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特許拒絶査定不服審判

2021-014210

電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置

審判番号
2021-014210
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-503386
請求日
2021年10月20日
審決日
2022年08月08日
公報発行日
2022年11月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本電産株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 芳枝
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 熊谷 健治
分類
P18 .121-Z (H02P) / P18 .575-Z (H02P)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-503386「電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 8日国際公開、WO2017/150640〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願は、2017年(平成29年)3月1日(優先権主張 2016年(平成28年)3月4日)を国際出願日とする出願であって、平成30年9月3日に手続補正がされ、令和3年2月9日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年4月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和3年7月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和3年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 令和3年10月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年10月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、 前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、 前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータと、 前記第1インバータとグランド、前記第2インバータと前記グランドを電気的に接続可能なグランド側切替回路と、 前記第1インバータと前記電源、前記第2インバータと前記電源を電気的に接続可能な電源側切替回路と、を備え、 前記第1インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記第2インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記グランド側切替回路は、 前記第1インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第1スイッチ素子および該第1スイッチ素子と並列に接続された第1保護回路と、 前記第2インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第2スイッチ素子および該第2スイッチ素子と並列に接続された第2保護回路と、を有し、 前記電源側切替回路は、前記第1インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子および該第3スイッチ素子と並列に接続された第3保護回路と、 前記第2インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子および該第4スイッチ素子と並列に接続された第4保護回路と、を有する、電力変換装置。 【請求項2】 前記第1および第2保護回路の各々はダイオードを備える、請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項3】 前記第1および第2保護回路の各々はRC回路を備える、請求項1または2に記載の電力変換装置。 【請求項4】 前記第1および第2保護回路の各々は、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項5】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、ダイオードを備える、請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項6】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、RC回路を備える、請求項1または6に記載の電力変換装置。 【請求項7】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項1から6のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項8】 前記第1から第4保護回路の各々は、ダイオードを備える、請求項5に記載の電力変換装置。 【請求項9】 前記第1から第4保護回路の各々は、RC回路を備える、請求項6に記載の電力変換装置。 【請求項10】 前記第1から第4保護回路の各々は、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項7に記載の電力変換装置。 【請求項11】 前記第1インバータが異常のとき、前記第3スイッチ素子は、前記第1インバータと前記電源との接続を遮断する、請求項1から10のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項12】 前記第1インバータが異常のとき、前記第1スイッチ素子は、前記第1インバータと前記グランドとの接続を遮断する、請求項1から11のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項13】 前記第1インバータが異常のとき、前記第1インバータにおいて前記各相の巻線の中性点が構成される、請求項11または12に記載の電力変換装置。 【請求項14】 前記モータと、請求項1から13のいずれかに記載の電力変換装置と、前記電力変換装置を制御する制御回路と、を備えるモータ駆動ユニット。 