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特許拒絶査定不服審判

2022-009337

エアロゾル送達装置用の昇圧コンバータ

審判番号
2022-009337
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-506684外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月17日
審決日
2023年12月11日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-506684「エアロゾル送達装置用の昇圧コンバータ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日国際公開、WO2018/029605、令和 1年10月 3日国内公表、特表2019-527558〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

1.手続の経緯

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本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、2017年(平成29年)8月8日(優先権主張外国庁受理 2016年8月8日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和3年7月7付けで拒絶理由通知がされ、同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和4年2月16日付けで拒絶査定がされた。

これに対し、同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和5年3月23日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由」という。)がされ、令和5年9月25日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明

本願の請求項1~6に係る発明は、令和3年10月11日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
エアロゾル送達装置であって、
電圧出力を生成するように構成された電源と、
電気負荷及び電源の間の昇圧コンバータとを備え、昇圧コンバータが、エアロゾル送達装置がエアロゾル前駆体組成物からエアロゾルを発生させるために給電される、より高い電圧に電源の電圧出力を昇圧するように構成され、
昇圧コンバータが、電気負荷の状態に基づいて、より高い電圧がPWM電圧であるパルス幅変調(PWM)動作と、より高い電圧がPFM電圧であるパルス周波数変調(PFM)動作との間で昇圧コンバータが自動的に切替え可能である切替えモードで動作可能である、エアロゾル送達装置。」

3.当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

本件出願の請求項1~6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:中国実用新案第203070141号明細書(新たに追加する引用文献)
引用文献2:特開平6-311736号公報(周知技術として新たに例示する引用文献)
引用文献3:特開2003-219637号公報(周知技術として新たに例示する引用文献)
引用文献4:特開2009-254009号公報(周知技術として新たに例示する引用文献)

4.引用文献1に記載された事項及び引用発明

(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明

引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付したものである。以下同様。)。

ア「

[図:0001410639000001.jpg]

」

(当審訳)

「技術分野
[0001]実用新案は、電子たばこの技術分野に関し、特に、電子たばこの制御装置および電子たばこの出力電圧調整器に関する。」

イ「

[図:0001410639000002.jpg]

」

(当審訳)

「人々の身体の健康への関心が高まるにつれて、人々はタバコが人体に及ぼす害を認識し、電子タバコが生産されるようになった。電子タバコは、通常、煙の液体をアトマイザーで噴霧して使用するが、電子タバコを吸い始めると、タバコへの欲求は、徐々に小さくなる。既存の電子タバコは、電池で駆動され、使い捨て電子タバコは、通常非充電式電池を使用し、再利用可能な電子タバコは、通常充電式電池を使用するが、電池の種類に関係なく、通常、電池の出力電圧は、調整できないから、バッテリー電圧が高くなると、電子タバコの電熱線の温度が高くなり、使用時に発生する煙の量が増えるため、電圧を調整できない場合、電子タバコの電熱線の発熱量は、独自に調整することができないため、ユーザのニーズに応えられないことが多く、また、喫煙時には電熱線の温度が十分に高くないため、電子タバコの熱線の一部が発熱する。タバコの液体を完全に霧化することができないため、電子タバコがショートしたり、内部回路が焼損したりする可能性がある。また、バッテリーが満充電になるとバッテリーの電圧が最高値になるが、このとき負荷(電熱線)の抵抗は、一定であるため、両端にバッテリーの最大電圧が負荷されていれば、電熱線の電流が相対的に増加するため、電熱線が大電流に耐えないと電熱線が焼損するなどの悪影響が生じる。」

ウ「

[図:0001410639000003.jpg]

[図:0001410639000004.jpg]

」

(当審訳)

