2022-009282
流量計測装置
- 審判番号
- 2022-009282
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-201543外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年06月16日
- 審決日
- 2023年03月24日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (G01F) / P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月18日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
(同月29日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年6月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年6月16日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年6月16日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】配管の上流側及び下流側に配置されて超音波信号を送受信する一組の超音波探触子と、前記一組の超音波探触子の一方に送信信号を入力して超音波信号を発生する送信部と、前記一組の超音波探触子の他方で超音波信号を受けて受信信号を受信する受信部と、超音波信号の伝播方向が逆転するように前記一組の超音波探触子の送受信を切り替える送受信切替部と、前記送信部で送信開始から前記受信部で受信完了までの超音波信号の伝播時間を計測する時間計測部と、前記受信部で受信した受信信号から超音波信号の周波数に応じたノイズを除去するフィルタ部と、前記送信部で超音波信号の周波数を変更すると共に前記フィルタ部の周波数特性を変更する制御部とを備えており、前記制御部は、配管径に応じて計測可能な前記超音波信号の周波数を設定することを特徴とする流量計測装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】配管の上流側及び下流側に配置されて超音波信号を送受信する一組の超音波探触子と、前記一組の超音波探触子の一方に送信信号を入力して超音波信号を発生する送信部と、前記一組の超音波探触子の他方で超音波信号を受けて受信信号を受信する受信部と、超音波信号の伝播方向が逆転するように前記一組の超音波探触子の送受信を切り替える送受信切替部と、前記送信部で送信開始から前記受信部で受信完了までの超音波信号の伝播時間を計測する時間計測部と、前記受信部で受信した受信信号から超音波信号の周波数に応じたノイズを除去するフィルタ部と、前記送信部で超音波信号の周波数を変更すると共に前記フィルタ部の周波数特性を変更する制御部とを備えており、前記フィルタ部は、前記受信信号から低周波ノイズを除去するハイパスフィルタと、ノイズ除去後の前記受信信号を増幅する増幅回路と、を含み、前記制御部は、前記送信部の送信信号を制御して、入力された配管径に応じて計測可能な前記超音波信号の周波数を変更し、かつ、変更された前記超音波信号の周波数に応じて前記ハイパスフィルタの周波数特性を変更することを特徴とする流量計測装置。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正のうち、請求項1の補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項について、次のアからウまでの三点の限定をするものである。
ア 「フィルタ部」が、「前記受信信号から低周波ノイズを除去するハイパスフィルタと、ノイズ除去後の前記受信信号を増幅する増幅回路と、を含[む]」ものであると限定すること。
イ 「前記制御部」が行う「配管径に応じて計測可能な前記超音波信号の周波数」の「設定」の態様について、「前記送信部の送信信号を制御して」「変更」するものであること、及び、「配管径」は「入力された」ものであることを限定すること。
ウ 「前記制御部」について、「変更された前記超音波信号の周波数に応じて前記ハイパスフィルタの周波数特性を変更する」ものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2016-156665号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0002】~【0011】、【図4】
