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特許拒絶査定不服審判

2022-008678

情報処理装置、情報処理システム、カメラ及び情報処理方法

審判番号
2022-008678
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-147699外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月07日
審決日
2023年02月07日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-147699「情報処理装置、情報処理システム、カメラ及び情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021- 2838〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2016年(平成28年)1月15日(優先権主張 平成27年1月15日)を国際出願日とした特願2016-569527号の一部を平成31年3月1日に新たな特許出願とした特願2019-37503号の一部を令和2年9月2日にさらに新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年10月 6日 :手続補正書、上申書の提出
令和3年 8月31日付け:拒絶理由通知書

同年11月 2日 :意見書、手続補正書の提出

令和4年 3月29日付け:拒絶査定

同年 6月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出

同年 8月 2日付け:前置報告書

第2 令和4年6月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年6月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の段落【0010】、【0011】についてするもので、そのうち、特許請求の範囲については、本件補正前に

「 【請求項1】
画像情報を取得する取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
続きを表示(全66行)
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理装置。
【請求項2】
前記個人情報は個人が特定可能な画像情報である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
画像情報を取得する取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理装置。
【請求項4】
前記変換処理は、複数の変換処理を含み、少なくとも一つは顔部分をモザイク化する処理である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像情報に前記個人情報が含まれるか否かを判定する判定部、をさらに備え、
前記第二出力部は、前記判定部が前記画像情報に前記個人情報が含まれると判定した場合に、前記第二出力情報を出力する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
画像情報を取得する取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理システム。
【請求項7】
画像情報を取得する取得部と
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理システム。
【請求項8】
前記第一出力部が出力した前記第一出力情報を防犯システムが稼働するサーバ端末装置へ送信し、前記第二出力部が出力した前記第二出力情報をマーケティングシステムが稼働するサーバ端末装置へ送信する送信部、
をさらに備える請求項6または請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
画像情報を取得する取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
カメラ。
【請求項10】
前記個人情報は個人が特定可能な画像情報である
請求項9に記載のカメラ。
【請求項11】
前記変換処理は、複数の変換処理を含み、少なくとも一つは顔部分をモザイク化する処理である
請求項9または請求項10に記載のカメラ。
【請求項12】
画像情報を取得し、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力し、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力し、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理方法。
【請求項13】
画像情報を取得し、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力し、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った第二出力情報を出力し、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理方法。」

とあったところを、本件補正後に、

「 【請求項1】
画像情報を取得する一つの取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
続きを表示(全66行)
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理装置。
【請求項2】
前記個人情報は個人が特定可能な画像情報である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
画像情報を取得する一つの取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理装置。
【請求項4】
前記変換処理は、複数の変換処理を含み、少なくとも一つは顔部分をモザイク化する処理である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像情報に前記個人情報が含まれるか否かを判定する判定部、をさらに備え、
前記第二出力部は、前記判定部が前記画像情報に前記個人情報が含まれると判定した場合に、前記第二出力情報を出力する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
画像情報を取得する一つの取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理システム。
【請求項7】
画像情報を取得する一つの取得部と
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理システム。
【請求項8】
前記第一出力部が出力した前記第一出力情報を防犯システムが稼働するサーバ端末装置へ送信し、前記第二出力部が出力した前記第二出力情報をマーケティングシステムが稼働するサーバ端末装置へ送信する送信部、
をさらに備える請求項6または請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
画像情報を取得する一つの取得部と、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
カメラ。
【請求項10】
前記個人情報は個人が特定可能な画像情報である
請求項9に記載のカメラ。
【請求項11】
前記変換処理は、複数の変換処理を含み、少なくとも一つは顔部分をモザイク化する処理である
請求項9または請求項10に記載のカメラ。
【請求項12】
一つの取得部によって画像情報を取得し、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力し、
前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力し、
前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
情報処理方法。
【請求項13】
一つの取得部によって画像情報を取得し、
前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力し、
前記画像情報に含まれる顔部分を個人が特定できない情報に変換処理を行った第二出力情報を出力し、
前記変換処理は、前記顔部分をモザイク化する処理である
情報処理方法。」

と補正しようとするものである(下線は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否

本件補正のうち、特許請求の範囲についてするものは、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像情報を取得する取得部」について、本件補正後に「画像情報を取得する一つの取得部」という限定を加えるものであり、請求項3、6,7、9、12、13に記載した発明についても同様の限定をするものであるから、本件補正のうち特許請求の範囲についてするものは特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。

