特許拒絶査定不服審判
2022-002990
効率推定装置
- 審判番号
- 2022-002990
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-002281外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月28日
- 審決日
- 2023年10月20日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 分類
- P18 .536-WZ (G09B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 2281「効率推定装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月16日出願公開、特開2021-140139〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月8日に出願され、同年4月23日付けで拒絶理由が通知され、同年6月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年2月28日付けで拒絶査定不服審判請求がされたものである。
その後、当審において、令和5年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」・・・「本願発明10」といい、これらをまとめて「本願発明」という。)は、令和5年7月21日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の、請求項1ないし10に記載された以下の事項によって特定されるものと認められる。
「【請求項1】
対象者の効率を推定する効率推定装置であって、
前記対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
物理モデルを用いて前記生体情報に基づいて前記対象者の効率を推定する推定部と、
を備え、
前記生体情報は、前記対象者の体温、体動、又は顔の向きの少なくとも1つを含む、効率推定装置。
【請求項2】
対象者(10)の効率を推定する効率推定装置であって、
前記対象者の生体情報を取得する生体情報取得部(20)と、
学習済モデル(40)を有し、前記学習済モデルを用いて前記生体情報から前記対象者の効率を推定する推定部(30)と、
を備え、
前記学習済モデルは、前記生体情報および前記対象者の効率を含む教師データセットによって学習されたものであり、
前記生体情報は、前記対象者の体温、体動、又は顔の向きの少なくとも1つを含む、効率推定装置(100)。
【請求項3】
対象者の効率を推定する効率推定装置であって、
前記対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
物理モデルを用いて前記生体情報に基づいて前記対象者の効率を推定する推定部と、
を備え、
前記生体情報は、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報であり、眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度の少なくとも1つを含み、
前記生体現象または生体活動によって生じる生体信号は、前記対象者の体温、体動、又は顔の向きである、
効率推定装置。
【請求項4】
対象者(10)の効率を推定する効率推定装置であって、
前記対象者の生体情報を取得する生体情報取得部(20)と、
学習済モデル(40)を有し、前記学習済モデルを用いて前記生体情報から前記対象者の効率を推定する推定部(30)と、
を備え、
前記学習済モデルは、前記生体情報および前記対象者の効率を含む教師データセットによって学習されたものであり、
前記生体情報は、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報であり、眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度の少なくとも1つを含み、
前記生体現象または生体活動によって生じる生体信号は、前記対象者の体温、体動、又は顔の向きである、効率推定装置(100)。
【請求項5】
前記効率は、前記対象者の学習効率である、
請求項1から4のいずれかに記載の効率推定装置。
【請求項6】
前記学習効率は、前記対象者に行わせたテストの結果における前記対象者の正答率に基づく、
請求項5に記載の効率推定装置。
【請求項7】
前記学習効率は、前記対象者に行わせたテストの結果における前記対象者の回答時間に基づく、
請求項5に記載の効率推定装置。
【請求項8】
前記効率は、前記対象者の作業効率である、
請求項1から4のいずれかに記載の効率推定装置。
【請求項9】
前記作業効率は、前記対象者の作業精度に基づくものであり、
前記対象者の作業精度は、前記対象者の所定作業でのミスの発生の度合いを含む、
請求項8に記載の効率推定装置。
【請求項10】
前記作業効率は、前記対象者の所定作業に要した作業時間に基づく、
請求項8に記載の効率推定装置。」
第3 当審において通知した拒絶の理由
