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特許拒絶査定不服審判

2022-003671

モータ制御装置およびモータ制御システム

審判番号
2022-003671
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-012739外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月10日
審決日
2022年11月16日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H02P)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018- 12739「モータ制御装置およびモータ制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019-134514〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願は、平成30年1月29日の出願であって、令和3年5月18日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年12月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 この出願の請求項に係る発明は、令和3年9月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 モータを制御するモータ制御装置であって、 前記モータを駆動する電力変換部と、 前記電力変換部を介して前記モータを制御する制御部と、を備えており、 前記制御部は、 前記モータの動作状態に対応する所定の物理量を示すフィードバック信号を取得するフィードバック信号取得部と、 前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信する通信部と、 前記電力変換部に前記モータを駆動させるためのモータ駆動信号を当該電力変換部に出力するモータ駆動信号出力部と、を備えており、 前記制御部は、1つのIC(Integrated Circuit)チップによって実装されており、 前記モータには、当該モータの回転子の位置を検出する位置検出部が設けられており、 前記フィードバック信号には、前記モータの回転子の位置を示す第1フィードバック信号が含まれており、 前記フィードバック信号取得部は、前記位置検出部から前記第1フィードバック信号を取得する第1フィードバック信号取得部を含み、 前記フィードバック信号には、前記電力変換部から前記モータに供給される電流を示す第2フィードバック信号が含まれており、 前記フィードバック信号取得部は、前記第2フィードバック信号を取得する第2フィードバック信号取得部を含むことを特徴とするモータ制御装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 本願発明についての原査定(令和3年12月23日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、並びに引用文献2及び引用文献3に記載されているような周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平5-252688号公報 引用文献2:特開2015-192473号公報 引用文献3:特開平8-289599号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、前記した引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。 ア 「【0002】 【従来の技術】NC工作機械やロボット等では、動力源としてACサーボモータやDCサーボモータが使用されている。 【0003】図4に従来のACサーボモータシステムの構成図を示す。サーボモータ1にはフィードバック制御を行うためのエンコーダ2が連結されている。これらサーボモータ1及びエンコーダ2にはサーボドライブユニット3が接続されている。サーボドライブユニット3には電源を供給する電源ユニット4が接続されるとともにサーボドライブユニット3を制御するコントローラ5が接続されている。なお、電源ユニット4及びコントローラ5には複数のサーボドライブユニット3,エンコーダ2及びサーボモータ1が接続されている。 【0004】図5は図4のサーボドライブユニット3のブロック図である。図5において、モータ駆動回路(インバータ回路)6はサーボモータ1に接続されている。該モータ駆動回路6には電源制御部7及びPWM制御を行う電流制御部8が接続されている。電源制御部7には電源ユニット4及び保護回路11が接続されている。電流制御部8には位置決め制御部9,速度制御部10及びシーケンス回路12が接続されている。位置決め制御部9にはエンコーダ2,コントローラ5,速度制御部10及びシーケンス回路12が接続されている。速度制御部10にはコントローラ5及びシーケンス回路12も接続されている。保護回路11にはシーケンス回路12が接続されている。シーケンス回路12にはコントローラ5も接続されている。 【0005】図6は図5のサーボモータ1としてACサーボモータを用いた場合の構成図を示す。モータの軸21には回転子として界磁磁束を発生させる永久磁石22が取り付けられている。固定子として鉄心23に3相電機子巻線24が巻いてある。永久磁石22による磁界の中で3相電機子巻線24に電流を流すと、フレミングの左手の法則により、回転子としての永久磁石22が取り付けられた軸21が回転する。