特許拒絶査定不服審判
2024-016002
ガス消火設備およびその施工方法
- 審判番号
- 2024-016002
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-147352
- 請求日
- 2024年10月04日
- 審決日
- 2026年03月18日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エア・ウォーター防災株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 河端 賢
- 審判官 前原 義明
- 分類
- P18 .121-WZ (A62C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-147352「ガス消火設備およびその施工方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月14日出願公開、特開2022-42114〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2020-147352号(以下、「本願」という。)は、令和2年9月2日の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 1月30日付け :拒絶理由通知(発送日:同年2月6日).
令和6年 4月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 7月17日付け :拒絶査定(発送日:同年7月30日)
令和6年10月 4日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年12月 2日 :上申書の提出
令和7年 8月 5日付け :拒絶理由通知(発送日:同年8月12日)
令和7年 9月16日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
令和7年9月16日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有し、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備であって、前記第一の階に第一の防護区画が設けられ前記第二の階に第二の防護区画が設けられ、前記第二の階の天井裏空間に設けられた配管はステンレス鋼管であり、前記ステンレス鋼管は前記第二の防護区画に消火剤ガスを送り、
前記第二の防護区画は、前記第二の階の天井により前記第二の階の室内と前記第二の階の前記天井裏空間とに分けられており、
前記ステンレス鋼管から消火剤ガスが供給されて前記第二の防護区画の前記室内に消火剤ガスを導入するノズルをさらに備え、前記ノズルは設置時および使用時に前記第二の防護区画の前記室内に露出しており、前記第二の防護区画の前記室内にはダクトが取り付けられ、ダンパーが前記ダクトを封止することで前記ダクトを経由して消火剤ガスが前記第二の防護区画の前記室内から前記ダクトへ流れることを防止でき、前記消火剤ガスは窒素または二酸化炭素であり、
前記第一の防護区画に消火剤ガスを送るための第一の開閉弁と、前記第二の防護区画に消火剤を送るための第二の開閉弁とをさらに備え、前記第二の防護区画の前記室内に設けられた火災報知器が煙または炎を検知すると、前記第二の開閉弁が開き、これにより、消火剤ガスが、前記第二の開閉弁、前記ステンレス鋼管および前記ノズルを経由して前記第二の防護区画の前記室内に導入され、前記第一および第二の開閉弁は複数のガスボンベおよび前記複数のガスボンベが接続されるマニホルドよりも下流に設けられ、
前記ステンレス鋼管は炭素鋼管と接続され、接続箇所においてはステンレス鋼と炭素鋼との間に絶縁パッキンが設けられる、ガス消火設備。」
第3 拒絶の理由
令和7年8月5日付けで当審より請求項1ないし4について通知した進歩性に係る拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3にて例示される周知技術に基いて、また、令和6年12月2日に提出された上申書における補正案の請求項1ないし4に係る発明は、同引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術、引用文献4にて例示される周知技術並びに引用文献5にて例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2020-54658号公報
2.実公昭55-8595号公報(周知技術を示す文献)
3.実公昭55-8593号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平8-66487号公報(周知技術を示す文献)
5.特開昭60-114582号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス系消火設備に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス系消火設備を施工する技術者の人材不足及び高齢化の下では、ガス系消火設備をより簡単に施工できるようにして、ガス系消火設備の施工性を従来よりも高めることが好ましい。」
(ウ)「【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、配管の軽量化を図り、より簡単に施工できるガス系消火設備を提供することができる。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1に係るガス系消火設備1]
図1は、実施形態1に係るガス系消火設備の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、実施形態1に係るガス系消火設備1は、防護区画10に消火剤ガスを供給するガス系消火設備であって、消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器20と、ガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される配管50と、防護区画10内に設置され配管50に接続されるノズル60と、を備えている。配管50は1つまたは複数のステンレス鋼管を有する。以下、詳細に説明する。
【0011】
(防護区画10)
防護区画10は消火剤ガスが供給される区画である。例えば、ビル、発電所、または工場などの建物内における1つの部屋を1つの防護区画10とすることができる。また、複数の部屋をまとめて1つの防護区画10とすることもできる。電子機器が設置されたコンピュータルームや配電盤などが設置された電気室などは、水や泡で消火を行うと電子機器や配電盤などが故障するため、ガスによる消火に適しており、防護区画10に適している。1つの建物内における防護区画10の数は特に限定されない。本実施形態では、1つの防護区画10ごとに1つのガス系消火設備1が施工されるものとする。
【0012】
(ガス貯蔵容器20)
ガス貯蔵容器20は、消火剤ガスを貯蔵する容器である。ガス貯蔵容器20には、ボンベなどが含まれる。本実施形態では、ガス貯蔵容器20が防護区画10外に設置されているものとするが、ガス貯蔵容器20は防護区画10内に設置することもできる。
【0013】
ガス貯蔵容器20の容量は、例えば消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器20に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であることが好ましく、消火剤ガスが液体としてガス貯蔵容器20に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の消火剤ガスを格納できる容量であることが好ましい。消火剤ガスは、液体としてガス貯蔵容器20に格納される場合、例えば、配管50内では液体、又は気体・液体混合の状態であり、ノズル50から防護区画10内に放出されるときに完全に気体になる。ガス貯蔵容器20内の圧力は、防護区画10内の圧力よりも高く、例えば0.2MPa以上30MPa以下である。これら容量や圧力は、消火剤ガスの放出開始から10秒間以上3分間以下、好ましくは1分間あるいは2分間で、防護区画10の消火において要求される消火剤ガスの全放出量(全放出量は法令などによって規定される。)の100%または90%以上の消火剤ガスが放出されるよう、設定されていることが好ましい。
【0014】
ガス貯蔵容器20は容器弁22を備えている。容器弁22は、防護区画10内で火災が発生した際に手動または自動で開放される。自動で開放される場合は、防護区画10内に熱を感知するセンサなどを設けて、このセンサからの信号などに基づき、容器弁22を開放することができる。
【0015】
ガス貯蔵容器20の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。複数のガス貯蔵容器20が配置される場合は、複数のガス貯蔵容器20すべての容器弁22が開放されてもよいが、火災の規模などに応じて、それらのうち少なくとも1つ以上の容器弁22が開放されてもよい。
【0016】
(消火剤ガス)
消火剤ガスには、消火に用いることが可能な各種のガスを用いることができる。例えば、ハロゲン化物ガスや不活性ガス(イナートガス)などが消火剤ガスの一例となる。不活性ガス(イナートガス)としては、窒素ガスあるいはアルゴンガスなどを用いることができる。特に窒素ガスは、人体への悪影響が少ないため、消火剤ガスとして好ましく用いることができる。
【0017】
(配管50)
配管50はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される。配管50は容器弁22に直接接続されてもよいし、連結管などの他の部材を介して間接接続されてもよい。配管50が容器弁22に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。複数のガス貯蔵容器20が配置される場合、配管50は、複数のガス貯蔵容器20すべての容器弁22に接続することができる。配管50は、平時においては空配管である。つまり、配管50は防護区画10の内部空間と連通しており、配管50の内部には、平時においては消火剤ガスではなく空気が存在している。
【0018】
配管50は1つまたは複数のステンレス鋼管を有している。配管50が複数のステンレス鋼管を有する場合、これら複数のステンレス鋼管は、1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結することができる。この場合、継ぎ手は、銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものであってもよいし、ステンレス製であってもよい。継ぎ手がステンレス製である場合は、そうでない場合と比較して、より施工性と腐食耐性に優れたガス系消火設備を提供することができる。継ぎ手とステンレス鋼管とを接続する方法には、ネジ、溶接、フランジ接続、またはハウジング接続などが含まれる。
【0019】
配管50の肉厚には、例えば、配管50の肉厚=(配管50の外径-配管50の内径)÷2の関係がある。ステンレス配管は材料の許容応力が従前使用している圧力配管用炭素鋼鋼管(例えば、スケジュール40、80)よりも大きく、従前使用している圧力配管用炭素鋼鋼管よりも薄い肉厚(大きな内径)で必要とされる配管強度を有することが出来る。したがって、ステンレス鋼管を有する配管50を備えた本実施形態によれば、従来よりも内径の大きな配管50を用いることが可能となり、つまり従来よりも肉厚が薄い配管50を用いることが可能となり、必要とされる配管強度を保ちつつ、配管50の軽量化を図り、配管50の運搬や設置などの作業を簡単にして、ガス系消火設備1の施工性を高めることができる。また、本実施形態によれば、圧力配管用炭素鋼鋼管を用いる従来のガス系消火設備(ただし、圧力配管用炭素鋼鋼管の配管径(外径)は、本実施形態に係る配管50の配管径(外径)と同一であるとする。)と比較して、配管50の肉厚を薄くして(つまり配管50の内径を大きくして)、配管50の管内面積を大きくすることができる。したがって、従来よりも多くの消火剤量を配管に流すことができるガス系消火設備を提供することができる。
