特許拒絶査定不服審判
2022-010024
慢性リンパ性白血病の治療を目的とするHDAC阻害剤単独またはBTK阻害剤との配合物
- 審判番号
- 2022-010024
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-554700
- 請求日
- 2022年06月29日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アセチロン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】エイチ リー モフィット キャンサー センター アンド リサーチ インスティテュート インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 松波 由美子
- 審判官 吉田 佳代子
- 審判官 岡山 太一郎
- 分類
- P18 .574-WZ (A61K) / P18 .575-WZ (A61K) / P18 .113-WZ (A61K) / P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-554700「慢性リンパ性白血病の治療を目的とするHDAC阻害剤単独またはBTK阻害剤との配合物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日国際公開、WO2017/184774、令和 1年 6月13日国内公表、特表2019-515909〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年4月19日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和3年 4月19日付け 拒絶理由通知書
同年10月25日 意見書及び手続補正書の提出
令和4年 2月21日付け 拒絶査定
同年 6月29日 審判請求書及び誤訳訂正書の提出
令和5年12月27日付け 当審による拒絶理由通知(最後)
令和6年 4月 8日 意見書及び手続補正書の提出
第2 令和6年4月8日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月8日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前(令和4年6月29日提出の誤訳訂正書)の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
治療有効量のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化1】
[図:0001415638000001.jpg]
またはその薬学的に許容される塩;あるいは
以下の化合物B:
【化2】
[図:0001415638000002.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
前記HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤が、それぞれ治療有効量以下の量で投与される、
医薬配合物。
【請求項2】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化3】
[図:0001415638000003.jpg]
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項3】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化4】
[図:0001415638000004.jpg]
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項5】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化5】
[図:0001415638000005.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、前記BTK阻害剤はイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項6】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化6】
[図:0001415638000006.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、前記BTK阻害剤はイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項7】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記BTK阻害剤が同じ製剤中にある、請求項1から6のいずれかに記載の医薬配合物。
【請求項8】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記BTK阻害剤が別個の製剤中にある、請求項1から6のいずれかに記載の医薬配合物。
【請求項9】
患者の慢性リンパ性白血病の治療に使用する、請求項1から6のいずれかに記載の医薬配合物。
【請求項10】
治療有効量のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化7】
[図:0001415638000007.jpg]
またはその薬学的に許容される塩;あるいは
以下の化合物B:
【化8】
[図:0001415638000008.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
前記HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤が、それぞれ治療有効量以下の量で投与される、
医薬組成物。
【請求項11】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化9】
[図:0001415638000009.jpg]
またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化10】
[図:0001415638000010.jpg]
またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化11】
[図:0001415638000011.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、前記BTK阻害剤はイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化12】
