特許拒絶査定不服審判
2022-000351
炭素-金属構造体および炭素-金属構造体の製造方法
- 審判番号
- 2022-000351
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-553385外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月11日
- 審決日
- 2023年01月23日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (H01J) / P18 .121-Z (H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-553385「炭素-金属構造体および炭素-金属構造体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月30日国際公開、WO2020/085291〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)10月21日(優先権主張 平成30年10月26日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 7月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 9月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年10月21日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和4年1月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項2】
繊維状炭素を含む炭素膜層と、
前記炭素膜層に直接備えられるろう材層と、
前記ろう材層を介して前記炭素膜層に備えられる金属台座と、を備え、
前記ろう材層は、多層構造であって、当該多層構造の各層が、それぞれ異なる組成で融点の異なるろう材を用いて成る、炭素-金属構造体。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項2に係る発明の拒絶の理由の概要は、
1.(新規性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
記
引用文献2:特開2003-059391号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2003-059391号公報、原査定の引用文献2)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
電極と、この電極上に形成された複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層とを有する電子放出源において、
前記電極は、
電極基板と、
この電極基板上に形成されかつ前記カーボンナノチューブ層に入り込んだ導電性材料からなる導電体層とからなることを特徴とする電子放出源。」
「【0013】まず、電極基板としての金属基板1を用意する。この金属基板1は、図1(a)に示すように、平面視略矩形の貫通孔2が二次元的に整列配置されたメッシュ状をしている。図1(a)におけるIb-Ib′線方向の断面を図1(b)に示す。金属基板1の厚みは0.05~0.2mm程度、メッシュのライン幅は0.3mm程度、貫通孔2の寸法は0.5mm×0.35mm程度であるが、この寸法に限定されるものではない。金属基板1の形成材料としては、SUS304などのステンレス鋼や42-6合金などが用いられる。」
「【0015】次に、図2に示すように、金属基板1の表面に、この金属基板1の形成材料よりも融点が低い導電性材料からなる導電体層3を形成する。この導電体層3の形成材料としては、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)などの純金属、Agろうなどの合金などを使用できる。また、導電体層3は一種類の材料で構成されてもよいし、二種類以上の材料が多層に形成された多層構造を有していてもよい。導電体層3の膜厚は0.1~5μm程度とする。」
「【0027】なお、金属基板1を覆う導電体層3の表面に電気泳動法によりカーボンナノチューブを付着させる工程では、分散液11中のカーボンナノチューブが陽極に付着する例を示したが、カーボンナノチューブが陽極に付着するか陰極に付着するかは分散液11に加えた電解質の性質により決まる。例えば電解質としてAl(NO3)3、Li(NO3)3を加えれば、カーボンナノチューブは陰極に付着する。この場合には、直流電源14の極性を逆にし、直流電源14の-端子を金属基板1に接続し、直流電源14の+端子を電極板13に接続すればよい。また、本実施の形態では、メッシュ状をした金属基板1を用いているが、平板状の金属基板を用いてもよい。また、カーボンナノチューブとして、複数のカーボンナノチューブが同一方向を向いて集合したバンドルを構成するものを用いてもよい。」
2 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定の根拠となった箇所の段落番号等を括弧内に記載する。)。
「電極と、この電極上に形成された複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ層とを有する電子放出源において、前記電極は、電極基板と、この電極基板上に形成されかつ前記カーボンナノチューブ層に入り込んだ導電性材料からなる導電体層とからなり、(請求項1)
導電体層は、金属基板の形成材料よりも融点が低い導電性材料からなり、導電体層の形成材料としては、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)などの純金属、Agろうなどの合金などを使用でき、導電体層は、二種類以上の材料が多層に形成された多層構造を有し、(【0015】)
電極基板として金属基板を用いる(【0013】、【0027】)
電子放出源。(請求項1)」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「カーボンナノチューブ層」は、本願発明の「繊維状炭素を含む炭素膜層」に、
引用発明の「『Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)などの純金属、Agろうなどの合金などを使用でき』る『カーボンナノチューブ層に入り込んだ導電性材料からなる導電体層』」は、本願発明の「前記炭素膜層に直接備えられるろう材層」に、
引用発明の「『金属基板を用い』た『電極基板』」は、本願発明の「金属台座」に、
引用発明の「『カーボンナノチューブ層』、『導電体層』及び『金属基板を用い』た『電極基板』」は、本願発明の「炭素-金属構造体」に、
それぞれ相当する。
2 本願発明の「前記ろう材層を介して前記炭素膜層に備えられる金属台座」の構成について
引用発明の「この電極基板上に形成されかつ前記カーボンナノチューブ層に入り込んだ導電性材料からなる導電体層」との記載から、電極基板上に導電体層が形成されており、当該導電体層がカーボンナノチューブ層に入り込んだものといえる。
したがって、引用発明は、上記構成を備えている。
3 引用発明の「導電体層は、金属基板の形成材料よりも融点が低い導電性材料からなり、導電体層の形成材料としては、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)などの純金属、Agろうなどの合金などを使用でき、導電体層は、二種類以上の材料が多層に形成された多層構造を有し」と、本願発明の「前記ろう材層は、多層構造であって、当該多層構造の各層が、それぞれ異なる組成で融点の異なるろう材を用いて成る」とは、「前記ろう材層は、多層構造であって、当該多層構造の各層が、それぞれ異なる組成を用いて成る」点で一致する。
4 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「繊維状炭素を含む炭素膜層と、
前記炭素膜層に直接備えられるろう材層と、
前記ろう材層を介して前記炭素膜層に備えられる金属台座と、を備え、
前記ろう材層は、多層構造であって、当該多層構造の各層が、それぞれ異なる組成のろう材を用いて成る、炭素-金属構造体。」
【相違点】
ろう材層の各層について、本願発明は「融点の異なる」ものであるのに対し、引用発明はそのように特定していない点。
第6 判断
1 新規性について
(1)相違点について
一般に、融点は物質に固有であり、物質が異なれば特殊な偶然を除いて融点は異なるというのが、技術常識である。とすると、引用発明が「導電体層は、二種類以上の材料が多層に形成された多層構造を有し」ている場合、導電体層の多層構造の各層は、意図的に融点を一致させない限り、融点が異なる材料を用いているといえるし、引用発明において導電体層の各層の融点を意図的に一致させている事情は一切見いだせない。
そうすると、相違点は実質的な相違点とはいえない。
(2)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明である。
2 進歩性について
仮に、上記相違点が実質的な相違点である場合について検討する。
(1)相違点について
引用発明の「導電体層は、二種類以上の材料が多層に形成された多層構造を有し」ているので、導電体層の多層構造の各層として、融点が異なる材料を選択することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
(2)効果について
そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものである。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、審判請求書において、「文献2は、導電体層において、二種類以上の材料を多層に形成して多層構造にしていい旨は開示されているものの、当該二種類以上の材料の融点については、何ら開示および示唆すらされていません。」と主張している。
(2)上記主張について
上記1及び2で説示したとおりである。
したがって、審判請求人の主張は採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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