「[0018] 電子タバコは、バッテリー、アトマイザー、カートリッジ、及びバッテリーに接続された出力電圧調整装置を含み、電圧調整装置の出力端子はアトマイザーに電気的に接続される。
[0019] 上記のソリューションを採用し、実用新案が起動した後、ユーザは、自分のニーズと組み合わせて、ディスプレイモジュールに表示された電圧値に従って電圧値を調整するかどうかを決定する。具体的な調整プロセスは、入力モジュールを操作することにより、ユーザ定義の電圧信号が出力され、ユーザ定義の電圧信号を受信した後、制御モジュールが計算を実行し、パルス幅変調信号を出力電圧調整モジュールに出力して調整する。モジュールの出力電圧は、ユーザー定義の電圧値に調整される。実用新案は、ユーザのニーズに応じて特定の電圧範囲で出力電圧を調整し、電熱線の温度が十分に高くなく、煙の液体の一部が完全になくなるという状況を回避する。微粒化、または内部回路を焼損することさえあります。 また、電熱線に大電流が流れたときに電熱線が焼けるという悪影響を回避する。」

エ「

[図:0001410639000005.jpg]

[図:0001410639000006.jpg]

」

(当審訳)

「[0030] 図1および図3を参照すると、制御モジュール20は入力モジュールに接続され、制御モジュールは、入力モジュールによって出力される自己定義電圧信号を計算した後、パルス幅変調信号を出力する。・・・
[0031] 図1および図4を参照すると、出力電圧調整モジュール30は、制御モジュール20に接続され、制御モジュールによって提供されるパルス幅変調信号に従って、出力電圧調整モジュールの出力電圧をユーザ定義の電圧値に調整する。出力電圧調整モジュールは昇降圧コンバータU1を含み、昇降圧コンバータU1のスイッチピン12は制御モジュールの出力端子に接続され、昇降圧コンバータの基準電圧ピン3は制御モジュールのパルス幅変調信号出力端子に接続される。昇降圧コンバータU1の基準電圧ピン12の電圧は0.5Vで一定であるため、昇降圧コンバータU1のピン4の出力電圧はパルス幅変調信号によって変化し、ピン3は0.5Vで安定しているため、ユーザが入力したカスタム電圧信号を介して、制御モジュールが出力するパルス幅変調信号が昇降圧コンバーターU1の出力電圧を変化させる。」

オ「

[図:0001410639000007.jpg]

」

(当審訳)

「[0034] 図7を参照すると、本発明の電子タバコは、噴霧器、ポッド、およびバッテリーに接続された出力電圧調整装置を含み、電圧調整装置の出力端子は噴霧器に電気的に接続される。」

カ「

[図:0001410639000008.jpg]

」(図1)

キ「

[図:0001410639000009.jpg]

」(図4)

ク「

[図:0001410639000010.jpg]

」(図7)

以上から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている

(引用発明1)

「 電子タバコであって、
電子タバコは、バッテリー、アトマイザー、カートリッジ、及びバッテリーに接続された出力電圧調整装置を含み、出力電圧調整装置の出力端子はアトマイザーに電気的に接続され、
出力電圧調整装置は昇降圧コンバータU1を含み、出力電圧調整装置は、制御モジュールに接続され、制御モジュールによって提供されるパルス幅変調信号に従って、出力電圧調整装置の出力電圧をユーザ定義の電圧値に調整する、電子タバコ。」

(2)引用文献2に記載された事項

引用文献2は、次の事項が記載されている。

ア「【0027】図3は図2に示したDC/DCコンバータの動作波形を示す図であり、同図(a)は負荷が重いときの動作波形を示し、(b)は負荷が軽いときの動作波形を示しており、同図中の○1(当審注:○の中に「1」を意味する。以下同様。),○2の動作波形は、それぞれ図2中に示した○1,○2における動作波形である。次に、図3を参照して図2の実施例の動作を説明する。

【0028】負荷が重いときには、図3(a)に示すように、エラーアンプAMP(図9参照)の出力はノコギリ波のほぼ中間レベルにあり、コンパレータCMPは、図3(a)○1に示すように、ハイレベルとローレベルの期間が略等しいパルス信号を出力する。一方、最小オン幅設定部14は図3(a)○2に示すように、制御部11がパルス信号を発生したとき、ローレベルが予め定められた最小幅のパルス信号を出力する。

