2022-010367
折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム
- 審判番号
- 2022-010367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-082862外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月04日
- 審決日
- 2023年06月21日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 分類
- P18 .575-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年4月24日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 4月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月19日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 5日 :上申書の提出
第2 令和4年7月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年7月4日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年7月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正する補正事項を含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】厚みが10~75μmであり、極限粘度が0.65~1.0dl/gであるポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有し、前記ポリエステルフィルムは、真空条件下での重合により得られたペレットから形成されたフィルムである、折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】厚みが25~75μmであり極限粘度が0.68~1.0dl/gであり全光線透過率が87%以上であるポリエステルフィルムの一方の面側に、厚みが3~15μmである粘着層を有し、前記ポリエステルフィルムは、真空条件下での重合により得られたペレットから形成されたフィルムであり、ポリエステルフィルムの粘着層を有する面側と反対面側に、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度がH以上であり全光線透過率が87%以上であるハードコート層が積層されている折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正は、以下のアからウの補正事項からなる。
ア 「ポリエステルフィルム」について、
(ア) 厚みの下限値を「10[μm]」から「25[μm]」に切り上げて厚みの範囲を「10~75μm」の範囲から「25~75μm」の範囲に限定し、
(イ) 極限粘度の下限値を「0.65[dl/g]」から「0.68[dl/g]」に切り上げて極限粘度の範囲を「0.65~1.0[dl/g]」から「0.68~1.0[dl/g]」の範囲に限定するとともに、
(ウ) 「全光線透過率が87%以上である」ものに限定すること。
イ 「粘着層」について、「厚みが3~15μm」であるものに限定すること。
ウ 「ポリエステルフィルム」の「粘着層」を有する面側と反対面側に、「厚みが1~40μmであり鉛筆硬度がH以上であり全光線透過率が87%以上であるハードコート層が積層されている」ものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願出願前に発行された文献である特開2018-10821号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0001】~【0008】
「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムに関するものであり、耐屈曲性と表面硬度が高いため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用可能なポリエステルフィルムに関するものである。続きを表示(全36行)【背景技術】【0002】近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置」という。)の実用化が進んでいる。この有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、表示装置としての薄膜化、フレキシブル化が可能となっている。このため、折り畳みや丸めることが可能なフレキシブル表示装置の開発が加速しており、表示装置表面の傷付きを防止するカバーフィルムについても耐屈曲性が求められている。【0003】例えば、画像表示装置向けに、耐傷性を向上させる手法として、ポリエステルフィルムを含む基材の両面にハードコート層を積層したハードコートフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。また、フレキシブル表示装置向けに、ポリエステルフィルムを含む可撓性を有する透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に反射防止層が設けられた反射防止フィルムが提案されている(例えば、特許文献2)。【先行技術文献】【特許文献】【0004】【特許文献1】特開2015-61750号公報【特許文献2】特開2016-75869号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0005】しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の画像表示装置向けに使用されるフィルムは、ハードコート層、反射防止層に特徴があり、基材となるポリエステルフィルムには特徴を有していないため、耐傷性と耐屈曲性の両立が不十分であり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用への適用は困難であった。【0006】そこで本発明の課題は、上記した問題点を解消することにあり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として適用された際、耐屈曲性と耐傷性を両立できるポリエステルフィルムを提供することにある。【課題を解決するための手段】【0007】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。(1)少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さが150N/mm2以上であって、フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数が50000回以上である有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(2)少なくとも片面(A面)の面配向係数が0.16以上0.18以下である(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(3)片面(A面)とその反対面(B面)の面配向係数の差の絶対値が、0.0001以上0.005以下である(1)または(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(4)固有粘度が0.65以上1.0dl/g以下である(1)~(3)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(5)150℃での熱収縮率が、フィルム主配向軸方向(X方向)および主配向軸方向と直交す方向(Y方向)ともに3%以下である(1)~(4)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(6)フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキが5度以内である(1)~(5)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(7)(1)~(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルム。(8)前記ポリエステルフィルムと前記硬化性樹脂を含有する層の間に厚み10nm以上500nm以下である樹脂層を有し、前記樹脂層の表面自由エネルギーが38mN/m以上である(7)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。(9)(1)~(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する(7)または(8)に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルム。(10)(7)~(9)のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム及び、円偏光板を有する表示装置であって、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下である有機エレクトロルミネッセンス表示装置。【発明の効果】【0008】本発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として、耐屈曲性と表面硬度の高いポリエステルフィルムを提供でき、特に表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いることができる。」
b 段落【0009】~【0016】
「【発明を実施するための形態】【0009】以下に、本発明に係るポリエステルフィルムについて、実施の形態とともに詳細に説明する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルを与える、グリコールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。続きを表示(全27行)【0010】また、本発明に用いるポリエステルを与えるジカルボン酸あるいはその誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。本発明におけるポリエステルの組成としては、グリコール単位の80モル%以上がエチレングリコール由来の構造単位であることが好ましく、さらに好ましくは85モル%以上であり、90モル%以上であれば最も好ましい。また、ジカルボン酸単位の80モル%以上がテレフタル酸由来の構造単位であることが好ましく、85モル%以上であればさらに好ましく、90モル%以上であれば最も好ましい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、耐傷性の観点から、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さが150N/mm2以上である必要がある。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とすることで、フィルム表面の傷付きを抑制することができる。ここで、マルテンス硬さとは、ナノインデンテーション法により測定される値であり、圧子を試験荷重を増加しながらフィルム表面に押し込み、そのときの試験荷重のくぼみ表面積の商で定義されており、くぼみ表面積は、圧子押し込み深さより算出できる。