2022-004964
再生医療用容器及び再生医療用容器の製造方法
- 審判番号
- 2022-004964
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-134816外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月04日
- 審決日
- 2023年11月21日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ベークライト株式会社
- 【請求人代理人】田▲崎▼ 聡
- 【請求人代理人】福原 直志
- 【請求人代理人】春田 洋孝
- 【請求人代理人】仁内 宏紀
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年7月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同年 7月 8日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月30日付け :拒絶理由通知書
同年 12月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおり補正することを含むものである。(下線部は、補正箇所を示す。)
(1)本件補正後の請求項1
「【請求項1】架橋性インクの架橋物で形成された表示部を備える、再生医療用容器であって、前記架橋性インクが、UV硬化性インクであり、前記再生医療用容器には、識別チップが取り付けられており、前記表示部が、前記識別チップに形成されており、前記識別チップが前記再生医療用容器の底部に取り付けられており、前記再生医療用容器の表面が親水化されている、再生医療用容器。」
(2)本件補正前の請求項1
これに対し、本件補正前の、令和3年12月1日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】架橋性インクの架橋物で形成された表示部を備え、前記架橋性インクが、UV硬化性インクである、再生医療用容器であって、前記再生医療用容器の表面が親水化されている、再生医療用容器。」
2 補正の適否
本件補正は、「前記再生医療用容器には、識別チップが取り付けられており、前記表示部が、前記識別チップに形成されており、前記識別チップが前記再生医療用容器の底部に取り付けられており、」との事項を付加することで、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である表示部について、識別チップに形成されるとの限定を付加するとともに、当該識別チップが再生医療用容器の底部に取り付けられると限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献及び引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2015/0356398号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、括弧内に日本語翻訳を示す。
ア 引用文献1
(ア) 引用文献1の記載事項
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「[0001] The present invention relates to an RFID tag for location inside a tubular base portion of a freestanding cryogenic vial.」
(この発明は、自立型極低温バイアルの管状ベース部内に位置するRFIDタグに関する。)
「[0002] Biological samples may be preserved by cryogenic freezing. The biological samples are usually stored in disposable containers (disposables). The type of disposable container used depends on the type of sample. Examples of commonly used disposable containers include vials, straws and bags. The disposable container is stored at low temperatures in a Dewar flask typically filled with liquid nitrogen at a temperature of -196°C.」
(生物学的試料は、低温凍結によって保存され得る。生物学的試料は、通常使い捨て容器(使い捨て品)に保存される。使用される使い捨て容器の種類は、試料の種類による。一般的に使用される使い捨て容器の例としては、バイアル、ストロー、バッグが含まれる。使い捨て容器は、典型的には液体窒素で満たされた-196℃のデュワーフラスコ内で低温保存される。)
「[0003] Vials are generally tubular in shape, with a tubular wall defining a main longitudinal cavity (the sample cavity) for storage of the sample. The sample cavity can be sealed by a lid. Freestanding cryogenic vials include a base portion below the sample cavitywhich enables the vial to stand upright without the need for a support rack. The base portion of a freestanding vial is usually tubular in shape with a width that may be less than or equal to that of the sample cavity.」
(バイアルは一般的に管状であり、管状の壁が試料を保存するための長手方向の主キャビティ(試料キャビティ)を画定している。試料キャビティは蓋で密閉することができる。自立型極低温バイアルは、試料キャビティの下にベース部分を含み、これによって支持ラックを必要とせずにバイアルを直立させることができる。自立型バイアルのベース部分は、通常、試料キャビティの幅以下の幅を有する管状である。)