【0029】図2のダイオードD2,D3は制御部11と最小オン幅設定部14の出力するパルス信号の内、ローレベルにおけるパルス幅が広いパルス信号を選択し、スイッチング素子Q1に与える。負荷が重いときには、図3(a)に示すように、制御部11の出力パルス信号のローレベルの期間の方が、最小オン幅設定部14の出力パルス信号のローレベルの期間より長いので、スイッチング素子Q1は制御部11が出力するPWM信号により駆動され、その出力パルスがローレベルのときオンとなる。

【0030】上記のようにしてスイッチング素子Q1がオン/オフすることにより、前記したように、DC/DCコンバータの出力に直流電圧が発生する。また、負荷が軽いときには、図3(b)に示すように、エラーアンプAMP(図9参照)の出力は小さく、コンパレータCMPは、図3(b)○1に示すように、ローレベルの期間の幅が狭いパルス信号を出力する。

【0031】一方、最小オン幅設定部14は図3(b)○2に示すようにローレベルの幅が所定幅のパルス信号を出力しているので、制御部11が出力するパルス信号のパルス幅が最小オン幅設定部14が出力するパルス幅より狭くなると、図2のダイオードD2,D3は最小オン幅設定部14が出力するパルス信号を選択し、スイッチング素子Q1に与えスイツチング素子Q1をオン/オフする。

【0032】ここで、最小オン幅設定部14が出力するパルス幅は、制御部11が出力するDC/DCコンバータの設定出力値に対応した本来のPWM信号のパルス幅より広いので、エラーアンプAMP(図9参照)の出力は図3(b)に示すように、パルスが発生したのち出力が低下し、数サイクル後に再び上昇し、平均値として、DC/DCコンバータの出力が上記設定出力値になるように動作する。このため、コンパレータCMP(図9参照)は図3(b)に示すように、数サイクルおきにパルス信号を出力することとなる。

【0033】以上のように、DC/DCコンバータの出力が低電力時には、スイッチング素子Q1はノコギリ波の周波数より低い周波数でオン/オフし、前記したように、DC/DCコンバータの出力に直流電圧が発生する。本実施例においては、上記したように、最小オン幅設定部14を設け、DC/DCコンバータの出力が低電力時には、最小オン幅設定部14が出力するパルス信号によりスイッチング素子Q1をオン/オフしているので、PWM制御時におけるスイッチング周波数より低い周波数でスイッチング素子Q1が制御され、スイッチング・ロスを低下させることができる。」

イ「【図3】

[図:0001410639000011.jpg]

」

(3)引用文献3に記載された事項

引用文献3には、次の事項が記載されている

ア「【0001】

【発明の属する技術分野】この発明は、チョッパー型のDC-DCコンバータ回路に関し、特にコンバータに加わる負荷情報をドロッパー抵抗を用いずに検証するように構成すると共に、コンバータの駆動動作を緩慢に切換えることができるようになされたDC-DCコンバータ回路に関する。

【0002】

【従来の技術】チョッパー型のDC-DCコンバータ回路は、周知のように直流入力電圧を異なる直流電圧に変換するように機能し、多くの直流駆動回路の駆動電源として用いられている。このDC-DCコンバータ回路による出力電圧は、あらかじめ定められた所定の電圧値に安定していることが望ましく、その出力電圧を所定の範囲に保つための制御方法として、一般に2つの方法が知られている。その1つはPFM(pulse frequency modulation=周波数変調)方式であり、他の1つはPWM方式(pulse width modulation=パルス幅変調)である。

【0003】前記したPFM方式には、コンバータ出力電圧を制御するスイッチング素子に与える駆動信号を連続的に変化させる純粋なPFM方式と、駆動信号を生成する場合のタイミング(基本周波数)は一定で、コンバータの出力電圧に応じてスイッチング素子に与える駆動信号を生成するか、駆動信号を生成せずにスキップさせる疑似的なPFM方式が知られている。

【0004】前記したいずれのPFM方式であっても、PWM方式に比較すると回路構成を簡素化できるメリットがあり、特に軽負荷の状態においては、駆動電力の利用効率を向上させることができる特質を有している。しかしながら、このPFM方式においてはリプル電圧が大きく、リプル周波数が変化するために、リプルを除去し難い問題点がある。

