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特許拒絶査定不服審判

2022-011879

分散アゾ染料

審判番号
2022-011879
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-571229外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月01日
審決日
2024年04月09日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C09B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-571229「分散アゾ染料」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月3日国際公開、WO2019/001832、令和2年8月27日国内公表、特表2020-525580〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年5月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年6月28日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月24日付けで拒絶理由が通知され、令和4年2月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月7日付けで拒絶査定がされ、同年8月1日に拒絶査定不服審判が請求され、令和5年11月17日付けで合議体から拒絶理由が通知され、令和6年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年2月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 式(1) 【化1】 [図:0001413703000001.jpg] (式中、 R1は、シアノ基であり、 R2は、クロロ基であり、 R3は、水素原子、クロロ基、ブロモ基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基又はシアノ基であり、及び R4は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基又は2-メトキシカルボニルエチル基である) で表される染料。」 第3 合議体から通知した拒絶の理由 合議体から通知した拒絶の理由は、以下のものを含むものである。 「理由2(進歩性): 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・・・ ・請求項 1~10 ・引用例 1~3 ・・・ 引用例1:英国特許出願公開第1275603号明細書(原査定の引用文献1と同じ。) 引用例2:特表2010-533751号公報 引用例3:特表2015-528043号公報」 本願の請求項1は、上記拒絶の理由の対象となった請求項2の記載を引用する請求項3と対応するものである。 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、合議体から通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。 理由は、以下のとおりである。 記 引用例1:英国特許出願公開第1275603号明細書 1 引用例1の記載事項 上記引用例1には、和訳(ただし、摘記1fの表中の記載を除く。)にして、次の記載がある(下線及び枠線は合議体による。)。 摘記1a:1ページ5行~8行 「本発明は、水不溶性の新規モノアゾ化合物、および繊維材料、特にポリエステルのような合成ポリマーからなる繊維材料を染色するためのそれらの使用に関する。」 摘記1b:請求項1 「下記一般式を有する水不溶性モノアゾ化合物。 [図:0001413703000002.jpg] ここで Rは、ハロゲン、ニトロ、低級アルキルスルホニル、低級シアノアルキルスルホニル、低級ヒドロキシアルキルスルホニル、低級ハロアルキルスルホニル、ホルミル、低級アルカノイル、低級ハロアルカノイル、低級ヒドロキシアルカノイル、低級アルコキシアルカノイル、低級シアノアルカノイル、低級アルキルスルホニルアルカノイル、フェニルアルカノイル、低級アルコキシカルボニル、シアノ、トリフルオロメチルスルファモイル、低級アルキルスルファモイル、ジ-低級アルキルスルファモイル、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ジ-低級アルキルカルバモイル及びチオシアナトから選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニル基(酸性水溶性基を含まない)であり、 R1は、ホルミル、低級アルカノイル、低級ハロアルカノイル、低級アルコキシアルカノイル、低級シアノアルカノイル、低級アルキルスルホニルアルカノイル、低級フェニルアルカノイル、低級アルコキシカルボニル、ベンゾイル、低級アルキルベンゾイル、低級アルコキシベンゾイル、ハロベンゾイル、低級アルキルスルホニル、低級シアノアルキルスルホニル、低級ヒドロキシアルキルスルホニル、低級ハロアルキルスルホニル、フェニルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、低級アルコキシフェニルスルホニル、ハロフェニルスルホニル、フェノキシカルボニル、低級アルキルフェノキシカルボニル、低級アルコキシフェノキシカルボニル、ハロフェノキシカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、ジ-低級アルキルカルバモイル又はフロイル基であり、 R3bは炭素原子数1~6のアルキル基又はシクロヘキシル基であり R3は、炭素原子数1又は2の炭素原子のアルキレン基であり R4は水素、ハロゲン、低級アルキル基又は低級アルコキシ基である。」 摘記1c:2ページ2行~4行 「以下の説明および特許請求の範囲において、"低級"という用語は、1つ以上のアルキル基を含む多くの基に適用され、そのようなアルキル基が1~4個の炭素原子であることを意味する。」 摘記1d:2ページ48行~50行 「基RおよびRa上の置換基であり得るアルキル基およびアルコキシ基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシが挙げられる。塩素と臭素は代表的なハロゲン原子である。」 摘記1e:11ページ45行~12ページ3行 「実施例1 5mlの濃H2SO4に0.72gのNaNO2を攪拌しながら加える。この溶液を冷却し、10mlの1:5酸を10℃以下で添加する。これを攪拌し、1.72gの2-クロロ-4-ニトロアニリンを添加し、さらに10mlの1:5酸を添加する。全て0~5℃で行う。このジアゾ化溶液を0~5℃で3時間攪拌し、2.68gの3-アセトアミド-N-ベンジル-N-エチルアニリンを100mlの1:5酸に溶解した冷やした溶液に加える。カップリング混合物を冷やした状態に維持し(5℃以下)、コンゴーレッド紙に対して中性になるまで固体酢酸アンモニウムで緩衝化する。2時間カップリングさせた後、染料を水に入れ、生成物を濾過で集め、水で洗浄し、空気中で乾燥させる。生成物はポリエステル繊維上に鮮やかな赤色を呈し、その構造は次のとおりである: [図:0001413703000003.jpg] 」 摘記1f:13ページ1行~17ページ 「実施例6 2-シアノ-4,6-ジニトロアニリン(2.08g)を実施例1に示した手順でジアゾ化し、3-アセトアミドN-ベンジル-N-エチルアニリン(2.68g)とカップリングさせる。この生成物は、ポリエステル繊維上で優れた光及び昇華堅牢度を有する青色染料を与える。その構造は次のとおりである: [図:0001413703000004.jpg] 表IIの実施例に記載されているアゾ化合物は、実施例1から6に示されている手順に従って調製され、一般式で表される。 [図:0001413703000005.jpg] ここで、nは1、2又は3である。表IIの各化合物について示された色、およびそれに続く全ての表は、ポリエステル繊維の染色を意味する。これらの表において、C6H5およびC6H11は、それぞれフェニルおよびシクロヘキシルを示すために使用される。 [図:0001413703000006.jpg] [図:0001413703000007.jpg] [図:0001413703000008.jpg] [図:0001413703000009.jpg] 」 摘記1g:46ページ4行~5行 「新規モノアゾ化合物は水不溶性であるため、従来の分散染色技術に従ってポリエステル繊維に適用することができる。」 2 引用例1に記載された発明 引用例1は、繊維材料染色するために使用される水不溶性の新規モノアゾ化合物に関する文献であって(摘記1a)、 その具体例である引用例1の実施例61(Example No.61、摘記1f)は、摘記1e及び摘記1fに対応する製造方法を伴って記載されているといえるので、引用例1には、 「下記一般式において、 [図:0001413703000010.jpg] (X)nが2-Br-6-CN-4-NO2であり、R1がCH3CO-であり、R3bが-C2H5であり、R3が-CH2-であり、R4がHである、繊維材料を染色するために使用されるアゾ化合物。」 