2022-013177
組成物、冷媒を保存する方法、及び冷媒の重合を抑制する方法
- 審判番号
- 2022-013177
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-171566外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月23日
- 審決日
- 2023年02月09日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (C09K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和2年10月9日の出願であって、令和3年10月28日付けの拒絶理由通知に対し、令和4年2月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月23日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年12月13日に上申書が提出されたものである。
なお、令和4年8月23日の手続補正は明細書を補正するものであり、特許請求の範囲については補正されていない。
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年2月18日に提出された手続補正書により補正された請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」ともいう。
「【請求項1】 (1)冷媒と(2)酸素とを含む組成物であって、前記(1)冷媒は、(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、(1-2)一般式(1):続きを表示(全11行)【化1】[図:0001396193000001.jpg](式中、Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又はフッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、前記(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、1,000ppm以下である、ことを特徴とする組成物。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定には「この出願については、令和3年10月28日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。」と記載され、当該理由2は、請求項1~6に係る発明は、引用文献1~3に記載された発明、又は、引用文献1~3に記載された発明及び引用文献4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第4 引用文献
1 引用文献1の記載事項
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上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量の割合が70~100質量%であり、トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が35~95質量%であり、前記作動媒体は、飽和のヒドロフルオロカーボンおよび炭素-炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボン(ただし、トリフルオロエチレンおよび2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを除く)から選ばれる少なくとも1種を、前記作動媒体全量に対して0~30質量%含むことを特徴とする熱サイクル用作動媒体と、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)からなる群の少なくとも1種と、続きを表示(全31行)を含む熱サイクルシステム用組成物。・・・【0006】2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)は地球温暖化係数(GWP)の低い作動媒体として知られている。しかしHFO-1234yfはその成績係数は高いものの、冷凍能力がR410Aに比較して低く、いわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等、これまでR410Aが用いられてきた機器において用いることができないという欠点がある。【0007】HFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO-1123)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO-1123に、各種HFCを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。・・・【0027】また、HFO-1123は、単独で用いた場合に高温または高圧下で着火源があると、自己分解することが知られている。そこで、HFO-1123を、他の成分、例えばフッ化ビニリデン等と混合し、HFO-1123の含有量を抑えた混合物とすることで自己分解反応を抑える試みが報告されている(Combusion, Explosion, and Shock Waves, Vol.42, No2, pp.140-143, 2006)。【0028】しかしながら、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で、HFO-1123の冷凍サイクル性能を維持しながら安全に使用できる組成は知られていない。そこで、本発明者らは、HFO-1123の自己分解性については、HFO-1123を含む組成物において、組成物全量に対するHFO-1123の含有量を70モル%以下とすれば、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で自己分解を抑制できることを以下のとおり確認した。・・・【0131】さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や潤滑油と反応し、分解を促進する。【0132】不凝縮性気体濃度は、作動媒体の気相部において、作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%以下が特に好ましい。・・・【0134】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1~8、例14~51が実施例であり、例9~13、例52~55が比較例である。例56は、以下の各実施例、比較例において、相対評価に用いたR410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の混合媒体)の例であり、参考例である。【0135】[例1~13]例1~13において、HFO-1123およびHFO-1234yfを表5に示す割合で混合した作動媒体を作製し、以下の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。・・・【0144】【表5】[図:0001396193000002.jpg]」
