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特許拒絶査定不服審判

2022-004066

中性子捕捉療法システム

審判番号
2022-004066
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-513396外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月17日
審決日
2023年09月13日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-513396「中性子捕捉療法システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月14日国際公開、WO2019/047697、令和 2年 7月 2日国内公表、特表2020-519420〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年) 8月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年 9月 7日 (CN)中華人民共和国、2017年 9月 7日 (CN)中華人民共和国、2017年 9月 7日 (CN)中華人民共和国、2017年 9月 7日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は以下のとおりである。

令和 2年10月14日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月 8日提出:意見書及び手続補正書
令和 3年 5月20日付け:拒絶理由(最後)通知書
令和 3年 8月24日提出:意見書及び手続補正書
令和 4年 1月12日付け:令和 3年 8月24日の手続補正についての補正の却下の決定及び拒絶査定
令和 4年 3月17日提出:審判請求書及び手続補正書
令和 4年10月25日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月31日提出:意見書及び手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明は、令和 5年 3月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
中性子捕捉療法システムであって、加速器と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記加速器は荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを発生し、前記ビーム転送部は前記加速器が発生した荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部まで転送し、前記中性子ビーム発生部は治療用中性子ビームを発生し、前記中性子ビーム発生部は第一中性子ビーム発生部と、第二中性子ビーム発生部と、第三中性子ビーム発生部とを含み、
前記ビーム転送部は前記加速器に接続する第一転送部と、荷電粒子ビーム進行方向を切り替えるビーム方向スイッチャーと、それぞれ荷電粒子ビームを前記ビーム方向スイッチャーから前記第一、第二、第三中性子ビーム発生部に転送する第三、第四及び第五転送部を含み、
前記ビーム方向スイッチャーは第一、第二ビーム方向スイッチャーを含み、
続きを表示(全15行)
前記第一転送部は、前記第一ビーム方向スイッチャーと前記加速器とを接続し、
前記第三転送部は、前記第一ビーム方向スイッチャーと前記第一中性子ビーム発生部とを接続し、
前記第四転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第二中性子ビーム発生部とを接続し、
前記第五転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第三中性子ビーム発生部とを接続し、
前記ビーム転送部は、さらに前記第一ビーム方向スイッチャー及び前記第二ビーム方向スイッチャーを接続する第二転送部を含み、
X軸とY軸、Y軸とZ軸、Z軸とX軸がそれぞれ直交して、前記第一ビーム方向スイッチャーの配置位置を原点としたXYZ座標系を構成し、前記原点から、前記加速器が射出した前記荷電粒子ビームの方向と平行な方向に延びる軸をX軸とし、前記原点から、地面に対して垂直な方向に延びる軸をZ軸とし、前記原点で前記X軸及び前記Z軸に直交する方向の軸をY軸とし、
前記第一転送部及び前記第二転送部は、前記荷電粒子ビームを前記X軸方向に沿って転送し、
前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とが、前記X軸と前記Y軸とが前記原点で交わるXY平面内にあって、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、
前記第三転送部は、前記荷電粒子ビームを前記Z軸方向に沿って転送し、
前記第四、第五転送部の転送方向が前記第一転送部の転送方向とY字状になる、
ことを特徴とする中性子捕捉療法システム。」

第3 当審の拒絶の理由

令和 4年10月25日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、概略、次の理由を含むものである。

本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2記載の事項に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2014-161623号公報

引用文献2.特開2011-182987号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付したものである。以下同様。)。