【0020】
配管50の内径は、例えば4mm以上200mm以下である。本実施形態では、例えば4mm以上の内径を有する配管50を用いることができるが、配管50がステンレス鋼管であるため、必要とされる配管強度を確保しつつ、200mm程度にまで内径が拡大された配管50を用いることも可能である。また、配管50の全長は、例えば10m以上400m以下である。本実施形態では、例えば、全長が10m以上の配管50を用いることができるが、ステンレス鋼管を用いることにより配管50の軽量化が図られるため、配管50の全長が400m程度である場合でも、配管50の運搬や設置などの作業を簡単にして、ガス系消火設備1の施工性を高めることができる。
【0021】
ステンレス鋼管は、クロムを含む合金鋼、またはクロムとニッケルを含む合金鋼からなる。ステンレス鋼管の全重量に占めるクロムの含有量は10%以上であり、好ましくは16%以上である。
【0022】
(ノズル60)
ノズル60は、消火剤ガスを噴射などの形で放出する装置である。ノズル60は防護区画10内に設置され、配管50に接続されている。ノズル60は配管50に直接接続されてもよいし、他の部材を介して間接接続されてもよい。ノズル60が配管50に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。ノズル60は開放型であり、常に開いている。ノズル60は、天井や壁などの、防護区画10内における様々な箇所に設置することができる。ノズル60には、天井面に設置するノズル、壁に設置される横吹き出し用のノズル、または静音ノズルなどを用いることができる。ノズル60の形状や大きさは特に限定されない。防護区画10内に設置されるノズル60は、少なくとも1つであり、防護区画10の全域に均一にかつ速やかに拡散することができるように配置することが好ましい。防護区画10内に複数のノズル60が配置される場合は、複数のノズル60すべてを配管50に接続することができる。
【0023】
(動作例)
防護区画10内で火災が発生すると、ガス貯蔵容器20の容器弁22が手動または自動で開放され、ガス貯蔵容器20内の圧力と配管50内の圧力との差(ガス貯蔵容器20内の圧力>配管50内の圧力。ノズル60は常に開いているため、配管50内の圧力は防護区画10内の圧力に等しい、あるいは実質的に等しい。)により、ガス貯蔵容器20に貯蔵されている消火剤ガスが、ガス貯蔵容器20から配管50を通ってノズル60から防護区画10内に放出される。これにより、防護区画10内の酸素濃度が低下するなどして、防護区画10内の火災が鎮火される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステンレス鋼管を配管50として用いることにより、必要とされる配管強度を保ちつつ、配管50の軽量化を図ることができる。したがって、より簡単に施工できるガス系消火設備1の提供が可能となる。また、ステンレス鋼管を使用することにより、腐食耐性が確保された、あるいは従来よりも腐食耐性に優れたガス系消火設備1を提供することが可能となる。また、従来よりも多くの消火剤量を配管に流すことができるガス系消火設備1を提供することが可能となる。」
(オ)「【0025】
[実施形態2に係るガス系消火設備2]
図2は、実施形態2に係るガス系消火設備の概略構成を示す模式図である。図2に示すように、実施形態2に係るガス系消火設備2は、複数の防護区画10の少なくとも1つに消火剤ガスを供給するガス系消火設備であって、消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器20と、ガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される第1配管30と、第1配管30に接続される選択弁40と、選択弁40に接続される複数の第2配管50と、複数の防護区画10内それぞれに設置され、複数の第2配管50それぞれに接続される複数のノズル60と、を備える。複数の第2配管50の少なくとも1つは、1つまたは複数のステンレス鋼管を有する。以下、詳細に説明する。
【0026】
(複数の防護区画10)
本実施形態では、複数の防護区画10に対して1つのガス系消火設備2が施工される。1つのガス系消火設備2は、複数の防護区画10のうち火災が発生している防護区画10に対して選択的に消火剤ガスを供給する。各防護区画10については、前述した実施形態1の場合と同様であるので説明を省略する。
【0027】
(ガス貯蔵容器20)
ガス貯蔵容器20については、前述した実施形態1の場合と同様であるので説明を省略する。なお、複数のガス貯蔵容器20が配置される場合は、複数のガス貯蔵容器20すべての容器弁22が開放されてもよいが、火災の規模や火災が発生している防護区画10の数などに応じて、開放する容器弁22の数を決定あるいは調整などすることができる。
【0028】
(消火剤ガス)
消火剤ガスについては、前述した実施形態1の場合と同様であるので説明を省略する。
【0029】
(第1配管30)
第1配管30はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される。第1配管30は容器弁22に直接接続されてもよいし、連結管などの他の部材を介して間接接続されてもよい。第1配管30が容器弁22に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。複数のガス貯蔵容器20が配置される場合、第1配管30は、複数のガス貯蔵容器20すべての容器弁22に接続することができる。第1配管30は、前述した実施形態1における配管50の場合と同様に、平時においては空配管である。第1配管30には、1つまたは複数の圧力配管用炭素鋼鋼管を用いてもよいし、1つまたは複数のステンレス鋼管を用いてもよい。ステンレス鋼管を用いる場合には、より施工性と腐食耐性に優れたガス系消火設備を提供することができる。複数の圧力配管用炭素鋼鋼管や複数のステンレス鋼管には、1つまたは複数の継ぎ手により、これらを連結させることができる。この場合、継ぎ手は、銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものであってもよいし、ステンレス製であってもよい。継ぎ手がステンレス製である場合は、そうでない場合と比較して、より施工性と腐食耐性に優れたガス系消火設備を提供することができる。なお、継ぎ手とステンレス鋼管とを接続する方法には、溶接、フランジ接続、またはハウジング接続などが含まれる。
【0030】
(選択弁40)
選択弁40は、第1配管30と複数の第2配管50に接続され、複数の第2配管50の少なくとも1つと第1配管30を連通させる弁である。選択弁40は第1配管30や複数の第2配管50に直接接続されてもよいし、他の部材を介して間接接続されてもよい。第1配管30や第2配管50が選択弁40に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。選択弁40によって第1配管30と連通される第2配管50は、火災が発生した防護区画10内のノズル60に接続される第2配管50とすることができる。つまり、選択弁40は、火災が発生していない防護区画10内のノズル60に接続される第2配管50と第1配管30を連通させないようにすることができる。このようにすれば、火災が発生していない防護区画10内に消火剤ガスが放出されることを防止することができる。選択弁40の形状や大きさなどは特に限定されない。
【0031】
(複数の第2配管50)
複数の第2配管50は選択弁40に接続される。複数の第2配管50の少なくとも1つは、1つまたは複数のステンレス鋼管を有している。第2配管50は、第1配管30より全長が長く、第1配管30よりも広範囲にわたって配置されていてもよい。この場合には、第2配管50に圧力配管用炭素鋼鋼管を用いる場合と比較して、施工性と腐食耐性に優れる本実施形態の効果がより顕著となる。その他、各第2配管50の構成は、前述した実施形態1における配管50と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
(複数のノズル60)
複数のノズル60は、複数の防護区画10内それぞれに設置され、複数の第2配管50それぞれに接続される。ノズル60は第2配管50に直接接続されてもよいし、他の部材を介して間接接続されてもよい。ノズル60が第2配管50に接続される形態には、このような直接接続と間接接続の双方が含まれる。1つの防護区画10内に設置されるノズル60は、少なくとも1つであり、防護区画10の全域に均一にかつ速やかに拡散することができるように配置することが好ましい。1つの防護区画10内に複数のノズル60が配置される場合は、複数のノズル60すべてを第2配管50に接続することができる。その他、各ノズル60の構成については、前述した実施形態1におけるノズル60の構成と同様であるので説明を省略する。
【0033】
(動作例)
複数の防護区画10内のいずれかにおいて火災が発生すると、ガス貯蔵容器20の容器弁22が手動または自動で開放され、ガス貯蔵容器20内の圧力と第1、2配管50内の圧力との差(ガス貯蔵容器20内の圧力>第1、2配管30、50内の圧力。ノズル60は常に開いているため、第1、2配管30、50内の圧力は防護区画10内の圧力に等しい、あるいは実質的に等しい。)により、ガス貯蔵容器20に貯蔵されている消火剤ガスが、ガス貯蔵容器20から第1、2配管30、50を通ってノズル60から防護区画10内に放出される。火災が発生している防護区画10内にのみ消火剤ガスが放出され、火災が発生していない防護区画10内には消火剤ガスは放出されない。これにより、火災が発生している防護区画10内のみ、酸素濃度が低下するなどして、火災が鎮火される。
【0034】
以上説明したように、実施形態2によっても、実施形態1の場合と同様に、より簡単に施工でき、且つより腐食耐性に優れたガス系消火設備2を提供することが可能となる。また、従来よりも多くの消火剤量を配管に流すことができるガス系消火設備2を提供することが可能となる。」
(カ)「【実施例1】
【0035】
例えば、消火剤ガスの圧力が6.5MPAであり、65A(外形76.3mm)の配管50(第2配管50)を10m敷設するものと仮定する。この場合、本実施形態1,2の一実施例によれば、例えば、肉厚が「3.0mm」で、重さが「5.48kg/1mあたり」であるステンレス鋼管(sch10)を、配管50(第2配管50)として用いることができる。これに対し、比較例によれば、例えば、肉厚が「5.2mm」で、重さが「9.12kg/1mあたり」である圧力配管用炭素鋼鋼管(sch40)を配管(第2配管)として用いることができる。したがって、本実施形態1,2の一実施例によれば、比較例と比較して、36.4kg(91.2kg-54.8kg=36.4kg)の軽量化が図られた配管50(第2配管50)を用いて、配管50(第2配管50)を運搬や設置などするガス系消火設備の技術者の負担を軽減することが可能である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。」
(キ)「
[図:0001434799000001.jpg]
」(【図2】)
イ 引用文献1には、上記アの記載事項からみて、次の事項が記載されていると認められる。
(ア)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、引用文献1には、「1つの階を有している、例えば、ビル、発電所、または工場などの建物のガス系消火設備2」が記載されていると認められる(審決中:令和7年8月5日付け拒絶理由通知書における実施形態2として引用文献1に記載された発明の「ガス系消火設備1」は、上記ア(オ)及び引用発明のとおり「ガス系消火設備2」の誤記である。)。