【0005】一方、PWM方式においては、スイッチング周波数が一定のため、リプル電圧を容易にフィルター等により除去することができる。しかしながら、PWM方式においては、コンバータ出力電圧を制御する前記スイッチング素子に与えるスイッチング周波数が一定で、定められたタイミングにおいて常にスイッチング素子を駆動するために、軽負荷時においては駆動電力の利用効率が悪化するという欠点を有している。

【0006】そこで、出力負荷が大きい状態ではPWM方式による駆動手段を利用し、出力負荷が小さい状態ではPFM方式による駆動手段を利用するようにしたチョッパー型のDC-DCコンバータ回路がすでに提案されている。」

イ「【0014】そこで、直流増幅器17の出力をPWM/PFM切換判定部18に供給することで、PWM/PFM切換判定部18は昇圧動作制御部14における動作モードを切換えるように作用する。すなわち、負荷が重い場合には昇圧動作制御部14はPWM駆動動作を実行し、軽負荷の場合には昇圧動作制御部14はPFM駆動動作を実行するようになされる。

【0015】ここで、図6(A)は昇圧動作制御部14が、PWM駆動動作を実行した場合のタイミングチャートを示すものである。前記したクロック生成部15からは、(a)として示すクロック信号が昇圧動作制御部14に供給されており、昇圧動作制御部14は、このクロック信号を利用して、(c)として示す一定周期の三角波の信号を繰り返し生成する。そして、昇圧動作制御部14においては、前記三角波の信号と出力電圧検出部12から供給されるエラー信号(b)との比較を行い、エラー信号に対して前記三角波の信号レベルがクロスした時点で、(d)として示すように前記したスイッチング信号を発生させる。なお、前記スイッチング信号は、前記三角波の信号が折り返す時点まで継続される。

【0016】したがって、図6(A)に示すようにエラー信号のレベルが除々に低下する状態においては、スイッチング信号(d)のデューティ値(du1,du2,……)が小さくなり、FETQ1 をオン状態にする期間が少なくなることを意味する。これにより、前記コイルL1 にその都度蓄積させる電磁エネルギーを低下させるようになされ、FETQ1 がターンオフした場合におけるコイルL1 に誘起する起電力を低下させるようになされる。これにより、コンバータの出力電圧を所定の範囲に維持させるように作用する。

【0017】一方、図6(B)は昇圧動作制御部14が、PFM駆動動作を実行した場合のタイミングチャートを示すものである。なお、図6(B)に示す形態は、スイッチング素子としてのFETQ1 を駆動する場合のタイミング(基本周波数)は一定で、コンバータの出力電圧に応じてスイッチング信号を生成するか、生成せずにスキップさせる疑似的なPFM方式を例にしている。

【0018】この疑似PFM方式においては、昇圧動作制御部14は前記したクロック生成部15より、(a)として示すクロック信号を受けて、このクロック信号に基づいてタイミング信号、すなわち、(e)として示す等間隔のPFM基準クロックを生成する。また、昇圧動作制御部14においては、(f)として示すPFM動作基準電圧をもっており、前記したPFM基準クロック(e)の立上がりのタイミングにおいて、PFM動作基準電圧(f)に対するエラー信号(b)の値とが比較される。

【0019】ここで、PFM動作基準電圧(f)に対してエラー信号(b)のレベルが高い場合には、スイッチング素子としてのFETQ1 を駆動するスイチング信号(d)を所定時間継続して出力する。また、PFM動作基準電圧(f)に対してエラー信号(b)のレベルが低い場合には、前記スイチング信号(d)を出力せずにスキップする。そして、再びPFM動作基準電圧(f)に対するエラー信号(b)のレベルが高くなった場合には、PFM基準クロック(e)の立上がりにおいて、スイチング信号(d)を所定時間継続して出力する。

