特許拒絶査定不服審判
2022-005916
過給機付き焼却炉及びその運転方法
- 審判番号
- 2022-005916
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-055494外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月20日
- 審決日
- 2022年12月28日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メタウォーター株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人クスノキ特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (F23G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 55494「過給機付き焼却炉及びその運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-159481〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成29年3月22日の出願であって、令和2年10月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月10日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年5月12日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和4年1月20日付け(送達日:同年1月25日)で補正の却下の決定とともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和4年4月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
タービンと前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、
焼却炉の排ガスから熱回収する第1の熱交換器及び第2の熱交換器と、
前記コンプレッサで圧縮された空気を前記第1の熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、
前記タービンから出た空気を前記焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、
前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器と、
前記焼却炉の立ち上げ時に前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、
前記焼却炉の立ち上げ時に前記第2の熱交換器により昇温された空気を前記焼却炉に導く酸素供給ラインと、を備えたことを特徴とする過給機付き焼却炉。」
3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
(1)この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1~3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1~4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2015-145738号公報
2.特開2007-170705号公報
3.特開平2-101313号公報
4.特開平6-323510号公報
4 引用例の記載及び引用発明
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2015-145738号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。「・・・」は記載の省略を意味する。)。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備および廃棄物処理設備の制御方法に関し、特には、過給機を備える廃棄物処理設備および過給機を備える廃棄物処理設備の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処理の分野においては、廃棄物の焼却処理に要する電力の削減および低コスト化が求められている。そこで、過給機を使用し、廃棄物を焼却した際に生じる排ガスから回収した熱を利用して廃棄物の焼却に必要な空気を供給することにより、焼却炉への空気供給用のブロア等を不要として電力の削減および低コスト化を達成する技術が提案されている。」
・・・
【0008】