「【0002】図4は、従来から用いられている透過法に基づく超音波流量計の一例を示す構成説明図である。図4において、制御部1は、データ処理部2、送信部3、受信部4、第1の切替部5および第2の切替部6の動作を所定のプログラムにしたがって統括的に制御するとともに、これらの制御の他に、送信波形データを生成して送信部3に出力し、適切なゲイン設定信号を生成して受信部4に出力し、データ処理部2には送信部3の動作をスタートさせたことを通知する。【0003】データ処理部2は、送信部3の動作スタート信号を制御部1から受信して伝搬時間測定の起点とし、伝搬経路A,Bを通って受信部4に到達した測定信号に基づいて伝搬時間を算出するとともに流量測定に必要なパラメータを保持し、測定した伝搬時間から流速を算出し最終的に流量を算出する。続きを表示(全20行)【0004】送信部3は、制御部1から入力される制御信号によりイネーブルにされるとともに、制御部1から入力される送信波形データに従って超音波送信波形を生成出力する。この超音波送信波形は、切替部5、6とたとえば同軸ケ-ブルよりなる信号線7、8を介して、超音波変換素子9、10へ送信される。【0005】受信部4は、制御部1から入力されるゲイン設定信号によりゲインを設定し、超音波変換素子9、10から変換出力される信号を増幅する。【0006】切替部5、6は連動して切替駆動され、送信部3、受信部4と超音波変換素子9、10とを接続する信号線7、8を相補的に交互に切り替える。【0007】信号線7の一端は切替部5の一方の固定接点aに接続されて他端は超音波変換素子9に接続され、信号線8の一端は切替部6の一方の固定接点eに接続されて他端は超音波変換素子10に接続されている。そして、信号線7は切替部5の他方の固定接点bにも接続され、信号線8は切替部6の他方の固定接点fにも接続されている。【0008】超音波変換素子9、10は、たとえば圧電素子で構成されたものであり、被測定流体が流れる測定管11を挟むようにして測定管11の外壁に、それぞれの超音波信号の伝搬経路A、Bが測定管11の管軸に対して所定の角度で斜め方向に交わる位置関係で上流側と下流側に対向配置されている。【0009】これら制御部1、データ処理部2、送信部3、受信部4、第1の切替部5および第2の切替部6により、信号変換部12が構成されている。【0010】超音波変換素子9、10の一方(たとえば超音波変換素子9)が圧電効果による超音波発生器として機能しているときには他方(たとえば超音波変換素子10)が圧電効果による超音波検出器として機能するように、それらの機能は交互に相補的に切り替わる。【0011】たとえば送信部3から生成出力される超音波送信波形が超音波変換素子9に入力されると、超音波変換素子9は超音波信号を生成する。超音波変換素子9で生成された超音波信号は測定管11の内部の伝搬経路Aを通って超音波変換素子10で受信され、電気信号に変換されて受信部4に出力される。」
「【図4】[図:0001397969000001.jpg]」
b 段落【0012】~【0017】、【図5】
「【0012】図5は送信部3の一例を示す回路図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付けている。送信部3は、基本的には矩形波を発生するハーフブリッジ回路として構成されている。図5において、波形発生部3aは、制御部1の制御に基づき、超音波変換素子9、10に送信する送信波形データの元波形(パルス波形)信号を生成する。【0013】ドライバ3bは2系統のMOSFET3e、3fのゲートに接続されていて、波形発生部3aから入力される送信波形データの元波形(パルス波形)信号にしたがって、MOSFET3e、3fを駆動する。続きを表示(全12行)【0014】MOSFET3eのソースには正電圧+V1の送信波形電圧を供給する可変直流電源3cの正極端子が接続され、MOSFET3fのソースには負電圧-V2の送信波形電圧を供給する可変直流電源3dの負極端子が接続されている。なお、可変直流電源3cの負極端子および可変直流電源3dの正極端子は共通電位点に接続されている。【0015】MOSFET3eのドレインには保護用のダイオード3gのアノードが接続され、MOSFET3fのドレインには保護用のダイオード3hのカソードが接続されている。【0016】ダイオード3gのカソードとダイオード3hのアノードは共通に接続されて、切替部5の可動接点aに接続されるとともに、超音波変換素子9、10の圧電素子に蓄積された電荷を放出するためのダンピング時の保護用の抵抗3iの一端に接続されている。【0017】保護用の抵抗3iの他端は、ダンピング用のスイッチ3jを介して共通電位点に接続されている。」
「【図5】[図:0001397969000002.jpg]」
c 段落【0018】~【0021】、【図6】
「【0018】図6は受信部4の一例を示す回路図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付けている。図6において、受信部4は、コンデンサ4aと、バンドパスフィルタ4bと、可変ゲインアンプ(VGA)4cと、D/A変換器4dと、A/D変換器4eとで構成されている。【0019】可変ゲインアンプ4cの入力端子は、コンデンサ4aとバンドパスフィルタ4bの直列回路を介して切替部6の可動接点dに接続されている。【0020】可変ゲインアンプ4cのゲインは、制御部1からD/A変換器4dを介して設定される電圧に応じて所望の値に設定される。【0021】可変ゲインアンプ4cの出力信号は、A/D変換器4eでデジタル信号に変換された後、データ処理部2に入力される。」
