出口側にフィルターが設けられ、図1の抽出装置に記載された、抽出カラムの出口側と貯蔵容器を接続するステンレスチューブには、流量調節バルブが設けられており、図1の貯蔵容器には、抽出カラムの出口側と接続するステンレスチューブとは別に減圧バルブを設けたジメチルエーテル蒸気排出経路が設けられていることが記載されている(記載事項(3))。
したがって、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「ガラス及びポリカーボネートを用いた耐圧容器からなり、出口側にフィルターを設けた抽出カラムに20℃の液化ジメチルエーテルを送液して、凍結乾燥したラビリンチュラ類に属する微生物バイオマスに蒸留水を添加して良く撹拌したサンプルに対して抽出処理を行い、前記液化ジメチルエーテルと前記サンプルのオイル成分を含む抽出液を得る処理工程と、
前記抽出液を流量調節バルブを設けたステンレスチューブを経由して貯蔵容器内へ回収する工程と、
貯蔵容器のジメチルエーテル蒸気排出経路の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収する工程と、
を含む方法。」
第5 対比
本願発明と引用発明4を対比する。
引用発明4の「20℃の液化ジメチルエーテル」は、液化しているのであって、飽和蒸気圧以上に加圧して生成したものと認められるから、本願発明の「1~40℃のジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上とすることで生成した液化ジメチルエーテル」に相当し、
引用発明4の「ガラス及びポリカーボネートを用いた耐圧容器からなり、出口側にフィルターを設けた抽出カラム」は、本願発明の「処理槽」に相当し、
引用発明4の「凍結乾燥したラビリンチュラ類に属する微生物バイオマスに蒸留水を添加して良く撹拌したサンプル」は、本願発明の「対象物」に相当し、
引用発明4の液化ジメチルエーテルによる「抽出処理」は、本願発明の「当該液化ジメチルエーテルが当該対象物と接触している状態を保持する処理を行い、液化ジメチルエーテルと前記対象物の抽出成分を含む抽出液を得る処理工程」に相当し、
引用発明4の「前記抽出液を流量調節バルブを設けたステンレスチューブを経由して貯蔵容器内へ回収する工程」は、図1の真中の抽出カラムの上側(出口側)にフィルターが設けられており、微生物バイオマスに蒸留水を添加して良く撹拌したサンプルは抽出カラム内に残留するから、本願発明の「前記対象物を前記処理槽内に残留したまま、前記抽出液を第1の導管を経由して前記処理槽から分離槽へ導出する導出工程」に相当し、
引用発明4の「抽出を所定時間行った後、貯蔵容器のジメチルエーテル蒸気排出経路の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収する工程」は、抽出を所定時間行った後であること、貯蔵容器には結果として抽出物と水の混合物が残ることから、新たな液化ジメチルエーテルが継続的に抽出カラムに供給されないように、図1の上側のステンレスバルブに設けられた流量調節バルブを閉鎖した上で、貯蔵容器のジメチルエーテル蒸気排出経路の減圧バルブが開放されていると解される。
そして、図1の右側の減圧バルブの開放によって、図1の上側の流量調節バルブより右側のステンレスチューブ、貯蔵容器、及び貯蔵容器に接続されたジメチルエーテル蒸気排出経路内は、液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力となっていると認められる。
そうすると、引用発明4の「抽出を所定時間行った後、貯蔵容器のジメチルエーテル蒸気排出経路の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収する工程」は、本願発明の「前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させて前記第2の導管から排出することにより、前記抽出液から前記液化ジメチルエーテルを分離させる分離工程」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明4とは、
「1~40℃のジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上とすることで生成した液化ジメチルエーテルを処理槽において対象物に接触させて、当該液化ジメチルエーテルが当該対象物と接触している状態を保持する処理を行い、前記液化ジメチルエーテルと前記対象物の抽出成分を含む抽出液を得る処理工程と、
前記対象物を前記処理槽内に残留したまま、前記抽出液を第1の導管を経由して前記処理槽から分離槽へ導出する導出工程と、
前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させて前記第2の導管から排出することにより、前記抽出液から前記液化ジメチルエーテルを分離させる分離工程と、
を含む処理方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。
(一応の相違点4)
本願発明は、液化ジメチルエーテルが当該対象物と接触している状態を保持する処理工程について、対象物中に含まれる酵素を変性させることで失活させる処理を行うこととし、処理方法を酵素の処理方法と特定しているのに対し、引用発明4は、そのような特定がなされていない点。
第6 判断
1 一応の相違点4について