ここで、3相電機子巻線24の各巻線に回転子位置に応じてPWM制御された正弦波電流を流すことにより各巻線に流れる電流に比例したトルクが発生し、回転子である軸21は電流で制御されながら回転することになる。該軸21の端部には、速度及び位置のフィードバック制御を行うためのエンコーダ2が連結されている。サーボドライブユニット3はACサーボモータ1の3相電機子巻線24とエンコーダ2にそれぞれ個別のケーブルを介して接続されている。図6では特にエンコーダケーブルに符号33を付けて示している。このように構成されるサーボモータユニットは、1軸の動力源として用いられる。」 イ 「【0013】 【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例の構成図であり、図6と共通する部分には同一番号を付けている。図1が図6と異なる点は、サーボモータ1のハウジング内に、サーボモータ1を駆動制御する機能を有するサーボドライブユニット15を組み込んだことである。該サーボドライブユニット15は3相電機子巻線24と巻線・駆動回路接続ケーブル31を介して接続されている。 【0014】図2は図1の電気的接続関係を示す回路図で、図5と共通する部分には同一番号を付けている。図1が図5と異なる点は、シーケンス回路12の代わりにCPU32を設けていることと、該CPU32とコントローラ5との間の通信を行うための通信回路13を設けていることである。また、CPU32には通信用プログラムが書き込まれたブート用のROM14が設けられている。 【0015】このような回路構成の動作は以下の通りである。電源制御部7は外部の電源ユニット4から供給される電源を所望の電圧に制御してモータ駆動回路6に出力する。モータ駆動回路6は、必要とする周波数の交流電圧を発生してサーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流す。電流制御部8はモータ駆動回路6をPWM制御する。位置決め制御部9はエンコーダ2から出力される角度信号を基にして位置のフィードバック制御を行う。速度制御部10はコントローラ5からの速度指令値とエンコーダ2から出力される速度信号により速度偏差を求めてトルク制御を行う。CPU32は、各制御部の制御及び演算を行う。通信回路13はROM14に格納されているプログラムに従って外部のコントローラ5とCPU32の間で通信を行う。 【0016】ここで、サーボドライブユニット15は、インテリジェントパワーICとして1チップ化することにより、小型,低価格が実現できる。このようにサーボモータ1のハウジング内にサーボモータ1を駆動制御する機能を有するサーボドライブユニット15を組み込むことにより、サーボモータ1と外部装置とを接続するケーブルは各サーボモータ1毎に1本の信号線と2,3本の電源線よりなる1セットを用意するだけでよく、多軸制御の場合には図3のように軸数分のサーボモータ1のみを追加すればよい。」 ウ 図1及び図2には、以下の事項が図示されている。 [図:0001393832000001.jpg] [図:0001393832000002.jpg] エ 前記イの段落【0015】によると、モータ駆動回路6は、外部の電源ユニット4から供給される電源を所望の電圧に制御した電源制御部7の出力から、必要とする周波数の交流電圧を発生してサーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流すものといえる。 オ 前記イの段落【0016】によると、サーボドライブユニット15は、インテリジェントパワーICとして1チップ化されているから、サーボドライブユニット15に備えられたモータ駆動回路6、位置決め制御部9、通信回路13及び電流制御部8は、インテリジェントパワーICとして1チップ化されているといえる。 カ 前記アの段落【0003】及び【0005】によると、従来技術において、サーボモータ1の回転子である軸21の端部には、速度及び位置のフィードバック制御を行うためのエンコーダ2が連結されているといえる。また、前記イの段落【0013】に「図1は本発明の一実施例の構成図であり、図6と共通する部分には同一番号を付けている。」と記載されていることを踏まえると、従来技術のサーボモータ1、軸21及びエンコーダ2と同一番号が付された、実施例のサーボモータ1、軸21及びエンコーダ2についても、サーボモータ1の回転子である軸21の端部には、速度及び位置のフィードバック制御を行うためのエンコーダ2が連結されているといえる。 (2)引用発明 前記引用文献1の記載事項ア~カ及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「サーボモータ1を駆動制御する機能を有するサーボドライブユニット15であって、 外部の電源ユニット4から供給される電源を所望の電圧に制御した電源制御部7の出力から、必要とする周波数の交流電圧を発生して前記サーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流すモータ駆動回路6と、 エンコーダ2から出力される角度信号を基にして位置のフィードバック制御を行う位置決め制御部9と、 外部のコントローラ5とCPU32の間で通信を行う通信回路13と、 前記モータ駆動回路6をPWM制御する電流制御部8と、を備えており、 前記モータ駆動回路6、前記位置決め制御部9、前記通信回路13及び前記電流制御部8は、インテリジェントパワーICとして1チップ化されており、 前記サーボモータ1の回転子である軸21の端部には、速度及び位置のフィードバック制御を行うための前記エンコーダ2が連結されているサーボドライブユニット15。