「【図6】[図:0001397969000003.jpg]」
d 段落【0022】~【0037】
「【0022】図4の動作を説明する。なお、流量測定にあたり、超音波変換素子9、10を測定管11の外壁に取り付けた状態における信号線7、8、管材、ライニングなどの超音波信号の伝搬時間に関係するパラメータτ(後述)を信号変換部12に設定する。【0023】初期状態において、切替部5の可動接点aは固定接点bに接続され、切替部6の可動接点dは固定接点eに接続されている。続きを表示(全44行)【0024】<伝搬時間”td”の計測>伝搬時間”td”は、超音波変換素子9から伝搬経路Aを伝搬して超音波変換素子10に至る流れ方向に沿った伝搬時間である。【0025】制御部1は、送信部3の可変直流電源3c、3dの出力電圧を適切な値に設定し、波形発生部3aに超音波波形の送信波形データを送る。また、受信部4のD/A変換器4dには可変ゲインアンプ4cのゲインを適切な所望の値に設定するための設定値を送り、可変ゲインアンプ4cのゲインを所望の値に設定する。【0026】制御部1は、超音波発生のスタート信号を送信部3およびデータ処理部2に出力する。超音波を送信するための波形電圧は、送信部3から切替部5を介して超音波変換素子9に送信される。【0027】超音波変換素子9で生成された超音波信号は測定管11の内部の伝搬経路Aを通って超音波変換素子10で受信されて電気信号に変換され、切替部6を介して受信部4に入力されて適切な値に増幅された後、デジタル信号に変換されてデータ処理部2に入力される。【0028】データ処理部2は、送信部3から受信部4までの超音波信号の伝搬時間”td”を保持する。この伝搬時間”td”の起点は、前述のように、制御部1からデータ処理部2に送った超音波発生のスタート信号を元としている。【0029】送信部3の内部では、波形発生部3aで送信波形データを適当な駆動波形信号にし、制御部1から入力されるスタート信号にしたがって、ドライバ3bを介してMOSFET3e、3fを駆動して矩形波を発生させ、ダイオード3g、3hを介して切替部5の可動接点aに出力する。この送信部3の動作は、次に説明する伝搬時間”tu”の計測でも同様となる。【0030】<伝搬時間”tu”の計測>伝搬時間”tu”は、超音波変換素子10から伝搬経路Bを伝搬して超音波変換素子9に至る流れ方向と逆の方向の伝搬時間である。【0031】伝搬時間”tu”の計測にあたっては、制御部1は、切替部5の可動接点aを固定接点c側に切り替え、切替部6の可動接点dを固定接点f側に切り替えるための制御信号を出力する。これら切替部5の可動接点aと切替部6の可動接点dが切り替わった状態で、伝搬時間”td”の計測と同様の動作をする。【0032】制御部1から送信部3およびデータ処理部2に超音波発生のスタート信号を出力し、超音波信号は伝搬時間”td”の計測時の伝搬経路とは逆の方向まわり、つまり送信部3から切替部5の固定接点cを経て超音波変換素子10に至り、測定管11の内部の伝搬経路Bを通って超音波変換素子9で受信されて電気信号に変換され、切替部6を介して受信部4に入力されて適切な値に増幅された後、デジタル信号に変換されてデータ処理部2に入力される。データ処理部2は、送信部3から受信部4までの超音波信号の伝搬時間”tu”を保持する。【0033】伝搬時間”td”は、(1)式で表すことができ、td={L/(C+V×cosθ)}+τ1 (1)【0034】伝搬時間”tu”は、(2)式で表すことができる。tu={L/(C-V×cosθ)}+τ2 (2)【0035】(1)式および(2)式において、L:管内を伝搬する距離C:音速V:管内の流速θ:管内の流速と超音波の伝搬方向との角度τ1,τ2:送信部3のスタート信号からの遅れ(主に送信部3内の半導体による立ち上がり時間のバラツキ)とする。これらのうち、L,C,θは流量計の設置時に判明して設定できる数値である。【0036】tdとtuの伝搬時間差をΔt=tu-tdとして計算すると、(3)式で流速Vが求まる。これにより、測定管11の流量が流れる断面積がわかっているので流量が求まる。V=C2×(Δt-Δτ)/(2×L×cosθ) (3)ただしΔt=tu-td、Δτ=τ2-τ1【0037】Δτは原理的な動作を説明するときは無視できるが、現実問題としては数十nsec程度発生し、流速Vの測定誤差となる。