2022-002388
方法、プログラム、及び電子装置
- 審判番号
- 2022-002388
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-085896外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月17日
- 審決日
- 2022年08月09日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
理 由
第1 手続の経緯
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本願は、2020年(令和2年)5月15日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
補正の却下の決定、拒絶査定
第2 原査定の概要
原査定(令和3年11月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1~6に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 本願発明
本願請求項1~10に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明10」という。)は、令和4年2月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1及び2は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】タッチパネルを備えるコンピュータにおいて実行される方法であって、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに基づいて、該データポイントの集合が示す角度を決定するステップと、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップと、続きを表示(全20行)前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定し、決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定するステップと、入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定するステップと、を含み、前記方法は、既定の時間ごとに、前記決定された変換済み重み付き速さと前記決定された角度を持つ単位ベクトルとに基づいて、合成ベクトルを生成するステップを含む、方法。【請求項2】タッチパネルを備えるコンピュータにおいて実行される方法であって、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに基づいて、該データポイントの集合が示す角度を決定するステップと、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップと、前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定し、決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定するステップと、入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定するステップと、を含み、前記方法は、既定の時間ごとに、前記決定された変換済み重み付き速さと前記決定された角度を持つ単位ベクトルとに基づいて、合成ベクトルを生成するステップを含む、方法。」
なお、本願発明3~10の概要は以下のとおりである。
本願発明3~8は、本願発明1又は2を減縮した発明である。
本願発明9は、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であって、本願発明1を「電子装置」の発明として特定したものである。
本願発明10は、本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明であって、本願発明2を「電子装置」の発明として特定したものである。
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0001】本発明は、プログラム、電子装置、及び方法に関するものであり、特にタッチパネルを備える電子装置において実行されるプログラム、電子装置、及び方法に関する。」
「【0024】図1は本発明の一実施形態による電子装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。電子装置10は、プロセッサ11、入力装置12、表示装置13、記憶装置14、及び通信装置15を備える。これらの各構成装置はバス16によって接続される。なお、バス16と各構成装置との間には必要に応じてインタフェースが介在しているものとする。本実施形態において、電子装置10はスマートフォンである。ただし、電子装置10は、上記の構成を備えるものであれば、タブレット型コンピュータ、タッチパッド等の接触型入力装置を備えるコンピュータなどの端末とすることができる。」
「【0034】エンジン部24は、主として、タッチパネル17へのユーザのタッチ操作により発生したタッチイベントを用いてユーザが仮想空間内の操作対象オブジェクトの移動を制御するための速度因子及び角度を決定し、状態決定部25へ送出する。速度因子は、操作対象オブジェクトの速さを決定するための値である。本実施形態では、操作対象オブジェクトが操作対象キャラクタであるため、速度因子は、更に、歩くや走るなどの該キャラクタのモーションを決定するための値である。角度は、操作対象オブジェクトの移動方向を決定するための値である。エンジン部24の角度決定方法は、例えば特願2018-094656号に記載されている方法を用いるため、本明細書では説明を省略する。」
「【0038】エンジン部24は、タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得する。エンジン部24は、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納する。当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものである。」
「【0040】エンジン部24は、既定の処理時間ごとに、第1のバッファに保持された1又は複数のデータポイントをデータポイント列として格納する。本実施形態では、エンジン部24は、フレームの時間(フレーム間の時間)ごとに、当該データポイント列を、記憶装置14内の第2のバッファに保持する。フレームの時間F(秒)は、ゲームを実行するためのフレームレートに対応する時間であり、例えばフレームレートが30fpsの場合、Fは1/30秒である。」
