特許拒絶査定不服審判
2022-004343
プリント回路基板
- 審判番号
- 2022-004343
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-240411外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月23日
- 審決日
- 2023年02月20日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H05K) / P18 .575-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-240411「プリント回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-123459〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月12日(パリ条約による優先権主張2016年1月8日、韓国、2016年4月21日、韓国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年11月18日 :手続補正書の提出
令和 2年 9月17日付け:拒絶理由通知書
令和 2年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月23日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 3年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年11月19日付け:令和3年6月28日の手続き補正について
の補正の却下の決定、拒絶査定
令和 4年 3月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年3月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(請求項1に係わる補正の内容)
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおり補正することを含むものである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
貫通ホールが形成されたコア部材と、
前記貫通ホールに配置されたサブ回路基板と、
前記コア部材及び前記サブ回路基板上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された外側回路層と、
前記サブ回路基板の回路層に電気的に接続された電子素子と、
を含み、
前記外側回路層は、第1ピッチを有し、厚さ方向に前記コア部材と重なるように配置された第1回路パターンと、第2ピッチを有し、厚さ方向に前記サブ回路基板と重なるように配置された第2回路パターンとを含み、
前記第1ピッチは前記第2ピッチよりも大きく、
前記電子素子は、前記サブ回路基板の前記回路層の一部と前記外側回路層の一部とを電気的に接続し、
前記サブ回路基板の上部に配置されたダイをさらに有し、
前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッドのピッチは、前記サブ回路基板の下面に形成されるパッドのピッチより小さい、プリント回路基板。」
(2)本件補正前の、令和2年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
貫通ホールが形成されたコア部材と、
前記貫通ホールに配置されたサブ回路基板と、
前記コア部材及び前記サブ回路基板上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された外側回路層と、
前記サブ回路基板の回路層に電気的に接続された電子素子と、
を含み、
前記外側回路層は、第1ピッチを有し、厚さ方向に前記コア部材と重なるように配置された第1回路パターンと、第2ピッチを有し、厚さ方向に前記サブ回路基板と重なるように配置された第2回路パターンとを含み、
前記第1ピッチは前記第2ピッチよりも大きく、
前記電子素子は、前記サブ回路基板の前記回路層の一部と前記外側回路層の一部とを電気的に接続する、プリント回路基板。」
2 補正の適否
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「サブ回路基板」について、「前記サブ回路基板の上部に配置されたダイをさらに有」するとの限定を付加する。
