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特許拒絶査定不服審判

2022-013207

作業機、作業機の制御方法、プログラム及びその記録媒体

審判番号
2022-013207
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-009182外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月23日
審決日
2023年08月07日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .561-Z (E02F) / P18 .575-Z (E02F) / P18 .121-Z (E02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-9182「作業機、作業機の制御方法、プログラム及びその記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月1日出願公開、特開2019-127725〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成30年1月23日に出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 5月11日付け:拒絶理由通知書

(令和3年 5月18日発送)

令和3年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月22日付け:拒絶理由通知書(最後)

(令和3年11月30日発送)

令和4年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 5月18日付け:令和4年1月24日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)

(令和4年 5月24日発送)

令和4年 8月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年10月14日 :上申書の提出

第2 令和4年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年8月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由1]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は補正箇所である。)

「【請求項1】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具とを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された1ピースブーム型の作業機であって、
第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とのなす角が直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、
ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサ及びアームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサの検出結果に基づいてブーム及びアームの回動位置を判断し、ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離がブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離で一定に保たれるように、ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温によらずブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている作業機。」

(2)本件補正前

本件補正に先立つ令和4年1月24日提出の手続補正書による補正は、原審における同年5月18日付け補正の却下の決定により却下されているから、本件補正前の請求項1の記載は、令和3年7月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりである。

「【請求項1】
機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具とを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された1ピースブーム型の作業機であって、
第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とのなす角が直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、
ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離がブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離で一定に保たれるようにブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている作業機。」

2 補正の適否

(1)新規事項の追加

本件補正により、請求項1に「制御装置」が、「アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離がブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離で一定に保たれるように、」「ブームの回動位置に応じて設定する」ことにおいて、「基準距離で一定に保たれるように」する条件として、「ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温によらず」との記載が追加された。

この記載について請求人は、審判請求書の(2-1-1)(a)において、「出願当初の明細書の段落[0036]の「アーム制御部62(制御装置60)は、ブーム31をアーム基準位置S1から遠ざかる方向に回動させた場合に、アームシリンダ42のストローク可能範囲(アーム41をブーム31に近づける側へのストローク可能範囲)を、ブーム31の回動位置に応じて、バケット51の先端部58の回動軌道M3とブームシリンダ32との最短距離である軌道最短距離が基準距離L1に保たれるように設定する。」との記載、本願の出願当初の明細書及び図面において、ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温についての記載が一切ないことに基づいています。すなわち、「制御装置は、ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温を考慮することなく、ブームの回動位置に応じてアームシリンダのストローク可能範囲を設定する構成」であることは、当初明細書等の記載から自明な事項であります。」と主張している。

しかし、作動油の油温についての請求項1の上記記載は、出願人も認めるとおり本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書、及び図面(以下「当初明細書等」という。)には記載も示唆もされていない。そして、そのようなことが本願出願時の技術常識から自明ともいえない。

また、油圧で動作する油圧機械において、油温に応じて動作が異なることは技術常識であるが、油圧機械の動作を油温を考慮して制御するとともにストローク可能範囲については油温によらず設定するか、あるいは、油温に応じた動作の変化を考慮してストローク可能範囲を設定するかは、一義的にいずれかに決まることではない。

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)独立特許要件

前記(1)のとおり、本件補正は当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではないが、念のため、本件補正が当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであると仮定して、以下の検討を行う。

特許請求の範囲の請求項1に係る上記1の補正は、発明の構成を限定するものであるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

そうすると、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)は、同法同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合すること(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること)を要する。

以下、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができたか否かを検討する。

ア 本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載

(ア)引用文献1

a 記載事項

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原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である特開平11-93199号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。

(a)「【0023】図2は上記の油圧駆動回路が搭載される2ピースブーム型の油圧ショベルの外観を示す。2ピースブーム型の油圧ショベルは、下部走行体20a及び上部旋回体20bからなる油圧ショベル本体(以下、適宜「車体」という)20と、この車体20に上下方向に回動可能に支持された作業フロント21とを有し、作業フロント21は、車体20に上下方向に回動可能に取り付けられた第1ブーム22と、この第1ブーム22に上下方向に回動可能に取り付けられた第2ブーム23と、この第2ブーム33(当審注:「33」は「23」の誤記と認める。)に上下方向に回動可能に取り付けられたアーム24と、このアーム24に上下方向に回動可能に取り付けられたバケット25とで構成されている。また、第2ブーム23及びアーム24は上記の第2ブームシリンダ6及びアームシリンダ7で駆動されると共に、第1ブーム22は第1ブームシリンダ5で駆動され、バケット25はバケットシリンダ8で駆動される。