(2)引用文献4
上記引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「[0001] 本発明は、トリフルオロエチレンの保存方法および保存容器に係り、特に、貯蔵および輸送等のためにトリフルオロエチレンを安定に保存する方法、およびトリフルオロエチレンが安定に保存された容器に関する。[0002] トリフルオロエチレン(CF2=CHF)は、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン類(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC)や、温室効果ガスであるハイドロフルオロカーボン類(HFC)に代わる新しい冷媒として期待されている。[0003] このようなトリフルオロエチレンは、密閉容器に常温以下の温度で加圧充填され、あるいは冷却下に加圧液化充填されて、貯蔵や輸送がなされている。こうして密閉容器に充填されたトリフルオロエチレンは、気相と液相とを有する気液状態を呈している。そして、気液状態のトリフルオロエチレンは、冷媒としての品質の維持や、容器内での不純物(固体)の付着防止などのために、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持することが求められている。[0004] フルオロオレフィンは、酸素が存在すると、酸素がラジカル源になって重合反応が生起することが知られている。フルオロオレフィンの中でもテトラフルオロエチレンは、1~数10ppmの微量の酸素存在下で重合し、場合によっては爆発的に重合反応が進行する。例えば、特許文献1には、テトラフルオロエチレンは1.4ppmの酸素濃度で重合が進行してポリテトラフルオロエチレンが生成することが記載されている。このため、フルオロオレフィンを保存する際は酸素を極限まで排除して取り扱うことが重要となる。しかしながら、酸素を極限まで排除するためには、製造工程において酸素を極限まで除去する工程を新たに設ける等の措置が必要となるため、それに伴うコストが増加してしまう。また、酸素を極限まで除去する工程等を行うことで収率が低くなる場合もあり、製造コストが増加してしまう。トリフルオロエチレンが、酸素存在下で自己重合反応に対してどの程度安定であるかについては、不明な点が多い。冷媒としての品質を保持し、安価で、安全かつ安定的に貯蔵および輸送を行うために、トリフルオロエチレンに重合反応を生じさせることなく保存する方法が求められている。・・・[0009] 本発明のトリフルオロエチレンの保存方法は、トリフルオロエチレンを密閉容器内で保存する方法であって、前記密閉容器内でトリフルオロエチレンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記気相の、温度25℃における酸素の濃度を、1000体積ppm以下に保持することを特徴とする。[0010] 本発明のトリフルオロエチレンの保存方法において、前記酸素の濃度を、1~1000体積ppmにすることが好ましく、さらに3~1000体積ppmにすることが好ましく、さらに3~300体積ppmにすることが好ましく、3~50体積ppmにすることが最も好ましい。」
(3)引用文献5
上記引用文献5には、以下の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、テトラフルオロプロペンの保存方法および保存容器に係り、特に、貯蔵および輸送等のためにテトラフルオロプロペンを安定に保存する方法、およびテトラフルオロプロペンが安定に保存された容器に関する。【背景技術】【0002】続きを表示(全16行)テトラフルオロプロペンの異性体の一つである2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CF3CF=CH2で表される。以下、HFO-1234yfとも記す。)は、オゾン層を破壊する温室効果ガスであるクロロフルオロカーボン類(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC)、およびハイドロフルオロカーボン類(HFC)に代わる新しい冷媒として、近年使用が期待されている。【0003】このようなHFO-1234yfは、密閉容器に常温以下の温度で加圧充填され、あるいは冷却下に加圧液化充填されて、貯蔵や輸送がなされている。こうして密閉容器に充填されたHFO-1234yfは、気相と液相とを有する気液状態を呈している。そして、気液状態のHFO-1234yfは、冷媒としての品質の維持や、容器内での不純物(固体)の付着防止などのために、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持することが求められている。【0004】フルオロオレフィンは、酸素が存在すると、酸素がラジカル源になって重合反応が生起することが知られている。フルオロオレフィンの中でもテトラフルオロエチレンは、1~数10ppmの微量の酸素存在下で重合し、場合によっては爆発的に重合反応が進行する。例えば、特許文献1には、テトラフルオロエチレンは1.4ppmの酸素濃度で重合が進行してポリテトラフルオロエチレンが生成することが記載されている。このため、フルオロオレフィンを保存する際は酸素を極限まで排除して取り扱うことが重要となる。しかしながら、酸素を極限まで排除するためには、製造工程において酸素を極限まで除去する工程を新たに設ける等の措置が必要となるため、それに伴うコストが増加してしまう。