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「サブ回路基板」について、「前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッドのピッチは、前記サブ回路基板の下面に形成されるパッドのピッチより小さい」との限定を付加する。
よって、上記補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正による請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項、引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(国際公開第2011/102561号)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付加した。)。
「技術分野
本発明は多層プリント配線基板およびその製造方法に関し、特に、コア層の上面および下面に多層の配線層を積層させた多層プリント配線基板およびその製造方法に関する。」(第1頁第6行目-第9行目)
「課題を解決するための手段
本発明の基板は、第1主面と第2主面とを備えたコア層と、前記コア層の前記第1主面に第1絶縁層を介して積層された第1配線層と、前記コア層の前記第2主面に第2絶縁層を介して積層された第2配線層と、前記コア層を部分的に貫通して設けた除去領域と、前記除去領域に配置されると共に、複数層の配線パターンを備え、前記第1配線層と前記第2配線層とを接続する経路として機能する接続基板と、を備え、前記コア層の前記第1主面側の前記接続基板の第1配線パターンは、前記第1絶縁層を貫通して設けた第1接続部を経由して前記第1配線層に接続され、前記コア層の前記第2主面側の前記接続基板の第2配線パターンは、前記第2絶縁層を貫通して設けた第2接続部を経由して前記第2配線層に接続されることを特徴とする。」(第3頁第1行目-第11行目)
「発明の効果
・・・(省略)・・・。
更に、接続基板に多層に設けられる配線パターンは、コア層に積層される配線層よりも微細に形成される。従って、背景技術ではコア層に積層される配線層で構成されていた電気回路の一部分を、接続基板13に含まれる配線パターンで置き換えることが可能となる。このことにより、基板の更なる小型化が達成される。」(第3頁第21行目-第4頁第2行目)
「図1(A)を参照して、基板10Aは、厚いコア層11と、コア層11の上面に絶縁層を介して積層された配線層(第1配線層16A、第3配線層16C)と、コア層11の下面に絶縁層を介して積層された配線層(第2配線層16B、第4配線層16D)と、コア層11の除去領域12に埋設された接続基板13とを具備している。」(第4頁第26行目-第5頁第1行目)
「第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bは、コア層11の上面および下面を被覆している。第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bがコア層11を被覆する厚みは、例えば50μm以上100μm以下である。第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bの材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を採用することができる。」(第5頁第23行目-第27行目)
「第1配線層16Aは、第1絶縁層14Aの上面に形成された配線層であり、第1絶縁層14Aに貼着された導電膜またはメッキ膜を選択的にエッチングして形成される。第1配線層16AのL/Sは、例えば50μm/50μm以上、100μm/100μm以下に細くすることができる。
ここで、L/Sとは配線の微細さを示し、L/Sが20μm/20μmであれば、形成される配線の幅(L:ライン)が20μmであり、且つ配線同士が離間する距離(S:スペース)が20μmであることを示している。
また、第1配線層16Aは、第1絶縁層14Aを貫通して設けた接続部31を経由して、コア層11と電気的に接続される。このようにすることで、コア層11を接地電位を引き回すための層として用いることができる。」(第6頁第5行目-第14行目)
「第2配線層16Bは、第2絶縁層14Bの下面に形成された配線層であり、上記した第1配線層16Aと同様の構成である。また、第2配線層16Bは、第2絶縁層14Bを貫通して設けた接続部33を介して、コア層11の下面と導通している。」(第6頁第15行目-第18行目)
「接続基板13は、コア層11を部分的に除去して設けた除去領域12に収納された多層基板であり、コア層11の上面に積層された配線層と、コア層11の下面に積層された配線層とを接続する接続手段として機能している。」(第7頁第19行目-第21行目)
