2022-001284
冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
- 審判番号
- 2022-001284
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-105896外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月27日
- 審決日
- 2024年01月24日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (C09K) / P18 .575-Z (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和2年6月19日(優先権主張 令和元年6月19日 日本国)の出願であって、同年8月6日付けの拒絶理由(以下「第1拒絶理由」という。)の通知に対し、同年10月12日に意見書及び補正書が提出され、令和3年3月10日付けの拒絶理由(最後)の通知に対し、同年5月17日に意見書及び補正書が提出されたが、同年10月27日付けで第1拒絶理由により拒絶する旨の拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して令和4年1月27日に審判請求書の提出と同時に手続補正書が提出され、さらに、令和5年7月4日に上申書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月27日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 手続補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
令和4年1月27日の手続補正(以下「本件補正」ともいう。)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。下線は、補正箇所を示す。
「冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)並びにジフルオロメタン(R32)の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含み、前記冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234ze並びにR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びz並びにaとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234zeの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、0<a≦11.1のとき、続きを表示(全37行)点G(0.0314a2-1.8079a+72.0, 100-a-x, 0.0)、点G’(0.0314a2-1.8079a+72.0, -0.0199a2+0.0677a+3.8, 100-a-x-y)点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)点D(0.0, 0.0234a2+0.0647a+86.3, 100-a-y)及び点C(-0.189a2-0.8664a+32.9, 100-a-x, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BD、DC及びCGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’、G’B及びDC上にあり(ただし、点B、点D、点C及び点Gは除く)、11.1<a≦16.4のとき、点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、点G’(-1.0566a+67.528, -0.3962a+6.4981, 100-a-x-y)、点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の4点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’及びG’Bにあり(ただし、点B、点O及び点Gは除く)16.4<a≦26.6のとき、点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、点I(0.015a2-1.4701a+70.266, 0.0, 100-a-x)、点A(0.0076a2-1.7a+76.031, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、26.6<a≦43.8のとき、点G(0.00738a2-1.0762a+65.22, 100-a-x, 0.0)、点I(0.00738a2-1.0762a+65.22, 0.0, 100-a-x)、点A(0.00582a2-1.5915a+74.4, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, 0.00328a2-1.3169a+67.421, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、43.8<a≦47.8のとき、点G(-0.45a+51.91, 100-a-x, 0.0)点I(-0.45a+51.91, 0.0, 100-a-x)点A(-1.075a+62.985, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, -1.025a+60.895, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にある(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、組成物。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年10月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)並びにジフルオロメタン(R32)を含み、前記冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234ze並びにR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びz並びにaとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234zeの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、0<a≦11.1のとき、続きを表示(全37行)点G(0.0314a2-1.8079a+72.0, 100-a-x, 0.0)、点G’(0.0314a2-1.8079a+72.0, -0.0199a2+0.0677a+3.8, 