【請求項15】 請求項14に記載のモータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和3年4月15日に手続補正がされた特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、 前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、 前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータと、 前記第1インバータとグランド、または前記第2インバータと前記グランドを電気的に接続可能な切替回路と、を備え、 前記第1インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記第2インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記切替回路は、 前記第1インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第1スイッチ素子および該第1スイッチ素子と並列に接続された第1保護回路と、 前記第2インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第2スイッチ素子および該第2スイッチ素子と並列に接続された第2保護回路と、 の少なくとも1つを有する、電力変換装置。 【請求項2】 前記第1および第2保護回路の各々はダイオードを備える、請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項3】 前記第1および第2保護回路の各々はRC回路を備える、請求項1または2に記載の電力変換装置。 【請求項4】 前記第1および第2保護回路の各々は、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項5】 前記切替回路は、前記第1スイッチ素子および前記第1保護回路と、前記第1インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子および該第3スイッチ素子と並列に接続された第3保護回路と、を有する、請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項6】 前記切替回路は、前記第1および第2スイッチ素子を有する、請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項7】 前記切替回路は、前記第1インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子および該第3スイッチ素子と並列に接続された第3保護回路と、前記第2インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子および該第4スイッチ素子と並列に接続された第4保護回路と、をさらに有する、請求項6に記載の電力変換装置。 【請求項8】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、ダイオードを備える、請求項7に記載の電力変換装置。 【請求項9】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、RC回路を備える、請求項7または8に記載の電力変換装置。 【請求項10】 前記第1から第4保護回路の少なくとも1つは、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項7から9のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項11】 前記第1から第4保護回路の各々は、ダイオードを備える、請求項8に記載の電力変換装置。 【請求項12】 前記第1から第4保護回路の各々は、RC回路を備える、請求項9に記載の電力変換装置。 【請求項13】 前記第1から第4保護回路の各々は、1個の抵抗素子、または、直列若しくは並列に接続された複数の抵抗素子を備える、請求項10に記載の電力変換装置。 【請求項14】 前記第1インバータが異常のとき、前記第3スイッチ素子は、前記第1インバータと前記電源との接続を遮断する、請求項7から13のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項15】 前記第1インバータが異常のとき、前記第1スイッチ素子は、前記第1インバータと前記グランドとの接続を遮断する、請求項7から14のいずれかに記載の電力変換装置。 【請求項16】 前記第1インバータが異常のとき、前記第1インバータにおいて前記各相の巻線の中性点が構成される、請求項14または15に記載の電力変換装置。 【請求項17】 前記モータと、 請求項1から16のいずれかに記載の電力変換装置と、前記電力変換装置を制御する制御回路と、を備えるモータ駆動ユニット。 【請求項18】 請求項17に記載のモータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「切替回路」について、第1インバータとグランド、第2インバータとグランドを電気的に接続可能な切替回路を「グランド側切替回路」と限定し、第1インバータと電源、第2インバータと電源を電気的に接続可能な切替回路を「電源側切替回路」と限定し、本件補正後の請求項1の記載とする補正を含むものであって、本件補正前の請求項7に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(1)の請求項1に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載及び引用発明 ア.引用文献1 (ア)引用文献1の記載 原査定(令和3年7月9日付け拒絶査定)の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2006-149153号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。 a.「【0009】 実施の形態1. 図1に本発明の実施の形態1によるモータ制御装置のシステム構成図を示している。本システムは、例えば自動車の停止時自動的にエンジンをストップし、発進時自動的にエンジンを動作させる、いわゆるアイドルストップ/スタートを実現するための電動機としての機能を持つ他、従来の自動車用発電機(オルタネータ)としての機能も併せ有する電動発電機として構成されている。本発明のモータ制御装置は、固定子巻線1A、1B、1Cを備えるモータ1、モータ1を駆動するためのインバータ回路2およびインバータ回路3、2つのインバータ回路2、3の動作を制御するゲート信号を形成する制御回路4、モータの駆動電源および発電エネルギーの回生を行うためのバッテリ5から構成されている。