特許拒絶査定不服審判
2022-008986
印刷装置及び媒体アダプタ
- 審判番号
- 2022-008986
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-027145外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年06月13日
- 審決日
- 2023年10月05日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カシオ計算機株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 27145「印刷装置及び媒体アダプタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019-142062〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月19日の出願であって、令和3年12月10日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年2月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年6月13日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
「【請求項1】
長尺状のテープを収容した媒体アダプタから繰り出された前記テープに印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体アダプタを収容可能なアダプタ収容部と、
前記アダプタ収容部を外部に露出させる第1開位置と、前記アダプタ収容部を覆う第1閉位置との間で移動可能な蓋であって、前記第1閉位置において前記アダプタ収容部に収容された前記媒体アダプタに押圧荷重を印加する押圧部を有する蓋と、
を備え、
前記媒体アダプタは、
前記テープを収容可能なテープ収容部と、
前記テープ収容部を外部に露出させる第2開位置と、前記テープ収容部を覆う第2閉位置との間で、前記テープ収容部の一端側に設けられた第1支点部を中心として回転可能なアダプタ蓋と、
前記テープ収容部の他端側において当該テープ収容部及び前記第2閉位置に位置する前記アダプタ蓋と隣り合う箇所に設けられた、前記アダプタ蓋により覆われないガイド部であって、前記テープ収容部から繰り出された前記テープをガイドするガイド部と、
を含み、
前記アダプタ蓋における面内中心よりも前記ガイド部側の箇所には、前記テープ収容部に設けられたフック受け部と係合するためのフック部が形成されており、
前記蓋の前記押圧部は、前記第2閉位置に位置する前記アダプタ蓋における当該アダプタ蓋の面内中心と前記テープ収容部の他端側の位置との間の箇所に設けられた荷重受け部に前記押圧荷重を印加し、
前記アダプタ蓋における前記第1支点部側から、前記フック部側に向かう方向に沿って、前記荷重受け部と、前記フック部と、が互いに直線状に並んでいる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記蓋は、前記アダプタ収容部の第2支点部を中心として回転することにより前記第1開位置と前記第1閉位置との間で移動する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、
前記テープ収容部に収容される前記テープの幅方向の大きさに応じて複数種類の前記媒体アダプタが用意されており、
前記アダプタ収容部は、前記媒体アダプタを支持する支持部であって、当該媒体アダプタに収容されている前記テープの幅方向における所定位置を自装置内部で位置決めする支持部を有する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置において、
前記支持部は、前記テープ収容部に収容された前記テープの幅方向における中心部の位置を、前記アダプタ収容部の底面から所定の距離だけ離れた位置に位置決めするように、前記複数種類の媒体アダプタをそれぞれ支持する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の印刷装置において、
前記複数種類の媒体アダプタのそれぞれにおける、当該媒体アダプタに収容される前記テープの幅方向の外形寸法は、前記テープ収容部に収容される前記テープの幅方向の大きさに応じて異なり、
前記アダプタ収容部は、前記テープの幅方向の外形寸法が異なる前記複数種類の媒体アダプタをそれぞれ収容可能な凹形状を有する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記第1閉位置に位置する前記蓋の前記押圧部の下端位置と、前記アダプタ収容部に収容された前記複数種類の媒体アダプタのそれぞれの前記荷重受け部の位置と、の間の距離が互いに同一となるように、前記複数種類の媒体アダプタの前記荷重受け部がそれぞれ互いに異なる形状に形成されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷装置において、
前記複数種類の媒体アダプタのうち、最も幅の狭い前記テープを収容する前記媒体アダプタの前記荷重受け部は、前記アダプタ蓋に形成された平坦面である、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の印刷装置において、