また、酸素を極限まで除去する工程等を行うことで収率が低くなる場合もあり、製造コストが増加してしまう。HFO-1234yf等のテトラフルオロプロペンが、酸素存在下で自己重合反応に対してどの程度安定であるかについては、不明な点が多い。冷媒としての品質を保持し、安価で、安全かつ安定的に貯蔵および輸送を行うために、HFO-1234yf等のテトラフルオロプロペンに重合反応を生じさせることなく保存する方法が求められている。・・・【0009】本発明のテトラフルオロプロペンの保存方法は、HFO-1234yfを密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で保存する方法であって、前記気相における酸素の濃度を、温度25℃で3体積ppm以上1000体積ppm未満にすることを特徴とする。【0010】本発明のテトラフルオロプロペンの保存方法においては、前記気相における酸素の濃度を、温度25℃で5体積ppm以上1000体積ppm未満にすることが好ましい。また、前記気相における酸素の濃度を、温度25℃で6体積ppm以上500体積ppm以下にすることが好ましい。」
2 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の【0135】には「例1~13において、HFO-1123およびHFO-1234yfを表5に示す割合で混合した作動媒体を作製し、以下の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した」ことが記載されている。
(2)同【0144】の表5には、作動媒体組成として、HFO-1123の質量%を0~100とし、HFO-1234yfの質量%を100~0とした例1~13が記載されている。
(3)同【0028】には「組成物全量に対するHFO-1123の含有量を70モル%以下とすれば、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で自己分解を抑制できる」と記載されており、前記表5において「組成物全量に対するHFO-1123の含有量を70モル%以下」である作動媒体組成を抽出すると、HFO-1123とHFO-1234yfの質量%が40:60の例1、50:50の例2、60:40の例3の組成物が該当する。
(4)してみると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「トリフルオロエチレン(HFO-1123)と2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含み、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で自己分解を抑制できる熱サイクル用作動媒体であって、作動媒体中のHFO-1123とHFO-1234yfの質量%は、40:60、50:50、又は60:40である、作動媒体」
第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「トリフルオロエチレン(HFO-1123)」は本願発明の「(1-1)・・・トリフルオロエチレン(HFO-1123)」に相当する。
(2)引用発明の「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」は、本願発明の「一般式(1)」において、Xa及びXbが水素原子、Xcがフッ素原子、Raが-CF3の場合に該当するから、本願発明の「(1-2)一般式(1):・・・で表される化合物」に相当する。
(3)引用発明の「熱サイクル用作動媒体」は、複数の成分からなるものであるから、本願発明の「組成物」に相当する。
(4)そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「 (1)冷媒を含む組成物であって、前記(1)冷媒は、(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、(1-2)一般式(1):続きを表示(全11行)【化1】[図:0001396193000003.jpg](式中、Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又はフッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含む、組成物。」
<相違点>
組成物が、本願発明は「酸素」を含み、「酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、1,000ppm以下である」のに対し、引用発明は、酸素を含むかどうか定かでない点。
2 判断1
引用発明の作動媒体における酸素濃度について、引用文献1(上記第4の1(1)参照。)の【0131】~【0132】には、「不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や潤滑油と反応し、分解を促進する」ため、「作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%(当審注:ppmに換算すると、0.5体積%は5000ppm。)以下が特に好ましい」ことが記載されている。
また、令和4年6月10日付けの拒絶査定にも記載したように、組成物の製造工程においては大気中の酸素が多少なりとも混入すると考えるのが相当であるところ、酸素濃度を1ppm未満まで低減させることは製造の効率性等の観点から非実際的である。
そうすると、引用発明において、作動媒体の分解を防ぐために、製造の効率性等を考慮しつつ酸素濃度を減らした結果、「体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、1,000ppm以下」に設定することは当業者が困難無くなし得たことである。
また、引用発明において、作動媒体中の酸素濃度を減らした効果について、引用発明の「トリフルオロエチレン(HFO-1123)」や「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」のようなフルオロオレフィンは、酸素が存在すると重合反応が生起されることが、例えば上記引用文献4(上記第4の1(2)参照。)の[0004]や引用文献5(上記第4の1(3)参照。)の【0004】に「・・・フルオロオレフィンは、酸素が存在すると、酸素がラジカル源になって重合反応が生起することが知られている。・・・」と記載されているように公知であったことを考慮すれば、作動媒体中の酸素濃度を減らすことにより、自己分解だけでなく、重合反応も抑制できることは、当業者が予測し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 判断2