当審において令和5年5月16日付けで通知した拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
●理由1(実施可能要件):
・請求項1ないし11に係る発明の詳細な説明
第4 当審の判断
事案に鑑み、当審において通知した拒絶の理由の理由1(実施可能要件)について、判断する。
1 発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(1)第1実施形態について
「【0020】
<第1実施形態>
(1)効率推定装置の全体構成
本実施形態の効率推定装置100を図1に示す。効率推定装置100は、コンピュータにより実現されるものである。効率推定装置100は、生体情報取得部20と、推定部30と、を備える。生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。推定部30は、学習済モデル40を用いて対象者10の生体情報から対象者10の効率を推定する。
【0021】
(2)効率推定装置の詳細構成
(2-1)生体情報取得部
生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。生体情報は、対象者10の視線に関する情報である。対象者10の視線に関する情報は、対象者10の視線の位置、視線の動き、又は視線の動く速度の少なくとも1つを含む。本実施形態では、生体情報取得部20は、カメラを使って対象者10の視線の位置を取得する。
【0022】
(2-2)推定部
推定部30は、学習済モデル40を有し、学習済モデル40を用いて生体情報から対象者10の効率を推定する。推定部30には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。推定部30は、記憶装置(図示せず)に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の演算処理を行う。さらに、効率推定装置100は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。記憶装置は、データベースとして用いることができる。
【0023】
(2-3)学習済モデル
(2-3-1)ネットワークアーキテクチャ
学習済モデル40は、生体情報および対象者10の効率を含む教師データセットによって学習されたものである。
【0024】
本実施形態において、学習済モデル10を用いて対象者10の効率を予測(推定)するために、対象者10の画面上の視線を使用する。次の式(1)を、画面上の位置(xK、yK)Tの連結とする。
p∈R2×K (1)
【0025】
式(1)について、対象者10の画面上の視線の位置の数は試行ごとに異なる場合がある。Kは収集した視線座標のデータ数である。例えば、対象者10の画面上の視線を1サンプル/秒で取得するカメラで10秒間データを取る場合、K=10となる。
【0026】
二項分類タスクは、効率的または非効率的であるかをラベルするためにpをマップする関数を見つけることである。
【0027】
本実施形態では、ディープニューラルネットワークを使用する。具体的には、L=1、2、または3の畳み込み層を持つ畳み込みニューラルネットワークを使用し、各層には、活性化関数として非線形関数のReLU関数(ランプ関数)が続いている。最上位の畳み込み層からの出力は、時系列方向の次元を圧縮した特徴量を取得するために平均値または最大値を抽出することによってプーリングされて、活性化関数として非線形関数のsoftmax関数を有する完全に接続された層に供給される。
【0028】
畳み込み層が二層であるネットワークアーキテクチャの例を図2に示す。
【0029】
まず、ネットワークアーキテクチャの入力は、次の式(2)に示すように、画面上のx座標の値、及びy座標の値である。
p=(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xK、yK) (2)
【0030】
式(2)において、(xK、yK)は、ベクトルである。図2に示される二層のネットワークアーキテクチャでは、入力側(図2の下側)から複数の入力ベクトル(x1、y1)、(x2、y2)・・・が入力され、出力側(図2の上側)から対象者の効率が出力される。このネットワークアーキテクチャは、2つの層L1、L2から構成される。
【0031】
第1畳み込み層L1に、入力ベクトル(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xK、yK)が入力される。第1畳み込み層L1では、対象者10の視線の特徴量が抽出され、第1特徴量が出力される。
【0032】
次に、第2畳み込み層L2に、第1畳み込み層L1からの第1特徴量が入力される。第2畳み込み層L2では、第1特徴量から対象者10の視線の特徴量が抽出され、第2特徴量が出力される。
【0033】
次に、プーリング層(mean/max pooling)に、第2畳み込み層L2からの第2特徴量が入力される。プーリング層では、第2特徴量(特徴マップ)の平均値または最大値を抽出することで圧縮される。
【0034】
次に、全結合層に、プーリング層からの特徴ベクトルが入力される。全結合層の出力が出力層(図示せず)に入力される。全結合層の出力は、対象者10の効率が、効率的であるか、又は非効率的であるかを示す。
