特許拒絶査定不服審判
2022-002826
医療施設の消火システム、および建物の消火システム
- 審判番号
- 2022-002826
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-150801外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月25日
- 審決日
- 2022年09月29日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エア・ウォーター防災株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A62C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2017-150801「医療施設の消火システム、および建物の消火システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月21日出願公開、特開2019- 25237〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成29年8月3日に出願され、令和3年4月20日付け(発送日:同年5月11日)で拒絶理由が通知され、令和3年6月2日に意見書が提出され、令和3年11月25日付け(発送日:同年11月30日)で拒絶査定がされ、これに対して、令和4年2月25日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正書が提出されたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、請求項の削除を目的とした令和4年2月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
医療施設の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
医療施設内で用いる負圧を供給し、かつ前記スプリンクラー用配管に接続される負圧用配管と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な第一および第二負圧装置とを備えた、医療施設の消火システム。
【請求項2】
医療施設の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、医療施設の消火システム。
【請求項3】
医療施設の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
医療施設内で用いる負圧を供給するための負圧用配管と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な第一および第二負圧装置とを備えた、医療施設の消火システム。
【請求項4】
医療施設の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
医療施設内で用いる負圧を供給するための負圧用配管と、
前記負圧用配管に負圧を供給可能な第一負圧装置と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な第一および第二負圧装置とを備えた、医療施設の消火システム。
【請求項5】
医療施設の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
医療施設内で用いる負圧を供給するための負圧用配管と、
前記負圧用配管に負圧を供給可能な第一負圧装置と、
前記スプリンクラー用配管と前記負圧用配管に負圧を供給可能な第二負圧装置と、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な第三負圧装置とを備えた、医療施設の消火システム。
【請求項6】
前記スプリンクラー用配管内に常態で水が充填されており負圧状態に保たれている、請求項1から5のいずれか1項に記載の医療施設の消火システム。
【請求項7】
前記スプリンクラー用配管内に常態で水が充填されておらず負圧状態に保たれている、請求項1から5のいずれか1項に記載の医療施設の消火システム。
【請求項8】
温度が0℃超に保たれている区画内に前記スプリンクラーヘッドが設置される、請求項7に記載の医療施設の消火システム。
【請求項9】
建物の消火システムであって、前記建物は原子力発電所であり、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、建物の消火システム。
【請求項10】
建物の消火システムであって、前記建物はアルカリ金属を扱う施設であり、 スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、建物の消火システム。」
第3.原査定の拒絶理由について
原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。なお、令和4年2月25日の手続補正で請求項9が削除されたので、原査定における請求項10及び11は、それぞれ本願発明9及び本願発明10に対応するものである
本願の下記の請求項に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-9
・引用文献等 1-2
・請求項 10及び11
・引用文献等 1、3
《引用文献等一覧》
1.特開2013-128547号公報
