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特許拒絶査定不服審判

2022-002624

電子膨張弁コントローラ、電子膨張弁セット、及び、冷凍装置

審判番号
2022-002624
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-178565外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年02月22日
審決日
2023年03月23日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-178565「電子膨張弁コントローラ、電子膨張弁セット、及び、冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日出願公開、特開2019- 52816〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成29年9月19日の出願であって、令和2年8月27日に刊行物等提出書が提出され、令和3年6月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月3に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年11月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。

これに対し、令和4年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年4月11日及び4月13日にそれぞれ刊行物提出書が提出され、同年6月1日に上申書が提出されたが、当審から同年10月19日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年12月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年12月21日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

(本願発明)

「【請求項1】
電子膨張弁(12)と共に用いられる電子膨張弁コントローラ(100)であって、
蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報を取り込む入力ポート(107,108)と、
前記電子膨張弁(12)と接続される出力ポート(112)と、
複数の冷媒の種類を設定可能であり、設定されている冷媒の種類及び前記入力ポート(107,108)で取り込んだ情報に基づいて、前記出力ポート(112)へ出力する信号を生成する制御部(101)と、を備え、
前記制御部(101)は、冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を調整するための前記電子膨張弁(12)に対する制御量、および前記入力ポート(107,108)で取り込んだ情報に基づいて、設定された冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づき異なる前記電子膨張弁(12)に対する信号を前記出力ポート(112)へ出力する電子膨張弁コントローラ。」

第3 当審拒絶理由通知の概要

当審拒絶理由通知の理由2の概要は、以下のとおりのものである。

理由2(進歩性)

本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2004-263948号公報(新たに引用する引用文献)
引用文献2:特開2016-80332号公報
引用文献3:特開2017-141998号公報(新たに引用する引用文献)

・請求項1、5:引用文献1、2

・請求項2-4、6、7:引用文献1-3

第4 引用文献に記載された事項及び引用発明

1.引用文献1に記載された事項及び引用発明

引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審が付したものである(以下同様。)。

ア「【0001】

【発明の属する技術分野】

この発明は、沸点の異なる異種の冷媒においても、同一利用側ユニットで使用可能な空気調和装置に関するものである。」

イ「【0005】

【発明が解決しようとする課題】

上記のような従来の冷凍式空気調和装置では、冷媒の種類毎に利用側ユニットを製造するため、製造コストの増加の問題や在庫管理の問題があった。また、外観がよく似ているため、誤搬入の問題や誤接続の問題が避けられなかった。

・・・

【0007】

この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷媒の種類によらず同一利用側ユニットで使用可能とすることにより、製造コストの低減や誤搬入の低減ができる空気調和装置を得ることを目的とする。」

ウ「【0009】

【発明の実施の形態】

実施の形態1.

以下この発明の実施の形態1を説明する。

図1はこの発明に係る空気調和装置を示すものである。空気調和装置は、熱源側ユニット1と利用側ユニット2とで構成されている。また、圧縮機3、四方弁4、熱源側熱交換器5、電気式膨張弁7、利用側熱交換器8、アキュムレータ10、圧縮機3をこの順序で配管により直列に接続した冷媒回路(冷房時)を構成し、かつ四方弁4の切り替え操作により圧縮機3、四方弁4、利用側熱交換器8、電気式膨張弁7、熱源側熱交換器5、アキュムレータ10、圧縮機1をこの順序で配管により直列に接続した冷媒回路(暖房時)を構成する。さらに熱源側熱交換器5には熱源側送風手段6、利用側熱交換器8には利用側送風手段9が設置されている。熱源側ユニット1は、圧縮機3、四方弁4、熱源側熱交換器5、熱源側送風手段6、アキュムレータ10、熱源側制御装置11を内蔵している。また、利用側ユニット2は、電気式膨張弁7、利用側熱交換器8、利用側送風手段9、利用側制御装置12、利用側熱交換器8に接続された液側配管に設けられた液側温度検知器13、利用側熱交換器8に接続されたガス側配管に設けられたガス側温度検知器14を内蔵している。熱源側制御装置11は、圧縮機3、四方弁4、熱源側送風手段6を制御し、利用側制御装置12は、電気式膨張弁7、利用側送風手段9を制御する。なお、15は圧縮機3と四方弁4との間の冷媒の高圧(凝縮圧力)を検出する圧力センサである。この圧力センサ15の飽和温度から後述する熱源側飽和温度TCを換算して、熱源側制御装置11から利用側制御装置12に送信するものである。