[図:0001415638000012.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、前記BTK阻害剤はイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項10から15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
患者の慢性リンパ性白血病の治療に使用する、請求項10から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。」
(2)補正後(令和6年4月8日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
上記(1)の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化1】
[図:0001415638000013.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
化合物Bとイブルチニブの比が3:1である、医薬配合物。
【請求項2】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の医薬配合物。
【請求項3】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記BTK阻害剤が同じ製剤中にある、請求項1または2に記載の医薬配合物。
【請求項4】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記BTK阻害剤が別個の製剤中にある、請求項1または2に記載の医薬配合物。
【請求項5】
患者の慢性リンパ性白血病の治療に使用する、請求項1または2に記載の医薬配合物。
【請求項6】
ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬組成物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化2】
[図:0001415638000014.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
化合物Bとイブルチニブの比が3:1である、医薬組成物。
【請求項7】
配合物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
患者の慢性リンパ性白血病の治療に使用する、請求項6または7に記載の医薬組成物。」
2 補正の目的の適否(特許法第17条の2第5項違反の有無)について
(1)本件補正は、以下の補正を含むものである。
ア 補正前の請求項1及び10(補正後の請求項1及び6に対応する。)に記載された2つのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤(以下「HDAC6選択的阻害剤」という。)のうち、化合物Aを削除する補正。
イ 補正前の請求項1及び10(補正後の請求項1及び6に対応する。)に存在した「治療有効量の」及び「前記HADAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤が、それぞれ治療有効量以下の量で投与される」という記載を削除し、投与量について、新たに「化合物Bとイブルチニブの比が3:1である」と規定する補正。
ウ 補正前の請求項2、3、5、6、11、12、14及び15を削除し、これに伴い、残る請求項7~9、13~25(補正後の請求項3~5、7~9に対応する。)において引用する請求項を変更する補正。
エ 補正前の請求項13(補正後の請求項7に対応する。)において、新たに「配合物が」という記載を追加する補正。
(2)次に、補正の目的について検討する。
ア 上記(1)アの補正について
上記(1)アの補正は、補正前の請求項中に存在した2つの選択肢の1つに限定する補正であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
イ 上記(1)イの補正について
上記(1)イの補正は、令和5年12月27日付けの当審による拒絶理由通知書の理由3(特許法第36条第6項第2号)において、不明確と指摘された記載を削除し、新たに「化合物Bとイブルチニブの比が3:1である」と規定するものである。
しかしながら、「釈明」とは、明りょうでない記載の不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることであるところ、拒絶理由で指摘された「治療有効量」及び「それぞれ治療有効量以下の」という記載を単に削除したところで、その記載本来の意味内容が明らかとなるわけではない。また、投与量が「化合物Bとイブルチニブの比が3:1である」と特定されても、化合物B及びイブルチニブの投与される量自体が明確に特定されるものではないから、補正前に不明確と指摘された「治療有効量」及び「治療有効量以下の量」という記載が明りょうになるものではない。
したがって、上記(1)イの補正は、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的するものとはいえない。
また、補正前の特許請求の範囲には、「化合物Bとイブルチニブの比」に関する記載はなく、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえないため、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。
さらに、上記(1)イの補正は、請求項の削除及び誤記の訂正を目的とするものではない。
ウ 上記(1)ウの補正について
上記(1)ウの補正は、請求項の削除と、残る請求項における引用関係を整合させることを目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものである。
エ 上記(1)エの補正について
上記(1)エの補正は、補正前の請求項13及び補正前の請求項13において引用する請求項10には存在していない「配合物」という記載を追加するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。
また、上記(1)エの補正は、拒絶理由通知書において指摘された拒絶理由について補正をするものではなく、補正後の請求項7が引用する請求項6は「医薬組成物」の発明であって、「配合物」という記載を追加することによって、却って「医薬組成物」と「配合物」との関係が不明確となるものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的するものともいえない。