2.特開平10-306493号公報
3.特開2003-126286号公報(周知技術を示す文献)
第4.当審の判断
1 本願発明9について
事案に鑑み、まず本願発明9について検討する。
(1)引用文献1記載事項及び引用発明
引用文献1には、「スプリンクラ消火設備」に関して、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。以下同様。)。
ア.「【0018】
本実施の形態のスプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッド2、予作動弁22、一次側配管11、二次側配管12、真空配管14、流水遮断弁31、ヘッド作動検出装置46、真空スイッチ41および52、加圧送水装置21、中継器51,火災受信機4、消火システム制御盤5、消火ポンプ制御盤6、真空ポンプ制御盤53、第1の真空ポンプとしての真空ポンプ24、第2の真空ポンプとしての真空ポンプ25、等から構成されている。
【0019】
防護区画1には、複数のスプリンクラヘッド2が設けられている。また、防護区画1には、防護区画1内で発生した火災を感知する火災感知器3が設けられている。この火災感知器3は火災受信機4と電気的に接続されており、火災感知器3の火災発報を受信した火災受信機4は、火災信号を消火システム制御盤5へ送出する。また、消火システム制御盤5は、中継器51を介して、予作動弁22を駆動する電動のパイロット弁である遠隔起動弁22bおよび予作動弁22の開放による消火用水の通水を検知する流水検知手段としての流水信号スイッチ22a、開閉弁47、真空スイッチ41、および、ヘッド作動検出装置46と電気的に接続されており、さらに消火ポンプ制御盤6は加圧送水装置21と電気的に接続されている。消火システム制御盤5は、所定の圧力で作動する真空スイッチ41、または、単位時間当たりの圧力上昇が所定の値を超えるときに作動するヘッド作動検出装置46のいずれかが作動することによって、スプリンクラヘッド2が作動したかどうかを判断する。」
イ.「 【0025】
以下、このスプリンクラ消火設備の動作について説明する。まず、スプリンクラヘッド2の作動を検出する動作について説明する。続いて、スプリンクラ消火設備の消火動作について説明する。
(スプリンクラヘッド作動検出動作)
スプリンクラヘッド2の作動を検出する動作について、図1に基づいて説明する。
上述のように、通常の監視状態において、二次側配管12内及び真空配管14内は負圧となっている。これら二次側配管12内及び真空配管14内は、立ち下がり配管13とスプリンクラヘッド2との接続部等から徐々に空気が流入し、負圧である管内圧力が上がってくる(大気圧に近づいてくる)。負圧である二次側配管12内及び真空配管14内の圧力が所定の圧力以上となったことを真空スイッチ52で検出した場合、真空ポンプ制御盤53内の制御部54が第1の真空ポンプ駆動部55を介して真空ポンプ24を、第2の真空ポンプ駆動部56を介して真空ポンプ25を、どちらか一方または両方を駆動して、二次側配管12内及び真空配管14内を所定の圧力未満の負圧に保っている。なお、負圧である二次側配管12内の圧力が上昇する場合には、スプリンクラヘッド2の作動によるものと、配管からの空気流入による場合とがある。ここでは、配管からの空気流入による圧力上昇を真空スイッチ52で検出し、スプリンクラヘッド2の作動による圧力上昇をヘッド作動検出装置46または真空スイッチ41で検出している。 」
ウ.「【0032】
消火システム制御盤5は、放水時、遠隔起動弁22bを開放することによって予作動弁22を開放し、二次側配管12に消火用水を供給する(充填する)。
【0033】
予作動弁22が開放された後、これに伴って一次側配管11の圧力が低下する。この圧力低下を図示しない圧力検出手段が検出し、この圧力検出手段からの圧力低下信号を受けた消火ポンプ制御盤6は加圧送水装置21を始動し、二次側配管12へ向かって消火用水を圧送する。なお、予作動弁22が開放されると、予作動弁22に設けられた流水信号用スイッチ22aは、中継器51を介して消火システム制御盤5に流水信号を発信する。
【0034】
そして、二次側配管12が消火用水で充水され、規定圧力に達した二次側配管12内の消火用水は、立ち下がり配管13を介して、作動したスプリンクラヘッド2から防護区画1に規定放水圧力で放水し、防護区画1で発生した火災を消火する。」
以上を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
《引用発明》
防護区画1のスプリンクラ消火設備であって、
スプリンクラヘッド2と、スプリンクラヘッド2から放水される消火用水を供給する二次側配管12とを有し、通常の監視状態において、二次側配管12内は負圧となっており、
二次側配管12内を所定の圧力未満の負圧に保つための真空ポンプ24及び真空ポンプ25とを備えた、防護区画1のためのスプリンクラ消火設備。
(2)対比・判断
引用発明と本願発明9とを対比する。
引用発明の「スプリンクラ消火設備」は、その構成、機能又は技術的意義からみて本願発明9の「消火システム」に相当し、以下同様に「スプリンクラヘッド2」は「スプリンクラーヘッド」に、「スプリンクラヘッド2から放水される消火用水を供給する二次側配管12」は「前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管」に、「二次側配管12内を所定の圧力未満の負圧に保つための真空ポンプ24及び真空ポンプ25」は「前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置」に、それぞれ相当する。さらに、引用発明の「防護区画1」は、「建物の防護区画1」であることは明らかであるから、本願発明9の「建物」に相当する。