「[0005] Stored biological samples can be identified by writing on the disposable containers themselves or by writing on labels which are then attached to the containers. These labels may be handwritten or printed and can include bar codes.」
(保存された生物学的試料は、使い捨て容器自体に書き込むか、容器に貼り付けるラベルに書き込むことによって識別することができる。これらのラベルは手書きでも印刷でもよく、バーコードを含むこともできる。)
「[0006] The methods of identification described above have the disadvantage that written notes on containers can easily be erased or smudged and labels containing handwritten notes and printed text or barcode information can fall off the disposable containers while they are stored inside the Dewar leading to unidentifiable samples. These problems are exacerbated by the cold conditions in which biological samples must be kept.」
(上述した識別方法には、容器に書かれたメモが簡単に消えたり汚れたりする欠点があり、また、手書きのメモや印刷されたテキストやバーコード情報を含むラベルが、デュワー内に保管されている間に使い捨て容器から落下することがあり、識別不能な試料につながる可能性がある。これらの問題は、生物学的試料を保管しなければならない低温条件によって悪化する。)
「[0016] Accordingly, the present invention aims to solve the above problems by providing, according to a first aspect, an RFID tag for location inside a tubular base portion of a freestanding cryogenic vial, the RFID tag comprising: an RFID chip; an antenna connected to the chip; a support medium configured to support the chip and connected antenna; and a plug at least partially surrounding the chip, antenna and support medium, the plug being shaped to engage the tubular base portion of the vial.」
(従って、本発明は、第1の態様によれば、自立型極低温バイアルの管状ベース部内に位置するRFIDタグを提供することによって、上記の問題を解決することを目的とし、RFIDタグは、RFIDチップと;チップに接続されたアンテナと;チップおよび接続されたアンテナを支持するように構成された支持媒体と;チップ、アンテナおよび支持媒体を少なくとも部分的に取り囲むプラグであって、バイアルの管状ベース部に係合する形状であるプラグと;を備える。)
「[0033] Preferably, the plug is made from polypropylene. In this way, the plug can withstand cryogenic temperatures over periods of time of 15 years or more.」
(好ましくは、プラグはポリプロピレン製である。これにより、プラグは15年以上の期間にわたって極低温に耐えることができる。)
「[0039] The plug may include a 2D barcode. In this way, a single tag with a single plug can provide information via two methods; RFID tagging and barcode tagging. The presence of the 2D barcode in addition to the RFID chip leads to a tag that had a greater level of redundancy and is therefore more reliable.」
(プラグは二次元バーコードを含み得る。これにより、1つのプラグを持つ1つのタグは、RFIDタグ付けとバーコードタグ付けの2つの方法で情報を提供することができる。RFIDチップに加えて二次元バーコードが存在することで、より冗長性が高く、よって、より信頼性の高いタグとなる。)
「[0085] FIG. 1 shows a part of a freestanding cryogenic vial 100 having a tubular base portion 110 and a sample cavity 120. The tubular base portion 110 forms a tubular base cavity 111 which is separate from the sample cavity 120.」
(図1は、管状ベース部110および試料キャビティ120を有する自立型極低温バイアル100の一部を示す。管状ベース部110は、試料キャビティ120とは別の管状ベースキャビティ111を形成する。)
