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特許拒絶査定不服審判

2022-013249

ゲムフィブロジルによる遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症の対象の自発運動の改善および寿命の増加

審判番号
2022-013249
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-535366外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月24日
審決日
2022年10月26日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-535366「ゲムフィブロジルによる遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症の対象の自発運動の改善および寿命の増加」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日国際公開、WO2018/126000、令和 2年 2月13日国内公表、特表2020-504752〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、2017年12月28日(パリ条約による優先権主張 2016年12月29日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、出願後の主な経緯は、以下のとおりである。

令和3年 8月23日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月24日受付:意見書及び手続補正書
令和4年 4月19日付け:拒絶査定
令和4年 8月24日受付:審判請求書

第2 本願発明

本願の請求項1~11に係る発明は、令和3年11月24日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された請求項1~11に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項5を引用する請求項6に係る発明は、次のとおりのものと認める。

「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させるための医薬であって、ゲムフィブロジルを含む、医薬。」(以下「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明(請求項5を引用する請求項6に係る発明)に対する理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(特許法第29条第2項)の要点は、本願発明に係る発明は、下記の引用文献1、2に記載された発明と発明特定事項に差異がなく、又は当該引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから特許を受けることができない、というものである。

なお、本願発明(請求項5を引用する請求項6に係る発明)は、令和3年8月23日付け拒絶理由通知書において「<A>●理由1(産業上の利用可能性)」及び「<B>●理由2(新規性)及び3(進歩性)について」の対象とされた、本件補正前の請求項8を引用する請求項10(「フィブラートがゲムフィブロジルである」こと)を引用する請求項12(「神経変性疾患が遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症である」こと)に係る発明に対応する。

・引用文献1:Molecular Genetics and Metabolism,2013年02月,Vol.108, Issue2,p.S43の「81」
・引用文献2:米国特許出願公開第2015/0313863号明細書

第4 引用文献1を主引用例とする、特許法第29条第1項第3号(新規性)及び特許法第29条第2項(進歩性)についての判断

1 引用文献1の記載、及び引用文献1に記載された発明

(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。原文は外国語であるため、当審による日本語訳を括弧内に併記する。なお、下線は当審が付したものである(以下同様。)。

(摘記1a)

「81 Gemfibrozil treatment prolongs the life span of mouse model of late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis
(ゲムフィブロジル治療は、後期乳児神経セロイドリポフスチン症のマウスモデルの寿命を延長する)」(p.S43左欄「81」のタイトル)

(摘記1b)

「Background: Late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis(LINCL) is a rare neurodegenerative disease caused by mutation of Cln2 gene that causes deficiency or loss of function of the Tripeptidyl peptidase 1 enzyme that renders the cells incapable of processing, removing or recycling of proteins. This results in accumulation of autofluoroscent lipid-protein pigments(lipofuscin) in neuronal and other cells that leads to oxidative stress and increased cytokine response which causes neuronal damage.
(背景: 後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)は、Cln2遺伝子の突然変異によって引き起こされるまれな神経変性疾患であり、トリペプチジル ペプチダーゼ1酵素の欠乏又は機能喪失を引き起こし、細胞がタンパク質を処理、除去、又は再利用できなくなる。これにより、神経細胞や他の細胞に自己蛍光性脂質-タンパク質色素(リポフスチン)が蓄積し、神経細胞の損傷を生じる原因となる、酸化ストレスやサイトカイン応答の増加を引き起こす。)」(p.S43左欄「81」の「Background」)

(摘記1c)

「Study: In this study, we administered gemfibrozil, an FDA-approved lipid-lowering drug, which has been shown to exhibit a wide array of anti-inflammatory properties, orally at a dose of 7.5 mg/kg body wt/day to Cln2(-/-)mice. The life span and behavioral analysis was compared between the untreated, vehicle(0.1% methyl cellulose) and gemfibrozil treated group. Levels of peroxide production were also compared between normal and Cln2 knockout cells.
(研究: この研究では、幅広い抗炎症特性を示すことが明らかになっているFDA承認の脂質低下薬であるゲムフィブロジルを、Cln2(-/-)マウスに 7.5 mg/kg 体重/日の用量で経口投与した。寿命と行動分析は、未治療、ビヒクル(0.1% メチルセルロース)及びゲムフィブロジル治療群の間で比較された。過酸化物産生のレベルも、正常細胞とCln2ノックアウト細胞の間で比較された。)」(p.S43左欄「81」の「Study」)

(摘記1d)

「Results: Gemfibrozil treated Cln2(-/-)mice lived longer by more than 10 weeks and had better motor activity compared to untreated mice. Also, gemfibrozil treatment reduced the peroxide generation in Cln2 knockdown cells when compared to untreated cells. Collectively, this study indicates that the anti-inflammatory role of gemfibrozil can delay the onset of LINCL and enhance the life expectancy of the Cln2(-/-)mice.
(結果: ゲムフィブロジルで治療された Cln2(-/-)マウスは、未治療のマウスと比較して10週間以上長く生存し、運動活性が良好であった。また、ゲムフィブロジル治療は、未処理の細胞と比較した場合、Cln2ノックダウン細胞における過酸化物の生成を減少させた。まとめると、この研究は、ゲムフィブロジルの抗炎症の役割がLINCLの発症を遅らせ、Cln2(-/-)マウスの平均余命を延長させることができることを示している。)」(p.S43左欄「81」の「Results」)

(摘記1e)