100-a-x-y)点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)点D(0.0, 0.0234a2+0.0647a+86.3, 100-a-y)及び点C(-0.189a2-0.8664a+32.9, 100-a-x, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BD、DC及びCGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’、G’B及びDC上にあり(ただし、点B、点D、点C及び点Gは除く)、11.1<a≦16.4のとき、点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、点G’(-1.0566a+67.528, -0.3962a+6.4981, 100-a-x-y)、点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の4点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’及びG’Bにあり(ただし、点B、点O及び点Gは除く)16.4<a≦26.6のとき、点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、点I(0.015a2-1.4701a+70.266, 0.0, 100-a-x)、点A(0.0076a2-1.7a+76.031, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、26.6<a≦43.8のとき、点G(0.00738a2-1.0762a+65.22, 100-a-x, 0.0)、点I(0.00738a2-1.0762a+65.22, 0.0, 100-a-x)、点A(0.00582a2-1.5915a+74.4, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, 0.00328a2-1.3169a+67.421, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、43.8<a≦47.8のとき、点G(-0.45a+51.91, 100-a-x, 0.0)点I(-0.45a+51.91, 0.0, 100-a-x)点A(-1.075a+62.985, 0.0, 100-a-x)点B(0.0, -1.025a+60.895, 100-a-y)及び点O(0.0, 100-a, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にある(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、組成物。」
2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「冷媒を含む組成物」の「冷媒」について、「冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)並びにジフルオロメタン(R32)を含み」と特定されていたものを、「冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)並びにジフルオロメタン(R32)の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含み」と補正するものである。
この補正は、「1132(E)」、「1123」、「1234ze」及び「R32」の4成分の合計量を限定するものではあるが、本件補正前は、4成分を含むことが特定されていたのに対し、本件補正後は、4成分の合計量が「冷媒全体に対して99.5質量%以上」であればよいもの、すなわち、必ずしもこれら4成分のすべてを含まなくてもよいものに、特許請求の範囲が拡張されたとも解釈し得るものである。
しかしながら、後段の「座標(x,y,z)が、0<a≦11.1のとき、点G(0.0314a2-1.8079a+72.0, 100-a-x, 0.0)・・・の5点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BD、DC及びCGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’、G’B及びDC上にあり(ただし、点B、点D、点C及び点Gは除く)」等の特定事項を参酌すれば、補正後の請求項1に係る発明には、4成分のいずれかが0の場合は含まれていないことを理解できるから、本件補正は、特許請求の範囲を実質的に拡張するものではない。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載した本件補正後の請求項1に係る発明である。
(2)原査定で引用された引用文献
(3)引用文献1に記載された事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった前記引用文献1には、次の記載がある。下線は当審が付した。
「[0001] 本発明は、熱サイクル用作動媒体、およびこの作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムに関する。」
「[0012] 本発明は、オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる作動媒体、この作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物、および該組成物を用いた熱サイクルシステムを提供することを目的とする。」
「[0017] 以下、本発明の実施の形態について説明する。[熱サイクル用作動媒体]本発明の熱サイクル用作動媒体(以下、作動媒体ともいう。)は、HFO-1123とHFO-1132を含む作動媒体である。HFO-1132には、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))と、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))の2種類の立体異性体が存在する。本発明において、HFO-1132としては、HFO-1132(E)またはHFO-1132(Z)を単独で用いてもよいし、HFO-1132(E)とHFO-1132(Z)の混合物を用いてもよい。特に、HFO-1132(E)が好ましい。続きを表示(全12行)[0018] 本発明の作動媒体は、HFC-32とHFC-125の少なくとも一方をさらに含有することができる。・・・[0033]<任意成分>本発明の熱サイクル用作動媒体は、本発明の効果を損なわない範囲で、HFO-1123、HFO-1132、HFC-32およびHFC-125以外に、通常作動媒体に含有される化合物を任意に含有してもよい。・・・[0036](HFO-1123とHFO-1132以外のHFO)本発明の作動媒体が含んでもよいHFO-1123とHFO-1132以外のHFOとしては、HFO-1261yf、HFO-1243yc、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、HFO-1234yf、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、HFO-1243zf等が挙げられる。これらのHFOは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の作動媒体が、HFO-1123とHFO-1132以外のHFOを含む場合、その含有量は、作動媒体(100質量%)中、1~9質量%が好ましく、1~2質量%がより好ましい。」