ア 「【0001】
本発明は、中性子線を被照射体に照射する中性子捕捉療法システムに関する。」
イ 「【0016】
図2は、中性子捕捉療法システム100の構成を示す図である。図3は、中性子捕捉療法システム100の配置を示す図である。図2及び図3に示すように、中性子捕捉療法システム100は、治療用の中性子線Nを発生させて照射するための中性子線発生部10と、患者に中性子線Nを照射するための照射室30A,30Bと、照射準備を行うための準備室50A,50Bと、作業工程を管理するための管理室70とを備えている。
【0017】
中性子線発生部10は、後述する照射室30A,30Bの室内に中性子線Nを発生させて患者Sへ中性子線Nを照射可能に構成されている。中性子線発生部10は、加速器11(例えば、サイクロトロン)と、荷電粒子線Pから中性子線Nを生成する中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12A又は中性子線出力部12Bまで輸送するビーム輸送路13と、を備えている。加速器11及びビーム輸送路13は、Y字状をなす荷電粒子線生成室10aの室内に配置されている(図3参照)。荷電粒子線生成室10aは、コンクリート製の遮蔽壁Wに覆われた閉鎖空間である。
【0018】
加速器11は、荷電粒子(例えば、陽子)を加速して、荷電粒子線P(例えば、陽子線)を作り出し、出射する。加速器11は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを生成する能力を有している。
【0019】
ビーム輸送路13は、荷電粒子線Pを中性子線出力部12A又は中性子線出力部12Bのうちのいずれか一方に選択的に出射する。ビーム輸送路13は、加速器11に接続された第1輸送部14と、荷電粒子線Pの進行方向を切り替えるビーム方向切替器15と、荷電粒子線Pを中性子線出力部12Aに輸送するための第2輸送部16Aと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12Bに輸送するための第2輸送部16Bと、を有している。第2輸送部16Aは、ビーム方向切替器15及び中性子線出力部12Aに接続されている。第2輸送部16Bは、ビーム方向切替器15及び中性子線出力部12Bに接続されている。すなわち、ビーム輸送路13は、ビーム方向切替器15において第2輸送部16Aと、第3輸送部16Bとに分岐している。」
ウ 「【0067】
本発明の中性子捕捉療法システムでは、準備室及び照射室の数は2つに限定されることはない。図7は、変形例に係る中性子捕捉療法システム101の構成を示す図である。図7に示すように、中性子捕捉療法システム101は、3つの照射室30A,30B,30Cと3つの準備室50A,50B,50Cとを備えていてもよい。この場合には、中性子線発生部10は、照射室30A,30B,30Cのそれぞれに対応する3つの中性子線出力部12A,12B,12Cを含んでいる。ビーム輸送路13は、荷電粒子線Pを中性子線出力部12Aに輸送する第2輸送部16Aと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12Bに輸送する第3輸送部16Bと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12Cに輸送する第4輸送部16Cと、を有している。さらに、管理室70は、全ての準備室50A,50B,50Cに隣接するように配置されている。また、管理室70と準備室50Aとの間には窓72Aが設けられ、管理室70と準備室50Bとの間には窓72Bが設けられ、管理室70と準備室50Cとの間には窓72Cが設けられている。」
エ 「【0072】
図9は、変形例に係る中性子捕捉療法システム103の構成を示す図である。図9に示すように、中性子捕捉療法システム103は、3つの照射室30A,30B,30Cを備えていてもよい。この場合には、中性子線発生部10は、照射室30A,30B,30Cのそれぞれに対応する3つの中性子線出力部12A,12B,12Cを含んでいる。さらに、管理室70は、全ての照射室30A,30B,30Cに隣接するように配置されている。」
オ 「【図2】
[図:0001407062000001.jpg]
」
カ 「【図3】
[図:0001407062000002.jpg]
」
キ 「【図7】
[図:0001407062000003.jpg]
」
ク 「【図9】
[図:0001407062000004.jpg]
」

(2)上記(1)の記載及び図示内容から、引用文献1には次の事項が記載されている。

ア 段落【0016】には、中性子捕捉療法システム100が中性子線発生部10を備えていること、及び、中性子線発生部10が治療用の中性子線Nを生成することが記載されており、段落【0017】には、中性子線発生部10が、加速器11と、荷電粒子線Pから中性子線Nを生成する中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12A又は中性子線出力部12Bまで輸送するビーム輸送路13と、を備えていることが記載されていることから、中性子捕捉療法システム100は、加速器11と、荷電粒子線Pから治療用の中性子線Nを生成する中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bと、荷電粒子線Pを中性子線出力部12A又は中性子線出力部12Bまで輸送するビーム輸送路13と、を備えている。

