2022-006023
チューブ容器
- 審判番号
- 2022-006023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-065878外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月21日
- 審決日
- 2023年05月24日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年3月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
(令和4年 1月28日 :原査定の謄本の発送日)
第2 本願発明について
本願の請求項1ないし2に係る発明は、令和3年3月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体、および前記チューブ容器本体の注出口部に着脱可能に装着して、注出口部を閉鎖するキャップ、を備えたチューブ容器において、少なくとも、前記チューブ容器本体の注出口部およびキャップが、主成分としてポリエチレンを含み、前記注出口部を構成するポリエチレンが高密度ポリエチレンであり、前記キャップを構成するポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の高密度ポリエチレンと、を含み、前記キャップにおける前記化石燃料由来の高密度ポリエチレンと、前記バイオマス由来の高密度ポリエチレンとの混合割合が、質量比において5:5~9:1であることを特徴とする、チューブ容器。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術(引用文献3~4参照。)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2008-162599号公報
2.特開2015-96431号公報
3.特開2013-139286号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2013-545684号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由において引用した特開2008-162599号公報には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、押出チューブ容器用積層体に関し、酸素、水蒸気等に対するバリア性、耐内容物性等に優れ、練り歯磨き、食品、化粧品、医薬品とはじめとする内容物の充填包装に使用され、表面に印刷表示部が形成されたチューブ容器の作成に使用される押出チューブ容器用積層体に関するものである。」
(イ)「【0005】まず、(1)の押出ラミネート法においては、アンカーコート層形成は有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系剤などのアンカーコート剤形成用組成物によって形成されているが、内容物にアルコール成分や精油成分等の浸透性が大きな成分が含まれている場合にはアンカーコート層の耐性が不足し、長期に保存するような場合には、シーラント層がバリア層から剥離する問題がある。」
(ウ)「【0015】図2は、本発明のチューブ容器の一例を示す一部を切断した図である。チューブ容器20は、上記で説明した積層体を丸めて、該積層材の両端部の最外層である表面樹脂層面2と最内層であるシーラント層6とを重ね合わせ、その重合端部を溶着して溶着部21を形成してチューブ容器を構成する筒状部22を作製する。ついで、筒状部22の一方の開口部の上部に、チューブ容器を構成する肩部23、口部24等からなる頭部25を形成する。また、筒状部22の表面には、各種の印刷方法によって、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層26を有している。次いで、頭部25の口部14(「口部24」の誤記と認定。)に密閉するキャップ27を取り付けて、口部24を密閉した後に、筒状部22の開口部28から練り歯磨き、練りマスタード、練りわさび等の内容物29を所定量充填した後に、開口部28を溶着して底溶着部30を形成して、内容物29を充填したチューブ容器20を得ることができる。」
(エ)「【実施例】・・・【0018】得られた積層体を150mm×120mmの大きさに切り出し、積層体を丸めてその重合端部をヒートシールしてチューブ容器の筒状部を形成し、更にその筒状部の一方の端部に、高密度ポリエチレンを射出成形して内径38mmの肩部と口部を形成し、口部に高密度ポリエチレン製のキャップを取り付けた。」
(オ)「[図:0001400017000001.jpg]」
イ 引用発明
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「チューブ容器20は、筒状部22の一方の開口部の上部に、チューブ容器を構成する肩部23、口部24等からなる頭部25を形成し、頭部25の口部24に密閉するキャップ27を取り付け、肩部23と口部24は高密度ポリエチレンを射出成形して形成され、口部24に高密度ポリエチレン製のキャップ27が取り付けられた、チューブ容器20。」
(2) 引用文献2
