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特許拒絶査定不服審判

2022-009207

縫合糸通しデバイス

審判番号
2022-009207
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-531763外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月15日
審決日
2023年07月12日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-531763号「縫合糸通しデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日国際公開、WO2019/118835、令和 3年 2月22日国内公表、特表2021-506363〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年12月14日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。 令和 3年 6月16日付け 拒絶理由通知 令和 3年 9月29日提出 意見書及び手続補正書 令和 4年 2月 8日付け 拒絶査定 令和 4年 6月15日提出 審判請求書、同時に手続補正書 令和 4年11月11日提出 上申書 令和 4年11月30日付け 審尋 令和 5年 4月 6日提出 回答書 第2 令和4年6月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年6月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「縫合糸通しデバイスであって、 近位端と、遠位端に延びる湾曲した遠位管部分とを有する中空管と、 前記中空管の前記近位端に取り付けられたハンドルと、 第一の位置と第二の位置との間で移動可能な前記ハンドル上のアクチュエータと、 前記湾曲した遠位管部分内にあり、前記アクチュエータに接続された内部アームであって、第一の構成と第二の構成との間で移動可能である、内部アームと、を備え、 前記アクチュエータが前記第一の位置にある時、前記内部アームは、前記第一の構成にあり、前記遠位管部分からある角度で前記遠位管部分の外へ延び、 前記アクチュエータが前記第二の位置にある時、前記内部アームは前記第二の構成にあり、前記第一の構成と比較して前記遠位管部分内にさらに近位に退縮し、 前記湾曲した遠位管部分は、当該遠位管部分を通って中央に延びる正中線の上に3~5mmの範囲内で形成されたオーバーバイトを有すると共に、前記正中線の下に湾曲した部分を有し、 前記オーバーバイトは、前記正中線の下に湾曲した部分と同じ曲率で延びている、 縫合糸通しデバイス。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和3年9月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「縫合糸通しデバイスであって、 近位端と、遠位端に延びる湾曲した遠位管部分とを有する中空管と、 前記中空管の前記近位端に取り付けられたハンドルと、 第一の位置と第二の位置との間で移動可能な前記ハンドル上のアクチュエータと、 前記湾曲した遠位管部分内にあり、前記アクチュエータに接続された内部アームであって、第一の構成と第二の構成との間で移動可能である、内部アームと、を備え、 前記アクチュエータが前記第一の位置にある時、前記内部アームは、前記第一の構成にあり、前記遠位管部分からある角度で前記遠位管部分の外へ延び、 前記アクチュエータが前記第二の位置にある時、前記内部アームは前記第二の構成にあり、前記第一の構成と比較して前記遠位管部分内にさらに近位に退縮し、 前記湾曲した遠位管部分は、当該遠位管部分を通って中央に延びる正中線の上に3~5mmの範囲内で形成されたオーバーバイトを有すると共に、前記正中線の下に湾曲した部分を有する、縫合糸通しデバイス。」 2 補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された「オーバーバイト」について、「前記オーバーバイトは、前記正中線の下に湾曲した部分と同じ曲率で延びている、」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-215200号公報(拒絶査定の引用文献2。