前記複数種類の媒体アダプタのうち、最も幅の狭い前記テープとは異なる前記テープを収容する前記媒体アダプタの前記荷重受け部は、前記アダプタ蓋にそれぞれ形成されたすり鉢状の凹部の底面である、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
長尺状のテープを収容した媒体アダプタから繰り出された前記テープに印刷を行う印刷装置であって、前記媒体アダプタを収容可能なアダプタ収容部と、前記アダプタ収容部を外部に露出させる第1開位置と前記アダプタ収容部を覆う第1閉位置との間で移動可能な蓋であって、前記第1閉位置において前記アダプタ収容部に収容された前記媒体アダプタに押圧荷重を印加する押圧部を有する蓋と、を備えた印刷装置、に装着される媒体アダプタであって、
前記テープを収容可能なテープ収容部と、
前記テープ収容部を外部に露出させる第2開位置と、前記テープ収容部を覆う第2閉位置との間で、前記テープ収容部の一端側に設けられた第1支点部を中心として回転可能なアダプタ蓋と、
前記テープ収容部の他端側において当該テープ収容部及び前記第2閉位置に位置する前記アダプタ蓋と隣り合う箇所に設けられた、前記アダプタ蓋により覆われないガイド部であって、前記テープ収容部から繰り出された前記テープをガイドするガイド部と、
を備え、
前記アダプタ蓋における面内中心よりも前記ガイド部側の箇所には、前記テープ収容部に設けられたフック受け部と係合するためのフック部が形成されており、
前記アダプタ蓋は、前記第2閉位置に位置する前記アダプタ蓋における当該アダプタ蓋の面内中心と前記テープ収容部の他端側の位置との間の箇所に設けられた荷重受け部であって、前記蓋の前記押圧部からの前記押圧荷重を受ける荷重受け部を有し、
前記アダプタ蓋における前記第1支点部側から、前記フック部側に向かう方向に沿って、前記荷重受け部と、前記フック部と、が互いに直線状に並んでいる、
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項10】
請求項9に記載の媒体アダプタであって、
前記アダプタ蓋の前記フック部は、前記アダプタ蓋の面内中心側に移動可能な弾性部材を有しており、
前記テープ収容部の前記フック受け部は、前記アダプタ蓋が前記第2閉位置に向かって移動したときに、前記フック部と係合される、
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項11】
請求項10に記載の媒体アダプタであって、
前記印刷装置は、前記アダプタ収容部に収容された前記媒体アダプタを支持する支持部であって、前記媒体アダプタに収容されている前記テープの幅方向における所定位置を前記印刷装置の内部で位置決めする支持部を有しており、
前記テープ収容部は、前記支持部と当接するヒレ部を有し、
前記アダプタ蓋の前記フック部と前記テープ収容部の前記フック受け部とは、前記アダプタ蓋が前記第2閉位置に位置する場合には前記アダプタ蓋の前記第2開位置への移動を規制する態様で係合し、かつ前記アダプタ蓋の前記フック部を前記アダプタ蓋の面内中心側に移動させることで係合が解除されるよう構成されている
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項12】
請求項11に記載の媒体アダプタであって、
前記テープ収容部に収容される前記テープの幅方向の大きさに応じて複数種類の前記媒体アダプタが用意されており、
前記複数種類の前記媒体アダプタは、前記テープ収容部に収容された前記テープの幅方向における中心部の位置が、前記アダプタ収容部の底面から所定の距離だけ離れた位置に位置決めされるように、前記支持部によりそれぞれ支持される、
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項13】
請求項12に記載の媒体アダプタであって、
前記第1閉位置に位置する前記蓋の前記押圧部と、前記アダプタ収容部に収容された前記複数種類の媒体アダプタのそれぞれの前記荷重受け部と、の間の距離が互いに同一となるように、前記複数種類の媒体アダプタの前記荷重受け部がそれぞれ互いに異なる形状に形成されている、
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の媒体アダプタであって、
前記複数種類の媒体アダプタのうち、最も幅の狭い前記テープを収容する前記媒体アダプタの前記荷重受け部は、前記アダプタ蓋に形成された平坦面である、
ことを特徴とする媒体アダプタ。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14の何れか1項に記載の媒体アダプタであって、
前記複数種類の媒体アダプタのうち、最も幅の狭い前記テープとは異なる前記テープを収容する前記媒体アダプタの前記荷重受け部は、前記アダプタ蓋にそれぞれ形成されたすり鉢状の凹部の底面である、
ことを特徴とする媒体アダプタ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和3年12月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、以下の理由を含むものである。
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1,3-8
・引用文献等 1
・請求項2,9-13
・引用文献等 1-2
・請求項14-15
