特許拒絶査定不服審判
2022-008186
誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置及び誘導加熱方式を用いてエアロゾルを生成させる方法
- 審判番号
- 2022-008186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-542826外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月31日
- 審決日
- 2023年04月10日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケーティー アンド ジー コーポレイション
- 【請求人代理人】加藤 和詳
- 分類
- P18 .121-Z (A24F) / P18 .575-Z (A24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-542826「誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置及び誘導加熱方式を用いてエアロゾルを生成させる方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月11日国際公開、WO2020/116811、令和 3年 5月20日国内公表、特表2021-512627〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2019年(令和元年)11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年12月6日 KR(大韓民国))を国際出願日とする出願であって、令和3年8月5日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和4年2月1日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年11月29日に上申書が提出されたものである。
第2 令和4年5月31日にした手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月31日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
交流電流が印加されれば、交流磁場を発生させる、互いに異なる巻線数を有する第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した交流磁場内で熱を発生させる方式で、隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させるサセプタと、
前記第1コイル及び前記第2コイルに既設定の交流電流がそれぞれ供給されるように制御する制御部と、を含み、
前記サセプタは、前記サセプタの長手方向に前記第1コイル及び前記第2コイルと平行に配置され、前記第1コイルに向き合う第1部分と、前記第2コイルに向き合う第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分と、を含み、
前記制御部は、
前記第1部分が、前記第1コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない前記部分が、前記第1コイルと前記第2コイルによって形成された交流磁場の拡張によって加熱されるように制御する、ことを特徴とする
誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和3年11月12日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1の記載によって特定される次のとおりである。
「【請求項1】
交流電流が印加されれば、交流磁場を発生させる、互いに異なる巻線数を有する複数のコイルと、
前記コイルから発生した交流磁場内で熱を発生させる方式で、隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させるサセプタと、
前記コイルに既設定の交流電流がそれぞれ供給されるように制御する制御部と、を含み、
前記サセプタは、前記サセプタの長手方向に前記コイルと平行に配置される第1部分及び第2部分を含み、
前記制御部は、
前記第1部分、前記第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分とを除く部分が、前記複数のコイルに供給される交流電流によって個別に加熱されるように制御する、ことを特徴とする
誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置。」
(3)本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1の「複数のコイル」及び「コイル」を「第1コイル及び第2コイル」に限定するとともに、補正前の請求項1の「サセプタ」の「第1部分及び第2部分」を「前記第1コイルに向き合う第1部分と、前記第2コイルに向き合う第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分」に限定し、「制御部」が「前記第1部分、前記第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分とを除く部分が、前記複数のコイルに供給される交流電流によって個別に加熱されるように制御する」ことを、「前記第1部分が、前記第1コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない前記部分が、前記第1コイルと前記第2コイルによって形成された交流磁場の拡張によって加熱されるように制御する」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