「接続基板13の厚みは、コア層11と同等であり、例えば100μm以上200μm以下である。また、図1(B)を参照すると、コア層11に対して部分的なエッチングまたはプレス加工を行うことにより、平面視で四角形形状の除去領域12が設けられており、接続基板13は、この除去領域12に収納されている。接続基板13の平面視での大きさは、コア層11に設けられる除去領域12よりも小さく形成されている。そして、図1(A)を参照して、接続基板13は、除去領域12に面するコア層11の側面から離間している。除去領域12に収納される接続基板13の表面は、第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bを構成する樹脂材料により被覆されている。更にここで、接続基板13は基板の中心部を避けた領域に配置されても良い。このようにすることで、基板全体が湾曲した際に、湾曲部は、殆ど中心に来るので、この湾曲による応力により接続基板13が破壊されることが抑制される。」(第7頁第27行目-第8頁第9行目)
「更には、接続基板13の内部で配線パターンを所定形状にすることで、コンデンサやコイルを構成しても良い。また、コイル、コンデンサ、抵抗器を接続基板13に内蔵させても良いし、これらを接続基板13と共に除去領域12に埋設して各配線層と接続しても良い。この様にすることで、背景技術では基板10Aの上面に配置される素子が備える機能が、コア層11の除去領域12に内蔵されるので、基板10Aを含む回路装置が小型なものとなる。」(第8頁第20行目-第26行目)
「接続基板13に設けられる第1配線パターン15A等は、コア層11に積層される第1配線層16A等よりも微細に形成される。第1配線パターン15A等のL/Sは、例えば30μm/30μm以下である。この様に微細な導電パターンが接続基板13に形成されることで、背景技術であればコア層に積層される配線層で構成される電気回路の一部を、接続基板13で構成することができる。結果的に、コア層11に積層される第1配線層16A-第4配線層16Dで実現される回路部分が小さくなり、基板10A自体を小型化することが可能となる。
上記構成の接続基板13を経由して、コア層11に積層される第1配線層16Aと第2配線層16Bとが電気的に接続される。具体的には、接続基板13の上面に配置された第1配線パターン15Aは、第1絶縁層14Aを貫通して設けた接続部31を経由して第1配線層16Aと接続されている。更に、接続基板13の最下層に設けた第4配線パターン15Dは、第2絶縁層14Bを貫通して設けた接続部33を経由して、第2配線層16Bと接続されている。この様にすることで、コア層11の上面に位置する第1配線層16Aが、コア層11の下面に位置する第2配線層16Bと、接続基板13を経由して接続される。」(第9頁第2行目-第16行目)
「また、接続基板13の第1配線パターン15Aと第1配線層16Aとは、複数個の接続部31を介して接続されている。更に、接続基板13の第4配線パターン15Dと第2配線層16Bも、複数個の接続部33を経由して接続されている。この様にすることで、コア層11の上面に積層された配線層と、下面に積層された配線層とを接続する接続箇所を、接続基板13に集約することができる。」(第9頁17行目-第21行目)
「図9は、更なる実施例である。一般に携帯電話等に採用されるモジュールは、少なくとも2層のプリント基板10AにTR、チップコンデンサ、チップ抵抗またはLSIチップ100が実装されている。しかしながら、このLSIチップは、高機能であるため、ピン数が非常に多く、しかもそのサイズが小さくなっている。そのため、接続基板13は、ファインパターンの基板が必要になる。例えば、このLSIチップだけ、またはLSIチップとその周辺回路において、微細なパターンが必要で、この接続基板13が内蔵される基板10Aは、接続基板に比べてラフである場合がある。
また接続基板を高精細、高密度で実現する事で、基板10Aは、パターンがラフで、低密度であっても良い場合がある。よって接続基板13の表側(または裏側)の最表面の配線パターン101と基板10Aの最表面の配線層102が実質同一面になるように埋め込まれても良い。」(第19頁第18行目-第29行目)
「図9(B)は、LSIチップ100がフェイスダウンで、図9(C)は、フェイスアップで、接続基板に接続されている。そして接続基板の一部から接続配線104が、境界から基板10Aに渡り設けられている。」(第20頁第10行目-第12行目)
[図:0001399977000001.jpg]
[図:0001399977000002.jpg]
イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)第1頁第6行目-第9行目、図1及び図9によれば、引用文献1には、「多層プリント配線基板」についての発明が記載されている。