【0024】以上のような油圧ショベルに本発明のフロント制御装置が設けられている。

【0025】図1において、本実施形態のフロント制御装置は、第1ブーム22の回動角を検出する角度センサ30と、第2ブーム23の回動角を検出する角度センサ31と、アーム24の回動角を検出する角度センサ32と、これら角度センサ30,31,32からの検出信号を入力し所定の演算処理を行うコントローラ33と、パイロットライン17a,18aにそれぞれ設けられ、コントローラ33から出力される電気信号により作動する第2ブーム下げ用電磁減圧弁(以下、単に電磁弁という)34及びアームクラウド用電磁減圧弁(同)35とを備えている。

【0026】作業フロント21の周囲には図3に斜線で示す干渉防止領域I及び図4に斜線で示す干渉防止領域IIが設定され、これに対応してコントローラ33には図3及び図4に示すような領域I’及びII’が記憶されている。

【0027】干渉防止領域Iは、バケット25の先端が第1ブーム22へ当たるのを防止するように設定された領域であり、領域I’は領域Iからバケット25の回動半径分だけ離れた領域である。領域Iにバケット25の先端が侵入しないように設定するということは、領域I’にアーム24の先端が侵入しないように設定するということと同値となる。コントローラ33にはこの領域I’を記憶しておく。

【0028】また、第1ブーム22の下面から干渉防止領域Iの境界までの距離をa1とし、バケット25の回動半径をbとし、第1ブーム22の下面から領域I’までの距離をc1とすると、c1=a1+bであり、第1ブーム5(当審注:「5」は「22」の誤記と認める。)のフート部5aを原点として第1ブーム5(当審注:「5」は「22」の誤記と認める。)の軸方向に一軸を持ち、第1ブーム5と共に回転するX-Y座標系を設定し、このX-Y座標系のX座標値としてc1の値を入力することによりコントローラ33に領域I’を記憶する。このように第1ブーム5と共に回転するX-Y座標系を用いて領域I’を設定することにより、第1ブーム22が回動しても領域I’は一意に決定されるので、コントローラ33での計算が楽になる。

【0029】また、干渉防止領域IIは、バケット25の先端が第1ブームシリンダ6(当審注:「6」は「5」の誤記と認める。)へ当たるのを防止するように設定された領域であり、領域II’は、図3の場合と同様、アーム24の先端の侵入を禁止する領域であり、領域II’は第1ブームシリンダ6からa2+bの距離c2、離れている。ただし、上記のX-Y座標系における第1ブームシリンダ5の位置は、図5から分かるように、第1ブーム22の回動角に応じて変化する。したがって、コントローラ33は、次にいずれかの方法で領域II’を記憶する。

【0030】(a)第1ブーム22の回動角に応じて領域II’(X座標値)を変化させる。

【0031】(b)変化する領域II’のうち最大のもの(最大のX座標値)を記憶する。

【0032】コントローラ33では、アーム24の先端が上記の領域I’,II’に侵入するかどうかを監視し、侵入すると電磁弁34,35を作動させ、アームクラウド動作、第2ブーム下げ動作を停止する。

(b)【図4】

「
[図:0001402395000001.jpg]
」

(c)【図5】

「
[図:0001402395000002.jpg]
」

b 図から看取できる事項

(a)【0023】、【0028】の記載を踏まえると、【図4】、【図5】から、第1ブーム22がフート部5aを回転軸として、車体20に上下方向に回動可能に取り付けられていること、が看取できる。

(b)【0023】の記載を踏まえると、【図4】から、第2ブーム23が、第2ブーム23の第1ブーム22側端部に設けられた軸を回転軸として、第1ブーム22に上下方向に回動可能に取り付けられていること、が看取できる。

(c)【0023】の記載を踏まえると、【図4】から、アーム24が、アーム24の第2ブーム23側端部に設けられた軸を回転軸として、第2ブーム23に上下方向に回動可能に取り付けられていること、が看取できる。

(d)【0023】、【0028】の記載を踏まえると、【図4】から、バケット25が、バケット25のアーム24側端部に設けられた軸を回転軸として、アーム24に上下方向に回動可能に取り付けられていること、が看取できる。

(e)上記(a)~(d)を踏まえると【図4】から、フート部5a、第2ブーム23の回転軸、アーム24の回転軸、及びバケット25の回転軸は、互いに平行であること、が看取できる。