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2011-110854号公報
2.特開2002-179300号公報」
1 引用例
(1)引用例1
本願の出願日前の平成23年6月9日に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された特開2011-110854号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体であるテープに対してインクリボンを用いた印字を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドを経由するように前記テープを搬送するテープ駆動軸と、前記印字ヘッドを経由するように前記インクリボンを搬送するリボン駆動軸とを備えたテープ印字装置に着脱可能なテープカセットであって、
上面、底面、前面、および一対の側面を有し、前記上面を有する上ケースと、前記底面を有する下ケースとからなるカセットケースと、
前記カセットケース内で前記テープが収納されるテープ収納部と、
前記カセットケース内で前記インクリボンが収納されるインクリボン収納部と、
前記カセットケースを上下方向に貫通する空間であって、前記印字ヘッドが前記カセットケースの底面側から挿入されるヘッド挿入部と、
前記ヘッド挿入部における前記印字ヘッドの挿入位置よりも前記テープの搬送方向の上流側に設けられた、前記カセットケースの底面側から前記テープ駆動軸が挿入される筒状体であって、前記テープ駆動軸によって前記テープ収納部から前記テープを引き出す方向に回転駆動されるテープ駆動ローラと、
前記ヘッド挿入部における前記印字ヘッドの挿入位置よりも前記テープの搬送方向における下流側に設けられた、前記カセットケースの底面側から前記リボン駆動軸が挿入される筒状体であって、前記リボン駆動軸によって前記インクリボン収納部から前記インクリボンを引き出す方向に回転駆動されるリボン駆動ローラと、
前記テープ印字装置に装着された前記テープカセットの前記上面を覆う前記テープ印字装置の蓋部に設けられた第1押え部材によって、前記テープ駆動ローラと近接する位置で上方から押圧される第1押え受部と、
前記テープ印字装置に装着された前記テープカセットの前記上面を覆う前記テープ印字装置の蓋部に設けられた第2押え部材によって、前記リボン駆動ローラと近接する位置で上方から押圧される第2押え受部とを備えたことを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
前記テープ印字装置の第1カセット支持部によって下方から支持される部位であって、前記ヘッド挿入部における前記印字ヘッドの挿入位置よりも前記テープの搬送方向における上流側に設けられ、前記カセットケースの前記ヘッド挿入部を臨む第1支持受部と、
前記テープ印字装置の第2カセット支持部によって下方から支持される部位であって、前記ヘッド挿入部における前記印字ヘッドの挿入位置よりも前記テープの搬送方向における下流側に設けられ、前記カセットケースの前記ヘッド挿入部を臨む第2支持受部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のテープカセット。
【請求項3】
前記第1押え受部及び前記第2押え受部は、
前記テープ印字装置に装着された前記テープカセットを平面視した場合に、前記第1押え受部と前記第2押え受部とを結ぶ仮想的な第1の線が、前記テープ駆動ローラと前記リボン駆動ローラとを結ぶ仮想的な第2の線と交差するように設けられ、
さらに、前記第1の線と前記第2の線とが交差する仮想的な点の近傍に、前記ヘッド挿入部に挿入された前記印字ヘッドが位置するように設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のテープカセット。
【請求項4】
前記カセットケースに収納される前記テープの上下方向中心位置と、前記第1押え受部および前記第2押え受部のそれぞれとの距離である第1の距離は、前記テープカセットの上下方向高さにかかわらず一定であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のテープカセット。
【請求項5】
前記カセットケースに収納される前記テープの上下方向中心位置と、前記第1押え受部および前記第2押え受部のそれぞれとの距離である第1の距離は、前記テープカセットの上下方向高さにかかわらず一定であり、
前記カセットケースに収納される前記テープの上下方向中心位置と、前記第1支持受部および前記第2支持受部のそれぞれとの距離である第2の距離は、前記テープカセットの上下方向高さにかかわらず一定であり、
前記第1の距離と前記第2の距離とは等しいことを特徴とする請求項2に記載のテープカセット。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ印字装置に着脱自在なテープカセットに関する。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなテープカセットにおいて、テープ駆動ローラおよびリボン巻取スプールはそれぞれ対応する軸体によって回転される可動部品である。そのため、テープ印字装置での印字動作時には、それぞれ回転駆動されるテープ駆動ローラおよびリボン巻取スプールに振動が発生する。すると、テープ印字装置での印字動作中に、印字ヘッドの印字位置に対してラベルテープおよびインクリボンが上下方向に位置ズレを生じたり、ラベルテープおよびインクリボンの安定した走行が妨げられたりするおそれがあった。」