「Significance: Currently, no drug is available for LINCL. This study demonstrates that treatment with gemfibrozil can be beneficial for the immune system by down-regulating the inflammatory pathways generated due to accumulation of lipofuscines and therefore may emerge as a potential therapy for LINCL.
(重要性: 現在、LINCLに使用できる薬剤はない。この研究は、ゲムフィブロジルによる治療が、リポフスチンの蓄積によって生成される炎症経路をダウンレギュレートすることによって免疫系に有益であり得ること、したがってLINCLの治療法として出現する可能性があることを示している。)」(p.S43左欄「81」の「Significance」)

(2)引用文献1に記載された発明

上記(摘記1c)には、ゲムフィブロジルをCln2(-/-)マウスに経口投与したことが記載されているところ、上記マウスには、ゲムフィブロジルを含む組成物を投与したものと解される。

そして、(摘記1d)に記載されている「未治療のマウス」は、前記ゲムフィブロジルを含む組成物を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスであると解される。

そうすると、特に(摘記1c)及び(摘記1d)から、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。

「ゲムフィブロジルを含む組成物であって、前記組成物を投与されたCln2(-/-)マウスを、前記組成物を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して10週間以上長く生存させるためのものである、前記組成物。」(以下「引用発明1」という。)

2 引用文献1を主引用例とする新規性(特許法第29条第1項第3号)についての判断

(1)本願発明は、上記第2で認定した「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させるための医薬であって、ゲムフィブロジルを含む、医薬。」である。

そして、「医薬を受けていない対照」は、前記医薬を投与されていない「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」であると解される。

また、本願明細書の【0024】における「対象(ヒト又は非ヒトであってもよい、患者など)」という記載から、上記「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」は、例えばマウス等の「非ヒト」を含むといえる。

(2)ここで、引用発明1の「Cln2(-/-)マウス」が、トリペプチジルペプチターゼ1酵素(以下「TPP1」という。)をコードするCln2遺伝子を標的として、検出可能なTPP1を喪失させた、「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」(摘記1b)のマウスモデルであることは、本願優先日当時の技術常識である(要すれば、「Sleat,D.E.et.al.,J.Neurosci,2004,24,9117-9126」(本願明細書の【0036】で引用された「(Sleatら、2004)」の文献)における、p.9117の要約、p.9119のFigure 2.及びp.9121のFigure 5.等の記載を参照。)。

また、引用文献1の原文では、上記「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」は「Late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis(LINCL)」(摘記1b)と記載されているのに対し、本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」について、本願明細書には「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症(Jansky-Bielschowsky病、LINCL、2型)」(【0003】)と記載され、さらに本願に対応する国際出願の国際公開公報(WO2018/12600A1)には「Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis (Jansky-Bielschowsky disease, LINCL, Type 2) 」([0003])及び「12.The method according to any one of claims 8-11, wherein the neurodegenerative disease is Late Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis.」(Claim 12)と記載されているので、上記「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」は、本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」と同義である。

そして、引用発明1の「ゲムフィブロジルを含む組成物」は、「前記組成物を投与されたCln2(-/-)マウスの寿命を、前記組成物を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して10週間以上長く生存させるためのものである」から、前記組成物は、Cln2(-/-)マウスの寿命を延長するための医薬に相当するといえる。

(3)上記(1)及び(2)を踏まえて本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「未治療のCln2(-/-)マウス」、「前記組成物を投与されたCln2(-/-)マウスの寿命を、前記組成物を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して10週間以上長く生存させるためのものである」、及び「ゲムフィブロジルを含む組成物」は、それぞれ本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」、「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させるための」、及び「ゲムフィブロジルを含む、医薬」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは相違点がなく、同一である。

(4)したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、新規性を有しない。

3 引用文献1を主引用例とする進歩性(特許法第29条第2項)についての判断

(1)上記2(2)で説示したように、引用発明1の「Cln2(-/-)マウスは、「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」(摘記1b)のマウスモデルであり、実際に後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)に罹患した患者そのもの(以下「LINCL患者」という。)ではない。そして、引用文献1には、引用発明1の組成物が、LINCL患者に投与する「医薬」であることは明示されていない。

これに対し、本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」は、本願明細書に「対象(ヒトまたは非ヒトであってもよい、患者など)」(【0024】)と記載されるように、ヒト又は非ヒトであってもよいLINCL患者を含むといえる。

そこで、仮に、本願発明の「ゲムフィブロジルを含む、医薬」がLINCL患者に投与する「医薬」であるのに対し、引用発明1の「ゲムフィブロジルを含む組成物」がLINCL患者に投与する「医薬」であるとはいえない場合について、検討する。

上記2(1)及び(2)で説示した内容を踏まえた上で、本願発明と引用発明1とを対比すると、本願発明の「ゲムフィブロジルを含む、医薬」及び引用発明1の「ゲムフィブロジルを含む組成物」は、いずれもゲムフィブロジルを含む組成物であるから、両発明は、「ゲムフィブロジルを含む組成物であって、対象の寿命を、組成物を受けていない対照と比較して延長させるための、前記組成物。」である点で一致し、下記の点(以下「相違点1という。)で相違する。

[相違点1]

本願発明の対象は「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」であり、本願発明の組成物はLINCL患者に投与する「医薬」であるのに対し、引用発明1の対象は「Cln2(-/-)マウス」であって、引用発明1の組成物がLINCL患者に投与する「医薬」であるとはいえない点。

(2)上記相違点1について検討する。

上記2(2)で説示したとおり、「Cln2(-/-)マウス」が「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」のマウスモデルであることは技術常識である。

そして、引用文献1には、引用発明1の「ゲムフィブロジルを含む組成物」に関して、

・「幅広い抗炎症特性を示すことが明らかになっているFDA承認の脂質低下薬であるゲムフィブロジル」及び「過酸化物産生のレベルも、正常細胞とCln2ノックアウト細胞の間で比較された。」という記載(摘記1c)、