上記事項は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)の段落【0089】に「第1コイル830及び第2コイル850は、制御部12から交流電流供給されて交流磁場を発生させ、第1コイル830及び第2コイル850周辺に発生した磁場は、サセプタ810のサセプタ加熱部810aを加熱させる。」、「制御部12から第1コイル830及び第2コイル850に互いに異なる大きさの交流電流が供給されることで、本発明によれば、サセプタ加熱部810aの加熱状態を効果的に制御することができ、ユーザに提供されるシガレットの味が最適化される。」と記載され、【0088】に「図8のサセプタ810は、サセプタ加熱部810aとサセプタ加熱部810aを除いた部分とによって構成される。サセプタ加熱部810aは、第1コイル830及び第2コイル850の磁場に影響を受けて加熱される部分を意味し、鉄やアルミニウムのようなサセプタ物質を含む部分である。」ことが記載されている。
また翻訳文等の【図8】において、サセプタの「第1部分」と「第2部分」とが一体的に形成されていることが看取できるから、一体的に形成された鉄やアルミニウムのようなサセプタ物質の第1部分又は第2部分を個別に加熱した場合、第1コイルと第2コイルによる交流磁場が、第1コイル及び第2コイルに向き合っていない部分にも作用して、当該部分が加熱されることが明らかであるから、新規事項を追加するものではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、同法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
2. 独立特許要件について
2-1 本願補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」いう。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記1.(1)に記載したとおりのものである。
2-2 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献2に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2018/073376号(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付したものである(以下同様。)。
ア「
[図:0001402264000001.jpg]
」(明細書第1ページ第2行~第11行)
(当審訳)
「技術分野
本発明は誘導加熱構成体に関する。
背景技術
紙巻タバコ、葉巻タバコ等の物品は、使用の間、タバコを燃焼してタバコ煙を発生させる。燃焼せずに化合物を放出する製品を創出することによって、タバコを燃焼させるこれらの物品に代わるものを提供する試みがなされている。そのような製品の例としては、タバコ加熱製品又はタバコ加熱装置としても知られているいわゆる非燃焼加熱式(heat-not-burn)製品がある。これらは、材料を燃焼するのではなく加熱することで化合物を放出する。その材料は、例えば、タバコでもよいし、他の非タバコ製品でもよいし、ブレンドされた混合物等の組み合わせたものでもよく、それらは、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。」
イ「
[図:0001402264000002.jpg]
[図:0001402264000003.jpg]
[図:0001402264000004.jpg]
」(明細書第4ページ第19行~第6ページ第10行)
(当審訳)
「 次に、図2を参照すると、加熱構成体103の例が描かれており、この例では、加熱構成体103は、誘導加熱によって加熱する誘導加熱構成体である。
加熱構成体103はサセプタ202を備える。サセプタ202は、第1のサセプタ領域202a及び第2のサセプタ領域202bを備える。この例では、サセプタ202は、誘導加熱することができる材料から作られた単一の管状部材である(すなわち、サセプタ202は、変動磁場の近くにあるとき熱を発生する)。いくつかの例では、サセプタ202は、円形以外の断面形状、例えば、方形、矩形、三角形、又は任意の他の適切な形状を有することができる。いくつかの例では、サセプタ202は管状でなくてもよく、ブレードサセプタであってもよい。いくつかの例では、サセプタ202は透磁性材料を含んでもよい。変動磁場はサセプタ202内に渦電流を発生させ、その渦電流は、サセプタ202の電気抵抗に抗して流れて熱を発生する。いくつかの例では、サセプタ202は、鉄、鋼、アルミニウム等から作ることができる。
サセプタ202が磁性材料から構成されている例では、変動磁場は、よく知られているヒステレシス効果による加熱をさらに引き起こす。