以下、「引用文献」という。)には、次の記載がある。 ア「【0015】本発明は、また、上記縫合糸捕捉装置を使用する種々のステップからなる、内視鏡用縫合糸の捕捉方法に関する。これらのステップは、ニードルチップを備えた細長ハウジングであって配置時にハウジングから縦方向及び径方向に伸張自在な縫合糸係蹄部を有する細長ハウジングを供給するステップを含む。これらのステップは、さらに、縫合されるべき組織をニードルチップによって貫通し、ニードルチップを、捕捉されるべき縫合糸に近接して配置するステップを含む。次に、縫合糸係蹄部は、ハウジングから配備され、縫合糸係蹄部のフック部に縫合糸を係合させるように操作される。次に、縫合糸係蹄部をハウジングの方向に退避させることによって、縫合糸係蹄部とハウジングとの間に縫合糸を捕捉する。次に、内視鏡用針を組織から取り除いて、取り除かれた縫合糸を組織内に通すようにする。本方法は、さらに、縫合糸係蹄部が配備された後にハウジングをその軸を中心に回転させ、係蹄部を所定の空間領域内で移動させることによって、この領域内に延在する縫合糸を捕捉できるようにするステップを含んでもよい。」 イ「【0017】図1,2は、本発明の1実施形態に係る内視鏡用縫合針10を示している。針10は、一端から延在する細長の管状ハウジング14を有するハンドル12を備えている。ハウジング14は末端部16を終端とし、好ましい実施形態において、末端部16にはニードルチップ18が備わる。また、ハウジング14は、ニードルチップ18に対して基端側に末端部16に隣接して、側面に位置する開口部すなわち側方開口部20を備えている。開口部20は、主として、縫合糸を受け入れる凹部として機能するとともに、アクセス開口としても機能する。針10は、また、縫合糸係蹄アセンブリ30を備えている。この縫合糸係蹄アセンブリ30は、親指で作動するトリガ32と、縫合糸に係合する末端部すなわちフック部34と、予備形成されたフック支持部36と、トリガ32と予備形成された支持部36との間に延在する硬質の細長支持部材38(図3に最良に示される)とからなる。」 ウ「【0018】図3,4に最良に示されるように、縫合糸40に係合するフック部34は、縫合糸用フック支持部36の有する特定の形状によって、縫合糸40に係合させるべく開口部20に関して縦横方向に移動することができる。縫合糸用フック支持部36は、開口部20に関して末端方向に突出するように配置されたときに所定量湾曲させるために、可橈性を有するとともに、軸42から離隔している側が凹に湾曲する凹状湾曲側部37を有して予備形成されている。その結果、上記支持部36が開口部20に対して末端方向に突出せしめられたとき、フック部34は、内視鏡用縫合針10の軸42から所定間隔Dをおいて離隔する。支持部36は、開口部20内に又は開口部20の近接位置にフック部34を収容するように退避させたときに、ハウジング14の形状に対応することができるように充分な可撓性を有している。 【0019】好ましい実施形態において、予備形成されたフック支持部36は、硬質の細長支持シャフト38の末端部に取り付けられ、トリガ32に接続される。あるいは、フック支持部36は、適切な材料が利用される場合(例えば、フック支持部36及びシャフト38は、長手方向全体に亘って、ニチノールで形成することができる。)、支持シャフト38と一体化した延長部であってもよい。細長の支持シャフト38は、図4に示す退避位置まで後退するか、図3に示す伸張位置まで伸張するか、のいずれかに充分な所定の範囲内で、可橈性を有する支持部36を縦方向に移動させることができるのに充分な剛性を備えていさえすればよい。軸42に対するフック部34の側方変位の範囲Dは、フック支持部36が予備形成されている湾曲率によって異なる。側方変位の範囲は、微少--フック支持部36が全く湾曲を有しないで予備形成されており、実質的に、直線の縦長支持シャフトの直線延長部である場合(図示せず)--から、軸42から離隔してフック部34に対向し始める支持部36における90度以上の湾曲(図示せず)までのいずれに変化してもよい。」 エ「【0022】図7,8は、本発明の第3の実施形態に係る湾曲末端部216を有する内視鏡用縫合針200を示している。末端部216の先端の軸242は、ハンドルの軸に対して所定角度を有する所望の選択方向に位置している。側方に位置する開口部(図1の開口部20に類似)が湾曲末端部の先端に対して基端側に設けられた場合、予備形成されたフック部234は、末端部の軸に対して突出し、直線形態の針10と同様に機能する。