(イ)第3頁第1行目-第11行目には、「本発明の基板は、…(省略)…、前記コア層を部分的に貫通して設けた除去領域と、を備え…(省略)…ることを特徴とする。」と記載されている。また、第4頁第26行目-第5頁第1行目には、「基板10Aは、厚いコア層11と、コア層11の上面に絶縁層を介して積層された配線層(第1配線層16A、第3配線層16C)と、コア層11の下面に絶縁層を介して積層された配線層(第2配線層16B、第4配線層16D)と、コア層11の除去領域12に埋設された接続基板13とを具備している。」と記載されている。さらに、段落第7頁第19行目-第21行目には、「接続基板13は、コア層11を部分的に除去して設けた除去領域12に収納された多層基板であ」ると記載されている。
そして、図1によれば、基板10Aは、除去領域12が部分的に貫通して形成されたコア層11と、前記除去領域12に配置された接続基板13とを含むこと、前記コア層11は基板10Aの中心に位置する層であること、がそれぞれ見て取れる。
よって、コア層11は「多層プリント配線基板」の中心に位置する層であり、除去領域12は当該コア層を部分的に貫通して形成されたものであり、接続基板13は当該除去領域13に配置されるものであると、それぞれいえる。
言い換えると、引用文献1に記載された「多層プリント配線基板」は、前記多層プリント配線基板の中心に位置する層であり、除去領域12が部分的に貫通して形成されたコア層11と、前記除去領域12に配置された接続基板13とを含むといえる。
(ウ)第4頁第26行目-第5頁第1行目には、「基板10Aは、…(省略)…、コア層11の上面に絶縁層を介して積層された配線層(第1配線層16A、第3配線層16C)と、コア層11の下面に絶縁層を介して積層された配線層(第2配線層16B、第4配線層16D)と、…(省略)…を具備している。」と記載されている。また、第5頁第23行目-第27行目には、「第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bは、コア層11の上面および下面を被覆している。」と記載されている。さらに、第6頁第5行目-第14行目には、「第1配線層16Aは、第1絶縁層14Aの上面に形成された配線層であり、第1絶縁層14Aに貼着された導電膜またはメッキ膜を選択的にエッチングして形成される。」と記載されている。加えて、第7頁第27行目-第8頁第9行目には、「接続基板13は、除去領域12に面するコア層11の側面から離間している。除去領域12に収納される接続基板13の表面は、第1絶縁層14Aおよび第2絶縁層14Bを構成する樹脂材料により被覆されている。」と記載されている。
そして、図1によれば、基板10Aは、コア層11及び接続基板13上に積層された第1絶縁層14Aと、前記第1絶縁層14A上に配置された第1配線層16Aとを含むことが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「多層プリント配線基板」は、コア層11及び接続基板13上に積層された第1絶縁層14Aと、前記第1絶縁層14A上に配置された第1配線層16Aとを含むといえる。
(エ)第9頁第2行目-第16行目には、「接続基板13を経由して、コア層11に積層される第1配線層16Aと第2配線層16Bとが電気的に接続される。具体的には、接続基板13の上面に配置された第1配線パターン15Aは、第1絶縁層14Aを貫通して設けた接続部31を経由して第1配線層16Aと接続されている。また、接続基板13の最下層に設けた第4配線パターン15Dは、第2絶縁層14Bを貫通して設けた接続部33を経由して、第2配線層16Bと接続されている。」と記載されている。
そして、図1によれば、基板10Aの第1配線層16A及び第2配線層16Bは、厚さ方向にコア層11と重なるように配置された部分(以下、「第1部分」という。)と、接続基板13の上面に配置された第1配線パターン15Aと接続され、厚さ方向に当該接続基板13と重なるように配置された部分(以下、「第2部分」という。)を含むことが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「多層プリント基板」について、第1配線層16Aは、厚さ方向にコア層11と重なるように配置された第1部分と、接続基板13の上面に配置された第1配線パターン15Aと接続され、厚さ方向に当該接続基板13と重なるように配置された第2部分を含むといえる。