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「 透過法に基づく超音波流量計であって、(【0002】)制御部1、データ処理部2、送信部3、受信部4、第1の切替部5および第2の切替部6により、信号変換部12が構成されており、(【0009】)制御部1は、データ処理部2、送信部3、受信部4、第1の切替部5および第2の切替部6の動作を所定のプログラムにしたがって統括的に制御するとともに、これらの制御の他に、送信波形データを生成して送信部3に出力し、適切なゲイン設定信号を生成して受信部4に出力し、データ処理部2には送信部3の動作をスタートさせたことを通知するものであり、(【0002】)データ処理部2は、送信部3の動作スタート信号を制御部1から受信して伝搬時間測定の起点とし、伝搬経路A,Bを通って受信部4に到達した測定信号に基づいて伝搬時間を算出するとともに流量測定に必要なパラメータを保持し、測定した伝搬時間から流速を算出し最終的に流量を算出するものであり、(【0003】)続きを表示(全17行)送信部3は、制御部1から入力される制御信号によりイネーブルにされるとともに、制御部1から入力される送信波形データに従って超音波送信波形を生成出力するものであり、この超音波送信波形は、切替部5、6とたとえば同軸ケ-ブルよりなる信号線7、8を介して、超音波変換素子9、10へ送信され、(【0004】)受信部4は、制御部1から入力されるゲイン設定信号によりゲインを設定し、超音波変換素子9、10から変換出力される信号を増幅するものであり、(【0005】)切替部5、6は連動して切替駆動され、送信部3、受信部4と超音波変換素子9、10とを接続する信号線7、8を相補的に交互に切り替えるものであり、(【0006】)超音波変換素子9、10は、たとえば圧電素子で構成されたものであり、被測定流体が流れる測定管11を挟むようにして測定管11の外壁に、それぞれの超音波信号の伝搬経路A、Bが測定管11の管軸に対して所定の角度で斜め方向に交わる位置関係で上流側と下流側に対向配置されており、(【0008】)超音波変換素子9、10の一方(たとえば超音波変換素子9)が圧電効果による超音波発生器として機能しているときには他方(たとえば超音波変換素子10)が圧電効果による超音波検出器として機能するように、それらの機能は交互に相補的に切り替わり、(【0010】)たとえば送信部3から生成出力される超音波送信波形が超音波変換素子9に入力されると、超音波変換素子9は超音波信号を生成し、超音波変換素子9で生成された超音波信号は測定管11の内部の伝搬経路Aを通って超音波変換素子10で受信され、電気信号に変換されて受信部4に出力され、(【0011】)送信部3は、基本的には矩形波を発生するハーフブリッジ回路として構成されており、波形発生部3aが、制御部1の制御に基づき、超音波変換素子9、10に送信する送信波形データの元波形(パルス波形)信号を生成し、(【0012】)受信部4は、コンデンサ4aと、バンドパスフィルタ4bと、可変ゲインアンプ(VGA)4cと、D/A変換器4dと、A/D変換器4eとで構成されており、(【0018】)可変ゲインアンプ4cの入力端子は、コンデンサ4aとバンドパスフィルタ4bの直列回路を介して切替部6の可動接点dに接続されており、(【0019】)可変ゲインアンプ4cのゲインは、制御部1からD/A変換器4dを介して設定される電圧に応じて所望の値に設定され、(【0020】)可変ゲインアンプ4cの出力信号は、A/D変換器4eでデジタル信号に変換された後、データ処理部2に入力され、(【0021】)制御部1は、送信部3の可変直流電源3c、3dの出力電圧を適切な値に設定し、波形発生部3aに超音波波形の送信波形データを送り、受信部4のD/A変換器4dには可変ゲインアンプ4cのゲインを適切な所望の値に設定するための設定値を送り、可変ゲインアンプ4cのゲインを所望の値に設定する、(【0025】)超音波流量計。」
イ 引用文献2に記載された事項と技術常識1の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開昭55-109916号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 1頁右下欄下から5行目~下から3行目
「本発明は、超音波流量計、特に連続波の超音波信号を利用して流体の流速を正確で迅速に測定するのに好適な超音波流量計に関するものである。」
b 5頁右下欄下から9行目~下から2行目
「(7) 更に、流速を位相差から時間差に置き換えて測定する如き方式を採用している事から、送受信間の距離が変わっても、これに応じて適切な周波数、例えば小口径管で送受信間の距離が短い時は数MHzの高周波、大口径管で送受信間の距離が長い時は100KHz程度の周波数を選択すれば、伝送に於ける減衰の影響を少なくして、且つ精度の高い流速測定が可能である。」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という)。
[技術常識1]
「超音波流量計においては、大口径管で送受信間の距離が長い場合には伝送における減衰の影響が出るために比較的に低い周波数が望ましく、小口径管で送受信間の距離が短い場合比較的に高い周波数が測定精度の観点から望ましいことから、送信される超音波信号の周波数を流体が流れる配管の口径に応じて適切に設定する必要があること。」
ウ 引用文献3に記載された事項と技術常識2の認定
(ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2005-337911号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 【0012】~【0015】、【図1】