【0020】このような間欠的な作用により、前記コイルL1に蓄積させる電磁エネルギーを制御し、FETQ1 がターンオフした場合におけるコイルL1 に誘起する起電力を調整することで、結果としてコンバータの出力電圧を所定の範囲に維持させるようになされる。」

ウ「【図6】

[図:0001410639000012.jpg]

」

(4)引用文献4に記載された事項

引用文献4には、次の事項が記載されている

ア「【技術分野】

【0001】

本発明は、直流電圧を変換するスイッチング・レギュレータ方式のDC-DCコンバータおよびその電源制御用半導体集積回路に関し、例えばPWM(パルス幅変調)コンパレータとPFM(パルス周波数変調)コンパレータとを備え負荷に流れる電流が少なくなった場合にPFM制御を行なうDC-DCコンバータに適用して有効な技術に関する。」

イ「【0032】

この実施形態のスイッチング制御回路においては、PFMコンパレータ25の参照電圧Vref2をPWMコンパレータ22に入力される三角波のピーク電圧近傍もしくは若干高めに設定しておくことで、負荷が軽くなってフィードバック電圧VFBが上がり誤差アンプ21の出力が高くなってPWMコンパレータ22が最小パルス幅のパルスを出力するようになってから、さらに負荷が軽くなるとPFMコンパレータ25の出力によって出力制御回路23がスイッチングトランジスタSW1,SW2を駆動するようになる。

【0033】

なお、PFMコンパレータ25の出力が有効になる低負荷時においては、PFMコンパレータ25から有為なパルスが出力されることで一時的にPWMコンパレータ22が活性化されるが、例えば波形生成回路24内の発振器からの信号をPFMコンパレータ25が監視するなどして、PWMコンパレータ22からパルス(最小パルス幅)が出力されないタイミングでPFMコンパレータ25の出力を変化させる(PWMのパルスが出力される前にPFMコンパレータ25の出力が反転する)ように、コンパレータのタイミングを設計しておくようにするとよい。

【0034】

これにより、PFM制御中にPWMコンパレータ22からパルスが出力されこのパルスで出力制御回路23がスイッチングトランジスタSW1,SW2を駆動するのを回避することができる。出力制御回路23は例えばANDゲートやインバータなどで構成することができる。出力制御回路23の最終段は、サイズの大きなスイッチングトランジスタSW1,SW2を駆動できるように、駆動力の大きな回路とされる。

【0035】

この実施形態のスイッチング制御回路においては、PFMコンパレータ25の出力がハイレベルに変化することによって、PWMコンパレータ22と波形生成回路24とPWM制御時動作回路26の動作が停止される。図3に、そのときの状態を示す。図3において、ハッチングが付されている回路ブロックが、PFMコンパレータ25が動作してPFM制御でコイルに電流を流す期間に動作停止される回路である。このように半数近い回路の動作が停止されるため、スイッチング制御回路20全体の消費電流が大幅に低減されるようになる。

【0036】

さらに、PFM制御中に負荷が重くなってフィードバック電圧VFBが下がり誤差アンプ21の出力が低くなると、PFMコンパレータ25の出力が連続してロウレベルに変化してPWMコンパレータ22が再びパルスを出力するようになり、それによって、PWM制御による駆動が再開されるようになる。このように、本実施形態のスイッチング制御回路では、負荷の状態に応じて自動的にPWM制御とPFM制御の切替えが行なわれるとともに、PFM制御に入ったときにPWMコンパレータ22の動作停止も自動的に行なわれる。その結果、動作モード制御回路のような回路が不要となり、チップ面積の増大を抑制することができる。」

ウ「【0041】

以上の説明では、本発明を降圧型のDC-DCコンバータに適用した例を説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、昇圧型のDC-DCコンバータや負電圧を発生する反転型のDC-DCコンバータにも適用することができる。」

5.当審の判断

(1)対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「電子タバコ」は、本願発明の「エアロゾル送達装置」に相当する。