さらに、上記(1)エの補正は、請求項の削除及び誤記の訂正を目的とするものでもない。
(3)小括
したがって、上記(1)イ及びエの補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものとも認められない。
よって、上記補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものである。
3 独立特許要件の充足性(特許法第17の2第6項)について
仮に、上記2(1)イ及びエの補正が特許法第17条の2第5項の規定に適合するものと認めた場合、本件補正後の請求項1に係る発明は、上記2(2)で説示したとおり、同項第2号に該当する補正がなされたものであるから、以下に、独立特許要件について検討する。
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、 前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化1】
[図:0001415638000015.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
化合物Bとイブルチニブの比が3:1である、医薬配合物。」
(2)引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1に記載された事項
当審による拒絶理由において引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献1は外国語の文献であるため、引用文献1に対応するファミリー出願である特表2016-536354号公報の記載を翻訳文として摘記し、摘記箇所については引用文献1の記載箇所を示す。また、下線は当審合議体によって付したものである。
(ア)「【請求項21】
HDAC阻害剤またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を含む組み合わせを投与することによって癌細胞の細胞生存度を低下させるための方法。」(請求項21)
(イ)「【0008】
いくつかの実施形態において、組成物及び組み合わせは、細胞生存度を減少させ、細胞のアポトーシスを相乗的に増加させ、細胞におけるカスパーゼ3の切断を相乗的に増加させ、及び細胞周期のG1/S期における細胞を相乗的に抑止する。
【0009】
具体的実施形態において、HDAC6特異的な阻害剤は、式Iの化合物:【化1】
[図:0001415638000016.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
R1は、アリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはOH、ハロまたはC1-6-アルキルによって任意に置換されてもよく;及び
Rは、HまたはC1-6-アルキルである。
・・・
【0017】
いくつかの実施形態において、HDAC阻害剤は、薬学的に許容される担体と共に投与される。その他の実施形態において、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の組み合わせは、薬学的に許容される担体と共に投与される。
【0018】
いくつかの実施形態において、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤は、別々の剤形で投与される。その他の実施形態において、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤は、単一の剤形で投与される。
・・・
【0027】
本発明は、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤及びBTK阻害剤を含む組み合わせを投与することによって癌細胞の細胞生存度を低下させる方法に関する。好ましくは、HDAC阻害剤は、HDAC6特異的な阻害剤である。好ましくは、BTK阻害剤は、イブルチニブである。」(2頁5行~6頁7行)
(ウ)「【0050】
式Iの代表的化合物は、以下を含むが、限定されない:
【表1】
[図:0001415638000017.jpg]
または、その薬学的に許容される塩。
【0051】
式Iに従った選択的なHDAC6阻害剤の調製及び特性は、国際特許出願第PCT/US2011/021982号において提供され、その全内容が参照により本明細書に援用される。」(11頁1~5行)
(エ)「【0083】
いくつかの実施形態において、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の1つまたは両方は、治療上有効な量または投薬量で投与される。「治療上有効な量」は、それ自体が患者に投与されるときに、非ホジキンリンパ腫を効率的に治療する、HDAC6特異的な阻害剤(式IまたはIIの化合物)またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の量である。所与の例において、特定の被験体のために「治療上有効な量」であると判明する量は、このような投薬量が熟練した開業医による「治療上有効な量」とみなされる場合であっても、考慮中に疾患または状態のために同じように治療される100%の被験体に有効でなくてもよい。治療上有効な量に相当する化合物の量は、癌のタイプ、癌のステージ、治療される患者の年齢及びその他の事実に強く依存する。一般に、これらの化合物の治療上有効な量は、当該技術分野において周知であり、上で引用した支持参照文献において提供される。
【0084】
その他の実施形態において、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の1つまたは両方は、治療量以下の有効な量または投薬量で投与される。治療量以下の有効な量は、それ自体が患者に投与されるときに、長い間意図された標的の生物学的活性を完全に阻害しない、HDAC阻害剤(たとえば、式IまたはIIの化合物)またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の量である。」(19頁15~33行)
(オ)「【0147】
実施例9:HDAC阻害剤及びBTK阻害剤の組み合わせは、CLL細胞の生存度を相乗的に減少させる
Mec1及びWac3 CLL細胞を2μMの化合物A(一定の濃度)及びBTKiイブルチニブの異なる濃度で72時間処理した。次に、細胞生存度をCellTiter-Blue試薬(Promega)を使用して評価した。これらの実験の結果を図7に示す。結果は、両方の株化細胞がそれぞれ2μM及び1μMで化合物A及びイブルチニブの組み合わせと相乗作用で細胞死滅に到達することを示す。」(34頁2~9行)
(カ)「
