特許拒絶査定不服審判
2023-020621
ガス系消火設備
- 審判番号
- 2023-020621
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-187821
- 請求日
- 2023年12月05日
- 審決日
- 2025年03月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社コーアツ
- 【請求人代理人】蟹田 昌之
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 北村 亮
- 審判官 河端 賢
- 分類
- P18 .121-WZ (A62C) / P18 .537-WZ (A62C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-187821「ガス系消火設備」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月9日出願公開、特開2020-54658〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2018-187821号(以下、「本願」という。)は、平成30年10月2日に出願されたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 6月28日付け:拒絶理由通知(発送日:同年7月5日)
令和4年 9月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年12月23日付け:拒絶理由通知(発送日:令和5年1月
10日)
令和5年 3月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 6月13日付け:拒絶理由通知(最後)(発送日:同年6月
20日)
令和5年 8月14日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 8月22日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定(発送日:
同年9月12日)
令和5年12月 5日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年 8月22日付け:拒絶理由通知(発送日:同年8月27日)
令和6年10月22日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
令和6年10月22日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 防護区画に消火剤ガスを供給するガス系消火設備であって、
前記消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器と、
前記ガス貯蔵容器の容器弁に接続される配管と、
前記防護区画内に設置され前記配管に接続されるノズルと、を備え、
前記配管の全長は、10m以上400m以下であり、
前記配管の内径は、4mm以上200mm以下であり、
前記配管は複数のステンレス鋼管を有し、
前記ガス貯蔵容器の容量は、前記消火剤ガスが気体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、前記消火剤ガスが液体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、
複数の前記ガス貯蔵容器が配置され、複数の前記ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の前記容器弁が開放され、
前記ガス貯蔵容器にはボンベが用いられ、
複数の前記ステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、前記継ぎ手はステンレス製である、ガス系消火設備。」
すなわち、令和5年12月5日提出の審判請求書と同時に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明からみて「火炎の規模に応じて」なる事項が削除されたものに該当し、令和5年8月22日付けの補正の却下の決定により却下された令和5年8月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明からみて「(ただし、前記ガス貯蔵容器の容量が6.8m3以上であるガス系消火設備を除く。)」なる事項が削除されたものに該当し、令和5年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明と同様なものに該当すると認められる。
第3 原査定及び当審より通知した拒絶の理由
1 原査定、すなわち、令和5年6月13日付けで請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献2にて例示される周知技術並びに引用文献3及び4にて例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:中国実用新案第201815042号明細書
引用文献2:特開平8-173565号公報
引用文献3:特開昭62-251591号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2003-194268号公報(周知技術を示す文献)
2 令和6年8月22日付けで当審より請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(明確性要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<付言>
請求項1及び2に係る発明は上記の通り明確でないため、原査定の理由の判断は留保する。
第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
(ア)「
[図:0001423071000001.jpg]
」
(当審訳:技術分野
[0001] 本実用新案は自動消防システムに関連し、適用した半導体あるいはディスプレイを製造するプロセスキャビティの自動消防システムに特に関連する。)
(イ)「
[図:0001423071000002.jpg]
[図:0001423071000003.jpg]
」
(当審訳:発明を実施するための最良の形態
[0014] 以下では、関連する図式を参照し、本実用新案の自動消防システムの実施例について、理解を容易にするために実施例中の同じ構成要素は同一の符号として説明する。
[0015] 図1は本実用新案の自動消防システムのブロック図である。
[0016] 図示するように、本実用新案の自動消防システム1は、プロセスキャビティを消火するものであり、少なくとも一つの検出ユニット10、少なくとも1個の消火ユニット11、少なくとも1個の警告ユニット12、制御ユニット13および監視システム14を含むものである。そのうち、検出ユニット10は炎検出器101、煙検出器102、温度検出部103あるいはこれらの検出器の組み合わせを含み;消火ユニット11は少なくとも1個の消火ガス供給システム110を含み、ガス供給システム110を鎮火して少なくとも一つの消火ガス貯蔵装置1101、少なくとも1個の圧力スイッチ1102を含む;また、消火ユニット11はまた少なくとも一つの閉止弁111および少なくとも1個のノズル112を含むことができる;警告ユニット12は少なくとも1個の警告ランプ120および少なくとも1個のブザー121を含む;制御ユニット13は自動制御モジュール132、手動制御モジュール133および蓄積装置134を含む;監視システムはネットワーク系140および少なくとも1個のモニタ141を含む。また、制御ユニット13は、警告ユニット12、検出ユニット10および消火ユニット11を接続し、検出ユニット10はまた監視システム14を接続する。