(オ)第3頁第21行目-第4頁第2行目には、発明の効果として「接続基板に多層に設けられる配線パターンは、コア層に積層される配線層よりも微細に形成される。」と記載されている。また、第6頁第5行目-第14行目には、「第1配線層16AのL/Sは、例えば50μm/50μm以上、100μm/100μm以下に細くすることができる。」、「ここで、L/Sとは配線の微細さを示し、L/Sが20μm/20μmであれば、形成される配線の幅(L:ライン)が20μmであり、且つ配線同士が離間する距離(S:スペース)が20μmであることを示している。」と記載されている。さらに、第9頁第2行目-第16行目には、「接続基板13に設けられる第1配線パターン15A等は、コア層11に積層される第1配線層16A等よりも微細に形成される。第1配線パターン15A等のL/Sは、例えば30μm/30μm以下である。」と記載されている。
よって、引用文献1に記載された「多層プリント基板」について、コア層11に積層される第1配線層16Aの配線同士の離間する距離は接続基板13に配置された第1配線パターン15Aの配線同士の離間する距離よりも大きいといえる。
(カ)第19頁第18行目-第29行目には、「図9は、更なる実施例である。一般に携帯電話等に採用されるモジュールは、少なくとも2層のプリント基板10AにTR、チップコンデンサ、チップ抵抗またはLSIチップ100が実装されている。しかしながら、このLSIチップは、高機能であるため、ピン数が非常に多く、しかもそのサイズが小さくなっている。そのため、接続基板13は、ファインパターンの基板が必要になる。例えば、このLSIチップだけ、またはLSIチップとその周辺回路において、微細なパターンが必要で、この接続基板13が内蔵される基板10Aは、接続基板に比べてラフである場合がある。」、「また接続基板を高精細、高密度で実現する事で、基板10Aは、パターンがラフで、低密度であっても良い場合がある。よって接続基板13の表側(または裏側)の最表面の配線パターン101と基板10Aの最表面の配線層102が実質同一面になるように埋め込まれても良い。」と記載されている。
そして、図9によれば、プリント基板10Aが接続基板13を内蔵すること、接続基板13が高密度であり、基板10Aは低密度であること、LSIチップ100がプリント基板10Aに実装されること、LSIチップ100は接続基板13の表面の配線パターン101の上部に配置されること、LSIチップ100は接続基板13の下部に配置されないこと、が見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「多層プリント基板」は、接続基板13の上部に配置され、前記接続基板の下部に配置されないLSIチップ100をさらに有するといえる。
(キ)第6頁第5行目-第14行目には、「第1配線層16Aは、第1絶縁層14Aの上面に形成された配線層であり、第1絶縁層14Aに貼着された導電膜またはメッキ膜を選択的にエッチングして形成される。」ことが記載されている。また、第6頁第15行目-第18行目には、「第2配線層16Bは、第2絶縁層14Bの下面に形成された配線層であり、上記した第1配線層16Aと同様の構成である。」と記載されている。さらに、第9頁第2行目-第16行目には、「上記構成の接続基板13を経由して、コア層11に積層される第1配線層16Aと第2配線層16Bとが電気的に接続される。具体的には、接続基板13の上面に配置された第1配線パターン15Aは、第1絶縁層14Aを貫通して設けた接続部31を経由して第1配線層16Aと接続されている。更に、接続基板13の最下層に設けた第4配線パターン15Dは、第2絶縁層14Bを貫通して設けた接続部33を経由して、第2配線層16Bと接続されている。」ことが記載されている。
そして、図1によれば、基板10Aの接続基板13について、その上面には第1配線パターン第1配線層16Aに接続される第1配線パターン15Aが形成されること、その下面には第2配線層16Bに接続される第4配線パターン15Dが形成されることが、それぞれ見て取れる。
加えて、上記(カ)より、LSIチップは接続基板13の上部に配置され、当該接続基板13の下部に配置されないものといえることから、前記接続基板13の上面は前記LSIチップに対向し、前記接続基板の下面は前記LSIチップに対向しないものと認められる。
よって、引用文献1に記載された「多層プリント基板」について、接続基板13のLSIチップ100に対向する上面に第1配線パターン15Aが形成され、接続基板13のLSIチップ100に対向しない下面に第4配線パターン15Dが形成される、といえる。
ウ 上記イから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 多層プリント配線基板であって、
前記多層プリント配線基板の中心に位置する層であり、除去領域が部分的に貫通して形成されたコア層と、
前記除去領域に配置された接続基板と、
前記コア層及び前記接続基板上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された第1配線層と、
を含み、