(イ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「1つの階の1つの部屋または複数の部屋を一方の防護区画10とし1つの階の1つの部屋または複数の部屋を他方の防護区画10と」することが記載されていると認められる。
(ウ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「1つの階の天井面に設置するノズル60に接続された第2配管50はステンレス鋼管を有し」ていることが記載されていると認められる。
(エ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「ステンレス鋼管は他方の防護区画10に消化剤ガスを流」すものであることが記載されていると認められる。
(オ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「ステンレス鋼管を消化剤ガスが通って他方の防護区画10内に消化剤ガスを放出するノズル60が設置され」ることが記載されていると認められる。
(カ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「ノズル60は開放型であり他方の防護区画10内に常に開いて」いるものであることが記載されていると認められる。
(キ)上記ア(エ)及び(オ)の記載からみて、「消化剤ガスは窒素ガスなどを用い」るものであることが記載されていると認められる。
(ク)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「一方の防護区画10に消化剤ガスを流すための一方の選択弁40と、他方の防護区画10に消化剤ガスを流すための他方の選択弁40とを備え」るものであることが記載されていると認められる。
(ケ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「他方の防護区画10内において火災が発生すると、他方の選択弁40によって第2配管50はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される第1配管30と連通され、これにより、消化剤ガスが、他方の選択弁40、ステンレス鋼管およびノズル60を経由して他方の防護区画10内に放出され、一方及び他方の選択弁40は複数のガス貯蔵容器20および複数のガス貯蔵容器20が接続されるマニホルドよりも下流に設けられ」るものであることが記載されていると認められる。
(コ)上記ア(エ)及び(オ)の記載並びに(キ)の図示内容からみて、「ステンレス鋼管は圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30と継ぎ手により連結させ、継ぎ手はステンレス鋼管と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30を連結させる銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものやステンレス製である」ことが記載されていると認められる。
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献1には、実施形態2として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 1つの階を有している、例えば、ビル、発電所、または工場などの建物のガス系消火設備2であって、1つの階の1つの部屋または複数の部屋を一方の防護区画10とし1つの階の1つの部屋または複数の部屋を他方の防護区画10とし、1つの階の天井面に設置するノズル60に接続された第2配管50はステンレス鋼管を有し、ステンレス鋼管は他方の防護区画10に消化剤ガスを流し、
ステンレス鋼管を消化剤ガスが通って他方の防護区画10内に消化剤ガスを放出するノズル60が設置され、ノズル60は開放型であり他方の防護区画10内に常に開いており、消化剤ガスは窒素ガスなどを用い、
一方の防護区画10に消化剤ガスを流すための一方の選択弁40と、他方の防護区画10に消化剤ガスを流すための他方の選択弁40とを備え、他方の防護区画10内において火災が発生すると、他方の選択弁40によって第2配管50はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される第1配管30と連通され、これにより、消化剤ガスが、他方の選択弁40、ステンレス鋼管およびノズル60を経由して他方の防護区画10内に放出され、一方及び他方の選択弁40は複数のガス貯蔵容器20および複数のガス貯蔵容器20が接続されるマニホルドよりも下流に設けられ、
ステンレス鋼管は圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30と継ぎ手により連結させ、連結はステンレス鋼管と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30を連結させる銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものやステンレス製の継ぎ手による、ガス系消火設備2。」
2 引用文献2及び3の記載並びに引用文献2及び3にて例示される周知技術
(1)引用文献2の記載
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案は互いに直交する4つの方向と直下方向とに消火ガス噴射ノズルを備え、各噴射ノズルのうち噴射すべき方向のノズルのみから選択的に消火ガスを噴射させるように構成したノズルを備えた消火装置に関するものである。 従来、ハロンガスなどの消火ガスを用いた消火装置においては天井などに設けられたガス噴射ノズルは一定方向たとえば直下方向に固定されており、出火点近傍に効率よく消火ガスを噴出することはできないという欠点があった。 本考案は以上のような欠点を除去したものであり、以下図面に示す実施例とともに本考案の詳細を説明する。
第1図および第2図は本考案の実施例を説明する斜視図で、第1図において全体を符号1で示す消火ガス噴射ノズルは水平方向に互いに直交する状態で配置された4つのノズル2a~2dと直下方向に向けられたノズル2eとからなる。各ノズル2a~2eはそれぞれ常閉または常開の電磁弁3をそれぞれ備えている。これらの各ノズルは導管4を介して天井裏などに配管された消火ガス供給管5に接続されている。前記ノズル2a~2dは水平方向に延びているものばかりでなく、第2図に示すように下方に一定角度たとえば45°傾斜して配置されてもよくむしろこのように一定角度傾斜している場合の方が出火点に対して効果的な消火ガスの放出が可能である。このように構成された消火ガス噴射ノズルは第3図に示すように合成樹脂などから成形されたカバー6によって覆って外観をととのえて天井板1に固定される。」(第1欄第21行ないし第2欄第14行)
(イ)「
[図:0001434799000002.jpg]
」(第1図)
(ウ)「
[図:0001434799000003.jpg]
」(第3図)
イ 引用文献2の認定事項
(ア)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)及び(ウ)の図示内容からみて、「ハロンガスなどの消火ガスを供給する消火ガス供給管5が天井裏などに配管され」るものであると認められる。
(イ)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)及び(ウ)の図示内容からみて、「出火点にハロンガスなどの消火ガスを放出する消火ガス噴射ノズル1を設置時および使用時に室内に露出して備える」ものであると認められる。
ウ 引用文献2に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「ハロンガスなどの消火ガスを供給する消火ガス供給管5が天井裏などに配管され、出火点にハロンガスなどの消火ガスを放出する消火ガス噴射ノズル1を設置時および使用時に室内に露出して備えること。」
(2)引用文献3の記載
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本考案は任意の方向に方向変換できる消火ガス噴射ノズルを有する消火装置に関する。 一般にハロンガスなどの消火ガスを用いた消火装置の消火ガス噴射ノズルは一定の方向、たとえば天井に設けられた場合には直下方向のみに固定されており、火災の場合に出火点近傍に消火ガスを噴出することができず、消火効率が悪いという欠点があった。 本考案の目的は、火災検知器からの信号により、任意の方向に方向変換することができる消火ガス噴射ノズルを備えた消火装置を得るにある。 以下、図面に示す実施例とともに本考案の詳細を説明する。 第1図および第2図は本考案の一実施例を示す斜視図および側面図である。図において、1,2は円弧状に形成された回動枠で、わずかな間隙をもって互に直交するように配置されている。この回動枠1,2の基部には軸3が植設され、この軸3の基部には取付板4が回転自在に嵌合している。前記回動枠1,2の中央部にはそのほぼ全長にわたって所定幅の長溝1a,2aがそれぞれ穿設されている。この回動枠1,2の長溝1a,2aの交点には消火ガス噴射ノズル5の軸部が摺動自在に嵌合している。 一方、前記回動枠1,2のそれぞれ1つの軸には回転角度を制御できるモーターたとえばパルスモーター60回転軸に連結されている。 以上のように構成された機構部は取付板4を介して第2図に示すように枠体7にねじどめされ、枠体7はさらに天井板8にねじにより固定される。前記噴射ノズル5は天井板8に形成された孔9を通って天井裏に配管された消火ガス供給配管10に屈曲可能なベローズ11を介して連結されている。12はカバーで、ノズル5の回動範囲を含む開口部を穿設された状態で、機構部を覆い外観をととのえる。」(第1欄第24行ないし第2欄第22行)
(イ)「
[図:0001434799000004.jpg]
」(第1図)
(ウ)「
[図:0001434799000005.jpg]
」(第2図)
イ 引用文献3の認定事項
(ア)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)及び(ウ)の図示内容からみて、「ハロンガスなどの消火ガスを供給する消火ガス供給配管10が天井裏に配管され」であると認められる。
(イ)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)及び(ウ)の図示内容からみて、「出火点近傍にハロンガスなどの消火ガスを噴出する消火ガス噴射ノズル5の回動範囲を含む開口部を穿設された状態で消火ガス噴射ノズル5を含む機構部を覆い外観をととのえるカバー12を備えること」るものであると認められる。
ウ 引用文献3に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「ハロンガスなどの消火ガスを供給する消火ガス供給配管10が天井裏に配管され、出火点近傍にハロンガスなどの消火ガスを噴出する消火ガス噴射ノズル5の回動範囲を含む開口部を穿設された状態で消火ガス噴射ノズル5を含む機構部を覆い外観をととのえるカバー12を備えること。」
(3)引用文献2及び3にて例示される周知技術
上記(1)及び(2)を踏まえると、ガス消火設備の技術分野において、以下は周知の技術(以下、「周知技術1」という。)であると認められる。
「消化剤ガスを送る配管を天井裏空間に設け、室内に消火剤ガスを導入するノズルを設置時および使用時に室内に露出して備えること。」
3 引用文献6及び7の記載並びに引用文献6及び7にて例示される周知技術
(1)引用文献6の記載
ア 引用文献6の記載事項
本願の出願前に日本国内において頒布された特開2016-106763号公報(以下、「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0016】
図1から3を参照して、ガス消火設備は、防護区画1内へ消火剤ガスを送る配管3と、防護区画1に接続されて消火剤ガスを排出するためのダクト2とを備える。
【0017】