「【0012】以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は、一般住宅用ガスメータ等として用いられる超音波流量計100の一実施例の基本構成を示す。流通管10には、流路1が形成されている。流路1には、ガスが流れ方向軸線Oに沿って図示の流れ方向に流通(平均流速v)する。流通管10の上流側と下流側には、一対のセンサ取り付け凹部10a,10bが形成されている。センサ取り付け凹部10a,10bには、超音波センサ2a,2bが個別に取り付けられている。超音波センサ2a,2bは流路1に露出しており、流路1を流れるガスと直接接する配置となっている。図1の実施形態では、超音波センサ2aと2bは、流路1を隔てて反対側に位置しているが、同じ側に位置する形態もある。【0013】流通管10は、超音波センサ2a-超音波センサ2b間において流れ方向軸線Oが直線状であり、軸断面の形状および断面積が流れ方向において同一に形成されている。測定対象がガスの場合、流通管10の軸断面形状は、たとえば、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状等のいずれを採用してもよい。本実施形態において、流通管10は流れ方向軸線Oと直交する断面が矩形状を呈するものである。【0014】超音波センサ2a,2bは、圧電素子、電極、音響整合層およびハウジング等で構成されたトランスデューサであり、これら超音波センサ2a,2bを発振させるための駆動電圧回路等から構成される送信手段22、あるいは超音波センサ2a,2bの発生電圧を検出するための電圧検出回路等から構成される受信手段32に接続される。超音波センサ2a,2bの接続先の切り替えは、アナログスイッチ等で構成される切替手段3によって行なわれる。切替手段3は、マイクロコンピュータ9によって制御される。たとえば、上流側の超音波センサ2aから下流側の超音波センサ2bに向けて超音波を送信する場合には、超音波センサ2aが送信側(発振元)となるので、切替手段3は、始め、送信手段22と超音波センサ2aとを接続し、受信手段32と超音波センサ2bとを接続することとなる。【0015】超音波流量計100は、計測部として、超音波センサ2a,2bにより得られる超音波受信出力を増幅する増幅器5と、ゼロクロス法により出力波形から超音波到達時点を検出するゼロクロスポイント検出手段6と、マイクロコンピュータ9とを備える。増幅器5の後段には、帯域通過フィルタ4を設けており、この帯域通過フィルタ4を通過した受信波のみがゼロクロスポイント検出手段6に入力される。時間計測手段としてのマイクロコンピュータ9は、超音波センサ2a,2bの一方が超音波を発振してから、他方がその超音波を受信するまでの直接到達時間を計測し、該計測結果より流量演算を行なう。」
「【図1】[図:0001397969000004.jpg]」
b 【0031】~【0034】、【図6】、【図7】
「【0031】ところで、計測精度を向上させる効果は、図1に示した帯域通過フィルタ4によって、いっそう高くなる。その理由を説明する。一般に、周波数の高い波と低い波とで比較すると、高い周波数の波のほうが減衰が大きいことは知られている。したがって、図6に示すごとく、送信周波数が200KHzだとしても、直接到達波は、たとえば195KHzで受信される。さらに、反射波ともなると、高周波成分が大きく減衰するので、中心周波数が低周波側にシフトする(たとえば170KHzぐらいまで)。したがって、増幅器5の後段に帯域通過フィルタ4を設け、反射波の寄与が大きい低周波成分がセロクロスポイント検出手段6に入力されることを阻止すれば、計測精度の向上を図ることが可能になる。【0032】以上の説明では、位相時間逆数差法により流量計測を行なう超音波流量計100のセンサ取り付け凹部10a,10bに超音波減衰体7,8を配置した発明を説明した。センサ取り付け凹部10a,10bに超音波減衰体7,8を配置する技術は、位相比較制御により流量計測を行なう超音波流量計に適用しても、優れたノイズ除去効果、すなわち3次反射波の影響を小さくする効果が期待できる。【0033】図7に示すのは、位相比較制御により流量計測を行なうようにした超音波流量計200のブロック図である。流通管10や超音波減衰体7,8については、図1の構成と同様であり、図7では省略している。図7に示すごとく、超音波流量計200は、超音波センサ2a,2b、送受切替部24、増幅器22,23、位相比較器26,27、ローパスフィルタ28,29、フィルタ切替手段、カウンタ36,37、VCO34,35、N波ブロック管理部32,33、センサ切替スイッチ25、CPU38を備えている。帯域通過フィルタ20,21は、増幅器22,23と位相比較器26,27との間に配置されている。CPU38は、周波数演算部、周波数切替判定部として機能する。【0034】位相比較制御により流量計測を行なう超音波流量計200においては、流量計測に際して使用する周波数が変化する。つまり、図6で説明した反射波の中心周波数も変化する。そこで、増幅器22,23の後段に配置する帯域通過フィルタ20,21として、複数(たとえば4つ)の通過帯域を持つ帯域通過フィルタを使用する。そして、発振するべき超音波の周波数に応じて、アナログスイッチ等で構成されるフィルタ切替手段により上記帯域通過フィルタ20,21bの受信帯域を切り替えるようにすればよい。このようにすれば、前述した超音波減衰体7,8による不要反射波の減衰作用と相俟って、高いS/Nが得られるようになる。」