そこで、本発明は、過給機を用いた廃棄物処理設備であって、タービンを回転させた後に焼却炉へと送られる気体の一部を気体利用装置で利用可能であり、且つ、焼却炉に送る気体の量と気体利用装置に送る気体の量とを適切に制御することができる廃棄物処理設備を提供することを目的とする。また、本発明は、過給機を備え、タービンを回転させた後に焼却炉へと送られる気体の一部を気体利用装置で利用可能な廃棄物処理設備において、焼却炉に送る気体の量と気体利用装置に送る気体の量とを適切に制御する方法を提供することを目的とする。」
イ「【0019】
<廃棄物処理設備の構成>
ここで、図1に、本発明の廃棄物処理設備の一例の概略構成を示す。図1に示す廃棄物処理設備100は、廃棄物を焼却する流動床式の焼却炉10と、回転軸23を介して接続されたコンプレッサー21およびタービン22を有して焼却炉10に酸素含有気体としての空気を供給する過給機20と、焼却炉10から排出される排ガスと過給機20のコンプレッサー21を介して吸引された空気との間で熱交換する熱交換器30とを備えている。また、廃棄物処理設備100は、熱交換器30を通過した排ガスから焼却灰などの固形分を分離して除去する気固分離装置としての集塵機50と、集塵機50を通過した排ガスを洗浄して外部に放出する排ガス処理装置としてのスクラバー60と、スクラバー60で洗浄された排ガスの一部を誘引ガスとして誘引することにより焼却炉10からスクラバー60側へと排ガスを導く誘引装置としての誘引ファン70とを備えている。
なお、過給機20のコンプレッサー21は、回転軸23を介して伝達される動力を利用して吸引した空気を熱交換器30に供給可能に構成されている。また、過給機20のタービン22は、熱交換器30を通った空気のエネルギーを利用して回転軸23を回転させると共にエネルギーを利用した後の空気を焼却炉10に供給可能に構成されている。
・・・
【0021】
また、廃棄物処理設備100では、過給機20のコンプレッサー21の空気出口と熱交換器30の空気入口とが、圧縮空気ライン86を介して接続されており、熱交換器30の空気出口と過給機20のタービン22の空気入口とが、加熱空気ライン87を介して接続されている。更に、過給機20のタービン22の空気出口と焼却炉10とが、焼却炉10で廃棄物を焼却する際に使用する酸素含有気体を供給する燃焼用気体ラインとしての燃焼用空気ライン88を介して接続されている。また、燃焼用空気ライン88からは、気体利用ラインとしての空気利用ライン89が分岐しており、空気利用ライン89は、気体の有するエネルギーを利用する気体利用装置としてのスクラバー60の煙突部61まで延びている。
・・・
【0023】
また、この廃棄物処理設備100では、必要に応じて補助燃料を燃焼させることにより熱交換器30から流出した空気を更に加熱する過熱器40が、加熱空気ライン87に設けられている。更に、ダンパーなどの流量調整弁89Aが、空気利用ライン89に設けられている。また、過給機20から焼却炉10に供給される空気の流量を測定する流量測定器としての流量センサ88Aが、燃焼用空気ライン88のうち、燃焼用空気ライン88から空気利用ライン89が分岐する位置と焼却炉10との間に設けられている。」
ウ「【0025】
<廃棄物処理設備の動作>
ここで、上述した廃棄物処理設備100では、熱交換器30において、焼却炉10から排出された高温の排ガスと、コンプレッサー21を介して吸引した空気との間で熱交換が行なわれ、焼却灰などを除去する前の排ガスから廃熱が有効に回収される。また、集塵機50において、廃熱が回収されて温度が低下した排ガスから焼却灰などが除去された後、更に、スクラバー60において、排ガス中に含まれているSOXなどの有害成分が除去されて、清浄な排ガスがスクラバー60の煙突部61から排出される。なお、スクラバー60で処理された排ガスの一部は、誘引ファン70に誘引された後、返送ライン85を介してスクラバー60の煙突部61へと返送されて外部に放出される。
【0026】
また、この廃棄物処理設備100では、過給機20を利用して空気を焼却炉10へと供給する際に、熱交換器30における熱交換と、任意に過熱器40における加熱とにより加熱された空気のエネルギーを利用してタービン22および回転軸23を回転させ、当該回転軸23の回転を利用してコンプレッサー21および発電機24を駆動する。従って、廃棄物処理設備100の定常運転中に空気供給用のエネルギー(電力など)を常時供給しなくても、排ガスの廃熱を利用し、コンプレッサー21を駆動して空気を焼却炉10へと供給することができる。また、発電機24を駆動し、排ガスの廃熱を電力として回収することもできる。
なお、廃棄物処理設備100の起動時など、回転軸23の回転によりコンプレッサー21を十分に駆動することができない場合におけるタービン22への空気の供給は、任意の手段を用いて行うことができる。具体的には、空気の供給は、図示しない起動用ブロアを用いて行ってもよい。また、空気の供給は、インバーター25などを利用しつつ外部から電力を供給して回転軸23を回転させ、コンプレッサー21を駆動させることにより行ってもよい。更に、空気の供給は、過熱器40に補助燃料を供給し、補助燃料を燃焼させることによって行なってもよい。」
エ「【図1】