加熱構成体103はまた、第1及び第2のインダクタコイル204、206を備える。第1及び第2のインダクタコイル204、206は導電性材料から作られる。一例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は銅から作られる。別の例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、特に、銅リッツ線から作られる。この例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、サセプタ202の長手方向中心軸線の周りに螺旋状に巻かれる。また、この例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、サセプタ202の周りに同軸に巻かれる。すなわち、巻かれている第1及び第2のインダクタコイル204、206の長手方向中心軸線とサセプタ202の長手方向中心軸線とは一致している。この例では、管状のサセプタ202の周りに巻かれた第1及び第2のインダクタコイル204、206もまた管状である。サセプタ202が異なる断面形状のものである他の例では、サセプタ202の周りに巻かれた第1及び第2のインダクタコイル204、206は、サセプタ202と同じ断面形状とすることができる。第1のインダクタコイル204は、第1の端部204a及び第2の端部204bを備え、第2のインダクタコイル206は、第1の端部206a及び第2の端部206bを備える。第1のインダクタコイル204の第1の端部204aは、サセプタ202の中央よりも第1のサセプタ領域202aに対応するサセプタ202の端部に近く、第1のインダクタコイル204の第2の端部204bは、第1のサセプタ領域202aに対応するサセプタ202の端部よりもサセプタ202の中央に近い。一方、第2のインダクタコイル206の第1の端部206aは、サセプタ202の中央よりも第2のサセプタ領域202bに対応するサセプタ202の端部に近く、第2のインダクタコイル206の第2の端部206bは、第2のサセプタ領域202bに対応するサセプタ202の端部よりもサセプタ202の中央に近い。
図2の例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、変動電流がそこを流れると変動磁場を発生する。この例では、変動電流が第1のインダクタコイル204を通って流れると、それに対応した変動磁場を発生し、その変動磁場によって、第1のインダクタコイル204の実質的にすぐ近くのサセプタ202の部分だけが熱を発生する。言い換えれば、第1のインダクタコイル204によって発生させられた変動磁場は、サセプタ202の第1のサセプタ領域202aで実質的に局所的な加熱を生じさせる。同様に、変動電流が第2のインダクタコイル206を通って流れると、それに対応した変動磁場を発生し、その変動磁場によって、第2のインダクタコイル206の実質的にすぐ近くのサセプタ202の部分だけが熱を発生する。言い換えれば、第2のインダクタコイル206によって発生させられた変動磁場は、サセプタ202の第2のサセプタ領域202bで実質的に局所的な加熱を生じさせる。したがって、サセプタ202の実質的に全長を加熱するように第1及び第2のインダクタコイル204、206を動作させることができる。より詳細には、第1のサセプタ領域202aを加熱するために第1のインダクタコイル204を動作させることができ、第2のサセプタ領域202bを加熱するために第2のインダクタコイル206を動作させることができる。」
ウ「
[図:0001402264000005.jpg]
」(明細書第7ページ第3行~第14行)
(当審訳)
「 加熱構成体103の例において、サセプタ202によって発生された熱は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させる。サセプタ202の加熱は局所的にすることができるので、喫煙材を局所的な態様で加熱することができる。例えば、第1のサセプタ領域202aが加熱された場合、第1のサセプタ領域202aの容積部内の喫煙材だけが加熱されると考えることができる。同様に、第2のサセプタ領域202bが加熱された場合、第2のサセプタ領域202bの容積部内の喫煙材だけが加熱されると考えることができる。」
エ「
[図:0001402264000006.jpg]
[図:0001402264000007.jpg]
」(明細書第7ページ第30行~第8ページ第22行)
(当審訳)
「 次に、図3を参照すると、コントローラ106内に備えられた回路の例が示されている。この例では、回路300は、図3に示すように、回路300内で接続された第1及び第2のインダクタコイル204、206を通る電流を制御するように構成されている。回路300は、所与の時間に第1及び第2のインダクタコイル204、206のうちの一方だけを動作させて、対応のサセプタ領域202a、202bを有意に加熱するように、第1及び第2のインダクタコイル204、206の両方を制御するように構成されている。言い換えれば、回路300のこの接続形態によって、同じ回路を使って、二つの別々のインダクタコイルを異なる時間に動作させてサセプタ202を加熱することができる。
第1のインダクタコイル204が変動磁場を発生するように制御されているときに、第2のインダクタコイル206に電圧が誘導され、また、その逆もあることは理解されるであろう。しかしながら、この例では、回路300の接続形態は、インダクタコイルのうちの一方が、変動磁場を発生させる、すなわち、サセプタ202を加熱するように制御されているとき、他方のインダクタコイルにはサセプタ202を有意に加熱させるほど十分な誘導電流が流れないようにしている。より詳細には、第1のインダクタコイル204を動作させているとき、第2のインダクタコイル206にはサセプタ202を有意に加熱させるほど十分な電流が流れず、第2のインダクタコイル206を動作させているとき、第1のインダクタコイル204にはサセプタ202を有意に加熱させるほど十分な電流が流れない。概して述べるならば、装置100の例では、コントローラ106は、インダクタコイル204、206のうちの一方を動作させてサセプタ202を加熱しているとき、他方のインダクタコイル204、206にはサセプタ202を有意に加熱させるほど十分な電流が流れないように構成された回路を備えている。したがって、インダクタコイルのうちの一方を動作させてサセプタ202を加熱しているとき、他方のインダクタコイルがサセプタ202を有意には加熱しないようになっている。その結果、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、サセプタ領域202a、202bをそれぞれ実質的に局所的に加熱するように動作するので、サセプタ202の局所加熱を達成することができる。」