上記3相のモータ巻線1A、1B、1Cはそれぞれの両端を開放状態、すなわちΔ結線あるいはY結線しないで巻線両端をモータから取り出した構造とし、各相巻線の一方の端部端子をインバータ回路2の出力端子にそれぞれ接続し、もう一方の端部端子をインバータ回路3の出力端子にそれぞれ接続している。 【0010】 モータ1は、界磁巻線、界磁巻線の電流制御用の駆動回路は図示していないが、界磁電流により回転子の発生磁束を制御し、発電電力を自由に制御することができる3相交流モータである。モータ巻線1A、1B、1Cの両端は、前述したようにモータ外部に取り出され、巻線1Aの一方の端は、インバータ回路2の出力端子2Uに接続され、もう一方の端はインバータ回路3の出力端子3Vに接続されている。同様に、モータ巻線1Bの一方の端はインバータ回路2の出力端子2Vに、もう一方はインバータ回路3の出力端子3Wに接続され、モータ巻線1Cの一方の端はインバータ回路2の出力端子2Wに、もう一方はインバータ回路3の出力端子3Uに接続されている。 【0011】 インバータ回路2は、2つのスイッチング素子(例えばUA1、UB1)を直列に構成したものを1ブロックとして、3ブロック並列に接続したもので構成されている。1つのスイッチング素子UA1は、並列に接続されたMOSFET21とダイオード22とで構成されている(全てのスイッチング素子についても同様)。上記並列に接続されたダイオード22は、MOSFET21の内部に形成される寄生ダイオードを利用して形成してもよい。1つのスイッチングブロックにおいて、各2つのスイッチング素子の接続部u2、v2、w2とインバータ回路2の各出力端子2U、2V、2Wがそれぞれ接続され、残りの2つの端子x1、y1はそれぞれエネルギー蓄積源であるバッテリ5の+側、-側に接続されている。インバータ回路2を構成する6つのスイッチング素子UA1、UB1、VA1、VB1、WA1、WB1はそれぞれ制御端子cを有し、制御回路4で形成された制御信号42が入力され、インバータ回路2のスイッチング動作を行う。 【0012】 インバータ回路3も同様に、3つのスイッチングブロックから構成され、1ブロックを構成する2つのスイッチング素子の接続部u3、v3、w3とインバータ回路3の各出力端子3V、3W、3Uがそれぞれ接続され、各ブロックの入力端子x2、y2はそれぞれバッテリ5の+側、-側に接続されている。また、制御回路4で形成された制御信号43により、インバータ回路3を構成する6つのスイッチング素子UA2、UB2、VA2、VB2、WA2、WB2がコントロールされている。 次に、力行(モータ駆動アイドルスタート)時と発電時に分けて、この制御装置の動作を説明する。」 b.図1には、次の事項が図示されている。 [図:0001390282000001.jpg] (イ)引用文献1に記載された事項 前記(ア)aの記載及び前記(ア)bの図示内容によると、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる。 「インバータ回路2の端子y1及びインバータ回路3の端子y2をバッテリ5の-側に接続されたグランドに接続している点。」 イ.引用文献2 (ア)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、特許第5797751号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a.「【0050】 図1は、本発明の実施形態による電圧インバータを示す。この電圧インバータは、1つはDC電圧源11であってもう1つは三相交流負荷1である、電気エネルギーの2つの供給源の間で交換される電気エネルギーを変調するように設計された三相インバータである。このようなインバータは、電力において双方向性であってもよい。 【0051】 負荷1は、それぞれ3つの相2、3、および4からなる。負荷1は好ましくは永久磁石同期モータである。」 b.「【0052】 各相は、それぞれ第一端子5、6、および7、ならびにそれぞれ第二端子8、9、および10を有する。 【0053】 電圧インバータはまた、第一セル12および第二セル13も含む。各セル12、13は、それぞれ3つの枝路14、15、16、および17、18、19を有する。各セルの3つの枝路は、互いに並列に接続されている。 【0054】 各枝路は、2つの切替手段Q1/Q4、Q2/Q5、Q3/Q6、Q7/Q10、Q8/Q11、Q9/Q12を含む。同じ枝路上の2つの切替手段は直列に接続されている。中間点20、21、22、23、24、25は、同じ枝路の2つの切替手段の間に位置している。 【0055】 各切替手段は、通電状態または遮断状態に置かれてもよい。 【0056】 各切替手段は好ましくは、静止スイッチTおよび逆並列のダイオードDからなる。静止スイッチは好ましくは、たとえばIGBTタイプ(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)またはサイリスタなどの、トランジスタである。 【0057】 各相の各第一端子5、6、7は、それぞれ第一セル20、21、22の唯一の中間点に接続されている。 【0058】 各相の各第二端子8、9、10は、それぞれ第二セル23、24、25の唯一の中間点に接続されている。 【0059】 こうして各相2、3、4は、第一セルの枝路のうちの1つおよび第二セルの枝路のうちの1つとともに、Hブリッジを形成する。」 c.「【0060】 第一セル12は、第一電気的分離手段Q13を通じて電圧源11の正端子に接続されている。第一セル12は、第二電気的分離手段Q14を通じて電圧源11の負端子に接続されている。 【0061】 第二セル13は、第三電気的分離手段Q15を通じて電圧源11の正端子に接続されている。第二セル13は、第四電気的分離手段Q16を通じて電圧源の負端子に接続されている。」 d.「【0066】 先に記載された電圧インバータは、故障がない場合には、2つの通常動作モードで機能してもよい。 【0067】 図6に示される、第一通常動作モードによれば、セルのうちの1つ、第一セルまたは第二セルのいずれかは、インバータが他方のセルを用いて先行技術のインバータと同じように機能している間、中性点を作り出す。 【0068】 以下の文において、我々は、中性点は第二セル13によって形成されると仮定するが、しかしながら双方のセルが完全に同一であるので、中性点が第一セルによって形成されても同じことが言えるだろう。 【0069】 この場合、第二セル13を電圧源11に接続する2つの電気的分離手段Q15およびQ16は、第二セル13が電圧源11から切り離されるように、遮断状態に置かれる。また、第二セル13の切替手段Q7およびQ12は、3つの負荷相2、3、4が接続される中性点を第二セル13が形成するような状態にある。 【0070】 このため、上部切替手段Q7、Q8、Q9は、下部切替手段Q10、Q11、Q12が通電状態にある間は遮断状態に置かれ、その逆もまた同様である。 