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特許拒絶査定不服審判

2022-011454

エアロゾル化可能構造

審判番号
2022-011454
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-528003外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月22日
審決日
2023年02月27日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (A24F) / P18 .121-Z (A24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-528003「エアロゾル化可能構造」拒絶査定不服審判事件〔令和1年6月13日国際公開、WO2019/110730、令和3年2月18日国内公表、特表2021-505125〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)12月8日 英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 7月16日付け:拒絶理由通知書

同 年10月18日 :意見書、手続補正書の提出

令和 4年 3月15日付け:拒絶査定

同 年 7月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

同 年11月22日 :上申書の提出

同 年12月 5日 :上申書の提出

第2 令和4年7月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年7月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
エアロゾル化可能材料を含む第1のシート、及び
変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含み、エアロゾル化可能材料を含まない第2のシートであって、前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない、第2のシート
を有する寄集め積層構造を備える、エアロゾル化可能構造と、
前記エアロゾル化可能構造の前記エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、
前記エアロゾル化可能構造を受容する加熱ゾーン、及び
前記エアロゾル化可能構造が前記加熱ゾーンに配置された場合に、前記エアロゾル化可能構造の前記加熱材料に侵入する前記変動磁場を生成する磁場生成器
を備えた、装置と、
を備える、システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和3年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
エアロゾル化可能材料を含む第1のシート、及び
変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含む第2のシートであって、エアロゾル化可能材料を含まない、第2のシート
を有する寄集め積層構造を備える、エアロゾル化可能構造と、
前記エアロゾル化可能構造の前記エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、
前記エアロゾル化可能構造を受容する加熱ゾーン、及び
前記エアロゾル化可能構造が前記加熱ゾーンに配置された場合に、前記エアロゾル化可能構造の前記加熱材料に侵入する前記変動磁場を生成する磁場生成器
を備えた、装置と、
を備える、システム。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2のシート」について、上記のとおり「前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない」とする限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

上記付加された事項については、当初明細書の【0066】に記載された事項であるから、新規事項の追加に該当しない。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2017/072147号(2017年5月4日出願公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審にて付加した。)

なお、引用に際しては引用文献の日本語ファミリーである、特表2019-501634号公報の表記を仮訳として併記した。

「The present invention relates to articles for use with apparatus for heating smokable material to volatilise at least one component of the smokable material, and to systems comprising such apparatus and such articles.」(1ページ6-8行)

(仮訳)「【技術分野】

【0001】

本発明は、喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品と、そのような装置及びそのような物品を備えるシステムとに関する。」

「Referring to Figure 1 there is shown a schematic perspective view of an example of an article according to an embodiment of the invention. The article 1 comprises a sheet 10 comprising reconstituted smokable material, and heating material 20 that is heatable by penetration with a varying magnetic field to heat the smokable material. Examples of such heating material are described below. The article 1 is for use with apparatus for heating the smokable material to volatilise at least one component of the smokable material without burning the smokable material. Such an apparatus may comprise a magnetic field generator for generating a varying magnetic field to be used in heating the heating material. An example such apparatus 100 is shown in Figure 9 and described below.
In this embodiment, the sheet 10 is planar, or substantially planar. However, the sheet 10 is bendable or reliable so as to from a rolled sheet. By "rolled sheet", it is meant that the sheet 10 is curved, preferably without folding, so that the sheet 10 has an elongate spiral or tubular shape. Such a rolled sheet may be less prone to damage, more convenient to store and handle, and better suited for use with the apparatus than the planar sheet.
In this embodiment, the heating material 20 is in contact with the sheet 10. More specifically, in this embodiment, the heating material 20 is on a surface of the sheet 10. Still more specifically, in this embodiment, all or substantially all of a surface of the sheet 10 is covered by a layer that comprises the heating material 20. The layer may be a foil layer. However, as will be apparent from the description below, in other embodiments the surface of the sheet 100 may be only partially covered by the heating material 20. Further, in some embodiments, the heating material 20 may be on both opposite surfaces of the sheet 10. For example, in some embodiments, all, substantially all, a majority, or only a portion of each of two opposite surfaces of the sheet 10 may be covered by heating material 20.」(10ページ1~28行)