また、この空気調和装置の冷媒としては、HFC32とHFC125とHFC134aの混合冷媒であるR407C冷媒や、凝縮圧力、蒸発圧力がR407C冷媒の約1.5倍高いHFC32とHFC125の混合冷媒であるR410A冷媒が用いられる。冷媒の種類は熱源側ユニット1で決定され、R407C冷媒用の熱源側ユニットと、R410A冷媒用の熱源側ユニットが別々に用意されている。利用側ユニット2は冷媒の種類によらず同一ユニットの利用が可能である。このため、熱源側制御装置11は、熱源側ユニット1がR407C冷媒用であるか、R410A冷媒用であるかを利用側制御装置12に送信することにより、電気式膨張弁7、利用側送風手段を冷媒の種類に応じた制御が可能な状態にする。

なお、この実施の形態1では、熱源側ユニット1台に対し利用側ユニット1台を接続した場合について説明するが、2台以上の利用側ユニットを接続した場合は熱源側熱交換器5から出た冷媒が各利用側ユニット2に分配される以外は1台の場合と同様である。」

エ「【0012】

ここで、電気式膨張弁7の制御について、冷房運転時を例にして図2の制御フローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1で液側温度検知器13の検出温度である液側配管温度TH1とガス側温度検知器14の検出温度であるガス側配管温度TH2との差(SH=TH2-TH1)を算出する。次にステップS2でガス側配管温度TH2と液側配管温度TH1との差SHと、差の目標値であるSHmとの大小比較により電気式膨張弁7を絞るか、開けるかを判断する。SH>SHmの場合はステップS3で電気式膨張弁7の開き量△Sj2(SH、SHm)を算出し、ステップS4で電気式膨張弁7を開き量△Sj2(SH、SHm)分だけ開く。このときステップS5で電気式膨張弁7の開度Sjが最大開度Sjmaxを超えるかどうかを判定する。超える場合はステップS6で電気式膨張弁7の開度Sjを最大開度Sjmaxに制限する。また、ステップS2でSH<SHmの場合はステップS7で電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)を算出し、ステップS8で電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)分だけ絞る。このときステップS9で電気式膨張弁7の開度Sjが最小開度Sjminを下回るかどうかを判定する。下回る場合はステップS10で電気式膨張弁7の開度Sjを最小開度Sjminに制限する。」

オ「【0018】

電気式膨張弁7を流れる冷媒の量は、電気式膨張弁7の開度と、電気式膨張弁7の入口と出口の圧力差と、流れる冷媒の密度とにより決定される。したがって、同一蒸発温度、凝縮温度でも冷媒の種類によってはそのときの圧力が異なるため、冷媒流量が異なることになる。

【0019】

電気式膨張弁7の制御の目標値となる、SHm、SCmの値を冷媒に応じて最適な値に変化させることにより、冷媒流量の差を包含して電気式膨張弁7を安定させて目標の性能を出すことが可能となる。

【0020】

また、R410A冷媒はR407C冷媒よりも約1.5倍作動圧力が高いため、電気式膨張弁7による圧力差も1.5倍となる。そのため、電気式膨張弁7の最大開度Sjmax、最小開度Sjminのような固定開度では、冷媒によって冷媒流量が大きく変わることになるため、最大開度Sjmax、最小開度Sjminの値を冷媒の種類に応じて適切に変化させる必要がある。

【0021】

図1に示す実施の形態1による空気調和装置の場合、熱源側ユニット1は冷媒の種類により異なるユニットであるが、利用側ユニット2は冷媒の種類によらず同一ユニットである。したがって、冷媒の種類により、電気式膨張弁7の制御値が異なるため、利用側ユニット2の利用側制御装置12に、冷媒の種類による制御値の違いを図4に示すようなマトリクスデータとして記憶保持させておく。そして、熱源側ユニット1の熱源側制御装置11は、熱源側ユニット1がR407C冷媒用であるか、R410A冷媒用であるかを利用側制御装置12に送信することにより、冷媒の種類を判別して、電気式膨張弁7は冷媒の種類に対応した制御を行う。」

カ「【図1】

[図:0001397722000001.jpg]

」

キ「【図4】

[図:0001397722000002.jpg]