【0071】 第一セル12は、先行技術のインバータと同じように機能する。このため好適な実施形態によれば、同じ枝路の切替手段は、一方は遮断状態で他方は通電状態の、相対する状態にある。 【0072】 図7に示される、第二通常動作モードによれば、電圧インバータは中性点を用いずに動作する。この場合、4つの電気的分離手段Q13、Q14、Q15、Q16は通電状態にある。 【0073】 また、各相は、同じ枝路の2つの切替手段が、一方は通電状態であって他方は遮断状態である、相対する状態にある、Hブリッジを形成するために、それが接続されている2つの枝路と協働する。 【0074】 したがって、相2は枝路14および19とともに第一Hブリッジを形成する。相3は枝路15および18とともに第二Hブリッジを形成する。相4は枝路16および17とともに第三Hブリッジを形成する。 【0075】 加えて、第一セルの枝路の上部切替手段が通電状態にあるとき、同じHブリッジに属する第二セルの枝路の下部切替手段もまた通電状態にある。 【0076】 したがって、切替手段Q1およびQ12が通電状態にあるとき、切替手段Q4およびQ9は遮断状態にあり、逆もまた同様である。 【0077】 同様に、切替手段Q2およびQ11が通電状態にあるとき、切替手段Q5およびQ8は遮断状態にあり、逆もまた同様である。 【0078】 同様に、切替手段Q3およびQ10が通電状態にあるとき、切替手段Q6およびQ7は遮断状態にあり、逆もまた同様である。 【0079】 中性点を用いないこの通常動作モードは、各相の端子において電圧の極性が反転され得るようにし、そうすると電圧インバータはより大きい電圧範囲で動作することができるので、特に有利である。このため、この動作モードによれば、電圧範囲は先の動作モードで記載された第一通常動作モードによる範囲の2倍の大きさとなり、すなわち電圧範囲は電圧源11の電圧範囲の2倍に等しくなる。」 e.「【0080】 図2は、故障の場合、より具体的には切替手段Q10における短絡回路の場合の、図1の構成を示す。 【0081】 この場合、短絡回路が発生した、切替手段Q10と同じセル13に属し、短絡回路の切替手段Q10に接続された、ほかの2つの切替手段、すなわちQ11およびQ12は、閉鎖している(つまり通電状態にある)。 【0082】 短絡回路が発生した、切替手段Q10と同じセル13に属し、短絡回路の切替手段と反対の切替手段、すなわちQ7、Q8、Q9は、開放している(つまり遮断状態にある)。 【0083】 短絡回路において、切替手段Q10が属するセル13に接続する、電気的絶縁手段Q15、Q16は、切替手段Q10が属するセル13が電圧源11から電気的に分離されるように、遮断状態に置かれる。 【0084】 このように、故障した切替手段が属するセル13は、負荷1の3つの相2、3、4が接続される中性点を形成する。すると本発明によるインバータは、セルのうちの1つにおける短絡回路の存在にもかかわらず、負荷の3つの相を用いて機能し続けてもよく、したがって切替手段のうちの1つにおける短絡回路の存在にもかかわらず、電力の損失がない。 【0085】 この場合、他方のセル、この例では第一セル12は、正常に機能し続け、すなわち同じ枝路の2つの切替手段は、一方は遮断状態であって他方は通電状態である、相対する状態にある。」 f.「【0086】 図3は、切替手段のうちの1つ、この例では切替手段Q10の開回路の場合の、図1のインバータを示す。 【0087】 この場合、開回路が発生した、切替手段Q10と同じセル13に属し、開回路の切替手段Q10に接続された切替手段、すなわちQ11およびQ12は、遮断状態に置かれる。 【0088】 開回路が発生した、切替手段Q10と同じセル13に属し、開回路の切替手段Q10と反対の切替手段、すなわちQ7、Q8、Q9は、通電状態に置かれる。 【0089】 開回路の切替手段が属するセル13を電圧源11に接続する、電気的絶縁手段Q15およびQ16は、セル13が電圧源から切り離されるように、遮断状態に置かれる。 【0090】 これは、図2の例のように、故障した切替手段Q10が属するセルは、故障した切替手段を用いて中性点に変換される。 【0091】 別のセル12は、正常に機能し続ける。」 g.図1には、次の事項が図示されている。 [図:0001390282000002.jpg] h.前記aの記載によると、三相交流負荷1は、3つの相2、3、4からなる永久磁石同期モータであり、電圧インバータは、DC電圧源11と、該永久磁石同期モータの間で交換される電気エネルギーを変調するように設計されているといえる。 i.前記bの段落【0057】には、「各相の各第一端子5、6、7は、それぞれ第一セル20、21、22の唯一の中間点に接続されている。」と記載され、同じく段落【0058】には、「各相の各第二端子8、9、10は、それぞれ第二セル23、24、25の唯一の中間点に接続されている。」と記載されているが、前記bの段落【0053】、【0054】、及び前記gの図示内容によると、第一セルを示す図面の参照番号は「12」、第二セルを示す図面の参照番号は「13」であり、同様に第一セル12の中間点を示す図面の参照番号は「20、21、22」、第二セル13の中間点を示す図面の参照番号は「23、24、25」であることが明らかである。したがって、前記bの記載及び前記gの図示内容によると、電圧インバータは、永久磁石同期モータの3つの相2、3、4の各第一端子5、6、7が、それぞれ中間点20、21、22に接続される第一セル12と、3つの相2、3、4の各第二端子8、9、10が、それぞれ中間点23、24、25に接続される第二セル13を備えているといえる。 j.前記cの記載によると、第二電気的分離手段Q14は、第一セル12とDC電圧源11の負端子に接続され、第四電気的分離手段Q16は、第二セル13とDC電圧源11の負端子に接続され、第一電気的分離手段Q13は、第一セル12とDC電圧源11の正端子に接続され、第三電気的分離手段Q15は、第二セル13とDC電圧源11の正端子に接続されているといえる。 k.前記dの記載によると、第二セル13は、上部切替手段Q7、Q8、Q9および下部切替手段Q10、Q11、Q12を有しているといえ、同様に第一セル12は、上部切替手段Q1、Q2、Q3および下部切替手段Q4、Q5、Q6を有しているといえる。また、前記dの記載及び前記gの図示内容によると、第二電気的分離手段Q14は、第一セル12の下部切替手段Q4、Q5、Q6とDC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にしているといえ、同様に、第四電気的分離手段Q16は、第二セル13の下部切替手段Q10、Q11、Q12とDC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にし、第一電気的分離手段Q13は、第一セル12の上部切替手段Q1、Q2、Q3とDC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にし、第三電気的分離手段Q15は、第二セル13の上部切替手段Q7、Q8、Q9とDC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にしているといえる。 (イ)引用発明 前記(ア)a~k及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「DC電圧源11と、3つの相2、3、4からなる永久磁石同期モータの間で交換される電気エネルギーを変調するように設計されている電圧インバータであって、 前記永久磁石同期モータの前記3つの相2、3、4の各第一端子5、6、7が、それぞれ中間点20、21、22に接続される第一セル12と、 前記3つの相2、3、4の各第二端子8、9、10が、それぞれ中間点23、24、25に接続される第二セル13と、 前記第一セル12と前記DC電圧源11の負端子に接続されている第二電気的分離手段Q14と、前記第二セル13と前記DC電圧源11の負端子に接続されている第四電気的分離手段Q16と、 前記第一セル12と前記DC電圧源11の正端子に接続されている第一電気的分離手段Q13と、前記第二セル13と前記DC電圧源11の正端子に接続されている第三電気的分離手段Q15と、を備え、 前記第一セル12は、上部切替手段Q1、Q2、Q3および下部切替手段Q4、Q5、Q6を有し、 前記第二セル13は、上部切替手段Q7、Q8、Q9および下部切替手段Q10、Q11、Q12を有し、 前記第一セル12の前記下部切替手段Q4、Q5、Q6と前記DC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第二電気的分離手段Q14と、 前記第二セル13の前記下部切替手段Q10、Q11、Q12と前記DC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第四電気的分離手段Q16と、を有し、 前記第一セル12の前記上部切替手段Q1、Q2、Q3と前記DC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第一電気的分離手段Q13と、 前記第二セル13の前記上部切替手段Q7、Q8、Q9と前記DC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第三電気的分離手段Q15と、を有する、電圧インバータ。」 ウ.引用文献3 (ア)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2014-68428号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a.「【0032】 実施の形態2. 図3は、本発明の実施の形態2による電力変換装置の構成を示す回路図である。図2において、図1と同一符号は同一または相当する部分を示す。以下では図1との相違点のみを説明する。図2における図1との相違点は、DC/DCコンバータ4の出力端子間、すなわち半導体スイッチ6のドレイン端子と半導体スイッチ8のソース端子の間に、抵抗29とコンデンサ30の直列接続で構成されるスナバ回路28を接続したことにある。 【0033】 本発明の回路構成においては、DC/DCコンバータの半導体スイッチは比較的高周波でスイッチングすることになるため、スイッチング損失も増加してしまう。半導体スイッチにおけるスイッチング損失は、オン-オフ時の過渡状態における電流と電圧の積である。スイッチング損失を低減するためには過渡時間をできるだけ短くすればよく、すなわち、スイッチング速度を向上させるハードスイッチングを行う手法が挙げられる。実施の形態1の構成においては、半導体スイッチとしてSiC-MOSFETを用いるためIGBTを用いた場合と比較してスイッチング速度を向上させることが可能となる。 【0034】 スイッチング速度が速い場合、回路における寄生インダクタンスによって、スイッチング時にSiC-MOSFETに印可されるサージ電圧は大きくなり、発生する電磁ノイズが増大したり、SiC-MOSFETの耐電圧を超過して破壊したりしてしまうため、サージ電圧抑制の対策を行う。そこで、サージ電圧抑制のためのスナバ回路28を付加した。 【0035】 ここで、スナバ回路の動作について説明する。図4と図5は、説明のためDC/DCコンバータの回路の一部を模式的に示すものである。図4はスナバ回路を接続しない、実施の形態1の場合である。半導体スイッチ6と8には、等価的に並列接続された寄生キャパシタンス61および81が存在する。また、回路の配線には寄生インダクタンス50、51が存在する。半導体スイッチ6または8がスイッチングを行うと、図4の太い矢印で示す共振ループが形成されて半導体スイッチ6と8にサージ電圧が生じる。サージ電圧の大きさは寄生インダクタンス50、51が蓄積するエネルギーに依存する。 【0036】 次に、図5に示すスナバ回路28を接続した構成では、太い矢印で示すように、共振ループはスナバ回路でバイパスされて、共振ループに含まれる寄生インダクタンスは、図4の共振ループにおける寄生インダクタンス50および51から、寄生インダクタンス50だけに低減する。共振ループに含まれる寄生インダクタンス50を小さくするためには、スナバ回路は半導体スイッチのできるだけ直近に接続することが望ましい。また、スナバ回路28を構成する抵抗29によって、共振エネルギーが消費されてサージ電圧を抑制することが可能となる。 【0037】 このような構成において、スナバ回路28はサージ電圧を誘起する、回路の寄生インダクタンスを低下させるとともに、寄生インダクタンスに蓄積されるエネルギーを吸収する。これにより、SiC-MOSFETをハードスイッチングしてオン-オフ時の過渡時間を低減し、スイッチング損失を低減するとともに、電磁ノイズの低減やサージ電圧による過電圧破壊から半導体スイッチであるSiC-MOSFETを保護する効果がある。 【0038】 このように、半導体スイッチ6のドレイン端子と半導体スイッチ8のソース端子の間にスナバ回路28を接続することで、DC/DCコンバータ4のキャリア周波数が高くなっても、半導体スイッチであるSiC-MOSFETの損失、電磁ノイズの増加を抑制し、SiC-MOSFETの過電圧破壊から保護して信頼性を向上させることができる。このため、DC/DCコンバータ4とインバータ11を協調して制御する場合に、DC/DCコンバータ4のキャリア周波数を向上させることができる電力変換装置を得ることができる。 【0039】 また、以上では、スナバ回路は抵抗とコンデンサの直列構成を例に用いて説明したが、スナバ回路はこれに限定するものではなく、同様の効果が得られる抵抗、コンデンサ、ダイオードなどを組み合わせた構成にすることができることは言うまでもない。 