図7,8に示すように、内視鏡用針200は、末端部における部材の相対的な配置が異なるが、他の全ての点において内視鏡用針10に類似している。針の末端部が、多様な形状[コルク抜き形(螺旋形)、「Uターン」形等]に形成されてもよいことは明白である。」 オ「 [図:0001404175000001.jpg] 」 カ「 [図:0001404175000002.jpg] 」 キ「 [図:0001404175000003.jpg] 」 ク「 [図:0001404175000004.jpg] 」 ケ「 [図:0001404175000005.jpg] 」 コ「 [図:0001404175000006.jpg] 」 サ 上記アの下線部の記載からすれば、引用文献には「縫合糸を組織内に通す内視鏡用針」に係る発明が記載されている。 シ 上記イの下線部の記載及びオ,カの図面の記載からすれば、針10は「細長の管状のハウジング14」を有しており、このことは第3の実施形態(上記エ,ケ,コの記載参照。)においても同様であり、当該ハウジング14が、近位端と遠位端の湾曲末端部216を有しているといえるから、当該第3の実施形態の針200は、「近位端と湾曲末端部216とを有する細長の管状のハウジング14」を有している。 ス 上記イ,エの下線部の記載及びオ,カの図面の記載からすれば、引用文献記載の針10は、「細長の管状のハウジング14を一端から延在するハンドル12」を有しており、このことは第3の実施形態(上記エ,ケ,コの記載参照。)の針200でも同様である。 セ 上記ウの下線部の記載からすれば、トリガ32は支持シャフト38に接続され、当該支持シャフト38は伸張位置と退避位置のいずれかに充分な所定の範囲内で縦方向に移動するものであるから、上記イ,ウの下線部の記載及びオ,カの図面の記載からすれば、針10は「伸張位置と退避位置との間で移動可能なハンドル12上のトリガ32」を備えており、このことは第3の実施形態の針200(上記エ,ケ,コの記載参照。)においても同様である。 ソ 上記イ~エの下線部の記載及びキ~コの図面の記載からすれば、第3の実施形態の針200は、「湾曲末端部216内にあり、トリガ32に接続されたシャフト38及びフック支持部36であって、伸張位置まで伸張する構成と退避位置まで退避する構成との間で移動可能である、シャフト38及びフック支持部36と、を備え」ている。 タ 上記ウの下線部の記載からすれば、トリガ32は、支持シャフト38に接続され、当該支持シャフト38は伸張位置と退避位置のいずれかに充分な所定の範囲内で縦方向に移動するものであるから、当該トリガ32は、当該トリガ32に接続された支持シャフト38の伸張位置に対応するトリガ32の伸張位置と退避位置に対応するトリガ32の退避位置との間で移動することは明らかであり、引用文献の第3の実施形態(上記エ,ケ,コの記載参照。)においても、「トリガ32が伸張位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、伸張位置にあり、湾曲末端部216からある角度で湾曲末端部216の外へ延び、トリガ32が退避位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、退避位置にあり、伸張位置と比較して湾曲末端部216内にさらに近位に退縮し」ている。 チ 上記キ~コの図面の記載からすれば、第3の実施形態(上記ケ,コの記載参照。)においても、湾曲末端部216は、湾曲末端部216を通って中央に延びる正中線に相当する軸42の下に湾曲した部分を有していることが推認できるから、当該第3の実施形態においても、「湾曲末端部216は、湾曲末端部216を通って中央に延びる正中線の下に湾曲した部分」を有している。 上記サ~チの認定に基づけば、引用文献には、第3の実施形態に注目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「縫合糸を組織内に通す内視鏡用針であって、 近位端と湾曲末端部216を有する細長の管状のハウジング14と、 細長の管状のハウジング14を一端から延在するハンドル12と、 伸張位置と退避位置との間で移動可能なハンドル12上のトリガ32と、 湾曲末端部216内にあり、トリガ32に接続されたシャフト38及びフック支持部36であって、伸張位置まで伸張する構成と退避位置まで退避する構成との間で移動可能である、シャフト38及びフック支持部36と、を備え、 トリガ32が伸張位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、伸張位置にあり、湾曲末端部216からある角度で湾曲末端部216の外へ延び、トリガ32が退避位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、退避位置にあり、伸張位置と比較して湾曲末端部216内にさらに近位に退縮し、 湾曲末端部216は、湾曲末端部216を通って中央に延びる正中線の下に湾曲した部分を有している、 縫合糸を組織内に通す内視鏡用針。」 (3)対比 ア 引用発明の「縫合糸を組織内に通す内視鏡用針」は、機能及び構造上、本件補正発明の「縫合糸通しデバイス」に相当する。 イ 引用発明の「湾曲末端部216」及び「細長の管状のハウジング14」は、機能及び構造上、それぞれ本件補正発明の「遠位端に延びる湾曲した遠位管部分」及び「中空管」に相当するから、引用発明の「近位端と湾曲末端部216を有する細長の管状のハウジング14」は、本件補正発明の「近位端と、遠位端に延びる湾曲した遠位管部分とを有する中空管」に相当する。 ウ 引用発明の「細長の管状のハウジング14を一端から延在するハンドル12」の「一端」とは、細長の管状のハウジング14の近位端であるから、引用発明の「細長の管状のハウジング14を一端から延在するハンドル12」は、本件補正発明の「中空管の近位端に取り付けられたハンドル」に相当する。 エ 引用発明の「トリガ32」は、機能及び構造上、本件補正発明の「アクチュエータ」に相当するから、引用発明の「伸張位置と退避位置との間で移動可能なハンドル12上のトリガ32」は、本件補正発明の「第一の位置と第二の位置との間で移動可能な前記ハンドル上のアクチュエータ」に相当する。 オ 引用発明の「シャフト38及びフック支持部36」、「伸張位置まで伸張する構成」及び「退避位置まで退避する構成」は、機能及び構造上、それぞれ本件補正発明の「内部アーム」、「第一の構成」及び「第二の構成」に相当するから、引用発明の「湾曲末端部216内にあり、トリガ32に接続されたシャフト38及びフック支持部36であって、伸張位置まで伸張する構成と退避位置まで退避する構成との間で移動可能である、シャフト38及びフック支持部36」は、本件補正発明の「湾曲した遠位管部分内にあり、アクチュエータに接続された内部アームであって、第一の構成と第二の構成との間で移動可能である、内部アーム」に相当する。 カ 引用発明の「トリガ32が伸張位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、伸張位置まで伸張する構成にあり、湾曲末端部216からある角度で湾曲末端部216の外へ延び、トリガ32が退避位置にある時、シャフト38及びフック支持部36は、退避位置にあり、伸張位置と比較して湾曲末端部216内にさらに近位に退縮」する点は、機能上、本件補正発明の「アクチュエータが第一の位置にある時、内部アームは、前記第一の構成にあり、前記遠位管部分からある角度で前記遠位管部分の外へ延び、アクチュエータが前記第二の位置にある時、前記内部アームは前記第二の構成にあり、前記第一の構成と比較して前記遠位管部分内にさらに近位に退縮」する点に相当する。 キ 引用発明の「湾曲末端部216は、湾曲末端部216を通って中央に延びる正中線の下に湾曲した部分を有」する点は、機能及び構造上、本件補正発明の「湾曲した遠位管部分は、当該遠位管部分を通って中央に延びる正中線の下に湾曲した部分を有」する点に相当する。 上記ア~キの対比からすれば、本件補正発明と引用発明は、次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 縫合糸通しデバイスであって、 近位端と、遠位端に延びる湾曲した遠位管部分とを有する中空管と、 前記中空管の前記近位端に取り付けられたハンドルと、 第一の位置と第二の位置との間で移動可能な前記ハンドル上のアクチュエータと、 前記湾曲した遠位管部分内にあり、前記アクチュエータに接続された内部アームであって、第一の構成と第二の構成との間で移動可能である、内部アームと、を備え、 前記アクチュエータが前記第一の位置にある時、前記内部アームは、前記第一の構成にあり、前記遠位管部分からある角度で前記遠位管部分の外へ延び、 前記アクチュエータが前記第二の位置にある時、前記内部アームは前記第二の構成にあり、前記第一の構成と比較して前記遠位管部分内にさらに近位に退縮し、 前記湾曲した遠位管部分は、当該遠位管部分を通って中央に延びる正中線の下に湾曲した部分を有している、 縫合糸通しデバイス。 