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さは170N/mm2以上であればより好ましく、180N/mm2以上500N/mm2以下であれば最も好ましい。また、A面の反対面(B面)のマルテンス硬さにおいても150N/mm2以上であることが好ましい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とする方法としては、例えば、少なくとも片面(A面)の面配向係数が0.16以上0.18以下とする方法が挙げられる。面配向係数を0.16以上0.18以下と高く制御することで、フィルム面内の分子配向が進行するため、フィルム表面からの押し込みに対する剛性が向上し、マルテンス硬さを150N/mm2以上とするのに有効である。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムの面配向係数は0.163以上0.178以下であればより好ましく、0.165以上0.175以下であれば最も好ましい。面配向係数を0.16以上0.18以下とする方法としては、キャスト工程で得られた未延伸ポリエステルシートを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで制御することができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。また延伸温度は、延伸ムラが生じない程度に低温とすることが好ましく、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は50~60℃、延伸温度は80~90℃とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は70~80℃、延伸温度は90~100℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数が50000回以上であることが必要である。フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数を50000万回以上と非常に高くすることで、フィルムを繰り返し屈曲に耐えることができるため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のフレキシブル化に有効である。ここで、MIT屈曲破断回数とは、JISP8115に基づいて測定することができ、繰り返し屈曲試験を行い、フィルムが破断した際の屈曲回数である。また、フィルムの主配向軸方向とは、フィルム面内において、分子が最も分極している方位のことであり、屈折率楕円体においては最も屈折率が高い方位のことを指す。X方向とY方向のMIT屈曲破断回数は100000万回以上であればより好ましく、300000万回以上であれば最も好ましい。また、屈曲破断回数は多ければ多いほど良好な耐屈曲性を示すので好ましいが、実用的な上限としては、1000000万回以下である。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、X方向とY方向のMIT屈曲破断回数を50000万回以上と非常に高い屈曲性を得るためには、繰り返し屈曲させた際の残存歪みを低減させる必要がある。このため、分子鎖の滑りを抑制する絡み合いが重要であり、例えばポリエステルフィルムの固有粘度を0.65以上1.0dl/g以下と高くする方法が有効である。ポリエステルフィルムの固有粘度は0.68以上1.0dl/g以下であればより好ましく、0.69以上0.9dl/g以下であれば最も好ましい。また、MIT屈曲破断回数を50000万回以上と高くする方法としては、片面(A面)とその反対面(B面)の面配向係数の差の絶対値が、0.0001以上0.005以下であることが有効である。A面とB面の面配向係数の差を上記範囲とすることで耐屈曲性が向上するメカニズムは明らかではないが、0.0001以上0.005以下という表裏で若干の面配向差をつけることでフィルムを屈曲させた際の残存歪みが低減されるため、耐屈曲性が向上すると推定している。一方で、表裏での面配向の差が大きく過ぎると、屈曲させた際に、面配向が小さい面側に応力が集中するため破断しやすくなると推定される。A面とB面の面配向係数の差の絶対値は、0.0001以上0.004以下であればより好ましく、0.0002以上0.003以下であれば最も好ましい。A面とB面の面配向係数の差の絶対値を0.0001以上0.005以下とする方法としては、例えば、キャスト工程で未延伸ポリエステルシートを得る際に、片面とその反対面のフィルム表面の温度差をつける方法が挙げられる。具体的には、片面の冷却温度を非常に低温化し、反対面のフィルム表面温度よりも低く制御する方法もしくは、逆に片面の冷却温度を高く設定することで、反対面のフィルム表面温度よりも高く制御する方法などが挙げられるが、片面の冷却温度を高く設定し、キャスト後にフィルムを急冷する方法が好ましく用いられる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、加工時の寸法安定性、表示装置としての反り抑制の観点から、150℃での熱収縮率が、フィルム主配向軸方向(X方向)および主配向軸方向と直交す方向(Y方向)ともに3%以下であることが好ましい。150℃での熱収縮率が、X方向、Y方向ともに3%以下とすることで、硬化性樹脂を含有する層を積層する際の乾燥工程での寸法変化、表示装置とした際の反りを低減することができる。ここで、150℃におけるX方向およびY方向の熱収縮率とは、フィルムをX方向およびY方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った前後の標線間距離の変化率を指す。150℃でのX方向とY方向の熱収縮率は、2.5%以下であればより好ましく、2%以下であれば最も好ましい。…(中略)…【0012】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの10cm×20cm範囲における配向角のバラツキを5度以内とする方法としては、例えば、延伸後の熱処理を複数のゾーンに分けて段階的に昇温・降温する方法や、熱処理工程で幅方向に微延伸する方法が好ましく採用される。例えば熱処理前半温度を180℃以上210℃以下で幅方向に1%以上10%以下、好ましくは3%以上10%以下微延伸し、熱処理後半温度を200℃以上240℃以下で幅方向に1%以上10%以下、好ましくは3%以上10%以下微延伸する方法が挙げられる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点より、フィルム厚みは10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上100μm以下であればさらに好ましく、20μm以上50μm以下であれば最も好ましい。本発明において、耐傷性の観点から、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能である。ここで、硬化性樹脂とは、熱や光を照射することで架橋構造を形成し、硬化する樹脂をさす。硬化性樹脂としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、具体的には、有機シリコーン系、ポリオール系、メラミン系、エポキシ系、多官能アクリレート系、ウレタン系、イソシアネート系、有機材料と無機材料の複合材料である有機無機ハイブリット系および硬化性のある官能基を有するシルセスキオキサン系などの樹脂が挙げられる。より好ましくは、エポキシ系、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。更に好ましくは、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。【0013】硬化性樹脂として用いる多官能アクリレート系、シルセスキオキサン系樹脂については、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、などが好ましい。多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレート及びその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は1種類または2種類以上を混合して使用することができる。…(中略)…【0016】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルムは、硬化性樹脂を含有する層の表面の平均粗さSRaが1~10nmであることが好ましい。SRaが1nm未満では、表面の滑り性が悪く、キズが付くことがあり、Raが10nmを超えると突起が削れてキズが発生することがある。平均粗さRaはキズがより付きにくくなることから2~8nmであることがより好ましく、3~7nmであることが更に好ましい。硬化層表面の平均粗さRaを1~10nmとするには、前記した粒径の粒子を前記した含有量で添加することにより達成可能である。本発明において、耐傷性向上効果をより高めるために、ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、傷付き抑制効果を非常に高めることが可能である。本発明の硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmであることが好ましい。硬化性樹脂を含有する層の厚みが1μmより薄いと、十分な表面硬度が得られない場合がある。また、硬化性樹脂を含有する層の厚みが20μmを超えると積層ポリエステルフィルムを折り曲げた際に、積層された硬化性樹脂を含有する層にクラックが発生することがある。硬化性樹脂を含有する層の厚みは、2μm以上15μm以下であればより好ましく、3μm以上10μm以下であれば最も好ましい。なお、ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する構成の場合は、各面の硬化性樹脂を含有する層の厚みが、それぞれ1~20μmであることが好ましい。」
c 段落【0028】
「【0028】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置であって、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることが好ましい。前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計を120μm以下とすることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置となる。前記積層ポリエステルフィルムと偏光板の厚み合計は110μm以下であればより好ましく、100μm以下であれば最も好ましい。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子より構成されることが好ましい。」
d 段落【0032】~【0082】
「【実施例】【0032】以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。…(中略)…続きを表示(全13行)【0038】(7)ポリエステルの組成ポリエステル樹脂またはポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量する(8)固有粘度ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。…(中略)…【0046】(13)有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製本発明の積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ製 15EL9500)を、それぞれアクリル系粘着剤(厚さ20μm)を介して有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ社製 商品名15EL9500)の視認側に貼り合せて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。」