引用発明1の「バッテリー」は、電圧出力を生成することが技術的に明らかであるから、本願発明の「電圧出力を生成するように構成された」「電源」に相当する。

引用発明1の「アトマイザー」、「昇降圧コンバータU1」は、本願発明の「電気負荷」、「昇圧コンバータ」に相当する。

そして、引用発明1の「電子タバコは、バッテリー、アトマイザー、カートリッジ、及びバッテリーに接続された出力電圧調整装置を含み、出力電圧調整装置の出力端子はアトマイザーに電気的に接続され、出力電圧調整装置は昇降圧コンバータU1を含」むことは、「バッテリー」が「出力電圧調整装置」に接続され、「出力電圧調整装置」が「アトマイザー」に接続され、「出力電圧調整装置は昇降圧コンバータU1を含」むものであるから、本願発明の「電気負荷及び電源の間の昇圧コンバータを備え」ることに相当する。

してみると、本願発明と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)

「 エアロゾル送達装置であって、
電圧出力を生成するように構成された電源と、
電気負荷及び電源の間の昇圧コンバータとを備えた、
エアロゾル送達装置。」

(相違点1)

本願発明は、「昇圧コンバータが、エアロゾル送達装置がエアロゾル前駆体組成物からエアロゾルを発生させるために給電される、より高い電圧に電源の電圧出力を昇圧するように構成」されるのに対して、引用発明1は、「出力電圧調整装置は、制御モジュールに接続され、制御モジュールによって提供されるパルス幅変調信号に従って、出力電圧調整装置の出力電圧をユーザ定義の電圧値に調整」する点。

(相違点2)

本願発明は、「昇圧コンバータが、電気負荷の状態に基づいて、より高い電圧がPWM電圧であるパルス幅変調(PWM)動作と、より高い電圧がPFM電圧であるパルス周波数変調(PFM)動作との間で昇圧コンバータが自動的に切替え可能である切替えモードで動作可能である」のに対して、引用発明1は、そのような構成がない点。

(2)判断

上記相違点1について検討する。

引用発明1の「出力電圧調整装置」は、「昇降圧コンバータU1」を含むものであるから、「出力電圧調整装置」による「出力電圧の調整」は、電源の電圧をより「高い電圧」に「昇圧」することを含むものと解される。

また、「昇降圧コンバータU1」を含む「出力電圧調整装置」は、「バッテリー」が「出力電圧調整装置」に接続され、「出力電圧調整装置」が「アトマイザー」に接続されるのであって、上記4.(1)イで摘記したように、「電子タバコは、通常、煙の液体をアトマイザーで噴霧して使用する」ものであることを勘案すると、引用発明1における「昇降圧コンバータU1」を含む「出力電圧調整装置」によりなされる「昇圧」を含む「出力電圧の調整」は、エアロゾル送達装置である電子タバコがエアロゾル前駆体組成物である液体から煙を発生させるために給電される出力電圧を調整するものといえる。

してみると、引用発明1において、「昇圧コンバータが、エアロゾル送達装置がエアロゾル前駆体組成物からエアロゾルを発生させるために給電される、より高い電圧に電源の電圧出力を昇圧するように構成」することは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点2について検討すると、DC/DCコンバータが、出力負荷が大きい状態ではPWM方式による駆動手段を利用し、出力負荷が小さい状態ではPFM方式による駆動手段を利用するように自動的に切替え可能とすることは、上記4.(2)~(4)に摘記したように、周知技術にすぎない。

また、引用文献1の図3を参酌すれば、引用発明1の昇降圧コンバータもいわゆるスイッチングレギュレータからなるDC/DCコンバータであって、スイッチングレギュレータからなるDC/DCコンバータの出力電圧Voutは、入力電圧をVinとし、スイッチングのデューティー比をDとした場合に、Vout=Vin/(1-D)となることが技術常識から明らかである。

そして、引用発明1は、「制御モジュールによって提供されるパルス幅変調信号に従って、出力電圧調整装置の出力電圧をユーザ定義の電圧値に調整する」のであるから、上記式のデューティー比であるDを調整することで、出力電圧Voutを調整しているものと解される。