(仮訳)「【0053】

図1を参照すると、本発明の実施形態による物品の例の概略斜視図が示されている。物品1は、再生喫煙材を備えるシート10と、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材20とを備える。このような加熱材の例を下記で説明する。物品1は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するためのものである。このような装置は、加熱材を加熱するのに使用するために変動磁場を発生させるための磁場発生器を備えることができる。このような装置100の例は図9に示され、下記で説明される。

【0054】

この実施形態では、シート10は平面状、又は実質的に平面状である。しかしながら、シート10は、巻きシートを形成するように曲げることができる、又は巻くことができる。「巻きシート」は、シート10が細長い渦巻状又は管状を有するように、シート10を、好ましくは折り曲げられることなく曲げることを意味する。このような巻きシートは、平面シートよりも、損傷を受けにくく、保存及び取扱いに便利であり、装置とともに使用するためにより適することがある。

【0055】

この実施形態では、加熱材20はシート10と接触している。より詳細には、この実施形態では、加熱材20は、シート10の表面上にある。さらにより詳細には、この実施形態では、シート10の表面のすべて又は実質的にすべては、加熱材20を備える層によって覆われる。この層は箔の層とすることができる。しかしながら、下記の説明で明らかなように、他の実施形態では、シート100の表面は加熱材20によって部分的にだけ覆われてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、加熱材20はシート10の両側の表面にあってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、 シート10の両側の2つの表面のそれぞれのすべて、実質的にすべて、大部分、又は一部分だけが加熱材20によって覆われてもよい。」

「
[図:0001400164000001.jpg]
」
「Referring to Figure 9 there is shown a schematic cross-sectional view of an example of a system according to an embodiment of the invention. The system 1000 of this embodiment comprises an article 2 and apparatus 100.The article 2 comprises a sheet 10 comprising reconstituted smokable material, and heating material 22a, 22b, 22c, 22d that is heatable by penetration with a varying magnetic field to heat the smokable material.The apparatus 100 is for heating the smokable material of the article 2 to volatilise at least one component of the smokable material.
In this embodiment, the article 2 of the system 1000 is the article 2 of Figure 2, rolled in such a way that the sheet 10 of the article 2 is a rolled sheet 10 and the strips 22a, 22b, 22c, 22d comprising heating material 20 are arranged so as to be parallel to the longitudinal axis of the rolled sheet 10. However, in other embodiments, the article of the system 1000 may be an article other than the article 2 of Figure 2, such as any one of the other articles described above. Broadly speaking, the apparatus 100 comprises a heating zone 111 for receiving at least a portion of the article and a magnetic field generator 112 for generating a varying magnetic field to be used in heating the smokable material when the portion of the article is in the heating zone 111.」(28ページ1~17行)

(仮訳)「【0125】

図9を参照すると、本発明の実施形態によるシステムの例の概略断面図が示されている。この実施形態のシステム1000は、物品2と装置100とを備える。物品2は、再生喫煙材を備えるシート10と、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材22a、22b、22c、22dとを備える。装置100は、物品2の喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものである。

【0126】

この実施形態では、システム1000の物品2は図2の物品2であり、物品2のシート10が巻きシート10となり、加熱材20を備える片22a、22b、22c、22dが巻きシート10の長手方向軸に平行になるように配置されるように巻かれる。しかしながら、他の実施形態では、システム1000の物品は、上記の他の物品のいずれか1つなど、図2の物品2以外の物品であってもよい。大まかに言うと、装置100は、物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域111と、物品のその部分が加熱領域111内にあるとき、喫煙材を加熱するのに使用するために変動磁場を発生させるための磁場発生器112とを備える。」

「
[図:0001400164000002.jpg]
」

上記から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置とともに使用するための物品と、そのような装置を備えるシステム1000であって、
前記物品2は、再生喫煙材を備えるシート10と、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材20とを備え、シート10と加熱材20とは、加熱材20がシート10のすべてを覆って、シート10が巻きシートとされ、
前記装置100は、物品2の喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものであり、物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域111と、物品のその部分が加熱領域111内にあるとき、喫煙材を加熱するのに使用するために変動磁場を発生させるための磁場発生器112とを備える、システム1000。」

(3)引用発明との対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「喫煙材」は、本願補正発明の「エアロゾル化可能材料」に相当する。よって、引用発明の「喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるための装置」と「そのような装置を備えるシステム1000」は、本件補正発明の「エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステム」に相当する。