エ 「【0023】
はじめに、本実施形態に係るテープ印字装置1の概略構成について説明する。テープ印字装置1は1台で感熱紙テープのみが収納されたサーマルタイプ、印字テープとインクリボンとが収納されたレセプタタイプ、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとが収納されたラミネートタイプ、両面粘着テープと感熱紙テープとが収納された感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能な汎用のテープ印字装置である。
【0024】
図1に示すように、テープ印字装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2上面の前側には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図4参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。
【0025】
カセットカバー6は、平面視略長方形状の蓋部である。カセットカバー6は、本体カバー2の背面上方の左右両端部において、図2に示す、本体カバー2の内部に形成されたカセット装着部8が露出する開放位置と、図1に示す、カセット装着部8を覆う閉鎖位置との間で回動可能に軸支されている。カセット装着部8は、テープカセット30を着脱自在な領域として形成されている。カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印字する印字機構等が設けられているが、詳細は後述する。
【0026】
図2に示すように、カセットカバー6の前面略中央には、その下面から下方に突出する鉤状の係止ロック4Aが設けられている。本体カバー2には、係止ロック4Aに対応する位置にロック孔4Bが設けられており、図1に示すようにカセットカバー6が閉じられると、係止ロック4Aがロック孔4Bに嵌め込まれて係止されることで、カセットカバー6の自然開放が防止される。また、カセットカバー6の下面には、さらに、下面から下方へ突出する押え部材7A、7Bと、周縁押え部材9A~9Cとが設けられている。
【0027】
図3に示すように、第1押え部材7Aは、カセットカバー6の下面における左右方向の略中心位置から突出する角柱状の部材である。第1押え部材7Aは、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の上ケース31Aに設けられた第1押え受部39C(図14参照)に上方から当接し、押圧する部材である。第2押え部材7Bは、カセットカバー6の下面における左縁部近傍から突出する角柱状の部材である。第2押え部材7Bは、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の上ケース31Aに設けられた第2押え受部33(図14参照)に上方から当接し、押圧する部材である。第1押え受部39Cおよび第2押え受部33については、後で詳述する。
【0028】
周縁押え部材9A~9Cは、それぞれ、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の周縁、より詳細には角部32Aの上面の3箇所に上方から当接し、押圧する部材である。なお、図3では、係止ロック4、周縁押え部材9A~9C等の、押え部材7A、7B以外の図示は省略されている。」
オ 「【0059】
図4に示すように、上ケース31Aおよび下ケース31Bには、それぞれ、後述する第1テープスプール40、第2テープスプール41およびリボン巻取スプール44(図5および図6参照)を回転可能に支持する支持孔65A、66A、67A、および支持孔65B、66B、67B(図15参照)が設けられている。図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30では、カセットケース31内には、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第2テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、およびリボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。」
カ 「【0062】
図4に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(つまり、上面30Aから底面30B)に亘って設けられている。半円溝34Kは、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の回転中心である軸支部12Aがカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
【0063】
本実施形態のテープカセット30は、ラミネートタイプとして実装されている(図5および図6参照)。そのため、アーム部34内には、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム前面35の先端部は後方へ向かって屈曲しており、アーム前面35とアーム背面37の先端により、開口34Aが形成されている。開口34Aで重合された状態となったフィルムテープ59とインクリボン60とは、後述する開口部77に向けて排出される。