防護区画1は、ビルなどの建物に設けられる部屋である。電子機器が設けられている部屋では、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行う。噴射ノズル4から消火ガス剤を防護区画1に放出して、不活性の消火剤ガスを防護区画1に充満させて酸素濃度を減少させることで消火することが可能である。消火剤ガスとしては、窒素、アルゴンなどの不活性ガスおよびハロゲン系のガスが用いられる。
【0018】
ダクト2は、防護区画1の消火剤ガスを防護区画1から放出するためのガス経路である。ダクト2は、中空であり角型および丸型のいずれであってもよい。防護区画1の避圧口1aでダクト2の端部には、ダンパ12が設けられており、ダンパ12が開閉することでダクト2と防護区画1とが連通および遮断される。ダンパ12は実線で記載されている位置から点線で記載されている位置まで回動可能である。この実施の形態では防護区画1に一本のダクト2のみが設けられているが、複数本のダクト2が設けられていてもよい。」
(イ)「
[図:0001434799000006.jpg]
」(【図1】)
イ 引用文献6の認定事項
(ア)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)の図示内容からみて、「防護区画1にはダクト2が接続され」るものであると認められる。
(イ)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)の図示内容からみて、「ダンパ12がダクト2を閉じることでダクト2により排出する消化剤ガスが防護区画1とダクト2とが遮断されて排出されない」ものであると認められる。
ウ 引用文献6に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献6には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「防護区画1にはダクト2が接続され、ダンパ12がダクト2を閉じることでダクト2により排出する消化剤ガスが防護区画1とダクト2とが遮断されて排出されないこと。」
(2)引用文献7の記載
ア 引用文献7の記載事項
本願の出願前に日本国内において頒布された特開平9-287805号公報(以下、「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス系消火設備を備えた消火対象区画に設けた排気ダクトの閉鎖用ダンパーの駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、消火対象区画内に消火剤ガスを放出し、消火対象区画内の消火剤ガスの濃度を消炎濃度以上に維持することによって消火するようにしたガス系消火設備として、消火剤ガスに二酸化炭素やハロンガス等の不活性ガスを使用するものが実用化されている。
【0003】ところで、近年になって、オゾン層の破壊に関する問題が世界的な規模で提起され、ハロンガス等のハロゲン化炭化水素成分を含有する消火剤ガスについては、1994年1月に生産中止となり、事実上使用することができなくなった。一方、二酸化炭素を消火剤ガスとして使用する消火設備についても、消火時の消火対象区画内の二酸化炭素の設計濃度が約35%であることから、万一消火対象区画内に人が存在していた場合、二酸化炭素の毒性(麻酔性)により人命に係わる事態が発生するおそれがある等の問題が指摘されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これに対処するため、近年になって、窒素ガスやアルゴン等の人に対して安全性の高い不活性ガスを消火剤ガスとして使用する、いわゆるイナート系消火設備が提案され、実用化されてきている。
【0005】このイナート系消火設備において、例えば、消火剤ガスとして窒素ガスを使用する場合、消火対象区画内の窒素ガスの濃度を設計濃度以上にするためには、消火対象区画内に消火剤ガスとしての窒素ガスを1m3当たり0.52m3放出する必要がある。ところで、ガス系消火設備を備えた消火対象区画は、一般に、放出された消火剤ガスが消火対象区画外に流出しないように密閉構造とされるとともに、消火対象区画に設けた排気ダクトには閉鎖用ダンパーが配設され、消火剤ガスの放出時には、このダンパーを閉鎖するようにしているため、そのままでは、放出された消火剤ガスにより消火対象区画内の圧力が著しく上昇することになり、消火対象区画を含む建造物等に損傷を与えるおそれがある。この問題に対処するため、排気ダクトの閉鎖用ダンパーとは別に、放出された消火剤ガスの量に見合った消火対象区画内の空気を順次排出するための避圧ダンパーを消火対象区画の適所に設けることも提案されているが、これにより、設備費が上昇するほか、既存の建造物等においては、避圧ダンパーの設置位置の制約等から、避圧ダンパーを設けることが困難な場合があり、このため、イナート系消火設備等の大量の消火剤ガスを使用するガス系消火設備を導入することができないという問題点があった。」
(イ)「【0013】図1~図2は、本発明の第1実施例の排気ダクトの閉鎖用ダンパーの駆動制御装置3を適用したガス系消火設備を示す。このガス系消火設備1は、消火剤ガスとして、例えば、窒素ガスを使用し、これを加圧(例えば、35℃において、110Kgf/cm2)して複数本の消火剤貯蔵容器11に充填して保管するとともに、各容器11には、容器弁12を介して連結管13を接続し、さらに連結管13を1本の集合管14に接続し、この集合管14を各消火対象区画4まで延設した主配管15に接続する。主配管15には、選択弁16を配設し、複数の消火対象区画4に選択的に消火剤ガスを送るようにする。消火対象区画4まで延設した主配管15を、消火対象区画4内にそれぞれ配設した枝管17に接続し、この枝管17を消火対象区画4内の適所に複数個配設した噴射ヘッド18に接続する。
【0014】このガス系消火設備1は、消火対象区画4に火災が発生した場合、火災発見者がこの消火対象区画4に対応する制御装置2の押釦22を操作(手動操作の場合)すると、この電気信号が制御盤21に送られ、制御盤21から起動信号が容器弁開放装置23及び選択弁開放装置24に送られて、容器弁12及び選択弁16が開放される。これにより、消火剤貯蔵容器11に充填されている消火剤ガスは、容器弁12、連結管13、集合管14、選択弁16、主配管15及び枝管17を介して噴射ヘッド18まで送られ、噴射ヘッド18から消火対象区画4内に放出される。
【0015】ところで、消火対象区画4は、放出された消火剤ガスが消火対象区画4外に流出しないように密閉構造とされるとともに、消火対象区画4に設けた排気ダクト5には閉鎖用ダンパー6を配設し、この閉鎖用ダンパー6を制御盤21の発する起動信号によって作動するソレノイド31aにより閉鎖するように構成することにより、消火対象区画4内の消火剤ガスの濃度を所定の値に維持することができるようにしているが、この場合、閉鎖用ダンパー6は、消火剤ガスが消火対象区画4内に放出されるのと同時に閉鎖するのではなく、制御盤21の発する起動信号をタイマー32を介してソレノイド31aに伝達することにより、消火剤ガスの放出開始後、例えば、30~60秒後にソレノイド31aを作動させ、閉鎖用ダンパー6を閉鎖するようにする。これにより、放出された消火剤ガスの量に見合った消火対象区画4内の空気が順次排気ダクト5を通って排出され、放出された消火剤ガスにより消火対象区画4内の圧力が上昇することを防止することができ、また、所定時間経過後、閉鎖用ダンパー6が閉鎖されるため、消火対象区画4内の消火剤ガスの濃度を所定の値に維持することができる。なお、閉鎖用ダンパー6の復旧は、モータ、遠隔操作用ワイヤ、レバー等により行うようにする。」
(ウ)「
[図:0001434799000007.jpg]
」(【図2】)
イ 引用文献7の認定事項
(ア)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)の図示内容からみて、「消火対象区画には排気ダクトが設けられ」るものであると認められる。
(イ)上記ア(ア)記載並びに上記ア(イ)の図示内容からみて、「閉鎖用ダンパーが排気ダクトを閉鎖することで排気ダクトを通って排出される消化剤ガスが消火対象区画と排気ダクトとが閉鎖されて排出されない」ものであると認められる。
ウ 引用文献7に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献7には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「消火対象区画には排気ダクトが設けられ、閉鎖用ダンパーが排気ダクトを閉鎖することで排気ダクトを通って排出される消化剤ガスが消火対象区画と排気ダクトとが閉鎖されて排出されないこと。」
(3)引用文献6及び7にて例示される周知技術
上記(1)及び(2)並びに引用文献6及び7が本願明細書において従来のガス消火設備を例示する先行技術文献として記載された文献であることを踏まえると、ガス消火設備の技術分野において、以下は周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であると認められる。
「防護区画の室内にはダクトが取り付けられ、ダンパーがダクトを封止することでダクトを経由して消火剤ガスが防護区画の室内からダクトへ流れることを防止できること。」
4 引用文献4及び7の記載並びに引用文献4及び7にて例示される周知技術
(1)引用文献4の記載
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は電算機室、電話交換機室等の電気機器が設置されている閉囲空間の火災を消火、抑制する消火設備に関するものである。」
(イ)「【0005】これら水損を嫌う電気機器を設置してある閉囲空間における消火薬剤としてハロンが用いられている。このハロンは低い温度で沸騰して容易に蒸気となり、この蒸気は不燃性で、かつ空気よりも重いという特徴を有しているので、燃焼中の可燃物に放射すると、すぐ気化し、燃焼面への酸素の遮断と酸素濃度を低下させ窒息消火の効果があり、大きい消火能力を備えている上に消火後の汚損がほとんどない特徴を有している。しかしながら、このハロンは地球を取り巻くオゾン層を破壊するフロンガスの一種であるため使用を禁止されている。
【0006】また水損を与えず、消火後の汚損がほとんどない消火薬剤として二酸化炭素(CO2)を用いることが提案されている。このCO2 は不燃性のガスで比重が空気より重たい気体であるため上部に拡散することなく燃焼面をこの不燃性ガスで覆い火災を窒息消火させることができる。また、このCO2 は化学的に比較的安定しているので、消火後の火災室における汚損がない上に電気的にも絶縁性が高いので、電算機室あるいは電話交換機室等の電気機器を装備している閉囲空間の消火に適している。」
(ウ)「【0012】
【実施例】この発明の閉囲空間の消火設備、例えば電算機室等の電気機器装備の閉囲空間の消火設備の一実施例を説明する。図1は電算機室にこの発明の消火設備を設置した状態を示し、1は電算機室の閉囲空間、2は電算機(電子計算機)、3は空調機の一例としてのパッケージ空調機で、該パッケージ空調機3の循環気流3aは、図2に示すように電算機と接続するケーブルを配線する閉囲空間のフリーアクセス4を通り、その上下床面4aに設けられた循環気流取入口2aより電算機2の電気装置部に取入れられ電気機器の加熱を防止するとともに電算機室の空気を清浄にする。
【0013】5は閉囲空間に発生した低濃度の煙を感知する火災検知器で、該火災検知器5の火災信号により起動する消火剤保有装置6を設ける。この消火剤保有装置6の保有する消火薬剤用不活性ガスであるCO2の放出ガス噴射ノズル7を、図4に示すように前記フリーアクセス4の循環気流3aの取入口3bの下流に配設するのであるが、ガス噴射ノズル7は、その放射口をフリーアクセス4を形成する床面4a、4bに向けて設置する。また、図3に示すようにガス噴射ノズル7を、その放射口同士がフリーアクセス4内で対峙するように分岐管11を用いて設置しても、また、その放射口をフリーアクセス4を形成する側壁面に向けて設置してもよい。なお、図4に示すようにガス噴射ノズル7を各電算機2の循環気流取入口2aの近傍のフリーアクセスの上下床面4a、4bに向け放射するように形成してもよい。