「【図6】[図:0001397969000005.jpg]」
「【図7】[図:0001397969000006.jpg]」
(イ) 技術常識2の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という)。
[技術常識2]
「超音波流量計において、測定精度やS/Nの向上のために、送信周波数の変化に対応して、フィルタにより受信側の周波数特性を変更すべきこと。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 「流量計測装置」の発明である本件補正発明と「透過法に基づく超音波流量計」の発明である引用発明は、「流量計測装置」の発明である点で一致する。
b 引用発明の「超音波変換素子9、10」は、「被測定流体が流れる測定管11を挟むようにして測定管11の外壁に、それぞれの超音波信号の伝搬経路A、Bが測定管11の管軸に対して所定の角度で斜め方向に交わる位置関係で上流側と下流側に対向配置されており」、「超音波変換素子9、10の一方(たとえば超音波変換素子9)が圧電効果による超音波発生器として機能しているときには他方(たとえば超音波変換素子10)が圧電効果による超音波検出器として機能するように、それらの機能は交互に相補的に切り替わ[る]」ものである。この点を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「配管の上流側及び下流側に配置されて超音波信号を送受信する一組の超音波探触子」を備える点で一致する。
c 引用発明の「送信部3」は、「制御部1から入力される送信波形データに従って超音波送信波形を生成出力するもの」であり、引用発明の「受信部4」は、「超音波変換素子9、10から変換出力される信号を増幅するもの」である。
そして、引用発明では、「たとえば送信部3から生成出力される超音波送信波形が超音波変換素子9に入力されると、超音波変換素子9は超音波信号を生成し、超音波変換素子9で生成された超音波信号は測定管11の内部の伝搬経路Aを通って超音波変換素子10で受信され、電気信号に変換されて受信部4に出力され」る。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、次の(a)及び(b)を備える点で一致する。
(a) 「前記一組の超音波探触子の一方に送信信号を入力して超音波信号を発生する送信部」
(b) 「前記一組の超音波探触子の他方で超音波信号を受けて受信信号を受信する受信部」
d 引用発明の「切替部5、6」は、「連動して切替駆動され、送信部3、受信部4と超音波変換素子9、10とを接続する信号線7、8を相補的に交互に切り替えるものであり」、「超音波変換素子9、10の一方(たとえば超音波変換素子9)が圧電効果による超音波発生器として機能しているときには他方(たとえば超音波変換素子10)が圧電効果による超音波検出器として機能するように、それらの機能は交互に相補的に切り替わ[る]」ものである。したがって、本件補正発明と引用発明は、「超音波信号の伝播方向が逆転するように前記一組の超音波探触子の送受信を切り替える送受信切替部」を備える点で一致する。
e 引用発明の「データ処理部2」は、「送信部3の動作スタート信号を制御部1から受信して伝搬時間測定の起点とし、伝搬経路A,Bを通って受信部4に到達した測定信号に基づいて伝搬時間を算出する」ものである。したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記送信部で送信開始から前記受信部で受信完了までの超音波信号の伝播時間を計測する時間計測部」を備える点で一致する。
f 引用発明の「バンドパスフィルタ4b」も「受信部4」で受信した受信信号からノイズを除去するためのものであることは明らかであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記受信部で受信した受信信号からノイズを除去するフィルタ部」を備える点で共通する。
g バンドパスフィルタは、一般に、ハイパスフィルタと(ハイパスフィルタより高いカットオフ周波数の)ローパスフィルタで組み合わされた機能を有することは技術常識であるから、前記fも踏まえると、引用発明の「バンドパスフィルタ」も「前記受信信号から低周波ノイズを除去するハイパスフィルタ」を備えるといえる。
また、引用発明の「受信部4」の「可変ゲインアンプ(VGA)4c」は、本件補正発明の「ノイズ除去後の前記受信信号を増幅する増幅回路」に相当する。