[0017] そのうち、検出ユニット10はプロセスキャビティの周囲に設けられ、燃焼状態2を検出すると、検出信号100を制御ユニット13および監視システム14にそれぞれ与え、制御ユニット13は検出信号100を受信した後検出信号100が特性数であるか否か判断し、プロセスキャビティの周囲に設けられる警告ユニット12が警告信号130を出力し、警告ランプ120を点灯させブザー121を鳴らして警告し、消火ユニット11に消火信号131を出力して、消火ガス供給システム110の圧力スイッチ1102、管路1103(ステンレススチール材質)および閉止弁111によって、消火ガス1100(二酸化炭素あるいは窒素)がノズル112に至って排出され、消火ガス1100を噴射して燃焼状態2を消火する。炎検出器101で燃焼状態2を検出した場合、その特性値は燃焼状態2の赤外線光スペクトルを取得するために決定され、このスペクトルが火炎の態様であると判断された場合、火災の発生が確認され;煙検出器102で燃焼状態2を検出した場合、その特性数の判断はプロセスキャビティ近傍の微小粒子の数を測定するものであり、クリーンルームの上限を超えた場合は、火災の発生が確認され;温度検出器103で燃焼状態2を検出した場合、その特性値の判断はプロセスキャビティに隣接する温度を判定することであり、クリーンルームが維持する上限を超えている、すなわち火災の発生が確認される。火災の発生が確認された後は、記録装置134に各消火ユニット11の動作状態を記録し、監視システム14は、ネットワークシステム140を通じてモニタ141に検出信号100を表示して火災発生場所を関係者に知らせる。
[0018] 図2は本実用新案の自動消防システムの実施例の概略図である。本実施例では、警告ユニット12はプロセスキャビティ3の開口の左上方に設けられ、検出ユニット10およびノズル112はプロセスキャビティ3の開口の上方に設けられ、ノズル112は、管路1103、閉止弁111および圧力スイッチ1102を介して消火ガス貯蔵装置1101に接続されている。閉止弁111は選択部品であるが、本実施例では閉止弁111を用いた例として説明する。また、制御ユニット13の一般的な動作モードは自動運行であるが、手動運行も可能であり、本実施例では、手動制御モジュール133の切換手段は警告ユニットの下方に位置している。
[0019] 消火ガス貯蔵装置1101は大きすぎるため、プロセスキャビティ3とは異なった階に設けられ、省スペース化を図る。また、火災発生時に消火ガス1100が正確に排出されるようにするため、消火ガス貯蔵装置1101とノズル112との間の管路1103上に、圧力スイッチ1102を設け、ガスが流れているときのみ圧力スイッチ1102を開くことで、消火ガス1100の排出を監視することができる;本自動消防システム1の修理・保守を行う際には、安全のため、圧力スイッチ1102とノズル112の間の管路1103に設けた閉止弁111により消火ガス供給システム1101からの消火ガス1100の排出を閉止して、安全に保守を行うことができるようにしている。
[0020] 以上は例示であり、これに限定されるものではない。本実用新案の精神及び範囲から離脱しない同等の修正または変更は、請求の範囲に含まれるものである。)
(ウ)「
[図:0001423071000004.jpg]
」([図1])
(エ)「
[図:0001423071000005.jpg]
」([図2])
(オ)上記(イ)及び(エ)からみて、防護区画に消火ガス1100を排出する自動消防システム1が記載されていると認められる。
(カ)上記(イ)及び(エ)からみて、防護区画内に設けられ管路1103に接続されているノズル112を備えていることが記載されていると認められる。
(キ)上記(イ)からみて、少なくとも1つの消火ガス貯蔵装置1101が設けられ、少なくとも1つの消火ガス貯蔵装置1101の少なくとも1つの閉止弁111が開かれることが記載されていると認められる。
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 防護区画に消火ガス1100を排出する自動消防システム1であって、
消火ガス1100を排出する消火ガス貯蔵装置1101と、
消火ガス貯蔵装置1101に接続されている管路1103と、
防護区画内に設けられ管路1103に接続されているノズル112と、を備え、
管路1103はステンレススチール材質であり、
少なくとも1つの消火ガス貯蔵装置1101が設けられ、少なくとも1つの消火ガス貯蔵装置1101の少なくとも1つの閉止弁111が開かれ、
自動消防システム1。」
2 引用文献2の記載及び引用文献2に記載された技術的事項
(1)引用文献2の記載事項
ア 引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、消火対象区画内に窒素ガス等の不活性ガス消火剤を放出し、消火対象区画内の不活性ガス消火剤の濃度を消炎濃度以上に維持することによって消火するようにした不活性ガス消火設備における消火方法及びその設備に関するものである。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来、消火対象区画内にガス系消火剤を放出し、消火対象区画内のガス系消火剤の濃度を消炎濃度以上に維持することによって消火するようにしたガス系消火設備として、消火剤に二酸化炭素やハロンガス等の不活性ガスを使用したものが実用化されている。
【0003】まず、不活性ガス消火設備の一例を図5を参照して説明する。この例は、3つの消火対象区画6-1,6-2,6-3を有する場合の不活性ガス消火設備を示したものである。この不活性ガス消火設備は、不活性ガス消火剤として、例えば、窒素ガスを使用し、これを加圧して高圧ガス容器に充填した状態(35℃において、150Kgf/平方cm)で消火設備内に保管することにより、不活性ガス消火剤貯蔵容器1として利用する。この例の不活性ガス消火設備には、5本の不活性ガス消火剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え、各容器1には、容器弁2を介して連結管3を接続し、さらに連結管3を1本の集合管4に接続し、この集合管4を各消火対象区画6-1,6-2,6-3まで延設した主配管5-1,5-2,5-3に接続する。主配管5-1,5-2,5-3には、選択弁9-1,9-2,9-3を配設し、消火対象区画6-1,6-2,6-3に選択的に不活性ガス消火剤を送るようにする。消火対象区画6-1,6-2,6-3まで延設した主配管5-1,5-2,5-3を、消火対象区画6-1,6-2,6-3内にそれぞれ配設した枝管8-1,8-2,8-3に接続し、この枝管8-1,8-2,8-3を消火対象区画6-1,6-2,6-3内の適所に複数個配設した噴射ヘッド7-1,7-2,7-3に接続する。
【0004】ところで、通常、各消火対象区画6-1,6-2,6-3は、その容積が異なるため、当然、消火するのに必要となる不活性ガス消火剤の量も異なる。このため、主配管5-1,5-2,5-3の口径を各消火対象区画6-1,6-2,6-3の容積に応じて異ならせるほか、火災の際、消火対象となる消火対象区画6-1,6-2,6-3に対応した本数の不活性ガス消火剤貯蔵容器1が開放されるように不活性ガス消火設備を構成する。
【0005】ここで、開放すべき不活性ガス消火剤貯蔵容器1の本数を、消火対象区画6-1が5本、消火対象区画6-2が3本、消火対象区画6-3が1本に設定することとする。なお、図中、9-1,9-2,9-3は選択弁、10-1,10-2,10-3は選択弁開放装置、11-1,11-2,11-3は起動用ガス容器、12-1,12-2,12-3は起動用ガス容器開放用のソレノイドである。また、図中、13-1,13-2,13-3は、選択弁9-1,9-2,9-3及び起動用ガス容器11-1,11-2,11-3の開放をコントロールする起動用ガス管路で、選択弁開放装置10-1,10-2,10-3に接続され、その途中の適所に不還弁14-1,14-2,14-3,14-A,14-Bを配設する。なお、不還弁14-1,14-2,14-3,14-A,14-Bの通過可能方向は、図の矢印の向きで表している。なお、これらの部材の末尾の数字1,2,3は、消火対象区画の末尾の数字1,2,3にそれぞれ対応している。
【0006】次に火災の際の動作について説明する。いま、消火対象区画6-1に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6-1に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12-1に送られ、ソレノイド12-1が動作して起動用ガス容器11-1が開放される。起動用ガス容器11-1が開放されることにより放出された起動用ガスは、まず、選択弁開放装置10-1に導入されて選択弁9-1を開放してから、不還弁14-1を経て起動用ガス管路13-1を通り、不還弁14-A及び不還弁14-Bを通過して全ての容器弁22に至って不活性ガス消火剤貯蔵容器1を5本とも開放する。このとき、不還弁14-2及び不還弁14-3を通過することができないため、選択弁9-2及び選択弁9-3は開放されない。これにより、開放された5本の不活性ガス消火剤貯蔵容器1から不活性ガスを、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9-1、主配管5-1及び枝管8-1を介して噴射ヘッド7-1まで送り、噴射ヘッド7-1から消火対象区画6-1内に放出するようにする。