【0064】
図5および図6に示すように、アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、カセットケース31の前方に設けられている。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面に設けられた開口部77によってテープカセット30の前面でも外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、テープ印字装置1のサーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入され、アーム部34の開口34Aから排出されたフィルムテープ59には、開口部77において、サーマルヘッド10による印字が行われる。」
キ 「【図3】
[図:0001404168000001.jpg]
」
ク 「【図4】
[図:0001404168000002.jpg]
」
ケ 「【図14】
[図:0001404168000003.jpg]
」
コ 上記アより、「テープカセット」が着脱可能に装着される「テープ印字装置」が記載されていると認められる。
サ 上記オより、テープはスプールに巻回されたものであると認める。
シ 上記カより、テープカセットには、テープを案内するアーム部34が延びて設けられていると認められる。
ス オ【0064】より、ア【特許請求の範囲】の「印字ヘッド」は、サーマルヘッド10と対応すると認められる。
セ 【図3】より、第1押え部材7Aは、カセットカバー6の下面における左右方向及び上下方向の略中心位置から突出することが看取でき、【図4】及び【図14】より、テープカセット30のアーム部は、上下方向の一側から伸びて設けられていることが看取できる。
そうすると、上記ア乃至カの記載事項及び図面、並びに上記コ乃至セの認定事項より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「テープカセットが着脱可能に装着されるテープ印字装置であって、
テープカセットは、
上面、底面、前面、および一対の側面を有し、前記上面を有する上ケースと、前記底面を有する下ケースとからなるカセットケースと、前記カセットケース内でスプールに巻回されたテープが収納されるテープ収納部と、を備え、
テープを案内するアーム部が上下方向の一側から延びて設けられ、
テープ印字装置は、
印字媒体であるテープに対してインクリボンを用いた印字を行うサーマルヘッド10と、前記サーマルヘッド10を経由するように前記テープを搬送するテープ駆動軸と、前記サーマルヘッド10を経由するように前記インクリボンを搬送するリボン駆動軸とを備え、
テープカセットの交換時に開閉されるカセットカバーが設けられ、
カセットカバーは、平面視略長方形状の蓋部であって、本体カバー2の内部に形成されたカセット装着部が露出する開放位置と、カセット装着部を覆う閉鎖位置との間で回動可能に軸支されており、
カセット装着部は、テープカセットを着脱自在な領域として形成されており、
カセットカバーの下面には、さらに、下面から下方へ突出する押え部材7A、7Bと、周縁押え部材9A~9Cとが設けられ、第1押え部材7Aは、カセットカバーの下面における左右方向及び上下方向の略中心位置から突出する角柱状の部材であり、
第1押え部材7Aは、テープカセットがカセット装着部に装着され、カセットカバーが閉じられた場合に、テープカセットの上ケース31Aに設けられた第1押え受部39Cに上方から当接し、押圧する部材であり、
アーム部の開口34Aから排出されたテープに、サーマルヘッド10による印字が行われる、
テープ印字装置。」
(2)引用例2
本願の出願日前の平成14年6月26日に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された特開2002-179300号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、文字付テープを作成するテープ印字装置に使用されるテープユニットを交換装着可能なテープカセット及びそのテープユニットの構成に関するものである。」
イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種のテープの片面には予め粘着剤を塗布しておき、印字済みのテープを望みの箇所に貼着できるようにしているため、ケースの巻回部の両側端面には前記粘着剤が若干滲み出すことになる。そして、カセットケース本体内から引き出される印字テープの幅方向の両側縁が、当該カセットケース本体の引き出し部等で擦れることにより、これら擦れ箇所には前記粘着剤がこびり付き、カセットユニットの交換回数が多くなるほど粘着剤の堆積量が大きくなって、印字テープの円滑な引き出しができなくなるとか、印字テープの搬送方向が斜めになって、当該印字テープに対する文字等の印刷箇所がずれる等の不良が発生するという問題があった。【0004】本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、所定回数以上のテープユニットの交換を規制して、良好な印字品質を保証できるテープカセット及びそのためのテープユニットを提供することを目的とするものである。」