「【0045】エンジン部24は、保持されたデータポイント列のうち最新のデータポイント列における変位速さvnの、該最新のデータポイント列より前に保持されたデータポイント列における変位速さv1~vn-1の平均値に対する偏りに基づいて、速度因子を決定する。好ましくは、エンジン部24は、保持されたデータポイント列のうちの一のデータポイント列における変位速さvi(i=1~n)の、該一のデータポイント列より前に保持されたデータポイント列における変位速さv1~vi-1の平均値に対する偏りに基づいて、速度因子を決定する。ここで、変位速さviの変位速さv0~vi-1の平均値に対する偏りは、例えば変位速さviの変位速さv0~vi-1の平均値からの偏り(偏差)である。なお、変位速さv1~vi-1の平均値は、i=1の場合は0とし、i=2の場合はv1とする。」
「【0047】具体的には、エンジン部24は、以下のように速度因子を算出する。速度因子は、以下のように定義されたCumulative Pointwize Deviation関数(CPD関数)の出力値である。CPD関数は、式(3)により算出する。エンジン部24は、CPD関数の出力値を状態決定部25へ出力する。[図:0001388292000001.jpg](3)ここで、nは、エンジン部24が第2のバッファに保持しているデータポイント列の数である。【0048】viは、i番目のデータポイント列における変位速さ、又はi番目のフレームにおける変位速さである。変位速さは、対象となるフレームの時間におけるタッチポイントの集合(データポイントの集合)から算出されたユーザの指の移動速度に対応する。1つの例では、エンジン部24は、第2のバッファに保持されているデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて、該データポイント列におけるデータポイントの変位速さを決定する。1つの例では、エンジン部24が、データポイント列としてx座標の値とy座標の値を分けて保持する場合、エンジン部24は、第2のバッファに保持されているデータポイント列におけるx座標の値の変位及びy座標の値の変位に基づいて、変位速さを決定する。1つの例では、エンジン部24は、第2のバッファに保持されているデータポイント列において時系列的に隣接するデータポイントの変位量、及び該データポイント列が含むデータポイントの数量に基づいて、変位速さを決定する。」
(2)引用発明1
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タッチパネルを備える電子装置において実行される方法であって、電子装置10は、タッチパッド等の接触型入力装置を備えるコンピュータなどの端末とすることができ、タッチパネル17へのユーザのタッチ操作により発生したタッチイベントを用いてユーザが仮想空間内の操作対象オブジェクトの移動を制御するための速度因子及び角度を決定し、タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得し、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納し、当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものであり、既定の処理時間ごとに、第1のバッファに保持された1又は複数のデータポイントをデータポイント列として格納し、フレームの時間(フレーム間の時間)ごとに、当該データポイント列を、記憶装置14内の第2のバッファに保持し、保持されたデータポイント列のうち最新のデータポイント列における変位速さvnの、該最新のデータポイント列より前に保持されたデータポイント列における変位速さv1~vn-1の平均値に対する偏りに基づいて、速度因子を決定し、第2のバッファに保持されているデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて、該データポイント列におけるデータポイントの変位速さを決定すること、を含む、方法。」
2 引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0026】上述した様に、本実施形態では、タッチ圧(タッチ圧検出部41の出力値)に応じて、ゲームキャラクタCの移動速度(加減速量)が変化する。しかしながら、タッチ圧の生データの時系列は、プレイヤーが自然人である以上、安定せずに非連続(振動を繰り返したもの)になる。従って、タッチ圧の生データそのものを用いてゲームキャラクタCの移動速度を決定すると、ゲームキャラクタCの移動(加減速)は不安定となってしまう。そこで、本実施形態では、図3に示す様に、タッチ圧を入力パラメータとしてラチェット関数に入力し、当該ラチェット関数の出力を用いてゲームキャラクタCの移動速度を決定する、という手法が採用されている。【0027】続きを表示(全13行)ここで、ラチェット関数とは、所定の物理量を入力パラメータとして入力する関数であって、当該所定の物理量が変動しても、これまでに入力された当該所定の物理量の最大量を出力する関数をいう。【0028】図3の左方に示されているグラフは、タッチ圧(タッチ圧検出部41の出力値)の生データの時系列の推移を示している。即ち、図3の左方において、縦軸はタッチ圧(タッチ圧検出部41の出力値)を示し、横軸は時間を示している。つまり、グラフが連続している横軸の長さは、プレイヤーの指等がタッチパネルに接触している時間の長さを表す。このように、タッチ圧(タッチ圧検出部41の出力値)の生データの時系列は、非連続(振動が激しい)ことから、タッチ圧の生データをゲームキャラクタCの移動速度の設定に用いると、ゲームキャラクタCが不必要に加減速してしまい(加減速が非連続になってしまい)、不適である。そこで、本実施形態では、図3に示すように、タッチ圧をラチェット関数の入力パラメータとして入力して、当該ラチェット関数の出力値を、ゲームキャラクタCの移動速度の設定に用いる、という手法が採用される。【0029】これにより、図4に示す様に、ラチェット関数の出力値、即ちタッチ圧の最大値を用いて、ゲームキャラクタCの移動速度を決定することが可能になる。つまり、ラチェット関数を適用することにより、図4の左方に示す非連続的なタッチ圧の変化を、図4の右方に示すように連続的な変化に変換することができる。このような連続的な変化を用いて、ゲームキャラクタCの移動速度を設定することで、ゲームキャラクタCは連続した加減速をすることができる。具体的には例えばタッチ圧が下がっても、タッチパネルからプレイヤーの指等が離間されない限り、ゲームキャラクタCは、タッチ圧の最大値に応じた速度で、即ち不用意に移動速度を低下させずに、走り続けることができる。このようにして、プレイヤーは、表示画面上の少ない面積の指の移動をするだけで、プレイヤー端末1のタッチパネルを強く押し続けなくても、直感的にゲームキャラクタCの移動操作をすることができる。」