【0014】火災検知器5の火災信号により起動する消火剤保有装置は、図5に示す様に、CO2を閉囲空間に放出したときに酸欠状態を起さない様に、放出後の閉囲空間内の平均CO2濃度が10%前後となる量の、CO2を55kg保有する貯蔵ボンベ8を2本有している。ここでCO2濃度10%とは、O2濃度で20%程度に相当する。なお上記消火剤保有装置のCO2保有量は防護容積を500m3と想定したものであり、これに限定されない。また図5中9は起動部、10は操作部である。
【0015】なお実施例ではガス噴射ノズルの消火薬剤を閉囲空間内に設定した消火剤保有装置に貯蔵してあるものをも用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、閉囲空間外に設備された消火剤保有装置を用いてもよい。次に、この消火設備の動作について説明すると、火災検知器5から低濃度の煙、たとえば2%/mの濃度の煙を検知して火災信号を消火剤保有装置6に出力すると、この装置6の起動部9が動作し、図示を省略した放出弁を開弁する。これにより、ボンベ8に貯蔵されたCO2がガス噴射ノズル7より閉囲空間1のフリーアクセス4内に放出される。ガス噴射ノズル7が、その放射口が床面4aあるいは4bに向けて設置されている(図4)場合には、各ノズル7で放出されたCO2は床面4a、4bに衝突する。また、ガス噴射ノズル7がその放射口同士が対峙して設置されている(図3)場合には、各ノズル7から放出されたCO2同士が衝突する。この床面4a、4bに衝突した、あるいはCO2同士が衝突したCO2は、その衝突によって速度を大幅に減速するとともにフリーアクセス4内に均一に拡散する。この減速し拡散したCO2は空調機3から取入口3bよりフリーアクセス4内に供給される循環気流3aによって搬送され、循環気流取入口2aより各電算機2内に流入する。このCO2を搬送する気流は、さらに、各電算機2の上面や側面に設けられた通気口2bを通って電算機2外へ流出し、取入口3cより空調機3に流入する。この結果、火災の発生しやすいフリーアクセス4内や各電算機2内にはCO2放出中は、消火に適した比較的濃いCO2が流れ、電算機2が設置された部屋部分には、電算機2を通過したCO2が拡散されて放出される。なお、上記実施例では、煙を検知する火災検知器を用いた場合について説明したが、火災検知器として火災時に生じる煙以外の熱、炎、ガスあるいは臭い等を検知する火災検知器を用いてもよく、火災検知器を閉囲空間1内に設置する代わりに、閉囲空間外に設け、閉囲空間内の空気をサンプリングパイプで火災検知器に導くようにしてもよい。また、パッケージ式空調機を閉囲空間内に設置する代わりに、閉囲空間外に設けた空調機からフリーアクセス4に循環気流を供給するようにしてもよい。さらに、消火用不活性ガスとしては窒素(N2)、アルゴン(Ar)、代替ハロン(商品名FC-3110、HFC-227ea等)、あるいはこれらの混合気体を用いてもよい。」
(エ)「
[図:0001434799000008.jpg]
」(【図1】)
イ 引用文献4に記載された技術的事項
上記アを総合すると、引用文献4には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「消火薬剤用不活性ガスは窒素(N2)または二酸化炭素(CO2)を用いること。」
(2)引用文献7の記載
ア 引用文献7の記載事項
引用文献7には、上記3(2)アの事項が記載されている。
イ 引用文献7に記載された技術的事項
上記アを総合すると、引用文献7には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「消火剤ガスとして使用する不活性ガスは窒素ガスまたは二酸化炭素を使用すること。」
(3)引用文献4及び7にて例示される周知技術
上記(1)イ及び(2)イを踏まえると、ガス消火設備の技術分野において、以下は周知の技術(以下、「周知技術3」という。)であると認められる。
「消火剤ガスは窒素または二酸化炭素であること。」
5 引用文献4及び8の記載並びに引用文献4及び8にて例示される周知技術
(1)引用文献4の記載
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、上記4(1)アの事項が記載されている。
イ 引用文献4に記載された技術的事項
上記アを総合すると、引用文献4には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「火災検知器5が煙または炎を検知すること。」
(2)引用文献8の記載
ア 引用文献8の記載事項
本願の出願前に日本国内において頒布された特開2007-516759号公報(以下、「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】 本発明は、密閉空間(以下、“目的領域”とも称する)における消火のための不活性化方法に関し、ここで、密閉空間における酸素濃度は、所定時間内に特定の不活性レベルまで低減され、同様にその方法を実施するための装置が提供され、その装置は、その目的領域の酸素濃度及び/又は不活性ガス濃度を連続測定するための少なくとも1つの酸素/不活性ガスセンサと、その目的領域の少なくとも1つの火災パラメータを検知する少なくとも1つの火災検知器と、酸素置換不活性ガスを用いてその目的領域を不活性化する不活性ガス機構と、その不活性ガス機構を制御する制御/調整手段と、を含む。【背景技術】【0002】 当該領域の酸素濃度を平均値で約12体積%に低減させることは、密閉空間の消火に関して知られている。この酸素濃度において、ほとんどの可燃材料は、もはや発火しない。この方法がもたらす消火効果は、酸素置換の原理に基づいている。よく知られているように、通常の周囲空気は、21体積%の酸素と78体積%の窒素と1体積%の他の気体とからなる。消火処理は、当該領域に不活性ガスとして例えば純粋な窒素を放出し、窒素濃度をさらに増加させ、それによって酸素の割合を低減させる。酸素濃度が約15体積%以下に低下すると消火効果が生じる。当該領域の可燃材料に依存して、酸素濃度をさらに低下すること、例えば、前述の12体積%に低下することが必要である。【0003】 この“不活性ガス消火方法”を用いて、ぼや又はすでに火事の状態である空間に、二酸化炭素、窒素、不活性ガスまたはその混合物のような酸素置換ガスを放出することが言及され、その酸素置換ガスまたは不活性ガスは、ボンベ内で加圧されて収納されるか、発生器によって必要とされる時に生産される。火事の際に、そのガスは、相当するパイプや付随する排出ノズルを通じて当該目的領域に供給される。」 (イ)「【0025】 本発明による不活性化方法のさらなる好ましい実現では、酸素濃度を低減させることは、目的領域に酸素置換ガスを供給することを介して行われ、目的領域の現在の酸素濃度と消化剤濃度とのそれぞれに依存して特に酸素置換ガスの供給を制御することが好ましい。ここで考えられることは、消化剤として窒素が用いられた時、その領域の酸素濃度を測定することである。しかしながら、CO2が消化剤として使用されるとき、好ましくはCO2濃度が酸素置換ガスの供給を制御するために目的領域で測定される。」
(ウ)「【0038】 本発明の装置のさらなる有利な実施形態は、早期火災検知のための検知器がある目的領域内の少なくとも1つの火災パラメータを検知する少なくとも1つの火災検知器を提供する。そのようなセンサは、例えば、煙、熱、火炎、煙霧検知器のようなものが従来技術として知られており、火炎や煙などの早期検知及び効率的な検知を可能にする。煙、煙霧、粉塵(ダスト)、蒸気(ミスト)、オイルミスト及びエーロゾルを検知するためのこれらのセンサによって記録される信号は、さらに前処理される。早期火災検知を提供するこれらのセンサは別として、相対湿度に加えて温度を測定するための追加のセンサは、最も信頼性のある火災検知の実現を保証するために好ましくは用いられる。早期火災認知のために、目的領域から酸素サンプルを継続的に抽出し、火災パラメータを検知するためにそれらをセンサに供給する吸引火災検知システムを目的領域内で利用することも考えられる。従って、適切で知られている本質的なセンサを活用して、視感度測定に加えて、温度測定、煙霧及び/又は不活性ガス解析は、可能な限り早く目的領域の潜在的な火災を検知するために特に目的領域からなることができる。本発明の装置と組み合わせて、可能な限り早く目的領域の初期放水を開始することができるようになるように目的領域の酸素濃度を低減することが早期火災検知の直ぐ後に開始されることができるという理由で、これは特に有利である。通常の火災検知器を用いた場合に比べて放水が数分間早く開始されるので、早期火災検知器を本発明の方法に結合することは、特定の利点があることが分かる。勿論、ここで、早期火災検知器における他の実施形態も考えられる。」
イ 引用文献8に記載された技術的事項
上記アを総合すると、引用文献8には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「火災検知器が煙または火炎を検知すること。」
(3)引用文献4及び8にて例示される周知技術
上記(1)イ及び(2)イを踏まえると、ガス消火設備の技術分野において、以下は周知の技術(以下、「周知技術4」という。)であると認められる。
「火災報知器が煙または炎を検知すること。」
6 引用文献5及び9の記載並びに引用文献5及び9にて例示される周知技術
(1)引用文献5の記載
ア 引用文献5の記載事項
引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は異種材料接合部の腐食防止方法に関する。 各種プラントで使用されている機器および流体輸送用パイプ等においては、フランジやネジなどによる異種材料の接続が行なわれている。この様な接続部では、流体の種類あるいは暴露されている環境によって各々の材料の自然電位に差が生じ、腐食電池が構成されるため腐食(電食)が発生する。 この腐食を防止するための方法として、従来、接合部の塗装、パッキンによる絶縁および絶縁継手の使用等の方法がとられているが、塗装の劣化による欠陥発生や絶縁不良等の理由により、長期間にわたって腐食を防止することは難かしい。 本発明は上記の腐食を防止するための方法を提供するもので、各種プラント配管等の接合に際して、特別なパッキンを使用することにより腐食を防止するもので、取り付け施工が容易で、一定期間使用後の交換も容易に行なえることを特徴としている。すなわち、本発明は異材料からなる配管なとの機械的接合に、該異材料よりも自然電位の低い材料からなるパッキンを介在させたことを特徴とする異材接合部の腐食防止方法である。 次に、本発明と実施例により具体的に説明する。 第1図に本発明をフランジ接続部に適用した例を示す。配管1と配管2はそれぞれ異なる金属材料から成りたっており、この場合の腐食性液体6中の各々の金属材料の自然電位が配管1(高)>配管2(低)とすると、配管2のフランジ4の近傍が腐食を受ける。一方、腐食防止用のパッキン5は金属材料から作られており、自然電位が配管1、2(高)>パッキン5(低)となる様な金属材料を選択する。バッキン5の形状は第1図に示す様にパイプ部とフランジ部から構成されており、パイプ部の長さ(l)は流体の流れ、電気伝導度、腐食性等を考慮して決めるが、流体の電気伝導度が大きい程、長目のものが必要となる。フランジ4はパッキン5のフランジ部をはさんでボルト3で固定するためシール性は良好である。パッキン5は腐食電池の形成による腐食を防ぐための犠牲陽極として作用するため、腐食性の強い流体中では長期間使用すると溶解により厚さ(L)が減少するので、ときどき交換する必要がある。交換はフランジ4をはずすことにより容易に行なうことができる。 従来は、腐食が発生した部分を切断して新しい配管を溶接で交換していたが、本発明のパッキン5を使用することにより、管の腐食を防止すると同時に交換に要する工数低減が出来た。 この実施例では、パッキン5をアルミニウム、配管1を炭素鋼、配管2を18-8ステンレス鋼で作成した。この場合、第1表に示すように海水中における自然電位は18-8ステンレス鋼>炭素鋼>アルミニウムの順に低い値となっており、接合部ではアルミニウムが犠牲陽極となるため、炭素鋼のガルバニック腐食、および隙間腐食が防止された。」(第1ページ左下欄第10行ないし第2ページ右上欄第第13行)
