特許拒絶査定不服審判
2021-006824
合成ガスを処理するための方法及びシステム
- 審判番号
- 2021-006824
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-559610
- 請求日
- 2021年05月26日
- 審決日
- 2022年05月24日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ミレーナ-オルガ ジョイント イノベーション アセッツ ベスローテン フェンノートシャップ
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】川分 康博
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P18 .121-Z (C10K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-559610「合成ガスを処理するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日国際公開、WO2016/182441、平成30年 7月26日国内公表、特表2018-520227〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年5月11日(NL)オランダ)を国際出願日とするものであって、令和2年6月23日付けの拒絶理由通知に対し、令和3年1月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年1月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して令和3年5月26日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願発明は、令和3年5月26日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~17に記載されたとおりのものであって、それらのうちの独立請求項である請求項1及び14に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明14」ともいう。)は、以下のとおりのものである。
なお、請求項14は、令和3年1月4日に提出された手続補正書により補正されていない。
「【請求項1】
間接又は直接ガス化装置からの合成ガスを処理する方法であって、
該方法は、前記合成ガスの初期生成ステップと清浄化ステップとの間で用いられ、
-所定の流入温度範囲内のガスを第1の熱交換器に流入させるステップと、
-前記ガスを、蒸気媒体である第1の媒体と、熱交換しながら、前記第1の熱交換器を流すステップと、
-前記ガスを前記第1の熱交換器から後続の最終熱交換器へ移動させるステップと、
-前記ガスを、蒸気媒体である最終媒体と、熱交換しながら、前記最終熱交換器を流すステップと、
-前記ガスの清浄化処理をするために、所定の流出温度範囲内で、前記最終熱交換器を出すステップと、
を含み、
前記所定の流出温度範囲は、灰または鉱物凝固点未満であり、タール凝縮または固形物堆積を防止する温度であり、かつ、実質的に450℃以上500℃以下であり、
前記第1の熱交換器または前記最終熱交換器において、蒸気による冷却が行われる、
方法。」
「【請求項14】
間接又は直接ガス化装置からの合成ガスを冷却するための冷却システムであって、前記合成ガスの初期生成と清浄化との間で用いられ、前記冷却システムは、
-前記ガスを、蒸気媒体である第1の媒体と、熱交換させる第1の熱交換器と、
-前記ガスを、蒸気媒体である最終媒体と、熱交換させる後続の最終熱交換器と、
-前記ガスを、前記第1の熱交換器に入れるための手段と、
-前記ガスを、流出温度範囲内で、灰又は鉱物凝固点未満で、かつ、炭化水素液化点より上で、更に清浄化処理をするために、前記最終熱交換器から出すための出口手段と、
を備え、
熱交換器は、蒸気による冷却を行う、
冷却システム。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定には「この出願については、令和 2年 6月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」と記載され、当該理由1は、請求項1~18に係る発明は、引用文献1~3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2014-167043号公報
引用文献2:特開2013-221068号公報
引用文献3:特開昭49-53604号公報
第4 引用文献
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
本願の優先日前に公開され、原査定で引用された上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、炭素質燃料ガス化装置に関し、より具体的には、運転中に伝熱管バンクの除煤を行う炭素質燃料ガス化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素質燃料ガス化装置は例えば石炭ガス化複合発電(IGCC: Integrated coal Gasification Combined Cycle)に利用されている。石炭ガス化複合発電施設では、ガス化装置で微粉炭(石炭)等の炭素質燃料をガス化して得た可燃性ガスによるガスタービンの駆動力と、ガスタービンの排熱等を回収して得られる蒸気タービンの駆動力によって発電する。ここでいう炭素質燃料は、微粉炭(石炭)の他、農業生産物又は副産物、木材、植物等の生物体等のバイオマス燃料も含まれる。」
・・・
【0019】
以下、図1~図5を参照して本発明にかかる一実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用可能な炭素質燃料ガス化炉として石炭ガス化炉の一例を示す縦断面図である。この石炭ガス化炉は、微粉炭、チャー(微粉炭中の未燃炭素分と灰分を含む粉状体)、酸化剤等を反応させ可燃性のガスを生成するガス化部10と、ガス化部10と上端で連通され、生成ガスが上から下に向かって流通する熱交換部20とを有する。
【0020】
熱交換部20内には、ガス化部10で生成された生成ガスとの熱交換を行う複数の伝熱管バンク21~24と、各伝熱管バンク21~24の機能を維持するための除煤装置30とが設けられ、伝熱管バンク21~24で温度が低下した生成ガスが熱交換部20の下端部からガスタービン等に供給されるようになっている。
【0021】
ガス化部10は一般的な構成を有しており、例えば特開2012?172131号公報や特開2011?68812号公報に開示されている構成とすることが可能である。
【0022】
生成ガスはガス化炉部10の上部であるガス化炉出口10aを通過して熱交換部20に流入する。本実施形態では、ガス化炉出口10aの温度は1000℃~1200℃程度となっている。
【0023】