についての発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3 本願発明と引用発明との対比・判断 (1)対比 本願発明と、引用発明とを対比する。 引用発明のアゾ化合物は、その化学構造式からみて、本願発明の式(1)において、R1がシアノ基であり、R2がブロモ基であり、R3が水素原子であり、R4がエチル基である化合物に相当する。ここで、引用発明においてR2がブロモ基であることは、本願発明においてR2がクロロ基であることと、R2がハロゲン原子の基であるという点で共通する。 また、引用例1には、実施例の各化合物によりポリエステル繊維を染色することが記載されていることからみて(摘記1f)、引用発明の「繊維材料を染色するために使用されるアゾ化合物」は、化合物自体が染色するための染料であると理解できるので、本願発明の「染料」に相当する。 してみると、本願発明と、引用発明は、 「式(1) 【化1】 [図:0001413703000011.jpg] (式中、 R1は、シアノ基であり、 R2は、ハロゲン原子の基であり、 R3は、水素原子、クロロ基、ブロモ基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基又はシアノ基であり、及び R4は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基又は2-メトキシカルボニルエチル基である) で表される染料。」 という点において一致し、以下の点において相違する。 相違点1:本願発明では、R2のハロゲン原子の基がクロロ基であるのに対して、引用発明では、R2のハロゲン原子の基がブロモ基である点。 (2)相違点の判断 ア 構成の容易想到性について 上記相違点1について検討すると、引用発明に対応した引用例1の請求項1には、「水不溶性モノアゾ化合物」の一般式において、Rで表されるフェニル基の置換基(本願発明のR1及びR2に相当する位置を含む置換基)の選択肢として「ハロゲン」も挙げられており(摘記1b)、また、「塩素と臭素は代表的なハロゲン原子である」と、塩素(クロロ)と臭素(ブロモ)がわずか2つのハロゲン原子の選択肢として記載されている(摘記1d)。 また、引用例1の実施例(摘記1e、1f)には、上記一般式を満たす具体的な化合物が同様の製造方法で製造できる化合物として多数記載されているところ、本願発明と化学構造骨格が類似した76種の化合物(実施例1~76)のうち、Rで表されるフェニル基の置換基(本願発明のR1及びR2に相当する位置の置換基)としてハロゲンを含むものは22種(実施例1、5、7~14、18~21、32~35、61~63及び69)あり、その中では、ハロゲンとして塩素が主に選択され、ハロゲンの置換位置は1例(実施例69)を除いて2位に置換されたものである(置換基が塩素である化合物は21種(実施例1、5、7~14、18~21、32~35、62、63及び69)、置換基が臭素である化合物は1種のみ(実施例61)、置換基が塩素又は臭素以外のハロゲンである例はない。)。 さらに、引用例1の実施例62及び63(摘記1f)には、引用発明(実施例61)と化学構造が特に類似し、染料の色も同一であり(いずれも、「Color(色)」が「Red-Blue(赤青)」。)、かつ、(X)nが「2-Cl-6-CN-4-NO2」である化合物(本願発明のR2に相当する位置の置換基がクロロ基で、4位6位の置換基も本願発明と同じであるフェニル基を有する化合物)も記載されている。 以上のとおり、引用例1には、置換基としてのハロゲンが選択肢として挙げられており、具体的な化合物においても置換基としてハロゲンが多数選択されており(22/76=約0.29)、置換基がハロゲンである場合には大半の化合物で塩素が選択されており(21/22=約0.95)、引用発明と化学構造が特に類似し、かつ本願発明のR2に相当する位置の置換基が臭素ではなく塩素である化合物(実施例62及び63)も具体的に記載されていることを考慮すれば、引用発明において、R2に相当する位置の2位の置換基を、ブロモ基に代えてクロロ基とすることは、引用例1の記載を総合的に判断すれば、容易になし得る技術的事項である。 イ 本願発明の効果について つぎに、本願発明の効果について検討する。 本願明細書【0004】には「光、洗濯及び汗に対して非常に優れた堅牢性を有する染色をもたらし、及び、加えて、吸尽法及びサーモゾル法、並びに織物捺染の両方において優れたビルドアップ性を示す」という効果が記載されているものの、具体例を示す表1には、波長が一部の例において明らかにされているのみである。 