【0047】
(14)耐屈曲性
本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、U字伸縮試験器(ユアサシステム機器製DLDMLH-FS)を用いて、幅108mm、長さ112mmに切り出したサンプルを、チルトクランプが水平状態にて、ストローク方向がサンプル長さ方向になるようにチルトクランプ端部に貼り付け、試験速度60r/min、試験ストローク60mm、面間距離3mmにて10000回屈曲し、試験後のサンプルについて、積層ポリエステルフィルム側の蛍光灯の反射光と、外観より以下の判定を行った。
A:外観変化がなく、反射光の歪みも観察されなかった。
B:外観上の変化はなかったが、反射光の歪みが観察された。
C:外観に若干の折り曲げラインが観察された。
D:外観に折り曲げラインが鮮明に観察された。
【0048】
(15)耐傷性
本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、新東科学株式会社製 HEIDON-14DRを用いて、積層ポリエステルフィルム側を測定面として、温度23℃、湿度65%RHにおいて下記条件にて測定した。鉛筆の硬度については、下記に示す次の順に硬いことを表し、10Bが最も柔らかく9Hが最も硬い。従って、例えば「鉛筆硬度H以上」とは、鉛筆硬度がH、2H、3H、・・・、9Hのいずれかであることを意味する。
【0049】
【0050】
【0051】
(例えば、Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、2本の傷が確認され、次いで2Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、3本の傷が確認された場合は、鉛筆硬度はHとする。また、例えば2Hの鉛筆を使用し5本の傷を付け処理をした後、観察される傷の数が2本以下である場合は、鉛筆硬度は少なくとも2H以上であると判断する。)
A:鉛筆硬度が3H以上であった。
B:鉛筆硬度が2H以上3H未満であった。
C:鉛筆硬度がH以上2H未満であった。
D:鉛筆硬度がH未満であった。
…(中略)…
【0054】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0055】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0056】
(ポリエステルB)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0057】
(粒子マスター)
ポリエステルB中に平均粒子径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を粒子濃度1質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0058】
(樹脂Pの調合)
ポリエステルフィルムの表面に積層する樹脂層は以下のように準備した。
【0059】
樹脂溶液(a):酸成分であるテレフタル酸(88mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(12mol%)、ジオール成分であるエチレングリコール(100mol%
)の酸成分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水溶性塗液を70重量部と、酸成分であるテレフタル酸(50mol%)、イソフタル酸(49mol%)、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(1mol%)とジオール成分であるエチレングリコール(55mol%)、ネオペンチルグリコール(44mol%)、ポリエチレングリコール(分子量:4000)(1mol%)の酸性分とジオール成分からなるポリエステル樹脂の水分散体30重量部を混合した溶液。
架橋剤(b):メチロール基型メラミン架橋剤
架橋剤(c):オキサゾリン基含有架橋剤
粒子(d):粒子径150nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
粒子(e):粒子径300nmのコロダイルシリカ粒子の水分散体
フッ素系界面活性剤(f):DIC(株)製メガファックF-444
これらを固形分重量比で(a)/(b)/(c)/(d)/(e)/(f)=47重量部/19重量部/20重量部/4.9重量部/0.7重量部/0.1重量部で混合した。
屈折率は1.57。
【0060】
(硬化性樹脂Qの調合)
粒径100nmのシリカ粒子(日産化学工業株式会社製 オルガノシリカゾル)と、多官能アクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD PET30)を、質量比50:50で混合し、トルエン/MEK混合溶媒(質量比50:50)で、希釈して硬化性樹脂を調合した。
【0061】
(実施例1)
ポリエステルAと粒子マスターを質量比99:1で混合して押出機に投入した後、280℃で溶融させて、Tダイより33℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。その後、10℃に温度制御した冷却ロールで急冷し、続いて、予熱温度55℃、延伸温度85℃で長手方向に3.8倍延伸し、その後一旦冷却した。次いて、この一軸延伸フィルムの両面にコロナ放電処理を施し、フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルムの両面に樹脂Pを塗布し、その後、テンター式延伸機にて予熱温度75℃、延伸温度95℃で幅方向に3.8倍延伸し、テンター内にて熱処理前半温度200℃とし、幅方向に5%微延伸し、続いて、熱処理後半温度230℃にて、幅方向に3%微延伸を行い、フィルム厚み25μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂Qを厚み5μmとなるように塗工し、フィルム厚み35μmの積層ポリエステルフィルムを得た。なお、耐傷性試験、耐屈曲性試験は円偏光板-Iを貼り合わせて評価した。
…(中略)…
【0079】
【表2】
[図:0001401237000001.jpg]
(以下略)」
(イ) 引用文献1に記載された事項から認定した事項
a 引用文献1の段落【0061】、【0079】から、実施例におけるポリエステルフィルムの厚みは25μmであることが読み取れる。
b 引用文献1の段落【0048】~【0051】、【0061】、【0079】から、実施例における積層ポリエステルフィルムの耐傷性試験の評価はA~Cであり、すなわち、積層ポリエステルフィルムの鉛筆硬度はH以上であることが読み取れる。
c 引用文献1の段落【0038】の記載中に並記されているとおり、「固有粘度」と「極限粘度」は同義である(この点、化学大辞典(株式会社東京化学同人 出版日:1989年10月20日 p.588「極限粘度数」)も参照。以下、この審決において同様。)
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「折り畳み可能な表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いられる積層ポリエステルフィルムであって、(【0008】、【0028】)積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する構成とされ、(【0012】)ポリエステルフィルムの厚みは25μmであり、(前記(イ)aの認定事項)ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解して測定したポリエステルフィルムの極限粘度は0.69以上0.9dl/g以下であり、(【0010】、【0038】)積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せるためのアクリル系粘着剤の厚さは20μmであり、(【0046】)硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能であり、(【0012】)硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmであり、(【0016】)積層ポリエステルフィルムの鉛筆硬度はH以上である(前記(イ)bの認定事項)積層ポリエステルフィルム。」
イ 引用文献12に記載された事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献12に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である「JIS K 7367-5 : 2000 プラスチック-毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方-第5部:熱可塑性ポリエステル(TP)ホモポリマー及びコポリマー」、日本規格協会、2000年1月20日(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。
「1. 適用範囲この規格は,熱可塑性ポリエステル(TPs)を規定の溶媒で希釈して得た溶液の粘度数を測定する方法を規定する。この方法は,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT),ポリエチレンナフタレート(PEN),及び共重合ポリエステル並びに他のポリエステルなどISO 7792-1に規定され,規定溶媒のどれかに規定条件下で溶解するものに適用できる。粘度数は,この規格で規定する特定条件によって,ISO 1628-1に規定される一般的な方法で測定する。熱可塑性ポリエステルの粘度数を測定することによって,そのポリマーの相対的な分子量の大きさを知ることができる。続きを表示(全24行)…(中略)…3. 原理溶媒及びポリマー0.005g/ml溶液の25℃における流下時間を通常の方法で測定し,これらの測定結果と適用したポリマー濃度に基づいて粘度数を計算する。…(中略)…6. 溶媒及び溶解6.1 溶媒の選択6.1.1 熱可塑性ポリエステルの粘度数の値は,使用する溶媒によって異なる。この規格では,次の6種類の溶媒を規定する。フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(4.1)フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(4.2)o-クロロフェノール(4.3)m-クレゾール(4.4)ジクロロ酢酸(4.5)フェノール/2, 4, 6-トリクロロフェノール(4.6)溶媒の流下時間は,これを使用する際には少なくとも1日に1回測定しなければならない(7.2参照)。その流下時間が,溶媒を準備した際の当初の値から1%以上異なる場合は,その溶媒を廃棄し,新しい溶媒を調製する。特定の熱可塑性ポリエステルに用いる溶媒は,次に規定する。6.1.2 PETには,フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50),フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50,又は,60/40),o-クロロフェノール,又は,ジクロロ酢酸のいずれかを溶媒として用いる。備考 これら4種類の溶媒間の粘度数の換算式は,附属書A(参考)A.3.1に示す。…(中略)…8. 結果の表示粘度数は,次の式によって算出し,ml/gで表す。」