[図:0001394962000001.jpg]
」
上記ア~エの事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「廃棄物を焼却する流動床式の焼却炉10と、
回転軸23を介して接続されたコンプレッサー21およびタービン22を有して焼却炉10に酸素含有気体としての空気を供給する過給機20と、
焼却炉10から排出される排ガスと過給機20のコンプレッサー21を介して吸引された空気との間で熱交換する熱交換器30と、
過給機20のコンプレッサー21の空気出口と熱交換器30の空気入口とを接続する圧縮空気ライン86と、
熱交換器30の空気出口と過給機20のタービン22の空気入口とを接続する加熱空気ライン87と、
過給機20のタービン22の空気出口と焼却炉10とを接続する燃焼用空気ライン88と、
加熱空気ライン87に配置され、必要に応じて補助燃料を燃焼させることにより熱交換器30から流出した空気を更に加熱する過熱器40と、
起動時などに、タービン22へ空気の供給を行う起動用ブロアと、を備えた過給機を用いた廃棄物処理設備。」
(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2007-170705号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0014】
本発明に係る加圧流動焼却設備においては、加圧流動炉1の立上げの際に稼動させる起動用ブロア4と、この起動用ブロア4により発生した空気によって駆動される起動用過給機15と、を備えている。起動用過給機15は、起動用ブロア4により発生した空気によって駆動されるタービン13及びこのタービン13によって駆動され、加圧流動炉1内に供給する圧縮空気Aを生成するコンプレッサ14を有している。
【0015】
加圧流動炉1の立ち上げの際には、調整弁23を開くと共に、前述した起動用ブロア4を駆動させ、空気を第1の起動用空気供給路31を介して燃焼器12へ送る。この燃焼器12によって加熱された空気は、タービン13に送られ、タービン13に連結されたコンプレッサ14を駆動させる。ここで、コンプレッサ14の駆動によって生成された圧縮空気Aは、調整弁24を介して第2の起動用空気供給路32を通って第1の起動用空気供給路31へ送られる。そして、この圧縮空気Aは、起動用ブロア4で発生した空気と混合される共に燃焼器12で加熱され、タービン13に送られる。そして、タービン13を駆動させた後、第1の起動用空気供給路31から調整弁21及び連通路35を通って調整弁22にそれぞれ送られ、これらを介して炉内に送られる。この圧縮空気Aは、炉内を所定の圧力・温度まで高めるよう、炉内に供給される燃料を燃焼させるために使用され、排出された排ガスGは排ガス流路33を通ってタービン2に送られ、このタービン2を徐々に駆動させるようになる。その後、空気供給路34の途中に設けられた調整弁26を開くことによって、コンプレッサ3の駆動によって生成された圧縮空気Aに供給を切り替える。この切替に前後して、炉内に供給される燃料を増量して、昇圧・昇温し、定格の圧力と温度にする。」
イ「【図1】
[図:0001394962000002.jpg]
」
ウ 段落【0015】の「コンプレッサ14の駆動によって生成された圧縮空気Aは、調整弁24を介して第2の起動用空気供給路32を通って第1の起動用空気供給路31へ送られる。」との記載、及び図1から、コンプレッサ14の駆動によって生成された圧縮空気Aが通る第1の起動用空気供給路31に燃焼器12を設けられていることが把握できる。
上記ア~ウの事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。
「加圧流動炉1の立上げの際に稼動させる起動用ブロア4と、この起動用ブロア4により発生した空気によって駆動される起動用過給機15とを備えた加圧流動焼却装置において、
コンプレッサ14の駆動によって生成された圧縮空気Aが通る第1の起動用空気供給路31に燃焼器12を設け、
加圧流動炉1の立ち上げの際には、起動用ブロア4を駆動させ、空気を第1の起動用空気供給路31を介して燃焼器12へ送る加圧流動焼却装置。」
(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開平2-101313号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「[従来の技術]
ボイラ付き流動床炉は、第8図に示すように、流動床炉1とその頂部に付設されたボイラ2とから基本的になっており、付属設備として給塵機3、一次空気の送風機4、二次空気の送風機5、ガス式一次空気予熱器6、ガス式二次空気予熱器7および蒸気式二次空気予熱器8を有している。都市ゴミ、汚泥ケーキ等の被焼却物は、ゴミクレーン9によってゴミ投入ホッパ、ゴミ破砕機、ゴミ搬送コンベヤを経て給塵機3の貯槽に投入され、次いで給塵機3によって流動床炉1内に供給される。そして、被焼却物は炉1内で散気管10から吹き込まれた一次空気により流動媒体と共に流動層11を形成して一次燃焼し、次いで上方で空気吹き込み管12から吹き込まれた二次空気により二次燃焼して、焼却が完了する。