イ 段落【0019】の記載及び図3の図示内容から、第1輸送部14は、ビーム方向切替器15と加速器11とを接続し、第2輸送部16Aは、ビーム方向切替器15と中性子線出力部12Aとを接続し、第3輸送部16Bは、ビーム方向切替器15と中性子線出力部12Bとを接続している。

ウ 段落【0017】の「加速器11及びビーム輸送路13は、Y字状をなす荷電粒子線生成室10aの室内に配置されている」との記載及び図3の図示内容から、第2輸送部16Aと第3輸送部16Bとのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、第2輸送部16A及び第3輸送部16Bが第1輸送部14とY字状になっている。

(3)上記(1)ア、イ、オ及びカの記載事項並びに上記(2)の事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「中性子捕捉療法システム100であって、加速器11と、荷電粒子線Pから治療用の中性子線Nを生成する中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bと、荷電粒子線Pを前記中性子線出力部12A又は前記中性子線出力部12Bまで輸送するビーム輸送路13と、を備えており、前記加速器11は、荷電粒子を加速して、荷電粒子線Pを作り出し、出射し、
前記ビーム輸送路13は、前記加速器11に接続された第1輸送部14と、前記荷電粒子線Pの進行方向を切り替えるビーム方向切替器15と、前記荷電粒子線Pを中性子線出力部12Aに輸送するための第2輸送部16Aと、前記荷電粒子線Pを中性子線出力部12Bに輸送するための第3輸送部16Bと、を有し、
前記第1輸送部14は、前記ビーム方向切替器15と前記加速器11とを接続し、
前記第2輸送部16Aは、前記ビーム方向切替器15と前記中性子線出力部12Aとを接続し、
前記第3輸送部16Bは、前記ビーム方向切替器15と前記中性子線出力部12Bとを接続し、
前記第2輸送部16Aと前記第3輸送部16Bとのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、
前記第2輸送部16A及び前記第3輸送部16Bが前記第1輸送部14とY字状になる、
中性子捕捉療法システム100。」

2 引用文献2について

引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【0007】
本発明は、複数階の階層構造からなる建物に設置された加速粒子照射設備において、加速粒子を生成する粒子加速器と、粒子加速器で生成された加速粒子を照射すると共に、粒子加速器が設置された階層よりも上側の階層及び下側の階層の少なくとも一方に設置された照射装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、粒子加速器と照射装置とを、建物の異なる階層にそれぞれ設置するので、敷地面積に応じて、例えば、粒子加速器の真上に照射装置を設置して敷地占有面積を極力減らすことも可能になり、その結果として、所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く設置し易くなる。」

第5 対比

1 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明と対比する。

(1)引用発明の「中性子捕捉療法システム100」は、本願発明の「中性子捕捉療法システム」に相当する。

(2)引用発明の「加速器11と、荷電粒子線Pから治療用の中性子線Nを生成する中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bと、荷電粒子線Pを前記中性子線出力部12A又は前記中性子線出力部12Bまで輸送するビーム輸送路13と、を備え」ることは、本願発明の「加速器と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み」、「前記中性子ビーム発生部は治療用中性子ビームを発生し」、「前記ビーム転送部は前記加速器が発生した荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部まで転送」することに相当する。

(3)引用発明の「加速器11は、荷電粒子を加速して、荷電粒子線Pを作り出し、出射し」は、本願発明の「前記加速器は荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを発生し」に相当する。

(4)引用発明の「中性子線出力部12A」及び「中性子線出力部12B」は、本願発明の「第二中性子ビーム発生部」及び「第三中性子ビーム発生部」にそれぞれ相当する。

(5)引用発明の「加速器11に接続された第1輸送部14」と、本願発明の「加速器に接続する第一転送部」及び「第二転送部」とは、加速器に接続する転送部の限りにおいて一致する。