オ「
[図:0001402264000008.jpg]
」(明細書第18ページ第24行~第19ページ第4行)
(当審訳)
「 いくつかの例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は、互いに異なる少なくとも一つの特性を有することができることは認識されるであろう。例えば、第1のインダクタ204は、第2のインダクタコイル206と異なる少なくとも一つの特性を有することができる。より詳細には、一例では、第1のインダクタコイル204は、第2のインダクタコイル206と異なるインダクタンス値を有することができる。別の例では、第1のインダクタコイル204が、サセプタ202のより大きな部分にわたって巻かれるように、第1及び第2のインダクタコイルは異なる長さである、又はその逆の場合もある。別の例では、第1のインダクタコイル204は、第2のインダクタコイル206とは異なる巻き数とすることができる。さらに別の例では、第1のインダクタコイル204は、第2のインダクタコイル206とは異なる材料から構成することができる。第1のインダクタコイル204が、例えば、サセプタの容積部内の喫煙材を加熱したい仕方に基づいて、第2のインダクタコイル206とは異なる一つ以上の特性を有することができることが考えられる。いくつかの例では、第1及び第2のインダクタコイル204、206は実質的に同一にすることができる。」
カ「
[図:0001402264000009.jpg]
」
キ「
[図:0001402264000010.jpg]
」
ク「
[図:0001402264000011.jpg]
」
ケ 摘記事項イのとおり「第1のインダクタコイル204の第1の端部204aは、サセプタ202の中央よりも第1のサセプタ領域202aに対応するサセプタ202の端部に近く、第1のインダクタコイル204の第2の端部204bは、第1のサセプタ領域202aに対応するサセプタ202の端部よりもサセプタ202の中央に近い。」、「第2のインダクタコイル206の第1の端部206aは、サセプタ202の中央よりも第2のサセプタ領域202bに対応するサセプタ202の端部に近く、第2のインダクタコイル206の第2の端部206bは、第2のサセプタ領域202bに対応するサセプタ202の端部よりもサセプタ202の中央に近い。」と記載されているから、第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206のそれぞれの長さは、第1のサセプタ領域202aと第のサセプタ領域202bそれぞれの長さよりも短いものと認められる。
またFigure 2から、第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206との間には、コイルが存在しない空間が看取できる。
してみると、サセプタ202は、第1のインダクタコイル204と向き合う第1のサセプタ領域202aと、第2のインダクタコイル206と向き合う第2のサセプタ領域202bと、第1のサセプタ領域202aと第2のサセプタ領域202bとの間において第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206に向き合っていない部分を有するものと認められる。
以上から、引用文献2には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。
(引用発明)
「変動電流がそこを流れると変動磁場を発生する、異なる巻き数を有する第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206と、
第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206に変動電流が流れると変動磁場を発生し、変動磁場はサセプタ202内に渦電流を発生させ、その渦電流は、サセプタ202の電気抵抗に抗して流れて熱を発生し、発生された熱は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させる、サセプタ202と、
第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206を通る電流を制御する回路300と、を含み、
サセプタ202は、巻かれている第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206の長手方向中心軸線とサセプタ202の長手方向中心軸線とが一致しており、第1のインダクタコイル204と向き合う第1のサセプタ領域202aと、第2のインダクタコイル206と向き合う第2のサセプタ領域202bと、第1のサセプタ領域202aと第2のサセプタ領域202bとの間において第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206に向き合っていない部分を有し、
回路300は、所与の時間に第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206のうちの一方だけを動作させて、第1のサセプタ領域202a又は第2のサセプタ領域202bを有意に加熱する、
誘導加熱構成体。」
(2)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である韓国公開特許第10-2018-0073626号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア「
[図:0001402264000012.jpg]
」