【0035】
(3)学習処理
効率推定装置100が使用する学習済モデル40について説明する。学習済モデル40は、ニューラルネットワークに、あらかじめ生体情報および対象者の効率を含む教師データセットによって学習させた推定モデルを使用する。
【0036】
学習処理において、視線に関する情報を測定するためのパソコンのカメラ(図示せず)と、テスト付きのe-ラーニングを準備する。e-ラーニングを受講中の対象者の視線に関する情報を入力データとし、e-ラーニング受講後のテストの正答率に相関のある情報を出力データとする教師データセットによって学習させる。
【0037】
図3に学習データの一例を示す。この例ではe-ラーニングの受講中の対象者10の画面上の視線が、コンテンツが表示されている画面上のどこに位置するかを記録したものを対象者の生体情報とする。図3に示すように、e-ラーニング受講後のテストの正答率が、80%の場合、対象者10の視線の位置が「(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xk、yk)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の80%を出力とする教師データセットによって学習させる。また、対象者10の視線の位置が「(x1’、y1’)、(x2’、y2’)、・・・(xl’、yl’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の90%を出力とする教師データセットによって学習させる。また、対象者10の視線の位置が「(x1’ ’、y1’ ’)、(x2’ ’、y2’ ’)、・・・(xm’ ’、ym’ ’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の50%を出力とする教師データセットによって学習させる。また、対象者10の視線の位置が「(x1’ ’ ’、y1’ ’ ’)、(x2’ ’ ’、y2’ ’ ’)、・・・(xn’ ’ ’、yn’ ’ ’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の40%を出力とする教師データセットによって学習させる。
【0038】
(4)学習効率
効率推定装置100の対象者10の効率は、学習効率である。学習効率は、対象者10のテストの正答率に基づくものである。
【0039】
学習効率のヒストグラムの例を図4に示す。横軸が対象者10のテストの正答率であり、縦軸が対象者の人数である。図4に例示するように、学習データはクラスターAとクラスターBの2つのクラスターに分けられる。クラスターAは、対象者10のテストの正解率が80パーセントをピークとする。クラスターAは、対象者10のテストの正答率が高く、学習効率が高いと推定される。クラスターBは、対象者の10のテストの正答率が40パーセントをピークとする。クラスターBは、対象者10のテストの正答率が低く、学習効率が低いと推定される。
【0040】
(5)効率推定装置100の全体動作
効率推定装置100のフローチャートを図5に示す。本実施形態では、効率推定装置100をe-ランニングで使用する場合について説明する。
【0041】
まずステップS1で、対象者10がe-ラーニングを受講する。e-ラーニングを受講中の対象者10はカメラで撮影されている。生体情報取得部20によってe-ラーニングを受講中の対象者10の視線の位置を取得する(ステップS2)。推定部30は、学習済モデル40を用いて、対象者10の視線の位置から、対象者10にテストを行った場合の正答率を推定する(ステップS3)。次に、推定部30は、ステップS3で推定した正答率をディスプレイ(図示せず)に出力する(ステップS4)。ディスプレイは、推定されたテストの正答率を表示する。
【0042】
(6)特徴
(6-1)
本実施形態に係る効率推定装置100では、対象者10の効率を推定する効率推定装置100であって、生体情報取得部20と、推定部30と、を備える。生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。推定部30は、学習済モデル40を有し、学習済モデル40を用いて生体情報から対象者10の効率を推定する。学習済モデル40は、生体情報および対象者10の効率を含む教師データセットによって学習されたものである。
【0043】
この効率推定装置100では、生体情報および対象者10の効率を含む教師データによって学習された学習済モデル40を用いるようにしたので、対象者10の生体情報に基づき、生産性の評価の指標となる、対象者10の効率を推定することができる。
【0044】
(6-2)
本実施形態に係る効率推定装置100では、効率は、対象者10の学習効率である。
【0045】
この効率推定装置100では、対象者10の学習効率を推定するようにしたので、e-ランニングを受講した対象者10の学習効率を推定することができる。
【0046】
(6-3)
本実施形態に係る効率推定装置100では、学習効率は、対象者10に行わせたテストの結果における対象者10の正答率に基づく。
【0047】
この効率推定装置100では、学習効率を対象者10に行わせたテストの結果における対象者10の正答率に基づくものにしたので、e-ランニングを受講している対象者10の学習効率(推定された正答率)に応じて、e-ラーニングのコンテンツを変更することができる。