(6)引用発明の「荷電粒子線Pの進行方向を切り替えるビーム方向切替器15」は、ビーム輸送路13を第2輸送部16Aと第2輸送部16Bとに分岐する(引用文献1の段落【0019】を参照。)ものであるから、本願発明の「荷電粒子ビーム進行方向を切り替えるビーム方向スイッチャー」が含む「第二ビーム方向スイッチャー」に相当する。また、引用発明の「荷電粒子線Pを中性子線出力部12Aに輸送するための第2輸送部16Aと、前記荷電粒子線Pを中性子線出力部12Bに輸送するための第3輸送部16B」は、本願発明の「それぞれ荷電粒子ビームを前記ビーム方向スイッチャーから前記」「第二、第三中性子ビーム発生部に転送する」「第四及び第五転送部」に相当する。

(7)引用発明の「前記第1輸送部14は、前記ビーム方向切替器15と前記加速器11とを接続し、前記第2輸送部16Aは、前記ビーム方向切替器15と前記中性子線出力部12Aとを接続し、前記第3輸送部16Bは、前記ビーム方向切替器15と前記中性子線出力部12Bとを接続し」ている点と、

本願発明の「前記第一転送部は、前記第一ビーム方向スイッチャーと前記加速器とを接続し、前記第三転送部は、前記第一ビーム方向スイッチャーと前記第一中性子ビーム発生部とを接続し、前記第四転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第二中性子ビーム発生部とを接続し、前記第五転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第三中性子ビーム発生部とを接続し、前記ビーム転送部は、さらに前記第一ビーム方向スイッチャー及び前記第二ビーム方向スイッチャーを接続する第二転送部を含」む点とは、

前記転送部は、ビーム方向スイッチャーと前記加速器とを接続し、前記第四転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第二中性子ビーム発生部とを接続し、前記第五転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第三中性子ビーム発生部とを接続している限りにおいて一致する。

(8)引用文献1の段落【0017】及び図3を参照し、ビーム方向切替器15の配置位置を原点としたxyz座標系を構成し、前記原点から加速器11が出射した荷電粒子線Pの進行方向と平行に延びる軸をx軸とし、前記原点から、床面に対して垂直方向に延びる軸をz軸とし、前記原点で前記x軸及び前記z軸に直交する方向の軸をy軸とした場合、引用発明の第1輸送部14は、荷電粒子線Pをx軸方向に沿って転送し、第2輸送部16Aと第3輸送部16Bとは、x軸とy軸とが前記原点で交わるxy平面内に設けられているといえる。

また、第1輸送部14、第2輸送部16A及び第3輸送部16Bは、いずれも荷電粒子線Pを所定の輸送方向に輸送するためのものであるから、第2輸送部16Aと第3輸送部16Bとのなす角が、0度より大きい夾角を形成していることは、第2輸送部16Aの輸送方向と第3輸送部16Bの輸送方向とのなす角が、0度より大きい夾角を形成することであり、さらに、第2輸送部16A及び第3輸送部16Bが第1輸送部14とY字状になることは、第2輸送部16Aの輸送方向及び第3輸送部16Bの輸送方向が第1輸送部14の輸送方向とY字状になることである。

そうすると、引用発明の「荷電粒子線Pを中性子線出力部12Aに輸送するための第2輸送部16Aと、前記荷電粒子線Pを中性子線出力部12Bに輸送するための第3輸送部16Bと、を有し」、「前記第2輸送部16Aと前記第3輸送部16Bとのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、前記第2輸送部16A及び前記第3輸送部16Bが前記第1輸送部14とY字状になる」点と、