・「まとめると、この研究は、ゲムフィブロジルの抗炎症の役割がLINCLの発症を遅らせ、Cln2(-/-)マウスの平均余命を延長させることができることを示している。」という記載(摘記1d)、及び、

・「現在、LINCLに使用できる薬剤はない。この研究は、ゲムフィブロジルによる治療が、リポフスチンの蓄積によって生成される炎症経路をダウンレギュレートすることによって免疫系に有益であり得ること、したがってLINCLの治療法として出現する可能性があることを示している。」という記載(摘記1e)がある。

これらの記載から、引用文献1には、引用発明1の組成物が、「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」のマウスモデルであるCln2(-/-)マウスの平均余命を延長させることができたこと、及び引用発明1の組成物が含む「ゲムフィブロジル」がFDA承認の脂質低下薬として知られていることが記載されており、さらに、引用文献1では、前記組成物を、LINCLの治療、すなわちLINCL患者の治療に使用し得る可能性があることについて言及されているといえる。

そうすると、引用発明1の組成物を「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」に投与すれば、引用発明1の対象である「Cln2(-/-)マウス」と同様に平均余命を延長させる、すなわち寿命を延長させることができ、LINCL患者に投与する「医薬」として使用できることを、当業者は予測可能であったといえる。

(3)上記(2)から、引用発明1の対象を「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」として、引用発明1の組成物を、LINCL患者に投与する「医薬」とすることによって、引用発明1を相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。

(4)本願発明の効果について

本願発明の効果について、本願明細書の実施例2(【0043】)では、下記の【図1A】及び【図1B】に示されるように、Cln2(-/-)マウスを4週齢から、ゲムフィブロジルを7.5 mg/kg体重/日で経口での強制摂取により毎日処置(Gem処置)することによって、Cln2(-/-)マウスの寿命を2ヶ月を超えて増加させることができることが、記載されている。

【図1A】

[図:0001396194000001.jpg]

【図1B】

[図:0001396194000002.jpg]

しかし、引用文献1には、引用発明1の「ゲムフィブロジルを含む組成物」を 7.5 mg/kg 体重/日の用量で経口投与した「Cln2(-/-)マウス」(摘記1c)が、「前記組成物を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウス」と比較して10週間以上、すなわち2ヶ月を超えて長く生存したこと(摘記1d)が記載されているのであるから、上記実施例2で示された効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得た程度のものであり、本願発明によって格別顕著な効果が奏されたとはいえない。

(5)したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を有しない。

第5 引用文献2を主引用例とする、特許法第29条第1項第3号(新規性)及び特許法第29条第2項(進歩性)についての判断

1 引用文献2の記載、及び引用文献2に記載された発明

(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。原文は外国語であるため、当審による日本語訳を括弧内に併記する。

(摘記2a)

「COMPOSITION AND METHOD FOR TREATING NEURONAL CEROID LIPOFUSCINOSIS
(神経セロイドリポフスチン症を治療するための組成物及び方法)」(発明の名称)

(摘記2b)

「1. A method for treatment of a neurodegenerative disease, comprising administering to a subject in need of such treatment a composition comprising a therapeutically effective amount of an agent that mediates upregulation of TPP1.
(1.TPP1のアップレギュレーションを媒介する薬剤の治療有効量を含む組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、神経変性疾患の治療方法。)
2. The method of claim 1, wherein the neurodegenerative disease is selected from the group consisting of neuronal ceroid lipofuscinosis, ・・・.
(2.神経変性疾患は、神経セロイドリポフスチン症・・・からなる群から選択される、請求項1の方法。)
続きを表示(全13行)
・・・
5. The method of claim 2, wherein the neurodegenerative disease is neuronal ceroid lipofuscinosis.
(5.神経変性疾患が神経セロイドリポフスチン症である、請求項2に記載の方法。)
6. The method of claim 1, wherein the agent is a lipid-lowering drug.
(6.薬剤が脂質低下薬である、請求項1記載の方法。)
7. The method of claim 6, wherein the lipid-lowering drug is a fibrate.
(7.脂質低下薬がフィブラートである、請求項6に記載の方法。)
8. The method of claim 7, wherein the fibrate is gemfibrozil or fenofibrate.
(8.フィブラートがゲムフィブロジル又はフェノフィブラートである、請求項7に記載の方法。)」(p.15左欄の請求項1~8)

(摘記2c)

「[0003] The present invention relates to a composition and method for treating a neurodegenerative disease, such as neuronal ceroid lipofuscinosis.
([0003] 本発明は、神経セロイドリポフスチン症などの神経変性疾患を治療するための組成物及び方法に関する。)
[0004] Neuronal ceroid lipofuscinosis (NCL) is a group of neurodegenerative diseases mainly composed of typical autosomal recessive lysosomal storage disorders. The NCLs can be characterized by clinical manifestations like progressive mental deterioration, cognitive impairment, visual failures, seizures and deteriorating motor function accompanied by histological findings such as the accumulation of autofluorescent storage material in neurons or other cell types (1). The NCLs have been subdivided into several groups (Type 1-10) based on the age of onset, ultrastructural variations in accumulated storage materials, and genetic alterations unique to each specific disease type(2,3).
([0004] 神経セロイドリポフスチン症 (NCL) は、主に典型的な常染色体劣性リソソーム蓄積症から構成される神経変性疾患のグループである。NCL は、進行性の精神衰退、認知障害、視覚障害、発作、運動機能の低下などの臨床症状によって特徴付けられ、ニューロン又は他の細胞型における自己蛍光貯蔵物質の蓄積などの組織学的所見を伴う(1)。NCLは、発症年齢、蓄積された貯蔵物質の超微細構造の変化、及び各特定の疾患タイプに固有の遺伝子変化に基づいて、いくつかのグループ(タイプ 1~10)に細分されている (2,3)。)」([0003] ~[0004] )