ウ 「【0011】図1において、テープ印字装置1の本体1aの上面には、文字等のキャラクタを複数行に渡って入力し、文書データ(コードデータ)からなるテキストを作成するための文字入力キー、テキストの印字を指令する印字キー、液晶ディスプレイ3上でカーソルを上下、左右に移動させるカーソルキー、及び、改行指令や各種処理の実行、選択を指令する制御キー等が設けられたキーボード部2と、キーボード部2にて入力された文字等を表示する液晶ディスプレイ3及び後述するテープカセット5を収納するカセット収納部8が配設され、このカセット収納部8を覆うための収納カバー6が本体1aの後端に開閉可能に枢支されている。なお、図1に示すように、カセット収納部8の左側には、印字済みのテープが本体1aの排出口1bから排出される箇所で切断するためのテープカッター7が配置され、その押し操作ボタン7aが本体1aの左側面の後寄り部位に配置されている。」
エ 「【0019】次に、図2~図4に基づいて、前記のように構成されるテープ印字装置1のカセット収納部8に収納されるテープカセット5の構成について説明する。図2はテープカセット5の分解斜視図、図3はカセット蓋33を外した状態でテープユニット20を収納したテープカセット5の斜視図である。テープカセット5は、基本的に、カセットケース本体32と、これに対して着脱可能とされたカセット蓋33と、カセットケース本体32のうちカセット蓋33にて覆われなかったテープ引き出し部36及びテープ送りローラ11等が配置されたテープ送り部等の上方を覆う補助カバー体31とから構成されている。これらは各々合成樹脂製の射出成形品である。図2及び図4(b)では、後述の係止長孔39等カセットケース本体32の前部の形状を明示するため、テープ送りローラ11及び補助カバー体31を外して図示している。
…
【0021】また、カセットケース本体32における前壁32bの右側位置から左方に向かって、テープ引き出し部36が一体的に設けられており、該テープ引き出し部36の後方にはサーマルヘッド案内部37が一体的に設けられている。サーマルヘッド案内部37は平面視「コ」字状に形成されており、「コ」字状の凹状空間38にはサーマルヘッド12が配設される。凹状空間38の後ろ側である中間壁29には、第2係止孔としての係止長孔39が形成される(図2及び図3参照)。この係止長孔39には後述するカセット蓋33に形成された弾性係止フック体40(図2、図4(a)参照)が係止される。」
オ 「【0047】この場合、先ず、テープカセット5をカセット収納部8から取り出す。次いで、カセット蓋33における弾性係止フック体40の摘み片をカセットケース本体32の内径方向に押して、カセットケース本体32における係止長孔39との係合を外し、カセットケース本体32の後壁面32a側の係止孔34の箇所を中心にしてカセット蓋33を上向き回動させて係止爪35を外し、カセット蓋33をカセットケース本体32から取り外す。この後、印字テープTが使い切られた支持体21を下スプール22と共にテープユニット収納部41から取り出し、未使用の印字テープTを巻回してなる新たな交換用テープユニット20をテープユニット収納部41に収納する。」
カ 「【0053】また、本実施形態では、カセット蓋33がカセットケース本体32から分離する構成としたが、カセット蓋33を周知のヒンジ機構を用いてカセットケース本体32に連結し、カセットケース本体32に対して開閉するが、カセットケース本体32からは分離しない構成としても良い。」
キ 「【図2】
[図:0001404168000004.jpg]
」
ク 「【図3】
[図:0001404168000005.jpg]
」
ケ 「【図4】
[図:0001404168000006.jpg]
」
コ 【図2】から、「テープ引き出し部36」と「弾性係止フック体40」と「第2係止孔」とは、テープカセット5(カセットケース本体32)の一側(同じ側)に形成されていることが看取できる。
そうすると、上記ア乃至ケの記載事項、図面、及び認定事項コより、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「テープ印字装置1であって、
テープカセット5を収納するカセット収納部8が配設され、このカセット収納部8を覆うための収納カバー6が本体1aの後端に開閉可能に枢支されており、
テープカセット5は、カセットケース本体32と、これに対して着脱可能とされたカセット蓋33と、カセットケース本体32のうちカセット蓋33にて覆われなかったテープ引き出し部36及びテープ送りローラ11等が配置されたテープ送り部等の上方を覆う補助カバー体31とから構成され、
カセット蓋33は、ヒンジ機構を用いてカセットケース本体32に連結し、カセットケース本体32に対して開閉し、
カセットケース本体32の中間壁29には、テープ引き出し部36と同じ側においてカセット蓋33に形成された弾性係止フック体40が係止される第2係止孔が形成される、
テープ印字装置1。」
2 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
(1)後者の「テープ」、「テープカセット」、「テープ印字装置」、「カセット装着部」、「カセットカバー」、「第1押え部材7A」、「テープが収納されるテープ収納部」、「テープを案内するアーム部」、及び「第1押え受部39C」は、それぞれ、前者の「テープ」、「媒体アダプタ」、「印刷装置」、「アダプタ収容部」、「蓋」、「押圧部」、「テープを収容可能なテープ収容部」、「テープをガイドするガイド部」、及び「荷重受け部」に相当する。