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、前記した引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0002】 交流(AC)サーボモータの制御系においては、位置指令からエンコーダ等で検出される位置フィードバック値を減じて位置偏差を求め、この位置偏差にポジションゲインを乗じて位置ループ制御を行って速度指令を求め、この速度指令から速度フィードバック値を減じて速度偏差を求め、比例・積分制御等の速度ループ処理を行い、トルク指令(電流指令)を求める。 さらに、このトルク指令から電流フィードバック値を減じて電流ループ処理を行い各相(各軸)の電圧指令を求めてPWM制御等を行い、ACサーボモータを制御している。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の出願前に頒布された刊行物である、前記した引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「【0002】 【従来の技術】図13は従来から行なわれているACサーボモータの制御系のブロック線図である。位置ループ制御(1)は、位置指令からエンコーダ等で検出される位置フィードバック値を減じて位置偏差を求め、この位置偏差にポジションゲインを乗じて速度指令を求める。そして、速度ループ処理(2)は、この速度指令から速度フィードバック値を減じて速度偏差を求め、この速度偏差に比例,積分制御等を行って、トルク指令(電流指令)を求める。さらに、電流ループ処理(3)は、このトルク指令から電流フィードバック値を減じ、PWM制御等を行って各相の電圧指令を求め、この電圧指令をACサーボモータMに供給してモータ制御を行っている。」 第5 本願発明について 1 対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「サーボモータ1」及び「サーボドライブユニット15」は、それぞれ本願発明の「モータ」及び「モータ制御装置」に相当し、引用発明の「サーボモータ1を駆動制御する機能を有するサーボドライブユニット15」は、本願発明の「モータを制御するモータ制御装置」に相当する。 (2)引用発明の「モータ駆動回路6」は、「外部の電源ユニット4から供給される電源を所望の電圧に制御した電源制御部7の出力から、必要とする周波数の交流電圧を発生して前記サーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流す」ものであるから、電源制御部7から出力された所望の電圧を必要とする周波数の交流電圧に変換しているといえ、本願発明の「電力変換部」に相当する。 また、引用発明において、「サーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流す」ことにより、引用文献1に従来の技術として記載された事項(前記第4 1(1)アの段落【0005】参照。)と同様に、サーボモータ1の回転子である軸21が回転することは明らかであるから、引用発明の「外部の電源ユニット4から供給される電源を所望の電圧に制御した電源制御部7の出力から、必要とする周波数の交流電圧を発生して前記サーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流すモータ駆動回路6」は、本願発明の「前記モータを駆動する電力変換部」に相当する。 (3)引用発明の「エンコーダ2」は、「角度信号」を「出力」するともに、「前記サーボモータ1の回転子である軸21の端部に」「連結されて」おり、「速度及び位置のフィードバック制御を行うための」ものであるから、サーボモータ1の回転子の位置(角度)を検出していることは明らかであり、本願発明の「位置検出部」に相当し、引用発明の「前記サーボモータ1の回転子である軸21の端部には、速度及び位置のフィードバック制御を行うための前記エンコーダ2が連結されている」という事項は、本願発明の「前記モータには、当該モータの回転子の位置を検出する位置検出部が設けられて」いるという事項に相当する。 (4)引用発明の「エンコーダ2から出力される角度信号」は、「位置のフィードバック制御」の「基に」なるものであり、前記(3)に示した事項も踏まえると、サーボモータ1の回転子の位置(角度)を示すフィードバック信号といえるから、本願発明の「前記モータの動作状態に対応する所定の物理量を示すフィードバック信号」に相当するともに、「前記モータの回転子の位置を示す第1フィードバック信号」に相当する。 また、引用発明の「位置決め制御部9」は、「エンコーダ2から出力される角度信号を基にして位置のフィードバック制御を行う」ものであり、前記第4 1(1)ウの図2の図示内容も踏まえると、エンコーダ2から出力される角度信号を取得しているといえるから、本願発明の「フィードバック信号取得部」に相当するともに、「第1フィードバック信号取得部」に相当する。 すると、引用発明の「エンコーダ2から出力される角度信号を基にして位置のフィードバック制御を行う位置決め制御部9」を備えるという事項は、本願発明の「前記モータの動作状態に対応する所定の物理量を示すフィードバック信号を取得するフィードバック信号取得部」を備え、「前記フィードバック信号には、前記モータの回転子の位置を示す第1フィードバック信号が含まれており、前記フィードバック信号取得部は、前記位置検出部から前記第1フィードバック信号を取得する第1フィードバック信号取得部を含」むという事項に相当する。 (5)引用発明の「外部のコントローラ5」は、引用文献1に従来の技術として記載された事項のコントローラ5(前記第4 1(1)アの段落【0003】参照。)