「【0042】ここで、移動速度の決定手法は、ラチェット関数の出力量に基づいて決定する手法であれば足り、特に限定されない。本実施形態では、ラチェット関数の出力をゲームキャラクタCの移動速度に変換する関数(以下、「トランスミッション関数」と呼ぶ)として、複数種類のパターンが予めトランスミッション関数DB61に保持されている。そして、これらの複数のパターンの中から所定のパターンのトランスミッション関数を抽出して、抽出したトランスミッション関数を利用してゲームキャラクタCの移動速度を決定する、という手法が採用されている。【0043】図8及び図9は、図6の機能的構成のプレイヤー端末1のうちゲームキャラクタ動作量決定部53に適用される、トランスミッション関数の各種例を表す図である。図8及び図9において、縦軸がトランスミッション関数の出力、即ちゲームキャラクタCの移動速度を表し、横軸がトランスミッション関数の入力、即ちラチェット関数の出力を表している。図8(A)の例のトランスミッション関数は、人間のゲームキャラクタCが走るときの加速の様子を模したものである。図8(B)の例のトランスミッション関数は、自動車の加速の様子を模したもの、即ち、多段階のギアチェンジを模したものである。図8(C)の例のトランスミッション関数は、飛行機の加速の様子を模したもの、即ち所定の瞬間まで徐々に加速し、当該所定の瞬間から指数関数的に一気に加速するようなジェットエンジンの振る舞いを模したものである。」
「【0064】また例えば上述の例では、ゲームキャラクタCの移動速度は、タッチ圧を入力する所定のラチェット関数の出力量に基づいて設定されていたが、特にこれに限定されない。即ち、ラチェット関数の出力量に基づいて設定される量は、移動速度である必要は特に無く、ゲームキャラクタCの動作の所定量であれば足りる。また、ラチェット関数の入力パラメータも、タッチ圧である必要は特になく、タッチパネルの表示面への物体の接触度合に応じて変化する、当該タッチパネルに関する所定の物理量であれば足りる。例えば、タッチパネルに対する力覚や、タッチパネル(プレイヤー端末1)の振動量を、ラチェット関数の入力パラメータとして採用してもよい。」
「【図3】[図:0001388292000002.jpg]」
「【図4】[図:0001388292000003.jpg]」
「【図8】[図:0001388292000004.jpg]」
(2)上記(1)から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。
「タッチ圧を入力パラメータとしてラチェット関数に入力し、ここで、ラチェット関数とは、所定の物理量を入力パラメータとして入力する関数であって、当該所定の物理量が変動しても、これまでに入力された当該所定の物理量の最大量を出力する関数をいい、ラチェット関数の出力をゲームキャラクタCの移動速度に変換する関数(以下、「トランスミッション関数」と呼ぶ)として、複数種類のパターンが予めトランスミッション関数DB61に保持され、これらの複数のパターンの中から所定のパターンのトランスミッション関数を抽出して、抽出したトランスミッション関数を利用してゲームキャラクタCの移動速度を決定し、図8(B)の例のトランスミッション関数は、自動車の加速の様子を模したもの、即ち、多段階のギアチェンジを模したものであり、図8(C)の例のトランスミッション関数は、飛行機の加速の様子を模したもの、即ち所定の瞬間まで徐々に加速し、当該所定の瞬間から指数関数的に一気に加速するようなジェットエンジンの振る舞いを模したものであること。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の電子装置10は、タッチパッド等の接触型入力装置を備えるコンピュータなどの端末とすることができるから、引用発明1の「電子装置」は、本願発明1の「タッチパネルを備えるコンピュータ」に相当する。
(イ)引用発明1において、「タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得し、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納し、当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものであ」ることから、引用発明1の「データポイント」は、本願発明1の「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイント」に相当するものであるといえる。
(ウ)引用発明1において「既定の処理時間ごとに、第1のバッファに保持された1又は複数のデータポイントをデータポイント列として格納し、フレームの時間(フレーム間の時間)ごとに、当該データポイント列を、記憶装置14内の第2のバッファに保持し」ていることから、引用発明1は、本願発明1の「1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持する」ことに相当する構成を有しているといえる。
(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明1は、本願発明1の「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップ」に相当する構成を有しているといえる。
(オ)引用発明1において、「第2のバッファに保持されているデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて、該データポイント列におけるデータポイントの変位速さを決定」していることから、引用発明1は、本願発明1の「前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列における」、「変位速さを決定」することに相当する構成を有しているといえる。
(カ)引用発明1の「変位速さ」は、データポイントの変位に基づいて決定されている。一方、引用発明1において、タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得し、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納し、当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものであることから、引用発明1の「データポイント」は、タッチイベントが発生した位置に対応するものであるといえる。そうすると、引用発明1の「変位速さ」は、タッチイベントが発生した位置に対応するデータポイントの変位に基づいて決定されているといえるから、引用発明1の「変位速さ」は、「タッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する」ものであるともいえる。