【0048】
(6-4)
本実施形態に係る効率推定装置100では、対象者の視線に関する情報は、対象者の視線の位置、視線の動き、又は視線の動く速度の少なくとも1つを含む。
【0049】
この効率推定装置100では、対象者の視線に関する様々な情報を生体情報として用いることができる。」
(2)第1実施形態の変形例について
「【0053】
(7-3)変形例1C
本実施形態において、効率推定装置100の生体情報は、対象者10の視線に関する情報である場合について説明したが、これに限るものではない。効率推定装置100の生体情報は、対象者の脳波、心拍、体温、体動、表情、又は顔の向きの少なくとも1つを含むものとしてもよい。また、効率推定装置100の生体情報は、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報であり、眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度の少なくとも1つを含むものとしてもよい。生体現象の例として、心拍、脳波、脈拍、呼吸、発汗等がある。また、生体活動の例として、表情、顔の向き、体の動き等がある。また、生体現象及び生体活動によって生じる生体信号には、脳波、心拍、体温、体動、表情、又は顔の向き等を含み、生体現象によって生じる生体信号の一部にはバイタルサインと呼ばれるものがある。
【0054】
変形例1Cに係る効率推定装置では、生体情報は、対象者の視線に関する情報、脳波、心拍、体温、体動、表情、又は顔の向きの少なくとも1つを含むようにしたので、対象者の様々な生体情報から対象者の効率を推定することができる。また、変形例1Cに係る効率推定装置では、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報であり、眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度の少なくとも1つを含むようにしたので、生体から生体現象または生体活動によって生じる生体信号に限らず、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報を生体情報として用いて、対象者の効率を推定することができる。
【0055】
また、本実施形態において、生体情報取得部20がカメラから対象者の生体情報を取得する場合について説明したが、生体センサから対象者の生体情報を取得するようにしてもよい。」
(3)第2実施形態について
「【0068】
<第2実施形態>
(1)効率推定装置の全体構成
本実施形態の効率推定装置200を図7に示す。効率推定装置200は、コンピュータにより実現されるものである。効率推定装置200は、生体情報取得部20と、推定部50と、を備える。生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。推定部50は、物理モデル60を用いて対象者10の生体情報から対象者10の効率を推定する。
【0069】
(2)効率推定装置の詳細構成
(2-1)生体情報取得部
生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。生体情報は、対象者10の視線に関する情報である。対象者10の視線に関する情報は、対象者10の視線の位置、視線の動き、又は視線の動く速度の少なくとも1つを含む。本実施形態では、生体情報取得部20は、カメラを使って対象者10の視線の位置を取得する。
【0070】
(2-2)推定部
推定部50は、物理モデル60を有し、物理モデル60を用いて生体情報から対象者10の効率を推定する。推定部50には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。推定部50は、記憶装置(図示せず)に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の演算処理を行う。さらに、効率推定装置200は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。記憶装置は、データベースとして用いることができる。
【0071】
(2-3)物理モデル
効率推定装置200が使用する物理モデル60について説明する。物理モデル60は、生体情報と対象者10の効率との相関関係を示す。
【0072】
本実施形態において、物理モデル60を用いて対象者10の効率を予測(推定)するために、対象者10の画面上の視線を使用する。e-ラーニングの受講中の対象者10の画面上の視線が、コンテンツが表示されている画面上のどこに位置するかを取得したものを対象者の生体情報とする。
【0073】
対象者10の視線の位置が「(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xk、yk)」であると取得された生体情報を入力とした場合、e-ラーニング受講後のテストの正答率は、次の式(3)の物理モデル60で求められる。
【0074】
正答率=f(x1,x2,・・・xk、y1,y2,・・・yk) (3)
【0075】
(3)効率推定装置200の全体動作