(摘記2d)

「[0024] FIG. 14 illustrates that gemfibrozil prolongs the life span of CLN2(-/-) mouse: CLN2(-/-) animals were orally administered with gemfibrozil dissolved in 0.1% methyl-cellulose at a dosage of 7.5 mg/kg body weight/day. Treatment was started from 4 weeks of age for all groups. Methyl cellulose was used as vehicle. Top panel: Schematic representation of experiments performed. Bottom panel: Kaplan-Meier plot for percentage survival of treated vs.vehicle or untreated animals.
([0024] 図.14はゲムフィブロジルがCLN2(-/-)マウスの寿命を延長したことを示している:CLN2(/)動物に、0.1%メチルセルロースに溶解したゲムフィブロジルを7.5 mg/kg 体重/日の投与量で経口投与した。治療はすべてのグループで4週齢から開始された。メチルセルロースをビヒクルとして使用した。上部パネル:実行された実験の概略図。下部パネル:治療した動物とビヒクル又は未治療の動物の生存率のカプラン-マイヤープロット。)
[図:0001396194000003.jpg]
」([0024] 及びFIG.14)

(当審注:FIG.14の縦軸は「生存率」、横軸は「治療開始後の日数」を示す。)

(摘記2e)

「[0027] The present invention relates to methods of treatment of neuronal ceroid lipofuscinosis (NCL). Neuronal ceroid lipofuscinosis includes a group of diseases such as late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis (LINCL) and Batten disease that are neurodegenerative lysosomal storage diseases. Many forms of NCL occur via mutations in the Cln genes. LINCL is associated with mutations in the Cln2 gene, which encodes tripeptidyl peptidase 1 (TPP1). The genes Cln1 and Cln3 are associated with infantile NCL (INCL) and juvenile NCL (JNCL),respectively.
([0027] 本発明は、神経セロイドリポフスチン症(NCL)の治療方法に関する。神経セロイドリポフスチン症には、神経変性ライソソーム蓄積症である後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)やバッテン病などの疾患群が含まれている。NCLの多くの形態は、Cln遺伝子の変異によって発生する。 LINCLは、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)をコードする Cln2遺伝子の変異に関連している。遺伝子Cln1とCln3 は、それぞれ乳児NCL (INCL)と若年NCL(JNCL)に関連付けられている。)」([0027])

(摘記2f)

「[0031] Both gemfibrozil and fenofibrate are capable of enhancing TPP1 in cultured neurons and glial cells and in vivo in the brain. In addition, PPARα, but not PPARβ and PPARγ, is involved in gemfibrozil- and fenofibrate-mediated upregulation of TPP1. Furthermore,fibrate drugs upregulate TPP1 via activation of PPARα-RXRα heterodimer. Collectively, gemfibrozil and fenofibrate, FDA-approved drugs for hyperlipidemia, are of therapeutic value in the treatment of LINCL.
([0031] ゲムフィブロジルとフェノフィブラートはどちらも、培養ニューロンとグリア細胞、及び脳のin vivoでTPP1を増強することができる。加えて、PPARβ及びPPARγではなく、PPARαがゲムフィブロジル及びフェノフィブラートを介したTPP1のアップレギュレーションに関与している。さらに、フィブラート系薬剤は、PPARα-RXRαヘテロ二量体の活性化を介して TPP1 をアップレギュレートする。まとめると、ゲムフィブロジルとフェノフィブラートは、高脂血症に対するFDA承認薬であり、LINCLの治療において治療的価値がある。」([0031] )

(摘記2g)

「[0038] Many types of NCL may be associated with mutations in the Cln genes. These mutations may be associated with a deficiency or loss of function. For example, late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis (LINCL) may be associated with mutations in the gene Cln2, while infantile NCL (INCL) and juvenile (JNCL) may be associated with mutations in the genes Cln1 and Cln3, respectively. The gene Cln2 encodes lysosomal tripeptidyl tripeptidase 1 (TPP1), which is a 46 kilodalton protein that functions in the acidic environment of the lysosomal compartment of a cell to remove tripeptides from the amino termini of proteins. Deficiency and/or loss of function of TPP1 may lead to intralysosomal accumulation of autofluoroscent lipopigments known as ceroid-lipofuscins. Some subjects suffering from NCL may have residual activity of TPP1.
([0038] 多くの種類のNCLはCln遺伝子の変異に関連している可能性がある。これらの変異は、機能の欠損又は喪失に関連している可能性がある。例えば、後期乳児神経セロイドリポフスチン症 (LINCL)は遺伝子Cln2の変異に関連している可能性があり、乳児NCL(INCL)及び若年性(JNCL)はそれぞれ遺伝子Cln1及びCln3の変異に関連している可能性がある。遺伝子Cln2は、タンパク質のアミノ末端からトリペプチドを除去するために細胞のリソソーム区画の酸性環境で機能する46キロダルトンのタンパク質であるリソソームのトリペプチジルトリペプチダーゼ1(TPP1)をコードしている。TPP1の欠乏及び/又は機能喪失は、セロイドリポフスチンとして知られる自己蛍光脂質色素のリソソーム内蓄積につながる可能性がある。NCLに罹患している一部の被験者は、TPP1の活性が残存している可能性がある。」([0038])

(摘記2h)