(キ)上記(オ)及び(カ)を踏まえると、引用発明1は、本願発明1の「前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定」することに相当する構成を有しているといえる。
(ク)引用発明1において、保持されたデータポイント列のうち最新のデータポイント列における変位速さvnの、該最新のデータポイント列より前に保持されたデータポイント列における変位速さv1~vn-1の平均値に対する偏りに基づいて、速度因子を決定していることから、引用発明1の「速度因子」は、本願発明1の「重み付き速さ」に相当する。そして、引用発明1は、本願発明1の「決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定する」ことに相当する構成を有しているといえる。
イ 上記アから、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「タッチパネルを備えるコンピュータにおいて実行される方法であって、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップと、前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定し、決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定するステップと、を含む、方法。」
(相違点1)
本願発明1では「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに基づいて、該データポイントの集合が示す角度を決定するステップ」を含むのに対して、引用発明1では、データポイントに基づいて角度を決定することについて特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことを含むのに対して、引用発明1では、変換済み重み付き速さを決定することについて特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1では「既定の時間ごとに、前記決定された変換済み重み付き速さと前記決定された角度を持つ単位ベクトルとに基づいて、合成ベクトルを生成するステップを含む」のに対して、引用発明1では、合成ベクトルを生成することについて特定されていない点。
(2)判断
ア 事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
上記第4の2(2)を踏まえると、引用文献2には、タッチ圧を入力パラメータとして、これまでに入力された当該所定の物理量の最大量を出力するラチェット関数と、ラチェット関数の出力を多段階のギアチェンジを模したものである移動速度に変換する図8(B)の例のトランスミッション関数が記載されていると認められる。
しかしながら、本願発明1の「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことが、引用文献2に記載されているとはいえない。
さらに、引用文献1~6のいずれにも、本願発明1の「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことは開示も示唆もされておらず、そのようなことが本願の出願日前において周知技術であったともいえないから、引用発明1において、「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことを含むようにすることは、当業者であっても容易に想到し得ない。
(3)結語
よって、本願発明1は、相違点1及び3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
1 本願発明2について
(1)対比
ア 本願発明2と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の電子装置10は、タッチパッド等の接触型入力装置を備えるコンピュータなどの端末とすることができるから、引用発明1の「電子装置」は、本願発明2の「タッチパネルを備えるコンピュータ」に相当する。
(イ)引用発明1において、「タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得し、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納し、当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものであ」ることから、引用発明1の「データポイント」は、本願発明2の「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイント」に相当するものであるといえる。
(ウ)引用発明1において「既定の処理時間ごとに、第1のバッファに保持された1又は複数のデータポイントをデータポイント列として格納し、フレームの時間(フレーム間の時間)ごとに、当該データポイント列を、記憶装置14内の第2のバッファに保持し」ていることから、引用発明1は、本願発明2の「1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持する」ことに相当する構成を有しているといえる。
(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明1は、本願発明2の「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップ」に相当する構成を有しているといえる。
(オ)引用発明1において、「第2のバッファに保持されているデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて、該データポイント列におけるデータポイントの変位速さを決定」していることから、引用発明1は、本願発明2の「前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列における」、「変位速さを決定」することに相当する構成を有しているといえる。