「附属書A(参考) ラウンドロビンテスト…(中略)…A.3 種々の溶媒で測定した粘度数の相互換算種々の溶媒で測定した粘度数の相関は,次のとおりである。続きを表示(全17行)A.3.1 PETの粘度数フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)に溶かしたPETと,フェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50, 60/40),o-クロロフェノール及びジクロロ酢酸に溶かしたPETの粘度数の相関図を,附属書図A.1に示す。この図から,直線関係であることが分かる。それらの関係を次に示す。a) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(50/50)y=1.07x-2.00b) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(60/40)y=0.83x+11.07c) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とo-クロロフェノールy=0.82x+8.40d) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とジクロロ酢酸y=0.83x+15.00ここに,y:代替溶媒での粘度数x: フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)での粘度数」
「[図:0001401237000002.jpg]」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献12の「JIS K 7367-5 : 2000」に示されているように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。
[技術常識1]
「ポリエチレンテレフタレートの粘度数の値は、測定に使用する溶媒によって異なり、それぞれ以下の相関関係を有すること。b) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(60/40)y=0.83x+11.07c) フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)とo-クロロフェノールy=0.82x+8.40y:代替溶媒での粘度数(ml/g)x: フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)での粘度数(ml/g)」
ウ 引用文献2、引用文献13、引用文献14、引用文献15、引用文献16に記載された事項及び周知技術1、技術常識2~4の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願出願前に発行された文献である韓国公開特許第10-2017-0024662号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、翻訳文は当審において付したものである。
「[図:0001401237000003.jpg]」
([0094] コーティング層(120)は、基材層(110)上に形成されて基材層(110)とディスプレイ部、タッチスクリーンパネルまたは偏光板を保護し、高柔軟性と高硬度を有してフレキシブルディスプレイ装置に使用可能にすることができる。コーティング層(120)は、厚さが5μm~100μm、具体的には10μm~80μmとすることができる。この範囲で、フレキシブルウィンドウフィルムに使用することができる。)
「[図:0001401237000004.jpg]」
([0104] 図2を参照すれば、本発明の他の実施形態によるフレキシブルウィンドウフィルム(200)は、基材層(110)、基材層(110)の一面に形成されたコーティング層(120)、及び基材層(110)の他面に形成された粘着層(130)を含み、コーティング層(120)は、本発明の実施形態によるウィンドウフィルム用組成物で形成され得る。)
「図2[図:0001401237000005.jpg]」
(イ) 引用文献13に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2008-95064号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の事項が記載されている。
a 請求項1、段落【0001】、【0081】
「【請求項1】ハードコート層を有するフィルム基材からなるハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた保護粘着フィルムであって、前記フィルム基材の弾性率が3~7GPa、厚さが38~100μmであり、前記ハードコート層の厚さが5~25μmであり、前記ハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、前記粘着剤層の厚さが5~20μmであり、総厚さが60~150μmであることを特徴とする保護粘着フィルム。」
「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、液晶パネルやELディスプレイ等の表示装置の表面に設けられるスクリーンパネルを保護する保護粘着フィルム、保護粘着フィルムを有するスクリーンパネル及び当該スクリーンパネルを有する携帯電子端末に関する。」
「【0081】[ハードコートフィルムの製造方法]本発明の保護粘着フィルムは、フィルム基材上に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して硬化させ、ハードコート層を形成してハードコートフィルムとした後、フィルム基材のハードコート層を有する面と逆の面に粘着剤層を形成することで製造できる。」
b 段落【0002】~【0004】、【0087】~【0088】
「【背景技術】【0002】小型短小化が進む携帯電子端末の要請に伴い、画像表示装置(以下表示装置)の薄型化が進められている。液晶等の表示装置の破損を防止するため、保護用のスクリーンパネル(以下パネル)が設けられている。薄型化のためには、パネルの薄型化と、表示装置とパネルの間隙縮小が有効である。【0003】しかし、従来のアクリルやポリカーボネート等の樹脂製パネルでは、剛性が不足するため、パネル部分を指で押すと表示装置が変形し表示不良を起こしたり、湿熱条件等での長期耐久性試験時にパネルが画像表示パネルに部分的に貼り付くといった問題が発生する。【0004】そこで、従来の樹脂製のスクリーンパネルに代わる、高剛性のスクリーンパネルが求められており、例えば、ガラス板製のパネルが採用され始めている。しかし、ガラス製パネルは割れた場合の安全対策が必要となる。そのため、パネルの表面に、飛散防止機能を備えた保護粘着フィルムの貼付が検討されている。保護粘着フィルムとしては、液晶表示体における偏光板用、あるいは各種ディスプレイ保護用のハードコートフィルムが特許文献1に開示されている。開示のハードフィルムは、ベースフィルムに188μmPETフィルムを使用し表面鉛筆硬度4Hを発揮しているが、フィルム厚みが厚く、薄型化の目的に適さない。また、同一ハードコート剤を薄手のベースフィルムに設けると、粘着剤層を有さない構成であれば、3H等の高い表面鉛筆硬度を有するが、パネルに積層する際に粘着剤層を介すると、粘着剤層が変形しパネルとしての表面鉛筆硬度が大きく低下する問題があった。」
「【0087】[粘着剤層]本発明に用いる粘着剤層としては、厚さが5~20μmの粘着剤層を使用する。本発明においては、粘着剤層の厚さを当該厚さとすることで、被着対象との十分な粘着力を発現できると共に、保護粘着フィルムの表面で応力集中が生じた場合にも、保護粘着フィルム全体の弾性率を高く保持できるため、粘着フィルム表面に設けられたハードコート層の硬度の低下を抑制できると考えられる。【0088】本発明に用いる粘着剤層に使用される粘着剤には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2~14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。例えば、n-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。」
c 実施例
「【実施例】【0102】以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。…(中略)…続きを表示(全22行)【0117】(粘着剤層(1)の作製)厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが10μmの粘着剤層(1)を形成した。【0118】(粘着剤層(2)の作製)厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層(2)を形成した。【0119】(実施例1)ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μmの保護粘着フィルムを得た。…(中略)…【0124】(比較例2)ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(2)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ、40℃で2日間養生後、厚さ113μmの保護粘着フィルムを得た。…(中略)…【0127】【表1】[図:0001401237000006.jpg]」
(ウ) 引用文献14に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2006-213808号公報(以下「引用文献14」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0007】さらには、近年、フラットパネルディスプレイや携帯電話などの薄型化が進み、粘着剤層の厚さもより薄くするといった要望がある。しかしながら、粘着剤層を薄くしていくと、接着力が低下することは広く知られていることで、粘着剤層が20μm以下では、必要な接着性を維持するのが困難であることが判明し、粘着剤層の厚みをより薄くできる手法が求められている。【特許文献1】特許第2549388号公報【特許文献2】特開平4-254803号公報続きを表示(全12行)【特許文献3】特開平4-268502号公報【特許文献4】特開平4-268503号公報【特許文献5】特開平4-268504号公報【特許文献6】特開平5-45517号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明は、粘着剤層の厚みが10~20μmと薄くても接着性が良好で、透明性に優れる光学部村用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は前記光学部材用粘着剤組成物により形成される光学部材用粘着剤層を提供することを目的とする。さらには、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着型光学部材を提供すること、ならびに、前記粘着型光学部材を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」