流動床炉1で発生した燃焼排ガスは、炉1の頂部のボイラ2でボイラ水を加熱して高温蒸気を発生したのち、煙道13内に導かれ、煙道13内の空気予熱器6.7でそれぞれ一次空気、二次空気を予熱する。一次空気は送風機4によって送り出され、上記空気予熱器6を通って散気管10に送り込まれる。二次空気は送風機5によって送り出され、空気予熱器8でボイラ2からの蒸気によって予熱されたのち、上記空気予熱器7を通って空気吹き込み管12に送り込まれる。」
イ「【図8】
[図:0001394962000003.jpg]
」
上記ア、イの事項を総合すると、引用例3には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例3記載の事項」という。)。
「被焼却物が、流動床炉1内で散気管10から吹き込まれた一次空気により流動媒体と共に流動層11を形成して一次燃焼し、次いで上方で空気吹き込み管12から吹き込まれた二次空気により二次燃焼して、焼却が完了するボイラ付き流動層炉であって、
流動床炉1で発生した燃焼排ガスが、煙道13内の空気予熱器6.7でそれぞれ一次空気、二次空気を予熱し、
一次空気は送風機4によって送り出され、空気予熱器6を通って散気管10に送り込まれ、二次空気は送風機5によって送り出され、空気予熱器8でボイラ2からの蒸気によって予熱されたのち、空気予熱器7を通って空気吹き込み管12に送り込まれるボイラ付き流動層炉。」
(4)引用例5
当審において、技術常識の例示として新たに引用する特開平1-121613号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「〔産業上の利用分野〕
本発明は、都市ごみの焼却に用いられる、例えば流動層式焼却炉の運転を行う場合の立ち上げ方法に関するものである。」(第1頁左欄第18~20行)
イ「この実施例に係る焼却炉1の立ち上げ方法では、第1図及び第2図に示す如く、砂層部3の温度が約600℃、燃焼室4の炉頂部4aの温度が約400℃の状態にある時、まず、電気集塵器5を作動させる。これは、後述の押込送風機7を起動して砂層部3の砂を流動させる前に上記電気集塵器5を荷電しておき、流動空気により吹き飛ばされた粉塵を除去し、そのまま系外へ放出されるのを防止するためである。
引き続き、誘引送風機6及び押込送風機7を順次起動することにより、砂層部3への燃焼用の一次空気の供給が開始される。更に、二次空気送風機8を起動することにより、燃焼室4への燃焼用の二次空気の供給も開始される。」(第2頁右下欄第7~20行)
ウ「
[図:0001394962000004.jpg]
」
(5)引用例6
当審において、技術常識の例示として新たに引用する実願平4―8175号(実開平5-61626号)のCD―ROMには、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は流動床式ごみ焼却設備に関するものである。」
イ「【0017】
上記ごみ焼却炉1が稼働している状態で、他のごみ焼却炉1’を起動する場合、切換弁27,29を全開にすると共に、起動側の下流側設備2’の調節弁22,25を開とし、且つ稼働側の下流側設備2の調節弁22,23,25の開度を調節する。これにより稼働側の一次空気5の一部をバイパスダクト26を介して起動側のごみ焼却炉1’の散気管4に導くことができるので、ごみ焼却炉1’の昇温と、流動媒体6の流動化を促進させて起動時間を短縮することができ、また同時に稼働側の二次空気8の一部をバイパスダクト28を介して起動側のごみ焼却炉1’の二次空気ノズル9に導くことができるので、ごみ焼却炉1’の昇温を促進することができる。」
ウ「【図1】
[図:0001394962000005.jpg]
」
(5)引用例7
当審において、技術常識の例示として新たに引用する国際公開2014/119499号には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア「 すなわち、送風機4から吐出される始動用空気Kは、第1の開閉弁6、予熱器9を経由して第1、第2の調節弁10A、10Bに供給され、これら第1、第2の調節弁10A、10Bによって流量が最終的に調整されて加圧流動床式焼却炉1及び昇温バーナ1bに供給される。この加圧流動床式焼却炉1は、上記始動用空気Kを一次燃焼空気及び二次燃焼空気として取り込むことにより、また起動設備が一次燃焼空気及び二次燃焼空気を酸化剤として用い燃料(補助燃料)を燃焼させることにより炉の内部が徐々に昇温する。」
イ「
[図:0001394962000006.jpg]
」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「コンプレッサー21」、「タービン22」は、それぞれ、本願発明の「コンプレッサ」、「タービン」に相当する。