前記第1配線層は、厚さ方向にコア層と重なるように配置された第1部分と、接続基板の上面に配置された第1配線パターンと接続され、厚さ方向に当該接続基板と重なるように配置された第2部分を含み、
前記コア層に積層された第1配線層の配線同士の離間する距離は前記接続基板に配置された第1配線パターンの配線同士の離間する距離よりも大きく、
前記接続基板の上部に配置され、前記接続基板の下部に配置されないLSIチップをさらに有し、
前記接続基板の前記LSIチップに対向する上面に形成される第1配線パターンと、前記接続基板の前記LSIチップに対向しない下面に形成される第4配線パターンをさらに有する、多層プリント配線基板。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)本件補正発明の「コア部材」について、本願明細書の段落[0022]には「コア部材155は、プリント回路基板の中心部層であ」ると記載されている。
よって、引用発明1の「コア層」は、「多層プリント配線基板の中心に位置する層」であるから、本件補正発明の「コア部材」に相当する。
(イ)本件補正発明の「貫通ホール」について、本願明細書の段落[0022]には「コア部材155には、貫通ホールが形成されて、サブ回路基板100を内部に配置することができる。」と、同段落[0028]には「コア部材155の中心部分に形成された貫通ホールにサブ回路基板100を配置することができる。」と、それぞれ記載されている。よって、「貫通ホール」は「コア部材」に形成されるものであり、内部に基板を配置するために利用されるものと認められる。
したがって、引用発明1の「除去領域」は、「コア層」に部分的に貫通して形成されるものであり、基板が配置されるものであるから、本件補正発明の「貫通ホール」に相当する。
よって、引用発明1の「除去領域が部分的に貫通して形成されたコア層」は、本件補正発明の「貫通ホールが形成されたコア部材」に相当するといえる。
(ウ)引用発明1の「接続基板」は、「コア部材」に形成された「除去領域に配置された」ものであるから、本件補正発明の「貫通ホールに配置されたサブ回路基板」に相当する。
(エ)引用発明1の「第1絶縁層」は、「前記コア層及び前記接続基板上に積層された」ものであるから、本件補正発明の「前記コア部材及び前記サブ回路基板上に積層された第1絶縁層」に相当する。
(オ)引用発明1の「第1配線層」は、「前記第1絶縁層上に配置された」ものであるから、本件補正発明の「前記第1絶縁層上に配置された外側回路層」に相当する。
(カ)本件補正発明は「前記サブ回路基板の回路層に電気的に接続された電子素子」を含むのに対し、引用発明1はそのような電子素子を含むか不明である点で相違する。
(キ)引用発明1の「第1配線層」は、「厚さ方向にコア層と重なるように配置された第1部分と、接続基板の上面に配置された第1配線パターンと接続され、厚さ方向に当該接続基板と重なるように配置された第2部分を含」むものであるから、本件補正発明の「外側回路層」と、「厚さ方向に前記コア部材と重なるように配置された第1回路パターン」と「厚さ方向に前記サブ回路基板と重なるように配置された第2回路パターンとを含」むものであることで共通する。
ただし、本件補正発明の「外側回路層」は、「第1回路パターン」が「第1ピッチを有し」、「第2回路パターン」が「第2ピッチを有し」、「前記第1ピッチは前記第2ピッチよりも大き」いとの特徴を有するのに対し、引用発明1の第1配線層の第1部分及び第2部分がそのような特徴を有するのか不明である点で相違する。
(ク)本件補正発明は「前記電子素子は、前記サブ回路基板の前記回路層の一部と前記外側回路層の一部とを電気的に接続」するのに対し、引用発明1は上記(カ)のとおり電子素子を含むか不明であり、加えて、そのような接続を行うものであるのかも不明である点で相違する。
(ケ)引用発明1の「LSIチップ」は、「前記接続基板の上部に配置された」ものであるから、本件補正発明の「前記サブ回路基板の上部に配置されたダイ」に相当する。
(コ)本件補正発明の「パッド」について、本願明細書の段落[0013]には、「サブ回路基板100は、ダイ1と直接接続されるように、一面にパッド130が形成され」ると記載されている。また、本願図1には、サブ回路基板100のダイ1に対向する上面及び当該サブ回路基板100のダイ1に対向しない下面にそれぞれパッドが形成されていることが見て取れる。
引用文献1の第9頁17行目-第19行目には、「接続基板13の第1配線パターン15Aと第1配線層16Aとは、複数個の接続部31を介して接続されている。」ことが記載されている。つまり、第1配線パターンはパッドを含むといえる。
また、引用文献1の第9頁17行目-第19行目には、「接続基板13の第4配線パターン15Dと第2配線層16Bも、複数個の接続部33を経由して接続されている。」ことも記載されている。つまり、第4配線パターンもパッドを含むといえる。