(イ)「
[図:0001434799000009.jpg]
」(第1表)
(ウ)「
[図:0001434799000010.jpg]
」(第1図)
イ 引用文献5に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献5には、従来の技術として、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「 流体輸送用パイプ等における異種材料の接合部に絶縁するパッキンまたは絶縁接手を使用すること。」
(2)引用文献9の記載
ア 引用文献9の記載事項
本願の出願前に日本国内において頒布された特開2018-71074号公報(以下、「引用文献9」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】 本発明は既設管を活用した排水配管に係り、特に、異種金属接触腐食の防止を可能にした既設管を活用した排水配管に関する。」 (イ)「【0034】 図1および図2に示すように、本発明に係る既設管を活用した排水配管10は、ステンレス製スリーブ2のフランジ部20の上面と、鋳鉄製可撓継手4における下向き受け口40の奥端に設けた突き合わせ面41と、の間に、異種金属間を絶縁する合成ゴム製で環状の第1絶縁パッキン50が介装されているとともに、フランジ部20の外周と、環状の保持パッキン24の外周および短管1の上端部外周を被覆する合成ゴム製で環状の第2絶縁パッキン51が、第2の環状隙間5に垂下延在した形態で備わっている。」 (ウ)「【0036】 前記構成の既設管を活用した排水配管10によれば、環状の第1絶縁パッキン50により、ステンレス製スリーブ2における上端フランジ部20の上面と、鋳鉄製可撓継手4における下向き受け口40奥端の突き合わせ面41との接触が避けられるので、異種金属接触腐食による鋳鉄製可撓継手4の損傷を防止して、既設管を活用した排水配管10の延命を達成することが可能となる。」 (エ)「 」(【図1】) (オ)「 」(【図2】)
イ 引用文献9に記載された技術的事項
上記ア及びイを総合すると、引用文献9には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「 排水配管10が、ステンレス製スリーブ2のフランジ部20の上面と、鋳鉄製可撓継手4における下向き受け口40の奥端に設けた突き合わせ面41と、の間に、異種金属間を絶縁する合成ゴム製で環状の第1絶縁パッキン50が介装されていること。」
(3)引用文献5及び9にて例示される周知技術
上記(1)イ及び(2)イを踏まえると、流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野において、以下は周知の技術(以下、「周知技術5」という。)であると認められる。
「 異種材料の管の接続箇所においては絶縁パッキンが設けられること。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「1つの階」は本願発明における「第一の階」に相当し、同様に、「例えば、ビル、発電所、または工場などの建物」は「建物」に、「ガス系消火設備2」は「ガス消火設備」に、それぞれ相当する。そして、これを踏まえると、引用発明における「1つの階を有している、例えば、ビル、発電所、または工場などの建物のガス系消火設備2」は本願発明における「第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有している、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備」と「第一の階を有している、建物のガス消火設備」の限りにおいて一致する。
引用発明における「一方の防護区画10」は本願発明における「第一の防護区画」に相当し、これを踏まえると、引用発明における「1つの階の1つの部屋または複数の部屋を一方の防護区画10」とすることは、本願発明における「第一の階に第一の防護区画が設けられ」ることに相当する。
引用発明における「他方の防護区画10」は本願発明における「第二の防護区画」に相当し、これを踏まえると、引用発明における「1つの階の1つの部屋または複数の部屋を他方の防護区画10」とすることは、本願発明における「前記第二の階に第二の防護区画が設けられ」ることと「第二の防護区画が設けられ」ることの限りにおいて一致する。
引用発明における「第2配管50」は本願発明における「配管」に相当し、同様に、「ステンレス鋼管」は「ステンレス鋼管」に、「消化剤ガス」は「消火剤ガス」に、「流」すことは「送」ることに、それぞれ相当する。そして、これを踏まえると、引用発明における「1つの階の天井面に設置するノズル60に接続された第2配管50はステンレス鋼管を有し」ていることは本願発明における「前記第二の階の天井裏空間に設けられた配管はステンレス鋼管であ」ることと「天井に設けられた配管はステンレス鋼管であ」ることの限りにおいて一致する。また、引用発明における「ステンレス鋼管は他方の防護区画10に消化剤ガスを流」すことは本願発明における「前記ステンレス鋼管は前記第二の防護区画に消火剤ガスを送」ることに相当する。
(2)引用発明における「他方の防護区画10内」は本願発明における「前記第二の防護区画の前記室内」に相当し、同様に、「消化剤ガスを放出する」ことは「消火剤ガスを導入する」ことに、「ノズル60」は「ノズル」に、「設置され」ることは「さらに備え」ることに、それぞれ相当する。そして、これを踏まえると、引用発明における「ステンレス鋼管を消化剤ガスが通って他方の防護区画10内に消化剤ガスを放出するノズル60が設置され」ることは本願発明における「前記ステンレス鋼管から消火剤ガスが供給されて前記第二の防護区画の前記室内に消火剤ガスを導入するノズルをさらに備え」ることに相当する。また、引用発明における「ノズル60は開放型であり他方の防護区画10内に常に開いて」いることは本願発明における「前記ノズルは設置時および使用時に前記第二の防護区画の前記室内に露出して」いることに相当する。
引用発明における「窒素ガス」は本願発明における「窒素」に相当し、同様に、「を用い」ることは「であ」ることに相当する。そして、これを踏まえると、引用発明における「消化剤ガスは窒素ガスなどを用い」ることは本願発明における「前記消火剤ガスは窒素または二酸化炭素であ」ることに包含される。
(3)引用発明における「一方の選択弁40」は本願発明における「第一の開閉弁」に相当し、これを踏まえると、引用発明における「一方の防護区画10に消化剤ガスを流すための一方の選択弁40」は本願発明における「前記第一の防護区画に消火剤ガスを送るための第一の開閉弁」に相当する。また、引用発明における「他方の選択弁40」は本願発明における「第二の開閉弁」に相当し、これを踏まえると、引用発明における「他方の防護区画10に消化剤ガスを流すための他方の選択弁40」は本願発明における「前記第二の防護区画に消火剤を送るための第二の開閉弁」に相当する。そして、引用発明における「備え」ることは本願発明における「さらに備え」ることに相当することから、引用発明における「一方の防護区画10に消化剤ガスを流すための一方の選択弁40と、他方の防護区画10に消化剤ガスを流すための他方の選択弁40とを備え」ることは本願発明における「前記第一の防護区画に消火剤ガスを送るための第一の開閉弁と、前記第二の防護区画に消火剤を送るための第二の開閉弁とをさらに備え」ることに相当する
引用発明における「他方の防護区画10内において火災が発生すると」は本願発明における「前記第二の防護区画の前記室内に設けられた火災報知器が煙または炎を検知すると」と「第二の防護区画の室内において火災を検知すると」の限りにおいて一致する。また、引用発明における「他方の選択弁40によって第2配管50はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される第1配管30と連通され」ることは本願発明における「前記第二の開閉弁が開」くことに相当する。そして、引用発明における「消化剤ガスが、他方の選択弁40、ステンレス鋼管およびノズル60を経由して他方の防護区画10内に放出され」ることは本願発明における「消火剤ガスが、前記第二の開閉弁、前記ステンレス鋼管および前記ノズルを経由して前記第二の防護区画の前記室内に導入され」ることに相当する。
引用発明における「一方及び他方の選択弁40」は本願発明における「前記第一および第二の開閉弁」に相当し、同様に、「複数のガス貯蔵容器20」は「複数のガスボンベ」に、「複数のガス貯蔵容器20が接続されるマニホルド」は「前記複数のガスボンベが接続されるマニホルド」に、「下流」は「下流」に、「設けられ」ることは「設けられ」ることに、それぞれ相当する。そして、これを踏まえると、引用発明における「一方及び他方の選択弁40は複数のガス貯蔵容器20および複数のガス貯蔵容器20が接続されるマニホルドよりも下流に設けられ」は本願発明における「前記第一および第二の開閉弁は複数のガスボンベおよび前記複数のガスボンベが接続されるマニホルドよりも下流に設けられ」ることに相当する。
(4)引用発明における「圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30」は本願発明における「炭素鋼管」に相当し、同様に、「継ぎ手により連結させ」ることは「接続され」ることに、「連結は」は「接続箇所においては」に、それぞれ相当する。また、引用発明における「連結はステンレス鋼管と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30を連結させる銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものやステンレス製の継ぎ手による」ことは本願発明における「接続箇所においてはステンレス鋼と炭素鋼との間に絶縁パッキンが設けられる」ことと「接続箇所においてはステンレス鋼と炭素鋼との間に接続部材が設けられる」ことの限りにおいて一致する。
2 一致点、相違点
したがって、本願発明と引用発明は、
「 第一の階を有している、建物のガス消火設備であって、第一の階に第一の防護区画が設けられまた第二の防護区画が設けられ、天井に設けられた配管はステンレス鋼管であり、ステンレス鋼管は第二の防護区画に消火剤ガスを送り、
ステンレス鋼管から消火剤ガスが供給されて第二の防護区画の室内に消火剤ガスを導入するノズルをさらに備え、ノズルは設置時および使用時に第二の防護区画の室内に露出しており、消火剤ガスは窒素であり、
第一の防護区画に消火剤ガスを送るための第一の開閉弁と、第二の防護区画に消火剤を送るための第二の開閉弁とをさらに備え、第二の防護区画の室内において火災を検知すると、第二の開閉弁が開き、これにより、消火剤ガスが、第二の開閉弁、ステンレス鋼管およびノズルを経由して第二の防護区画の室内に導入され、第一および第二の開閉弁は複数のガスボンベおよび複数のガスボンベが接続されるマニホルドよりも下流に設けられ、
ステンレス鋼管は炭素鋼管と接続され、接続箇所においてはステンレス鋼と炭素鋼との間に接続部材が設けられる、ガス消火設備。」
である点で一致し、次の点において相違する。
<相違点1>
建物について、本願発明は、第一の階と、「第一の階の上の第二の階」とを有し、「昇降機が設けられていない」建物であって、「前記第二の階」に第二の防護区画が設けられるものであるのに対し、引用文献1に記載された発明は、1つの階(第一の階)を有している、例えば、ビル、発電所、または工場などの建物(建物)であって、1つの階(第一の階)の1つの部屋または複数の部屋を(に)他方の防護区画10(第二の防護区画)とする(が設けられる)ものではあるものの、本願発明のように、「第一の階の上の第二の階」とを有し、「前記第二の階」に第二の防護区画が設けられ、「昇降機が設けられていない」ものであるのかが明らかでない点。