(エ) 引用文献15に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2017-119801号公報(以下「引用文献15」という。)には、次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】【0007】有機エレクトロルミネッセンスパネル(OLED)のようなフレキシブルディスプレイには様々な環境下での使用が想定されるため、広範な温度帯での使用における耐久性や、高温および低温の両条件での折りたたみ耐性(耐屈曲性)が要求される。しかしながら、特許文献1に記載の粘着剤では、アクリル系架橋モノマーによる架橋構造のために、当該粘着剤をフレキシブルディスプレイの粘着剤層に利用した場合、耐久性や、高温および低温の両条件での折りたたみ試験のうち高温での屈曲操作において剥がれが発生する。特許文献2に記載の粘着剤でも、高温および低温の両条件での折りたたみ試験を満足できず、剥がれ、浮きが発生してしまう。特許文献3、4に記載の粘着剤でも、高温および低温の両条件での折りたたみ試験を満足できず、剥がれ、浮きが発生し、更に折り曲げ時の耐久性をも満足できないという問題が生じる。【0008】したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高温および低温の両条件で屈曲操作をしても剥がれや浮きが発生するのを効果的に抑制、防止し得る粘着剤組成物を提供することを目的とする。」
「【0149】本発明の粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、特に限定されず、使用用途によって適宜設定されうる。例えば、曲面ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイに使用される光学フィルム等の粘着剤層においては、接着性および屈曲耐性の観点から、1μm以上200μm以下であることが好ましい。特に、本実施形態の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する場合、従来に比して大幅に薄膜化した場合でも、現在、提供されている曲面ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイの厚膜(通常200μm程度)と同レベルの高い接着性を有し、尚且つ厚膜よりも優れた屈曲耐性が得られることから、本発明の粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、1μm以上70μm以下であることがより好ましく、5μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。」
(オ) 引用文献16に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2015-32565号公報(以下「引用文献15」という。)には、次の事項が記載されている。
「【背景技術】【0002】従来、携帯電話、ノートパソコン、液晶テレビ、ビデオカメラ等に用いられる液晶表示装置、携帯電話のバックライトキー、パソコンのバックライトキーボード、電気機器や車両の表示スイッチ等の表示装置、シーリングライト等の室内照明、照明看板等の照明装置に用いられている光源装置としては、例えば、ハウジング内に蛍光灯等の線状光源や発光ダイオード等の点光源を複数個配置した直下方式のもの、板状の導光体の側面に線状光源又は点光源を配置したエッジライト方式のもの等がある。」
「【課題を解決するための手段】【0009】本発明は、コア層と、コア層の両面に設けられ、コア層の屈折率より低い屈折率のクラッド層とを有し、少なくとも一方のクラッド層の表面に半透過反射層が設けられている積層体に関する。【0010】続きを表示(全13行)また、本発明は、コア層の両面にコア層の屈折率より低い屈折率のクラッド層を設け、少なくとも一方のクラッド層の表面に半透過反射層を設ける積層体の製造方法に関する。【0011】また、本発明は、前記積層体を含む光源装置用導光体に関する。また、本発明は、前記積層体を含む光源装置に関する。更に、本発明は、前記積層体を含む両面発光光源装置に関する。【発明の効果】【0012】本発明の積層体は、光源装置に用いることで、両面発光し、両面の輝度を制御できる光源装置を得ることができる。本発明の光源装置は、両面発光し、両面の輝度を制御できる。」
「【0048】意匠層又は光拡散層14を設ける方法としては、例えば、光出射面側の最表面に意匠層又は光拡散層14をコーティング処理して設ける方法、光出射面側の最表面に意匠層又は光拡散層14を印刷処理して設ける方法、光出射面側の最表面に粘着層をコーティング処理し意匠層又は光拡散層14をラミネーションする方法、光出射面側の最表面に粘着層を有する意匠層又は光拡散層14をラミネーションする方法等が挙げられる。これらの意匠層又は光拡散層14を設ける方法の中でも、生産性に優れることから、光出射面側の最表面に粘着層を有する意匠層又は光拡散層14をラミネーションする方法が好ましい。コーティング処理の方法としては、前述した方法が挙げられる。印刷処理の方法としては、前述した方法が挙げられる。【0049】粘着層は、透明性の高い材料で、密着させる層に対する密着性に優れる材料であれば、使用目的等に応じて適宜選択することができる。粘着層の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの粘着剤の中でも、密着性に優れることから、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤が好ましい。【0050】粘着層の厚さは、積層体10を屈曲させても変形することが少なく、積層体10の取り扱い性に優れることから、1~500μmが好ましく、3~100μmがより好ましい。」
(カ) 周知技術1の認定
引用文献2のコーティング層(120)は、ディスプレイ部等を保護し、高硬度を有してなることから、ハードコート層を構成するものと認められる。
したがって、前記(ア)に摘記した引用文献2の記載及び前記(イ)aに摘記した引用文献13の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「基材の一方の面にハードコート層を有し、他方の面に粘着層を有する表示装置用表面保護フィルム。」
(キ) 技術常識2の認定
前記(ウ)に摘記した引用文献14の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)
[技術常識2]
「ディスプレイの薄型化のためにディスプレイ用光学部材の粘着剤層を薄くしようとすること。」
(ク) 技術常識3の認定
前記(エ)及び(オ)に摘記した引用文献15及び引用文献16の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識3」という。)
[技術常識3]
「フレキシブルディスプレイ用光学フィルムに用いられる粘着剤層の厚さを、その接着性及び変形などの屈曲耐性の観点に基づいて調整すること。」
(ケ) 技術常識4の認定
前記(イ)b及びcに摘記した引用文献13の記載によれば、ディスプレイ用のハードコートフィルムの粘着剤層の膜厚を調整し、一定の膜厚以下とすることでハードコートフィルムの硬度の低下を抑制していることが読み取れる。
したがって、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識4」という。)
[技術常識4]
「表示装置用表面保護フィルムの表面硬度の維持のために粘着剤層を薄くしようとすること。」
エ 引用文献17に記載された事項、周知技術2、技術常識5の認定
(ア) 引用文献17に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2013-231195号公報(以下「引用文献17」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0030】本発明のポリエステルフィルムを光学フィルム用途に用いる場合の好ましい極限粘度の範囲は、物性、生産性の観点から0.580~0.650dl/gであり、太陽電池用に用いる場合は耐久性の点からは、固相重合により高分子量化したポリエステルや、低酸価のポリエステルを用いることも好ましい。固相重合によりポリエステルを高分子量化する場合、固有粘度は0.65~0.80dl/gであることが高度な耐熱性、耐加水分解性を得るためには好ましく、より好ましくは0.70~0.75dl/gである。なお、ポリエステルの固有粘度は、ポリエステルをパラクロロフェノール(6質量部)と、1,1,2,2-テトラクロルエタン(4質量部)の混合溶媒に溶解し、30℃で測定することができる。また、本発明のポリエステルフィルムの好ましい酸価は、25eq/ton以下である。」
「【0070】実施例1(ポリエステル組成物の重合)エステル化反応装置として、攪拌装置、蒸留塔、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用し、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。【0071】次に、上第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対し8重量%添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。【0072】次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、生成PETに対してMg原子が25ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してK原子が10ppmとなる量の酢酸カリウムを含むEG溶液、および生成PETに対してP原子が9ppmとなる量のDEPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。なお、添加剤の歩留まりはすべて100%として添加量を決定した。【0073】上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、目開き5μmの焼結繊維フィルターで濾過後に、極限粘度0.620dl/gのペレット状PET(A)(ポリエステル組成物A)を得た。」
「【0084】実施例7実施例1で得られたペレット状PET(A)を回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で固相重合を行い、固有粘度0.73dl/gのペレット状PET(G)を得た。次いでペレット状PET(G)を用い、接着性改質層は設けず、コロナ処理を行った以外は実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。」
(イ) 周知技術2の認定
前記(ア)に摘記した引用文献17の記載において、「固相重合により高分子量化」とあるところ、「真空」が「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」(JIS Z 8126-1を参照)を意味することに鑑みれば、「0.5mmHg」は「真空」であると認められる。
したがって、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術2」という。)
[周知技術2]
「真空条件下で固相重合を行い、ペレット状PETを得て、これを用いてポリエステルフィルムを得ること。」
(ウ) 技術常識5の認定