と同様に、複数のサーボドライブユニット15を制御するものであることは明らかであるから、サーボドライブユニット15の上位装置あるいはマスタ装置ということができ、本願発明の「前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置」に相当する。 また、引用発明の「通信回路13」は、「外部のコントローラ5とCPU32の間で通信を行う」ものであるから、本願発明の「通信部」に相当し、引用発明の「外部のコントローラ5とCPU32の間で通信を行う通信回路13」は、本願発明の「前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信する通信部」に相当する。 (6)引用発明の「電流制御部8」は、「前記モータ駆動回路6をPWM制御する」ものであり、前記第4 1(1)ウの図2の図示内容も踏まえると、モータ駆動回路6をPWM制御するための信号を、モータ駆動回路6に出力しているといえ、該信号により、モータ駆動回路6にサーボモータ1を駆動制御させているといえるから、本願発明の「モータ駆動信号出力部」に相当し、引用発明の「前記モータ駆動回路6をPWM制御する電流制御部8」は、本願発明の「前記電力変換部に前記モータを駆動させるためのモータ駆動信号を当該電力変換部に出力するモータ駆動信号出力部」に相当する。 (7)引用発明の「位置決め制御部9」、「通信回路13」及び「電流制御部8」は、それらによる処理の結果として、前記(6)に示したように、「電流制御部8」から、モータ駆動回路6をPWM制御するための信号を、モータ駆動回路6に出力し、該信号により、モータ駆動回路6にサーボモータ1を駆動制御させているといえるから、モータ駆動回路6を介して、サーボモータ1を駆動制御しているといえる。すると、引用発明の「位置決め制御部9」、「通信回路13」及び「電流制御部8」を合わせたものは、本願発明の「制御部」に相当し、引用発明の「位置決め制御部9」、「通信回路13」及び「電流制御部8」を備えるという事項は、本願発明の「前記電力変換部を介して前記モータを制御する制御部と、を備えており、前記制御部は」、「フィードバック信号取得部と」、「通信部と」、「モータ駆動信号出力部と」を備えるという事項に相当する。 (8)引用発明の「インテリジェントパワーICとして1チップ化されて」いるという事項は、本願発明の「1つのIC(Integrated Circuit)チップによって実装されて」いるという事項に相当する。 そして、引用発明の「前記モータ駆動回路6、前記位置決め制御部9、前記通信回路13及び前記電流制御部8は、インテリジェントパワーICとして1チップ化されて」いるという事項は、1チップ化されたインテリジェントパワーICに、「位置決め制御部9」、「通信回路13」及び「電流制御部8」が実装されていることを意味するから、前記(7)に示した事項を踏まえると、本願発明の「前記制御部は、1つのIC(Integrated Circuit)チップによって実装されて」いるという事項に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「 モータを制御するモータ制御装置であって、 前記モータを駆動する電力変換部と、 前記電力変換部を介して前記モータを制御する制御部と、を備えており、 前記制御部は、 前記モータの動作状態に対応する所定の物理量を示すフィードバック信号を取得するフィードバック信号取得部と、 前記モータ制御装置に対する上位装置であるマスタ装置と通信する通信部と、 前記電力変換部に前記モータを駆動させるためのモータ駆動信号を当該電力変換部に出力するモータ駆動信号出力部と、を備えており、 前記制御部は、1つのIC(Integrated Circuit)チップによって実装されており、 前記モータには、当該モータの回転子の位置を検出する位置検出部が設けられており、 前記フィードバック信号には、前記モータの回転子の位置を示す第1フィードバック信号が含まれており、 前記フィードバック信号取得部は、前記位置検出部から前記第1フィードバック信号を取得する第1フィードバック信号取得部を含むモータ制御装置。」 <相違点> 本願発明は、「前記フィードバック信号には、前記電力変換部から前記モータに供給される電流を示す第2フィードバック信号が含まれており、前記フィードバック信号取得部は、前記第2フィードバック信号を取得する第2フィードバック信号取得部を含」み、該第2フィードバック信号取得部を含むフィードバック信号取得部を備えた制御部が1つのIC(Integrated Circuit)チップによって実装されているのに対し、引用発明は、サーボモータ1に供給される電流を示すフィードバック信号を取得するフィードバック信号取得部を備えているか明らかでなく、そのため、該フィードバック信号取得部が、1チップ化されたインテリジェントパワーICに設けられているかも明らかでない点。 2 判断 (1)<相違点>について 以下、前記<相違点>について検討する。 モータの制御装置において、モータの位置検出信号と、電力変換部からモータに供給される電流の検出信号とに基づいて、モータをフィードバック制御することは、例えば、引用文献2(前記第4 2(1)参照。)及び引用文献3(前記第4 3(1)参照。)に記載されているように、この出願の出願前から周知の事項である。また、所定の物理量を検出した信号をフィードバックするフィードバック制御を採用することにより、該フィードバック制御を採用せずオープンループ制御を採用したものに比べて、前記物理量を所望の値に制御しやすくなることは、制御技術一般における技術常識である。 