【0040】 図6は、本発明の実施の形態2による電力変換装置の別の構成を示す回路図である。図6において図3と同一符号は同一または相当する部分を示す。図3では、スナバ回路がDCリンクコンデンサ10と並列接続になるように接続する構成を例に説明したが、図6に示すように、半導体スイッチ6と並列に抵抗291とコンデンサ301の直列接続で構成されるスナバ回路281を、半導体スイッチ8と並列に抵抗292とコンデンサ302の直列接続で構成されるスナバ回路282を、接続しても良く、図3の構成と同様の効果を奏する。」 b.図6には、次の事項が図示されている。 [図:0001390282000003.jpg] (イ)引用文献3に記載された事項 前記(ア)aの記載及び前記(ア)bの図示内容によると、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。 「サージ電圧による過電圧破壊から半導体スイッチを保護するために、半導体スイッチと並列に抵抗とコンデンサの直列接続で構成されるスナバ回路を接続する点。」 (3)対比 以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「DC電圧源11」及び「永久磁石同期モータ」は、それぞれ本件補正発明の「電源」及び「モータ」に相当する。また、引用発明の「3つの相2、3、4」は、引用文献2の図1の図示内容(前記(2)イ(ア)g参照。)を考慮すると、3相の巻線を意味していることは明らかであり、本件補正発明の「n相(nは3以上の整数)の巻線」に相当する。さらに、引用発明の「電圧インバータ」は、DC電圧源11と永久磁石同期モータの間で交換される電気エネルギーを変調するものであって、DC電圧源11の電力の変換も行っており、該変換された電力を永久磁石同期モータに供給していることは明らかであるから、本件補正発明の「電力変換装置」に相当する。すると、引用発明の「DC電圧源11と、3つの相2、3、4からなる永久磁石同期モータの間で交換される電気エネルギーを変調するように設計されている電圧インバータ」は、本件補正発明の「電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置」に相当する。 引用発明の「前記3つの相2、3、4の各第一端子5、6、7」及び「第一セル12」は、それぞれ本件補正発明の「各相の巻線の一端」及び「第1インバータ」に相当し、引用発明の「前記永久磁石同期モータの前記3つの相2、3、4の各第一端子5、6、7が、それぞれ中間点20、21、22に接続される第一セル12」は、本件補正発明の「前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータ」に相当する。 引用発明の「前記3つの相2、3、4の各第二端子8、9、10」及び「第二セル13」は、それぞれ本件補正発明の「各相の巻線の他端」及び「第2インバータ」に相当し、引用発明の「前記3つの相2、3、4の各第二端子8、9、10が、それぞれ中間点23、24、25に接続される第二セル13」は、本件補正発明の「前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータ」に相当する。 引用発明の「第二電気的分離手段Q14」及び「第四電気的分離手段Q16」は、それぞれ第一セル12又は第二セル13とDC電圧源11の負端子とを接続するものであり、第一セル12又は第二セル13と低電位側を接続するものであるから、低電位側の切替回路であるといえる。すると、引用発明の「前記第一セル12と前記DC電圧源11の負端子に接続されている第二電気的分離手段Q14と、前記第二セル13と前記DC電圧源11の負端子に接続されている第四電気的分離手段Q16と」を備えるという事項と、本件補正発明の「前記第1インバータとグランド、前記第2インバータと前記グランドを電気的に接続可能なグランド側切替回路」を備えるという事項とは、第1インバータと低電位側、第2インバータと低電位側を電気的に接続可能な低電位側切替回路を備える点において共通する。 引用発明の「第一電気的分離手段Q13」及び「第三電気的分離手段Q15」は、それぞれ第一セル12又は第二セル13とDC電圧源11の正端子とを接続するものであり、第一セル12又は第二セル13と電源を接続するものであるから、電源側の切替回路であるといえる。すると、引用発明の「前記第一セル12と前記DC電圧源11の正端子に接続されている第一電気的分離手段Q13と、前記第二セル13と前記DC電圧源11の正端子に接続されている第三電気的分離手段Q15と」を備えるという事項は、本件補正発明の「前記第1インバータと前記電源、前記第2インバータと前記電源を電気的に接続可能な電源側切替回路」を備えるという事項に相当する。 引用発明の第一セル12の「上部切替手段Q1、Q2、Q3」及び「下部切替手段Q4、Q5、Q6」は、それぞれ本件補正発明の第1インバータの「ハイサイドスイッチング素子」及び「ローサイドスイッチング素子」に相当し、引用発明の第二セル13の「上部切替手段Q7、Q8、Q9」及び「下部切替手段Q10、Q11、Q12」は、それぞれ本件補正発明の第2インバータの「ハイサイドスイッチング素子」及び「ローサイドスイッチング素子」に相当する。 引用発明の「第二電気的分離手段Q14」及び「第四電気的分離手段Q16」は、前記したように、低電位側の切替回路であるといえ、それぞれ本件補正発明の「第1スイッチ素子」及び「第2スイッチ素子」に対応するものである。また、引用発明の「通電状態又は遮断状態にする」という事項は、本件補正発明の「接続・非接続を切替える」という事項に相当する。すると、引用発明の「前記第一セル12の前記下部切替手段Q4、Q5、Q6と前記DC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第二電気的分離手段Q14と、前記第二セル13の前記下部切替手段Q10、Q11、Q12と前記DC電圧源11の負端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第四電気的分離手段Q16と、を有」するという事項と、本件補正発明の「前記グランド側切替回路は、前記第1インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第1スイッチ素子および該第1スイッチ素子と並列に接続された第1保護回路と、前記第2インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードとグランドとの接続・非接続を切替える第2スイッチ素子および該第2スイッチ素子と並列に接続された第2保護回路と、を有」するという事項とは、低電位側切替回路は、第1インバータのローサイドスイッチング素子側のノードと低電位側との接続・非接続を切替える第1スイッチ素子と、第2インバータのローサイドスイッチング素子側のノードと低電位側との接続・非接続を切替える第2スイッチ素子と、を有する点において共通する。 