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2015-96431号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、チューブ容器に関し、特に、頭部がバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物からなるチューブ容器に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0006】上記の通り、石油代替原料としてカーボンニュートラルな材料を包装材料に使用することが試みられており、今後、包装材料を環境に配慮しながら製造していくにあたり、化石燃料からの更なる脱却が望まれている。しかしながら、これまでチューブ容器等の容器本体の胴部に、バイオマス原料を用いた樹脂組成物を用いた樹脂フィルムを用いることが検討されてきたが、頭部などチューブ容器の胴部以外の部分についてバイオマス原料を適用することは十分検討されていなかった。【0007】本発明の目的は、チューブ容器全体に対する質量割合の高い頭部に着目し、頭部をカーボンニュートラルな材料で形成することにより、チューブ容器全体としての化石燃料の使用量の軽減を図り、より一層、二酸化炭素の排出量を低減することができるチューブ容器を提供することである。」
(ウ)「【0012】<第1の実施形態>本発明による第1の実施形態のチューブ容器について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態によるチューブ容器の構成を簡略に示す図であり、図2は、図1のA-A断面図である。図1、図2に示すように、チューブ容器10は、頭部11と、胴部12とを備えている。【0013】[頭部]頭部11は、胴部の一端部と連接した肩部13と、肩部に連接している注出口部14とからなり、ポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物を用いて圧縮成形法や射出成型法等の成形法により一体的に形成される。以下、チューブ容器の頭部11に使用される樹脂組成物について説明する。【0014】(樹脂組成物)頭部の成形に使用される樹脂組成物は、ポリオレフィンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~95質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。」
(エ)「【0031】上記のポリオレフィンは、ポリエチレンであることが好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となるからである。」
(オ)「【0036】ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。」
(カ)「[図:0001400017000002.jpg]」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「チューブ容器全体としての化石燃料の使用量の軽減を図り、より一層、二酸化炭素の排出量を低減することができるチューブ容器を提供するために、チューブ容器の頭部11の成形に、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含む樹脂組成物を使用し、ポリオレフィンは、ポリエチレンが好ましく、ポリエチレンの種類として高密度ポリエチレン(HDPE)等から適宜選択することができること。」
(3) 引用文献3
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特開2013-139286号公報には、次の記載がある。
(ア)「【0134】[実施例4]前記の植物由来ポリエチレンの単独使用に代えて、該植物由来ポリエチレン 90質量%、及び、化石燃料由来の高密度ポリエチレン〔ブラスケム社製、銘柄名IE59U3、密度0.959g/cm3、MFR(温度190℃、荷重2.12N)5g/10分、モダン炭素比率0pMC。以下、「化石燃料由来ポリエチレン」ということがある。〕10質量%とした配合の変更(合成樹脂材料は、90%Corg.renewであり、モダン炭素比率は、93pMCである。)、並びに、膜状ヒンジ(3)における最小部/中央部厚み比率を0.760としたヒンジキャップの形状の変更を除いて、実施例1と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。」
(イ)「【0137】[実施例5]前記の植物由来ポリエチレン58質量%、及び、前記の化石燃料ポリエチレン 42質量%とした配合の変更(合成樹脂材料は、58%Corg.renewであり、モダン炭素比率は、60pMCである。)を除いて、実施例4と同様にして、射出成形によって、植物由来のポリオレフィンを含有する、膜状ヒンジを備えるヒンジキャップを一体成形した。」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「植物由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンを配合した材料を用いてヒンジキャップを射出成形により成形すること。」
(4) 引用文献4
ア 原査定の拒絶の理由で引用した特表2013-545684号公報には、次の記載がある。
(ア)「【0030】本発明の他の実施形態では、クロージャは環境維持可能な材料からなる。このクロージャは、環境維持可能な材料で完全に製造されてもよく、又は第1の構成要素(3)又は第2の構成要素(4)のみが製造されてもよい。このことが、よりリサイクル可能なクロージャを可能にする。使用され得るいくつかの材料は、PCR、HDPE、LDPE、Bamboo、PLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、及び出発材料が油の代わりに植物又はバイオマスであるバイオ-ポリオレフィン類(バイオ-PE、バイオ-PP、バイオ-PET)を含む再生可能樹脂;・・・その他の材料である。」
イ 引用文献に記載された事項
以上より、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「出発材料が植物又はバイオマスであるバイオ-ポリオレフィン類を含む再生可能樹脂であるクロージャ。」