【0007】また、消火対象区画6-2に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6-2に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12-2に送られ、ソレノイド12-2が動作して起動用ガス容器11-2が開放される。起動用ガス容器11-2が開放されることにより放出された起動用ガスは、まず、選択弁開放装置10-2に導入されて選択弁9-2を開放してから、不還弁14-2を経て起動用ガス管路13-2を通り、不還弁14-Bを通過して容器弁22に至って不活性ガス消火剤貯蔵容器1を3本だけ、すなわち、不活性ガス消火剤貯蔵容器1-3,1-4,1-5を開放する。このとき、不還弁14-Aを通過することができないため、不活性ガス消火剤貯蔵容器1のうち2本、すなわち、不活性ガス消火剤貯蔵容器1-1,1-2は開放されない。また、不還弁14-1及び不還弁14-3を通過することができないため、選択弁9-1及び選択弁9-3は開放されない。これにより、開放された3本の不活性ガス消火剤貯蔵容器1-3,1-4,1-5から不活性ガスを、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9-2、主配管5-2及び枝管8-2を介して噴射ヘッド7-2まで送り、噴射ヘッド7-2から消火対象区画6-2内に放出するようにする。
【0008】また、消火対象区画6-3に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6-3に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12-3に送られ、ソレノイド12-3が動作して起動用ガス容器11-3が開放される。起動用ガス容器11-3が開放されることにより放出された起動用ガスは、まず、選択弁開放装置10-3に導入されて選択弁9-3を開放してから、不還弁14-3を経て起動用ガス管路13-3を通り、容器弁22に至って不活性ガス消火剤貯蔵容器1を1本だけ、すなわち、不活性ガス消火剤貯蔵容器1-5を開放する。このとき、不還弁14-Bを通過することができない(したがって、当然、不還弁14-Aも通過することができない)ため、不活性ガス消火剤貯蔵容器1のうち4本、すなわち、不活性ガス消火剤貯蔵容器1-1,1-2,1-3,1-4は開放されない。また、不還弁14-1及び不還弁14-2を通過することができないため、選択弁9-1及び選択弁9-2は開放されない。これにより、開放された1本の不活性ガス消火剤貯蔵容器1-5から不活性ガスを、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9-3、主配管5-3及び枝管8-3を介して噴射ヘッド7-3まで送り、噴射ヘッド7-3から消火対象区画6-3内に放出するようにする。
【0009】ところで、上記の不活性ガス消火設備の具体的な実例1を表1に示す。
【0010】
【表1】
[図:0001423071000006.jpg]
【0011】表1は、実例1について、消火対象区画6-1,6-2,6-3の容積と必要消火剤量、消火剤濃度、酸素濃度等との関係を示したものであるが、本例では、消火対象区画6-1,6-2,6-3のいずれに対しても、不活性ガス消火剤の濃度が計画設計濃度である35%以上あり、また、酸素濃度も短時間の人体に対する許容濃度である12%以上あるため、消火性能の観点及び消火対象区画内に取り残された者の人命の観点において特に問題はない。
【0012】このように、不活性ガス消火剤量の総和が最大の消火対象区画の消火に必要な量となるように不活性ガス消火剤貯蔵容器1を複数個用意し、この不活性ガス消火剤貯蔵容器を複数の消火対象区画で共用することが、従来一般的に行われているが、消火対象区画6-1,6-2,6-3の容積と不活性ガス消火剤貯蔵容器各々の容量の関係によっては、消火性能の観点又は消火対象区画内に取り残された者の人命の観点において問題が生じることが考えられる。その場合の具体的な実例2を表2に示す。
【0013】
【表2】
[図:0001423071000007.jpg]
」
(ウ)「【0024】本発明において不活性ガス消火剤として使用される、窒素ガス並びにアルゴンガス、ヘリウムガス等は、特に人に対する安全性が高いものである。
【0025】なお、消火時の消火対象区画内の酸素濃度を12%以上に維持するために、
○1消火対象区画が複数ある場合でも不活性ガス消火剤貯蔵容器を共用せず、消火対象区画毎に消火対象区画の容積に対応した容量の不活性ガス消火剤貯蔵容器を設置する。例えば、表2に示した実例2において、消火対象区画6-1に対して10立方メートルの容量の不活性ガス消火剤貯蔵容器を5本、消火対象区画6-2に対して7立方メートルの容量の不活性ガス消火剤貯蔵容器を3本、消火対象区画6-3に対して6.8立方メートルの容量の不活性ガス消火剤貯蔵容器を1本、それぞれ設置する。
○2不活性ガス消火剤量の総和が最大の消火対象区画の消火に必要な量となるように、かつ他の消火対象区画の容積との関係を考慮して、容量を調整した不活性ガス消火剤貯蔵容器1を複数個用意し、この不活性ガス消火剤貯蔵容器を複数の消火対象区画で共用する。例えば、表2に示した実例2において、消火対象区画6-1に対して7.1立方メートルの容量の不活性ガス消火剤貯蔵容器を7本設置し、消火対象区画6-2に対してはこのうち3本を、また、消火対象区画6-3に対しては1本を、それぞれ放出するようにする。ことも考えられるが、これらの方法は、いずれも不活性ガス消火剤貯蔵容器の数が増加し、設備のコストを増大させる等の理由から、あまり好ましい解決方法とはいえない。」(審決注:「○数字」は○付き数字を意味する。)
(エ)「
[図:0001423071000008.jpg]
」(【図5】)
(オ)上記(イ)及び(エ)からみて、5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え、5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5のうち5つ、3つまたは1つの容器弁2を開放することが記載されていると認められる。
(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献2には、次の各技術的事項(以下、「引用文献2記載技術的事項1」及び「引用文献2記載技術的事項2」という。)が記載されているものと認められる。
<引用文献2記載技術的事項1>
「 消火対象区画6-1,6-2,6-3に不活性ガス消化剤を放出する不活性ガス消火設備であって、
不活性ガス消化剤を充填した不活性ガス消化剤貯蔵容器1と、
不活性ガス消化剤貯蔵容器1を容器弁2を介して接続する連結管3、集合管4、主配管5-1,5-2,5-3及び枝管8-1,8-2,8-3と、
消火対象区画6-1,6-2,6-3内の適所に複数個配設した連結管3、集合管4、主配管5-1,5-2,5-3及び枝管8-1,8-2,8-3に接続する噴射ヘッド7-1,7-2,7-3と、を備え、
5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え、5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5のうち5つ、3つまたは1つの容器弁2を開放し、
不活性ガス消化剤貯蔵容器1は5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え、
不活性ガス消火設備。」
<引用文献2記載技術的事項2>
「不活性ガス消化剤貯蔵容器1の容量は、不活性ガス消化剤を加圧して不活性ガス消化剤貯蔵容器1に充填した状態で10立方メートル、7立方メートル及び6.8立方メートルの不活性ガス消化剤を充填した容量であること。」
3 引用文献3の記載及び引用文献3に記載された技術的事項
(1)引用文献3の記載事項
ア 引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「2.特許請求の範囲
(1)接続管の端部の内面にリング状溝部を設け、上記リング状溝部にリング状シール部材を装着し、被接続管の端部を上記接続管の端部に挿入し、接続管と被接続管の相互に重合状態にある端部を、被接続管が接続管に対して引抜かれる方向に向けてテーパ状に縮径させることにより接続管と被接続管を接続する管継手。
