特許拒絶査定不服審判
2022-006757
クロック分配システム
- 審判番号
- 2022-006757
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-522842
- 請求日
- 2022年05月06日
- 審決日
- 2022年11月22日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 審判長/審判官
- 審判長 稲葉 和生
- 審判官 中野 裕二
- 審判官 富澤 哲生
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-522842「クロック分配システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日国際公開、WO2019/099187、令和 3年 2月12日国内公表、特表2021-503641、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年11月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 4月22日 :手続補正書の提出
令和3年 5月19日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月10日 :意見書の提出
令和4年 2月16日付け:拒絶査定
令和4年 5月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年2月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、12に係る発明は、以下の引用文献1-2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.米国特許第09722589号明細書
2.特開2004-355647号公報
第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和4年5月6日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
クロック分配システムであって、
正弦波クロック信号を伝搬する少なくとも1つの共振器スパインと、
前記少なくとも1つの共振器スパインに導電的に結合され、定在波共振器として構成された少なくとも1つの共振器リブと、
複数のトランス結合線と
を備え、前記複数のトランス結合線の各々は、関連する回路に導電的に結合され、前記少なくとも1つの共振器リブへの複数の誘導結合を有し、加算的な態様で、前記複数の誘導結合の各々を介して前記正弦波クロック信号に対応するクロック電流を誘導的に生成して前記関連する回路に機能を提供し、
前記少なくとも1つの共振器リブの各々は、前記少なくとも1つの共振器リブの各々の複数の平行部分を提供するための複数の屈曲部を含んでおり、前記複数の平行部分の個々のサブセットにおける前記複数のトランス結合線の個々の複数の誘導結合を介して複数の回路に対してほぼ均一な複数のクロック電流が、加算的な態様で誘導的に生成されるようになっている、システム。」
また、本願発明2-13は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。訳は当審訳。以下同じ。)。
「In one example, clock and power to RQL circuits is provided by a harmonic radio frequency signal that may have a frequency in a range between 100 MHz to 100 GHz. Resonant clock networks (RCNs) may be used to distribute a clock signal that provides both power and clock to the RQL circuits.」(4欄21-26行)
[当審訳]
「一例では、逆量子論理(RQL)回路へのクロック及び電力は、100MHz乃至100GHzの範囲の周波数を有していてもよい高調波無線周波数信号によって提供される。共振クロックネットワーク(RCN)は、逆量子論理(RQL)回路へ電力とクロックの両者を提供するクロック信号を分配するために使用することができる。」
「The clock signal may be a sinusoidal clock that may provide AC power to the superconducting logic circuits.」(4欄57-58行)
[当審訳]
「クロック信号は、超伝導論理回路へ交流電力を供給することができる正弦波クロックであってもよい。」
「FIG. 1 shows a portion of a MTL 100 in accordance with one example. MTL 100 may include unit cells, such as unit cell 112, formed along a spine 114. MTL 100 may be formed by using any superconductor (e.g., Niobium), any normal metal (e.g., copper or aluminum), or any combination of such metals. Each unit cell 112 may include stubs 116 and 118, forming clock-lines.」(5欄36-42行)
[当審訳]
「図1は、一実施例に従った、MTL100の一部を示している。MTL100は、スパイン114に沿って形成され、ユニットセル112等のユニットセルを含むことができる。MTL100は、超伝導体(例えばニオブ)、通常の金属(例えば、銅又はアルミニウム)又はこれらの金属の組み合わせを用いて形成することができる。各ユニットセル112は、クロックラインを形成する、スタブ116とスタブ118を含むことができる。」
「FIG. 5 shows standing waves formed along stubs of a MTL in accordance with one example. The voltage waves are shown with respect to the MTL that includes a spine 500 and stubs (e.g., 504, 506, 508, 510, 512, and 514) on each side of the spine. Each of the stubs is shown as being grounded at the ends. Standing voltage waves 540, 542, and 544 may be formed along the stubs.The standing voltage waves may create current in each of the stubs, which in turn may be coupled to the RQL or other types of superconducting circuits to provide clock/power to these circuits.」(9欄7-16行)
[当審訳]
「図5は、一実施例に従った、MTLのスタブに沿って形成された定在波を示す。電圧波形は、スパイン500及びスパインの両側にあるスタブ(例えば、504、506、508、510、512、及び514)を含むMTLに関連して示されている。スタブの各々は、端部に接地されたものとして示されている。定在電圧波540、542及び544は、スタブに沿って形成されてもよい。定在電圧波は、各スタブにおいて電流を生成することができ、その電流は、逆量子論理(RQL)又は他のタイプの超伝導回路へクロック/電力を提供するために、これらの回路に結合することができる。」
「【図1】
[図:0001391920000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001391920000002.jpg]
」
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「共振クロックネットワーク(RCN)であって、