「[0086] In order to facilitate sample retrieval, the sample cavity has a rounded bottom 122 which protrudes into the cavity 111 of the tubular base portion 110. The tubular base portion 110 has an external surface 102 and an internal surface 101 which, along with the bottom 122 of the sample cavity, defines the size and shape of the tubular base cavity 111.」
(試料の回収を容易にするために、試料キャビティは、管状ベース部110のキャビティ111内に突出する丸みを帯びた底部122を有する。管状ベース部110は、試料キャビティの底部122とともに、管状ベースキャビティ111の大きさ及び形状を規定する外面102および内面101を有する。
「[0087] FIG. 2 shows a plan view of an RFID tag 10 for location inside the tubular base portion 110 of the freestanding cryogenic vial 100 of FIG. 1. FIG. 3 shows a cross-sectional view of the same RFID tag 10 taken along section A-A (shown in FIG. 2) and FIG. 4 shows a side view of the same RFID tag 10.」
(図2は、図1の自立型極低温バイアル100の管状ベース部110の内部に配置するためのRFIDタグ10の平面図を示す。図3は、断面A-A(図2に示す)に沿った同RFIDタグ10の断面図を示し、図4は、同RFIDタグ10の側面図を示す。)
「[0088] Referring to FIGS. 2-4, the RFID tag 10 includes an RFID chip 13, an antenna 14 connected to the chip 13, and a support medium 15 which supports the chip and connected antenna in their connected configuration. The RFID tag 10 also includes a plug 11 which partially surrounds the chip, antenna and support medium.」
(図2~4を参照すると、RFIDタグ10は、RFIDチップ13と、チップ13に接続されたアンテナ14と、チップおよび接続されたアンテナを接続状態で支持する支持媒体15とを含む。RFIDタグ10は、チップ、アンテナおよび支持媒体を部分的に取り囲むプラグ11も含む。)
「[0089] In the embodiment of FIGS. 2-4, the support medium 15 is an encapsulating body which encapsulates the chip 13 and antenna 14. The encapsulating body takes the form of a solid disc.」
(図2~4の実施形態では、支持媒体15は、チップ13およびアンテナ14を封止する封止体である。封止体は、固体ディスクの形態をとる。)
「[0090] As shown in more detail in FIGS. 5a and 5b, the plug 11 partially surrounds the chip, antenna and support medium in that it comprises a circular base 17 and a cylindrical wall 16, the cylindrical wall extending upwards from the edges of the circular base 17. The top of the plug 11 is open. The cylindrical wall 16 of the plug 11 has an external surface 116 which is cylindrical in shape with four longitudinal grooves 19 extending from the open top to the circular base 17.」
(図5aおよび図5bにより詳細に示すように、プラグ11は、チップ、アンテナおよび支持媒体を部分的に取り囲む円形ベース17と円筒壁16を含み、円筒壁は円形ベース17の縁から上方に延びている。プラグ11の上部は開口している。プラグ11の円筒壁16は、開放された上部から円形ベース17まで延びる4本の縦溝19が形成された円筒形状の外面116を有している。)
「[0092] FIG. 6 shows the freestanding cryogenic vial of FIG. 1 including the RFID tag 10 of FIGS. 2-5 located inside the tubular base portion 110. The external surface 116 of the plug 11 has a circumference which is comparable to the circumference of the internal surface 101 of the tubular base portion 110 in that the circumference of the internal surface of the tubular base portion 101 is greater than the circumference of the external surface 116 of the plug 11 but the difference between the two circumferences is not enough to allow free movement between the two surfaces. The RFID tag is therefore held inside the tubular base portion 110.」
(図6は、管状ベース部110の内部に配置された図2~5のRFIDタグ10を含む図1の自立型低温バイアルを示している。プラグ11の外面116は、管状ベース部110の内面101の円周と同等の円周を有し、管状ベース部110の内面101の円周はプラグ11の外面116の円周よりも大きいものの、2つの円周の差は、2つの表面間の自由な移動を可能にするほどではない。そのため、RFIDタグは筒状ベース部110の内部に保持される。)」