(f)【0023】の記載を踏まえると、【図4】から、第1ブームシリンダ5が第1ブーム22の下方に配置され、アームシリンダ7が第2ブーム23の上方に配置されていること、が看取できる。

(g)【0023】、【0028】の記載を踏まえると、【図5】から、フート部5aと第1ブーム22の基端部側に設けられ且つ第1ブームシリンダ5を回動可能に枢支する回転軸とを結ぶ直線と、第1ブームシリンダ5の延伸方向に平行な直線とのなす角が直角となる第1ブーム22の回動位置に、第1ブーム22が位置し得ること、が看取できる。

(h)【0027】、【0028】の記載を踏まえると、【図4】から、領域II’は、領域IIからバケット25の回動半径分だけ離れた領域であること、が看取できる。

(i)【0028】、【0029】の記載を踏まえると、【図4】から、領域IIは、第1ブームシリンダ5の下面から距離a2までの領域であること、が看取できる。

c 引用発明1

前記a、bより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>

「車体20と、この車体20に上下方向に回動可能に支持された作業フロント21とを有し、フロント制御装置が設けられた2ピースブーム型の油圧ショベルであって(【0023】、【0024】)、
作業フロント21は、車体20に上下方向に回動可能に取り付けられた第1ブーム22と、この第1ブーム22に上下方向に回動可能に取り付けられた第2ブーム23と、この第2ブーム23に上下方向に回動可能に取り付けられたアーム24と、このアーム24に上下方向に回動可能に取り付けられたバケット25とで構成され、第2ブーム23及びアーム24は上記の第2ブームシリンダ6及びアームシリンダ7で駆動されると共に、第1ブーム22は第1ブームシリンダ5で駆動され、バケット25はバケットシリンダ8で駆動されるものであって(【0023】)、
第1ブームシリンダ5が第1ブーム22の下方に配置され、アームシリンダ7が第2ブーム23の上方に配置され(【0023】、【図4】)、
第1ブーム22がフート部5aを回転軸として、車体20に上下方向に回動可能に取り付けられ(【0023】、【0028】、【図4】、【図5】)、
続きを表示(全13行)
アーム24が、アーム24の第2ブーム23側端部に設けられた軸を回転軸として、第2ブーム23に上下方向に回動可能に取り付けられ(【0023】、【図4】)、
バケット25が、バケット25のアーム24側端部に設けられた軸を回転軸として、アーム24に上下方向に回動可能に取り付けられ(【0023】、【0028】、【図4】)、
フート部5a、アーム24の回転軸、及びバケット25の回転軸は、互いに平行であり(【図4】)、
フロント制御装置は、第1ブーム22の回動角を検出する角度センサ30と、第2ブーム23の回動角を検出する角度センサ31と、アーム24の回動角を検出する角度センサ32と、これら角度センサ30,31,32からの検出信号を入力し所定の演算処理を行うコントローラ33と、を備え(【0025】)、
フート部5aと第1ブーム22の基端部側に設けられ且つ第1ブームシリンダ5を回動可能に枢支する回転軸とを結ぶ直線と、第1ブームシリンダ5の延伸方向に平行な直線とのなす角が直角となる第1ブーム22の回動位置に、第1ブーム22が位置し得るものであり(【0023】、【0028】、【図5】)、
作業フロント21の周囲には第1ブームシリンダ5の下面から距離a2までの領域に干渉防止領域IIが設定され、これに対応して、コントローラ33には領域IIからバケット25の回動半径分だけ離れた領域に領域II’が記憶され(【0026】、【0027】、【0029】、【図4】)、
干渉防止領域IIは、バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止するように設定された領域であり、領域II’は、アーム24の先端の侵入を禁止する領域であり、第1ブームシリンダ5の位置が第1ブーム22の回動角に応じて変化するとき、コントローラ33は、第1ブーム22の回動角に応じて領域II’を変化させ(【0029】、【0030】)、
コントローラ33では、アーム24の先端が上記の領域II’に侵入するかどうかを監視し、侵入するとアームクラウド動作を停止する(【0032】)、
2ピースブーム型の油圧ショベル。」

(イ)引用文献4

a 記載事項

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原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である特開2005-248502号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【0021】
作業機6は、ブーム17と、ブーム17に回動可能に結合されたアーム18と、アーム18に回動可能に結合されたブレーカ19(作業具)とを備えている。そして、ブーム17、アーム18、及びブレーカ19は、それぞれブーム用油圧シリンダ20、アーム用油圧シリンダ21、及び作業具用油圧シリンダ22により動作する。」