以上を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記フィルタ部は、前記受信信号から低周波ノイズを除去するハイパスフィルタと、ノイズ除去後の前記受信信号を増幅する増幅回路と、を含[む]」点で一致する。
h 引用発明の「制御部1」は、「送信部3の可変直流電源3c、3dの出力電圧を適切な値に設定し、波形発生部3aに超音波波形の送信波形データを送り、受信部4のD/A変換器4dには可変ゲインアンプ4cのゲインを適切な所望の値に設定するための設定値を送り、可変ゲインアンプ4cのゲインを所望の値に設定する」ものであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記送信部で超音波信号に係る設定を行う制御部」を備える点で共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「 配管の上流側及び下流側に配置されて超音波信号を送受信する一組の超音波探触子と、前記一組の超音波探触子の一方に送信信号を入力して超音波信号を発生する送信部と、前記一組の超音波探触子の他方で超音波信号を受けて受信信号を受信する受信部と、超音波信号の伝播方向が逆転するように前記一組の超音波探触子の送受信を切り替える送受信切替部と、前記送信部で送信開始から前記受信部で受信完了までの超音波信号の伝播時間を計測する時間計測部と、前記受信部で受信した受信信号からノイズを除去するフィルタ部と、前記送信部で超音波信号に係る設定を行う制御部とを備えており、前記フィルタ部は、前記受信信号から低周波ノイズを除去するハイパスフィルタと、ノイズ除去後の前記受信信号を増幅する増幅回路と、を含む、流量計測装置」
である点。
b 相違点
本件補正発明においては、「制御部」が、「前記送信部で超音波信号の周波数を変更すると共に前記フィルタ部の周波数特性を変更する」ものであり、「前記送信部の送信信号を制御して、入力された配管径に応じて計測可能な前記超音波信号の周波数を変更し」、かつ、「変更された前記超音波信号の周波数に応じて前記ハイパスフィルタの周波数特性を変更する」ことにより「前記フィルタ部」は「超音波信号の周波数に応じたノイズを除去する」のに対して、
引用発明においては、「制御部1」が、「送信部3の可変直流電源3c、3dの出力電圧を適切な値に設定し、波形発生部3aに超音波波形の送信波形データを送り、受信部4のD/A変換器4dには可変ゲインアンプ4cのゲインを適切な所望の値に設定するための設定値を送り、可変ゲインアンプ4cのゲインを所望の値に設定する」ことは行っているものの、入力された配管径に応じて計測可能な超音波信号の周波数を変更したり、変更された超音波信号の周波数に応じてハイパスフィルタの周波数特性を変更して、ハイパスフィルタが超音波信号の周波数に応じたノイズを除去することまでは行っていない点。
イ 判断
前記相違点について検討する。
(ア) 送信超音波信号の周波数の変更について
a 「超音波流量計においては、大口径管で送受信間の距離が長い場合には伝送における減衰の影響が出るために比較的に低い周波数が望ましく、小口径管で送受信間の距離が短い場合比較的に高い周波数が測定精度の観点から望ましいことから、送信される超音波信号の周波数を流体が流れる配管の口径に応じて適切に設定する必要があること」は当業者にとって技術常識である(前記技術常識1を参照)。
b 引用発明では、「測定管11」の口径について特に特定されていないものの、「被測定流体が流れる測定管11を挟むようにして測定管11の外壁に、それぞれの超音波信号の伝搬経路A、Bが測定管11の管軸に対して所定の角度で斜め方向に交わる位置関係で上流側と下流側に対向配置され」た「超音波変換素子9」と「超音波変換素子10」の距離(送受信間の距離)が、伝送における超音波の減衰や測定精度に影響を与えてしまうことに鑑みれば、引用発明においても、測定者は測定管11の口径(配管径)を測定開始前に確認し、当該配管径に適切な周波数の超音波信号が送信されるように設定するようにして測定可能な管径の範囲を拡大できることは、自明である。
c そして、このような変更を行う際には、配管径の値が必要であるから、測定者が配管径の値を入力することができるようにすべきことは、当然の配慮事項である。
したがって、制御部1が当該入力された配管径に基づいて送信部3に出力する送信波形データを生成して、配管径に適切な周波数の超音波信号が送信されるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
(イ) フィルタ部の周波数特性の変更について
a 「超音波流量計において、測定精度やS/Nの向上のために、送信周波数の変化に対応して、フィルタにより受信側の周波数特性を変更すべきこと」は当業者にとって技術常識である(前記技術常識2を参照)。