」

ク 【図4】から、冷媒R407Cについて目標温度差SHm=6、制御量ΔSj=k1×(SH-SHm)が設定され、冷媒R410Aについて目標温度差SHm=2、制御量△Sj=0.8×k1×(SH-SHm)が設定されているから、引用文献1には、冷媒の種類により、温度に基づく電気式膨張弁7に対する制御量△Sj1、△Sj2が記載されている。

以上の事項から、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

(引用発明)

「電気式膨張弁7を制御する利用側制御装置12であって、
利用側熱交換器8に接続された液側配管に設けられた液側温度検知器13、利用側熱交換器8に接続されたガス側配管に設けられたガス側温度検知器14を備え、
液側温度検知器13の検出温度である液側配管温度TH1とガス側温度検知器14の検出温度であるガス側配管温度TH2との差(SH=TH2-TH1)を算出し、
ガス側配管温度TH2と液側配管温度TH1との差SHと、差の目標値であるSHmとの大小比較により、SH>SHmの場合は、電気式膨張弁7の開き量△Sj2(SH、SHm)を算出し、電気式膨張弁7を開き量△Sj2(SH、SHm)分だけ開き、SH<SHmの場合は、電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)を算出し、ステップS8で電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)分だけ絞り、
利用側制御装置12に、冷媒の種類による温度に基づく電気式膨張弁7に対する制御量△Sj1、△Sj2が記憶保持されており、冷媒の種類を判別して冷媒の種類に対応した制御を行う利用側制御装置12。」

2.引用文献2に記載された事項

引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【0026】
他方、図示を省略した機器収容部の内部には、図2に示す制御系Mpと冷凍系Mcを備える。この場合、冷凍系Mcは、冷凍ユニット61を備え、この冷凍ユニット61とエバポレータ2により、冷媒が循環してエバポレータ2を冷却する冷凍サイクルCが構成される。したがって、冷凍ユニット61には、エバポレータ2を除いた、コンプレッサ,コンデンサ,膨張弁等の冷凍サイクルCを実現するための機器が収容されている。
【0027】
また、制御系Mpは、内部メモリ32が付属するマイクロコンピュータ等を用いたコントローラ本体31を備える。内部メモリ32は、データ書込エリア32dとプログラム格納エリア32pを備え、データ書込エリア32dには各種設定データを含むデータ類を書き込むことができるとともに、プログラム格納エリア32pには、制御プログラムや処理プログラム等の各種プログラム類を格納する。一方、冷却庫50の前面には操作パネル33及び表示部34を配設し、それぞれコントローラ本体31に接続する。操作パネル33には、各種設定や操作を行うことができる操作部33mを備える。
【0028】
さらに、コントローラ本体31の入力ポートには、温度センサ等の各種センサ類Xdを接続する。また、41は電源ユニットであり、この電源ユニット41は、リレー回路42を介して冷気循環ファン4に接続するとともに、リレー回路43を介して除霜ヒータ3に接続する。各リレー回路42,43には、コントローラ本体31の出力ポートから制御信号(切換信号)が付与される。以上の構成が冷却庫50の基本的な構成となる。」

以上の事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている(以下、「引用文献2記載事項」という。)。

(引用文献2記載事項)

「冷凍系Mcを制御する制御系Mpのコントローラ本体31が、温度センサ等の各種センサ類Xdを接続する入力ポートと、制御信号を付与する出力ポートを備えること。」

3.引用文献3に記載された事項

引用文献3には、以下の事項が記載されている。

ア「【0017】

(室内ユニット)

室内ユニットHiは、冷媒回路10の経路上に、熱交換器(室内熱交換器11)と、電子膨張弁12と、第1の制御装置13と、を備えている。また、室内ユニットHiは、室内熱交換器11に空気を通過させるファン(室内ファンFi)を備えている。

・・・

【0019】

第1の制御装置13は、例えば、マイクロコンピュータであり、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。この第1の制御装置13は、電子膨張弁12と接続されており、室外ユニットHoの第2の制御装置22から受信する情報に基づいて、室内ファンFiを制御する機能を有している。