[図:0001415638000018.jpg]
」(図7)
(キ)「【図7】2μM化合物A及び1μMイブルチニブ(上部)または2μM化合物A及び2μMイブルチニブ(下部)でMec1(上部)及びWac3(下部)慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞の処理の生存度に対する効果を示す。いずれの株化細胞の組み合わせ処理も、CLL細胞生存度において相乗的減少を生じた。」(7頁22~25行)
イ 引用発明
引用文献1には、上記ア(ア)及び(イ)のとおり、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)6阻害剤とブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を組み合わせることにより、癌細胞の生存度を減少させること、及び、HDAC6選択的阻害剤とBTK阻害剤は、薬学的に許容される担体と共に投与され、別々の又は単一の剤形で投与されることが記載され、また上記ア(ウ)のとおり、選択的なHDAC6選択的阻害剤の代表的な例として、2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)及び2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)が記載され、さらに、上記ア(オ)~(キ)のとおり、上記化合物AとBTK阻害剤であるイブルチニブとの組み合わせによる処理は、CLL細胞の生存度を相乗的に減少させられることが実験的裏付けをもって記載されている。
そうすると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「選択的なヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を含む、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の生存度を相乗的に減少させるための組み合わせであって、前記HDAC6阻害剤が2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)であり、前記BTK阻害剤がイブルチニブである組み合わせ。」
(3)対比
補正後発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「選択的なヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤」及び「イブルチニブ」は、補正後発明における「ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤」及び「イブルチニブまたはその薬学的に許容される塩」にそれぞれ相当する。
引用発明における「慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の生存度を相乗的に減少させるための」は、補正後発明における「それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための」に相当する。
また、引用発明における「組み合わせ」は、医薬である「HDAC6阻害剤とブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤」とを「組み合わせ」た物であるから、補正後発明における「医薬配合物」に相当する。
そうすると、補正後発明と引用発明とは以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「HDAC6選択的阻害剤、及びBTK阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である医薬配合物。」
<相違点1>
補正後発明では「HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物B:
【化2】
[図:0001415638000019.jpg]
またはその薬学的に許容される塩(以下「化合物B」という。)」であるのに対し、引用発明では「選択的なヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤」が「2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)(以下「化合物A」という。)」である点。
<相違点2>
補正後発明ではHDAC6選択的阻害剤である「化合物B」と「イブルチニブ」の「比が3:1である」ことが特定されるのに対し、引用発明では、HDAC6選択的阻害剤とイブルチニブの比が特定されていない点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
引用文献1は、「HDAC阻害剤及びBTK阻害剤を含む組み合わせを投与すること」(上記(2)ア(ア)及び(イ))が記載され、式IのHDAC6選択的阻害剤の代表的化合物として、2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)とともに、化合物Bとして2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(補正後発明における「化合物B」に相当)が挙げられ、その構造式から明らかなように、両者が極めて類似した化学構造を有することが示されるとともに、化合物BのIC50(合議体注:50%阻害濃度)が4nMであり、IC50が10nMである化合物Aに比べて、より強いHDAC6阻害活性を有することも示されている(上記(2)ア(ウ))。
上記記載に接した当業者であれば、引用発明において、BTK阻害剤と組み合わせるHDAC6選択的阻害剤として、実施例においてBTK阻害剤との組み合わせによる効果の確認された化合物Aと極めて類似した化学構造を持ち、より強いHDAC6阻害活性を有する化合物Bが、化合物Aと同等又はそれ以上の効果を奏することを期待して、化合物Aに換えて使用してみることは、容易に想到し得るものといえる。
ここで、上記(2)ア(エ)に記載されるように、HDAC6選択的阻害剤及びイブルチニブの「治療上有効な量に相当する化合物の量は、癌のタイプ、癌のステージ、治療される患者の年齢及びその他の事実に強く依存する」ものであるところ、化合物Bとイブルチニブの相乗作用等も勘案しつつ両薬剤の治療上有効な投与量、ひいては両薬剤の比を決定することは、技術の具体的適用に伴う設計的事項に過ぎないものといえる。
