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特許無効審判

2021-800090

コークス炉ガス精製におけるタール汚れの抑制方法及びそのための組成物

審判番号
2021-800090
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2014-210248
登録番号
6543829
請求日
2021年10月26日
審決日
2022年09月05日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】小倉 博
  • 【請求人代理人】黒川 俊久
  • 【請求人代理人】澤木 亮一
  • 【被請求人】ナルコジャパン 合同会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人池内アンドパートナーズ
  • 【被請求人】株式会社 片山化学工業研究所
  • 【被請求人代理人】特許業務法人池内アンドパートナーズ
審判長/審判官
  • 審判長 蔵野 雅昭
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1123.121-Y (C10K) / P1123.537-Y (C10K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6543829号発明「コークス炉ガス精製におけるタール汚れの抑制方法及びそのための組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 登録までの手続の経緯 本件特許に係る特許出願は、平成26年10月14日の特許出願であって、平成30年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月24日に意見書の提出とともに手続補正がされ、令和元年6月28日に特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年7月17日に特許掲載公報が発行された。 2 別件異議事件の手続の経緯 令和2年1月16日に請求項1、3、4、8に係る特許に対して、特許異議の申立てがされ(異議2020-700024号)、同年4月22日付けで取消理由が通知され、同年6月29日に意見書の提出と共に訂正の請求(乙1)がされ、同年10月6日付けで訂正を認め、請求項1、3、4及び8に係る特許を維持する旨の異議決定がされた(甲8)。 3 本件審判の手続 令和3年10月26日に前記2の異議事件において訂正が認められた訂正後の本件請求項1、3、4、8に係る特許に対し本件審判請求がされ、令和4年2月4日に被請求人から審判事件答弁書が提出されたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和4年 5月16日付 当審から審理事項通知 令和4年 6月14日 被請求人らから口頭審理陳述要領書 令和4年 6月15日 請求人から口頭審理陳述要領書 令和4年 6月20日 請求人から上申書(代理人追加) 令和4年 7月 7日 被請求人らから上申書 令和4年 7月13日 口頭審理 第2 本件特許及び明細書の記載 1 本件特許の請求項1、3、4、8に係る発明(以下「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、前記第1、2にあげた別件異議事件において、令和2年6月29日に訂正された請求項1、3、4、8に記載された以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水に添加して該スクラバー水が接する部分におけるタール汚れの付着を抑制するための組成物であって、 水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む、組成物。 【請求項3】 前記水溶性の非イオン界面活性剤が、エチレンオキサイド(EO)基又はエチレンオキサイドプロピレンオキサイド(EOPO)基付加物である、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 前記水溶性の非イオン界面活性剤が、エチレンオキサイド(EO)基の平均付加モル数が5モル以上のEO付加物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求項8】 コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水が接触する部分におけるタール汚れの付着を抑制する方法であって、前記スクラバー水に水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含有させることを含む、方法。」 2 本件特許明細書には次の記載がある。 (1)「【0005】 コークス炉ガスは、硫黄、コールタール、ピッチ、アンモニア、ベンゾール、ナフタリン、硫化水素、シアン化合物等の不純物を含む。コークス炉ガスの精製過程において使用されるスクラバー水は、コークス炉ガスと接触するとコールタールを含有するようになる。また、該スクラバー水は循環使用される場合もある。よって、コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水が接する部分において、タールを含む汚れ(タール汚れ)が発生する。