図1「
[図:0001406159000001.jpg]
」
図3「
[図:0001406159000002.jpg]
」
図5「
[図:0001406159000003.jpg]
」
図6「
[図:0001406159000004.jpg]
」
(イ) 引用文献1の認定事項
a 段落[0002]の「生物学的試料は、通常使い捨て容器(使い捨て品)に保存される」及び「一般的に使用される使い捨て容器の例としては、バイアル・・・が含まれる。」との記載からみて、引用文献1の自立型極低温バイアルは、生物学的試料を保存するものと認められる。
b 段落[0005]の「保存された生物学的試料は、使い捨て容器自体に書き込むか、容器に貼り付けるラベルに書き込むことによって識別することができる。これらのラベルは手書きでも印刷でもよく、バーコードを含むこともできる。」、段落[0039]の「プラグは二次元バーコードを含み得る。これにより、・・・バーコードタグ付けの・・・方法で情報を提供することができる。」との記載から、引用文献1のプラグ11は識別のためのものと認められる。
c 段落[0003]の「自立型極低温バイアルは、試料キャビティの下にベース部分を含み」、段落[0086]の「試料キャビティは、管状ベース部110のキャビティ111内に突出する丸みを帯びた底部122を有する。」、段落[0016]の「バイアルの管状ベース部に係合する形状であるプラグ」との記載及び図1、図6からみて、引用文献1のプラグ11は自立型極低温バイアルの底部に係合されたものと認められる。
(ウ) 引用発明
上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「管状ベース部110を有し、生物学的試料を保存する自立型極低温バイアル100であって、管状ベース部110に係合する形状である識別のためのプラグ11を備え、プラグ11は二次元バーコードを含み、プラグ11は自立型極低温バイアル100の底部に係合されており、プラグ11はポリプロピレン製である、自立型極低温バイアル100。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-5963号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、「・・・」は省略を示す(以下、同)。
「【0022】熱収縮性フィルム5は、矩形状の熱収縮性の基材51と、該基材51の裏面に設けられた接着剤52と、を有し、必要に応じて、意匠印刷(図示せず)や金属蒸着などが基材51に施されていてもよい。印刷層は、基材51の表面側に施すことが好ましく、さらに、印刷インキとして紫外線硬化型インキを用いることが好ましい。なお、基材51の最表面に、紫外線硬化型のトップコート層(クリアニス)を施してもよい。・・・尚、上記熱収縮性フィルム5は、基材51の主たる延伸方向(MD方向)が医療用容器2の周方向となるようにして医療用容器2に巻き付けられる。」
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された特開2014-234397号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0002】ポリオレフィンは軽量・非吸水性であり、機械的特性・耐熱性・耐薬品性に優れることから、幅広く使用されている。一方、ポリオレフィンは極性が低いために、塗装性や印刷性が悪く、意匠性を付与しにくいとの問題があった。【0003】ポリオレフィンの塗装性や印刷性を改良するために、ポリオレフィン表面に、放射線処理、コロナ放電処理することが行なわれているが、これらの方法では、塗装性や印刷性の改良が十分ではなく、特殊な塗装、印刷方法が必要となる。・・・【0009】これらの方法では、安価で効率のよい表面改質が可能であるが、主に表面の親水性を向上させるものであることから、水と親和性は大幅に向上するが、塗装性や印刷性の改良が十分ではないとの問題があった。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 後者の「生物学的試料を保存する自立型極低温バイアル100」は、前者の「再生医療用容器」と、「容器」という限りにおいて一致する。また、後者の「識別のためのプラグ11」は、プラグ11が小片でチップといえるものであるので(図3、図5a、図5b、図6参照。)、前者の「識別チップ」に相当し、同様に「二次元バーコード」は、二次元にバーコードを表示するものであるので、前者の「表示部」に相当する。
イ 後者の「管状ベース部110を有し、生物学的試料を保存する自立型極低温バイアル100であって」、「管状ベース部110に係合する形状である識別のためのプラグ11を備え、プラグ11は二次元バーコードを含」む構成は、上記アを踏まえると、前者の「架橋性インクの架橋物で形成された表示部を備える、再生医療用容器であって」、「前記表示部が、前記識別チップに形成されて」いる構成と、「表示部を備える容器であって」、「前記表示部が、前記識別チップに形成されて」いるという限りにおいて一致する。
ウ 後者の「管状ベース部110に係合する形状である識別のためのプラグ11を備え」、「プラグ11は自立型極低温バイアルの底部に係合されて」いる構成は、上記アを踏まえると、前者の「前記再生医療用容器には、識別チップが取り付けられており」、「前記識別チップが前記再生医療用容器の底部に取り付けられて」いる構成と、「容器には、識別チップが取り付けられており」、「前記識別チップが前記容器の底部に取り付けられている」という限りにおいて一致する。
エ そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「表示部を備える容器であって、容器には、識別チップが取り付けられており、前記表示部が、前記識別チップに形成されており、前記識別チップが前記容器の底部に取り付けられている、容器。」
[相違点1]
容器について、本件補正発明では「再生医療用容器」であるのに対し、引用発明では「生物学的試料を保存する自立型極低温バイアル100」である点。
[相違点2]
識別チップに形成された表示部について、本件補正発明では、「UV硬化性インクであ」る「架橋性インクの架橋物で形成された」ものであるのに対し、引用発明の二次元バーコードはどのように形成されるか特定されていない点。