また、引用発明の「通常の監視状態において、二次側配管12内は負圧となって」いることは本願発明9の「前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている」ことに相当し、引用発明の「スプリンクラヘッド2と、スプリンクラヘッド2から放水される消火用水を供給する二次側配管12とを有し、」「二次側配管12内は負圧となって」いる構成は「負圧スプリンクラーシステム」に相当するものであるから、引用発明は「前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステム」に相当するものを備えている。
したがって、本願発明9と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。
《一致点》
建物の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、建物の消火システム。
《相違点1》
本願発明9は「建物は原子力発電所であ」るのに対して、引用発明は「防護区画1」を備えた建物がどのような建物であるか特定されていない点。
上記相違点1について検討する。
一般に、消火システムがあらゆる種類の建物で採用されていることは常識である。そして、引用発明はあらゆる種類の建物に用いることができることもまた、当業者にとって明らかである。
さらに、引用文献3の段落【0001】、【0040】や特開平5-137811号公報の段落【0001】に記載されているように、消火システムを原子力発電所に設けることは周知技術(以下「周知技術1」という。)であり、引用発明を原子力発電所に適用することについての特段の阻害要因もない。
よって、引用発明の消火設備を設ける建物について周知技術1を適用して、原子力発電所とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、本願発明9が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1からみて、当業者が普通に予測し得た程度のものである。
したがって、本願発明9は引用発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 本願発明10について
次に、本願発明10についても検討する。
(1)引用文献1記載事項及び引用発明
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、上記1(1)のとおりである。
(2)対比・判断
引用発明と本願発明10とを対比すると、両者の相当関係は上記1(2)と同様であり、本願発明10と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。
《一致点》
建物の消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、建物の消火システム。
《相違点2》
本願発明10は「建物はアルカリ金属を扱う施設であ」るのに対して、引用発明は「防護区画1」を備えた建物がどのような建物であるか特定されていない点。
上記相違点2について検討する。
一般に、消火システムがあらゆる種類の建物で採用されていることは常識である。そして、引用発明はあらゆる種類の建物に用いることができることもまた、当業者にとって明らかである。
さらに、アルカリ金属は可燃性の高い物品として当業者に知られている物品であり、引用文献3の段落【0040】に記載されているように消火システムを可燃性の高い物品を収納した倉庫に設けることは周知技術(以下「周知技術2」という。)である。また、引用発明をアルカリ金属を扱う施設に適用することについての特段の阻害要因もない。
よって、引用発明の消火設備を設ける建物について周知技術2を適用して、アルカリ金属を扱う施設とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、本願発明10が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術2からみて、当業者が普通に予測し得た程度のものである。
したがって、本願発明10は引用発明及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本願発明2について
さらに、本願発明2についても検討する。
(1)引用文献1記載事項及び引用発明
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、上記1(1)のとおりである。
(2)引用文献2記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0002】
【従来の技術】 近年、エア圧を利用して作動させることができるエア利用機器が多く知られるようになっている。これは、例えば、新幹線においては、ドア開閉装置や、トイレや洗面等の給水加圧手段ならびに排水圧送手段、エアブレーキ、サスペンション、車内空調等に利用されている他、大型ビルにおいては、自動ドア開閉装置、エアカーテン、防災システムに利用され、さらに、病院においては、人口心臓、リハビリ治療器、エアマッサージ機、泡風呂等の医療健康機器等に利用されている(特開平4-197220号公報記載のセントラルクリーナー、特開平9-56768号公報記載の浴室ユニット参照)。」