そのため、コークス炉ガスの精製設備では、定期的に設備を停止して洗浄が行われる。タール汚れの付着又は堆積を抑制できれば、洗浄の間隔を長くすることができ、生産性の向上又はコスト削減が期待できる。 【0006】 そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水が接する部分におけるタール汚れを抑制する方法、又は、そのための組成物を提供する。」 (2)「【0014】 本開示は、コークス炉ガス精製におけるスクラバー水が通過する設備や流路におけるタール汚れが、該スクラバー水に界面活性剤を存在させることにより抑制される、という知見に基づく。 【0015】 すなわち、本開示は、一態様において、コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水に添加して該スクラバー水が接する部分におけるタール汚れを抑制するための組成物であって、水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む組成物(以下、「本開示に係るタール汚れ抑制組成物」ともいう。)に関する。 【0016】 本開示における「スクラバー水」とは、一又は複数の実施形態において、生成ガスや排気中に含まれる有害物質を気液接触によって除去する設備(通常、スクラバーともいわれている)において循環する吸収液をいう。吸収液としては、一又は複数の実施形態において、水、アルカリ性水溶液、及び酸性水溶液等の液体が一般的に使用されている。」 (3)「【0017】 [界面活性剤] 本開示に係るタール汚れ抑制組成物は、水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む。該界面活性剤としては、タール汚れを抑制する観点から、HLB10以上の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びこれらの組み合わせが好ましく、より好ましくはHLB10以上の非イオン界面活性剤である。 【0018】 本開示において「水溶性の非イオン界面活性剤」とは、1%又は5%の濃度で25℃の水と混合した場合に、透明又は曇った状態で溶解した非イオン界面活性剤をいう。 【0019】 非イオン界面活性剤のHLBは、一又は複数の実施形態において10以上であり、有効成分の分散性の点から、好ましくは11以上である。」 (4)「【0031】 [タール汚れ抑制組成物] 本開示に係るタール汚れ抑制組成物は、固体、粉末、又は液体の形態であってよい。液体の形態の場合、媒体としては、水又はスクラバー水が挙げられる。該水としては、一又は複数の実施形態において、純水、イオン交換水、水道水、工業用水、河川水が挙げられる。該スクラバー水としては、一又は複数の実施形態において、新たに調製されたものでもよく、コークス炉ガス精製で使用されているスクラバー水であってもよい。本開示に係るタール汚れ抑制組成物は、一又は複数の実施形態において、界面活性剤と、必要に応じて水及び/又はその他の成分と混合することで調製できる。 【0032】 本開示に係るタール汚れ抑制組成物の用途は、コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水に添加して該スクラバー水が接する部分におけるタール汚れを抑制する用途である。図3に、限定されない、コークス炉ガスの精製工程の概略を示す。図3に示すように、コークス炉ガス精製において、スクラバー水は、ドライメーンにおけるフラッシング、冷却装置、ナフタリンスクラバー、脱硫塔、アンモニアスクラバー等の設備で使用されうる。タールを含むスクラバー水が接触しうるこれらの設備及びこれらの設備に接続する配管におけるタール汚れを抑制するために、一又は複数の実施形態において、本開示に係るタール汚れ抑制組成物は使用されうる。 【0033】 本開示に係るタール汚れ抑制組成物の使用方法としては、コークス炉ガスの精製設備で使用されている、或いは、使用されるスクラバー水に添加することが挙げられる。添加量としては、一又は複数の実施形態において、スクラバー水中に含まれているタール濃度と等量を添加することが挙げられる。スクラバー水中のタール濃度は、例えばノルマルヘキサン抽出法などで得られた数値を参考にすることができる。一又は複数の実施形態において、タール濃度に対して95:5~5:95の範囲で実際のタール汚れの抑制効果をみながら適宜添加できる。タールの組成が石炭種により異なる場合など、なんらかの理由によりタール汚れ抑制組成物の効果が良い場合には、タール汚れ抑制組成物のタールに対する添加比率を95:5に限らずさらに下げることができる。添加頻度としては、一又は複数の実施形態において、スクラバー水の補給水に対して連続添加が挙げられる。添加場所としては、一又は複数の実施形態において、循環水ラインであればどこでもよく、循環水がコークス炉ガスと接触する以前がより好ましい。」 (5)「【0042】 [タール汚れ付着物スラリー組成物の調製] コークス炉ガス精製工場(2カ所)の脱硫設備のそれぞれ異なるタワー充填物から下記a~eのタール汚れ付着物を回収した。タワー充填物とは、コークス炉ガス精製においてガスとスクラバー水(アンモニア水、ナフトキノリンスルホン酸ナトリウム水溶液など)との接触効率を向上させる為、当該設備に設置されている構造物である。タワー充填物の材質としては、樹脂・木製など、費用・負荷に応じて様々な形・材質が採用されている。 