また、上記4.(1)イ、ウで摘記したように、引用文献1は、「電圧を調整できない場合、電子タバコの電熱線の発熱量は、独自に調整することができないため、ユーザのニーズに応えられない」こと、「ユーザのニーズに応じて特定の電圧範囲で出力電圧を調整し、電熱線の温度が十分に高くなく、煙の液体の一部が完全になくなるという状況を回避する」ことを課題としてとりあげているから、引用発明1において「ユーザ定義の電圧値」として「低電圧」が設定された場合であっても、「ユーザのニーズに応じて特定の電圧範囲で出力電圧を調整」する課題があるものといえる。

してみると、引用発明1において、アトマイザーに供給する電圧である「出力電圧調整装置の出力電圧」について、「ユーザ定義の電圧値」として「低電圧」が設定された場合、DC/DCコンバータのスイッチングのデューティー比Dを小さくするために、PWM方式からPFM方式に切り替え、昇降圧コンバータからの出力電圧を小さくするよう構成することは、引用発明に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

よって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)審判請求人の主張について

審判請求人は、令和5年9月25日に提出した意見書において、以下のように主張する。

「 引用文献1によって明らかに開示されているように、引用文献1の実用新案は、出力電圧調整装置が昇降圧コンバータU1を含み、出力電圧調整装置が制御モジュールに接続され、制御モジュールによって提供されるパルス幅変調信号に従って、出力電圧調整装置の出力電圧をユーザ定義の電圧値に調整する構成を前提としている。この構成は、電熱線の温度が十分に高くなく、煙の液体の一部が完全になくなるという状況を回避し、また、大電流が流れたときに電熱線が焼けるという悪影響を回避するのに有利であると引用文献1は主張している。
この点に関して、パルス幅変調信号のみに従って、出力電圧調整装置の出力電圧をユーザー定義の電圧値に調整することに基づいて、電子たばこの動作に対する有利なソリューションを提供することを引用文献1がすでに主張していることを出願人は提起する。すなわち、引用文献1の電子たばこは、ユーザー定義の電圧値へのPWM変調のみを使用する、開示された構成において意図されるように動作し、引用文献1は、引用文献1においてのみ提唱されるようなPWM変調のみを使用するソリューションに対する代替ソリューションの必要性を教示、示唆、または暗示さえしない。引用文献1による解決すべき課題として、ユーザー定義の電圧値を提供することは、現在の請求項1、4に記載のような、エアロゾル前駆体組成物からエアロゾルを生成するために、「電気負荷の状態に基づいて、より高い電圧がPWM電圧であるパルス幅変調(PWM)動作と、より高い電圧がPFM電圧であるパルス周波数変調(PFM)動作との間で昇圧コンバータが自動的に切替え可能である切替えモードで動作可能である」昇圧コンバータを必要としない。さらに、ユーザー定義の電圧値を提供することは、現在の請求項1、4に特に記載のような、エアロゾル前駆体組成物からエアロゾルを生成するための「電気負荷の条件」ではなく、PWM動作とPFM動作の間の自動切り替えを必要としない。」

しかしながら、上記(2)で説示したとおり、引用発明1において「ユーザ定義の電圧値」として「低電圧」が設定された場合であっても、「ユーザのニーズに応じて特定の電圧範囲で出力電圧を調整」する課題があるものといえる。

また、引用発明1の昇降圧コンバータもいわゆるスイッチングレギュレータからなるDC/DCコンバータであって、スイッチングレギュレータからなるDC/DCコンバータの出力電圧Voutは、入力電圧をVinとし、スイッチングのデューティー比をDとした場合に、Vout=Vin/(1-D)となることが技術常識から明らかであることを勘案すると、引用発明1において「ユーザ定義の電圧値」として「低電圧」が設定された場合、DC/DCコンバータのスイッチングのデューティー比Dを小さくするために、PWM方式からPFM方式に切り替え、昇降圧コンバータからの出力電圧を小さくするよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、審判請求人の主張を採用することはできない。

(4)小括

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

6.まとめ

してみると、本願発明は、特許法第29条第2項の記載により特許を受けることができない発明であるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する

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2022-009337

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