(当審訳)
「[0001] 本発明はサセプタを備えるエアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に関し、より詳細にはエアロゾル形成物品を加熱するための誘導加熱装置に関する。」
イ「
[図:0001402264000013.jpg]
」
(当審訳)
「[0058] 図1は、誘導加熱装置1の装置ハウジング10のくぼみ11の中に配置されるエアロゾル形成物品2を伴う本発明による誘導加熱装置1の第一の実施形態を示し、誘導加熱装置1およびエアロゾル形成物品2は共に、本発明によるエアロゾル送達システムを形成する。図1に示す通り、エアロゾル形成物品2はたばこを豊富に含む中実の基体20と、フィルター部分21とを含んでもよいが、しかしこれは単に例にすぎず、必須ではない。図1にさらに見られるように、たばこを豊富に含む中実の基体20は、たばこを豊富に含む基体20内に分散されるサセプタ粒子22を含むが、これは図1ではたばこを豊富に含む基体20の下半分にのみ描かれている。既に述べたように、エアロゾル形成物品2は、ロッドの形状を持ってもよく、くぼみ11の内面110はたばこを豊富に含む基体20のロッドを収容するサイズおよび形状にされる。
[0059] くぼみ10の中に交番磁界を誘起する能力を有するようにくぼみ10を囲んで配置される単一のらせん状に巻かれたインダクタコイルLも図1に示される。インダクタコイルLは複数の個別コイルセグメントを備え、こうした3つの個別コイルセグメントL1、L2、L3が示されている。各々の個別コイルセグメントは2つの接続タップを備え、例えばコイルセグメントL1は2つの接続タップL11、L12を備え、コイルセグメントL2は2つの接続タップL21、L22を備え、またコイルセグメントL3は2つの接続タップL31、L32を備える。これらの接続タップL11、L21、L31、L12、L22、L32はコイルLの長さlに沿って異なる場所に配置され、これは図1に単に概略的に、接続タップは当然ながら装置ハウジング10内に配置されるように、電源電子回路と接続タップとの間の接続であるように示される(以下に、より詳細に説明される通り)。
[0060] 誘電加熱装置1は、電池(例えば、再充電可能な電池)などのDC電源であってもよい、電力供給源12をさらに備える。電池を再充電するためのピン130を備えるドッキングポート13も図1に例として示される。
[0061] 誘電加熱装置1は電源電子回路14をさらに備え、この電源電子回路の一方は電力供給源12(再充電可能な電池)に接続され、他方はコイルLに接続される。電源電子回路14は交流電流を個別コイルセグメントL1、L2、L3の接続タップに供給する能力を有する。これは、単により良好な理解のためにのみ、破線の接続線および図1に図示されるスイッチS11、S21、S31、S12、S22、S32によって概略的に示される。実際には、電気的接続は装置ハウジング10内に配置され、また電源電子回路14は一般にマイクロコントローラーユニット(詳細は図示せず)を備える場合があるので、マイクロコントローラーユニットのそれぞれの信号出口への交流電圧/電流の供給をマイクロコントローラーユニットの中で「切り替え」、個別コイルセグメントのそれぞれの接続タップL11、L12、L13、L12、L22、L32に直接接続できるマイクロコントローラーユニットのそれぞれの信号出口へと直接供給することができる。」
2-3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206」は、本願補正発明の「第1コイル及び第2コイル」に相当する。
してみると、引用発明の「異なる巻き数を有する第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206」は、本願補正発明の「互いに異なる巻線数を有する第1コイル及び第2コイル」に相当する。
引用発明の「喫煙材」は、本願補正発明の「エアロゾル生成基質」に相当する。
そして、引用発明の「第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206に変動電流が流れると変動磁場を発生し、変動磁場はサセプタ202内に渦電流を発生させ、その渦電流は、サセプタ202の電気抵抗に抗して流れて熱を発生」することは、「前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した磁場内で熱を発生させる方式」の限りにおいて、本願補正発明の「前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した交流磁場内で熱を発生させる方式」に一致する。
また、引用発明の「発生された熱は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させる」ことは、「隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させる」ことに相当する。
してみると、引用発明の「第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206に変動電流が流れると変動磁場を発生し、変動磁場はサセプタ202内に渦電流を発生させ、その渦電流は、サセプタ202の電気抵抗に抗して流れて熱を発生し、発生された熱は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させる、サセプタ202」は、「前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した磁場内で熱を発生させる方式で、隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させるサセプタ」の限りにおいて、本願補正発明の「前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した交流磁場内で熱を発生させる方式で、隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させるサセプタ」に一致する。