【0043】 下記表1における灼熱熱量、ジクロロ抽出率及びC/H比は以下の通りである。 灼熱減量:800℃で強熱して減少した重量比率を指し、燃えるもの及び揮発する物質の含有量の目安となる。 ジクロロ抽出率:付着物をジクロロメタンに接触させて、溶解後抽出されたものの重量比率をいう。 C/H比:CHN計で測定される付着物中に含まれるCとHの比率を指し、重合度の目安となる。 【0044】 【表1】 [図:0001394731000001.jpg] 」 (6)「【図3】 [図:0001394731000002.jpg] 」 第3 当事者の主張の概要 1 請求人の主張の概要 (1)請求の趣旨 本件審判の請求の趣旨は、「特許第6543829号の特許請求の範囲の請求項1、3、4及び8に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めるというものであり、後記(3)(4)の無効理由1及び2をその理由とするものである。 (2)証拠方法 以下、請求人の提示した甲第1号証を甲1などという。 ア 審判請求書と共に提示された証拠方法 甲1:特開2004-74032号公報 甲2:特開2001-262383号公報 甲3:特開2013-184989号公報 甲4:米国特許第5891263号明細書 甲5:米国特許第5225002号明細書 甲6:平成31年1月24日作成の意見書 甲7:特開昭57-49699号公報 イ 口頭審理陳述要領書と共に提示された証拠方法 甲8:本件特許の登録原簿 甲9:特許庁編、工業所有権法逐条解説第17版、第222~223頁 甲10:特開平1-198687号公報 甲11:特開平10-60449号公報 甲12:特許庁作成、審査基準第II部第2章第3節明確性要件第3頁 甲13:特許第4196612号公報のフロントページ 甲14:日本石鹸洗剤工業会のWeb頁、石けん洗剤の化学、界面活性剤ってなに?の項、「3.界面活性剤の4つの性質」の出力物、2000年10月更新 甲15:特許庁、審査基準第II部第2章第3節サポート要件第4頁 (3)無効理由2についての主張 ア 本件発明1において特定された「コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水」及び本件発明8において特定された「コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水」の包含する対象が不明確であり、本件発明1及び引用する本件発明3、4並びに本件発明8は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていないから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 イ 当審は、令和4年7月13日の口頭審理において、次の内容の補正許否の決定を行った。 「請求人が令和4年6月15日付け口頭審理陳述要領書の「5.(1)(シ)」ないし「5.(1)(ツ)」においてする主張は、無効審判における請求の理由の要旨を変更するものであり、許可しない。」 (4)無効理由1についての主張 本件発明1、3、4、8は、甲第1号証に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許が受けることができない発明であるから、本件発明1、3、4、8に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。 2 被請求人の反論の概要 (1)答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 (2)証拠方法 以下、被請求人らの提示した乙第1号証を乙1などという。 乙1:令和2年6月29日作成の訂正請求書及び訂正特許請求の範囲 乙2:馬場有政外6名、石炭化学工業、昭和35年、233~236頁 乙3:特開2011-214562号公報 乙4:特開2014-125577号公報 乙5:被請求人ら作成、公開公報リスト、令和4年6月13日作成 (2)無効理由2についての反論の概要 本件特許明細書及び乙3~5によって、「スクラバー水」の定義は明らかであるから、本件発明1、3、4、8は明確であり、それらの記載は特許法第36条第6項第2号に規定の要件を満たすものである。 (3)無効理由1についての反論の概要 甲1に記載された発明は、スクラバーを停止し、メンテナンスする際に用いる、いわば「メンテナンス水」と呼ぶべきものに添加する添加剤に関する発明である点で相違があり、また、スクラバー水用の添加剤に転用することは当業者であっても困難である。したがって、本件発明1、3、4、8に係る特許は無効とされるものではない。 第4 証拠方法の記載事項 1 甲1には次の記載がある。 (1)「【請求項1】 炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去する方法において、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を主成分とする洗浄剤にて洗浄し、次いで水にて洗浄することを特徴とする付着物除去方法。 【請求項2】 炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去する方法において、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を50重量%以上含み、水を5重量%以上50重量%未満含有する有機洗浄溶剤にて洗浄することを特徴とする付着物除去方法。 ・・・ 【請求項9】 装置が、コークス炉ガス精製工程にあるナフタレン吸収塔である請求項3~8のいずれかに記載の付着物除去方法。・・・」 (2)「【0002】 【従来の技術】 コークスガスの分離精製プラント、石油精製プラント等では、運転に伴いボイラ、熱交換器等の伝熱面や蒸発面、水や蒸気が通る配管等の金属製材料に汚れが付着してくる。この汚れは一般に、重質炭化水素および酸化鉄やシアン化鉄等の金属化合物を含んでいる。この汚れが上記の金属製材料に付着すると、熱効率の低下、流量阻害、腐食等を起こすため、適当な時期に洗浄剤を用いて化学洗浄を行い、この汚れを除去する必要がある。 【0003】 特に、コークス炉ガス精製プラントにおいてガスを精製する工程において、ナフタリン吸収塔の汚れ付着物は大きな問題となっている。このナフタリン吸収塔内には、例えば吸収油とコークスガスとの接触を良くするための木格子等の充填物がありナフタリンの吸収効率を上げているが、ガス中の炭塵やタール分、無機物等と循環する吸収油から汚れが発生して充填物に付着堆積し、ガスの抵抗増大による操業上の問題が発生したり、抵抗増大に起因する吸収液の飛沫同伴が増加したりする。これにより後工程の熱交換器等の汚れによる熱効率の低下や抵抗増大を抑制するためにスチーミング実施等によるエネルギーロスが発生する。塔を開放して汚れを除去する事も可能ではあるが、臭気が強く、人が入って作業するには環境上好ましくない。また予備系列がない場合は簡単に止められないケースもある。 【0004】 このような汚れの洗浄方法としては、酸、アルカリ等の水系洗浄液や、界面活性剤を有効成分とする洗浄液を循環させて行う方法や、ウオータージェット等により物理的に剥離する方法が一般的である。しかしながら、酸、アルカリ等の水系洗浄液や界面活性剤を有効成分とする洗浄液では取り扱いに危険が伴うとともに、腐食性や廃水、廃液処理等の問題がある。また、ウオータージェット洗浄はジェット水が当たっても付着物がただ単に移動するだけで剥離できなかったり、作業そのものが危険であったりするため、必ずしも満足できるものではなかった。」 (3)「【0032】 本発明の不純物除去方法の具体的な一例としては、例えば、まずボイラ、熱交換器等の伝熱面や蒸発面、水または蒸気が通る配管等の装置に付着した付着物に、前記の比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を主成分とする洗浄剤をワンパスで、循環、噴射、浸漬、気化(ベーパー)等により直接接触させることにより効率よく洗浄することができる。空気又は窒素等の不活性ガスによるバブリングや超音波の照射は更に効果的である。又、従来のウオータージェット洗浄等を併用することもできる。」 (4)「【0037】 該水含有有機洗浄溶剤は、上述の条件を満たす有機化合物と水以外の成分を含んでいてもよく、例えばアセトン等のケトン、エタノール等のアルコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル等が挙げられる。 本発明の洗浄用剤(有機化合物を主成分とする洗浄剤、水を主成分とする洗浄剤、水含有有機洗浄溶剤)には、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の界面活性剤や防錆剤等の添加物を必要に応じ併用することもできる。 【0038】 本発明は上述した通り、コークス炉ガス精製工程にあるナフタレン吸収塔の付着物除去へも適用も可能であり、その際、ナフタリン塔はガス吸引ブロワーの吸い込み側に位置する場合は、負圧で洗浄時に曝鳴対策としてCOGを若干漏れこます必要があり、この場合、洗浄剤の蒸気圧が高いと揮散ロスが多くなり洗浄効果が減少することになる。従って、洗浄温度30~60℃において蒸気圧が低いことが望まれる。」 (5)「【0040】 【実施例】 以下、本発明を実施例及び比較例によってより具体的に説明する。 N-メチルピロリドンの性状 比誘電率:32、双極子モーメント:4.09Debye キシレンの性状 比誘電率:2.3、双極子モーメント:0.5Debye) 実施例1 (N-メチルピロリドン、次いで水によるナフタリン塔木格子付着物除去テスト) コークスガス中の炭塵やタール分、無機物と吸収油から生成したナフタレン塔木格子(コークスプラントのナフタレン分離塔内部の吸収効率を高めるためのもの、材質:木材)の汚れ付着物の除去テストを行った。200mlビーカーに有機洗浄溶剤(N-メチルピロリドン)を150ml入れ、金網籠(40メッシュ)に付着物を5g入れたものを洗浄溶剤の中に浸積し、ビーカー中に回転子を入れ、洗浄溶剤を30℃に加熱し、スターラーを用い約800rpmの強度で撹拌した。 【0041】 網籠を洗浄液より取り出し、5分間オイル切りした後、重量を図って(当審注:量っての誤記)付着物の減量した割合を除去量とした。 30時間で除去量はほぼ平衡になり、この時の付着物からの油分除去量は約50%であった。 さらにこの網籠上のNMPによる有機溶剤洗浄後の残さを水150mlを用いて有機溶剤洗浄と同条件で処理した。瞬時に籠上の残さは微粒子化して除去され、除去率は95%であった。」 (6)「【0043】 実施例3 (20%の水を含むN-メチルピロリドン、次いで水によるナフタリン塔木格子付着物除去テスト) 200mlビーカーに20%の水を含むN-メチルピロリドンを150ml入れ、金網籠(40メッシュ)に実施例1のナフタリン塔木格子付着物を5g入れたものを洗浄溶剤の中に浸積し、ビーカー中に回転子を入れ、洗浄溶剤を30℃に加熱し、スターラーを用い約800rpmの強度で撹拌した。 【0044】 網籠を洗浄液より取り出し、5分間オイル切りした後、重量を図って付着物の減量した割合を除去量とした。 70時間後に70%除去できた。・・・」 (7)「【0047】 【発明の効果】 本発明により、従来の付着物除去方法よりも簡便かつ除去効果の優れた付着物除去方法を提供することができる。」 2 甲2には次の記載がある。 (1)「【0020】(2)酸性洗浄剤 HLB値16.9の洗浄性非イオン界面活性剤(A)として直鎖アルキルアルコール(C12~C16混合物)のエチレンオキサイド付加物を1500ppmと、HLB値6.2の発泡抑制を目的とした低起泡性非イオン界面活性剤(B)として直鎖アルキルアルコール(C12~C16混合物)のエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物(HLB値を算出する際、プロピレンオキサイドは疎水基として計算)を1500ppm(A:B=50:50)、さらに無機酸として硫酸を20000ppm、エッチング剤としてFe3+を0.05質量%、グリセリンを0.1質量%含有するpH0.8のフッ素フリータイプの酸性洗浄剤を使用した。」 (2)「【0026】 【発明の効果】本発明のアルミニウム缶ボディーの酸洗浄方法は、酸性洗浄剤として、HLB値14~18の洗浄性非イオン界面活性剤を使用するため、缶の洗浄によって洗浄液に混入した潤滑油との親和性と、タンク内の水との親和性の両方を有する。また、HLB値2~12の低起泡性非イオン界面活性剤も特定の比率で含むため、タンク内の酸性洗浄剤が発泡することがない。」 3 甲3には次の記載がある。 「【0049】 洗浄力向上の点から好ましいノニオン界面活性剤としては、炭素数10~18のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数10~18のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数10~18の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8~18の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数10~14のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が5~20であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、また、使用時の泡立ちの観点から炭素数8~18のアルキル基を有し糖縮合度が1~3であるアルキルポリグリコシドが好ましい。」 4 甲4には次の記載がある。当審訳を[]内に示す。 第2欄39~44行 「A preferred formulation includes between about 1-10 wt % of a dispersant, preferably Hypermer SC.TM., a nonionic surfactant mixture available from ICI, Wilmington, Del., and between about 1-70 wt % of a supplemental solvent, preferably a solvent that is less expensive than the active NMP and/or second amide.」 [好ましい組成物は、約1-10重量%の分散剤、好ましくは、デラウェア州ウィルミントンのICIから入手可能な商品名Hypermer SCというノニオン性乳化剤の混合物及び約1-70重量%の追加の溶媒、好ましくは、活性NMP及び/または第二のアミドより高価でない溶媒からなる。] 5 甲5には次の記載がある。当審訳を[]内に示す。 第2欄8~25行 「 [図:0001394731000003.jpg] 」 [活性溶媒並びに芳香族ナフサ及び界面活性剤を含む本発明の組成物の内、好ましい組成物は、次のようなものである。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― Wt.% ―――――――――――――――――――――――――――――――― N-メチル-2-ピロリドン 60-95 高度のHAN 28-3.5 (高芳香族ナフサ、沸点範囲335~535F°) 非イオン性界面活性剤 10-1.25 高分子分散剤 2-0.25 ―――――――――――――――――――――――――――――――― ] 6 乙2には次の記載がある。 (1)233頁下6行~235頁3行 「3・5 コークス炉ガスの精製 3・5・1 ガスの精製工程 コークス炉から出てくるガスは、600~700℃の温度を有し,その中には多量のタール蒸気のほかアンモニア,二硫化炭素,ナフタリン,硫黄化合物,シアン化物さらにはガム状物生成の因をなす化合物など多種類の化合物を含んでいる。これらはガスを都市ガスとして供給したり使用したりする上に,あるいは原料ガスとして利用する上に有害であるばかりでなく,分離回収すれば価値の高い副産物――狭義のコールケミカルス――となるものも多い。 したがってガスを精製すると同時に有用な副産物の回収を行なう必要がある。 