<相違点2>
配管について、本願発明は、「第二の階の」天井「裏空間」に設けられたものであり、「前記第二の防護区画は、前記第二の階の天井により前記第二の階の室内と前記第二の階の前記天井裏空間とに分けられて」いるものであるのに対し、引用文献1に記載された発明は、そのようなものであるのかが明らかでない点。
<相違点3>
本願発明は、「前記第二の防護区画の前記室内にはダクトが取り付けられ、ダンパーが前記ダクトを封止することで前記ダクトを経由して消火剤ガスが前記第二の防護区画の前記室内から前記ダクトへ流れることを防止でき」るものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるのかが明らかでない点。
<相違点4>
消火剤ガスに関して、本願発明は、窒素「または二酸化炭素」であるのに対し、引用発明は、窒素ガス(窒素)などを用いる(である)ものではあるものの、本願発明のような「二酸化炭素」については明らかでない点。
<相違点5>
第二の防護区画の前記室内において火災を検知すること関して、本願発明は、前記第二の防護区画の前記室内「に設けられた火災報知器が煙または炎を検知する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるのかが明らかでない点。
<相違点6>
ステンレス鋼と炭素鋼との間に設けられる接続部材に関して、本願発明は、「絶縁パッキン」であるのに対し、引用発明は、「銅や黄銅などのステンレス以外の金属からなるものやステンレス製の継ぎ手」である点。
第6 判断
1 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1に記載されたガス系消火設備(ガス消火設備)が設けられる建物に関しては、「例えば、ビル、発電所、または工場などの建物」(段落【0011】)とされていることから、第一の階と「第一の階の上の第二の階」とを有する2階建て以上の建物は当然に想定されているといえ、さらに、「例えば、ビル、発電所、または工場などの建物内における1つの部屋を1つの防護区画10とすることができる。」(段落【0011】)とされていることから、該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることが当然に想定されているといえ、「昇降機が設けられていない」ビル、発電所、または工場などの建物は例を挙げるまでもなく一般に知られていることから、当業者がガス系消火設備2(ガス消火設備)を設置する建物として、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようなものを選択することに格別の困難性は認められず容易に想到し得るものである。
(2)相違点2について
ア 引用文献2及び3にて例示される周知技術1について
上記第4の2(3)のとおり、引用文献2及び3にて例示されるガス消火設備の技術分野における周知技術1は以下のとおりである。
「消化剤ガスを送る配管を天井裏空間に設け、室内に消火剤ガスを導入するノズルを設置時および使用時に室内に露出して備えること。」
イ 組み合わせ容易
引用発明において、同様にガス消火設備の技術分野における周知技術1のような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(3)相違点3について
ア 引用文献6にて例示される周知技術2について
上記第4の3(2)のとおり、引用文献6にて例示されるガス消火設備の技術分野における周知技術2は以下のとおりである。
「防護区画の室内にはダクトが取り付けられ、ダンパーがダクトを封止することでダクトを経由して消火剤ガスが防護区画の室内からダクトへ流れることを防止できること。」
イ 組み合わせ容易
引用発明において、同様にガス消火設備の技術分野における周知技術2のような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(4)相違点4について
ア 引用文献4にて例示される周知技術3について
上記第4の4(2)アのとおり、引用文献4にて例示されるガス消火設備の技術分野における周知技術3は以下のとおりである。
「消火剤ガスは窒素または二酸化炭素であること。」
イ 組み合わせ容易
引用発明において、同様にガス消火設備の技術分野における周知技術3のような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点4に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(5)相違点5について
ア 引用文献4にて例示される周知技術4について
上記第4の4(2)イのとおり、引用文献4にて例示されるガス消火設備の技術分野における周知技術4は以下のとおりである。
「火災報知器が煙または炎を検知すること。」
イ 組み合わせ容易
引用発明において、同様にガス消火設備の技術分野における周知技術4のような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点5に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(6)相違点6について
ア 引用文献5にて例示される周知技術5について
上記第4の5(2)のとおり、引用文献5にて例示される流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5は以下のとおりである。
「 異種材料の管の接続箇所においては絶縁パッキンが設けられること。」
イ 組み合わせ容易
引用発明において、ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼管)の連結は(接続箇所においては)ステンレス鋼管(ステンレス鋼)と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼)を連結させる(との間に設けられる)継ぎ手について、同様に流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5の「異種材料の管の接続箇所に絶縁パッキンが設けられる」ような構成を採用し、また、引用文献1の実施形態2についての段落【0031】において、「複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つはステンレス鋼管(ステンレス鋼管)を有している(である)」ことが記載され、引用文献1の同段落【0031】には比較の対象として(従前の)「炭素鋼鋼管」を用いる場合も記載されていることから、複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外を(従前の)「炭素鋼鋼管」とすることは引用文献1の記載から理解される当業者の通常の選択肢の1つに過ぎず、これら「ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)」と「炭素鋼鋼管」を連結させる継ぎ手について、同様に流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5の「異種材料の管の接続箇所に絶縁パッキンが設けられる」ような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点6に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
(7)本願発明が奏する効果の予測性
そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び周知技術1ないし5から当業者が予測し得る程度のものである。
2 小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術1、引用文献6にて例示される周知技術2、引用文献4にて例示される周知技術3及び4並びに引用文献5にて例示される周知技術5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張について
1 令和7年9月16日に提出された意見書における主張
(1)審判請求人の主張の内容
審判請求人は、上記意見書において、以下のように主張する(審決注:下線は当審にて付した。)。
ア 「相違点1に関して、引用文献1ではあえて第二の階が存在しない建物のみを開示しているので、そのような引用文献1の開示から第二の階が存在する建物については容易想到ではないと思料致します。」(上記意見書の「(4) 理由2(進歩性)について」欄の(4-1))
イ 「相違点2に関して、「消化剤ガスを送る配管を天井裏空間に設け、室内に消火剤ガスを導入するノズルを設置時および使用時に室内に露出して備えること。」は「周知の技術(例えば、引用文献2の第2欄第1行ないし第5行及び第11行ないし第14行の記載並びに第1図及び第3図、引用文献3の第2欄第14行ないし第22行の記載及び第2図を参照。以下「周知技術」という。)である。」とご認定されているものの、補正後の請求項1においては、窒素または二酸化炭素を消火剤ガスとして用いるものであり、ダクトおよびダンパを設けてダクトを閉じることで消火剤ガスの漏れを防止する、いわゆる窒息消火を行うものであり、このような技術分野を引用文献2および3は何ら開示も示唆もされていません。そのため、当該技術分野において引用文献2および3は周知の技術とはいえず、これらを組み合わせることは容易ではありません。」(上記意見書の「(4) 理由2(進歩性)について」欄の(4-1))
ウ 「さらに、補正後の請求項1に関して「第二の階に消火剤を送るための第二の開閉弁とをさらに備え」ることに関しては、引用文献1はそもそも第二の階を開示していないため、このような第二の開閉弁を開示することはありません。
「第二の階の室内に設けられた火災報知器が煙または炎を検知すると、第二の開閉弁が開き、これにより、消火剤ガスが、開閉弁、ステンレス鋼管およびノズルを経由して第二の階の室内に導入され、第一および第二の開閉弁は複数のガスボンベおよび複数のガスボンベが接続されるマニホルドよりも下流に設けられ」ることに関しては、引用文献1は第二の階を開示していないため、このような第二の階に関する動作を引用文献1が開示することはありません。さらに、引用文献4はノズルが防護区画の室内に露出するようなものではなく、本願発明と異なります。」(上記意見書の「(4) 理由2(進歩性)について」欄の(4-1))
エ 「「引用文献1の同段落0031には比較の対象として(従前の)「炭素鋼鋼管」を用いる場合も記載されていることから、複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外を(従前の)「炭素鋼鋼管」とすることは当業者の通常の選択肢の1つに過ぎず、また、「異種材料の接続箇所に絶縁パッキンが設けられる」ことは引用文献5(特に第1ページ左下欄第10行ないし第11行、同左下欄第19行ないし右下欄第2行の記載)にて例示されるように周知の技術である。」に関して、引用文献1ではステンレス鋼管と炭素鋼鋼管との接続部分を何ら開示も示唆もしておらず、接続部分を設けることは当業者にとって困難なものです。さらに、引用文献5はガス消火に関する技術ではないため、引用文献1に組み合わせることは困難です。」(上記意見書の「(4) 理由2(進歩性)について」欄の(4-1))
オ 「請求項2に関して、審判官殿は、<相違点3>「第一の階の防護区画に消火剤ガスを送る配管について、請求項2に係る発明は、「炭素鋼管」であるのに対し、引用文献1に記載された発明は、「少なくとも1つはステンレス鋼管」である点。」をご認定され、「少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外について、防護区画10(第一の階)に消化剤ガス(消火剤ガス)を流す(送る)複数の第2配管50(配管)を(従前の)「炭素鋼鋼管」(炭素鋼管)とすることは当業者において設計時に考えられる通常の選択肢の1つに過ぎず、相違点3に係る請求項2に係る発明の発明特定事項に想到することは容易になし得るものである。」とご認定されているものの、引用文献1はステンレス鋼管を用いる発明であるところ、なぜ炭素鋼管を用いるのかについて動機付けがありません。そのため、請求項2に係る発明は進歩性を有しています。」(上記意見書の「(4) 理由2(進歩性)について」欄の(4-2))