効率推定装置200のフローチャートを図8に示す。本実施形態では、効率推定装置200をe-ランニングで使用する場合について説明する。
【0076】
まずステップS11で、対象者10がe-ラーニングを受講する。e-ラーニングを受講中の対象者10はカメラで撮影されている。生体情報取得部20によってe-ラーニングを受講中の対象者10の視線の位置を取得する(ステップS12)。推定部50は、物理モデル60を用いて、対象者10の視線の位置から、対象者10にテストを行った場合の正答率を推定する(ステップS13)。次に、推定部50は、ステップS3で推定した正答率をディスプレイ(図示せず)に出力する(ステップS14)。ディスプレイは、推定されたテストの正答率を表示する。
【0077】
(4)特徴
(4-1)
本実施形態に係る効率推定装置200では、対象者10の効率を推定する効率推定装置200であって、生体情報取得部20と、推定部50と、を備える。生体情報取得部20は、対象者10の生体情報を取得する。推定部50は、生体情報に基づいて対象者10の効率を推定する。
【0078】
この効率推定装置200では、物理モデル60は生体情報および対象者10の効率の相関関係に基づくので、対象者10の生体情報に基づき、生産性の評価の指標となる、対象者10の効率を推定することができる。」
(4)第2実施形態の変形例について
「【0080】
(5-3)変形例2C
本実施形態において、効率推定装置100の生体情報は、対象者10の視線に関する情報である場合について説明したが、これに限るものではない。効率推定装置100の生体情報は、対象者の脳波、心拍、体温、体動、表情、又は顔の向きの少なくとも1つを含むものとしてもよい。また、効率推定装置100の生体情報は、生体現象または生体活動によって生じる生体信号に処理を加えた情報、例えば眠気度合、覚醒度、集中度、疲労度に変換した情報を含むものとしてもよい。
【0081】
また、本実施形態において、生体情報取得部20がカメラから対象者の生体情報を取得する場合について説明したが、生体センサから対象者の生体情報を取得するようにしてもよい。」
2 実施可能要件の判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1は、「物理モデル」を用いて「対象者の体温、体動、又は顔の向き」の少なくとも1つを含む「生体情報に基づいて前記対象者の効率を推定する」構成を有する。
イ 「物理モデル」を用いた「対象者の効率」の推定について、発明の詳細な説明の段落【0068】-【0078】(上記1(3)の摘記を参照)には、第2実施形態として、「物理モデル」は「生体情報と対象者10の効率との相関関係」を示すものであり、e-ラーニングの受講中の対象者の画面上の視線の位置「(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xk、yk)」を取得すると、e-ラーニング受講後のテストの正答率が、「正答率=f(x1,x2,・・・xk、y1,y2,・・・yk)」の式の「物理モデル」で求められる旨が、記載されている。
ウ また、発明の詳細な説明の段落【0080】及び【0081】(上記1(4)の摘記を参照)には、「生体情報」が「視線に関する情報」である場合について説明した上記第2実施形態に関し、「生体情報」はこれに限るものではなく、「体温」、「体動」、又は「顔の向き」の少なくとも1つを含むものとしてもよい旨が、記載されている。
エ しかしながら、対象者の「体温」を入力することにより、e-ラーニング受講後のテストの正答率が求まるような「物理モデル」の具体的な説明は、発明の詳細な説明において一切されていない。
オ この点に関し、「体温」ではなく「視線の位置」を用いる段落【0068】-【0078】の説明は、「物理モデル」を用いる第2実施形態の最も具体的な説明ではあるものの、単に視線の位置からテストの正答率を出力する関数fを用いることを抽象的に述べるにとどまり、関数fや使用可能な「物理モデル」の具体的な内容を示すものではない。
カ そして、段落【0080】及び【0081】の記載を考慮しても、入力を「視線の位置」から「体温」に変えた場合に、関数fにどのような変更を加えて、実際に使用可能な「物理モデル」とするのかについて、発明の詳細な説明には具体的な説明がされていない。また、「視線の位置」を入力としてテストの正答率を出力する関数fなるものに対して、入力を「視線の位置」から「体温」へと変えた場合に、どのような調整や変更を行うかは、技術常識から明らかということもできない。
キ 上記エないしカのとおりであるから、発明の詳細な説明には、「視線の位置」を入力とする「物理モデル」に関する段落【0068】-【0078】の記載、及び、「体温」を入力としてもよい旨を述べる段落【0080】-【0081】の記載、並びに技術常識を併せて考慮しても、「体温」を入力として「対象者の効率」を求める「物理モデル」を作成することについて、実質的な説明が記載されているとはいえない。
ク 「生体情報」として、「体動」又は「顔の向き」を用いる場合についても、「体温」を用いる場合について上記エないしキに指摘したのと、同様のことがいえる。