ガスの精製装置の配置例を第IV・3・23図に示す。」 (2)234頁 「 [図:0001394731000004.jpg] 」 7 乙3には次の記載がある。 (1)「【0035】 また、図3に示すように、ガス精製装置212では、ガス冷却用にスクラバ等で水を必要とするので、流動層乾燥装置102で褐炭101の乾燥に用いた凝縮水Bをスクラバのスプレー水などに利用することで水の有効利用を図るようにしてもよい。」 (2)「【0036】 [第3の実施形態] 次に、第3の実施形態の石炭ガス化複合発電システム200Cを図4を用いて説明する。なお、第1及び第2の実施形態の石炭ガス化複合発電システムと同一構成部材には同一符号を付してその説明は省略する。 図4に示すように、第3の実施形態の石炭ガス化複合発電システム200Cは、第1の実施形態の石炭ガス化複合発電システム200Aの熱交換器106Aの代わりに、昇圧機106Bを設けることにより、発生蒸気104を過熱して150℃の過熱媒体である過熱蒸気Aとし、再度流動層乾燥装置102の伝熱部材103に過熱蒸気Aとして供給することで、システム内での過熱媒体の有効利用を図ると共に、さらにこの過熱蒸気Aをガス精製装置212に供給して有効利用することができる。 【0037】 ここで、石炭ガス化炉203からのガス化ガス202は、ガスタービン204へ供給する前に精製を行っているが、その際、ガス精製装置212では、スクラバなどを用いて、ガス中の煤塵を除去するようにしている。 この水を流動層乾燥装置102で乾燥に用いた過熱蒸気Aが凝縮水Bとして排出されるので、この凝縮水Bをスクラバ水として利用することで、水の有効利用を図ることができる。」 (3)「【図3】 [図:0001394731000005.jpg] 」 (4)「【図4】 [図:0001394731000006.jpg] 」 8 乙4には次の記載がある。 (1)「【0046】 図2は、タール除去装置113(タール除去工程)の好ましい実施形態を示したものであり、生成ガス110は、大略、スクラバー10(第1工程)、バブリング装置30(第2工程)、および生成ガス冷却装置40(第3工程)を経て、精製ガス117となる。また、タール分離槽16も設置される。これらの主要機器は下記のように構成される。 【0047】 スクラバー10には、タンク21とその上部の噴霧塔11が設置される。噴霧塔11は、生成ガス110が通過する流路(空間)12と、流路12に噴霧水W1を噴霧する1又は複数のノズル13を有する。 【0048】 図3(A)、(B)は、好ましい実施形態に係る噴霧塔11を示す説明図である。 【0049】 図示のように、噴霧塔11は、生成ガス110の導入口12a及び導出口12bと、導入口12aと導出口12bの間の生成ガス110が通過する流路12と、噴霧水W1を噴霧する1又は複数のノズル13を有する。噴霧水W1の噴霧方向は原則下向きとし、これに対し、生成ガス110の流れが上向きの向流型(図3(A))又は下向きの並流型(図3(B))を採用し得る。 【0050】 ノズル13の個数、仕様、配列等は、好ましくは、流路12の全面に空隙なく水が噴霧されるように設定される。本願では、ノズル13からの噴霧水W1により流路12が空隙なく覆われる面を噴霧平面Sと呼び、ノズル13から噴霧平面Sまでの距離を噴霧距離L1と呼ぶ。 【0051】 噴霧平面Sは、単段でも良いが、複数段とすることがより有効である。図3(A)、(B)では、ノズル13が異なる高さ位置に2列に配列され、2段の噴霧平面Sが形成される例が示されている。」 (2)「【図2】 [図:0001394731000007.jpg] 」 (3)「【図3】 [図:0001394731000008.jpg] 」 第5 当審の判断 1 無効理由2についての判断 (1)判断の枠組み 一般に『法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。』とされているところ〔知財高裁平成21年(行ケ)第10434号、平成22年8月31日判決言渡。〕、このような観点に基づいて、本件特許の明確性要件の適否を以下に検討する。 (2)本件への当てはめ ア 請求人は、本件発明1における「コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水」及び本件発明8における「コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水」という発明特定事項が包含する対象が不明確と主張する。 イ 当審は、令和4年5月16日付審理事項通知において、請求人及び被請求人らに対し、「スクラバー水」の一般的な定義を示す証拠の提示を求めた。 ウ 請求人からは証拠は提示されなかった。 エ 被請求人は、本件優先日前の公知文献である乙2~乙4を提示し、また、「スクラバー水」という用語により、J-platpatを検索した結果を提示した。 オ 当審の判断 (ア)認定事実 a 「スクラバー」という用語は、前記第4、6(2)に摘記した乙2の第IV・3・23図中に記載され、乙3、乙4にも記載され、一般的な技術用語として用いられていたと認定できる。 b 一方、「スクラバー水」という用語は、前記第4、7(2)に摘記した乙3の段落0037に「凝縮水Bをスクラバ水として利用する」という記載はあるものの、同(1)に摘記した乙3の段落0035には、「凝縮水Bをスクラバのスプレー水などに利用する」と記載されていることからみて、一貫して用いられていない。 