本願発明の「X軸とY軸、Y軸とZ軸、Z軸とX軸がそれぞれ直交して、前記第一ビーム方向スイッチャーの配置位置を原点としたXYZ座標系を構成し、前記原点から、前記加速器が射出した前記荷電粒子ビームの方向と平行な方向に延びる軸をX軸とし、前記原点から、地面に対して垂直な方向に延びる軸をZ軸とし、前記原点で前記X軸及び前記Z軸に直交する方向の軸をY軸とし、前記第一転送部及び前記第二転送部は、前記荷電粒子ビームを前記X軸方向に沿って転送し、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とが、前記X軸と前記Y軸とが前記原点で交わるXY平面内にあって、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、前記第三転送部は、前記荷電粒子ビームを前記Z軸方向に沿って転送し、前記第四、第五転送部の転送方向が前記第一転送部の転送方向とY字状になる」点とは、

「X軸とY軸、Y軸とZ軸、Z軸とX軸とがそれぞれ直交して、ビーム方向スイッチャーの配置位置を原点としたXYZ座標系を構成し、前記原点から、前記加速器が射出した前記荷電粒子ビームの方向と平行な方向に延びる軸をX軸とし、前記原点から、地面に対して垂直な方向に延びる軸をZ軸とし、前記原点で前記X軸及び前記Z軸に直交する方向の軸をY軸とし、前記転送部は、前記荷電粒子ビームを前記X軸方向に沿って転送し、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とが、前記X軸と前記Y軸とが前記原点で交わるXY平面内にあって、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、前記第四、第五転送部の転送方向が前記転送部の転送方向とY字状になる」限りにおいて一致する。

2 一致点及び相違点

したがって、本願発明と引用発明とは、

「中性子捕捉療法システムであって、加速器と、ビーム転送部と、中性子ビーム発生部とを含み、前記加速器は荷電粒子を加速して荷電粒子ビームを発生し、前記ビーム転送部は前記加速器が発生した荷電粒子ビームを前記中性子ビーム発生部まで転送し、前記中性子ビーム発生部は治療用中性子ビームを発生し、前記中性子ビーム発生部は、第二中性子ビーム発生部と、第三中性子ビーム発生部とを含み、
前記ビーム転送部は前記加速器に接続する転送部と、荷電粒子ビーム進行方向を切り替えるビーム方向スイッチャーと、それぞれ荷電粒子ビームを前記ビーム方向スイッチャーから前記第二、第三中性子ビーム発生部に転送する第四及び第五転送部を含み、
前記ビーム方向スイッチャーは第二ビーム方向スイッチャーを含み、
前記転送部は、ビーム方向スイッチャーと前記加速器とを接続し、
続きを表示(全11行)
前記第四転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第二中性子ビーム発生部とを接続し、
前記第五転送部は、前記第二ビーム方向スイッチャーと前記第三中性子ビーム発生部とを接続し、
X軸とY軸、Y軸とZ軸、Z軸とX軸がそれぞれ直交して、ビーム方向スイッチャーの配置位置を原点としたXYZ座標系を構成し、前記原点から、前記加速器が射出した前記荷電粒子ビームの方向と平行な方向に延びる軸をX軸とし、前記原点から、地面に対して垂直な方向に延びる軸をZ軸とし、前記原点で前記X軸及び前記Z軸に直交する方向の軸をY軸とし、
前記転送部は、前記荷電粒子ビームを前記X軸方向に沿って転送し、
前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とが、前記X軸と前記Y軸とが前記原点で交わるXY平面内にあって、前記第四転送部の転送方向と、前記第五転送部の転送方向とのなす角が、0度より大きい夾角を形成し、
前記第四、第五転送部の転送方向が前記転送部の転送方向とY字状になる、
中性子捕捉療法システム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]