(カ)引用発明1の「変位速さ」は、データポイントの変位に基づいて決定されている。一方、引用発明1において、タッチイベントが発生するときに、タッチイベントを取得し、タッチイベントを取得するとき、タッチパネル17上の静電容量が変化した位置に対応する、2つの変数からなる数値の組(x、y)を取得して、第1のバッファに格納し、当該2つの変数からなる数値の組のデータは、タッチイベントに付随してエンジン部24が取得するものであり、第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに対応するものであることから、引用発明1の「データポイント」は、タッチイベントが発生した位置に対応するものであるといえる。そうすると、引用発明1の「変位速さ」は、タッチイベントが発生した位置に対応するデータポイントの変位に基づいて決定されているといえるから、引用発明1の「変位速さ」は、「タッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する」ものであるともいえる。
(キ)上記(オ)及び(カ)を踏まえると、引用発明1は、本願発明2の「前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定」することに相当する構成を有しているといえる。
(ク)引用発明1において、保持されたデータポイント列のうち最新のデータポイント列における変位速さvnの、該最新のデータポイント列より前に保持されたデータポイント列における変位速さv1~vn-1の平均値に対する偏りに基づいて、速度因子を決定していることから、引用発明1の「速度因子」は、本願発明2の「重み付き速さ」に相当する。そして、引用発明1は、本願発明2の「決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定する」ことに相当する構成を有しているといえる。
イ 上記アから、本願発明2と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「タッチパネルを備えるコンピュータにおいて実行される方法であって、前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示される1又は複数のデータポイントを、既定の時間ごとに、データポイント列として保持するステップと、前記保持されたデータポイント列におけるデータポイントの変位に基づいて該データポイント列におけるタッチイベントが発生した位置の変位する速さに対応する変位速さを決定し、決定された最新の変位速さの、その前に決定された変位速さの平均値に対する偏りに少なくとも基づいて、重み付き速さを決定するステップと、を含む、方法。」
(相違点4)
本願発明2では「前記タッチパネルへのユーザの操作により発生したタッチイベントに基づいて取得される第1の軸の値及び第2の軸の値により示されるデータポイントに基づいて、該データポイントの集合が示す角度を決定するステップ」を含むのに対して、引用発明1では、データポイントに基づいて角度を決定することについて特定されていない点。
(相違点5)
本願発明2では「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことを含むのに対して、引用発明1では、変換済み重み付き速さを決定することについて特定されていない点。
(相違点6)
本願発明2では「既定の時間ごとに、前記決定された変換済み重み付き速さと前記決定された角度を持つ単位ベクトルとに基づいて、合成ベクトルを生成するステップを含む」のに対して、引用発明1では、合成ベクトルを生成することについて特定されていない点。
(2)判断
ア 事案に鑑みて、相違点5について先に検討する。
上記第4の2(2)を踏まえると、引用文献2には、タッチ圧を入力パラメータとして、これまでに入力された当該所定の物理量の最大量を出力するラチェット関数と、ラチェット関数の出力を所定の瞬間まで徐々に加速し、当該所定の瞬間から指数関数的に一気に加速するようなジェットエンジンの振る舞いを模したものである移動速度に変換する図8(C)の例のトランスミッション関数が記載されていると認められる。
しかしながら、本願発明2の「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことが、引用文献2に記載されているとはいえない。
さらに、引用文献1~6のいずれにも、本願発明2の「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことは開示も示唆もされておらず、そのようなことが本願の出願日前において周知技術であったともいえないから、引用発明1において、「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことを含むようにすることは、当業者であっても容易に想到し得ない。
(3)結語
よって、本願発明2は、相違点4及び6について検討するまでもなく、当業者であっても、引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明3~8について
本願発明3~8も、本願発明1の「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」こと、又は本願発明2の「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1又は2と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本願発明9について
本願発明9は、本願発明1に対応する電子装置の発明であり、本願発明1の「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本願発明10について
本願発明10は、本願発明2に対応する電子装置の発明であり、本願発明2の「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことと同一の構成を備えるものであるから、本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1~10は、「入力された値が所定の閾値以上であることに応じて閾値に応じた大きさの定数を決定することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」こと、又は「入力された1つの値を一定の値域内の1つの値へ写像する関数を適用することにより入力された値に対応する値を決定し、該決定された値のうちの最大値を保持して決定する所定の関数に、前記決定された重み付き速さを入力することにより、仮想空間内の操作対象オブジェクトのパラメータを決定するための変換済み重み付き速さを決定する」ことを備えるものとなっており、上記第5のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない
。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-002388