以上を踏まえると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「病院でエア利用機器が利用されること。」
(3)対比・判断
引用発明と本願発明2とを対比すると、両者の相当関係は上記1(2)と同様であり、本願発明2と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。
《一致点》
消火システムであって、
スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管とを有し、前記スプリンクラー用配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、
前記スプリンクラー用配管に負圧を供給可能な負圧装置とを備えた、消火システム。
《相違点3》
本願発明2は「医療施設」の消火システムであるのに対して、引用発明は「防護区画1」がどのような建物であるか特定されていない点。
上記相違点3について検討する。
一般に、消火システムがあらゆる種類の建物で採用されていることは常識である。そして、引用発明はあらゆる種類の建物に用いることができることもまた、当業者にとって明らかである。
さらに、特開2014-150983号公報の段落【0001】に記載されているようにスプリンクラー設備を病院に設置することは周知技術(以下「周知技術3」という。)であり、引用文献2記載事項に鑑みれば、エア利用機器である配管を備える引用発明を病院に適用することの動機付けもある。また、引用発明を医療施設に適用することについての特段の阻害要因もない。
よって、引用発明の消火設備を設ける建物について周知技術3を適用して、医療施設とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、本願発明2が奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術3からみて、当業者が普通に予測し得た程度のものである。
したがって、本願発明2は引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5.請求人の主張について
審判請求書及び令和4年7月19日付け上申書において、請求人は、本願発明2、9及び10について、それぞれ概略以下の主張をしている。
(1)「医療施設の消火システムでは、負圧スプリンクラーシステムを用いているため、仮にスプリンクラーヘッドが損傷したとしても、スプリンクラーヘッドから水が放出されることがない。医療施設において天井から水が放出されると、患者は、その水を医療排液と誤認してしまう可能性がある。医療排液には病原菌やウイルスが含まれていることがあるため、人体に有害である。このような誤認は医療施設にとって深刻な、かつ医療施設特有の問題である。このような噂が広まると、風評被害が発生する。」という医療施設特有の課題を解決するのが本願発明2である。
(2)「原子力発電所においてスプリンクラーヘッド103から水が漏れ、外部放射線量が閾値以上の区域に水が入ると、この水が放射性の汚染水となる可能性がある。汚染水の処理には多額のコストが必要となる。これは原子力発電所の特有の問題である。負圧スプリンクラーシステム100を用いることで上記の問題を解決することができる。」という原子力発電所特有の課題を解決するのが本願発明9である。
(3)「建物がアルカリ金属を扱う施設、たとえばリチウム電池製造工場である場合には、リチウムは水と反応するため、工場内のリチウムと水との接触を防止する必要がある。スプリンクラーヘッド103からの水漏れを防止して、アルカリ金属と水との反応を防止することができる。」というアルカリ金属を扱う施設特有の課題を解決するのが本願発明10である。
しかしながら、負圧式スプリンクラ消火設備がスプリンクラヘッドの誤動作による漏水を起こさせないようにする設備であることは引用文献1の段落【0004】-【0006】にも記載されているように従来より知られていることである。そして、水漏れにより被る被害の詳細かつ具体的内容について、建物又は施設の種類に応じた個別事情があるとしても、漏水を防ぐことで漏水により生じる問題が解決されることは共通しており、この共通する効果は引用文献1から想定し得たことである。よって、引用発明を特定の種類の建物又は施設に適用した際、個別事情に係る課題が解決できるようになることに格別の効果を見出すことはできない。
すなわち、引用発明を医療施設、原子力発電所又はアルカリ金属を扱う施設に適用することに、請求人が主張する上記のような効果があったとしても、それらはどれも当業者が予測し得た程度のものであり、また、水漏れによる不測の事態を防止するという引用発明の効果と同質なものでしかない。
よって、審判請求書及び令和4年7月19日付け上申書における請求人の主張はいずれも当を得ない。
第6.むすび
以上のとおり、本願発明9は、引用発明及び周知技術1に基いて、本願発明10は、引用発明及び周知技術2に基いて、本願発明2は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術3に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願発明1及び本願発明3-8を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-002826