(2)接続管が継手管である特許請求の範囲第1項に記載の管継手。」(第1ページ左下欄第4行ないし第13行)
(イ)「[産業上の利用分野]
本発明は、管継手に関する。
[従来の技術]
近年、ガス管、水道管等に用いられる管は、耐食性、耐久性の面からステンレス製のものが多く用いられている。」(第1ページ左下欄第15行ないし第20行)
(ウ)「 第1図は接続管としての継手管を用いて一対の被接続管の管端部同士を接続する状態に係り、各被接続管を継手管に挿入した状態を示す断面図、第2図は重合状態にある継手管と被接続管を縮径ダイスにより縮径する前の状態を示す断面図、第3図は同縮径された後の状態を示す断面図、第4図(A)は第2図のA部を拡大して示す断面図、第4図(B)は第3図のB部を拡大して示す断面図、第5図は継手管を用いて一対の被接続管の管端部同士を接続した状態を示す断面図である。
接続管としての継手管10は、第1図に示すように両端部にそれぞれ被接続管11の端部を矢示A方向に挿入可能とする接続部12を有してなる。すなわち、継手管10は、各接続部12の内径を被接続管11の端部の外径D1より大きいD2としている。継手管lOの各接続部12に挿入される被接続管11の端部は、接続部12の内径D2より小さい内径D3を備える管中央部13と接続部12との内周側段差部に衝合される。
被接続管11の端部を挿入可能とする接続部12は、内面周部に2条のリング状溝部14Aおよび14Bを設けてなる。各リング状溝部14A、14B内には、リング状シール部材15が装着される。リング状シール部材15は、ゴムあるいは可撓性樹脂製のOリング等で構成され、該シール部材15は第4図(A)に示すように予め、リング状溝部14Aおよび14Bの内周部に装入・位置決めされている。継手管10は、ステンレス製の薄肉管により形成され、各リング状溝部14A、14および内径D3の管中央部13は、それぞれステンレス製の直管を圧縮変形して形成するようにしている。一方、各接続部12に挿入される被接続管11もステンレス製の薄肉とされ、全体を直管形状としてなる。」(第2ページ右上欄第20行ないし右下欄第14行)
(エ)「
[図:0001423071000009.jpg]
」(第1図)
(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、一対のステンレス製の薄肉管は1つの継手管10を用いて接続されていることが記載されていると認められる。
(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3記載技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「被接続管11は一対のステンレス製の薄肉管を有し、
一対のステンレス製の薄肉管は1つの継手管10を用いて接続されており、継手管10はステンレス製の薄肉管であること。」
4 引用文献4の記載及び引用文献4に記載された技術的事項
(1)引用文献4の記載事項
ア 引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス配管におけるメカニカル継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、メンテナンスフリーを目的に、一般住宅、ビル内の水道用配管など建築設備用配管としてステンレス鋼管が使用されている。建築設備用配管としてのステンレス鋼管自体の寿命が半永久的であり、従来の鉄管(炭素鋼鋼管)では長期間使用していると赤水がでることがあるのに対して、ステンレス鋼管ではほとんど発生しないなどの利点があるからである。なお、建築設備用配管内を流れる流体は給水、給湯、冷温水、冷却水など比較的腐食性の低い給排水であり、生活一般に使用されるものである。」
(イ)「【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために提供する本願第一の発明に係る配管用ステンレス管継手は、ステンレスフェルールがステンレス鋼管とステンレスニップルとの間に配置され、前記ステンレスニップルに螺合するステンレスナットによってステンレスフェルールが押圧され変形することにより水シール性を有することを特徴とする。
【0009】これにより、単純な構造でシール性が確保でき、かつオールステンレスの継手であるために配管用ステンレス配管としての長寿命化が達成される。なお、ステンレスフェルールを変形させるためには、ステンレスフェルールの表面硬度についてステンレス管継手を構成するほかの部材の表面硬度よりも小さくするのがよい。その硬度の差はビッカース硬度で20以上あることが好ましい。別な方法として、ステンレスフェルールのテーパ先端側の肉厚を箔レベルまで薄くすることにより変形しやすくしてもよい。ここでいうステンレスとは、ステンレス鋼管およびステンレス管継手を構成するすべての部材について通常SUS304が使用されるが、この鋼種に限定されず給排水用途に使用できるステンレスであればよい。また、ステンレス鋼管およびステンレス管継手を構成するすべての部材の鋼種は異なっていてもよいが、電食の発生しない範囲で選択される。表面仕上げはとくに限定されないが、ダル仕上げ、ブライト仕上げなど極端な表面凹凸のない仕上げが選ばれる。また、このようなステンレス管継手は建築設備の給排水用途だけではなく、種々の配管用途に適用可能である。」
(ウ)「【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る配管用ステンレス管継手の一実施の形態における構成について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る配管用ステンレス管継手の一実施の形態における全体構成を示す外観および断面構造図である。図1に示すように、配管用ステンレス管継手1はステンレスニップル11を有するステンレス管継手本体10と、そのステンレスニップル11内側に挿入されるステンレスフェルール12と、ステンレスナット13とより構成されている。これらの部品が組み合わされ一体となったときの外観を図2、3に示す。」
(エ)「【0025】(実施例)ステンレス管継手本体の両端に本発明のステンレスニップル、ステンレスフェルール、ステンレスナットの組合せをそれぞれ設けてステンレス管継手とし、そのステンレス管継手を使ってJIS G3448で規定される一般配管用ステンレス鋼管(SUS304TPD、呼び径50A)2本を上述の使用手順に従い継いだ。これを5セット作成し、通水による水漏れ試験を行った。このときのビッカース硬度は、ステンレス鋼管(外周表面)がHv180、ステンレスニップル(内面のステンレス鋼管挿入入り側表面)がHv160、ステンレスフェルールがHv120、ステンレスナット(内面の押圧面表面)がHv140であった。通水条件として、流体:上水、水温:20℃、使用圧力:1MPa(10.2kgf/cm2)、流速:3.5m/sとした。その結果、5セットともに管継手の部分の水漏れは認められず、良好なシール性を確認した。
【発明の効果】本発明により、単純な構造でシール性が確保でき、かつオールステンレスの継手であるために配管用ステンレス配管としての長寿命化が達成される。具体的には、一般的なステンレス鋼管に適用でき、単純構造であり、かつ特別な治具なしでレンチなどの一般工具で接合可能な長寿命の配管用途のメカニカル管継手となる。」
(オ)「
[図:0001423071000010.jpg]
」(【図1】)
(カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、2本のステンレス鋼管2は1つのステンレス管継手1を使って継いでいることが記載されていると認められる。
(2)引用文献4に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献4には、次の技術的事項(以下、「引用文献4記載技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「ステンレス配管は2本のステンレス鋼管2を有し、
2本のステンレス鋼管2は1つのステンレス管継手1を使って継いでおり、ステンレス管継手1は一般配管用ステンレス鋼管であること。」
5 引用文献3及び引用文献4にて例示される周知技術
上記3及び4 より、配管の技術分野において、本願の出願前に、次の技術は周知の技術(以下、「周知技術」という。)であると認められる。
「配管は複数のステンレス鋼管を有し、