「[0114] 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1~48が実施例であり、例50~55は、本発明の作動媒体とは異なる組成を有する参考例である。また、例49は、例1~48の実施例および例50~55の参考例において、評価の基準に用いたR410Aの例であり、比較例である。・・・[0128] こうして得られた作動媒体について、冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)、温度勾配および吐出温度を、上記と同様の方法で測定した。冷凍能力(対R410A)および成績係数(対R410A)の測定・評価結果、温度勾配および吐出温度差の測定結果を、GWPの計算結果とともに表3~表6にそれぞれ示す。[0129] [表3][図:0001408240000001.jpg]・・・[0132] [表6][図:0001408240000002.jpg][0133] 表3~表6に示される結果から、HFO-1123とHFO-1132を含有し、さらにHFC-32とHFC-125の少なくとも一方を含む例13~例48の作動媒体は、R410Aに相対する成績係数および冷凍能力がともに良好であるうえに、温度勾配が小さいことがわかる。特に、1132/作動媒体が10質量%以上で43質量%以下である例13~例19、例21~例27、および例29~例48の作動媒体は、温度勾配が1℃以下と極めて小さく、エネルギー効率に優れていることがわかる。また、HFC-125を含有する例21~例34および例39~例48の作動媒体は、概ね吐出温度が低くなっていることがわかる。」
(4)引用文献1に記載された発明
ア 例えば、前記(2)の[0129]の[表3]の「例15」に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明1>
「HFO-1123とHFO-1132を含む熱サイクル用作動媒体であって、HFO-1123を60質量%と、HFO-1132(E)を20重量%と、HFC-32を20重量%含み、GWPが137であり、オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる熱サイクル用作動媒体。」
イ また、同[表6]の「例37」に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明2>
「HFO-1123とHFO-1132を含む熱サイクル用作動媒体であって、HFO-1123を60質量%と、HFO-1132(E)を10重量%と、HFC-32を30重量%含み、GWPが204であり、オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる熱サイクル用作動媒体。」
ウ また、同[表6]の「例38」に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明3>
「HFO-1123とHFO-1132を含む熱サイクル用作動媒体であって、HFO-1123を80質量%と、HEO-1132(E)を10重量%と、HFC-32を10重量%含み、GWPが69であり、オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる熱サイクル用作動媒体。」
(5)本件補正発明と引用発明1~3との対比、判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明1~3(以下まとめて「引用発明」ともいう。)とを対比すると、引用発明の「熱サイクル用作動媒体」は、本件補正発明の「冷媒を含む組成物」に相当する。
引用発明の「HFO-1123」は、本件補正発明の「トリフルオロエチレン(HFO-1123)」に相当する。
同様に、引用発明の「HEO-1132(E)」は、本件補正発明の「トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))」に、「HFC-32」は「ジフルオロメタン(R32)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「HFO-1123」、「HEO-1132(E)」及び「HFC-32」の重量%の合計は100である。
そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びトリフルオロエチレン(HFO-1123)並びにジフルオロメタン(R32)の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含む、組成物。」
<相違点>
組成物が、本件補正発明は、「冷媒において、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234ze並びにR32の、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びz並びにaとするとき、HFO-1132(E)、HFO-1123及びR1234zeの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
0<a≦11.1のとき、
点G(0.0314a2-1.8079a+72.0, 100-a-x, 0.0)、
点G’(0.0314a2-1.8079a+72.0, -0.0199a2+0.0677a+3.8, 100-a-x-y)
点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)
点D(0.0, 0.0234a2+0.0647a+86.3, 100-a-y)及び
点C(-0.189a2-0.8664a+32.9, 100-a-x, 0.0)の5点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BD、DC及びCGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’、G’B及びDC上にあり(ただし、点B、点D、点C及び点Gは除く)、
11.1<a≦16.4のとき、
点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、