前記(ア)に摘記した引用文献17において、「固相重合により高分子量化」し、実施例においては、極限粘度を「0.62dl/g」(実施例1)から「0.73dl/g」(実施例7)まで高くすることが記載されており、当該記載から固相重合によりポリエステルの極限粘度を上げていると認められる。
したがって、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識5」という。)
[技術常識5]
「ポリエステルを固相重合することにより極限粘度を上げることができること。」
オ 引用文献3、引用文献4に記載された事項及び技術常識6の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2010-214675号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】【0001】本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)用途として好適に用いられる光学用積層ポリエステルフィルムに関するものであって、光学特性に優れ、光学製品の品質向上や消費エネルギー低減に寄与することができる光学用ポリエステルフィルムに関する。」
「【0015】本発明のポリエステルフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが必要であり、好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。フィルムの全光線透過率が85%未満であると、高度な透明性を必要とする光学用途には使用できなくなる。また、各波長の光線透過率が下記式を満たすことを必要とする。ΔT=TA-TB≧-1%(上記式中、TAは波長500~600nmにおける光線透過率の平均値、TBは波長700~800nmにおける光線透過率の平均値である)」
(イ) 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2011-140543号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】【0001】本発明は、密着性と耐湿熱性に優れた易接着性熱可塑性樹脂フィルムに関する。詳しくは、ディスプレイなどに主として用いられる、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズム状レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルムなどの機能性フィルムの基材として好適な易接着性熱可塑性樹脂フィルムに関する。」
「【0019】また、フィルムの滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善するために、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を含有させる場合がある。しかしながら、光学用部材の基材フィルムとして用いる場合は、高度な透明性を維持しながらハンドリング性に優れていることが要求される。具体的には、光学用部材の基材フィルムとして使用する場合、易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、89%以上がよりさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。」
(ウ) 技術常識6の認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献3及び引用文献4の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識6」という。)
[技術常識6]
「ディスプレイ用光学フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムとして高度な透明性を有するものを採用し、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいこと。」
カ 引用文献6に記載された事項及び技術常識7の認定
(ア) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用し、本願の出願前に発行された文献である特開2014-238614号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】【0001】本発明は、ディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用されるハードコートフィルムに関するものである。」
「【0031】本発明のハードコートフィルムについて図面を参照して説明する。図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、ハードコートフィルム1は、基板2と、基板2上に形成されたハードコート層3とを有している。ハードコート層3は、異形シリカ微粒子と、重量平均分子量およびアクリル当量が所定の範囲内であるアクリル系ポリマーと、マトリクス樹脂とを含有している。すなわち、ハードコート層3は、反応性異形シリカ微粒子と、重量平均分子量およびアクリル当量が所定の範囲内であるアクリル系ポリマーと、モノマーとを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物から構成されている。以下、本発明のハードコートフィルムにおける各構成について説明する。」
「【0132】ハードコート層は光透過性を有するものである。ハードコート層の可視光領域における透過率としては、具体的には、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。上記透過率が上記範囲であることにより、光透過性に優れたハードコート層を形成することができるからである。ここで、ハードコート層の透過率は、JISK7105で規定する方法により測定した全光線透過率とする。」
(イ) 技術常識7の認定
前記(ア)に摘記した引用文献6の記載に例示されるように、次の事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識7」という。)
[技術常識7]
「ディスプレイ用ハードコートフィルムのハードコート層として、光透過性に優れたものを採用し、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいこと。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「積層ポリエステルフィルム」は、「折り畳み可能な表示装置」の「前面のカバーフィルムとして好適に用いられる」ものであるから、本件補正発明の「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」に相当する。
したがって、「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」の発明である本件補正発明と「折り畳み可能な表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いられる積層ポリエステルフィルム」の発明である引用発明は、「折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」の発明である点で一致する。
b(a) 引用発明の「ポリエステルフィルム」の厚みは25μmであって、本件補正発明の「25~75μm」の範囲に含まれるから、本件補正発明と引用発明は、「厚みが25~75μmであ[る]」ポリエステルフィルムを有する点で一致する。
(b) 引用発明において、「ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解して測定したポリエステルフィルムの極限粘度は0.69以上0.9dl/g以下」である。
これに対して、本件補正発明においては、本願明細書の段落【0051】に記載されるように、「フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒」を用いて極限粘度を評価している。
ここで、ポリエチレンテレフタレートの粘度数(極限粘度)の測定値は、測定に使用する溶媒によって異なり、測定溶媒に応じて、次の換算式が成立する(技術常識1参照)。
フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)(x)とフェノール/1, 1, 2, 2-テトラクロロエタン(60/40)(y)との間の換算式
y=0.83x+11.07 ・・・式A
フェノール/1, 2-ジクロロベンゼン(50/50)(x)とo-クロロフェノール(z)との間の換算式
z=0.82x+8.40・・・式B
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)を用いた測定値(y)とo-クロロフェノールを用いた測定値(z)の換算式は、式Aと式Bからxを消去することにより、次のものとなる。
y=1.01z+2.57 (z及びyの単位は[ml/g])・・・式C
これを、[dl/g]の単位を用いたZ及びYで表すと、次式のとおりとなる。
Y=1.01Z+0.0257 (Z及びYの単位は[dl/g])・・・式D
したがって、技術常識1を踏まえた換算式Dを用いることにより、引用発明におけるポリエステルの極限粘度の範囲である「0.69以上0.9dl/g」を本件補正発明の測定溶媒の条件下で評価したものに換算すると、「0.72以上0.93dl/g以下」となる。この範囲は、本件補正発明の「0.68~1.0dl/g」の範囲に含まれる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、ポリエステルフィルムの極限粘度が「0.68~1.0dl/g」である点で一致する。
(c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「厚みが25~75μmであり極限粘度が0.68~1.0dl/gであるポリエステルフィルム」を備える点で共通する。
c(a) 引用発明において、「積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層」を有しており、「硬化性樹脂を含有する層」は、「硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能」とするものであるから、本件補正発明の「ハードコート層」に相当する。
また、引用発明において、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せ[ている]」ところ、「硬化性樹脂を含有する層」の機能から有機エレクトロルミネッセンスパネルに適用する際に、当該「硬化性樹脂を含有する層」は最表面に位置し、ポリエステルフィルムの当該パネルに貼り合わせる際に用いるアクリル系粘着剤からなる層を設ける面側と反対面側に位置することは明らかである。
(b) さらに、引用発明において、「硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μm」であり、その厚みは本件補正発明のハードコート層の厚みである「1~40μm」の範囲に含まれる。
(c) そして、引用発明において、「積層ポリエステルフィルムの鉛筆硬度はH以上である」から、その最表面に設けられる硬化性樹脂を含有する層は、その鉛筆硬度がH以上であることは自明である。