そして、本願明細書には化合物Bとイブルチニブを同時に投与した実施例はなく、「3:1」という比についても、「医薬配合物の一実施形態では、化合物BとBTK阻害剤の比は、700:1~1:40の範囲内である。医薬配合物の別の実施形態では、化合物BとBTK阻害剤の比は、2:1~1:2、例えば2:1、1:1もしくは1:2であるか、170:1~150:1、例えば170:1、160:1もしくは150:1であるか、3:1~1:1、例えば3:1、2:1もしくは1:1であるかまたは30:1~10:1、例えば30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。」(【0258】;下線は合議体が付した。)と、多数列挙される比の1例としてわずかに記載されるにとどまり、化合物Bとイブルチニブの比を3:1に特定することにより、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
審判請求人は、令和6年4月8日提出の意見書において、「引用文献1は、CLLを治療するための、HDAC6選択的阻害剤である化合物BとBTK阻害剤との組合せを記載も示唆もしていません。ましてや、引用文献1は、化合物Bとイブルチニブの比を3:1とすることを記載も示唆もしていません。」(4.理由2の11~14行目)と主張する。
しかしながら、上述のとおり、引用文献1には、化合物Aに限らず、HDAK阻害剤とBTK阻害剤との組み合わせを示唆する記載(上記(2)ア(ア)及び(イ))、及びHDAC6選択的阻害剤として化合物Bの使用を示唆する記載(上記(2)ア(ウ))があり、薬剤の比についても単なる設計的事項に過ぎないものであって、当業者が予測困難な格別顕著な効果を奏するものでもないことから、審判請求人の主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、補正後発明は引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものであり、かつ、仮に、同法第17条の2第5項各号に掲げる目的に該当するとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年6月29日提出の誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
治療有効量のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物A:
【化1】
[図:0001415638000020.jpg]
またはその薬学的に許容される塩;あるいは
以下の化合物B:
【化2】
[図:0001415638000021.jpg]
またはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩であり、
前記HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤が、それぞれ治療有効量以下の量で投与される、
医薬配合物。」
2 当審による拒絶理由
令和5年12月27日付けの最後の拒絶理由通知書において通知された本願発明に係る拒絶の理由の概要は以下のとおりのものである。
理由1(新規性):本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性):本願発明は、引用文献1に記載された発明及び記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3(明確性):この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、上記第2の2(2)ア及びイに記したとおりである。
(2)対比・判断
(ア)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「選択的なヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)阻害剤」、「2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)」及び「イブルチニブ」は、本願発明における「ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)選択的阻害剤」、「化合物A」及び「イブルチニブまたはその薬学的に許容される塩」にそれぞれ相当する。
引用発明における「慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の生存度を相乗的に減少させるための」は、本願発明における「それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための」に相当する。
また、引用発明における「組み合わせ」は、医薬である「HDAC6阻害剤とブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤」とを「組み合わせ」た物であるから、本願発明ほにおける「医薬配合物」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「HDAC6選択的阻害剤、及びBTK阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するための医薬配合物であって、
前記HDAC6選択的阻害剤が以下の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩であり、
前記BTK阻害剤がイブルチニブまたはその薬学的に許容される塩である医薬配合物。」
<相違点>
HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤が、本願発明では、「治療有効量」を含み、かつ「それぞれ治療有効量以下の量で投与される」ことが特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
まず、本願発明における「それぞれの治療有効量以下の量」は、「以下」と記載されるように、「それぞれの治療有効量」と等しい量の態様と、「それぞれの治療有効量」よりも少ない量の態様を包含するものである。
そして、医薬において治療有効量を投薬するのは当然であるから、本願発明において、HDAC6選択的阻害剤とBTK阻害剤とを、それぞれの治療有効量と等しい量で投与する態様については、上記相違点は実質的な相違点ではない。
次に、本願発明におけるHDAC6選択的阻害剤とBTK阻害剤とを、それぞれの治療有効量より少ない量で投与する態様について検討する。