点G’(-1.0566a+67.528, -0.3962a+6.4981, 100-a-x-y)、
点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)
の4点をそれぞれ結ぶ直線GG’、G’B、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GG’及びG’Bにあり(ただし、点B、点O及び点Gは除く)
16.4<a≦26.6のとき、
点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、
点I(0.015a2-1.4701a+70.266, 0.0, 100-a-x)、
点A(0.0076a2-1.7a+76.031, 0.0, 100-a-x)
点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)
の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、
26.6<a≦43.8のとき、
点G(0.00738a2-1.0762a+65.22, 100-a-x, 0.0)、
点I(0.00738a2-1.0762a+65.22, 0.0, 100-a-x)、
点A(0.00582a2-1.5915a+74.4, 0.0, 100-a-x)
点B(0.0, 0.00328a2-1.3169a+67.421, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)
の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にあり(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)、
43.8<a≦47.8のとき、
点G(-0.45a+51.91, 100-a-x, 0.0)
点I(-0.45a+51.91, 0.0, 100-a-x)
点A(-1.075a+62.985, 0.0, 100-a-x)
点B(0.0, -1.025a+60.895, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)
の5点をそれぞれ結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内又は前記直線GI及びAB上にある(ただし、点G、点I、点A及び点Bは除く)」ものであるのに対し、引用発明は、R1234zeを含まないものである点。
イ 判断
(ア)構成の容易想到性
前記相違点について検討する。
引用発明を認定した引用文献1(前記(3)参照。)の[0036]には「本発明の作動媒体が含んでもよいHFO-1123とHFO-1132以外のHFOとしては」、「HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)」「等が挙げられる」こと及び「その含有量は、作動媒体(100質量%)中、1~9質量%が好ましく、1~2質量%がより好ましい」ことが記載されている。
そうすると、引用発明1において、本件補正発明の「R1234ze」に相当する「HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)」を、「1~2重量%」程度添加することは、当業者が容易になし得たことである。
(イ)容易に想到し得る構成が、本件補正発明に含まれることの確認
そこで、以下、引用発明1~3に、HFO-1234ze(R1234ze)を1~2重量%添加した熱サイクル用作動媒体が、本件補正発明の範囲に含まれるか否かを確認する。
a 引用発明1
まず、引用発明1において、「HFO-1234ze(R1234ze)」を、1重量%添加した場合の「熱サイクル用作動媒体」の組成比を表にすると、次のようになる。(1重量%添加した場合の値は、それぞれの重量%に100/101を乗じた値である。)
[図:0001408240000003.jpg]
そこで、この「1重量%添加の熱サイクル用作動媒体」が、本件補正発明の特定事項を充足するか否かを検討すると、これらの「熱サイクル用作動媒体」は、「HFC-32」を19.8重量%含むものであるから、本件補正発明の「16.4<a≦26.6のとき」に該当し、対応する「点G(0.015a2-1.4701a+70.266, 100-a-x, 0.0)、
点I(0.015a2-1.4701a+70.266, 0.0, 100-a-x)、
点A(0.0076a2-1.7a+76.031, 0.0, 100-a-x)
点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)」のaに、当該19.8を代入すると、
「点G( 47.04, 33.16, 0.0)、
点I( 47.04, 0.0, 33.16)、
点A( 45.35, 0.0, 34.85)
点B( 0.0, 42.59, 37.61)及び
点O( 0.0, 80.20, 0.0)となり、これらの5点を三角図にプロットすると、次のようになる。
[図:0001408240000004.jpg]
この三角図に、引用発明1において、「HFO-1234ze」を「1質量%」添加した点を追加すると次のようになり、これらの5点を結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内に存在することを見て取れる。
[図:0001408240000005.jpg]
同様に、引用発明1において、「HFO-1234ze」を、2重量%添加した場合の「熱サイクル用作動媒体」の組成比を表にすると、次のようになる。(1重量%添加した場合の値は、それぞれの重量%に100/102を乗じた値である。)
[図:0001408240000006.jpg]
そこで、この「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」が、本件補正発明の特定事項を充足するか否かを検討すると、これらの「熱サイクル用作動媒体」は、「HFC-32」を19.61重量%含むものであるから、前記「1重量%添加の熱サイクル用作動媒体」と同様に、三角図にG、I、A、B、Oの5点と、「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点を追加すると次のようになり、「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点が、G、I、A、B、Oの5点を結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内に存在することを見て取れる。
[図:0001408240000007.jpg]
b 引用発明2
次に、引用発明2において、「HFO-1234ze」を、1質量%添加した場合と、2質量%添加した場合の「熱サイクル用作動媒体」の組成比を表にすると、次のようになる。
[図:0001408240000008.jpg]