(b)【図1】

「
[図:0001402395000003.jpg]
」

(ウ)引用文献5

a 記載事項

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原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である特開2010-163772号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【0011】
作業装置13は、旋回台12の前部に左右方向の中央部よりやや右寄りにオフセットして設けられた支持ブラケット16に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されたスイングブラケット17と、該スイングブラケット17に基部側を左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて上下揺動自在に支持されたブーム18と、該ブーム18の先端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて前後揺動自在に支持されたアーム19と、該アーム19の先端側にスクイ・ダンプ動作可能に設けられたバケット20とを備えている。
スイングブラケット17は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動され、ブーム18は、該ブーム18とスイングブラケット17との間に介装されたブームシリンダ22の伸縮によって揺動され、アーム19は、該アーム19とブーム18との間に介装されたアームシリンダ(アーム用油圧シリンダということがある)23の伸縮によって揺動され、バケット20は、該バケット20とアーム19との間に介装されたバケットシリンダ21の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。アーム19の先端には、バケット20の他に様々なアタッチメント(ブレーカ、グラップル、オーガ等)が装着できるようになっている。」

(b)【図2】

「
[図:0001402395000004.jpg]
」

ウ 引用発明との対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「車体20」及び「フート部5a」は、それぞれ本件補正発明の「機体」及び「第1回転軸」に相当する。

(イ)前記(ア)を踏まえると、引用発明1の「フート部5aを回転軸として、車体20に上下方向に回動可能に取り付けられ」た「第1ブーム22」及び「第1ブーム22に」「取り付けられた第2ブーム23」からなるものは、本件補正発明の「基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブーム」に相当する。

(ウ)前記(イ)を踏まえると、引用発明1の「上下方向に回動可能に取り付けられ」た「第1ブーム22」を「駆動」する「第1ブームシリンダ5」は、本件補正発明の「ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダ」に相当する。

(エ)引用発明1の「第1ブーム22」の「回転軸」である「フート部5a」、「アーム24の回転軸」、及び、「バケット25の回転軸」は、互いに平行であることを踏まえると、「アーム24の回転軸」、及び、「バケット25の回転軸」は、それぞれ本件補正発明の「第1回転軸と平行な第2回転軸」、「第1回転軸と平行な第3回転軸」に相当する。

(オ)前記(エ)を踏まえると、引用発明1の「アーム24の第2ブーム23側端部に設けられた軸を回転軸として、第2ブーム23に上下方向に回動可能に取り付けられ」た「アーム24」は、本件補正発明の「基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアーム」に相当する。

(カ)前記(オ)を踏まえると、引用発明1の「アーム24の第2ブーム23側端部に設けられた軸を回転軸として、第2ブーム23に上下方向に回動可能に取り付けられ」た「アーム24」を「駆動」する「アームシリンダ7」は、本件補正発明の「アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダ」に相当する。

(キ)前記(エ)を踏まえると、引用発明1の「バケット25のアーム24側端部に設けられた軸を回転軸として、アーム24に上下方向に回動可能に取り付けられ」た「バケット25」は、本件補正発明の「アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具」に相当する。

(ク)上記(イ)、(ウ)、及び(カ)を踏まえると、引用発明1において「第1ブームシリンダ5が第1ブーム22の下方に配置され、アームシリンダ7が第2ブーム23の上方に配置され」ることは、本件補正発明において「ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された」ことに相当する。

(ケ)引用発明1の「第1ブーム22の回動角を検出する角度センサ30」及び「アーム24の回動角を検出する角度センサ32」は、それぞれ本件補正発明の「ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサ」及び「アームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサ」に相当する。そして、引用発明1において「コントローラ33」に「これら角度センサ30,31,32からの検出信号を入力」することを踏まえると、引用発明1の「コントローラ33」に「これら角度センサ30,31,32からの検出信号を入力し所定の演算処理を行う」ことは、本件補正発明の「ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサ及びアームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサの検出結果に基づいてブーム及びアームの回動位置を判断」することに相当する。

(コ)引用発明1の「フート部5aと第1ブーム22の基端部側に設けられ且つ第1ブームシリンダ5を回動可能に枢支する回転軸とを結ぶ直線と、第1ブームシリンダ5の延伸方向に平行な直線とのなす角が直角となる第1ブーム22の回動位置」は、本件補正発明の「第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とのなす角が直角となるブームの回動位置をブーム基準位置」に相当する。