(2)後者の「テープ」は、スプールに巻回されたものであるから、前者の「テープ」と後者の「テープ」とは、「長尺状の」テープである点で一致する。
(3)後者の「テープカセット」は、テープが収納されるテープ収納部を備えているのであるから、テープを収容しているといえる。
(4)後者の「テープ印字装置」は、アーム部の開口34Aから排出されたテープに、サーマルヘッド10による印字を行うものであるから、前者の「印刷装置」と後者の「テープ印字装置」とは、媒体アダプタから繰り出された前記テープに印刷を行うものである点で一致する。
(5)後者の「カセット装着部」には、テープカセットが装着されるのであるから、前者の「アダプタ収容部」と後者の「カセット装着部」とは、媒体アダプタを収容可能なものである点で一致する。
(6)後者の「カセットカバー」は、平面視略長方形状の蓋部であって、本体カバー2の内部に形成されたカセット装着部が露出する開放位置と、カセット装着部を覆う閉鎖位置との間で回動可能に軸支されているのであるから、前者の「蓋」と後者の「カセットカバー」とは、アダプタ収容部を外部に露出させる第1開位置と、前記アダプタ収容部を覆う閉位置との間で移動可能なものである点で一致する。
(7)後者の「カセットカバー」の下面には、下面から下方へ突出する「第1押え部材7A」が設けられ、「第1押え部材7A」は、テープカセットがカセット装着部に装着され、「カセットカバー」が閉じられた場合に、テープカセットの上ケース31Aに設けられた第1押え受部39Cに上方から当接し、押圧する部材であるから、前者の「蓋」と後者の「カセットカバー」とは、第1閉位置においてアダプタ収容部に収容された媒体アダプタに押圧荷重を印加する押圧部を有し、前記押圧部は、荷重受け部に前記押圧荷重を印加するものである点で一致する。
(8)後者の「『開口34A』から『テープ』を排出する『アーム部』」がテープカセットから延びて設けられていることからすると、前者の「テープをガイドするガイド部」と後者の「アーム部」とは、テープ収容部の端部側に設けられているとの概念で一致する。
また、「カセットケース」の上ケースは、下ケースとともにカセットケースを構成していることからすると、閉位置に位置するといえる。
そうすると、前者の「ガイド部」と後者の「アーム部」とは、テープ収容部の端部側において当該テープ収容部及び前記閉位置に位置する媒体アダプタの蓋と隣り合う箇所に設けられている点で一致する。
したがって、両者は、
「長尺状のテープを収容した媒体アダプタから繰り出された前記テープに印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体アダプタを収容可能なアダプタ収容部と、
前記アダプタ収容部を外部に露出させる第1開位置と、前記アダプタ収容部を覆う閉位置との間で移動可能な蓋であって、前記第1閉位置において前記アダプタ収容部に収容された前記媒体アダプタに押圧荷重を印加する押圧部を有する蓋と、
を備え、
前記媒体アダプタは、
前記テープを収容可能なテープ収容部と、
前記テープ収容部の端部側において当該テープ収容部及び前記閉位置に位置する前記アダプタ蓋と隣り合う箇所に設けられた、ガイド部であって、前記テープ収容部から繰り出された前記テープをガイドするガイド部と、
を含み、
前記蓋の前記押圧部は、荷重受け部に前記押圧荷重を印加する、
印刷装置。」
の点で一致し、以下の点で、相違する。
[相違点1]
本願発明の媒体アダプタは、「テープ収容部を外部に露出させる第2開位置と、前記テープ収容部を覆う第2閉位置との間で、前記テープ収容部の一端側に設けられた第1支点部を中心として回転可能なアダプタ蓋」と、テープ収容部の「他」端側に設けられた「アダプタ蓋により覆われない」ガイド部と、を含み、「前記アダプタ蓋における面内中心よりも前記ガイド部側の箇所には、前記テープ収容部に設けられたフック受け部と係合するためのフック部が形成されており」ものであるのに対し、引用発明1のテープカセットは、上面、底面、前面、および一対の側面を有し、前記上面を有する上ケースと、前記底面を有する下ケースとからなり、アーム部はテープカセットから延びて設けられているカセットケースである点。
[相違点2]
本願発明の荷重受け部は、「第2閉位置に位置するアダプタ蓋における当該アダプタ蓋の面内中心とテープ収容部の他端側の位置との間の箇所に設けられた」ものであって、「前記アダプタ蓋における前記第1支点部側から、前記フック部側に向かう方向に沿って、前記荷重受け部と、前記フック部と、が互いに直線状に並んでいる」のに対し、引用発明1の第1押え受部39Cは、テープカセットの上ケース31Aに設けられ、カセットカバーの下面における左右方向及び上下方向の略中心位置から突出する第1押え部材7Aにより押圧されるものである点。
3 判断
(1)[相違点1]について
引用発明2の「カセット収納部8」、「テープカセット5」、「『ヒンジ機構を用いてカセットケース本体32に連結し』た『カセット蓋33』」、「カセット蓋33にて覆われなかったテープ引き出し部36」、「第2係止孔」、「弾性係止フック体40」、及び「テープ印字装置1」は、それぞれ、本願発明の「テープ収容部」、「媒体アダプタ」、「回転可能なアダプタ蓋」、「アダプタ蓋により覆われないガイド部」、「テープ収容部に設けられたフック受け部」、「フック部」、及び「印刷装置」に相当する。
引用発明2の「カセット蓋33」が開に位置する際には、カセットケース本体32内が外部に露出し、「カセット蓋33」が閉に位置する際には、カセットケース本体32内を覆うことは、印字装置の技術分野において技術常識といえる事項である。