上記相違点について、引用文献4(上記第4の1(2)参照。)の[0003]に「・・・密閉容器に充填されたトリフルオロエチレンは、気相と液相とを有する気液状態を呈している。そして、気液状態のトリフルオロエチレンは、冷媒としての品質の維持や、容器内での不純物(固体)の付着防止などのために、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持することが求められている」と記載され、同[0010]~[0011]に「本発明のトリフルオロエチレンの保存方法は、トリフルオロエチレンを密閉容器内で保存する方法であって、前記密閉容器内でトリフルオロエチレンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記気相の、温度25℃における酸素の濃度を、1000体積ppm以下に保持することを特徴とする。・・・前記酸素の濃度を、1~1000体積ppmにすることが好ましく、さらに3~1000体積ppmにすることが好ましく、さらに3~300体積ppmにすることが好ましく、3~50体積ppmにすることが最も好ましい。」と記載されており、トリフルオロエチレンは、冷媒としての品質の維持のため、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持するために、気相と液相とが共存する状態における気相の温度25℃における酸素の濃度を1~1000体積ppmにするとよいことが理解できる。
また、引用文献5(上記第4の1(3)参照。)の【0003】に「・・・密閉容器に充填されたHFO-1234yfは、気相と液相とを有する気液状態を呈している。そして、気液状態のHFO-1234yfは、冷媒としての品質の維持や、容器内での不純物(固体)の付着防止などのために、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持することが求められている。」と記載され、同【0009】に「本発明のテトラフルオロプロペンの保存方法は、HFO-1234yfを密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で保存する方法であって、前記気相における酸素の濃度を、温度25℃で3体積ppm以上1000体積ppm未満にすることを特徴とする。」と記載されており、HFO-1234yfは、冷媒としての品質の維持のため、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持するために、気相と液相とが共存する状態における気相の酸素の濃度を温度25℃で3体積ppm以上1000体積ppm未満にするとよいことが理解できる。
そうすると、上記(2)で述べたとおり、酸素の存在下で重合する性質のあるフルオロオレフィンである「トリフルオロエチレン(HFO-1123)」と「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」を含む引用発明において、冷媒としての品質の維持のため、重合等の反応を生じさせることなく安定に保持するために、気相と液相とが共存する状態における気相の酸素の濃度を温度25℃で3~1000体積ppm程度にすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、その効果についてみても、引用文献4及び5に記載された事項から予測し得る域を出るものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献4及び5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 上申書の主張について
審判請求人は、令和4年12月13日に提出した上申書において、特許請求の範囲の補正案を提示し、補正の機会を求めている。
そこで、補正案について検討すると、そのうちの請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】(1)冷媒と(2)酸素とを含む組成物であって、前記(1)冷媒は、(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、続きを表示(全15行)(1-2)一般式(1):【化1】[図:0001396193000004.jpg](式中、Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又はフッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、冷媒全体を基準として、質量基準で、前記冷媒(1-1)は、90%以下であり、前記冷媒(1-2)は、10%以上であり、前記(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、1,000ppm以下である、ことを特徴とする組成物。」
しかしながら、例えば引用発明1の「作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で自己分解を抑制できる熱サイクル用作動媒体」においても、「作動媒体中のHFO-1123とHFO-1234yfの質量%は、40:60、50:50、又は60:40」であって、この値は、上記補正案の請求項1で特定される範囲に含まれるものである。
そうすると、仮に上記補正案のとおりに補正されたとしても、補正案に示された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記第5の2及び3で示した判断と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、補正の機会を再度与える合理的な理由を見出すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項についてさらに検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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