「[0042] (1) Lipid-Lowering Drug
([0042] (1) 脂質低下薬)
[0043] The agent mediating upregulation of TPP1 may be a lipid-lowering drug. Lipid-lowering drugs may be drugs that reduce the level of triglycerides circulating in the blood of the subject. Additionally, lipid-lowering drugs may be drugs that decrease the risk of hyperlipidemia. Such lipid-lowering drugs may include fibrates such as gemfibrozil, fenofibrate, and clofibrate.
([0043] TPP1のアップレギュレーションを媒介する薬剤は、脂質低下薬であり得る。脂質低下薬は、対象の血液中を循環するトリグリセリドのレベルを低下させる薬であり得る。さらに、脂質低下薬は、高脂血症のリスクを低下させる薬である場合がある。このような脂質低下薬には、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、及びクロフィブラートなどのフィブラートが含まれ得る。)
[0044] The fibrate may mediate upregulation of TPP1 via PPARα, but not PPARβ and PPARγ. During upregulation of TPP1, PPARα forms a heterodimer with RXR- a and the RXR-α/PPAR-α heterodimer is recruited to the promoter of the Cln2 gene via a RXR binding site.
([0044]フィブラートは、PPARαを介してTPP1のアップレギュレーションを媒介する可能性があるが、PPARβ及びPPARγは媒介しない。TPP1のアップレギュレーションの間、PPARαはRXR-αとヘテロ二量体を形成し、RXR-α/PPAR-αヘテロ二量体はRXR結合部位を介してCln2遺伝子のプロモーターに動員される。)」([0042] ~[0044])

(摘記2i)

「[0049] b. Pharmaceutical Compositions
([0049] b.医薬組成物)
[0050] The agent may be incorporated into pharmaceutical compositions suitable for administration to a subject (such as a patient, which may be a human or non-human).
([0050] 薬剤は、対象(ヒト又は非ヒトであり得る患者など)への投与に適した薬学的組成物に組み込むことができる。)
[0051] The pharmaceutical compositions may include a “therapeutically effective amount” or a “prophylactically effective amount” of the agent. A “therapeutically effective amount” refers to an amount effective, at dosages and for periods of time necessary, to achieve the desired therapeutic result. A therapeutically effective amount of the composition may be determined by a person skilled in the art and may vary according to factors such as the disease state, age, sex, and weight of the individual, and the ability of the composition to elicit a desired response in the individual. A therapeutically effective amount is also one in which any toxic or detrimental effects of the agent are outweighed by the therapeutically beneficial effects. A “prophylactically effective amount” refers to an amount effective, at dosages and for periods of time necessary, to achieve the desired prophylactic result. Typically, since a prophylactic dose is used in subjects prior to or at an earlier stage of disease, the prophylactically effective amount will be less than the therapeutically effective amount.
([0051] 薬学的組成物は、薬剤の「治療有効量」又は「予防有効量」を含み得る。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間で有効な量を指す。組成物の治療有効量は、当業者によって決定され得、個人の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに組成物が所望の応答を誘発する能力などの要因に従って変化し得る。治療上有効な量は、治療上有益な効果が薬剤の毒性又は有害な効果を上回る量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するために必要な投与量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防用量は疾患の前又は早期の段階で対象に使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。)」([0049] ~[0051] )

(摘記2j)

「Example 10
Summary of Examples 2-9
[0099] The classical late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis (LINCLs) is an autosomal recessive disease, where the defective gene is Cln2, encoding tripeptidyl peptidase I (TPP1). At the molecular level LINCL is caused by accumulation of autofluorescent storage materials in neurons and other cell types. Currently there is no established treatment for this fatal disease. This study reveals a novel use of gemfibrozil and fenofibrate, FDA-approved lipid-lowering drugs, in upregulating TPP1 in brain cells. Both gemfibrozil and fenofibrate upregulated mRNA, protein and enzymatic activity of TPP1 in primary mouse neurons and astrocytes as well as human astrocytes and neuronal cells.
(実施例 10
実施例 2~9のまとめ
[0099] 古典的な後期乳児神経セロイドリポフスチン症 (LINCLs)は常染色体劣性疾患であり、欠陥遺伝子はCln2であり、トリペプチジルペプチダーゼ I (TPP1) をコードしている。分子レベルでは、LINCLは、ニューロンやその他の細胞型における自己蛍光貯蔵物質の蓄積によって引き起こされる。現在、この致命的な病気に対する確立された治療法はない。この研究は、脳細胞における TPP1 のアップレギュレーションにおける、FDA 承認の脂質低下薬であるゲムフィブロジルとフェノフィブラートの新しい使用法を明らかにしている。ゲムフィブロジルとフェノフィブラートの両方が、マウスの一次ニューロンと星状細胞、並びにヒト星状細胞と神経細胞における TPP1 の mRNA、タンパク質、及び酵素活性をアップレギュレートした。)」(p.10右欄 Example 10[0099]の1~12行)

(摘記2k)