また、引用発明のコンプレッサー21およびタービン22は、回転軸23を介して接続されているから、コンプレッサー21は、タービン22により駆動されることが明らかである。
よって、引用発明の「回転軸23を介して接続されたコンプレッサー21およびタービン22を有して焼却炉10に酸素含有気体としての空気を供給する過給機20」は、本願発明の「タービンと前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機」に相当する。
イ 引用発明の「熱交換器30」は、本願発明の「第1の熱交換器」に相当する。
また、引用発明において、「焼却炉10から排出される排ガスと過給機20のコンプレッサー21を介して吸引された空気との間で熱交換する」ことは、焼却炉10から排出される排ガスから熱回収することを意味するものである。
よって、引用発明の「焼却炉10から排出される排ガスと過給機20のコンプレッサー21を介して吸引された空気との間で熱交換する熱交換器30」は、本願発明の「焼却炉の排ガスから熱回収する第1の熱交換器」に相当する。
ウ 引用発明の「コンプレッサー21」が空気を圧縮するものであること、「熱交換器30」が排ガスとの熱交換により空気を昇温するものであることは、明らかであるから、引用発明の「圧縮空気ライン86」は、コンプレッサー21で圧縮された空気を熱交換器30に供給し、「加熱空気ライン87」は、熱交換器30により空気を昇温したものをタービン22に供給するといえる。
よって、引用発明の「過給機20のコンプレッサー21の空気出口と熱交換器30の空気入口とを接続する圧縮空気ライン86」と、「熱交換器30の空気出口と過給機20のタービン22の空気入口とを接続する加熱空気ライン87」とを合わせたものは、本願発明の「前記コンプレッサで圧縮された空気を前記第1の熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ライン」に相当する。
エ 引用発明の「過給機20のタービン22の空気出口と焼却炉10とを接続する燃焼用空気ライン88」は、本願発明の「前記タービンから出た空気を前記焼却炉に吹き込む空気吹き込みライン」に相当する。
オ 上記ウで検討したとおり、引用発明の「加熱空気ライン87」は、本願発明の「圧縮空気供給ライン」に含まれるものである。
よって、引用発明の「加熱空気ライン87に配置され、必要に応じて補助燃料を燃焼させることにより熱交換器30から流出した空気を更に加熱する過熱器40」と、本願発明の「前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器」とは、「前記圧縮空気供給ライン上に配置された加熱器」であるという限りにおいて一致する。
カ 引用発明の「起動時」は、本願発明の「焼却炉の立ち上げ時」に相当する。
よって、引用発明の「起動時などに、タービン22へ空気の供給を行う起動用ブロア」と、本願発明の「前記焼却炉の立ち上げ時に前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機」とは、「前記焼却炉の立ち上げ時に空気を供給する送風機」という限りにおいて一致する。
キ 引用発明の「過給機を用いた廃棄物処理設備」は、本願発明の「過給機付き焼却炉」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「タービンと前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、
焼却炉の排ガスから熱回収する第1の熱交換器と、
前記コンプレッサで圧縮された空気を前記第1の熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、
前記タービンから出た空気を前記焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、
前記圧縮空気供給ライン上に配置された加熱器と、
前記焼却炉の立ち上げ時に空気を供給する送風機と、を備えた過給機付き焼却炉。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
圧縮空気供給ライン上に配置された加熱器に関して、本願発明は「燃焼器」であるのに対し、引用発明は「必要に応じて補助燃料を燃焼させることにより熱交換器30から流出した空気を更に加熱する過熱器40」である点。
[相違点2]
焼却炉の立ち上げ時に空気を供給する送風機に関して、本願発明は「焼却炉の立ち上げ時に前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機」であるのに対し、引用発明は「起動時などに、タービン22へ空気の供給を行う起動用ブロア」である点。
[相違点3]
本願発明は、「焼却炉の排ガスから熱回収する」「第2の熱交換器」と、「焼却炉の立ち上げ時に前記第2の熱交換器により昇温された空気を前記焼却炉に導く酸素供給ライン」を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