なお、明細書の段落【0010】、【0011】についてするものは、特許請求の範囲についてした補正に伴って、同じ補正をしたものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1に本件補正後の請求項1として記載した次のとおりのものである。符号AないしDは、本件補正発明を分説するため当審にて付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。

(本件補正発明)

「A 画像情報を取得する一つの取得部と、
B 前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を第一出力情報として出力する第一出力部と、
C 前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を第二出力情報として出力する第二出力部と、
を備え、
C1 前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である
D 情報処理装置。」

(2)引用文献1の記載事項及び引用発明

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-94642号公報には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した(以下、同様)。

「【0001】
本発明は、マンションなどの建物を監視する監視カメラシステムに関する。」
「【0018】
図1に示すように、監視カメラシステム10の基本的な構成は、監視領域を監視するカメラ12と、カメラ12で撮影した画像信号が入力される画像入力手段14と、画像信号に写った被写体を識別不能に加工することができる画像変換手段16と、画像変換手段16の動作条件を決定する変換条件設定手段18と、画像信号を出力する画像出力手段20と、画像出力手段20より送出された画像信号を表示するモニタ(図示せず)と、を備える。以下、実施例で監視カメラシステム10の詳細を説明する。
【実施例1】
【0019】
続きを表示(全28行)
監視カメラシステム10をマンションで使用する場合、カメラ12は、図2に示すように、エントランス、ゴミ収集所または駐車場などに設置される。本明細書において、それらの場所を監視領域と呼ぶ。エントランスであれば不審者の侵入の監視、ゴミ収集所であればマナー違反者の監視、駐車場であれば車上狙いの監視である。これらの監視領域は一例であり、必要に応じて他の場所にカメラ12を設置してもよい。
【0020】
監視領域を撮影するカメラ12は、例えば周知の監視用カメラを使用し、カメラ12が撮影した画像信号は、アナログ信号である。画像記録手段24にセンサ13を連動させることによって、人が通ったときにセンサ13が働き、センサ13がオンしたときだけ画像記録手段24を作動させることができる。したがって、不必要な画像信号を図3の画像記録手段24に記録することはなくなる。センサ13としては赤外線センサなどを使用する。画像入力手段14は、カメラ12から送られてくる画像信号を取り込むための端子、カメラ12と画像変換手段16などの回路とのインピーダンス整合をおこなう回路、アナログ/ディジタル変換回路30を含む。アナログ/ディジタル変換回路30を含む理由は、画像信号がアナログ信号であると、後述する画像変換が行えないためである。
・・・(中略)・・・
【0023】
図3に示すように、画像変換手段16の中に、画像信号に記録された被写体の識別を不可能にする画像変換をおこなう画像変換部32と、画像変換部32で画像変換された画像信号または画像変換されていない画像信号を選択する第1スイッチ34とが備えられる。
【0024】
画像変換部32は複数あり、画像変換部32ごとに画像信号の変換方法が異なる。例えば、PV1はプライバシの保護レベル1とし、変換後の画像信号は被写体またはその顔を塗りつぶした映像である。PV2はプライバシの保護レベル2とし、変換後の画像信号は小さなブロックのモザイクがかけられた映像である。PV3はプライバシの保護レベル3とし、変換後の画像信号は大きなブロックのモザイクがかけられた映像である。なお、PV0は何もプライバシの保護をしないカメラで撮影した画像信号である。必要に応じてPV0からPV3を変更する。
【0025】
本発明は、第1スイッチ34によってPV0~PV3の画像変換部32を切り替えて画像変換する構成である。図に示す第1スイッチおよびPV0からPV3の画像変換部32はイメージであり、実際には、図5に示すように、DSP(Digital Signal Processor)35、プログラムが格納されたプログラムメモリ33、作業用メモリ37を使用し、画像信号に対してPV0からPV3の画像変換を行う。
【0026】
PV0、PV1、PV2、PV3の画像変換の一例としてはモザイク処理がある。例えば、画像変換としては画像全体または画像の一部にモザイク処理をおこなう。または、画像信号から目や鼻などを輪郭と色から検出し、その目や鼻などのある部分を人間の顔と認識して、その部分にモザイク処理をおこなう(特開2002-49912号公報参照)。さらには他の方法として、時間的に前後する画像信号の違いから動きのあるものを検出し、その動きのあるものを人間と認識して、その動きのあるものにモザイク処理をおこなう。モザイク処理以外にも塗りつぶし処理などを使用してもよい。モザイクや塗りつぶしの程度はPV1からPV3によって異なる。PV0からPV3を表1にまとめる。
【0027】
【表1】
[図:0001396120000001.jpg]
【0028】
上述した例は、4つの画像変換部32を使用したが、画像変換部32の数は任意である。画像変換部32の数に合わせてDSP35のプログラムと回路構成を変更する。
【0029】
画像変換手段16には、第1スイッチ34の選択に関わらずPV0の画像信号を選択する第2スイッチ36を設ける。これは、犯罪が発生している時などの緊急時に強制的にPV0を選択し、犯罪者を確認するためである。例えば、エントランスに緊急ボタンを設けておく。緊急ボタンが押されたときに、第2スイッチ36の切り替え信号が第2スイッチ36に送られ、図3中のYからXに接続が変更され、第2スイッチ36はPV0を選択する。この第2スイッチ36も上述した第1スイッチ34と同じDSP35とプログラムなどの中に含める。
・・・(中略)・・・
【0036】
画像出力手段20から出力された画像信号は、例えば、図4に示すように、RFモジュレータ40で無線信号に変換され、送信される。無線信号の周波数を、マンションの住人が使用するテレビの空きチャンネルの周波数となるようにする。したがって、マンションの住人が必要に応じてプライバシの保護をされたカメラ12の画像を見ることができる。
【0037】
また、管理人室にモニタ42を設け、プライバシ保護がされていない画像信号をモニタ42に出力する構成にする。管理人の仕事の性質上、管理人が住人の安全などを管理するためである。第三者が勝手に管理人のモニタ42を見ないために、管理人室のモニタの使用に際してパスワードを求める手段を備えてもよい。」
「【実施例2】
【0040】
本発明にかかる監視カメラシステム10の実施例について上述したが、本発明は上記の発明に限定されない。例えば、図1の構成は、カメラ12が1つの構成である。そこで、図8のように、複数のカメラ12から画像信号を受信するために、複数の画像入力手段14を設ける。また、複数の画像信号を取り扱うために、画像変換手段16aにマルチプレクサ46を設ける。マルチプレクサ46は複数の入力の中から1つを選択するスイッチの役割をする。または、マルチプレクサ46は複数の画像信号を選択し、1つの画像信号にまとめる働きであってもよく、モニタで画像信号を表示するとき、モニタが複数の領域に分割され、各領域に画像信号が表示される構成であってもよい。更には、マルチプレクサ46は複数の画像信号を順次切り換えて選択する働きをしてもよい。上述したマルチプレクサ46の働きを複合的に組み合わせた働きをするマルチプレクサ46であってもよい。図8に示すマルチプレクサ46や画像変換部32は概念図であり、実際は図5に示すように、DSP35やプログラムで構成される。
【0041】
画像出力手段20を複数にしてもよく、この場合、図8に示すように、マルチプレクサ46の数は画像出力手段20a,bと同数である。画像出力手段20a,bごとに画像信号を変えてもよいし、同じであってもよい。」
「【図8】
[図:0001396120000002.jpg]
」

イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

(ア)上記【0001】によれば、引用文献1には、マンションなどの建物を監視する監視カメラシステムに関する発明が記載されている。

(イ)上記【0018】によれば、監視カメラシステム10の基本的な構成は、監視領域を監視するカメラ12と、カメラ12で撮影した画像信号が入力される画像入力手段14と、画像信号に写った被写体を識別不能に加工することができる画像変換手段16と、画像変換手段16の動作条件を決定する変換条件設定手段18と、画像信号を出力する画像出力手段20と、画像出力手段20より送出された画像信号を表示するモニタと、を備えたものであり、当該基本的な構成は、明細書に記載の各実施例における構成に当てはまるものである。

したがって、【0040】~【0041】及び図8の実施例2の監視カメラシステム10は、監視領域を監視する複数のカメラ12と、カメラ12で撮影した画像信号が入力される複数の画像入力手段14と、画像信号に写った被写体を識別不能に加工することができる画像変換手段16aと、画像変換手段16aの動作条件を決定する変換条件設定手段18と、画像信号を出力する複数の画像出力手段20a,bと、画像出力手段20a,bより送出された画像信号を表示するモニタと、を備えたものといえる。

(ウ)上記【0040】及び図8によれば、マルチプレクサ46はスイッチに替わるものであり、実施例1ではスイッチ(第1スイッチ34(【0023】、【0025】)及び第2スイッチ36(【0029】))を用いていたところ、実施例2はスイッチを用いずにマルチプレクサ46を用いたものである。

そうすると、引用発明の実施例2の監視カメラシステム10は、上記【0023】の記載を勘案すると、画像変換手段16aの中に、画像信号に記録された被写体の識別を不可能にする画像変換をおこなう画像変換部32と、画像変換部32で画像変換された画像信号または画像変換されていない画像信号を選択するマルチプレクサ46とが備えられたものといえる。