【0020】

例えば、本発明では、この第1の制御装置13は、第2の制御装置22から受信した開度値に基づいて電子膨張弁12の開度を制御する。なお、この開度値は、図示しない所定のスイッチなどの冷媒を特定する冷媒特定手段(当該冷媒特定手段については後記する)から受信した冷媒に関する所定の信号に基づいて、第2の制御装置22で演算される(当該演算については後記する)。演算される開度値としては、例えば、電子膨張弁12の開き距離などが挙げられる。第1の制御装置13は、第2の制御装置22から受信した開度値(電気信号)をパルス信号に変換し、当該パルス信号を電子膨張弁12に送信する。電子膨張弁12は当該パルス信号を受信する間、弁を開状態とする。」

イ「【0030】

第2の制御装置22は、例えば、マイクロコンピュータであり、図示はしないが第1の制御装置13と同様に、CPU、ROM、RAMなどを含んで構成される。この第2の制御装置22は、図1に示すように、記憶部22aと、制御部22bと、を備えている。

【0031】

記憶部22aは、制御部22bで演算した電子膨張弁12の開度値を記憶したり、制御部22bのプログラムを記憶したり、各センサ18~21の検出値等を一時的に記憶したりすることができる。電子膨張弁12の開度範囲は、例えば、複数種類の冷媒に応じて演算された電子膨張弁12の開度パルス数(図2参照、図2については後記する)を含む表などの形式で記憶部22aに記憶しておくとよい。

【0032】

制御部22bは、図示しない冷媒特定手段から受信した冷媒に関する所定の信号に基づいて、電子膨張弁12の開度値を演算する。なお、冷媒に関する所定の信号としては、特定の冷媒に割り当てられた、冷媒を特定することのできる電気信号などが挙げられる。制御部22bは、図示しない所定のI/Oポートを通じて室内ユニットHi内の第1の制御装置13に当該開度値を送信する。

また、制御部22bは、各センサ18~21の検出値や、リモートコントローラ(図示せず)から室内機Hiを介して受信した信号に基づいて、圧縮機17のモータ(図示せず)の回転速度や、四方弁16の切り替え、室外膨張弁14の開度、及び室外ファンFoの制御を行っている。」

ウ「【0044】

(冷媒特定手段)

(冷媒特定手段の一態様)

前記した冷媒特定手段の一態様として、室外ユニットHo又は室内ユニットHiの操作盤(図示せず)に設けられた切替スイッチ(図示せず)で複数種類の冷媒から特定の冷媒を特定する例を挙げることができる。

なお、本態様の説明における複数種類の冷媒として、冷媒R410A及び冷媒R32を挙げて説明する。

【0045】

切替スイッチは、第2の制御装置22に接続されており、そのスイッチの切り替えによって、電子膨張弁12の使用開度範囲を冷媒に応じて選択できるようになっている。切替スイッチによる切り替え数は、例えば、冷媒R410A及び冷媒R32の2つの冷媒を対象とする場合は2つとすることができるが、使用が想定される冷媒の数に応じて設ければよく、これに限定されるものではない。切替スイッチの切替操作は、空気調和機100の工場出荷時、店舗やビルへの設置時又はメンテナンス時にユーザが行うことができる。

【0046】

ユーザが切替スイッチで冷媒に応じた切替操作を行うと、冷媒回路10に実際に封入される冷媒の種類を示す信号が第2の制御装置22(制御部22b)に出力される。その一例を挙げると、冷媒回路10に冷媒R410Aが封入されている場合、ユーザによって切替スイッチがオン状態に切り替えられ、この切替スイッチから第2の制御装置22にオン信号が出力される。また、冷媒回路10に冷媒R32が封入されている場合、ユーザによって切替スイッチがオフ状態に切り替えられ、この切替スイッチから第2の制御装置22にオフ信号が出力される。」

以上の事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されている(以下、「引用文献3記載事項」という。)。

(引用文献3記載事項)

「室内ユニットHiは、電子膨張弁12と、第1の制御装置13とを備え、第1の制御装置13は、第2の制御装置22から受信した開度値に基づいて電子膨張弁12の開度と、第2の制御装置22から受信する情報に基づいて室内ファンFiを制御し、
第2の制御装置22は、記憶部22aと制御部22bとを備え、制御部22bは、冷媒特定手段から受信した冷媒に関する所定の信号に基づいて電子膨張弁12の開度値を演算し、所定のI/Oポートを通じて室内ユニットHi内の第1の制御装置13に当該開度値を送信するものであり、
切替スイッチは、第2の制御装置22に接続されており、そのスイッチの切り替えによって、電子膨張弁12の使用開度範囲を冷媒に応じて選択できるようになっており、ユーザによって切替スイッチがオン状態に切り替えられ、この切替スイッチから第2の制御装置22にオン信号が出力され、冷媒回路10に冷媒R32が封入されている場合、ユーザによって切替スイッチがオフ状態に切り替えられ、この切替スイッチから第2の制御装置22にオフ信号が出力されること。」