(2)審判請求人の主張の検討
上記(1)の主張について検討する。
ア 上記(1)アの主張について
上記第5の2の相違点1のとおりである。
そして、上記第6の1(1)のとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備(ガス消火設備)が設けられる建物に関しては、「例えば、ビル、発電所、または工場などの建物」(段落【0011】)とされていることから、第一の階と「第一の階の上の第二の階」とを有する2階建て以上の建物は当然に想定されているといえ、さらに、「例えば、ビル、発電所、または工場などの建物内における1つの部屋を1つの防護区画10とすることができる。」(段落【0011】)とされていることから、該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることが当然に想定されているといえ、「昇降機が設けられていない」ビル、発電所、または工場などの建物は例を挙げるまでもなく一般に知られていることから、当業者がガス系消火設備2(ガス消火設備)を設置する建物として、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようなものを選択することに格別の困難性は認められず容易になし得るものである。
そうすると、上記(1)アの主張は採用することができない。
イ 上記(1)イの主張について
相違点2については、上記第5の2のとおり、令和7年8月5日付け拒絶理由通知書における理由2(進歩性)についての相違点2と同様である。
同主張における引用文献2には、上記第4の2(1)ウのとおり、出火点(室内)にハロンガスなどの消火ガス(消化剤ガス)を放出する(導入する)消火ガス噴射ノズル1(ノズル)を設置時および使用時に室内に露出して備えることが記載され、同引用文献3には、上記第4の2(2)ウのとおり、出火点(室内)にハロンガスなどの消火ガス(消化剤ガス)を放出する(導入する)消火ガス噴射ノズル1(ノズル)を設置時および使用時に室内に露出して備えることが記載されており、上記第4の4(1)ア(イ)の引用文献4の段落【0005】に「消火薬剤としてハロンが用いられている。このハロンは・・・燃焼面への酸素の遮断と酸素濃度を低下させ窒息消火の効果があり」と記載されていることから理解できるように、引用文献2及び3に記載された技術は、窒息消火を行うものである。 そうすると、上記(1)イの主張は、引用文献2及び3に記載された技術に対する誤った理解を前提とする主張であり、失当であって採用することはできない。
そして、上記第6の1(2)のとおり、引用発明において、同様にガス消火設備の技術分野における周知技術1のような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
ウ 上記(1)ウの主張について
同主張のうち、引用文献1に関する主張については、上記第4の1(2)のとおり、引用発明は、「一方の防護区画10(第一の防護区画)に消化剤ガス(消火剤ガス)を流す(送る)ための一方の選択弁40(第一の開閉弁)と、他方の防護区画10」(第二の防護区画)に消化剤ガス(消火剤)を流す(送る)ための他方の選択弁40(第二の開閉弁)とを備え(さらに備え)」るものであり、「他方の防護区画10内(第二の防護区画の室内)において火災が発生すると」)、他方の選択弁40(第二の開閉弁)によって第2配管50はガス貯蔵容器20の容器弁22に接続される第1配管30と連通され(が開き)、これにより、消化剤ガス(消火剤ガス)が、他方の選択弁40(第二の開閉弁)、ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)およびノズル60(ノズル)を経由して他方の防護区画10内(第二の防護区画の室内)に放出され」(導入され)、一方及び他方の選択弁40」(第一および第二の開閉弁)は複数のガス貯蔵容器20(複数のガスボンベ)および複数のガス貯蔵容器20(複数のガスボンベ)が接続されるマニホルド(マニホルド)よりも下流(下流)に設けられ(設けられ)」るものであり、「第二の階」に係る主張については上記アのとおりである。
また、同主張のうち、引用文献4に関する主張については、引用文献4は、上記第6の1(4)の相違点4についての検討のとおり、上記第4の4(2)ア及び上記第6の1(4)アのとおりの周知技術3である「消火剤ガスは窒素または二酸化炭素であること。」を例示する文献として、また、上記第6の1(5)の相違点5についての検討のとおり、上記第4の4(2)イ及び上記第6の1(5)アのとおりの周知技術4である「火災報知器が煙または炎を検知すること。」を例示する文献として引用されたものであり、引用文献4に関する主張のような「ノズルが防護区画の室内に露出するようなもの」については、上記第4の1(2)のとおり、引用文献1に記載された事項であって本願発明との相違点でもなく、また、かかる主張の点が、引用文献4による上記例示を妨げるものではない。
そうすると、上記(1)ウの主張は採用することができない。
エ 上記(1)エの主張について
同主張のうち、引用文献1に関する主張については、引用文献1において上記第4の1(1)ア(オ)の段落【0029】に「複数の圧力配管用炭素鋼鋼管や複数のステンレス鋼管には、1つまたは複数の継ぎ手により、これらを連結させることができる。」と記載されていることから、引用発明は、上記第4の1(2)のとおり、ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)は圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼管)と継ぎ手により連結させ(接続され)るものであり、また、引用文献1の実施形態2についての段落【0031】において、「複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つはステンレス鋼管(ステンレス鋼管)を有している(である)」ことが記載され、引用文献1の同段落【0031】には比較の対象として(従前の)「炭素鋼鋼管」を用いる場合も記載されていることから、複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外を(従前の)「炭素鋼鋼管」とすることは引用文献1の記載から理解される当業者の通常の選択肢の1つに過ぎず、これら「ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)」と「炭素鋼鋼管」を継ぎ手により連結させるものでもあり、上記主張における「引用文献1ではステンレス鋼管と炭素鋼鋼管との接続部分を何ら開示も示唆もしておらず、接続部分を設けることは当業者にとって困難なものです。」は当を得ておらず、採用することはできない。
また、引用文献5に関する主張については、引用文献5は、上記第4の5(2)のとおり、流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5を例示する文献として引用されたものであり、上記第6の1(6)の相違点6についての検討のとおり、当該周知技術5は引用発明とともに流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野に属するものであることから、これらを組み合わせる動機は十分にあるといえる。
そして、上記第6の1(6)のとおり、引用発明において、ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼管)の連結は(接続箇所においては)ステンレス鋼管(ステンレス鋼)と圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼)を連結させる(との間に設けられる)継ぎ手について、同様に流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5の「異種材料の管の接続箇所に絶縁パッキンが設けられる」ような構成を採用し、また、引用文献1の実施形態2についての段落【0031】において、「複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つはステンレス鋼管(ステンレス鋼管)を有している(である)」ことが記載され、引用文献1の同段落【0031】には比較の対象として(従前の)「炭素鋼鋼管」を用いる場合も記載されていることから、複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外を(従前の)「炭素鋼鋼管」とすることは引用文献1の記載から理解される当業者の通常の選択肢の1つに過ぎず、これら「ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)」と「炭素鋼鋼管」を連結させる継ぎ手について、同様に流体輸送用パイプ等の異種材料の接続の技術分野における周知技術5の「異種材料の管の接続箇所に絶縁パッキンが設けられる」ような構成を採用し、その際、相違点1で検討したとおり、引用文献1に記載されたガス系消火設備2(ガス消火設備)が設けられる建物として2階建て以上の建物及び該「第二の階」を含む各階(の各部屋)「に防護区画10(防護区画)を設け」ることは当然に想定されていることを踏まえると、当業者の設計時における選択の自由度の範囲内で通常の創作能力を発揮することにより、相違点6に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
オ 上記(1)オの主張について
同主張は、本願の請求項2に係る発明に関する主張ではあるが、同主張のうち、本願発明とも関連し得る「引用文献1はステンレス鋼管を用いる発明であるところ、なぜ炭素鋼管を用いるのかについて動機付けがありません。」なる主張について検討する。
上記エのとおり、
引用文献1において上記第4の1(1)ア(オ)の段落【0029】に「複数の圧力配管用炭素鋼鋼管や複数のステンレス鋼管には、1つまたは複数の継ぎ手により、これらを連結させることができる。」と記載されていることから、引用発明は、上記第4の1(2)のとおり、ステンレス鋼管(ステンレス鋼管)は圧力配管用炭素鋼鋼管を用いた第1配管30(炭素鋼管)と継ぎ手により連結させ(接続され)るものであり、また、引用文献1の実施形態2についての段落【0031】において、「複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つはステンレス鋼管(ステンレス鋼管)を有している(である)」ことが記載され、引用文献1の同段落【0031】には比較の対象として(従前の)「炭素鋼鋼管」を用いる場合も記載されていることから、複数の第2配管50(配管)の少なくとも1つのステンレス鋼管(ステンレス鋼管)以外を(従前の)「炭素鋼鋼管」とすることは引用文献1の記載から理解される当業者の通常の選択肢の1つに過ぎないことから、上記主張は当を得ておらず、採用することはできない。
3 小括
したがって、審判請求人の主張はいずれも採用することができず、上記第6のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術1、引用文献6にて例示される周知技術2、引用文献4にて例示される周知技術3及び4並びに引用文献5にて例示される周知技術5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3にて例示される周知技術、引用文献6にて例示される周知技術、引用文献4にて例示される周知技術並びに引用文献5にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-016002