複数のステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、継ぎ手はステンレス製であること。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「消火ガス1100」は本願発明における「消火剤ガス」に相当し、同様に、「排出する」ことは「供給する」ことに相当する。
(2)引用発明における「消火ガス1100を排出する消火ガス貯蔵装置1101」は、排出する消火ガス1100を貯蔵しているものといえることから、本願発明における「消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器」に相当する。
(3)引用発明における「消火ガス貯蔵装置1101に接続されている管路1103」は本願発明における「ガス貯蔵容器の容器弁に接続される配管」と「ガス貯蔵容器に接続される配管」の限りにおいて一致する。
(4)引用発明における「防護区画内に設けられ」ることは本願発明における「防護区画内に設置され」ることに相当し、同様に、「管路1103に接続されている」ことは「配管に接続される」ことに相当する。
そうすると、引用発明における「防護区画内に設けられ管路1103に接続されているノズル112」は本願発明における「防護区画内に設置され配管に接続されるノズル」に相当する。
(5)引用発明における「管路1103はステンレススチール材質であ」ることは本願発明における「配管は複数のステンレス鋼管を有し」ていることと「配管はステンレス鋼管を有し」ていることという限りで一致する。
(6)引用発明における「少なくとも1つの消火ガス貯蔵装置1101」は本願発明における「複数のガス貯蔵」に相当し、同様に、「設けられ」ることは「配置され」ることに相当する。また、引用発明における「消火ガス貯蔵装置1101の少なくとも1つの閉止弁111」は本願発明における「ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の容器弁」と「ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の弁」の限りにおいて一致する。さらに、引用発明における「開かれ」ることは本願発明における「開放され」ることに相当する。
(7)引用発明における「自動消防システム1」は本願発明における「ガス系消火設備」と上記各点の限りで一致する「ガス系消火設備」の限りで一致する。
2 一致点、相違点
したがって、本願発明と引用発明は、
「 防護区画に消火剤ガスを供給するガス系消火設備であって、
消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器と、
ガス貯蔵容器に接続される配管と、
防護区画内に設置され配管に接続されるノズルと、を備え、
配管はステンレス鋼管を有し、
複数のガス貯蔵が配置され、複数のガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の弁が開放され、
ガス系消火設備。」
である点で一致し、次の点において相違する。
<相違点1>
「ガス貯蔵容器」に関して、本願発明は、配管がガス貯蔵容器の「容器弁」に接続されるものであり、「ガス貯蔵容器の容量は、消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であり、消火剤ガスが液体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の消火剤ガスを格納できる容量であり」、複数のガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の「容器弁」が開放され、ガス貯蔵容器には「ボンベが用いられ」るものであるのに対し、引用発明は、管路1103(配管)が消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)に接続されている(接続される)ものではあるものの、本願発明のように「容器弁」に接続されるものであるのか明らかでなく、また、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の容量は不明であり、さらに、少なくとも1つの(複数の)消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の少なくとも1つ(うち少なくとも1つ以上)の「閉止弁111」が開かれ(開放され)るものではあるものの、本願発明のように「容器弁」が開放されるものであるか明らかでなく、さらにまた、本願発明のようにガス貯蔵容器には「ボンベが用いられ」るものであるか明らかでない点。
<相違点2>
「配管」に関して、本願発明は、「配管の全長は、10m以上400m以下であり、配管の内径は、4mm以上200mm以下であり」、配管は「複数の」ステンレス鋼管を有し、「複数のステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、継ぎ手はステンレス製である」ものであるのに対し、引用発明は、管路1103(配管)の「全長」は不明であり、管路1103(配管の「内径」は不明であり、また、管路1103(配管)はステンレススチール材質(ステンレス鋼管)である(を有している)ものの、本願発明のように「複数の」ステンレス鋼管を有しているものであるか明らかでなく、さらに、本願発明のように「複数のステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、継ぎ手はステンレス製である」ものであるのか明らかでない点。
第6 判断
1 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
上記第4の2(2)のとおり、引用文献2には、引用文献2記載技術的事項1及び2が記載されていると認められる。
ここで、引用文献2記載技術的事項1における「消火対象区画6-1,6-2,6-3」は本願発明における「防護区画」に相当し、以下同様に、「不活性ガス消化剤」は「消火剤ガス」に、「放出する」ことは「供給する」ことに、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消化剤を充填した」ことは本願発明における「消火剤ガスを貯蔵する」に相当することから、引用文献2記載技術的事項における「不活性ガス消化剤を充填した不活性ガス消化剤貯蔵容器1」は本願発明における「消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器」に相当する。
さらに、引用文献2記載技術的事項1における「容器弁2」は本願発明における「容器弁」に相当し、同様に、「不活性ガス消化剤貯蔵容器1を容器弁2を介して接続する」ことは「ガス貯蔵容器の容器弁に接続される」ことに相当することから、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消化剤貯蔵容器1を容器弁2を介して接続する連結管3、集合管4、主配管5-1,5-2,5-3及び枝管8-1,8-2,8-3」は本願発明における「ガス貯蔵容器の容器弁に接続される配管」に相当する。
さらにまた、引用文献2記載技術的事項1における「消火対象区画6-1,6-2,6-3内の適所に複数個配設した」ことは本願発明における「防護区画内に設置され」たことに相当し、同様に、「連結管3、集合管4、主配管5-1,5-2,5-3及び枝管8-1,8-2,8-3に接続する」ことは「配管に接続される」ことに相当することから、引用文献2記載技術的事項1における「消火対象区画6-1,6-2,6-3内の適所に複数個配設した連結管3、集合管4、主配管5-1,5-2,5-3及び枝管8-1,8-2,8-3に接続する噴射ヘッド7-1,7-2,7-3」は本願発明における「防護区画内に設置され配管に接続されるノズル」に相当する。
さらにまた、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消化剤貯蔵容器1の容量」は本願発明における「ガス貯蔵容器の容量」に相当し、「不活性ガス消化剤を加圧して活性ガス消化剤貯蔵容器1に充填した状態で10立方メートル、7立方メートル及び6.8立方メートルの不活性ガス消化剤」は「消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガス」に、「充填した」ことは「格納できる」ことに、それぞれ相当することから、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消化剤貯蔵容器1の容量は、不活性ガス消化剤を加圧して不活性ガス消化剤貯蔵容器1に充填した状態で10立方メートル、7立方メートル及び6.8立方メートルの不活性ガス消化剤を充填した容量であ」ることは本願発明における「ガス貯蔵容器の容量は、消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であ」ることに相当する。