そして、これらの「熱サイクル用作動媒体」は、「HFC-32」を29重量%程度含むものであるから、本件補正発明の「26.6<a≦43.8のとき」に該当し、対応する「点G(0.00738a2-1.0762a+65.22, 100-a-x, 0.0)、
点I(0.00738a2-1.0762a+65.22, 0.0, 100-a-x)、
点A(0.00582a2-1.5915a+74.4, 0.0, 100-a-x)
点B(0.0, 0.00328a2-1.3169a+67.421, 100-a-y)及び
点O(0.0, 100-a, 0.0)」のaに29.7又は29.41を代入した、G、I、A、B、Oの5点と、「1重量%添加の熱サイクル用作動媒体」及び「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点を追加すると次のようになり、「1重量%添加の熱サイクル用作動媒体」及び「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点が、G、I、A、B、Oの5点を結ぶ直線GI、IA、AB、BO及びOGで囲まれる図形の範囲内に存在することを見て取れる。
[図:0001408240000009.jpg]
c 引用発明3
さらに、引用発明3において、「HFO-1234ze」を、1質量%添加した場合と、2質量%添加した場合の「熱サイクル用作動媒体」の組成比を表にすると、次のようになる。
[図:0001408240000010.jpg]
そして、これらの「熱サイクル用作動媒体」は、「HFC-32」を10重量%程度含むものであるから、本件補正発明の「0<a≦11.1のとき」に該当し、対応する「点G(0.0314a2-1.8079a+72.0, 100-a-x, 0.0)、
点G’(0.0314a2-1.8079a+72.0, -0.0199a2+0.0677a+3.8, 100-a-x-y)
点B(0.0, 0.0057a2-1.4197a+68.462, 100-a-y)
点D(0.0, 0.0234a2+0.0647a+86.3, 100-a-y)及び
点C(-0.189a2-0.8664a+32.9, 100-a-x, 0.0)」のaに9.9又は9.8を代入した、G、G'、B、D、Cの5点と、「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」及び「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点を追加すると次のようになり、「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」及び「2重量%添加の熱サイクル用作動媒体」の点が、G、G'、B、D、Cの5点を結ぶ直線GG'、G'B、BD、DC及びCGで囲まれる図形の範囲内に存在することを見て取れる。
[図:0001408240000011.jpg]
(ウ)効果の顕著性の検討
本願の明細書の【0004】に【発明が解決しようとする課題】として「本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。」と記載され、同【0006】に【発明の効果】として「本開示の冷媒は、低GWPである。」と記載されていることからみて、発明の効果は「低GWPである」ことと考えられるが、このような効果は、本願の明細書の記載、及び引用発明の「オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる熱サイクル用作動媒体」との特定事項や、引用発明のGWPが69~204程度であることから、当然に予測し得るものである。
(エ)容易想到性の結論
してみれば、本件補正発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)請求人の主張
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請求人は、令和2年10月12日の意見書において、「本願発明1は、明細書0015段落等に記載される通り、(1)R410Aを基準とする冷凍能力比が85%以上となり、かつ(2)R410Aを基準とするCOP比が92.5%以上となり、さらに(3)WCF微燃性となる、という効果を奏します。」「4成分系冷媒において、本願発明1の特定の組成比に調整することによって上記(1)~(3)の効果が両立して奏されるであろうことについて、引用文献のいずれにも記載も示唆もなく、当業者は知る由もなかったことから、本願発明1により奏される上記効果は顕著なものであり、進歩性は否定されないものと確信いたします。」と主張する。
しかしながら、前記「(1)R410Aを基準とする冷凍能力比が85%以上」及び「(2)R410Aを基準とするCOP比が92.5%以上」との効果は、引用発明の「オゾン層への影響および地球温暖化への影響が少なく、吐出温度が十分に低く、温度勾配が小さく、かつサイクル性能(冷凍能力と成績係数)に優れる熱サイクルが得られる熱サイクル用作動媒体」との特定事項や、引用発明の相対COP値や相対能力値から予測し得るものである。
そして、引用発明を認定した引用文献1には、燃性評価についての記載がないものの、HFO-1234ze(R1234ze)を、1~2重量%添加したとしても、燃焼特性に大きな変化があるとは考えられないから、請求人の主張は、本願補正発明と引用発明との相違点により生じる効果の顕著性についての主張であるとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
3 補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
そして、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~10に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1の(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]3(3)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討したとおり、本件補正発明から、「冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)並びにジフルオロメタン(R32)の合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含み」との事項が削除されたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3(4)、(5)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明(引用発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明(引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001284