2 引用発明との対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「チューブ容器20」は、その機能、構造及び技術的意義を考慮して対比すると、本願発明の「チューブ容器」に相当し、以下同様に、
「筒状部22」は、「胴部」に、
「口部24」は、「抽出口部」に、
「頭部25」は、「頭部」に、
「キャップ27」は、「キャップ」に、
それぞれ相当する。
・引用発明の「頭部25」は口部24を備えていることから、本願発明の「抽出口部を有する頭部」の態様に相当する。
・引用発明の「筒状部22」は、一方の開口部の上部に、チューブ容器を構成する頭部25を形成していることから、本願発明の「前記頭部と連接した胴部」の態様に相当する。
そうすると、引用発明の「頭部25」と「筒状部22」を合わせたものは「チューブ容器20」の本体をなしており、その態様からみて、本願発明の「注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体」に相当する。
・引用発明の「キャップ27」の態様は、口部24に取り付けるものであり、チューブ容器20の使用形態を踏まえると、チューブ容器20に取り付けられている状態では口部24を密閉するとともに、チューブ容器20の使用時には取り外すことができるものである。そのため、引用発明の「キャップ27」は、本願発明の「キャップ」が「前記チューブ容器本体の抽出口部に着脱可能に装着して、抽出口部を閉鎖する」態様を備えるものである。
・引用発明の「口部24」及び「キャップ27」は、高密度ポリエチレンで成形されていることから、引用発明は、本願発明の「少なくとも、前記チューブ容器本体の注出口部およびキャップが、主成分としてポリエチレンを含」む態様であり、「前記注出口部を構成するポリエチレンが高密度ポリエチレンであ」る態様を備えるものである。
・引用発明の「キャップ27」は、高密度ポリエチレンで成形されていることから、本願発明の「前記キャップを構成するポリエチレンは、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の高密度ポリエチレン」であることと、「前記キャップを構成するポリエチレンは、高密度ポリエチレン」である限りで一致する。
(2) 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体、および前記チューブ容器本体の注出口部に着脱可能に装着して、注出口部を閉鎖するキャップ、を備えたチューブ容器において、少なくとも、前記チューブ容器本体の注出口部およびキャップが、主成分としてポリエチレンを含み、前記注出口部を構成するポリエチレンが高密度ポリエチレンであり、前記キャップを構成するポリエチレンは、高密度ポリエチレンである、チューブ容器。」
[相違点1]
キャップを構成する高密度ポリエチレンとして、本願発明は、「バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、化石燃料由来の高密度ポリエチレンと、を含」むのに対し、引用発明では、「キャップを構成するポリエチレンが高密度ポリエチレン」であり、ポリエチレンの由来が不明である点。
[相違点2]
キャップを構成する高密度ポリエチレンとして、本願発明は、「前記キャップにおける前記化石燃料由来の高密度ポリエチレンと、前記バイオマス由来の高密度ポリエチレンとの混合割合が、質量比において5:5~9:1である」のに対し、引用発明では、「キャップを構成するポリエチレンは高密度ポリエチレン」であり、そのような特定がなされていない点。
3 判断
以下、相違点について検討する。
(1) 相違点1について
引用文献2に記載されているように(上記「第4 1(2)ア(イ)」の記載を参照。)、化石燃料の使用量を軽減するために、包装材料としてバイオマス原料を用いることは、本願出願当時、一般的な課題として知られていたといえる。
そして、引用文献2では、チューブ容器全体に対する質量割合の高い頭部に着目し、頭部をカーボンニュートラルな材料(以下「原料」又は「材料」を示す際に「原材料」という。)で形成することにより、チューブ容器全体としての化石燃料の使用量の軽減を図り、より一層、二酸化炭素の排出量を低減することができるチューブ容器を提供することを目的としている(段落【0007】参照)。
また、容器に用いるキャップの原材料として、バイオマス由来のポリエチレンを用いることは、引用文献3(段落【0134】~【0139】参照)、引用文献4(段落【0030】参照)に記載されているように、周知の技術的事項である。
すると、引用文献2に示されているように、化石燃料の使用量を削減することは、本願の出願時において一般的な課題であり、そのような課題を解決するための手段として、チューブ容器に用いられる原材料として、バイオマス由来の原材料を用いるようにすることは、容易に想到し得たものである。
そして、引用発明において、化石燃料の使用量を削減することを目的とし、バイオマス由来の原材料を用いる際に、周知技術のように、チューブ容器20のキャップ27にもバイオマス由来の原材料を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 相違点2について
引用文献2に記載された事項によると、樹脂組成物は、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなるものであり、「樹脂組成物中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。」ことが示されている(段落【0014】参照)。
すなわち、引用文献2に接した当業者であれば、少なくともバイオマス由来のエチレンを5質量%以上含むことで、化石燃料の使用量を削減した、カーボンニュートラルな樹脂フィルムを実現できることが認識できるといえる。