さらにまた、引用文献2記載技術的事項1における「5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え」ていること」は本願発明における「複数のガス貯蔵容器が配置され」ていることに相当し、同様に、「5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5のうち「5つ、3つまたは1つの容器弁2を開放」することは「複数のガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の容器弁が開放」されることに、相当する。
さらにまた、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消化剤貯蔵容器1は5本の不活性ガス消化剤貯蔵容器1-1,1-2,・・・1-5を備え」ることは本願発明における「ガス貯蔵容器にはボンベが用いられ」に相当する。
そして、引用文献2記載技術的事項1における「不活性ガス消火設備」は本願発明における「ガス系消火設備」と上記の各点の限りにおいて一致する「ガス系消火設備」という限りにおいて一致する。
そうすると、引用文献2記載技術的事項1を本願発明の用語を用いて整理すると以下のようになる。
「 防護区画に消火剤ガスを供給するガス系消火設備であって、
消火剤ガスを貯蔵するガス貯蔵容器と、
ガス貯蔵容器の容器弁に接続される配管と、
防護区画内に設置され配管に接続されるノズルと、を備え、
ガス貯蔵容器の容量は、消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であり、
複数のガス貯蔵容器が配置され、複数のガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の容器弁が開放され、
ガス貯蔵容器にはボンベが用いられ、
ガス系消火設備。」
また、引用文献2記載技術的事項2における「不活性ガス消化剤貯蔵容器1の容量」は本願発明における「ガス貯蔵容器の容量」に相当する。また、引用文献2記載技術的事項2における「不活性ガス消化剤を加圧して不活性ガス消化剤貯蔵容器1に充填した状態」は、上記第4の2(1)ア(イ)の段落【0003】に「不活性ガス消火剤として、例えば、窒素ガスを使用し、これを加圧して高圧ガス容器に充填した状態(35℃において、150Kgf/平方cm)で消火設備内に保管する」と記載されていることから、本願発明における「消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合」に相当する。さらに、引用文献2記載技術的事項2における「10立方メートル、7立方メートル及び6.8立方メートル」は本願発明における「0.3m3以上50m3以下」の数値範囲に包含される。そして、引用文献2記載技術的事項2における「充填した」ことは「格納できる」ことに相当し、同様に、「容量」は「容量」に相当する。
そうすると、引用文献2記載技術的事項2を本願発明の用語を用いて整理すると以下のようになる。
「ガス貯蔵容器の容量は、消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であること。」
そして、引用発明において、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)を管路1103(配管)と直接的ないし間接的にどのように接続するかや、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)に関する弁のうちいずれの弁を開く(開放する)か、また、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)をどのような形式のものとするかについては、必要性等に応じて当業者の通常の創作能力の発揮により適宜選択し得るものであり、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の容量については、引用発明において消火すべき防護区画の容積の大きさに応じて適宜定め得るものであることから、引用発明において、これらの各点からみた選択肢の1つとして、引用発明と同様にガス系消火設備の技術分野に属する引用文献2記載技術的事項1及び2を採用して、管路1103(配管)が消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の「容器弁」に接続され(接続され)、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の容量を、「消火剤ガスが気体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の消火剤ガスを格納できる容量であり、消火剤ガスが液体としてガス貯蔵容器に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の消火剤ガスを格納できる容量」とし、少なくとも1つの(複数の)消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の少なくとも1つ(うち少なくとも1つ以上)の「容器弁」が開放され、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)には「ボンベが用いられ」るように構成して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
また、仮に、本願発明が、令和5年8月22日付けの補正の却下の決定により却下された令和5年8月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明のように「(ただし、前記ガス貯蔵容器の容量が6.8m3以上であるガス系消火設備を除く。)」なる事項を備えたものであるとしたとしても、ガス貯蔵容器の容量については、引用発明において消火すべき防護区画の容積の大きさに応じて適宜定め得るものであり、同防護区画の容積が小さい場合であれば、それに応じて消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の容量をより小さくし、例えば、6.8m3未満とすることに格別の困難性は認められず、当業者であれば容易に想到し得るものである。
(2)相違点2について
上記第4の3(2)のとおり、配管の技術分野において、本願の出願前に、
「配管は複数のステンレス鋼管を有し、
複数のステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、継ぎ手はステンレス製であること。」
は周知の技術(周知技術)である。
そして、引用発明において、耐食性や施工性を考慮に入れることは当然に内在する課題であり、耐食性や施工性における優位性を備えた周知技術を採用することにより、管路1103(配管)を「複数の」ステンレススチール材質(ステンレス鋼管)とし、「複数の」ステンレススチール材質(ステンレス鋼管を)は「1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結」し、「継ぎ手はステンレス製である」ように構成することに格別の困難性は認められない。また、その際に、管路1103(配管)の全長や内径は、防護区画の規模等に応じて当業者が適宜選択し得る事項に過ぎず、必要に応じて相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように「配管の全長は、10m以上400m以下であり、配管の内径は、4mm以上200mm以下であり」とすることに格別の困難性は認められない。
そうすると、引用発明において、周知技術を採用し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、引用文献2記載技術的事項1及び2並びに周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
2 小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載技術的事項1及び2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人の令和5年3月9日提出の意見書における主張