そして、引用発明は、モータ駆動回路6により、サーボモータ1の電機子巻線に3相正弦波電流を流すものであり、また、位置決め制御部9とともに電流制御部8を備えるものであるから、電流制御部8において、モータ駆動回路6からサーボモータ1の電機子巻線に流れる3相正弦波電流が所望の値になるように制御するという課題が当然に内在するものである。 すると、引用発明において、前記3相正弦波電流を所望の値に制御するべく、前記技術常識を踏まえて、前記周知の事項を採用し、エンコーダ2から出力される角度信号を位置決め制御部9にフィードバックすることに加えて、モータ駆動回路6からサーボモータ1の電機子巻線に流れる3相正弦波電流の値を示す信号を電流制御部8にフィードバックすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 また、前記第4 1(1)イの段落【0016】の記載によると、引用発明は、小型、低価格を実現するために、「前記モータ駆動回路6、前記位置決め制御部9、前記通信回路13及び前記電流制御部8」を「インテリジェントパワーICとして1チップ化」していると解されるから、前記したように、3相正弦波電流の値を示す信号を電流制御部8にフィードバックするにあたり、該信号を取得する回路のみを1チップ化された該インテリジェントパワーICと別に設けることは考えにくく、該信号を利用し、1チップ化された該インテリジェントパワーICに備えられる電流制御部8において、該信号を取得するのが自然で、合理的であるから、少なくとも電流制御部8とともに1チップ化された該インテリジェントパワーICに設けられる何らかの回路により、該信号を取得することに格別の困難性はない。 そうすると、引用発明において、前記周知の事項を採用し、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)本願発明の作用効果について 本願発明の「モータ制御装置の性能を向上させることが可能になる。」(この出願の発明の詳細な説明の段落【0020】参照。)という作用効果は、性能を向上させるという漠然としたものであり、引用発明及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書の請求の理由の3.(c)において、「しかし、本願の出願時点においては、本願発明が有する「第1フィードバック信号取得部」および「第2フィードバック信号取得部」を、「モータ駆動信号出力部」とは別チップとすることが技術常識であった。」と主張し、当該技術常識が、引用文献1に記載された技術において、引用文献2及び引用文献3に記載されたような周知技術を参酌して、電流フィードバックループを設けて、電流フィードバック信号の取得部を、1チップ化されたインテリジェントパワーICに含めること妨げる「格別な事由」に該当する旨を主張している。 ここで、この出願の出願時点において、「第1フィードバック信号取得部」及び「第2フィードバック信号取得部」を、「モータ駆動信号出力部」とは別チップとすることが技術常識であったことを裏付ける根拠が何ら示されておらず、請求人が主張する前記の事項が技術常識であったかは明らかではないが、仮に、「第1フィードバック信号取得部」及び「第2フィードバック信号取得部」を、「モータ駆動信号出力部」とは別チップとすることが広く知られていたとしても、前記(1)に示したように、引用発明は、小型、低価格を実現するために、「前記モータ駆動回路6、前記位置決め制御部9、前記通信回路13及び前記電流制御部8」を「インテリジェントパワーICとして1チップ化」しているものであり、前記1(4)及び(6)に示した対比によると、少なくとも「第1フィードバック信号取得部」については、「モータ駆動信号出力部」と同じチップに設けているといえる。 したがって、小型、低価格を実現するといった目的によっては、請求人の主張する別チップとする点と異なる態様も取り得るものであり、前記別チップとする以外の態様を全く取り得ないというものではない。 そして、引用発明において、前記周知の事項を採用し、3相正弦波電流の値を示す信号を電流制御部8にフィードバックするにあたり、引用発明の小型、低価格を実現するという目的を踏まえれば、前記(1)に示したように、3相正弦波電流の値を示す信号を利用し、1チップ化されたインテリジェントパワーICに備えられる電流制御部8において、該信号を取得することや、少なくとも電流制御部8とともに1チップ化されたインテリジェントパワーICに設けられる何らかの回路により、該信号を取得することは、当業者にとって容易に想到できた事項であって、請求人が主張する点はそれを妨げるほどの事情ではない。 したがって、請求人の前記主張は採用することができない。 イ 請求人は、審判請求書の請求の理由の3.(c)において、「本願発明は、・・・異なる2箇所から2つの信号を1つのICチップで取得することで、制御部の処理を高速化することが可能となるという格別な作用効果を奏するものである。」と主張している。 しかしながら、1つのICチップ内で処理が行われる場合、外部の装置との通信に要する時間がないために、その分だけ処理が高速化されるという作用効果は、当業者であれば、当然認識し得る程度のものであり、前記(1)に示したように、引用発明において、前記周知の事項を採用した際、当業者が予測できない顕著な作用効果であるとはいえない。 したがって、請求人の前記主張は採用することができない。 3 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そうすると、この出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-003671

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