ケ そして、「体温」、「体動」、または「顔の向き」を入力信号として、「対象者の効率」を出力する「物理モデル」を作成することは、「体温」、「体動」、または「顔の向き」を入力信号とする関数fについて何ら具体的な説明がない本願発明の詳細な説明に依拠する場合、もっぱら試行錯誤のみによって新たな「物理モデル」を最初から創出していく必要があるから、当業者に過度の試行錯誤を要することが明らかである。
コ したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明1について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を満たしていない。
(2)本願発明2について
ア 本願発明2は、「学習済モデル」を用いて、「対象者の体温、体動、又は顔の向き」の少なくとも1つを含む「生体情報から前記対象者の効率を推定する」構成を有する。
イ 「学習済モデル」を用いた「対象者の効率」の推定について、発明の詳細な説明の段落【0020】-【0049】(上記1(1)の摘記を参照)には、「第1実施形態」として、e-ラーニング受講後のテストの正答率が、80%の場合、対象者10の視線の位置が「(x1、y1)、(x2、y2)、・・・(xk、yk)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の80%を出力とする教師データセットによって学習させ、同様に、「対象者10の視線の位置が「(x1’、y1’)、(x2’、y2’)、・・・(xl’、yl’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の90%を出力とする教師データセット」、「対象者10の視線の位置が「(x1’ ’、y1’ ’)、(x2’ ’、y2’ ’)、・・・(xm’ ’、ym’ ’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の50%を出力とする教師データセット」、「対象者10の視線の位置が「(x1’ ’ ’、y1’ ’ ’)、(x2’ ’ ’、y2’ ’ ’)、・・・(xn’ ’ ’、yn’ ’ ’)」であると記録された生体情報を入力とし、正答率の40%を出力とする教師データセット」によって学習させた「学習済モデル」とすれば、対象者の視線の位置から、対象者にテストを行った場合の正答率が推定される旨が、記載されている。
ウ また、発明の詳細な説明の段落【0053】-【0055】(上記1(2)の摘記を参照)には、「生体情報」が「視線に関する情報」である場合について説明した上記第1実施形態に関し、「生体情報」はこれに限るものではなく、「体温」、「体動」、又は「顔の向き」の少なくとも1つを含むものとしてもよい旨が、記載されている。
エ しかしながら、対象者の「体温」を入力することにより、e-ラーニング受講後のテストの正答率が求まるような「学習済モデル」が、実際に作成されたことを示すような、具体的な性能評価結果等は、発明の詳細な説明には一切記載されていない。また、対象者の「体温」とテストの正答率との間に、前者から後者が推定されるような相関関係が成立することについても、発明の詳細な説明において具体的な説明はされていない。
オ この点に関し、「体温」ではなく「視線の位置」を用いる段落【0020】-【0049】の説明は、「学習済モデル」を用いる第1実施形態の最も具体的な説明ではあるものの、単にe-ラーニングにおける視線の位置とテストの正答率とを教師データとして学習済モデルを形成すれば、視線の位置からテストの正答率が推定可能となる旨を述べるにとどまり、具体的な性能評価結果等も示されていない。
カ そして、段落【0053】-【0055】の記載を考慮しても、発明の詳細な説明には、入力を「視線の位置」から「体温」に変えた場合に関して、「体温」と「テストの正答率」との間に、前者から後者を推定可能となるような相関関係があることは説明されておらず、そのような相関関係が存在することは技術常識から明らかともいえない。また、発明の詳細な説明には、「体温」を入力として「テストの正答率」を出力するような「学習済モデル」が実際に作成可能となることを示すような性能評価結果等は示されていない。
キ 上記エないしカのとおりであるから、発明の詳細な説明には、「視線の位置」を入力とする「学習済モデル」に関する段落【0020】-【0049】の記載、及び、「体温」を入力としてもよい旨を述べる段落【0053】-【0055】の記載、並びに技術常識を併せて考慮しても、「体温」を入力として「対象者の効率」を求める「学習済モデル」を作成し、当該「学習済モデル」を用いて「効率」を推定することについて、実質的な説明が記載されているとはいえない。
ク 「生体情報」として、「体動」又は「顔の向き」を用いる場合についても、「体温」を用いる場合について上記エないしキに指摘したのと、同様のことがいえる。
ケ したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明2について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を満たしていない。
(3)本願発明3について
ア 本願発明3は、「物理モデル」を用いて、「対象者の体温、体動、又は顔の向き」である「生体現象または生体活動によって生じる生体信号」に「処理を加えた情報」である「眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度」の少なくとも1つを含む「生体情報に基づいて前記対象者の効率を推定する」構成を有する。