(1) 審判請求人の意見書における主張の内容
審判請求人は、令和5年3月9日に提出された意見書において、令和4年12月23日付けの拒絶理由通知書の「●理由1(進歩性)について」に対して次のように主張している(下線は当審において付した。以下同様。)。
ア 「(3)対比
(a)相違点について
本願発明は、少なくとも次の点で、引用文献1に記載された発明と相違します。
・相違点1(全請求項)
本願発明が、「前記ガス貯蔵容器の容量は、前記消火剤ガスが気体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、前記消火剤ガスが液体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、複数の前記ガス貯蔵容器が配置され、複数の前記ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の前記容器弁が開放され、前記ガス貯蔵容器にはボンベが用いられ、複数の前記ステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、前記継ぎ手はステンレス製である」との構成を有するのに対し、引用文献1には当該構成が開示も示唆もなされていない点。」(上記意見書の「2.理由1(進歩性)について」の「(3)対比」欄)
イ 「(b)相違点1(全請求項)の非容易想到性について
引用文献2乃至4においても、引用文献1におけるのと同様に、「ガス系消火設備を施工する技術者の人材不足及び高齢化の下では、ガス系消火設備をより簡単に施工できるようにして、ガス系消火設備の施工性を従来よりも高めることが好ましい」(本願明細書の段落0004)という、本願発明が問題視する課題の認識にまでは考えが及んでおらず、相違点1が開示も示唆もなされていません。
したがって、引用文献1に引用文献2乃至4を組み合わせても本願発明が得られないことは明らかです。
また、当業者には、引用文献1に記載された発明において、あえて上記相違点1の構成を採用する動機がありません。もちろん本願明細書を見た当業者であれば、そのような採用を動機づけられるかとは思料しますが、そのような論理付けは典型的な後知恵であって、特許法上の進歩性の判断として許容されるものではありません。
以上のとおり、本願発明は、引用文献1乃至4に開示も示唆もない構成により、配管の全長が10m以上400m以下にまで及ぶ比較的配管の全長が長いガス系消火設備において、4mm以上200mm以下の内径を有するステンレス鋼管を用いて配管の軽量化を図ることでガス系消火設備の施工の容易性を実現しつつも、これに加えてさらにより一層、「より簡単に施工できるガス系消火設備を提供することができる」(段落0008)という優れた効果を奏する発明です。
本願発明は、引用文献1乃至4に基づいて当業者が容易に発明できたものではありません。」(上記意見書の「2.理由1(進歩性)について」の「(3)対比」欄)
(2)審判請求人の主張の検討
以下、上記主張について検討する。
上記(1)イにおいて審判請求人が本願明細書の段落【0004】の記載を根拠として主張する「本願発明が問題視する課題」については、同段落の記載に続く【課題を解決するための手段】欄の同段落【0006】の「前記配管は1つまたは複数のステンレス鋼管を有する」及び同段落【0007】の「前記複数の第2配管の少なくとも1つまたは複数のステンレス鋼管を有する」なる記載並びにさらに続く【発明の効果】欄の同段落【0008】の「本発明の一実施形態によれば、配管の軽量化を図り、より簡単に施工できるガス系消火設備を提供することができる。」なる記載からみて、本願発明において、配管が1つまたは複数のステンレス鋼管を有することにより解決するものであると認められる。
しかしながら、上記第5の1(5)のとおり、引用発明における「管路1103はステンレススチール材質であ」ることは本願発明における「配管は複数のステンレス鋼管を有し」ていることと「配管はステンレス鋼管を有し」ていることという限りで一致するものである。
そして、上記(1)アにおいて審判請求人が相違点1と主張する本願発明の発明特定事項のうち「前記ガス貯蔵容器の容量は、前記消火剤ガスが気体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.3m3以上50m3以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、前記消火剤ガスが液体として前記ガス貯蔵容器に充填される場合には0.65kg以上100kg以下の前記消火剤ガスを格納できる容量であり、複数の前記ガス貯蔵容器が配置され、複数の前記ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の前記容器弁が開放され、前記ガス貯蔵容器にはボンベが用いられ」なる事項については、上記第6の1(1)のとおり、引用発明において、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)を管路1103(配管)と直接的ないし間接的にどのように接続するかや、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)に関する弁のうちいずれの弁を開く(開放する)か、また、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)をどのような形式のものとするかについては、必要性等に応じて当業者の通常の創作能力の発揮により適宜選択し得るものであり、消火ガス貯蔵装置1101(ガス貯蔵容器)の容量については、引用発明において消火すべき防護区画の容積の大きさに応じて適宜定め得るものであることから、引用発明において、これらの各点からみた選択肢の1つとして、引用発明と同様にガス系消火設備の技術分野に属する引用文献2記載技術的事項1及び2を採用することにより、当業者が容易に想到し得るものである。
また、上記(1)アにおいて審判請求人が相違点1と主張する本願発明の発明特定事項のうち「複数の前記ステンレス鋼管は1つまたは複数の継ぎ手を用いて連結されており、前記継ぎ手はステンレス製である」なる事項については、上記第6の1(2)のとおり、引用発明において、耐食性や施工性を考慮に入れることは当然に内在する課題であり、耐食性や施工性における優位性を備えた周知技術を採用することにより、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、上記(1)の主張は採用することができない。
2 審判請求人の令和5年8月14日提出の意見書における主張
(1) 審判請求人の意見書における主張の内容
審判請求人は、令和5年8月14日に提出された意見書において、令和5年6月13日付けの拒絶理由通知書の「●理由1(進歩性)について」に対して次のように主張している。
ア 「3.対比
(1)相違点について
上記した補正後の本願発明は、少なくとも次の点で、引用文献1に記載された発明と相違します。
・相違点
上記した補正後の本願発明は、10m3、7m3又は6.8m3よりも容量が小さいガス貯蔵容器、すなわち、容量が0.3m3以上6.8m3未満のガス貯蔵容器を用いたガス系消火設備に限定されるのに対し、引用文献1には、10m3、7m3又は6.8m3よりも容量が小さいガス貯蔵容器について開示がない点。
(2)相違点の非容易想到性について
拒絶理由通知書でのご指摘を受けて、本件出願人は、ガス貯蔵容器の容量を、引用文献2の段落0025が開示する10m3、7m3又は6.8m3よりも小さい範囲、すなわち、0.3m3以上6.8m3未満の範囲に限定する補正を行いました。補正後の本願発明によれば、補正前の本願発明と比較して、より一層、ガス貯蔵容器1つ1つの軽量化を図ることが可能となるため、「ガス系消火設備を施工する技術者の人材不足及び高齢化の下では、ガス系消火設備をより簡単に施工できるようにして、ガス系消火設備の施工性を従来よりも高めることが好ましい」(本願明細書の段落0004)という本願発明の課題をより効果的に解決することができるようになります。
これに対し、引用文献1乃至6には、ガス貯蔵容器の容量を、引用文献2の段落0025が開示する10m3、7m3又は6.8m3よりも小さい範囲、すなわち、0.3m3以上6.8m3未満の範囲とする本願発明の技術的思想が開示も示唆もされておりません。また、かかる本願発明の技術的思想は周知技術でもありません。