(d) したがって、前記(a)から(c)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「ポリエステルフィルムの粘着剤からなる層を設ける面側と反対面側に、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度がH以上であるハードコート層が積層されている」点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後記の相違点において相違する。
a 一致点
「厚みが25~75μmであり極限粘度が0.68~1.0dl/gであるポリエステルフィルムを有し、ポリエステルフィルムの粘着剤からなる層を設ける面側と反対面側に、厚みが1~40μmであり鉛筆硬度がH以上であるハードコート層が積層されている折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム」である点。
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、「ポリエステルフィルムの一方の面側に、厚みが3~15μmである粘着層を有し」ているのに対し、
引用発明においては、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せるためのアクリル系粘着剤の厚さは20μm」であって、積層ポリエステルフィルム自体が「粘着層」を有しているとはいえず、また、ディスプレイパネルに貼り合わせるために用いる「粘着剤」の厚さが20μmであり、「3~15μm」の数値範囲の上限を超えている点。
(b) 相違点2
本件補正発明においては、「ポリエステルフィルムは、真空条件下での重合により得られたペレットから形成されたフィルムであ[る]」のに対し、
引用発明においては、このような限定はない点。
(c) 相違点3
本件補正発明においては、ポリエステルフィルムが「全光線透過率が87%以上である」のに対し、
引用発明においては、ポリエステルフィルムの全光線透過率について明示されていない点。
(d) 相違点4
本件補正発明においては、ハードコート層が「全光線透過率が87%以上である」のに対し、
引用発明においては、硬化性樹脂を含有する層の全光線透過率について明示されていない点。
イ 判断
前記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 粘着層の構成について
「基材の一方の面にハードコート層を有し、他方の面に粘着層を有する表示装置用表面保護フィルム」は、本願の出願前において周知技術である(「周知技術1」を参照)。したがって、引用発明は、積層ポリエステルフィルムを「粘着剤」を介してディスプレイパネルに貼り合わせているが、前記周知技術1を採用し、予め積層ポリエステルフィルムの構成として、硬化性樹脂を含有する層の反対側の面に粘着層を配することは当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
b 粘着層の厚みについて
(a) ディスプレイの薄型化のためにディスプレイ用光学部材の粘着剤層をミクロンオーダーであっても薄くしようとすることは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識2」を参照)から、引用発明における粘着剤の厚さの20μmについて、その厚さを、例えば1/2~1/4程度薄くした値である10~15μmの厚さを目指すことは、当業者にとっては強いインセンティブがあるというべきである。すなわち、相違点1に係る粘着層の厚みの範囲の「3~15μm」は、当業者が試みることが強く動機付けられる数値範囲である。
(b) 本願の明細書の段落【0040】に「粘着層の膜厚としては、1~25μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。1μmより厚ければ十分な粘着力を有し、屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く好ましい。25μmより薄ければ屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることが無いため好ましい。」と記載されているように、本件補正発明の粘着層の厚みの下限値は十分な粘着力を有すること、その上限値は屈曲した際の粘着剤の変形を抑えることを目的に定めたものである。
この点について以下検討すると、フレキシブルディスプレイ用光学フィルムに用いられる粘着剤層の厚さを、その接着性及び変形などの屈曲耐性の観点に基づいて調整することは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識3」を参照)から、十分な粘着力を持つ値にすべきことは、当業者の当然の配慮事項にすぎず、3μmの下限値を設けることに格別の技術的意義は認められない。
また、表示装置用表面保護フィルムの表面硬度の維持のために粘着剤層を薄くしようとすることは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識4」を参照)。したがって、粘着剤層の上限値である15μmを選択することは当業者が適宜なし得ることにすぎず、また、前記技術常識3を踏まえると、「屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられる」という効果も格別のものではない。
c 小括
以上検討のとおり、相違点1に係る技術事項は、格別なものではない。
(イ) 相違点2について
a(a) ポリエステルフィルムについて、「前記ポリエステルフィルムは、真空条件下での重合により得られたペレットから形成されたフィルムであ[る]」と特定することが、物の発明としてのどのような技術的特徴を特定しようとしているのかについて、まず検討する。
(b) 本願の明細書には、ポリエステルフィルムを前記の製造方法により製造されるものに特定することにより物の発明としてどのような特徴を特定しようとしているのかを説明する明示の記載はない。ただし、関連する記載としては、次の記載がある。なお、下線は合議体による。
「【0059】(ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の調製)エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(a)を得た。【0060】続きを表示(全17行)(ポリエチレンテレフタレートペレット(b)の調製)ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の製造工程について、第3エステル化反応の滞留時間を調節した他は同様の方法にて極限粘度を0.580dl/gに調整し、ポリエチレンテレフタレートペレット(b)を得た。【0061】(ポリエチレンテレフタレートペレット(c)の調製)ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(c)を作成した。【0062】(ポリエチレンテレフタレートペレット(d)の調製)ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(d)を作成した。【0063】(ポリエチレンテレフタレートペレット(e)の調製)ポリエチレンテレフタレートペレット(a)を、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.83dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(e)を作成した。【0064】上記のポリエチレンテレフタレートマスターペレット(a)を180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に、ポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を押出機にそれぞれ供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸した。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて幅方向に95℃で4.2倍延伸し、220℃にて5秒間熱処理し、表1のNo.1のポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。上記と若干の条件調整を行った他はほぼ同様の工程に、ポリエチレンテレフタレートマスターペレット(b)~(e)を供給し、表1のNo.1~7のポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。」
(c) 前記(b)に摘記した本願の明細書の記載を参酌すると、ペレットを真空条件下での重合により得ているのは、極限粘度を制御する(上げる)ためであることが推測される。
b(a) 前記aの検討を踏まえると、本件補正発明においては、その極限粘度が「0.68~1.0dl/g」と既に特定されているから、「真空条件下での重合により得られたペレットから形成」することを特定しても、かかる特定によっては、何ら付加的に技術的特徴を特定するものではなく、相違点2は実質的な相違点ではない。
(b) 仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、真空条件下で固相重合を行い、ペレット状PETを得て、これを用いてポリエステルフィルムを得ることは、本願の出願前において周知技術であるから(「周知技術2」を参照)、引用発明において当該周知技術2を用いて、相違点2に係る事項を導き出すことは当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
なお、ポリエステルを固相重合することにより極限粘度を上げることができることは、技術常識(「技術常識5」を参照)でもある。
c(a) 請求人は、令和4年3月17日に提出された意見書において、次の点を主張している。
本願発明においては、真空条件下で重合したペレットを用いることで、具体的なメカニズムは解析されていないが、ポリエステルフィルムの分子配向を制御でき、高い屈曲性に寄与することが可能となったものと推測できる。
(b) 請求人の主張について検討すると、真空条件下で重合したペレットを用いることで、ポリエステルフィルムの分子配向を制御できることは、明細書には開示がないから、物の発明の技術的特徴としては認めることができない。
また、仮に請求人の主張する点が相違点であったとしても、前記b(b)に検討したとおり、真空条件下で固相重合を行い、ペレット状PETを得て、これを用いてポリエステルフィルムを得ることは、本願の出願前において周知技術であるから、相違点2について想到することが容易であることに変わりなく、進歩性が認められないとの結論を左右するものではない。
(ウ) 相違点3について
ディスプレイ用光学フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムとして高度な透明性を有するものを採用し、例えば全光線透過率を90%以上のものを使用することが好ましいことは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識6」を参照)。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点3が実質的な相違点であったとしても、前記技術常識6を踏まえると、ポリエステルフィルムとして高度な透明性を有するものを採用することは当業者であれば当然なすべきことであって、「全光線透過率が87%以上である」ものを採用することは、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
(エ) 相違点4について