イ しかしながら、「物理モデル」を用いて、「体温、体動、又は顔の向き」に基づいて、「対象者の効率」を推定することに関し、発明の詳細な説明の記載の説明は、上記(1)において本願発明1について指摘したと同じ内容を述べるにとどまる。
ウ そして、上記(1)において本願発明1について示したと同じ理由から、「体温」、「体動」、または「顔の向き」を用いて、「対象者の効率」を出力する「物理モデル」を作成することは、当業者に過度の試行錯誤を要することが明らかである。
エ したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明3について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を満たしていない。
(4)本願発明4について
ア 本願発明4は、「学習済モデル」を用いて、「対象者の体温、体動、又は顔の向き」である「生体現象または生体活動によって生じる生体信号」に「処理を加えた情報」である「眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度」の少なくとも1つを含む「生体情報に基づいて前記対象者の効率を推定する」構成を有する。
イ しかしながら、「学習済モデル」を用いて、「体温、体動、又は顔の向き」に基づいて、「対象者の効率」を推定することに関し、発明の詳細な説明の記載の説明は、上記(2)において本願発明2について指摘したと同じ内容を述べるにとどまる。
ウ そして、上記(2)において本願発明2について示したと同じ理由から、「体温」、「体動」、または「顔の向き」を用いて、「対象者の効率」を出力する「学習済モデル」を作成し、当該「学習済モデル」を用いて「効率」を推定することすることについて、発明の詳細な説明には、実質的な説明が記載されているとはいえない。
エ したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明4について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を満たしていない。
(5)本願発明5ないし10について
ア 本願発明5ないし10は、本願発明1ないし4のいずれかの構成を有するところ、本願発明5ないし10が有する本願発明1ないし4の構成について、上記(1)ないし(4)において指摘したと同じ理由から、本願発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
イ したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、本願発明5ないし10についても、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を満たしていない。
(6)請求人の意見書における主張について
請求人は令和5年7月21日付けの意見書において、実施可能要件に関し、「対象者の視線と対象者の効率の例が本願明細書の段落0020-0049に記載されているので、「対象者の脳波、心拍、対応、表情、または顔の向き」、あるいは「生体信号に処理を加えた情報であり、眠気度合、覚醒度、集中度、又は疲労度」と、「対象者の効率」との間に、相関関係が存在することは推認でき、物理モデル又は学習済みモデルを用いて、対象者の効率を推定することは記載されていると思料致します。」と主張している。
しかしながら、本願発明1ないし10において使用する「生体情報」、または「生体情報」を得るための「生体信号」は、「体温、体動、又は顔の向き」と特定されているところ、「体温、体動、又は顔の向き」から「対象者の効率」を推定する「物理モデル」及び「学習済モデル」に関する、発明の詳細な説明の記載は、上記(1)カないしコ及び上記(2)カないしケに指摘したとおり、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されてたものではない。
したがって、上記請求人の意見書における主張について考慮しても、本願発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かについて、上記(1)ないし(5)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。
3 実施可能要件の小括
以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、当審において通知した拒絶の理由の理由1に指摘したとおり、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
上記第4のとおり、本願は、当審において通知した拒絶の理由の理由1により、他の理由について判断するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、上記の結論のとおり審決する。
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2022-002990