引用発明の「第一電気的分離手段Q13」及び「第三電気的分離手段Q15」は、前記したように、電源側の切替回路であるといえ、それぞれ本件補正発明の「第3スイッチ素子」及び「第4スイッチ素子」に相当する。すると、引用発明の「前記第一セル12の前記上部切替手段Q1、Q2、Q3と前記DC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第一電気的分離手段Q13と、前記第二セル13の前記上部切替手段Q7、Q8、Q9と前記DC電圧源11の正端子とを通電状態又は遮断状態にする前記第三電気的分離手段Q15と、を有」するという事項と、本件補正発明の「前記電源側切替回路は、前記第1インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子および該第3スイッチ素子と並列に接続された第3保護回路と、前記第2インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子および該第4スイッチ素子と並列に接続された第4保護回路と、を有」するという事項とは、電源側切替回路は、第1インバータのハイサイドスイッチング素子側のノードと電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子と、第2インバータのハイサイドスイッチング素子側のノードと電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子と、を有する点において共通する。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、 「電源からの電力を、n相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置であって、 前記モータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、 前記各相の巻線の他端に接続される第2インバータと、 前記第1インバータと低電位側、前記第2インバータと前記低電位側を電気的に接続可能な低電位側切替回路と、 前記第1インバータと前記電源、前記第2インバータと前記電源を電気的に接続可能な電源側切替回路と、を備え、 前記第1インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記第2インバータは、ハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子を有し、 前記低電位側切替回路は、 前記第1インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードと低電位側との接続・非接続を切替える第1スイッチ素子と、 前記第2インバータの前記ローサイドスイッチング素子側のノードと低電位側との接続・非接続を切替える第2スイッチ素子と、を有し、 前記電源側切替回路は、前記第1インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第3スイッチ素子と、 前記第2インバータの前記ハイサイドスイッチング素子側のノードと前記電源との接続・非接続を切替える第4スイッチ素子と、を有する、電力変換装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 低電位側について、本件補正発明は、「グランド」であるのに対し、引用発明は、「DC電圧源11の負端子」である点。 [相違点2] 本件補正発明は、「該第1スイッチ素子と並列に接続された第1保護回路」、「該第2スイッチ素子と並列に接続された第2保護回路」、「該第3スイッチ素子と並列に接続された第3保護回路」及び「該第4スイッチ素子と並列に接続された第4保護回路」を有するのに対し、引用発明は、「第二電気的分離手段Q14」、「第四電気的分離手段Q16」、「第一電気的分離手段Q13」及び「第三電気的分離手段Q15」と並列に接続された保護回路を備えているか明確でない点。 (4)判断 ア.相違点の検討 (ア)相違点1について 引用発明の第二電気的分離手段Q14及び第四電気的分離手段Q16は、それぞれ第一セル12又は第二セル13と、DC電圧源11の負端子とを接続するものであるが、インバータの低電位側をグランドに接続することは、例えば、引用文献1(前記(2)ア(イ)参照。)に記載されているように、この出願の優先日前から慣用されている技術である。 そうすると、引用発明の第二電気的分離手段Q14及び第四電気的分離手段Q16について、前記慣用されている技術にならい、DC電圧源11の負端子への接続とともにグランドへの接続も行い、本件補正発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (イ)相違点2について 前記(2)ウ(イ)の引用文献3に記載された事項の他、特開2000-92817号公報(段落【0002】、【0003】、図15(b)等参照。)、特開2010-51126号公報(段落【0002】、【0003】、図18等参照。)、特開2014-241725号公報(段落【0042】~【0045】、図23等参照。)等にも記載されているように、サージ電圧による過電圧破壊から半導体スイッチを保護するために、半導体スイッチと並列にスナバ回路を接続することは、この出願の優先日前から周知の事項である。 そして、引用発明の「第二電気的分離手段Q14」、「第四電気的分離手段Q16」、「第一電気的分離手段Q13」及び「第三電気的分離手段Q15」において、特に通電状態から遮断状態とする際、配線のインダクタンス等の影響により、サージ電圧が生じることは明らかであり、これらの電気的分離手段を該サージ電圧による過電圧破壊から保護するべく、前記周知の事項にならい、該電気的分離手段と並列にスナバ回路を設け、本件補正発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ.請求人の主張について (ア)審判請求人は、令和3年10月20日に提出された審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由(4)本願発明と引用文献との対比 d)」において、「引用文献2には、インバータを構成する切替手段のうちの1つにおける故障の場合に、故障した切替手段が属するセルの他方の切替手段は、故障した切替手段が属するセルが、すべての負荷相が接続される中性点を形成するように、制御されることは開示されていますが、インバータ内に残存していた零相電流については開示されておらず、その示唆もありません。