一般に、医薬において、治療効果や副作用等を勘案して投薬量を好適化することは、当然に行われることであり、引用文献1には、上記第2の2(2)ア(エ)に示されるとおり、「治療上有効な量に相当する化合物の量は、癌のタイプ、癌のステージ、治療される患者の年齢及びその他の事実に強く依存する」こと、そして、「HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の1つまたは両方は、治療量以下の有効な量または投薬量で投与され・・・治療量以下の有効な量は、それ自体が患者に投与されるときに、長い間意図された標的の生物学的活性を完全に阻害しない、HDAC阻害剤(たとえば、式IまたはIIの化合物)またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の量である」ことが記載されており、「治療量以下の有効な量」で投薬することが示唆されているといえる。
さらに、引用文献1には、その実施例として、化合物Aとイブルチニブとの組み合せが、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の生存度を相乗的に減少させるという相乗効果を有することが示されている。
かかる引用文献1の記載に接した当業者にとり、両者を同時に投与すれば、それぞれを単独で投与する際の治療有効量よりも少ない量で同等の効果を発揮し得るものであることは明らかであるところ、引用発明において、化合物Aとイブルチニブの投与量について、それぞれ単独で投与する際の治療有効量より少ない量とし、化合物Aとイブルチニブの組み合わせとしては治療に有効な量となるように設定することは、技術の具体的適用に伴う単なる設計事項に過ぎない。
そして、本願発明の構成により奏される効果が、当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
加えて、審判請求人は令和6年4月8日提出の意見書において、上記拒絶理由について、何ら反論しなかった。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明と同一の発明であるか、引用発明及び引用文献1の記載に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 理由3(明確性)について
(1)本願発明は「治療有効量」及び「治療有効量以下の量」を特定事項として含むものであるが、これらの特定事項について、本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)を参照すると、以下の記載がある。なお、下線は合議体により付したものである。
「【0129】
・・・一部の実施形態では、それを必要とする対象の慢性リンパ性白血病を治療するHDAC阻害剤、または配合物において化合物の一方もしくは両方が単独で投与される時に有効ではないが、その量が併用する時に有効である投与量により投与される、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を含む配合物を提供する。」
「【0182】
一部の実施形態では、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の一方または両方は、治療有効量または薬用量で投与される。「治療有効量」は、単独で患者に投与したときに慢性リンパ性白血病を効果的に治療する、HDAC6選択的阻害剤(式IもしくはIIの化合物)またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の量である。特定の対象に与えられた事例で「治療有効量」であることが立証されている量は、たとえこのような投与量が当業者に「治療有効量」であるとみなされても、検討中の疾病または疾患について同様に処置された対象の100%に対して有効ではない場合がある。治療有効量に対する化合物の量は、がんの種類、がんのステージ、治療する患者の年齢、及びその他の事実に強く依存する。一般に、上記で引用した参考文献に提供されているようなこれらの化合物の治療有効量は、当技術分野で周知である。
【0183】
他の実施形態では、HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の1つまたは両方は、治療有効量以下の量または薬用量で投与される。治療有効量以下の量は、単独で患者に投与したとき、経時的に標的の生物学的活性を完全に阻害しないHDAC阻害剤(例えば、式IまたはIIの化合物)またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の量である。
【0184】
HDAC阻害剤及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の配合物は、治療量または治療量以下の量のどちらの投与においても慢性リンパ性白血病の治療に有効でなければならない。(例えば、治療量以下の量のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤は、式IまたはIIの化合物(HDAC6選択的阻害剤)と組み合わせたとき、その配合物が慢性リンパ性白血病の治療に有効である治療有効量であり得る。」
(2)判断
発明の詳細な説明における上記(1)の記載によれば、「特定の対象に与えられた」場合の「治療有効量」は、「がんの種類、がんのステージ、治療する患者の年齢、及びその他の事実に強く依存」して変動するものであるところ、本願発明における「治療有効量」は、このように患者によって変動しうる「治療有効量」を指すものとも、HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤に関して「当技術分野で周知」となっている「治療有効量」を指すものとも解釈できる。
そのため、本願発明において、「単独で投与したとき」の「治療有効量」及び「治療有効量以下の量」の解釈が多義的となり、発明を明確に把握することができない。
さらに、上述のとおり、患者によって治療有効量は変動するものであるところ、HDAC6選択的阻害剤とBTK阻害剤のそれぞれどの程度「(単独投与したときの)治療有効量」より少ない量で投与すれば、それぞれ単独では「治療有効量以下の量」が投与され、かつ「HDAC6選択的阻害剤及びBTK阻害剤」の併用では「治療有効量」になっているといえるのかも、明確に把握することができない。
そして、審判請求人は令和6年4月8日提出の意見書において、「治療有効量」及び「治療有効量以下の量」の解釈について、何ら釈明しなかった。
(3) まとめ
よって、本願発明は記載が不明確であるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、かつ、引用文献1に記載された発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、及び特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-010024