「Example 11
Discussion of Examples 2-9
[0100] The NCL family of disease can be considered to be one of the most important hereditary neurodegenerative lysosomal storage diseases (LSD) in children (34).Mutations in the Cln2 gene result in deficiency or loss of function of the TPP1 enzyme (9, 30, 35). There have been reports of over 68 missense mutations in the Cln2 gene including 35 single amino acid substitutions. Studies with 14 different naturally occurring disease associated mutations showed alteration of lysosomal transport, increased half-life of the proenzyme and improper folding, resulting to loss of function of the enzyme (9). Currently there is no established drug mediated therapy for LINCL, a classic subtype of the NCLs.・・・.
(実施例 11
実施例2~9の考察
[0100] NCLファミリーの疾患は、小児における最も重要な遺伝性神経変性リソソーム蓄積症 (LSD)の1 つと見なすことができる(34)。Cln2遺伝子の変異は、TPP1 酵素の欠損又は機能喪失をもたらす(9、30、35)。Cln2遺伝子には、35の単一アミノ酸置換を含む 68 以上のミスセンス変異が報告されている。14種類の自然発生疾患関連変異に関する研究では、リソソーム輸送の変化、プロ酵素の半減期の増加、及び不適切なフォールディングが酵素の機能の喪失をもたらすことが示された(9)。現在、NCL の古典的なサブタイプである LINCL に対する確立された薬物介在療法はない。・・・。)
[0101] On the other hand, restoration of activity at even low levels could prove helpful for most LSDs, where restoration of even <10% of normal activity may have therapeutic benefits (40). Studies with hypomorphs of Cln2 mutant mice, expressing different levels of TPP1 enzyme indicate that even 3% of normal TPP1 activity is capable of delaying the onset of the disease and 6% of the normal activity attenuates the disease and increases the lifespan of mice (40). Also two specific variants of mutated TPP1 were responsive to molecular chaperone treatment, indicating that folding improvement strategies can be used to restore the enzymatic activity (9). Recent studies suggest that some misfolded variants or misprocessed proteins may also be rescued by treatment in permissive temperatures under suitable condition (9). There have also been reports of some mutations in TPP1 (Arg447His), which apparently may not have any pathogenic effect (31). Moreover, a sensitive enzyme activity assay detected residual levels of TPP1 activity in various biological samples from patients who were confirmed to have LINCL by genetic analysis (30). This study also showed the presence of enzyme activity in various animals having NCL-like neurodegenerative symptoms rendering them unsuitable for being a model for classical LINCL (30). Furthermore, using highly sensitive capillary electrophoresis technique, Vigilio et al, reported that lymphocytes from patients affected with LINCL exhibited TPP1 activity, although at low levels (in a range between 0.1 and 0.8 mU/mg) (8). These findings about the presence of residual enzymatic activity in LINCL patients are very interesting as it indicate the presence of at least a few copies of the functional gene in the system. Therefore, identifying specific drugs and understanding the mechanisms by which these drugs can upregulate the endogenous normal copies of the gene may be a critical step for LINCL therapy.
([0101] 一方、たとえ低レベルであっても活性の回復はほとんどの LSD にとって有益であることが証明され、通常の活性の10%未満の回復でも治療効果がある可能性がある(40)。さまざまなレベルのTPP1 酵素を発現する Cln2変異マウスのハイポモルフ(遺伝子の機能が部分的に失われた変異体)に関する研究は、正常な TPP1 活性の 3% でさえ疾患の発症を遅らせることができ、正常な活性の 6% が疾患を軽減し、マウスの寿命を延ばすことを示している(40)。また、変異TPP1の2つの特定のバリアントは、分子シャペロン処理に応答し、フォールディング改善戦略を使用して酵素活性を回復できることを示している(9)。最近の研究では、適切な条件下での許容温度での処理によって、一部の誤って折り畳まれたバリアント(変異体)又は誤って処理されたタンパク質も救済される可能性があることが示唆されている(9)。TPP1 (Arg447His) のいくつかの変異の報告もあり、これは明らかに病原性を持たない可能性がある(31)。さらに、高感度の酵素活性アッセイにより、遺伝子解析によって LINCL であることが確認された患者のさまざまな生物学的サンプルで TPP1 活性の残存レベルが検出された(30)。この研究では、NCL 様の神経変性症状を有する様々な動物に酵素活性が存在することも示され、古典的な LINCL のモデルには適さないことが示された(30)。さらに、高感度のキャピラリー電気泳動技術を使用して、Vigilioらは、LINCLに罹患した患者のリンパ球が、低レベル(0.1~0.8 mU/mg の範囲)ではあるがTPP1活性を示したことを報告した(8)。LINCL患者における残存酵素活性の存在に関するこれらの知見は、システム内に機能遺伝子の少なくとも数コピーが存在することを示しているため、非常に興味深いものである。したがって、特定の薬剤を特定し、これらの薬剤が遺伝子の内因性正常コピーをアップレギュレートするメカニズムを理解することは、LINCL 治療の重要なステップとなる可能性がある。)
[0102] Gemfibrozil, marketed as 'Lopid', and fenofibrate, known as 'Tricor', are FDA-approved drugs prescribed for hyperlipidemia(10, 12). Here we delineate for the first time that, these drugs are capable of upregulating TPP1 in brain cells. This finding was confirmed by both mRNA and protein studies in both mouse and human cells. The increase in protein levels was throughout the brain as neurons isolated from different brain regions of mouse showed increased TPP1 expression upon treatment with gemfibrozil. In case of LINCL, the presence of functionally active TPP1 enzyme is critical for therapy, as we have to rely on the upregulation of residual enzyme activity in patients. The TPP1 activity assay, performed in different cell types, clearly showed that there was significant increase in the activity of the enzyme which is a result of increased levels of the protein. Considering the possibility of treatment by upregulation of the endogenous Cln2 gene, this finding could be of importance in the therapy of LINCL.
([0102]「Lopid」として販売されているゲムフィブロジルと、「Tricor」として知られるフェノフィブラートは、高脂血症のために処方される FDA 承認薬である (10, 12)。ここで、これらの薬物が脳細胞のTPP1をアップレギュレートできることを初めて説明する。この発見は、マウスとヒトの両方の細胞におけるmRNAとタンパク質の両方の研究によって確認された。タンパク質レベルの増加は、マウスのさまざまな脳領域から分離されたニューロンがゲムフィブロジルで処理するとTPP1発現の増加を示したため、脳全体に見られた。LINCLの場合、機能的に活性なTPP1酵素の存在は、患者の残留酵素活性のアップレギュレーションに依存しなければならないため、治療にとって重要である。異なる細胞タイプで実施されたTPP1活性アッセイは、タンパク質レベルの増加の結果である酵素活性の有意な増加があることを明確に示した。内因性Cln2遺伝子のアップレギュレーションによる治療の可能性を考慮すると、この発見は LINCLの治療において重要である可能性がある。」(p.10右欄~p.11右欄のExample 11[0100]~[0102])