さらに、2つのインバータ回路2、3のうち一方のインバータ回路が故障した場合、片側のインバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流を、保護回路を通して外部に逃がすことについては開示されておらず、その示唆もありません。」と主張している。 しかしながら、引用文献2の前記(2)イ(ア)e及びfの記載によると、故障した切替手段が属する第一セル12又は第二セル13は、3つの相2、3、4が接続される中性点を形成し、この時、第一電気的分離手段Q13及び第二電気的分離手段Q14、又は第三電気的分離手段Q15及び第四電気的分離手段Q16は、故障した切替手段が属する第一セル12又は第二セル13をDC電圧源11から電気的に分離するように遮断状態に置かれることが把握できるから、引用発明においても、審判請求人が主張する「インバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流」は生じ得るものである。 そして、前記ア(イ)に示したように、引用発明の「第二電気的分離手段Q14」、「第四電気的分離手段Q16」、「第一電気的分離手段Q13」及び「第三電気的分離手段Q15」をサージ電圧による過電圧破壊から保護するべく、前記周知の事項にならい、該電気的分離手段と並列にスナバ回路を設けることは、当業者が容易に想到し得たものであるところ、前記周知の事項にならい、引用発明において、電気的分離手段と並列にスナバ回路を設ければ、該スナバ回路には、前記したように引用発明においても前記零相電流が生じ得ることを踏まえると、該零相電流も流れることになる。 すると、引用発明の電気的分離手段をサージ電圧による過電圧破壊から保護するために前記周知の事項にならい設けられたスナバ回路には、前記零相電流も流れることになり、この点において、該スナバ回路の作用と、審判請求人が主張する「インバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流」を外部に逃がす保護回路の作用との間に相違する点を見いだすことができず、さらに、両者の構成の間にも相違する点を見いだすことができないから、審判請求人が、保護回路を通して外部に逃がすべき零相電流に着目し、一方で、引用文献2に該零相電流についての開示や示唆がないとしても、そのことをもって、前記ア(イ)に示した進歩性の判断が左右されるものではない。 よって、審判請求人の前記主張は採用することができない。 (イ)審判請求人は、前記審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由(4)本願発明と引用文献との対比 f)」において、「これに対し、本願発明は、各スイッチ素子の各々に保護回路が並列に接続されています。電力変換装置において、n相通電制御では、n相の巻線に流れる電流を独立に制御するため、通常、回路内に零相電流が流れ得ます。そのため、制御を正常時の制御から異常時の制御に切替え、2つのインバータの片側のインバータに、スイッチング素子を所定の規則でオン・オフすることにより巻線の中性点を構成させます。片側のインバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流を保護回路を通して外部に逃がすことができる。これにより、回路内の電子部品の破損を効果的に抑制することが可能となる、という本願特有の効果を有しています。」と主張している。 しかしながら、前記(ア)に示したように、引用発明の電気的分離手段をサージ電圧による過電圧破壊から保護するために前記周知の事項にならい設けられたスナバ回路には、前記零相電流も流れることになり、この点において、該スナバ回路の作用と、審判請求人が主張する「インバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流」を外部に逃がす保護回路の作用との間に相違する点を見いだすことはできないから、審判請求人が主張する、片側のインバータに中性点が構成されるとき、回路内に残存していた零相電流を保護回路を通して外部に逃がすことができ、回路内の電子部品の破損を効果的に抑制することが可能になるという、本件補正発明の効果は、顕著なものとはいえない。 よって、審判請求人の前記主張は採用することができない。 ウ.本件補正発明の作用効果について 前記イ(イ)に示したように、審判請求人が主張する本件補正発明の作用効果は顕著なものとはいえない。 また、本件補正発明の「適切な電流制御が可能となる」(この出願の明細書の段落【0012】参照。)という作用効果は、引用発明、前記慣用されている技術及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、前記慣用されている技術及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和3年10月20日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、この出願の各請求項に係る発明は、令和3年4月15日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、前記第2[理由]1(2)の請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち本願発明についてのものは、本願発明は、この出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1~引用文献3に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-149153号公報(本審決における「引用文献1」。) 引用文献2:特許第5797751号公報(本審決における「引用文献2」。) 引用文献3:特開2014-68428号公報(本審決における「引用文献3」。) 3.引用文献の記載及び引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~引用文献3の記載、及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明の発明特定事項である「グランド側切替回路」から「グランド側」という限定を削除し、「電源側切替回路」から「電源側」という限定を削除したものであり、その余の発明特定事項は本件補正発明と実質的に同じである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明、前記慣用されている技術及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、前記慣用されている技術及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-014210

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