6 判断
ア 上記相違点1、2は関連するので、まとめて検討する。
引用例2記載の事項には、「コンプレッサ14の駆動によって生成された圧縮空気Aが通る第1の起動用空気供給路31に燃焼器12を設け、
加圧流動炉1の立ち上げの際には、起動用ブロア4を駆動させ、空気を第1の起動用空気供給路31を介して燃焼器12へ送る加圧流動焼却装置」が開示されている。
そして、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に過給器を備えた焼却装置であって、引用発明の「過熱器40」と引用例2記載の事項の「燃焼器12」とは、作用、機能が共通するものであるから、引用発明において、引用例2記載の事項の燃焼器12及び起動用ブロア4の構成を採用し、圧縮空気供給ライン上に燃焼器を配置するとともに、焼却炉の立ち上げ時に燃焼器に送風機から燃焼用空気を供給するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
イ 上記相違点3について検討する。
流動床式燃焼炉において、二次空気を供給する供給ラインを設け、立ち上げ時において、流動床に一次空気を供給するとともに燃焼室へ二次空気を供給することは、技術常識であるといえる(例えば、引用例5の第2頁右下欄第7~20行、引用例6の段落【0017】、引用例7の[0041]参照。)。
一方、引用例3記載の事項には、二次空気が空気予熱器7を通って空気吹き込み管12から流動床炉1に吹き込まれる点が開示されている。
そして、引用例3記載の事項の「空気予熱器7」、「空気吹き込み管12」は、それぞれ、本願発明の「第2の熱交換器」、「酸素供給ライン」に相当するものであるから、引用例3記載の事項は、本願発明の「第2の熱交換器により昇温された空気を焼却炉に導く酸素供給ライン」に相当する構成を有するものである。
ここで、引用発明及び引用例3記載の事項は、いずれも流動床焼却炉である点で共通の技術分野に属するものであって、上記の技術常識を勘案すれば、引用発明に引用例3記載の事項の酸素供給ライン(空気吹き込み管12)を設け、立ち上げ時において空気を燃焼炉に導くように構成することは、当業者が容易になし得たものである。
エ 本願発明が奏する効果について
上記相違点1~3によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明、引用例2記載の事項及び引用例3記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次のとおり主張する。
「(D)第1の理由:引用文献1の発明に引用文献2の発明を組み合わせる動機がない
・・・
このように引用文献1には、焼却炉への空気供給用のブロアを不要にして電力を削減する過給機付きの廃棄物処理設備において、廃棄物の焼却処理に要する電力及びコストを更に削減することが引用文献1の発明の目的であると記載されている。これに対して引用文献2の発明は、定常運転用の過給機11のほかに、燃焼器12と起動用ブロワ4を備えた起動用過給機15を併設するというものであり、起動時にのみ用いる設備を増設するために設備コストの大幅な増加を招き、コスト低減という引用文献1に発明の目的に反する。また起動用ブロワも増設するため、ブロアを不要にするという引用文献1に発明の目的に反する。よって引用文献1の発明に、目的が相反する引用文献2の発明を組み合わせる動機付けとなるものがない。
(E)第2の理由:引用文献1の発明に引用文献3の発明を組み合わせる動機がない
・・・
このように、引用文献3の発明は焼却炉の定常運転中に被焼却物のゴミ質や供給量の変動に応じて一次空気量、二次空気量を制御するというものである。これに対して引用文献1の過熱器40は焼却炉の起動時に補助燃料を燃焼させるというものであり、起動時に使用されるものである。上記のように引用文献1の発明と引用文献3の発明とは二次空気の供給のタイミングが明確に相違するうえ、第2の熱交換器の使用目的も明確に相違する。よって引用文献1の発明に、引用文献3の発明を組み合わせる動機付けとなるものがない。
(F)第3の理由:引用文献1の気体利用ラインは本願発明を示唆するものではない
・・・
このように、本願発明の「酸素供給ライン」は、焼却炉における廃棄物の焼却において、不足分の空気を焼却炉に供給するために設けられたものである。これに対して引用文献1の発明における気体利用ラインは、過剰分の空気を焼却炉外に供給する目的で設けられている。引用文献1の気体利用ラインの機能及び効果は、本願発明の「酸素供給ライン」の機能及び効果と真逆な関係にある。よって、引用文献の気体利用ラインは本願発明の「酸素供給ライン」を示唆するものではない。
(G)第4の理由:本願発明の課題は新規である
前記したように、本願発明は、焼却炉の立ち上げ時にコンプレッサで圧縮された空気をタービンに送る圧縮空気供給ライン上に燃焼器を設置することにより、焼却炉の立ち上げ時にもタービンは駆動できるようになるが、酸素濃度が低い燃焼器の排ガスがタービンを経由して焼却炉に導かれるため、炉内の酸素濃度が低下するという課題に着目し、この課題を解決するために「焼却炉の立ち上げ時に第2の熱交換器により昇温された空気を前記焼却炉に導く酸素供給ライン」を別に設けて炉内の酸素濃度の低下を抑制したものである。