【相違点】 1.湾曲した遠位部分が、本件補正発明では、遠位管部分を通って中央に延びる正中線の上に3~5mmの範囲内で形成されたオーバーバイトを有するのに対し、引用発明では、そのようなオーバーバイトが存在するか不明である点。 2.本件補正発明では、オーバーバイトが、正中線の下に湾曲した部分と同じ曲率で延びているのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。 (4)判断 以下、上記相違点1,2について検討する。 引用発明は、本件補正発明同様、遠位管部分を組織に突き刺して縫合糸を通すものであるから、当該突き刺しがやりやすいような遠位管部分の形状とすることは当業者の通常の創作にすぎず、また、具体的構成として遠位管部分の先端にオーバーバイトを設けることは通常の態様にすぎない(必要であれば、米国特許第2579192号明細書の図1,3,5参照。)。 よって、引用発明において、状況に応じて湾曲末端部216に突き刺しがやりやすいようにオーバーバイトを設けるようにすることは当業者が容易になし得ることである。そして、その際に当該オーバーバイトの具体的数値を正中線の上に3~5mmとすることは技術の具体的適用に伴う設計的事項にすぎない。 また、通常、湾曲した遠位管部分を構成するにあたっては、あえて特定しなければ、工作の容易性や円滑な組織への貫通のため、曲率半径は同じにするものである(必要であれば、拒絶査定の引用文献1(米国特許出願公開第2014/0222033号明細書)の図2~7,25,27a~d,37~55,57,59a,60a,61a~62参照。)。 したがって、引用発明において、上記相違点1及びで相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得ることである。 ここで、出願人は、本願発明は当該オーバーバイトが正中線の上の範囲が3~5mmであるところ、令和5年4月6日提出の回答書において、当該範囲を特定することにより、遠位管の先端を組織から突き出しやすくなり、操作性を向上できる旨主張している(上記回答書1頁下から8行~2頁16行)。 しかし、オーバーバイトの正中線の上の範囲は、先端位置が同じ3~5mmであっても、例えば曲率半径が5mmの場合と10mmの場合では、形状が大きく相違し、当該形状の相違により操作性は大きく異ものと認められる。 よって、オーバーバイトの正中線の上の範囲のみを3~5mmと特定したことにより、操作性について一義的な作用効果が生じるものではない。 したがって、上記出願人の主張は認められない。 また、出願人は上記回答書において、「オーバーバイトが、正中線の下の部分と同じ曲率で延びることで、穿刺をスムーズに行えますので、作業性が向上するだけでなく、組織に対して貫通方向以外へ力が加わることを極力軽減でき、組織に対するダメージを最小限にしながら、オーバーバイトを組織に貫通させることができます。」(上記回答書2頁下から8~5行。)と主張している。 しかし、当該回答書で主張された作用効果は、上記したとおり、湾曲した遠位管部分の構成として通常の構成を採用したことにより生じる自明の効果にすぎず、格別の作用効果とは認められない。 以上のとおりであるから、相違点1,2に係る本件補正発明の構成の採用は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものである。 そして、上記で検討したように、本件補正発明の作用効果は、引用発明から当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年6月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明、令和3年9月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「オーバーバイト」についての「前記オーバーバイトは、前記正中線の下に湾曲した部分と同じ曲率で延びている、」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(3),(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-009207

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