第5 当審の判断

1.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「電気式膨張弁7」、「利用側制御装置12」は、「利用側制御装置12」により「電気式膨張弁7」が制御されるのであるから、本願発明の「電子膨張弁(12)」、「電子膨張弁コントローラ(100)」に相当する。

引用発明の「利用側熱交換器8」は、本願発明の「蒸発器(13)」に相当する。

引用発明の「利用側熱交換器8に接続された液側配管に設けられた液側温度検知器13」、「利用側熱交換器8に接続されたガス側配管に設けられたガス側温度検知器14」は、利用側熱交換器8の入口及び出口の温度を検出するものであるから、「蒸発器の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報を取り込む」限りにおいて、本願発明の「蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報を取り込む入力ポート(107、108)」と一致する。

引用発明の「利用側制御装置12に、冷媒の種類による温度に基づく電気式膨張弁7に対する制御量△Sj1、△Sj2が記憶保持されており、冷媒の種類を判別して冷媒の種類に対応した制御を行う」ことは、△Sj1、△Sj2が利用側制御装置12に記録保持されていることが利用側制御装置12に複数の冷媒の種類が設定されているといえるから、「複数の冷媒の種類を設定可能であり、設定されている冷媒の種類及び蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報に基づいて、電子膨張弁(12)に対する制御を行う」ことに限り、本願発明の「複数の冷媒の種類を設定可能であり、設定されている冷媒の種類及び入力ポート(107、108)で取り込んだ情報に基づいて、前記出力ポート(112)へ出力する信号を生成する制御部(101)と、を備え」ることに一致する。

引用発明の「液側温度検知器13の検出温度である液側配管温度TH1とガス側温度検知器14の検出温度であるガス側配管温度TH2との差(SH=TH2-TH1)を算出し、

ガス側配管温度TH2と液側配管温度TH1との差SHと、差の目標値であるSHmとの大小比較により、SH>SHmの場合は、電気式膨張弁7の開き量△Sj2(SH、SHm)を算出し、電気式膨張弁7を開き量△Sj2(SH、SHm)分だけ開き、SH<SHmの場合は、電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)を算出し、ステップS8で電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)分だけ絞」ることは、SHが蒸発器の入口及び出口での冷媒の温度に関する情報であり、SHm及び△Sj1、△Sj2が冷媒ごとに設定された目標値及び膨張弁に対する制御量であるから、「冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を制御するための電子膨張弁(12)に対する制御量、および蒸発器(13)の入口および出口の温度又は圧力に関する情報に基づいて、冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づき異なる電子膨張弁(12)に対する信号を電子膨張弁(12)に出力する」限りにおいて、本願発明の「冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を調整するための前記電子膨張弁(12)に対する制御量、および前記入力ポート(107,108)で取り込んだ情報に基づいて、設定された冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づき異なる前記電子膨張弁(12)に対する信号を前記出力ポート(112)へ出力する」ことに一致する。

してみると、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)

「電子膨張弁(12)と共に用いられる電子膨張弁コントローラ(100)であって、
蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報を取り込み、
複数の冷媒の種類を設定可能であり、設定されている冷媒の種類及び蒸発器(13)の入口及び出口の温度又は圧力に関する情報に基づいて、電子制御弁(12)に対する制御を行い、
冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を制御するための電子膨張弁(12)に対する制御量、および蒸発器(13)の入口および出口の温度又は圧力に関する情報に基づいて、冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づき異なる電子膨張弁(12)に対する信号を電子膨張弁(12)に出力する電子膨張弁コントローラ。」

(相違点1)

蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度に関する情報の取り込みに関して、本願発明では「入力ポート(107、108)」により情報を取り込むのに対して、引用発明では、入力ポートの有無が不明である点。

(相違点2)

本願発明では、「前記電子膨張弁(12)と接続される出力ポート(112)と」を備えるのに対して、引用発明では、「出力ポート」の有無が不明である点。

(相違点3)