このような本願発明の課題は出願人が提示した新規な課題であって、どの引用文献にも全く開示されていない。
・・・
なお原査定では、空気を第2の熱交換器により昇温したうえで焼却炉に導く酸素供給ラインは、引用文献3に記載されている、との認定がなされているが、前記したように引用文献3の二次空気供給ラインは、焼却炉の定常運転中に二次空気量を制御するために使用されるものであり、本願発明のように焼却炉の立ち上げ時における炉内の酸素濃度の低下を抑制するためのものではない。」(審判請求書第6~9頁)
上記主張について検討する。
第1の理由について
上記「6 ア」で検討したとおり、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に過給器を備えた焼却装置である点で共通するものであるとともに、引用発明は、加熱空気ライン87に配置された過熱器40と、起動時などに、タービン22へ空気の供給を行う起動用ブロアを備えるのに対し、引用例2記載の事項は、第1の起動用空気供給路31に設けた燃焼器12と、立ち上げの際には、空気を燃焼器12へ送る起動用ブロア4を備えるものであるから、両者は、起動時に空気を加熱してタービンに供給するという点において、作用、機能が共通するものである。
したがって、引用発明と引用例2記載の事項を組み合わせる動機は、十分にあるといえる。
そして、引用文献1には、廃棄物の焼却処理に要する電力及びコストを更に削減することが発明の目的であると記載されているが、引用例2記載の事項として、引用発明に適用するのは燃焼器12及び起動用ブロア4に関連する構成のみであって、定常運転用の過給機11を含めたものではなく、しかも、起動用ブロアは、引用文献1(引用発明)にも開示されているものであるから、引用文献1に発明の目的に反するとはいえない。
第2の理由について
上記「6 イ」で検討したとおり、引用発明、引用例3記載の事項は、いずれも流動床焼却炉である点で共通の技術分野に属するものである。
また、引用例3には、適切な空気量で一次空気、二次空気を供給することができるボイラ付流動床炉の制御方法(以下「一次空気と二次空気の制御方法」という。)も記載されているが、引用例3記載の事項として取り出した内容は、「一次空気は送風機4によって送り出され、空気予熱器6を通って散気管10に送り込まれ二次空気は送風機5によって送り出され、空気予熱器8でボイラ2からの蒸気によって予熱されたのち、空気予熱器7を通って空気吹き込み管12に送り込まれる」といった一次空気と二次空気が炉内に送り込まれる構造であり、一次空気と二次空気の制御方法ではない。
そして、流動床式燃焼炉において、二次空気を供給する供給ラインを設け、立ち上げ時において、流動床に一次空気を供給するとともに燃焼室に二次空気を供給することが技術常識であることを勘案すれば、引用発明に引用例3記載の事項として開示された構造を採用する動機は、十分にあるといえる。
仮に、引用例3に開示された一次空気と二次空気が炉内に送り込まれる構造と、一次空気と二次空気の制御方法と、が一体のものであるとしても、引用例3に記載された一次空気と二次空気の制御方法において、立ち上がり時を除外するような具体的な記載はないから、引用発明と引用例3記載の事項との動機付けを阻害するものではない。
第3の理由について
引用文献1に記載された「気体利用ライン」については、引用発明として認定していないものである。
そして、引用文献1の段落【0021】には「燃焼用空気ライン88からは、気体利用ラインとしての空気利用ライン89が分岐しており、空気利用ライン89は、気体の有するエネルギーを利用する気体利用装置としてのスクラバー60の煙突部61まで延びている。」と記載されているから、本願発明に関連する構成ではないことは、明らかである。
第4の理由について
燃焼炉の運転中に酸素濃度が低下しないように一次空気や二次空気の空気量を適切に制御することは、燃焼炉の制御において重要なことであり、周知の課題であるといえる。
そして、上記「6 イ」で検討したとおり、立ち上げ時において流動床に一次空気を供給するとともに燃焼室に二次空気を供給することは、技術常識であるから、立ち上げ時においても一次空気や二次空気の空気量を適切に制御する必要があることは、当業者であれば十分に認識可能なものであり、立ち上げ時の炉内の酸素濃度の低下を抑制することが新規の課題であるとはいえない。
また、請求人は、引用文献3の二次空気供給ラインは、焼却炉の定常運転中に二次空気量を制御するために使用されるものと主張するが、引用文献3には、定常運転中に二次空気量を制御するとの記載はなく、立ち上げ時を除外するものでない。
よって、請求人の主張は採用できない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-005916