ディスプレイ用ハードコートフィルムのハードコート層として、光透過性に優れたものを採用し、例えば全光線透過率が90%以上のものを使用することが好ましいことは、本願の出願前において技術常識である(「技術常識7」を参照)。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点4が実質的な相違点であったとしても、前記技術常識7を踏まえると、ハードコート層として光透過性に優れたものを採用することは当業者であれば当然なすべきことであって、「全光線透過率が87%以上である」ものを採用することは、当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
(オ) 総合評価
前記(ア)から(エ)において検討したとおり、引用発明において相違点1から相違点4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1から相違点4を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、2、技術常識1~7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張等について
(ア) 審判請求書の主張について
a 審判請求書の主張内容
審判請求書において請求人は、概略次の(a)及び(b)の主張をしている。
(a) 引用文献1には、ポリエステルフィルムの全光線透過率、ハードコート層の全光線透過率、粘着層に関して記載されていない。また、引用文献2には、ポリエステルフィルムの極限粘度、折りたたみ型であること、ポリエステルフィルムやハードコート層の全光線透過率に関して記載されていない。
したがって、引用文献1の発明に引用文献2の発明を適用したとしても本願発明にはならない。
(b) 本件補正発明の構成を備えることで、表面保護フィルムは繰り返し折りたたんだ後に折りたたみ部分に表示される画像に乱れを生じるおそれがないという効果を奏する。
また、粘着層に関して、本件補正発明の構成を備えることで、屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く、屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることがない。
以上のような作用効果に関して引用文献1、2には何らの示唆もなく、引用文献1、2に記載された発明から予測することができない効果であるといえる。
b 請求人の主張についての検討
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(a) 主張(a)について
請求人の前記a(a)の主張について、前記イにおいて説示したとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、2、技術常識1~7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求人の前記a(a)の主張は採用できない。
(b) 主張(b)について
請求人の前記a(b)の主張について、「表面保護フィルムは、繰り返し折りたたんだ後に折りたたみ部分に表示される画像に乱れを生じるおそれがない」という効果は、本願の明細書の段落【0009】、【0010】を参照すると、「1.厚みが10~75μmであり、極限粘度が0.65~1.0dl/gであるポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有する折りたたみ型ディスプレイ用表面保護フィルム。」の構成を備えることによって達成される効果である。
ここで、「厚みが10~75μmであり、極限粘度が0.65~1.0dl/gであるポリエステルフィルム」の構成は、前記アにおいて説示したとおり、引用発明においても備える構成であり、「ポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有する」こと自体は前記効果に寄与するものではないことに鑑みると、前記効果は引用発明においても自ずと備える効果にすぎず、格別なものとは認められない。
また、粘着層に関して「屈曲した場合にも浮き剥れすることが無く、屈曲した際の粘着剤の変形が抑えられ、画像の乱れを生じることがない」との効果については、前記イ(ア)bにおいて説示したとおり、格別なものとは認められない。
以上から、請求人の前記a(b)の主張は採用できない。
(イ) 上申書補正案について
請求人は、令和5年4月19日に提出された上申書(以下、単に「上申書」という。)において、次のaに示す補正案を示しているが、bにおいて検討するように補正案では進歩性を有すると認められない。
なお、本補正案は、令和4年8月5日に提出された上申書に記載された補正案より更に限定するものであるから、前記令和5年4月19日に提出された上申書の補正案のみを検討する。
a 上申書の補正案の内容は、本件補正発明に対し、次の事項を限定するものである。
(a) ポリエステルフィルムを「ポリエチレンテレフタレートフィルム」に限定すること。
(b) ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みの下限値を「50μm」とすること。
(c) ポリエチレンテレフタレートフィルムの極限粘度の下限値を「0.73」とすること。
(d) 粘着層をアクリル系粘着剤で形成すること。
(e) ハードコート層の鉛筆硬度を「2H以上」とし、アクリル系樹脂又はポリエステルアクリレート系樹脂で形成すること。
b 上記補正案について検討する。
(a) 前記a(a)の特定事項について、引用文献1には、ポリエステルフィルムの材料としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが記載されており、適宜採用し得る材料にすぎない(段落【0055】、【0061】)。当該材料を採用することによる格別な効果も認められない。
(b) 前記a(b)の特定事項について、引用文献1の段落【0012】に、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点より、ポリエステルフィルムの厚みを「15μm以上100μm」以下とすることが記載されており、当該特定事項の「50μm」を下限値とする範囲を含むものである。そして、耐傷性の観点から厚さを一定以上とすることは自明の課題であるから、その下限値を「50μm」とすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
なお、ポリエステルフィルムの厚さを「50μm」以上とすることの臨界的意義は、本願の明細書には記載されていない。
(c) 前記a(c)の特定事項について、引用文献1の段落【0010】に、繰り返し屈曲させた際の残存歪みを低減させるためにポリエステルフィルムの固有粘度(極限粘度)を高くすることが記載されており、その下限値を当該特定事項の「0.73」とすることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
なお、ポリエステルフィルムの極限粘度を「0.73」以上とすることの臨界的意義は、本願の明細書には記載されていない。
(d) 前記a(d)の特定事項について、引用文献13の段落【0088】に、粘着剤としてアクリル系の粘着樹脂を用いることが記載されているように周知の構成にすぎず、当業者であれば適宜採用し得る材料にすぎない。
当該材料を採用することによる格別な効果も認められない。
(e) 前記a(e)の特定事項について、引用文献1の段落【0079】に示される実施例においては、耐傷性がAの評価(鉛筆硬度が3H以上であった。)であるものが得られており、その硬化性樹脂を含有する層についても鉛筆硬度が3H以上であることは自明である。
また、引用文献1の段落【0013】には、硬化性樹脂として多官能アクリレート系樹脂を用いることが記載されており、アクリル系樹脂を採用することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
当該材料を採用することによる格別な効果も認められない。
(4) 独立特許要件の判断についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否のまとめ
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和4年3月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如)
本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.韓国公開特許第10-2017-0024662号公報
3 引用文献に記載された事項
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明のうち、下記アからウの限定を省いたものである(前記第2の2参照)。
ア 「ポリエステルフィルム」について、
(ア) 厚みの下限値を「10[μm]」から「25[μm]」に切り上げて厚みの範囲を「10~75μm」の範囲から「25~75μm」の範囲に限定し、
(イ) 極限粘度の下限値を「0.65[dl/g]」から「0.68[dl/g]」に切り上げて極限粘度の範囲を「0.65~1.0[dl/g]」から「0.68~1.0[dl/g]」の範囲に限定するとともに、
(ウ) 「全光線透過率が87%以上である」ものに限定すること。
イ 「粘着層」について、「厚みが3~15μm」であるものに限定すること。
ウ 「ポリエステルフィルム」の「粘着層」を有する面側と反対面側に、「厚みが1~40μmであり鉛筆硬度がH以上であり全光線透過率が87%以上であるハードコート層が積層されている」ものに限定すること。
(2) そうすると、技術常識1を参酌しつつ検討した前記第2の3(3)アにおける検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の相違点A及び相違点Bにおいて相違すると認められる。
ア 相違点A
本願発明においては、「ポリエステルフィルムの一方の面側に粘着層を有し」ているのに対し、
引用発明においては、「積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネルを、それぞれアクリル系粘着剤を介して有機エレクトロルミネッセンスパネルの視認側に貼り合せる」のであって、積層ポリエステルフィルム自体が「粘着層」を有しているとはいえない点。
イ 相違点B
本願発明においては、「ポリエステルフィルムは、真空条件下での重合により得られたペレットから形成されたフィルムであ[る]」のに対し、
引用発明においては、このような限定はない点。
(3)ア 相違点Aは前記第2の3(3)ア(イ)b(a)の相違点1に包含される構成であるところ、前記第2の3(3)イ(ア)aにおいて検討したのと同様に、相違点Aは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
イ 相違点Bは前記第2の3(3)ア(イ)b(b)の相違点2と同等のものであるところ、前記第2の3(3)イ(イ)において検討したのと同様に、相違点Bは、実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点であったとしても、引用発明、周知技術2及び技術常識5から当業者が容易に想到し得たものである。
ウ そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
エ したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1、周知技術2、技術常識1及び技術常識5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-010367