(2)引用文献2に記載された発明

引用文献2の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5には、 TPP1(トリペプチジルトリペプチダーゼ1)のアップレギュレーションを媒介する薬剤の治療有効量を含む組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、神経セロイドリポフスチン症の治療方法が記載されている(摘記2b)。

また、引用文献2には、神経セロイドリポフスチン症の具体例として、トリペプチジルペプチダーゼ1 (TPP1) をコードするCln2遺伝子の変異に関連している「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」が記載され(摘記2e、2g、2j)、TPP1のアップレギュレーションを媒介する薬剤として、具体的に脂質低下薬である「ゲムフィブロジル」が記載されている(摘記2bの請求項8、摘記2f、2h、2j、2k)。

そして、上記「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」が、本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」と同義であることは、上記第4の2(2)で説示したとおりである。

さらに、引用文献2には、LINCLのマウスモデルである「Cln2(-/-)マウス」(上記第4の2(2)を参照。)に、0.1%メチルセルロースに溶解したゲムフィブロジル、すなわち溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液を、4週齢から7.5 mg/kg 体重/日の投与量で経口投与したところ、ゲムフィブロジルがCLN2(-/-)マウスの寿命を延長したこと、すなわちゲムフィブロジルがCln2(-/-)マウスの寿命を、前記溶液が投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して延長したこと、を示す実験結果が記載されている(摘記2d)。

そうすると、引用文献2には以下の発明が記載されていると認められる。

「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液であって、Cln2(-/-)マウスの寿命を、前記溶液を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して延長させるためのものである、前記溶液。」(以下「引用発明2」という。)

2 引用文献2を主引用例とする新規性(特許法第29条第1項第3号)についての判断

(1)本願発明は、上記第2で認定した「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させるための医薬であって、ゲムフィブロジルを含む、医薬。」である。

そして、「医薬を受けていない対照」は、前記医薬を投与されていない「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」であると解される。

また、本願明細書の【0024】における「対象(ヒト又は非ヒトであってもよい、患者など)」という記載から、上記「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」は、例えばマウス等の「非ヒト」を含むといえる。

(2)ここで、引用発明2の「Cln2(-/-)マウス」が「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症(LINCL)」のマウスモデルであることは、技術常識である(上記第4の2(2)を参照。)。

そして、引用発明2の溶液は、前記溶液を投与されたCln2(-/-)マウスの寿命を、前記溶液を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して延長させるためのものであるから、引用発明2の「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」は、Cln2(-/-)マウスの寿命を延長するための医薬に相当するといえる。

(3)上記(1)及び(2)を踏まえて本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「未治療のCln2(-/-)マウス」、「前記溶液を投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して延長させるためのものである」、及び「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」は、それぞれ本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」、「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させるための」、及び「ゲムフィブロジルを含む、医薬」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明2とは相違点がなく、同一である。

(4)したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、新規性を有しない。

3 引用文献2を主引用例とする進歩性(特許法第29条第2項)についての判断

(1)上記第4の2(2)で説示したように、引用発明2の「Cln2(-/-)マウスは、「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)」(摘記1b)のマウスモデルであり、LINCL患者ではない。

そして、引用文献2には、引用発明2の「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」が、LINCL患者に投与する「医薬」であることは明示されていない。

これに対し、上記第4の2(2)で説示したように、本願発明の「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」は、ヒト又は非ヒトであってもよいLINCL患者を含むといえる。

そこで、仮に、本願発明の「ゲムフィブロジルを含む、医薬」がLINCL患者に投与する「医薬」であるのに対し、引用発明2の「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」がLINCL患者に投与する「医薬」であるとはいえない場合について、検討する。

上記2(1)及び(2)で説示した内容を踏まえた上で、本願発明と引用発明2とを対比すると、本願発明の「ゲムフィブロジルを含む、医薬」及び引用発明2の「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」は、いずれもゲムフィブロジルを含む組成物であるから、両発明は、「ゲムフィブロジルを含む組成物であって、対象の寿命を、組成物を受けていない対照と比較して延長させるための、前記組成物。」である点で一致し、下記の点(以下「相違点2という。)で相違する。

[相違点2]

本願発明の対象は「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」であり、本願発明の組成物はLINCL患者に投与する「医薬」であるのに対し、引用発明2の対象は「Cln2(-/-)マウス」であって、引用発明2の組成物がLINCL患者に投与する「医薬」であるとはいえない点。

(2)上記相違点2について検討する。

上記第4の2(2)で説示したとおり、「Cln2(-/-)マウス」が「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症」のマウスモデルであることは、技術常識である。

そして、引用文献2には、

・引用発明2の「溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液」を投与されたCln2(-/-)マウスの寿命が、前記溶液が投与されていない未治療のCln2(-/-)マウスと比較して延長したことを示す実験結果についての記載(摘記2d)、

・「LINCLは、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)をコードする Cln2遺伝子の変異に関連している」(摘記2e)という記載、及び「後期乳児神経セロイドリポフスチン症(LINCL)は遺伝子Cln2の変異に関連している可能性があり、・・・。遺伝子Cln2は、・・・リソソームのトリペプチジルトリペプチダーゼ1(TPP1)をコードしている。」(摘記2g)という記載、