そして、本願発明の染料も、引用発明に相当する染料(引用発明の染料は、本願明細書に記載の化合物144に該当する。)も、本願明細書にはもともと実施例として特に区別することなく羅列して記載されていたものに含まれる染料であり、本願明細書には、実施例として羅列して記載された染料の間で堅牢性及びビルドアップ性に関する効果に差があることは記載されていないし、そのことが実験結果から読み取れるものでもない。 また、本願明細書に記載の実施例において、上記効果(堅牢性及びビルドアップ性)が一応具体的に示されているのは化合物101のみであり、すなわち、 「式(101)で表される染料1質量部を、商業的に入手できる分散剤4部及び水15部と共に粉砕した。その配合物を用いて、135℃で、高温吸尽方法にてポリエステル織布上に、1%の染色物(該染料及び該基質に基づく)が生成された。 試験結果:該染色物の耐光堅牢性は、AATCC61試験及びISO105試験の結果と同様優れていた。該染料のビルドアップ性は非常に良好であった。」(【0035】) との記載がある。 【0035】の記載からみて、R2がブロモ基である式101の化合物の染料が、何らかの意味で、耐光堅牢性やAATCC61試験及びISO105試験で優れ、ビルドアップ性が非常に良好であったことを記載していることは理解できても、引用発明と同様にR2がブロモ基である化合物についての具体例の記載によって、R2がクロロ基である本願発明の効果の優位性や差異を示唆するものとはいえない(「ISO105試験」とは、耐光堅牢性を含む色堅牢性に関する試験の規格であり(https://www.iso.org/obp/ui/en/#iso:std:iso:105:-A01:ed-6:v1:en)、「AATCC61試験」とは、洗濯堅牢性の試験である(https://members.aatcc.org/store/tm61/495/)。)。 してみると、本願明細書の記載から、R2をクロロ基とした染料の効果が、引用発明の化合物に相当する、本願発明におけるR2をブロモ基に代えた化合物の染料よりも優れた効果を奏することを実質的に理解することはできない。 したがって、本願発明の効果は、引用発明のR2をクロロ基に代えた場合に想定される効果と比較して、予測できない、かつ顕著な効果を有するものとは認められない。 4 請求人の主張について (1)主張の概要 請求人は、令和6年2月22日提出の意見書において、以下の主張を行っている。 (下記主張において、「本願請求項1に係る発明(本願発明1)」は、上記第2に記載した「本願発明」であり、「引用発明1-2」は、上記2で認定した「引用発明」である。) 主張1: 「本願請求項1に係る発明(本願発明1)は、引用発明1-1(当審注:「引用発明1-2」の誤記であると認めた。)の(X)nが2-Brである点で相違する。相違する点が1箇所だけであれば当業者は容易に想到できるとも思える。しかし、引用例1においては、363個の実施例が示されているにもかかわらず、本願発明1の染料(48個の化合物)は示されていない。当業者が容易に想到できるのであれば、例示があってもいいはずである。それがないことは、当業者が容易に想到できないことを示していると云える。」(令和6年2月22日提出の意見書の3(3-2)(イ)) 主張2: 「令和4年2月25日に提出した意見書において、出願人は、本願発明1が引用発明1-2に比較して「洗濯に対する堅牢性」に関し、優れた堅牢性を示すデータを記載した。 さらに、出願人は、塩素化染料が臭素化染料に比べ優れた効果を示す、新たなデータを取得した。本願の実施例II.1(本願明細書段落[0035])に従って、本願明細書表1の化合物192(塩素化染料)及び引用例1の実施例61(臭素化染料、引用発明1-2)を用いて染色し、それぞれの染料の色濃度(RD)・・・を測定した。 以下の表およびグラフは、本願の化合物192の染料が引用例1の実施例61の染料よりも優れた染料の色濃度(RD)を示すことから、本願の化合物192の染料がより優れたビルドアップ特性を有することを示した。 【表1】 [図:0001413703000012.jpg] ・・・ 本願発明の塩素化染料は、引用発明1-2の臭素化染料に比べ光、洗濯及び汗に対して非常に優れた堅牢性を有し、織布上の染料の色濃度(RD)においても優れたビルドアップ特性を有した。すなわち、本願発明は非常に優れた着色効果を奏したことから見れば、引用例1記載の染料より進歩性を有することが明らかに示されている。」(令和6年2月22日提出の意見書の3(3-2)(イ)) ここで、上記主張において、「令和4年2月25日に提出した意見書において、出願人は、本願発明1が引用発明1-2に比較して「洗濯に対する堅牢性」に関し、優れた堅牢性を示すデータを記載した。」