(サ)引用発明1において、「作業フロント21の周囲には第1ブームシリンダ5の下面から距離a2までの領域に干渉防止領域IIが設定され、これに対応して、コントローラ33には領域IIからバケット25の回動半径分だけ離れた領域に領域II’が記憶され、干渉防止領域IIは、バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止するように設定された領域であり、領域II’は、アーム24の先端の侵入を禁止する領域であり、第1ブームシリンダ5の位置が第1ブーム22の回動角に応じて変化するとき、コントローラ33は、第1ブーム22の回動角に応じて領域II’を変化させ」ることから、第1ブームシリンダ5の下面から距離a2までの領域である干渉防止領域IIは、第1ブーム22がどの回動角に位置する場合であっても、バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止するように設定されるものである。したがって、引用発明1の「第1ブーム22の回転軸と第1ブーム22の基端部側に設けられ且つ第1ブームシリンダ5を回動可能に枢支する回転軸とを結ぶ直線と、第1ブームシリンダ5の延伸方向に平行な直線とのなす角が直角となる第1ブーム22の回動位置」においても、バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止できることから、上記(コ)も踏まえると、引用発明1の「バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止するように設定された」「干渉防止領域II」の「距離a2」は、本件補正発明の「第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とのなす角が直角となるブームの回動位置をブーム基準位置と」した場合の「ブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離」に相当する。

(シ)引用発明1では、「コントローラ33では、アーム24の先端が上記の領域II’に侵入するかどうかを監視し、侵入するとアームクラウド動作を停止する」ことから、引用発明1において「コントローラ33には」「領域II’が記憶され、」「コントローラ33は、第1ブーム22の回動角に応じて領域II’を変化させ」ることは、本件補正発明の「ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、」「設定する」ことに相当する。

(ス)上記(サ)及び(シ)を踏まえると、引用発明1において「バケット25の先端が第1ブームシリンダ5へ当たるのを防止するように」「第1ブームシリンダ5の下面から距離a2までの領域に干渉防止領域IIが設定され、これに対応して、コントローラ33には領域IIからバケット25の回動半径分だけ離れた領域に領域II’が記憶され」、「領域II’は、アーム24の先端の侵入を禁止する領域であり、第1ブームシリンダ5の位置が第1ブーム22の回動角に応じて変化するとき、コントローラ33は、第1ブーム22の回動角に応じて領域II’を変化させ」ることは、本件補正発明の「ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離がブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離で一定に保たれるように、」「ブームの回動位置に応じて設定する」ことに相当する。

(セ)引用発明1の「油圧ショベル」は、本件補正発明の「作業機」に相当する。

(ソ)以上を整理すると、本件補正発明と引用発明1とは、

「機体と、基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブームと、ブームを第1回転軸回りに回動させるブームシリンダと、基端部がブームの先端部に第1回転軸と平行な第2回転軸回りに回動可能に枢支されたアームと、アームを第2回転軸回りに回動させるアームシリンダと、アームの先端部に第1回転軸と平行な第3回転軸回りに回動可能に枢支された作業具とを備え、ブームシリンダがブームの一方面側に配置され、アームシリンダがブームの他方面側に配置された作業機であって、
第1回転軸とブームの基端部側に設けられ且つブームシリンダを回動可能に枢支する第4回転軸とを結ぶ第1直線と、ブームシリンダの延伸方向に平行な直線である第2直線とのなす角が直角となるブームの回動位置をブーム基準位置とすると、
ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサ及びアームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサの検出結果に基づいてブーム及びアームの回動位置を判断し、ブームをブーム基準位置から遠ざける方向に回動させる場合に、アームをブームに近づける側へのアームシリンダのストローク可能範囲を、ブームの回動位置が変化しても、作業具の先端部の第3回転軸回りの回動軌道とブームシリンダとの最短距離である軌道最短距離がブーム基準位置において前記作業具の先端部と前記ブームシリンダとの接触を回避できる距離に設定される基準距離で一定に保たれるように、ブームの回動位置に応じて設定する制御装置を備えている作業機。」

である点で一致するといえる。

そして、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。

<相違点1>

本件補正発明が「基端部が機体に第1回転軸回りに回動可能に枢支されたブーム」を備えた「1ピースブーム型の作業機」であるのに対して、引用発明1は「車体20に上下方向に回動可能に取り付けられた第1ブーム22と、この第1ブーム22に上下方向に回動可能に取り付けられた第2ブーム23」とを備えた「2ピースブーム型の油圧ショベル」である点。