本願発明は、中性子ビーム発生部が「第一中性子ビーム発生部」を含み、ビーム方向スイッチャーが「第一」ビーム方向スイッチャーを含んでおり、ビーム転送部が、「第一ビーム方向スイッチャーと第一中性子ビーム発生部とを接続し」、荷電粒子ビームを前記ビーム方向スイッチャーから「第一」中性子ビーム発生部に転送する「第三」転送部を含み、ビーム転送部は、「さらに前記第一ビーム方向スイッチャー及び前記第二ビーム方向スイッチャーを接続する第二転送部を含み」、転送部が「第一転送部」及び「第二転送部」からなり、「第一転送部」は加速器に接続し、「前記第一ビーム方向スイッチャーと前記加速器とを接続し」、XYZ座標系の原点が「前記第一ビーム方向スイッチャーの配置位置」であり、「前記第一転送部及び前記第二転送部」が前記荷電粒子ビームを前記X軸方向に沿って転送し、「前記第三転送部」は、「前記第一ビーム方向スイッチャーと前記第一中性子ビーム発生部とを接続し」、「前記荷電粒子ビームをZ軸方向に沿って転送し」、第四、第五転送部の転送方向が前記「第一」転送部とY字状になるのに対し、引用発明は、そもそも、中性子線出力部が中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bの2つであり、ビーム方向切替器15が1つである点。

第6 判断

(1)相違点についての検討

上記相違点について以下検討する。

引用文献1の段落【0067】、【0072】、図7及び9には、3つの中性子線出力部12A、12B、12Cを備えることが示唆されている(上記第4の1(1)ウ、エ、キ及びクを参照。)。

また、上記第4の2で摘記した事項から、引用文献2には、加速粒子照射設備において、粒子加速器と照射装置とを、建物の異なる階層にそれぞれ設置し、所定の敷地に粒子加速器と照射装置とを効率良く配置する事項が記載されている(以下「引用文献2記載の事項」という。)。

そして、加速器や各種装置を建物内に設置する際に効率良く配置することは引用発明においても当然内在する課題であり、引用発明において、引用文献1における上記示唆を踏まえ、3つの中性子線出力部を備えたものとする際、効率良く配置するために引用文献2記載の事項を参酌し、中性子線出力部12A及び中性子線出力部12Bが設置されている階層とは異なる階層に3つ目の中性子線出力部を設けることは、当業者であれば容易になし得ることである。そして、具体的に、第1輸送部14と異なる階層に3つ目の中性子線出力部を設置するにあたって、第1輸送部14とビーム方向切替器15との間に新たなビーム方向切替器を設ける程度のことは、当業者が設計上適宜なし得ることである。

したがって、引用発明において、当業者が適宜設定し得るxyz座標系の原点を当該新たなビーム方向切替器を設けた位置に設定し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

さらに、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

(2)請求人の主張について

請求人は、令和 5年 3月31日提出の意見書において、「引用文献1では、管理室70は、全ての準備室50A~50Cに隣接するように配置されており、管理室70と準備室50A~50Cとの間にはそれぞれ窓72A~72Cが設けられています。例えば、準備室50Aと照射室30Aとの間には、準備室50Aと照射室30Aとを隔てる壁W3が設けられており、壁W3には、準備室50Aから照射室30Aまで連通する連絡室40Aが設けられています。このように、引用文献1では、全ての準備室50A~50Cは同じ階にあり、準備室との間に壁が設けられている照射室30A~30Cも同じ階に設けられています。そして、中性子線Nを、治療台80をそれぞれ有している照射室30A~30Cへ選択的に照射するための制御が一の管理室70において実施されています。従って、3つの中性子線出力部から照射される3つの照射室が同じ階に設けられている引用文献1に、引用文献2を組み合わせても、3つめの中性子線出力部を引用文献1の第1輸送部14の垂直方向の下側又は上側に設けることは当業者が容易になし得たことではないと思料致します。」と主張する(下線は当審にて付与したものである。)。

しかしながら、準備室を配置することについては、本願の特許請求の範囲に何ら記載されておらず、請求人の主張は特許請求の範囲に基づくものではない。

また、引用文献1(段落【0069】~【0073】,図8及び9を参照。)には、準備室を備えない実施形態が記載されており、このことから、引用文献1の中性子捕捉療法システムにおいて、準備室を配置することは必須でない。

してみると、準備室が配置されていることを前提とした請求人の主張には理由がなく、採用することはできない。

(3)まとめ

よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-004066

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