(イ)引用発明の「再生喫煙材を備えるシート10」は、再生された「喫煙材」であっても、「喫煙材」に揮発される成分の材料が含まれることが明らかであるから、本件補正発明の「エアロゾル化可能材料を含む第1のシート」に相当する。

(ウ)引用発明の「喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材20」と、本件補正発明の「変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含み、エアロゾル化可能材料を含まない第2のシートであって、前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない、第2のシート」とは、引用発明の「加熱材20」の態様に喫煙材が含まれていないのであるから、「変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含み、エアロゾル化可能材料を含まない第2のシート」の限りにおいて一致する。

(エ)本件補正発明の「寄集め積層構造を備える、エアロゾル化可能構造」とは、本件明細書の【0055】にある「寄せ集められる」の定義を参酌すると、「用語『寄せ集められる(gathered)』は、規則的であれ不規則的であれ、形状がしわ付けされること、折り目が付けられること、折り曲げられること、或いは巻き込まれることを含む。これに対応し、本書において、用語『寄せ集める(gathering)』は、規則的であれ不規則的であれ、形状にしわ付けすること、折り目を付けること、折り曲げること、或いは巻き込むことを含む。」とされており、“巻き込むこと”を含むとされている。

そうすると、引用発明の「シート10と加熱材20とは、加熱材20がシート10のすべてを覆って、シート10が巻きシートとされ」ることは、本件補正発明の「寄集め積層構造」に相当する。

よって、引用発明の「再生喫煙材を備えるシート10と、喫煙材を加熱するために変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材20とを備え、シート10と加熱材20とは、加熱材20がシート10のすべてを覆って、シート10が巻きシートとされ」る「物品2」は、本件補正発明の「エアロゾル化可能材料を含む第1のシート、及び 変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含む第2のシートであって、」「エアロゾル化可能材料を含まない、第2のシートを有する寄集め積層構造を備える、エアロゾル化可能構造」に相当する。

(オ)引用発明の「加熱領域111」及び「磁場発生器112」は、本願補正発明の「加熱ゾーン」及び「磁場派生器」にそれぞれ相当する。

してみると、引用発明の「物品2の喫煙材を加熱して喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるためのものであり、物品の少なくとも一部分を受け入れるための加熱領域111と、物品のその部分が加熱領域111内にあるとき、喫煙材を加熱するのに使用するために変動磁場を発生させるための磁場発生器112とを備える」とした「装置100」は、本件補正発明の「前記エアロゾル化可能構造の前記エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、前記エアロゾル化可能構造を受容する加熱ゾーン、及び前記エアロゾル化可能構造が前記加熱ゾーンに配置された場合に、前記エアロゾル化可能構造の前記加熱材料に侵入する前記変動磁場を生成する磁場生成器を備えた、装置」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】

「エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させるシステムであって、
エアロゾル化可能材料を含む第1のシート、及び
変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含み、エアロゾル化可能材料を含まない第2のシート
を有する寄集め積層構造を備える、エアロゾル化可能構造と、
前記エアロゾル化可能構造の前記エアロゾル化可能材料を加熱して、前記エアロゾル化可能材料の少なくとも1つの成分を揮発させる装置であって、
前記エアロゾル化可能構造を受容する加熱ゾーン、及び
前記エアロゾル化可能構造が前記加熱ゾーンに配置された場合に、前記エアロゾル化可能構造の前記加熱材料に侵入する前記変動磁場を生成する磁場生成器
を備えた、装置と、
を備える、システム。」

【相違点】

「第2のシート」と「第1のシート」との互いの関係について、本件補正発明は、「前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない」としているのに対し、引用発明は、「シート10」と「加熱材」とは、互いに結合されていないか否か不明な点。

(4)判断

以下、相違点について検討する。

相違点とした上記「前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない」に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

「【0066】
エアロゾル化可能構造1は、積層構造10を含む。図3は、エアロゾル化可能構造1の積層構造10の部分模式断面図である。積層構造10は、第1のシート11及び第2のシート12を含む。いくつかの実施形態において、積層構造10は、薄板である。いくつかの実施形態において、第1のシート11は、接着剤又は化学結合等によって、第2のシート12に結合されている。例示的な接着剤は、ポリ酢酸ビニル(PVA)及びエチレン酢酸ビニル(EVA)である。他の実施形態において、第1のシート11は、第2のシート12に結合されていなくてもよい。」