[相違点3]
本件補正発明では、「(前記再生医療用)容器の表面が親水化されている」のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
(4)判断
上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
生物学的試料として、iPS細胞やES細胞等の再生医療用の細胞は例示するまでもない周知慣用技術である。
そうすると、引用発明の自立型極低温バイアル100に保存する生物学的試料として、上記周知慣用技術の再生医療用の細胞として、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用発明の二次元バーコードの形成方法に関して、引用文献1の段落[0005]には、従来の技術として「保存された生物学的試料は、使い捨て容器自体に書き込むか、容器に貼り付けるラベルに書き込むことによって識別することができる。これらのラベルは手書きでも印刷でもよく、バーコードを含むこともできる。」と記載され、識別のための表示手法として、対象物に直接書き込むか、ラベルとして貼り付けることができることが示唆されている。
また、例えば、引用文献2に記載されるように、印刷インキとして紫外線硬化型インキを用いて印刷することは、周知の技術に過ぎない。
そうすると、引用発明の二次元バーコード(表示部)の具体的な形成方法について、引用文献1の上記示唆を踏まえてプラグ11に直接書き込むことを選択し、その際の手段として、周知の技術である紫外線硬化型インキ(UV硬化性インク)を用いた印刷を行うこととして、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
引用発明のプラグ11はポリプロピレン製であり、ポリプロピレンはポリオレフィンの一種である。また、引用文献1の段落[0006]には、容器に書かれたメモが簡単に消えたり汚れたりする欠点があることが記載されている。
そして、例えば、引用文献3に記載されるように、ポリオレフィンは塗装性や印刷性が悪いため、これを改良するために、ポリオレフィンの表面に放射線処理やコロナ放電処理等の親水化処理を施すことは、周知の技術である。
そうすると、引用発明において、自立型極低温バイアル100(容器)の一部であるプラグ11に、二次元バーコードを形成する際に、塗装性や印刷性を向上させるべく表面に親水化処理を施す上記周知の技術を付加して、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 効果について
本件補正発明の作用効果について、検討する。
本件補正発明の「UV硬化性インクは、理化学容器300の使用時に水や有機溶媒等の試薬が付着しても、消えたり読み取れなくなったりする等の虞が極めて低い」(【0019】)という効果は、UV硬化性インクは耐久性が高いというUV硬化性インクそれ自体が有する効果と認められ、上記相違点2について検討したように紫外線硬化型インキを用いることが容易想到である以上、当該効果も当業者の予測の範囲内のものである。
また、本件補正発明の「識別チップ200が理化学容器300の底部に取り付けられていることにより、理化学容器300の使用時に水や有機溶媒等の試薬が表示部150に付着する危険性をより低下させることができる」(【0035】)という効果について、引用発明もプラグ11が自立型極低温バイアルの底部に位置しており、自立型極低温バイアルを自立させると、プラグ11は自立型極低温バイアルの下面側に位置するから、水や試薬が付着しにくいことは当業者の予測の範囲内のものある。
その他の作用効果についても、引用発明、周知慣用技術及び周知の技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、異質な又は格別顕著な作用効果を奏するとはいえない。
オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、以下の点を主張する。
引用文献2では、医療用容器の胴部周囲に巻き付けられている熱収縮性フィルムに印刷層が施されているため、医療用容器の底部には印刷層を施すことはできず、引用文献1に開示されている自立型極低温バイアルと、引用文献2に開示されている紫外線硬化型インキと、を組み合わせたとしても、「UV硬化性インクの架橋物で形成された表示部が再生医療用容器の底部に位置している」ことを特徴とする本件補正発明には至らない。
上記主張について検討する。
引用発明は、二次元バーコードを含むプラグ11が自立型極低温バイアル100の底部に係合されているから、表示部(二次元バーコード)が容器(自立型極低温バイアル100)の底部に位置している。そして、上記相違点2の判断は、容器の底部に位置する当該表示部について、これを形成する手段として、周知の技術である紫外線硬化型インキを用いるとしているのであって、表示部として、容器の胴部周囲に巻き付けられている熱収縮性フィルムに印刷層を施した点を適用するものではない(上記「イ 相違点2について」についての説示参照)から、請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知慣用技術及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和3年12月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明について、原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
現査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3及びその記載事項等は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、表示部及び該表示部に係る識別チップの構成について、「前記再生医療用容器には、識別チップが取り付けられており、前記表示部が、前記識別チップに形成されており、前記識別チップが前記再生医療用容器の底部に取り付けられており」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明、周知慣用技術及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知慣用技術及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004964