ここで、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンでは、製造方法や製品の違いにより密度やMFRといった物理的特性が異なることは、引用文献2(段落【0090】~【0092】のバイオマス由来の高密度ポリエチレン(いずれもBraskem社製、[実施例1]商品名:SHC7260、密度:0.958g/cm3、MFR:7.2g/10分、[実施例2]商品名:SHD7255LS-L、密度:0.958g/cm3、MFR:4.5g/10分、[実施例3]商品名:SGE7252、密度:0.950g/cm3、MFR:2.2g/10分))、引用文献3(段落【0123】の植物由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、銘柄名SGF4950、密度0.956g/cm3、MFR(温度190℃、荷重21.18N)28g/10分)、段落【0134】の化石燃料由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、銘柄名IE59U3、密度0.959g/cm3、MFR(温度190℃、荷重2.12N)5g/10分))にも示されているように技術常識である。
すると、樹脂組成物としてバイオマス由来の原材料を使用しようとする当業者であれば、所望とする特性を実現するために、バイオマス由来の高密度ポリエチレンを具体的にどの程度配合するかを決定することは、「一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化」であり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、化石燃料由来のポリエチレンとバイオマス由来のポリエチレンでは、製造コストに差があることも技術常識であり、製造コストと化石燃料の削減量のトレードオフをどのようにするかは、当業者が適宜選択すべき事項である。
そして、引用文献3には、植物由来ポリエチレンを58質量%含むことが示されており(上記「第4 1(3)ア(イ)」参照)、当業者であれば、引用文献3の記載を手がかりとし、引用発明において、キャップにおける化石燃料由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の高密度ポリエチレンの混合割合を、5:5~9:1とすることは、容易に想到し得たものである。
(3) 相違点についてのまとめ
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明の上記相違点に係る構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 「引用文献3の実施例では、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとを質量比において0:100~42:58で含む樹脂組成物で、化石燃料由来のポリエチレンからなるヒンジキャップと遜色のないヒンジキャップを製造できることが具体的に実証されているのであります。そうすると、引用文献3に触れた当業者であれば、化石燃料の使用量の削減のために、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとを質量比において0:100~42:58でキャップに含ませることを考えます。バイオマス由来の高密度ポリエチレンの含有割合を更に減らし、本願発明で規定するように化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとを質量比において5:5~9:1(50:50~90:10)で含ませることは、引用発明1に引用発明2を組み合わせる目的が化石燃料の使用量の削減である以上、当業者であっても通常行いません。」(審判請求書の第3ページ第23行~第4ページ第18行)
イ 化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとを質量比において5:5~9:1とすることで、その範囲外である実施例7よりもトルクを高めることができる(審判請求書の第7ページ第15行~第9ページ第12行)。
(2)請求人の上記主張について検討する。
ア 上記「第4 3(2)相違点2について」で述べたように、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンの混合割合をどのようにするかは、当業者が通常の創作能力の発揮の範囲で適宜選択すべき事項である。
また、請求人の上記(1)アの主張は、樹脂組成物において、バイオマス由来の原材料の使用量を減らすこと、すなわち、化石燃料由来の原材料の混合割合を増やしたものの製造ができないなど、技術的に困難なことをいうものではない。
イ 本願明細書の【表1】をみても、実施例7は評価が全て「○」となっており、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとの質量比が所定の範囲外であったとしても、本願発明の課題を解決できる程度の一定の性能を有しているといえる。
そして、仮に化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとの質量比を変えることでトルクの値が変化したとしても、当業者であれば、チューブ容器の内容物や使用環境等に応じて、その質量比を適宜変更・調整することは、通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、本願明細書を参酌しても、化石燃料由来の高密度ポリエチレンとバイオマス由来の高密度ポリエチレンとの質量比の範囲を限定することによって何らかの効果が奏されるものとはうかがわれない(なお、必要であれば令和2年(行ケ)第10124号事件(令和3年12月1日判決言渡)も参照されたい。)。
ゆえに、請求人の上記(1)ア及びイに係る主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-006023