よって、引用発明1の「第1配線パターン」が含むパッドは、接続基板13のLSIチップ100に対向する上面に形成されるものであるから、本件補正発明のサブ回路基板100のダイ1に対向する上面に形成される「パッド」に相当し、引用発明1の「第4配線パターン」のパッドは、前記接続基板13のLSIチップ100に対向しない下面に形成されるものであるから、本件補正発明のサブ回路基板100のダイ1に対向しない下面に形成される「パッド」に相当する。
(サ)引用発明1の「接続基板」は、「前記接続基板の前記LSIチップに対向する上面に形成される第1配線パターンと、前記接続基板の前記LSIチップに対向しない下面に形成される第4配線パターンをさらに有する」ものであるから、本件補正発明の「サブ回路基板」と、「前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッド」と「前記サブ回路基板の下面に形成されるパッド」を更に有するものであることで共通する。
ただし、本件補正発明の「サブ回路基板」は、「前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッドのピッチは、前記サブ回路基板の下面に形成されるパッドのピッチより小さい」という特徴を有するのに対し、引用発明1の「接続基板」の各配線パターンがそのような特徴を有するのか不明である点で相違する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 貫通ホールが形成されたコア部材と、
前記貫通ホールに配置されたサブ回路基板と、
前記コア部材及び前記サブ回路基板上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に配置された外側回路層と、
を含み、
前記外側回路層は、厚さ方向に前記コア部材と重なるように配置された第1回路パターンと、厚さ方向に前記サブ回路基板と重なるように配置された第2回路パターンとを含み、
前記サブ回路基板の上部に配置されたダイをさらに有し、
前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッドと、前記サブ回路基板の下面に形成されるパッドをさらに有する、プリント回路基板。」
【相違点1】
本件補正発明は「前記サブ回路基板の回路層に電気的に接続された電子素子」を含むのに対し、引用発明1はそのような電子素子を含むか不明である点。
【相違点2】
本件補正発明の「外側回路層」は、「第1回路パターン」が「第1ピッチを有し」、「第2回路パターン」が「第2ピッチを有し」、そして「前記第1ピッチは前記第2ピッチよりも大き」いとの特徴を有するのに対し、引用発明1の第1配線層の第1部分及び第2部分がそのような特徴を有するのか不明である点。
【相違点3】
本件補正発明は「前記電子素子は、前記サブ回路基板の前記回路層の一部と前記外側回路層の一部とを電気的に接続」するのに対し、引用発明1はそのような接続を行うものであるのか不明である点。
【相違点4】
本件補正発明の「サブ回路基板」は、「前記サブ回路基板の前記ダイに対向する上面に形成されるパッドのピッチは、前記サブ回路基板の下面に形成されるパッドのピッチより小さい」という特徴を有するのに対し、引用発明1の「接続基板」の各配線パターンがそのような特徴を有するのか不明である点。
(4)相違点に対する判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1及び相違点3について
上記(2)アで抜粋したとおり、引用文献1の第8頁第20行目-第26行目には、「更には、接続基板13の内部で配線パターンを所定形状にすることで、コンデンサやコイルを構成しても良い。また、コイル、コンデンサ、抵抗器を接続基板13に内蔵させても良いし、これらを接続基板13と共に除去領域12に埋設して各配線層と接続しても良い。この様にすることで、背景技術では基板10Aの上面に配置される素子が備える機能が、コア層11の除去領域12に内蔵されるので、基板10Aを含む回路装置が小型なものとなる。」ことが記載されている。
してみると、引用発明1において、コイル、コンデンサ、抵抗器といった電子素子を接続基板に内蔵させ、前記接続基板の内部の配線パターンに電気的に接続し、また、前記接続基板の前記内部の配線パターンの一部と第1配線層の一部とを電気的に接続して、相違点1及び3に係る構成とすることは、当業者が容易に相当し得たことである。
イ 相違点2について