本願発明の課題は、本願明細書【0007】に「酵素の失活処理後の抽出成分や抽出残渣の劣化を抑制することを目的とする。」と記載され、発明の効果について【0009】に「本発明によれば、酵素の失活処理後の抽出成分や抽出残渣の劣化を抑制することができる、という効果を奏する。」と記載されていること、酵素の処理方法のフローチャートである図1を説明した【0013】に「本実施形態に係る酵素の処理方法は、液化ガスを対象物である生体組織に接触させて、当該生体組織中に含まれる酵素を失活させるよう処理(酵素の失活処理)する工程(S1)と、工程(S1)で処理(酵素の失活処理)された抽出液から液化ガスを分離させる工程(S2)を含む。これにより、劣化の少ない失活処理物を得ることができる。」ことが記載されていることからも明らかなように、本願発明における酵素の失活は、対象物から成分を抽出する工程で、必然の結果として生じるものであり、本願明細書の記載から酵素の失活が生じないような抽出処理が存在することは認定できない。
このことは、本願明細書【0017】、【0019】、【0045】の記載、及び図1の工程及び図2における処理槽6から導出されるものが(失活した)抽出液であること(【0038】)からも明らかである。
したがって、本願発明は、1~40℃のジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上とすることで生成した液化ジメチルエーテルを、酵素を明らかに含む対象物に接触させて、当該液化ジメチルエーテルが当該対象物と接触している状態を保持するプロセスが対象物中に含まれる酵素を変性させることで失活させるという点に着目し、対象物中に含まれる酵素を変性させることで失活させるという目的、効果の面から処理工程を「当該対象物中に含まれる酵素を変性させることで失活させる処理を行う処理工程」と称し、処理方法を「酵素の処理方法」と称しているにすぎない。
一方、引用発明4の微生物バイオマスが酵素を含むことは自明であるので、本願発明と引用発明4とは、出発原料である酵素を明らかに含む対象物、1~40℃のジメチルエーテルを飽和蒸気圧以上とすることで生成した液化ジメチルエーテルを対象物に接触させる反応を同じくしており、両発明は、出発原料、液化ジメチルエーテル、反応条件のいずれからしても差異がなく、その必然の結果として酵素失活作用が生じている処理方法と解せるので、本願発明は、引用発明4と一応の相違点4によって、実態において相違するとは認められない。
そして、令和6年2月15日提出の手続補足書に添付された「酵素失活試験結果」によると、酵素の活性は、65.0%~73.2%残存しており、本願発明における酵素「失活」とは、酵素活性が下がりさえすればよいものと解されるので、本願発明において、引用文献4の記載から予測できない効果が奏されたともいえない。
したがって、本願発明は、引用文献4に記載された発明と区別することができず、また、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 審判請求人の主張について
(1)請求人の主張
審判請求人は令和6年5月29日付け意見書において、概ね次の点を主張している。
主張ア
引用文献4に記載の発明では、貯蔵容器(本発明1の「分離槽」に対応)の減圧バルブを開放して、ジメチルエーテルを気化させることとしているに過ぎない。
つまり、引用文献4に記載の発明は、本発明1のように、「前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させ」るというものではない。
そうすると、引用文献4には、少なくとも本発明1における「前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させ」るという構成は開示も示唆もされていないといえる(相違点)。
主張イ
本発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を有することにより、前述したとおり、抽出液から液化ジメチルエーテルを連続的かつ効率的に分離させることが可能であるという技術的効果を奏する。特に分離槽内だけではなく、第1の導管内も減圧することにより、効率的に液化ジメチルエーテルを分離したり回収したりすることが可能である。
よって、本発明1は、引用文献4に記載された発明ではなく、また引用文献4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
(2)判断
上記第5で示したとおり、引用文献4に記載された「抽出を所定時間行った後、貯蔵容器のジメチルエーテル蒸気排出経路の減圧バルブを開放してジメチルエーテルを気化させて除去し、残った抽出物と水の混合物を回収する工程」は、本願発明の「前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させて前記第2の導管から排出することにより、前記抽出液から前記液化ジメチルエーテルを分離させる分離工程」に相当するものである。
したがって、引用文献4の記載や図1の構造について技術常識を踏まえて検討すれば、引用発明4は、本願発明のように、「前記第1の導管、前記分離槽、及び前記分離槽に接続された第2の導管を含む経路内を前記液化ジメチルエーテルの飽和蒸気圧未満の圧力にして、前記液化ジメチルエーテルを蒸発させ」るというものではないとの請求人の主張アを採用することはできない。また、請求人の主張イも、本件発明の容易想到性を左右しうるものではなく、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、引用文献4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014069