c また、前記第4、8に摘記した乙4の段落0047には、「噴霧水」との記載はあるが、「スクラバー水」という用語は用いられていない。 d また、前記ウに示した請求人からの応答がなかったことからみて、辞書や規格で定義される定義の定まった技術用語ではなかったということができる。 (イ)そうすると、「スクラバー水」は、辞書等で定義されている「リパーゼ」などの用語と異なり、解釈するために本件特許明細書を参照する必要がある。 (ウ)前記第2、2(2)に摘記した本件特許明細書の段落0016に「本開示における「スクラバー水」とは、一又は複数の実施形態において、生成ガスや排気中に含まれる有害物質を気液接触によって除去する設備(通常、スクラバーともいわれている)において循環する吸収液をいう。」と記載されており、また、前記第2、2(4)に摘記した本件特許明細書の段落0032には、「図3に示すように、コークス炉ガス精製において、スクラバー水は、ドライメーンにおけるフラッシング、冷却装置、ナフタリンスクラバー、脱硫塔、アンモニアスクラバー等の設備で使用されうる。」と記載されている。 (エ)前記(ウ)の記載から、「スクラバー水」とは、生成ガスや排気中に含まれる有害物質を気液接触によって除去する設備において循環する吸収液であると認識できるものである。 したがって、本件発明1の「コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水」及び本件発明8の「コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水」という用語は、特定事項として明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすと当審は判断する。 (3)請求人の主張について ア 審判請求書における主張 (ア)請求人は、審判請求書において、本件発明1の「コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水」及び本件発明8の「コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水」という用語が、精製プロセスの運転を中止中のものを含むか否かが不明確である。」と主張する。 しかしながら、前記(2)で判断したとおり、「スクラバー水」は、本件明細書により定義されているから、プロセス中止中に用いる水とは無関係であるから、請求人の主張は理由がない。 (イ)また、請求人は、審判請求書において「コークス炉ガス精製設備から取り出した部分に使用される洗浄水が、「スクラバー水」に包含されるのかが不明確と主張する。 確かに、前記第2、2(5)で摘記したように、本件特許明細書の実施例においては、コークス炉ガス精製設備から取り出したタワー充填物を用い、洗浄性能を調べているが、だからといって「スクラバー水」が不明確になるわけではない。請求人の主張は理由がない。 イ 口頭審理陳述要領書における主張 (ア)請求人は、口頭審理陳述要領書において「リパーゼ事件」最高裁判決(昭和62年(行ツ)3号)を引用して、発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載に基づいて行うべきと、主張するが、前記(2)オ(イ)で認定したように、「スクラバー水」は確立した技術用語といえないので、最高裁判決が「特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない」場合に相当し、本件明細書の記載を参照する必要があるから、請求人の主張は理由がない。 (イ)また、請求人は、口頭審理陳述要領書において、スクラバー設備自体が広い範囲のものを含み不明確であると主張した。この主張は、吸収油を用いるスクラバーもあることから、「スクラバー水」が吸収油を含むかが不明確であるとの主張を含んでいると解される。 当審は、口頭審理において補正許否の決定を行い、請求人の主張は無効審判請求の理由の補正であり、理由の要旨を変更するものであるから、許可しないとの決定を行った。 (4)小括 以上のとおり、請求人の主張する無効理由2は理由がない。 2 無効理由1についての判断 (1)引用発明の認定 ア 甲1方法発明の認定 前記第4、1(1)に摘記した甲1の請求項2から次の発明(以下「甲1方法発明」という。)が認定できる。 「炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去する方法において、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を50重量%以上含み、水を5重量%以上50重量%未満含有する有機洗浄溶剤にて洗浄することを特徴とする付着物除去方法。」 イ 甲1組成物発明の認定 前記アの溶剤は、組成物であるから、前記アと同様に、次の発明(以下「甲1組成物発明」という。)が認定できる。 「炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去するための溶剤組成物であって、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を50重量%以上含み、水を5重量%以上50重量%未満含有する有機洗浄溶剤組成物」 ウ 請求人の認定について 請求人は、審判請求書において甲1の記載から、「A コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水に添加して B 該スクラバー水が接する部分におけるタール汚れの付着を抑制するための組成物であって、 C 水溶性のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む、組成物。」