とあり、令和4年2月25日提出の意見書において該当する記載は、以下に示すとおりである。 「(ア) 染料の調製 本発明の実施例に記載されている染料A(本発明の染料A)、すなわち、本発明の明細書に記載の表1における式(144)(当審注:「式(192)」の誤記であると考えられる。)の化合物は、本願明細書の実施例I.1に記載された手順に従って調製された。 【化1】 [図:0001413703000013.jpg] 引用文献1(英国特許出願公開第1275603号明細書)の式(101)(当審注:「式(144)」の誤記であると考えられる。)の染料である従来技術の染料(B)は、引用文献1の明細書における実施例1および実施例61に記載されている手順に従って調製された。 【化2】 [図:0001413703000014.jpg] ・・・ (イ)染色手順 本願の実施例II.1に記載されているように、ポリエステル繊維材料は、それぞれ染料(A)および(B)で染色された。・・・ (ウ)堅牢性について評価 洗濯に対する堅牢性は、AATCC61およびISO105-C06に従って、酢酸セルロース、ポリアミド、およびポリエステルに対するブリーディング効果、つまり、洗濯または湿潤プロセス中の、以前に着色されていない付随する布の着色の程度を評価することによって決定された。 (エ)結果は表1と表2に示されている。 表1:洗濯に対する堅牢性 49℃(AATCC 61) 【表1】 [図:0001413703000015.jpg] 表2:洗濯に対する堅牢性 60℃/過酸化物(C2S-ISO105-C06) 【表2】 [図:0001413703000016.jpg] CA:酢酸セルロース PA:ポリアミド PES:ポリエステル」(令和4年2月25日提出の意見書の3のイ) (2)主張1について 引用例1には多数の実施例が記載されているところ、R2以外の化学構造が本願発明と同じ化合物としては、R2がブロモ基であるもののみが記載されているが、上記3で説示したとおり、引用例1には、置換基としてのハロゲンが選択肢として挙げられており、具体的な化合物においても置換基としてハロゲンが多数用いられ、そのほとんどが塩素であるし、引用発明と化学構造が特に類似し、かつ本願発明のR2に相当する位置の置換基が臭素ではなく塩素である化合物(実施例62及び63)も具体的に記載されていることを考慮すれば、引用発明において、R2に相当する位置の置換基をクロロ基とすることは、当業者であれば引用例全体の記載を総合して十分動機付けられるといえる。 そして、引用例1には、R2以外の化学構造が本願発明と同じ化合物である引用発明において、R2として多数試みられているクロロ基としてみることを阻害する理由は一切ない。 よって、上記主張1は採用できない。 (3)主張2について ア 請求人は、「洗濯に対する堅牢性」及び「ビルドアップ特性」に関する新たなデータを示している。 ここで、上記新たなデータにおける化合物(A)は、本願明細書に記載の実施例の化合物192であり、化合物(B)は、本願明細書に記載の実施例の化合物144であるところ、上記3で説示したとおり、本願明細書には、実施例として記載された染料の間で堅牢性及びビルドアップ性に関する効果に差があることは記載されていないし、そのことが実験結果から読み取れるものでもない(実験結果は、具体的には、R2がブロモ基の化合物101のみしか示されていない。)。 また、上記新たなデータにおける化合物(A)はR2がクロロ基である化合物であり、化合物(B)はR2がブロモ基である化合物であるが、本願明細書に記載の実施例において、ビルドアップ特性が一応具体的に示されているのは化合物101のみであるところ(【0035】)、化合物101はR2がブロモ基である化合物である(なお、洗濯に対する堅牢性が具体的に示された実施例はない。)。 さらに、本願明細書の【0007】には「さらに好ましくは、式(1)(式中、R2はクロロ基である。)で表される染料である。」との形式的な記載はされているものの、本願明細書の実施例では、R2が水素原子である化合物が半数程度を占めているし、ただ一つビルドアップ特性が一応具体的に示されている染料である化合物101は、上記のとおりR2がブロモ基であることを考慮すると、本願明細書の記載に接した当業者は、R2として、水素原子、クロロ基又はブロモ基のいずれかを選択した場合に、洗濯に対する堅牢性やビルドアップ特性に関して、予測できない、かつ顕著な効果を有するのかを明確に認識又は推論することはできない。 