「複数の冷媒の種類を設定可能であり、設定されている冷媒の種類及び蒸発器(13)の入口及び出口での冷媒の温度又は圧力に関する情報に基づいて、電子膨張弁(12)に対する制御を行う」ことに関して、本願発明では、「入力ポート(107、108)で取り込んだ情報に基づいて、前記出力ポート(112)へ出力する信号を生成する制御部(101)と、を備え」るのに対して、引用発明では、「利用側制御装置12に、冷媒の種類による温度に基づく電気式膨張弁7に対する制御量△Sj1、△Sj2が記憶保持されており、冷媒の種類を判別して冷媒の種類に対応した制御を行う」点。

(相違点4)

「冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を制御するための電子膨張弁(12)に対する制御量および蒸発器(13)の入口および出口の温度又は圧力に関する情報に基づいて、冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づき異なる電子膨張弁(12)に対する信号を電子膨張弁(12)に出力する」ことに関して、本願発明では、「前記入力ポート(107,108)で取り込んだ情報」に基づいて、「前記電子膨張弁(12)に対する信号を前記出力ポート(112)へ出力する」のに対して、引用発明では、「液側温度検知器13の検出温度である液側配管温度TH1とガス側温度検知器14の検出温度であるガス側配管温度TH2との差(SH=TH2-TH1)を算出し、
ガス側配管温度TH2と液側配管温度TH1との差SHと、差の目標値であるSHmとの大小比較により、SH>SHmの場合は、電気式膨張弁7の開き量△Sj2(SH、SHm)を算出し、電気式膨張弁7を開き量△Sj2(SH、SHm)分だけ開き、SH<SHmの場合は、電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)を算出し、ステップS8で電気式膨張弁7の絞り量△Sj1(SH、SHm)分だけ絞」る点。

2.判断

上記相違点1~4について検討すると、引用文献2には、引用文献2記載事項である「冷凍系Mcを制御する制御系Mpのコントローラ本体31が、温度センサ等の各種センサ類Xdを接続する入力ポートと、制御信号を付与する出力ポートを備えること。」が記載されている。

そして、制御装置が、各種センサを接続する入力ポートから検出値を取り込み、出力ポートから被制御対象に制御信号を出力することが技術常識であることを勘案すると、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせて、「入力ポート」により情報を取り込み、「前記電子膨張弁と接続される出力ポート」を設けて、「入力ポートで取り込んだ情報に基づいて、前記出力ポートへ出力する信号を生成する制御部」を設けるよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

3.審判請求人の主張

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審判請求人は、令和4年12月21日に提出した意見書において、以下のように主張する。

「(3-3) 一方、本発明1における「制御量」は、本願の当初明細書の「制御部101は、CPU(Central Processing Unit)101c、メモリ101mを搭載し、ソフトウェアを実行することにより所定の機能を発揮する。ソフトウェア及び必要なデータはメモリ101mに記憶されている。」との記載(段落0020参照)、及び「そこで、予め、例えば冷媒ごとの、同一圧力時の液温とガス温との差(温度スライド)に基づいて、温度又は圧力に基づく冷媒ごとの適切な制御量を制御部101のメモリ101mに記憶しておく。」との記載(段落0024参照)から判るように、メモリに記憶されたデータ(値の集まり)であり、具体的な数値の形態で記憶されております。なお、通常「データ」という場合は、値の集まりを示し、数式は含まないと理解されるものと思料致します。
(3-4) 以上の検討結果に基づいて、本発明1と引用発明1とを比較すると、以下の点で相違しております。
<相違点1>
本発明1は、冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を調整するための電子膨張弁に対する制御量を、具体的な数値の形態で記憶しているのに対し、
引用発明1は、制御量が、数式を含む形態で記憶されている点。
・・・
(3-7) このため、引用発明2及び/又は引用発明3を引用発明1に適用した場合、制御量を出力するときに、その都度演算が必要となることに変わりはなく、本発明1と同様の構成にはならないと思料致します。」

しかしながら、請求項1の発明特定事項は、上記第2に示したとおりであって、審判請求人が主張する「冷媒の種類ごとの温度又は圧力に基づく、冷媒流量を調整するための電子膨張弁に対する制御量を、具体的な数値の形態で記憶している」ことを特定するものではないし、審判請求人が主張するように限定的に解釈する理由もない。

よって、審判請求人の主張は、採用することができない。

4.まとめ

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-002624

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