b 前記(ア)において検討したとおり、当該配管径に適切な周波数の超音波信号が送信されるように設定するようにすることは自明であるところ、その際に、送信周波数の変更に応じて、「受信部4」の「バンドパスフィルタ4b」のハイパスフィルタ(「フィルタ部」の「ハイパスフィルタ」に相当する。)のカットオフ周波数を変更することは、前記技術常識2をわきまえた当業者にとっては、当然の配慮事項にすぎない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討のとおり、引用発明において、前記相違点を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明及び技術常識1、2からは当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張内容
請求人の主張は、概略次のとおりである。
<主張a>
引用文献1では、受信部にバンドパスフィルタ4bを設ける記載はあるものの、送信部に対する配管径に応じた超音波信号の周波数の変更と、その変更された超音波信号の周波数に応じたフィルタの周波数特性の変更とを同時に(関連付けて)制御する記載はない。
また、引用文献3には、流量計測に際して周波数が変化することを受けて、複数の通過帯域を持つ帯域通過フィルタを使用し、発振すべき超音波の周波数に応じて、帯域通過フィルタを切り替えているが、超音波の周波数は、送信部側にて配管径に応じて変更されたものではなく、超音波信号の周波数における送信部と受信部の双方の制御を同時に行うものではない。
<主張b>
引用文献3は、増幅器の後段に帯域通過フィルタを配置しているが、この並びであると信号成分を十分に増幅できない。
引用文献1の図6では、増幅器がフィルタの後段に位置しているが、引用文献1のフィルタはバンドパスフィルタであり、低周波ノイズを有効に除去するためのハイパスフィルタではない。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
折りたたみ中(クリックで表示)
a 主張aに対する当審の判断
前記イ(ア)において説示したとおり、「超音波流量計においては、大口径管で送受信間の距離が長い場合には伝送における減衰の影響が出るために比較的に低い周波数が望ましく、小口径管で送受信間の距離が短い場合比較的に高い周波数が測定精度の観点から望ましいことから、送信される超音波信号の周波数を流体が流れる配管の口径に応じて適切に設定する必要があること」は当業者にとって技術常識であるから、引用発明においても、測定者は配管径を測定開始前に確認し、当該配管径に適切な周波数の超音波信号が送信されるように設定するようにして測定可能な管径の範囲を拡大できることは、自明である。
また、前記イ(イ)において説示したとおり、「超音波流量計において、測定精度やS/Nの向上のために、送信周波数の変化に対応して、フィルタにより受信側の周波数特性を変更すべきこと」は当業者にとって技術常識であるから、引用発明においても、送信周波数の変更に応じて、「受信部4」の「バンドパスフィルタ4b」のハイパスフィルタ(「フィルタ部」の「ハイパスフィルタ」に相当する。)のカットオフ周波数を変更することは、当業者にとっては、当然の配慮事項にすぎない。
したがって、主張aを採用することはできない。
b 主張bに対する当審の判断
低周波ノイズ成分を増幅前に除去する構成は、引用文献1に記載されているから、引用文献3の増幅器とフィルタの配置に係る主張により、前記イ(ウ)の判断が左右されることはない。また、請求人の主張に沿って検討しても、信号成分を増幅するため、ノイズ成分を増幅前に除去することは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
バンドパスフィルタは、ハイパスフィルタとこれより高いカットオフ周波数のローパスフィルタの両機能を併せ備えるものであることは技術常識であるから、低周波ノイズ成分を除去しているといえる。
よって、主張bを採用することはできない。
エ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和3年10月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1~4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、技術常識1、2は、前記第2の3(2)イ(イ)、ウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明における前記第2の2(1)のアからウまでの限定を省いたものである(前記第2の2(1)参照)。
(2) そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において説示したとおり、引用発明及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明は、引用発明及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-009282