してみると、化合物(A)(本願発明の特定を満たすもの、本願明細書に記載の実施例の化合物192、R2がクロロ基である化合物)が、化合物(B)(引用発明のもの、本願明細書に記載の実施例の化合物144、R2がブロモ基である化合物)よりも、洗濯に対する堅牢性及びビルドアップ特性において優れているという効果は、本願明細書に実質的に記載されたものでないし、本願明細書の記載から当業者が当然に理解できるものでもない。 よって、上記主張2で主張された効果は、本願明細書の記載に基づく効果とはいえないから、本願明細書の記載を補足するものとして参酌できない。 イ 上記アで説示したとおり、上記主張2で主張された効果は、本願明細書の記載に基づくものではなく、補足したものとして参酌できないが、仮に参酌したとしても、上記主張2で主張された効果は、以下に述べるように、本願発明の染料が共通して奏するものではない。 すなわち、上記新たなデータから読み取れるのは、本願発明の式(1)において、R1がシアノ基であり、R3が水素原子であり、R4がエチル基である染料において、R2がクロロ基である場合に、R2がブロモ基である場合よりも、「洗濯に対する堅牢性」及び「ビルドアップ特性」が良好であるということのみである。 ここで、請求人は、アゾ化合物のただ一つの置換基(R2)における、通常同様の性質を示すことが多いと考えられているブロモ基とクロロ基との違いのみで、染料としての性質が優れたものとなるという効果を主張していることになる。しかしながら、そのように化合物のわずかな置換基の違いが染料としての性質に大きく影響するのであれば、アゾ化合物における他の二つの置換基(R3、R4)において、水素原子及びエチル基とは異なる置換基を有する化合物(水素原子やエチル基とは、大きさ、疎水性及び電気的特性等の点で大きく異なり、一概に同様の性質を示すとは考えられてない置換基をも含む。)であっても、R2がクロロ基であれば、化合物(A)と同様に、化合物(B)より良好な洗濯に対する堅牢性及びビルドアップ特性を示すか否かは不明であるというべきであって、請求人は、その点について具体的な根拠を示していない。 よって、上記主張2で主張された効果は、R3及びR4がそれぞれ水素原子及びエチル基である場合以外の場合をも含む本願発明の染料が共通して奏するものであるとはいえない。 ウ 上記アで説示したとおり、上記主張2で主張された効果は、本願明細書の記載に基づくものではなく、補足したものとして参酌できず、さらに、本願発明の化合物の染料全体が奏するものであるとはいえないが、念のため、上記主張2で主張された効果が、本願明細書の記載に基づくものであるといえ、かつ、本願発明の化合物の染料全体が奏する効果であると認められるとした場合について、以下検討する。 引用例1には、染料をポリエステル繊維の染色等に用いることが記載されているところ(摘記1f、1g)、ポリエステル繊維の染色に用いられるアゾ染料において、洗濯に対する堅牢性及びビルドアップ特性は、染料が有するべき性質として周知のものである(例えば、特開平11-181312号公報の【0003】~【0005】等。)。 また、請求人が示す上記新たなデータにおいても、引用発明に対応する化合物(B)が、化合物(A)には劣るものの、洗濯に対する堅牢性及びビルドアップ特性をある程度有することが示されているとみることもできる。 してみると、洗濯に対する堅牢性及びビルドアップ特性を有するという効果は、引用発明が奏する効果として、技術常識を考慮すれば想定されるものであり、異質な効果であるとはいえない。 また、アゾ染料の化学構造が変化すれば染料の特性が変化することは当業者にとって自明であるところ、上記新たなデータにおいては、化合物(A)(R2がクロロ基)が化合物(B)(R2がブロモ基)よりも洗濯に対する堅牢性やビルドアップ特性に優れることが示されているものの、その差が、際だって優れているとまではいえない(同質であるが際だって優れたものであるともいえない。)。 よって、上記新たなデータをみても、本願発明の効果が、引用発明のR2をクロロ基に代えた場合に想定される効果と比較して、当業者が予測できない、かつ顕著な効果であるとまではいえない。 エ 以上のとおり、上記アで説示した理由により上記主張2は採用できないし、仮にそうでないとしても、上記イ又はウで説示した理由により、上記主張2は採用できない。 5 まとめ 本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例1に記載された技術的事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例1に記載された技術的事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-011879

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