(エ)実施例2の監視カメラシステム10においても、上記【0024】及び【0027】の表1で示されるのと同様に、画像変換部32は複数あり、画像変換部32ごとに画像信号の変換方法が異なり、PV1はプライバシの保護レベル1とし、変換後の画像信号は被写体またはその顔を塗りつぶした映像であり、PV2はプライバシの保護レベル2とし、変換後の画像信号は小さなブロックのモザイクがかけられた映像であり、PV3はプライバシの保護レベル3とし、変換後の画像信号は大きなブロックのモザイクがかけられた映像であり、PV0は何もプライバシの保護をしないカメラで撮影した画像信号、すなわち画像変更を加えない映像であり、必要に応じてPV0からPV3を変更するものといえる。

(オ)上記【0040】によれば、マルチプレクサ46は複数の入力の中から1つを選択するスイッチの役割をしており、または、マルチプレクサ46は複数の画像信号を選択し、1つの画像信号にまとめる働きであってもよく、モニタで画像信号を表示するとき、モニタが複数の領域に分割され、各領域に画像信号が表示される構成であってもよく、更には、マルチプレクサ46は複数の画像信号を順次切り換えて選択する働きをしてもよいものである。

(カ)上記【0041】によれば、画像出力手段20a,bごとに画像信号を変えてもよいし、同じであってもよいものである。

(キ)上記【0040】によれば、マルチプレクサ46や画像変換部32は、DSP35やプログラムで構成されている。

ウ 上記ア、イから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マンションなどの建物を監視する監視カメラシステムであって、
監視カメラシステム10は、監視領域を監視する複数のカメラ12と、カメラ12で撮影した画像信号が入力される複数の画像入力手段14と、画像信号に写った被写体を識別不能に加工することができる画像変換手段16aと、画像変換手段16aの動作条件を決定する変換条件設定手段18と、画像信号を出力する複数の画像出力手段20a,bと、画像出力手段20a,bより送出された画像信号を表示するモニタと、を備えており、
画像変換手段16aの中に、画像信号に記録された被写体の識別を不可能にする画像変換をおこなう画像変換部32と、画像変換部32で画像変換された画像信号または画像変換されていない画像信号を選択するマルチプレクサ46とが備えられており、
画像変換部32は複数あり、画像変換部32ごとに画像信号の変換方法が異なり、PV1はプライバシの保護レベル1とし、変換後の画像信号は被写体またはその顔を塗りつぶした映像であり、PV2はプライバシの保護レベル2とし、変換後の画像信号は小さなブロックのモザイクがかけられた映像であり、PV3はプライバシの保護レベル3とし、変換後の画像信号は大きなブロックのモザイクがかけられた映像であり、PV0は何もプライバシの保護をしないカメラで撮影した画像信号、すなわち画像変更を加えない映像であり、必要に応じてPV0からPV3を変更するものであり、
マルチプレクサ46は複数の入力の中から1つを選択するスイッチの役割をしており、または、マルチプレクサ46は複数の画像信号を選択し、1つの画像信号にまとめる働きであってもよく、モニタで画像信号を表示するとき、モニタが複数の領域に分割され、各領域に画像信号が表示される構成であってもよく、更には、マルチプレクサ46は複数の画像信号を順次切り換えて選択する働きをしてもよく、
画像出力手段20a,bごとに画像信号を変えてもよいし、同じであってもよいものであり、
マルチプレクサ46や画像変換部32は、DSP35やプログラムで構成されている、
監視カメラシステム。」

(3)引用発明との対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)構成Aについて

引用発明の「画像入力手段14」はカメラ12で撮影した監視領域の画像情報を取得するものといえ、引用発明の「カメラ12で撮影した画像信号が入力される複数の画像入力手段14」と本件補正発明の「画像情報を取得する一つの取得部」とは「画像情報を取得する取得部」である点で共通する。

ただし、画像情報を取得する取得部に関して、本件補正発明は一つであるのに対して、引用発明は複数ある点で相違する。

(イ)構成B及びCについて

引用発明のPV0からの「画像変更を加えない映像」は本件補正発明の構成Bの「前記画像情報」に相当する。

また、引用発明のPV2からの変換後の「小さなブロックのモザイクがかけられた映像」及びPV3からの変換後の「大きなブロックのモザイクがかけられた映像」は、本件補正発明Cの「前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報」に相当する。