本件補正による請求項1に記載された「外側回路層は、第1ピッチを有し、厚さ方向に前記コア部材と重なるように配置された第1回路パターンと、第2ピッチを有し、厚さ方向に前記サブ回路基板と重なるように配置された第2回路パターンと含み、前記第1ピッチは前記第2ピッチよりも大き」いことは、本願明細書に明確な記載は認められない。
なお、本願図1等から、外層回路165について、厚さ方向にコア部材155と重なるように配置された回路パターンの配線同士の離間する距離が、厚さ方向にサブ回路基板100と重なるように配置された回路パターン120の配線同士の離間する距離よりも大きい様子が見て取れるが、特許出願の図面は設計図面ではないことから、図面から当該図面中の各構成要素の大きさや各構成要素間の距離を正確に読み取ることはできない。
しかし、本願明細書には、「サブ回路基板100において、高密度回路110の幅及び回路の間の間隔は、後述する低密度回路160の幅及び回路の間の間隔に比べて、狭く形成される。」(段落[0010]参照)こと、「コア部材155及び第1絶縁層180で構成された領域には、高密度回路110に比べて密度の低い低密度回路160を形成することができる。」(段落[0033]参照)こと、「サブ回路基板100は、低密度回路基板領域に比べて高密度の回路層を有するため、層間隔が低密度回路基板領域における層間隔よりも狭く形成される。」(段落[0035]参照)こと、がそれぞれ記載されている。これらの記載によれば、外側回路層において、低密度回路が構成されるコア部材と重なるように配置される回路パターンの配線同士の離間する距離は、高密度回路が構成されるサブ回路基板と重なるように配置される回路パターンの配線同士の離間する距離よりも自然に大きくなるものと認められる。
他方で、引用発明1は、上記(2)ウで認定したとおり、「前記第1配線層は、厚さ方向にコア層と重なるように配置された第1部分と、接続基板の上面に配置された第1配線パターンと接続され、厚さ方向に当該接続基板と重なるように配置された第2部分を含み、前記コア層に積層された第1配線層の配線同士の離間する距離は前記接続基板の上面に配置された第1配線パターンの配線同士の離間する距離よりも大き」いものであるから、第1部分の配線同士の離間する距離は、第2部分の配線同士の離間する距離よりも大きくなるものである。
よって、相違点2に係る構成は実質的な相違点ではないといえる。
ウ 相違点4について
引用発明1は、上記(2)ウで認定したとおり、「前記接続基板の上部に配置されたLSIチップをさらに有し、前記接続基板の前記LSIチップに対向する上面に形成される第1配線パターンと、前記接続基板の前記LSIチップに対向しない下面に形成される第4配線パターンをさらに有」しているものである。
引用文献1の第9頁17行目-第21行目には、「コア層11の上面に積層された配線層と、下面に積層された配線層とを接続する接続箇所を、接続基板13に集約することができる。」ことが記載されており、引用発明1の接続基板は本件補正発明の「サブ回路基板」に相当し、チップに対向する上面とチップに対向しない下面を接続するものであるところ、チップに対向する配線パターンの間隔をチップに対向しない配線パターンの間隔よりも小さくすることは普通の構成にすぎない。例えば、例えば、特開2014-207308号公報の段落[0015]-[0024]及び図1を参照されたい。
よって、相違点4に係る構成は実質的な相違点ではないといえる。
(5)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上から、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年3月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、令和2年12月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものである。
「1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2011/102561号
3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載された事項は、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。
4 引用発明との対比
本願発明と引用発明1の相違点は、前記「第2[理由]2(3)イ」で検討した、相違点1ないし3と認められる。前記「第2[理由]2(4)アないしイ」で判断したとおり、引用発明1に引用文献1に記載された事項を採用し、該相違点1ないし3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
5 判断
したがって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004343