共振クロックネットワーク(RCN)は、逆量子論理(RQL)回路へ電力とクロックの両者を提供するクロック信号を分配するために使用することができ、
クロック信号は、超伝導論理回路へ交流電力を供給することができる正弦波クロックであってもよく、
MTL100は、スパイン114に沿って形成され、ユニットセル112等のユニットセルを含むことができ、
各ユニットセル112は、クロックラインを形成する、スタブ116とスタブ118を含むことができ、
定在電圧波540、542及び544は、スタブに沿って形成されてもよく、
定在電圧波は、各スタブにおいて電流を生成することができ、その電流は、逆量子論理(RQL)又は他のタイプの超伝導回路へクロック/電力を提供するために、これらの回路に結合することができる、共振クロックネットワーク(RCN)。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0114】
図26および図27に示されるように、信号伝送路703に繋がる全てのDRAMコントローラ7-0およびDRAMチップ7-1~7-nの共通基準時間(共通タイミング)GMTは、折り返したクロック線706を使用して生成する。すなわち、本発明の第3の形態では、送信用クロックCLKs および受信用クロックCLKr を使用するのではなく、折り返したクロック線706の往路側のクロックと復路側のクロックの中間のタイミングとして共通タイミングGMTを生成する。
【0115】
具体的に、DRAMチップ7-1では、往路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP712から取り込み、復路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP713から取り込み、そして、これら2つのクロックの中間(中間位相)のタイミングを共通タイミングとする共通基準時間GMTを生成する。同様に、DRAMチップ7-2では、クロック線706上のポイントP722およびP723から往路および復路側のクロックCLKを取り込んで、その中間のタイミングを共通タイミングとする共通基準時間GMTを生成し、また、DRAMチップ7-nでは、クロック線706上のポイントP7n2およびP7n3から往路および復路側のクロックCLKを取り込んで、その中間のタイミングを共通タイミングとする共通基準時間GMTを生成する。これにより、クロック線706におけるDRAMチップの位置に関わらず、正確に周期TT毎の共通タイミング(共通基準時間GMT)が得られることになる。」
「【図26】
[図:0001391920000003.jpg]
」
「【図27】
[図:0001391920000004.jpg]
」
したがって、引用文献2には、「折り返したクロック線706を使用し、DRAMチップ7-1では、往路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP712から取り込み、復路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP713から取り込み、そして、これら2つのクロックの中間(中間位相)のタイミングを共通タイミングとする共通基準時間GMTを生成する」という技術的事項が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「共振クロックネットワーク(RCN)」は、「逆量子論理(RQL)回路へ電力とクロックの両者を提供するクロック信号を分配するために使用することができ」ることから、本願発明1の「クロック分配システム」に相当する。
イ 引用発明の「スパイン114」は、共振器を構成することは明らかであるから、本願発明1の「共振器スパイン」に相当する。また、引用発明において、「クロック信号は、超伝導論理回路へ交流電力を供給することができる正弦波クロックであってもよ」いことから、引用発明の「スパイン114」は、本願発明1の「正弦波クロック信号を伝搬する少なくとも1つの共振器スパイン」にも相当する。
ウ 引用発明の「スタブ116」及び「スタブ118」は、「定在電圧波540、542及び544は、スタブに沿って形成されてもよ」いことから、本願発明1の「定在波共振器として構成された少なくとも1つの共振器リブ」に相当する。また、引用発明において、「スタブ116」及び「スタブ118」は、「スパイン114」と導電的に結合していることは明らかである。そうすると、引用発明の「スタブ116」及び「スタブ118」は、本願発明1の「前記少なくとも1つの共振器スパインに導電的に結合され、定在波共振器として構成された少なくとも1つの共振器リブ」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「クロック分配システムであって、
正弦波クロック信号を伝搬する少なくとも1つの共振器スパインと、
前記少なくとも1つの共振器スパインに導電的に結合され、定在波共振器として構成された少なくとも1つの共振器リブと、
を備える、システム。」
(相違点1)
本願発明1では「複数のトランス結合線」を備えるのに対し、引用発明では、「定在電圧波は、各スタブにおいて電流を生成することができ、その電流は、逆量子論理(RQL)又は他のタイプの超伝導回路へクロック/電力を提供するために、これらの回路に結合することができる」が、複数のトランス結合線を備えることについて明確に特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では「前記複数のトランス結合線の各々は、関連する回路に導電的に結合され、前記少なくとも1つの共振器リブへの複数の誘導結合を有し、加算的な態様で、前記複数の誘導結合の各々を介して前記正弦波クロック信号に対応するクロック電流を誘導的に生成して前記関連する回路に機能を提供」するのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1では「前記少なくとも1つの共振器リブの各々は、前記少なくとも1つの共振器リブの各々の複数の平行部分を提供するための複数の屈曲部を含んでおり、前記複数の平行部分の個々のサブセットにおける前記複数のトランス結合線の個々の複数の誘導結合を介して複数の回路に対してほぼ均一な複数のクロック電流が、加算的な態様で誘導的に生成されるようになっている」のに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
上記第4の2に記載のとおり、引用文献2には、「折り返したクロック線706を使用し、DRAMチップ7-1では、往路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP712から取り込み、復路側のクロックCLKをクロック線706上のポイントP713から取り込み、そして、これら2つのクロックの中間(中間位相)のタイミングを共通タイミングとする共通基準時間GMTを生成する」という技術的事項が記載されている。しかしながら、引用文献2には、上記相違点3に係る本願発明1の「前記少なくとも1つの共振器リブの各々は、前記少なくとも1つの共振器リブの各々の複数の平行部分を提供するための複数の屈曲部を含んでおり、前記複数の平行部分の個々のサブセットにおける前記複数のトランス結合線の個々の複数の誘導結合を介して複数の回路に対してほぼ均一な複数のクロック電流が、加算的な態様で誘導的に生成されるようになっている」という構成が記載されているとはいえず、このような構成を示唆する記載もない。
また、上記相違点3に係る本願発明1の構成が、本願の優先日前に周知技術であったとはいえない。
したがって、相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献2に記載されたものではなく、周知技術であるともいえないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1-2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2-13について
本願発明2-13も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-13は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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