そして、引用発明の「画像出力手段20a,b」はそれらのPV0~PV3からの画像信号をマルチプレクサ46で切り換えて出力できるものであり、マルチプレクサ46の設定によっては本件補正発明の「第一出力部」にも「第二出力部」にも相当し得るものといえる。

そうすると、引用発明の「画像出力手段20a,b」と本件補正発明の構成B及びCとは「前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を出力する出力部」及び「前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を出力する出力部」である点で共通する。

ただし、2つの出力部に関して、本件補正発明は「第一出力部」が出力する「第一出力情報」及び「第二出力部」が出力する「第二出力情報」が、それぞれ、「前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報」及び「前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報」であることの特定があるのに対して、引用発明は「画像出力手段20a,b」が出力する画像信号の特定がなく、PV0~PV3からの画像信号をマルチプレクサ46で切り換えて出力できる点で相違する。

(ウ)構成C1について

引用発明の「PV2」及び「PV3」による「画像変換」は、それぞれ、「小さなブロックのモザイクがかけられた映像」及び「大きなブロックのモザイクがかけられた映像」への変換であり、本件補正発明の構成C1の「前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である」ことに相当する。

(エ)構成Dについて

引用発明の「監視カメラシステム」は、上記(ア)ないし(ウ)で述べた構成を備えており、また、マルチプレクサ46や画像変換部32がDSP35やプログラムで構成された情報処理装置といえるものであり、本件補正発明の「情報処理装置」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

A’ 画像情報を取得する取得部と、

B’ 前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報を出力する出力部と、

C’ 前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報に変換処理を行った画像情報を出力する出力部と、

を備え、

C1 前記変換処理は、前記個人情報をモザイク化する処理である

D 情報処理装置。

<相違点1>

画像情報を取得する取得部に関して、本件補正発明は一つであるのに対して、引用発明は複数ある点。

<相違点2>

2つの出力部に関して、本件補正発明は「第一出力部」が出力する「第一出力情報」及び「第二出力部」が出力する「第二出力情報」が、それぞれ、「前記画像情報又は前記画像情報に所定の処理を行った情報」及び「前記画像情報に含まれる個人情報を個人が特定できない情報」であることの特定があるのに対して、引用発明は「画像出力手段20a,b」が出力する画像信号の特定がなく、PV0~PV3からの画像信号をマルチプレクサ46で切り換えて出力できる点。

(4)判断

以下、相違点1及び2についてまとめて検討する。

引用文献1の【0036】、【0037】には、画像信号の出力先として「マンションの住人が使用するテレビ」と「管理人室のモニタ」の場合があり、マンションの住人は「プライバシの保護されたカメラ12の画像」をみることができ、管理人は、住人の安全などを管理するために「プライバシが保護されていない画像信号」をモニタに出力することが記載されている。

してみると、引用発明の監視カメラシステムにおいて、「画像出力手段20a,b」から出力する画像信号を表示するモニタに、「管理人室のモニタ」と「マンションの住人が使用するテレビ」を用いる場合には、同じ1つのカメラ12で撮像した画像信号を入力として、一方では「画像出力手段20a」から「管理人室のモニタ」に「画像変更を加えない映像」を出力し、他方では「画像出力手段20b」から「マンションの住人が使用するテレビ」に「モザイクがかけられた画像」を出力するように設定して使用することは通常の使用方法の範囲内といえ、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本件補正発明の奏する効果も、引用文献1に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について

請求人は、審判請求書において「画像入力手段14を複数備えることが示された、引用文献1の図8等の記載からは、本願の請求項1に係る情報処理装置のように構成する動機付けもなく、『一のカメラ12から送られてくる画像信号に対して、画像変換PV0-PV3のそれぞれから出力された画像信号のうちの異なるものをそれぞれ選択して画像出力手段20a,20bから出力可能』という事項は、本願発明の発明特定事項を知っていたからこそ想到できる後知恵によるものであると考えます。」旨主張している。

しかしながら、上記(4)で述べたとおり、引用発明において、同じ1つのカメラ12で撮像した画像信号を入力として、「画像出力手段20a」から「管理人室のモニタ」に「画像変更を加えない映像」を出力し、「画像出力手段20b」から「マンションの住人が使用するテレビ」に「モザイクがかけられた画像」を出力することは通常の使用方法の範囲内といえ、本件補正発明のように構成する動機付けがないとはいえない。

したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(6)本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年6月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年11月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

理由1 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし13に対し、引用文献1

<引用文献等一覧>

1.特開2005-94642号公報

3 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明は、上記「第2」の「2(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、上記「第2」の「2」で検討した本件補正発明に関する限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記「第2」の「2」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-008678

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