上記関連記載の内容から見て、相違点とされる「結合」とは、「接着剤又は化学結合等に」よるものを想定していると理解される。

かかる理解で引用文献全体を見ると、「シート10」と「加熱材」との構造上の扱いについて、上記2(2)の摘記では、FIG.1の形態についての言及として「この実施形態では、加熱材20はシート10と接触している。」とされ、加熱材がシート10と同形状のシートの場合、接着や化学結合を要する旨の記載はされていない。また、引用文献の17ページ11~15行(日本語ファミリー【0082】参照)には、巻きシートで互いに接着されたとするFIG.6の実施形態を説明しつつ、他の実施形態では接着剤を省略してもよい旨の開示がされている。一方で、加熱材の形状が部分的な「片」で分離したFIG.2の態様や、管で分離したFIG.3の場合には、接着剤によってシート10の表面にはり付ける(13ページ7-10行等、【0064】等参照)旨の開示が見られる。

以上を総合すると、引用文献ではシート10と加熱材とで巻きシートを構成する場合、加熱材がFIG.1に示すような、同形シートの場合については、引用文献内における接着剤を使用しない旨の示唆を考慮して、双方が接触すれば事足りると認められる。そして、FIG.1に沿った引用発明では、シート10と加熱材とが巻きシートの状態で加熱領域111に置かれるのであるから、加熱材が接着剤による固定が必要な片の形状ではないことから、シート10と加熱材との積層には、接着剤の使用は任意であると解されるから、双方が結合しないとする選択も、当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。

そして、当該相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、かかる相違点によりもたらされる作用効果に言及した記載が見当たらないことを考えると、引用発明及び引用文献中の示唆から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献中の示唆に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、本件補正発明が当業者に容易に発明できたものでないとする主張として、審判請求書及び令和4年12月5日提出の上申書にて、各々次の旨の主張をしている。

[審判請求書]

「新請求項1は、『エアロゾル化可能構造が、エアロゾル化可能材料を含む第1のシート、及び変動磁場の侵入により加熱可能であり、前記第1のシートの前記エアロゾル化可能材料を加熱する加熱材料を含み、エアロゾル化可能材料を含まない第2のシートであって、前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない、第2のシートを有する寄集め積層構造を備える』事項を発明特定事項として規定しています。
この発明特定事項については、いずれの引用文献においても記載も示唆もされていないものと思料致します。
例えば、引用文献1では、複数の実施形態が記載されていますが、いずれの実施形態においても、加熱材料は、喫煙材の表面に取り付けられているものと思料致します。そのため、引用文献1には、上記発明特定事項については記載も示唆もされていないものと思料致します。」

[上申書]

「引用文献1の当該記載(第20ページ第5-11行)は、『加熱材20とシート10が互いに結合されていること』を排除する意味ではないものと思料致します。・・・引用文献1の第20ページ第16-20行には、そのような構成を達成する方法として、(加熱材20とシート10との間にスペースを設けるのではなく)加熱材20上に熱伝導バリアとしてのコーティングを設けることが記載されているものと思料致します。そして、このコーティングによって、加熱材20とシート10とが直接接触しないようにされているものと思料致します。しかしながら、このコーティングによって、シート10が、当該コーティングを備える加熱材20に結合されることが妨げられるものではないと思料致します。そのため、引用文献1の上記記載は、「加熱材20とシート10が互いに結合されている」ことを除外するような意味ではないため、引用文献1の上記記載が、「加熱材20とシート10が互いに結合されていない」という意味であるという審査官殿の認定は、誤りであるものと思料致します。」

しかしながら、上記の相違点の検討で示したとおり、引用発明の2つのシートに関する構造は、本件補正発明の特定事項と対比して、どちらも接触を確保できるという点で大きく異なるものではないし、加熱材20上に熱伝導バリアとしてのコーティングを設けることができるとした引用文献1内の開示部分は、上記判断には用いていないため、請求人の上記主張は、採り上げることができない。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年7月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、

この出願の請求項1-4に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、

また、

この出願の請求項5-14に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項並びに引用文献3に記載された事項に基いて、

その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2017/072147号
引用文献2:国際公開第2010/113702号
引用文献3:国際公開第2017/072146号

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1のシートと前記第2のシートは互いに結合されていない」に係る限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1中の示唆に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1中の示唆に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-011454

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