<相違点2>

本件補正発明の「制御装置」が、「アームシリンダのストローク可能範囲を」、「ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温によらずブームの回動位置に応じて設定する」のに対して、引用発明1では「ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温」についての特定はない点。

エ 判断

(ア)相違点1について

ブームを備えた作業機の技術分野において、ブームを、ブームが一つのピースから構成される1ピース型とすることは、引用文献4及び引用文献5に示されるように周知技術であり、1ピース型のものも当然、干渉しないような動作を行うことは明らかであるから、引用発明1において、当該周知技術を採用し、第1ブーム22と第2ブーム23とを備える構成に替えて、一つのピースから構成されるブームを用いることは当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について

請求人は、審判請求書の(2-1-1)(a)において、本願の当初明細書等において、作動油の油温についての記載が一切ないことに基づいて、上記相違点2に係る構成が当初明細書等の記載から自明な事項と主張している。出願人の前記主張は前記(1)において説示したとおり認められるものではないが、仮にこれを採用するとすれば、引用文献1の記載も同様に解釈するのが自然であるところ、本願と同様に引用文献1には、油温についての記載は一切ないから、引用発明1において「コントローラ33には」「領域II’が記憶され、」「コントローラ33は、第1ブーム22の回動角に応じて領域II’を変化させ」ることが、油温によらず行われることは明らかである。

したがって、前記相違点2は、一応相違点として検討したが、実質的な相違点ではない。

なお、仮に相違点2が実質的な相違点であったとしても、油温の変化によって油圧機械の動作が異なるため油温に応じた駆動制御を行うことは、油圧機械の技術分野における技術常識であるから、引用発明1において、当該技術常識に基づき油温変化を考慮した駆動制御を行い、油温によらず油圧機械の動作が一定となるようにすることで、領域II’の設定は油温によらず行う構成となすことは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(ウ)請求人の主張について

請求人は審判請求書において、本願発明の課題は引用文献1、4、5では考慮されておらず、引用文献1、4、5を組み合わせることは容易ではないこと、引用文献1の技術を1ピース型のブームに変更すると、引用文献1の発明の目的を達成できなくなること、及び、仮に引用文献1、4、5を組み合わせることができたとしても本件補正発明1の構成にはなりえないことを主張している。

しかしながら、引用文献1には、油圧ショベルが記載されており、これは油圧により駆動される作業機の一種であるところ、引用文献4、引用文献5には同様に油圧により駆動される作業機が記載されており、技術分野が共通するものである。そして、引用文献1の発明の目的は、バケットの先端がブームシリンダ等の他の部材へ当たるのを防止することであるところ、これは2ピース型の作業機だけでなく1ピース型の作業機においても当然考慮すべきことであるから、引用文献1、4、5を組み合わせることは容易であり、引用文献1、4、5を組み合わせた1ピース型の作業機においても前記引用発明1の発明の目的が達成できることは明らかである。

また、引用文献1、4、5を組み合わせることにより本件補正発明1の構成となることは、前記(3)において説示したとおりである。

よって、請求人の上記主張は、妥当なものとして採用することはできない。

(エ)小括

したがって、本件補正発明は、引用発明1、並びに引用文献4及び引用文献5に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。

5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものではないから、同法159条1項により読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

また、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。そして、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下すべきものである。

よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年8月23日提出の手続補正書による補正は、前記第2のとおり却下され、同年1月24日提出の手続補正書による補正は、原審における同年5月18日付け補正の却下の決定により却下されているから、本願の請求項1~15に係る発明は、令和3年7月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2[理由1]1(1)のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、並びに引用文献4及び引用文献5に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献の記載

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献4、及び引用文献5には、前記第2[理由1]2(2)イ(ア)~(ウ)に示したとおりの事項が記載されている。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2[理由1]2で検討した本件補正発明から、「制御装置」に係る「ブームの第1回転軸回りの回動位置を検出するブームセンサ及びアームの第2回転軸回りの回動位置を検出するアームセンサの検出結果に基づいてブーム及びアームの回動位置を判断し、」との限定事項、及び、「ブームシリンダ及びアームシリンダを駆動する作動油の油温によらず」との限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由1]2(2)ウ、エに示したとおり、引用発明1、並びに引用文献4及び引用文献5に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1、並びに引用文献4及び引用文献5に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の理由のとおり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-013207

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