また、引用文献2の段落0025には、「これらの方法は、いずれも不活性ガス消火剤貯蔵容器の数が増加し、設備のコストを増大させる等の理由から、あまり好ましい解決方法とはいえない」(引用文献2の段落0025)とも記載されています。したがって、引用文献2に接した当業者であれば、引用文献2の段落0025が開示する容量よりも大きな容量のガス貯蔵容器、つまり、容量が6.8m3以上のガス貯蔵容器を用いるように動機づけられるものと思料します。引用文献2の段落0025が開示する容量よりも容量が小さいガス貯蔵容器を用いると、引用文献2の段落0025が開示するガス系消火設備と比較して、不活性ガス消火剤貯蔵容器の数が増加し、設備のコストを増大させることとなって、引用文献2の段落0025の開示に反することになるからです(阻害要因)。
なお、本願明細書に接して本願発明の技術的思想を理解した後であれば、「ガス系消火設備を施工する技術者の人材不足及び高齢化の下では、ガス系消火設備をより簡単に施工できるようにして、ガス系消火設備の施工性を従来よりも高めることが好ましい」(本願明細書の段落0004)ことが当然のように感じられ、容量が0.3m3以上6.8m3未満の範囲に限定されたガス貯蔵容器を用いることが容易に想到できたかのように思われるかもしれません。しかしながら、このような論理付けは、本願明細書で得た知識を前提とするものであって、典型的な後知恵に該当するものと思料します。進歩性の論理付けは、引用文献をどのように組み合わせれば本願発明の構成が得られるのかという後知恵の視点ではなく、当業者が、本願発明を知らないという状況のなかで、引用文献をどのように組み合わせるよう動機づけられるかという視点からなされるべきものであると思料します。そこで、後者の視点から検討しますと、引用文献1乃至6には、本願発明の技術的思想が開示も示唆もなされておりません。したがって、これらの引用文献1乃至6を如何に組み合わせても、本願発明の構成は得られません。せいぜい、引用文献2の段落0025が開示する10m3、7m3又は6.8m3という容量のガス貯蔵容器を用いるように、あるいは上記した「これらの方法は、いずれも不活性ガス消火剤貯蔵容器の数が増加し、設備のコストを増大させる等の理由から、あまり好ましい解決方法とはいえない」という段落0025の開示を踏まえて、6.8m3以上の容量のガス貯蔵容器を用いるように動機づけられるに過ぎないものと思料します。
よって、本願発明は、引用文献1乃至6に基づいて当業者が容易に発明できたものではありません。」(上記意見書の「3.対比」欄)
(2)審判請求人の主張の検討
以下、上記主張について検討する。
上記第2のとおり、本願発明は、令和5年8月22日付けの補正の却下の決定により却下された令和5年8月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明からみて「(ただし、前記ガス貯蔵容器の容量が6.8m3以上であるガス系消火設備を除く。)」なる事項が削除されたものに該当し、令和5年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明と同様なものに該当すると認められる。
そして、上記(1)の主張は、同削除された「(ただし、前記ガス貯蔵容器の容量が6.8m3以上であるガス系消火設備を除く。)」なる事項に基づく主張であり、採用することができない。
また、令和5年12月9日提出の手続補正書と同日に提出された意見書における主張については、上記1(2)のとおりである。
また、仮に、本願発明が、令和5年8月22日付けの補正の却下の決定により却下された令和5年8月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明のように「(ただし、前記ガス貯蔵容器の容量が6.8m3以上であるガス系消火設備を除く。)」なる事項を備えたものであるとしたとしても、上記第6の1(1)のとおり、当業者であれば容易に想到し得るものである。そして、この場合、上記(1)の主張のように、不活性ガス消火剤貯蔵容器の数が増加するものとは認められない。
したがって、上記(1)の主張は採用することができない。
3 審判請求人の審判請求書における主張
(1) 審判請求人の審判請求書における主張の内容
審判請求人は、審判請求書において、次のように主張している。
ア 「(4)本願発明と引用発明の対比
(4-1)相違点について
本願発明は、少なくとも、以下の点で引用文献1に記載された発明と相違する。
・相違点
本願発明が、「複数の前記ガス貯蔵容器が配置され、火災の規模に応じて、複数の前記ガス貯蔵容器のうち少なくとも1つ以上の前記容器弁が開放され」との構成を備えるのに対し、引用文献1には、このような構成が開示も示唆もなされていない点。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明と同一の発明ではない。
(4-2)非容易想到性について
引用文献2に記載された発明は、上述のとおり、開放する消火剤貯蔵容器の数(つまり開放する容器弁の数)が、防護区画ごとにあらかじめ定められたガス系消火設備における課題を解決する発明であり、開放する容器弁の数が、火災の規模に応じて変わり得ることを規定する上記相違点の構成を何ら示唆するものはない。
また、引用文献3乃至6においても、上記した相違点は何ら開示・示唆されていない。
したがって、引用文献1に記載された発明に引用文献2乃至6の構成を組み合わせても、上記相違点の構成は得られず、複数のガス貯蔵容器が配置されるガス系消火設備において、大規模火災においてはより多数のガス貯蔵容器の容器弁を開放し、小規模火災においてはより少数のガス貯蔵容器の容器弁を開放し、これにより、防護区画に放出される消火剤の量を調整するという本願発明は想到されない。」(上記審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(4)本願発明と引用発明の対比」欄)
(2) 審判請求人の主張の検討
ア 上記(1)アの主張について
上記第2のとおり、本願発明は、令和5年12月5日提出の審判請求書と同時に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明からみて「火炎の規模に応じて」なる事項が削除されたものに該当し、令和5年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明と同様なものに該当すると認められる。
そして、上記(1)の主張は、同削除された「火炎の規模に応じて」なる事項に基づく主張であり、採用することができない。
また、令和5年12月9日提出の手続補正書と同日に提出された意見書における主張については、上記1(2)のとおりである。
したがって、上記(1)の主張は採用することができない。
4 審判請求人の令和6年10月22日提出の意見書における主張
審判請求人は、令和6年10月22日に提出された意見書において、令和6年8月22日付けの拒絶理由通知書の「●理由1(明確性要件)について」に対して次のように主張している。
(1) 審判請求人の意見書における主張の内容
「3.理由1(明確性要件)について
同時に提出した手続補正書により、請求項1、2における「火災の規模に応じて」との記載を削除する補正を行いました。
よって、理由1の拒絶理由は解消したものと思料します。」(上記意見書の「3.理由1(明確性要件)について」欄)
(2)審判請求人の主張の検討
以下、上記主張について検討する。
上記意見書と同日に提出された手続補正書により補正された本願発明は、令和6年8月22日付けの拒絶理由通知書における理由1(明確性要件)において指摘した事項が削除されたことから、同理由については解消していると認められる。
しかしながら、同拒絶理由通知において判断を留保する旨付言した原査定の理由については何ら主張がなされていない。
上記第2のとおり、本願発明は、令和5年3月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明と同様なものに該当すると認められる。
そして、令和5年3月9日提出の手続補正書と同日に提出された意見書における主張については、上記1(2)のとおりである。
したがって、上記(1)の主張によって原査定が覆されるものとは認められない。
3 小括
以上より、審判請求人による主張を考慮に入れたとしても、上記第6のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載技術的事項1及び2並びに引用文献3及び4にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項並びに引用文献3及び4にて例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-020621