・ゲムフィブロジルはTPP1をアップレギュレートする作用を有することについての記載(摘記2f、2h、2j)、及び「まとめると、ゲムフィブロジルとフェノフィブラートは、高脂血症に対するFDA承認薬であり、LINCLの治療において治療的価値がある」(摘記2f)という記載、

・「b.医薬組成物・・・薬剤は、対象(ヒト又は非ヒトであり得る患者など)への投与に適した薬学的組成物に組み込むことができる」という記載(摘記2i)、及び薬剤の「治療有効量」又は「予防有効量」についての記載(摘記2i)があり、さらに、

・LINCL 患者における残存酵素活性の存在に関する各種の知見から、特定の薬剤が遺伝子の内因性正常コピーをアップレギュレートするメカニズムを理解することは、LINCL治療の重要なステップとなる可能性があることについての記載(摘記2k)がある。

これらの記載から、引用文献2には、引用発明2の溶液がCln2(-/-)マウスの寿命を延長したこと、そして、引用発明2の溶液が含む「ゲムフィブロジル」は高脂血症に対するFDA承認薬であってLINCLの治療において治療的価値があり、引用発明2の溶液を、LINCLの治療、すなわちLINCL患者の治療に使用し得る可能性があることについて言及されているといえる。

そうすると、引用発明2の溶液を、「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」に投与すれば、引用発明2の対象である「Cln2(-/-)マウス」と同様に寿命を延長させることができ、患者に投与する「医薬」として使用できることを、当業者は予測可能であったといえる。

(3)上記(2)から、引用発明2の対象を「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象」として、引用発明2の溶液を、LINCL患者に投与する「医薬」にすることによって、引用発明2を相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。

(4)本願発明の効果について

本願発明の効果について、本願明細書の実施例2(【0043】)では、【図1A】及び【図1B】に示されるように、Cln2(-/-)マウスを4週齢から、ゲムフィブロジルを7.5 mg/kg体重/日で経口での強制摂取により毎日処置(Gem処置)することによって、Cln2(-/-)マウスの寿命を2ヶ月を超えて増加させることができることが記載されていることは、上記第4の3(4)で説示したとおりである。

しかし、引用文献2の(摘記2d)には、Cln2(-/-)マウスに、4週齢から、溶解したゲムフィブロジルを含む0.1%メチルセルロース溶液を7.5 mg/kg 体重/日の投与量で経口投与したところ、ゲムフィブロジルがCLN2(-/-)マウスの寿命を延長したことを示す実験結果が記載されており、図.14(Fig.14)によると、ゲムフィブロジルを投与した群(GEMFIBROZIL) の寿命(140日程度)は、未治療群(UNTREATED) の寿命(75日程度)よりも約2ヶ月を超えて増加しているのであるから、上記実施例2で示された効果は、引用文献2の記載から当業者が予測し得た程度のものであり、本願発明によって格別顕著な効果が奏されたとはいえない。

(5)したがって、本願発明は、引用発明2及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を有しない。

第6 請求人の主張について

1 請求人は、審判請求書の「3.(2)<A>」(4頁)において、

「原査定に係る審査において既に述べたように、引用文献1及び引用文献2には、概略的で一般的なことが記載されているに過ぎず、優れた効果を奏する本願発明に想到するための教示又は示唆になり得る記載はない。本願による検討や分析なしには、神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象においてゲムフィブロジルが確実に寿命を延長させる、或いは運動行動の喪失を遅らせると断定することはできないと思料する。」と主張している。

そこで、上記主張について検討する。

上記第4及び第5で説示したとおり、引用文献1及び引用文献2には、いずれも、ゲムフィブロジルを投与したCln2(-/-)マウスにおいて寿命が延長したことを示す具体的な実験結果(摘記1d、摘記2d等)に加えて、前記実験結果に関する具体的な考察(摘記1e、摘記2f~2j)が記載されているのであるから、請求人による「引用文献1及び引用文献2には、概略的で一般的なことが記載されているに過ぎず」という主張は、その前提において誤りである。そして、本願発明によって格別顕著な効果が奏されたとはいえないことは、上記第4の3(4)及び第5の3(4)で説示したとおりである。

よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

2 請求人は、審判請求書の「3.(2)<A>」(4頁)において、

「本願発明の治療レジームは、少なくとも下記の有利な効果をもたらす。これらの効果は引用文献1、2のいずれからも予測できたものではないと思料する。
- 運動皮質においてin vivoで貯蔵物質量の減少
- 運動皮質においてin vivoでアポトーシスの抑制
- 線条体においてin vivoでアポトーシスの抑制
- 中枢神経系においてin vivoで抗炎症分子の発現の上方調節
- 線条体においてin vivoでSOCSの上方調節
- 線条体においてin vivoでIL-1Raの上方調節
- 運動皮質及び線条体においてホスホBCL2関連アゴニスト(P-BAD)のレベルの増加」とも主張している。

そこで、上記主張について検討する。

請求人が主張する上記貯蔵物質量の減少、アポトーシスの抑制、抗炎症分子の発現の上方調節等は、いずれも、本願発明により「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させる」という治療効果が奏されるに至る作用機序を説明するものにすぎず、引用発明1及び引用発明2と比較した場合の有利な効果を示すものではない。

そして、本願発明による、「遅発型小児性神経セロイドリポフスチン沈着症を有する対象の寿命を、医薬を受けていない対照と比較して延長させる」という効果が、引用文献1の記載から当業者が予測し得た程度のものであり、また、引用文献2の記載から当業者が予測し得た程度のものでもあって、格別顕著な効果であるとはいえないことは、上記第4の3(4)及び第5の3(4)で説示したとおりである。

よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献2に記載された発明でもあるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

そして、本願発明は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-013249

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