引用発明の「回路300」は、「第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206を通る電流を制御す」ものであって、「所与の時間に第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206のうちの一方だけを動作させ」るものであるから、「前記第1コイル及び前記第2コイルに既設定の電流がそれぞれ供給されるように制御する制御部」の限りにおいて、本願補正発明の「前記第1コイル及び前記第2コイルに既設定の交流電流がそれぞれ供給されるように制御する制御部」に一致する。
引用発明の「巻かれている第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206の長手方向中心軸線とサセプタ202の長手方向中心軸線とが一致して」いることは、本願補正発明の「前記サセプタの長手方向に前記第1コイル及び前記第2コイルと平行に配置され」ていることに相当する。
引用発明の「サセプタ202」における「第1のサセプタ領域202a」、「第2のサセプタ領域202b」、「第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206と向き合っていない部分」は、本願補正発明の「サセプタ」における「前記第1コイルに向き合う第1部分」、「前記第2コイルに向き合う第2部分」「前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分」にそれぞれ相当する。
してみると、引用発明の「第1のインダクタコイル204と向き合う第1のサセプタ領域202aと、第2のインダクタコイル206と向き合う第2のサセプタ領域202bと、第1のサセプタ領域202aと第2のサセプタ領域202bとの間において第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206に向き合っていない部分を有」することは、本願補正発明の「前記サセプタは、前記サセプタの長手方向に前記第1コイル及び前記第2コイルと平行に配置され、前記第1コイルに向き合う第1部分と、前記第2コイルに向き合う第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分と、を含」むことに相当する。
引用発明の「回路300は、所与の時間に第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206のうちの一方だけを動作させて、第1のサセプタ領域202a又は第2のサセプタ領域202bを有意に加熱する」ことは、「前記制御部は、
前記第1部分が、前記第1コイルに供給される電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される電流によって個別に加熱され」ることに限り、本願補正発明の「前記制御部は、
前記第1部分が、前記第1コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され」ることに一致する。
引用発明の「誘導加熱構成体」は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させものであるから、本願補正発明の「誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置」に相当する。
してみると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「互いに異なる巻線数を有する第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルから発生した磁場内で熱を発生させる方式で、隣接したエアロゾル生成基質を加熱してエアロゾルを生成させるサセプタと、
前記第1コイル及び前記第2コイルに既設定の電流がそれぞれ供給されるように制御する制御部と、を含み、
前記サセプタは、前記サセプタの長手方向に前記第1コイル及び前記第2コイルと平行に配置され、前記第1コイルに向き合う第1部分と、前記第2コイルに向き合う第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分と、を含み、
前記制御部は、
前記第1部分が、前記第1コイルに供給される電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される電流によって個別に加熱されるように制御する、
誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置。」
(相違点1)
「磁場」及び「電流」に関して、本願補正発明は、「交流磁場」及び「交流電流」であって、
「交流電流が印加されれば、交流磁場を発生させる」ものであるのに対して、引用発明は、「変動磁場」及び「変動電流」である点。
(相違点2)
本願補正発明は、「前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない前記部分が、前記第1コイルと前記第2コイルによって形成された交流磁場の拡張によって加熱され」るのに対して、引用発明では、不明な点。
2-4 当審の判断