及び 「F コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水が接触する部分におけるタール汚れの付着を抑制する方法であって、 G 前記スクラバー水に水溶性のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含有させることを含む、方法。」 が認定できると主張しているが、そのように認定できる根拠が示されておらず、当審では前記ア、イのように認定した。 (2)対比 ア 本件発明1と甲1組成物発明との対比及び一致点 前記1で検討したようにスクラバー水とは、スクラバーを稼働しているときに用いられる水のことを指すのであるから、甲1組成物発明のようにスクラバーの稼働とは関係なく充填材を洗浄するための液体とは異なるものである。 そうすると、本件発明1と甲1組成物発明との一致点は「組成物」である点で一致する。 イ 本件発明8と甲1方法発明との対比 前記アと同様であるから、本件発明8と甲1方法発明との一致点は「方法」である点でのみ一致する。 (3)相違点 ア 本件発明1と甲1組成物発明との相違点 本件発明1においては、「コークス炉ガス精製に使用するスクラバー水に添加して該スクラバー水が接する部分におけるタール汚れの付着を抑制するための組成物であって、 水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む」のに対して、甲1組成物発明においては、スクラバーが稼働停止中にスクラバー内の付着物を除去するために「炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去するための溶剤組成物であって、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を50重量%以上含み、水を5重量%以上50重量%未満含有する」ものである点。 イ 本件発明8と甲1方法発明との相違点 本件発明8においては、「コークス炉ガス精製設備で使用されるスクラバー水が接触する部分におけるタール汚れの付着を抑制する方法であって、前記スクラバー水に水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含有させることを含む」のに対して、甲1方法発明においては、スクラバーが稼働停止中にスクラバー内の付着物を除去するために「炭化水素及び金属化合物を含有する付着物を除去する方法において、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を50重量%以上含み、水を5重量%以上50重量%未満含有する有機洗浄溶剤にて洗浄する」ものである点。 (4)相違点についての判断 甲1組成物発明及び甲1方法発明は、スクラバー水に「水溶性の非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つ」を含ませるものではなく、この点が当業者容易になし得ることであるということはできない。 また、スクラバー水は、コークス炉ガス中の成分を吸収して回収するためのものであるから、他の成分を含有させると回収率が減少することが想定されるから、本件発明1及び8のようにスクラバー水に界面活性剤を含ませることには、阻害要因があるといえる。 (5)請求人の主張について ア 請求人は、前記第4、1(4)に摘記した甲1の段落【0038】に「ナフタリン塔はガス吸引ブロワーの吸い込み側に位置する場合は、負圧で洗浄時に曝鳴対策」と記載されていることから、甲1の洗浄はスクラバー稼働時に行われると主張する。 しかしながら、甲1の前記記載は、稼働時は常時負圧になっているナフタリン塔が、稼働停止してもしばらくは負圧が続いているという現象及びその問題点が記載されていると解されるから、請求人の主張は誤っていると当審は判断する。 イ また、請求人は甲13を提示し、その請求項3に記載のように「コークス炉ガス精製工程にあるナフタレン吸収塔における付着物を除去する方法」が記載されている旨主張する。 しかしながら、甲13は甲1公開公報の特許掲載公報であって、開示内容は甲1を超えるものではない。したがって、請求人の主張は理由がない。 (6)小括 以上のとおり、本件発明1及び本件発明8は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるということはできない。また、本件発明3、4は本件発明1を引用し、さらに特定事項を加えたものであるから、本件発明1と同様に甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、 1 請求人の主張する無効理由2及び無効理由1はいずれも理由がないから、本件審判請求は成り立たない。 2 特許法第169条第2項の規定によって準用する民事訴訟法第61条の規定により、審判費用は請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800090

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