また、引用発明2の「ヒンジ機構」により、カセット蓋33が開閉することとなるのであるから、当該「ヒンジ機構」が、本願発明の「回転」の「中心として」の「テープ収容部の一端側に設けられた第1支点部」に相当するといえる。
そうすると、本願発明の「アダプタ蓋」と引用発明2の「カセット蓋33」とは、「テープ収容部を外部に露出させる第2開位置と、前記テープ収容部を覆う第2閉位置との間で、前記テープ収容部の一端側に設けられた第1支点部を中心として回転可能な」ものとの概念で一致する。
また、引用発明2の「テープ印字装置1」において、「ヒンジ機構」を設ける箇所は、「カセット蓋33」を開閉する構造からすれば、「カセット蓋33」において「弾性係止フック体40」と対称の位置であることは明らかであって、テープ引き出し部36と弾性係止フック体40とはカセットケース本体32の同じ側に形成されたものであるから、本願発明の「アダプタ蓋により覆われないガイド部」と引用発明2の「カセット蓋33にて覆われなかったテープ引き出し部36」とは、「テープ収容部」のアダプタ蓋の回転の中心となる第1支点部が設けられた「一端側」の対称の位置の「他」端側に設けられたものとの概念で共通し、引用発明2の「弾性係止フック体40」は、カセット蓋33における「面内中心」よりもテープ引き出し部36側の箇所に形成されているといえる。
してみると、上記相違点1の構成は、引用発明2に示されているといえる。
そして、引用発明1も、引用発明2も、テープ印字装置の技術分野に属し、テープの位置ズレを課題とする点で共通する。
引用発明1のカセットケースが、上ケースと、下ケースとからなるところからすると、当該カセットケースは、開閉可能な構造であって、開閉することを予定していると推認できることから、引用発明2の「『ヒンジ機構を用いてカセットケース本体32に連結し』た『カセット蓋33』」を適用する動機付けがあるといえる。
そうすると、引用発明1の上ケースに、引用発明2のヒンジ機構を用いたカセット蓋33を適用し、以って、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
(2)[相違点2]について
引用発明1のテープカセットの上ケース31Aに設けられた第1押え受部39Cに上方から当接し、押圧する部材である第1押え部材7Aは、カセットカバーの下面における左右方向及び上下方向の略中心位置から突出する角柱状の部材である。
そうすると、当該第1押え部材7Aによって上方から当接され、押圧される第1押え受部39Cも、テープカセットの上ケース31Aの左右方向及び上下方向の略中心位置に設けられているものと認められる。
ここで、本願発明の「他端側」とは、ガイド部が設けられた側であることからすると、引用発明1のアーム部が延びて設けられた上下方向の「一側」が相当する。
さらに、本願発明の「第2閉位置に位置するアダプタ蓋における当該アダプタ蓋の面内中心とテープ収容部の他端側の位置との間の箇所」とは、アダプタ蓋の面内中心とテープ収容部の他端側を除く両者の間のすべての位置を意味するものと解される。
ここで、引用発明1のテープカセットの上ケース31Aの左右方向及び上下方向の略中心位置が、本願発明の「アダプタ蓋の面内中心」と必ずしも一致するとはいえないものの、おおよそ、媒体アダプタの上面の中心近傍である点では一致するものと認められる。
そうすると、本願発明の「第2閉位置に位置するアダプタ蓋における当該アダプタ蓋の面内中心とテープ収容部の他端側の位置との間の箇所」と引用発明1の第1押え受部39Cの配置位置をテープカセットの上ケース31Aの左右方向及び上下方向の略中心位置とは、実質的に、同じ位置であるか、少なくとも、引用発明1において、第1押え受部39Cをアダプタ蓋の面内中心とテープ収容部の他端側の位置との間にすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
また、本願発明の「前記アダプタ蓋における前記第1支点部側から、前記フック部側に向かう方向」とは、アダプタ蓋が一端部側に設けられた第1支点部を中心として回転し、フック部は一端側の他端側に設けられたガイド部側に形成されているから、一端側(第1支点部側)から他端側(フック部側・ガイド部側)へ向かう方向と認められる。
ここで引用発明1において、第1押え受部39Cが上ケース31Aの左右方向及び上下方向の略中心位置に設けられ、アーム部は上下方向の一側であって、本願発明でいうところの「他端側」に設けられているのであるから、引用発明1の「第1押え受部39C」と「アーム部」は、第1支点部側から、フック部側に向かう方向に設けられているといえる。
そして、上記(1)のとおり、引用発明1の上ケースに、引用発明2のヒンジ機構を用いたカセット蓋33を適用することは、当業者が容易になし得るものであるところ、引用発明1のアーム部が設けられた上下方向の一側には、「弾性係止フック体40」が設けられることとなり、結果として、上下方向に沿って、第1押え受部39Cと、弾性係止フック体40と、が互いに直線状に並んでいるものとなる。
そうすると、引用発明1の上ケースに、引用発明2のヒンジ機構を用いたカセット蓋33を適用し、以って、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
したがって,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-008986