上記相違点1について検討すると、引用文献3には、「誘導加熱装置1の装置ハウジング10のくぼみ11の中に配置されるエアロゾル形成物品2を伴う本発明による誘導加熱装置1」において、「交番磁界を誘起する能力を有するようにくぼみ10を囲んで配置される」、「3つの個別コイルセグメントL1、L2、L3」に対して、「電源電子回路14は交流電流を個別コイルセグメントL1、L2、L3の接続タップに供給する」ことが例示されているように、誘導加熱方式を用いるエアロゾル生成装置のコイルに「交流電流」を印加して「交流磁場」を発生させることは、従来周知の技術手段にすぎない。
そして、引用発明における「変動電流」及び「変動磁場」が引用文献2のFigure 4に示すような波形であって交流波の波形に類似するものであることを勘案すると、引用発明において変動電流として交流電流を選択し、変動磁場を交流磁場とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
上記相違点2について検討すると、引用文献2のFigure 2において、第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206との間に、磁場を遮蔽する部材は、特段、設けられていない。
してみると、引用発明において、「所与の時間に第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206のうちの一方だけを動作させ」た際に、第1のインダクタコイル204又は第2のインダクタコイル206に流れる電流によって発生する磁場は、第1のインダクタコイル204又は第2のインダクタコイル206を中心として空間に広がって存在するものと認められる。
そして、引用発明のサセプタ202は、第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206の長手方向中心軸線とサセプタ202の長手方向中心軸線とが一致するように配置されているのであるから、引用発明のサセプタ202は、第1のインダクタコイル204又は第2のインダクタコイル206が存在する範囲を超えて拡張して発生した磁場によって、第1のサセプタ領域202aと第2のサセプタ領域202bとの間において第1のインダクタコイル204と第2のインダクタコイル206に向き合っていない部分にも一定の渦電流が発生するものと認められる。
してみると、引用発明において、「所与の時間に第1のインダクタコイル204及び第2のインダクタコイル206のうちの一方だけを動作させて、第1のサセプタ領域202a又は第2のサセプタ領域202bを有意に加熱する」ことと、本願補正発明の「前記第1部分が、前記第1コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない前記部分が、前記第1コイルと前記第2コイルによって形成された交流磁場の拡張によって加熱される」ことと実質的に相違しないといわざるを得ない。
よって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献3に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けられない。
3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和3年11月12日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
理由3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2018/138072号
2.国際公開第2018/073376号
3.韓国公開特許第10-2018-0073626号公報
4.中国実用新案第208016042号明細書(周知技術を示す文献)
(理由3A)
・請求項 1~14
・引用文献等 1、3~4
(理由3B)
・請求項 1~4、6~11、13~14
・引用文献等 2~4
・請求項 5、12
・引用文献等 1~4
(理由3C)
・請求項 1~14
・引用文献等 1~3
3.引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2、3に記載された事項は、前記第2の[理由]2.2-2(1)、(2)に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本願補正発明において、「第1コイル及び第2コイル」との限定事項を削除して「複数のコイル」又は「前記コイル」とし、「サセプタ」について「前記第1コイルに向き合う第1部分と、前記第2コイルに向き合う第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない部分」との限定事項を削除して「第1部分及び第2部分」とし、さらに制御部が「前記第1部分が、前記第1コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第2部分が、前記第2コイルに供給される交流電流によって個別に加熱され、前記第1コイルと前記第2コイルに向き合っていない前記部分が、前記第1コイルと前記第2コイルによって形成された交流磁場の拡張によって加熱されるように制御する」との限定事項を削除し「前記第1部分、前記第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分とを除く部分が、前記複数のコイルに供給される交流電流によって個別に加熱される」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2.2-4に記載したとおり、引用発明、引用文献3に例示された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明、引用文献3に例示された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-008186