各伝熱管バンク21~24は、図2に示すように、伝熱管を複数回に亘って折り返すことにより、熱交換部20における生成ガス流通方向である上下方向に伝熱管を設置させたものである。また、本実施形態における各伝熱管バンク21~24は、前記折り返して並設させた伝熱管が水平方向(図2における紙面奥行方向)にも複数並設されている。このため、各伝熱管バンク21~24は、上下方向および水平方向に伝熱管が並設された構成を有する。本実施形態では、図3に示すように、各伝熱管の直径Dは25~60mm程度であり、隣り合う伝熱管同士の上下方向の配置距離L1は前記直径Dの2~5倍程度であり、また隣り合う伝熱管同士の水平方向の配置距離L2は前記直径Dの2~5倍程度である。各伝熱管バンク21~24にはそれぞれ入口管21a,22a,23a,24aと出口管21b,22b,23b,24bが接続されており、入口管21a,22a,23a,24aから水、蒸気等の熱媒体が各伝熱管バンク21~24に流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われ、熱交換が行われた熱媒体が出口管21b,22b,23b,24bから流出するように構成されている。
【0024】
各伝熱管バンク21~24はそれぞれ、伝熱管の中を流通する蒸気を過熱して過熱蒸気を生成する過熱器や、伝熱管の中を流通する水を蒸気化する蒸発器や、前記蒸発器に供給するための水を加熱する節炭器として機能する。また、各伝熱管バンク21~24はそれぞれ、各入口管21a,22a,23a,24aおよび出口管21b,22b,23b,24bを介して蒸気ドラム、蒸気タービン等の各種機器に接続されている。
・・・
【0026】
熱交換部20内は生成ガスが上流から下流に向かって流通し、流通する過程で生成ガスが各伝熱管バンク21~24に接触して熱交換を行い、これにより、熱交換部20の上方から下方に向かって生成ガスの温度が下がっていく。本実施形態では、図1に示すように、伝熱管バンク21,22は生成ガスが炭素質燃料のガラス転移点以上である範囲AR1内に配置され、前記ガラス転移点以上の生成ガスに接触して熱交換を行う。」
「【図1】
[図:0001390143000001.jpg]
」
(2)引用文献2
本願の優先日前に公開され、原査定で引用された上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
実施例1の石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤としてガス化装置で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。即ち、実施例1の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。
【0030】
実施例1において、図3に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化装置14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17、蒸気タービン設備18、発電機19、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20を有している。」
「【図1】
[図:0001390143000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001390143000003.jpg]
」
(3)参考文献(特許第5602308号公報)
本願の優先日前に公開され、石炭ガス化複合発電(IGCC)の一般的な技術を示す参考文献である特許第5602308号公報には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、炭素含有燃料ガス化炉のガス冷却器、ガス化炉及び炭素含有燃料ガス化複合発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、石炭火力プラントの発電効率を向上させるため、石炭ガス化複合発電装置(IGCC;Integrated Gasification Combined Cycle)が、開発・実用化されている。
この石炭ガス化複合発電装置は、埋蔵量が豊富な石炭資源を利用している点、従来の微粉炭火力発電よりも熱効率が高く、二酸化炭素などの大気汚染物質の排出量が少ない点、石炭の灰がガラス質の溶融スラグとして排出され、体積が小さくなる点、などの利点を有している。そのため、石炭ガス化複合発電設備は、今後の石炭火力発電の主力となる技術として開発が進められている。
ここで、石炭ガス化複合発電装置は、石炭をガス化して得られる石炭ガスを燃料として運転するガスタービンと、ガスタービンの排熱を回収して得られる蒸気により運転する蒸気タービンとを備えた構成とされている(特許文献1)。
・・・
【0025】
図1に示すように、本実施例に係る石炭ガス化炉3は、微粉炭を部分酸化ガス化するガス化炉3aと、ガス冷却器3bとから構成されており、これらが例えば3MPaの圧力容器30内に設けられている。
圧力容器30内の煙道31には、部分酸化により生成された高温(例えば約1,100~1,200℃)の生成ガス2のガス流れに沿って、熱交換器36が設けられている。この熱交換器36は、この高温ガスを石炭ガス化炉設備の後流に設置されたガス精製設備(不図示)に適した温度である例えば約450℃まで冷却すると共に、高温ガスから熱エネルギーを回収する装置である。
【0026】
ここで、熱交換器36としては、例えば高温の生成ガス2の流路となる煙道31内に、蒸発器(EVA)32、2次過熱器(2SH)33、1次過熱器(1SH)34及び節炭器(ECO:エコノマイザー)35が上から順に配置され、煙道31内を上から下向きに流れる高温の生成ガス2から吸熱して冷却するように構成されている。
・・・
【0067】
ガス冷却器3bを通過した生成ガス2は、チャー回収設備20へと導かれる。このチャー回収設備20は、ポーラスフィルタを備えており、ポーラスフィルタを通過させることによって生成ガス2に混在するチャーを捕捉して回収する。このように回収されたチャーは、空気分離装置15において分離された窒素とともに石炭ガス化炉3のコンバスタバーナ13aへと返送されてリサイクルされる。
【0068】
チャー回収設備20を通過した生成ガス2は、燃料ガスとしてガスタービン設備5の燃焼器5aへと送られる。」
「【図1】
[図:0001390143000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001390143000005.jpg]
」
2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の【0002】には、炭素質燃料ガス化装置は例えば石炭ガス化複合発電(IGCC: Integrated coal Gasification Combined Cycle)に利用されるものであることが記載されている。
また、同【0020】には、熱交換部20内には、ガス化部10で生成された生成ガスとの熱交換を行う複数の伝熱管バンク21~24が設けられ、伝熱管バンク21~24で温度が低下した生成ガスが熱交換部20の下端部からガスタービン等に供給されることが記載されている。
また、同【0022】には、生成ガスはガス化炉部10の上部であるガス化炉出口10aを通過して熱交換部20に流入すること、及びガス化炉出口10aの温度は1000℃~1200℃程度であることが記載されている。
また、同【0023】には、各伝熱管バンク21~24にはそれぞれ入口管21a,22a,23a,24aと出口管21b,22b,23b,24bが接続されており、入口管21a,22a,23a,24aから水、蒸気等の熱媒体が各伝熱管バンク21~24に流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われ、熱交換が行われた熱媒体が出口管21b,22b,23b,24bから流出するように構成されていること、すなわち、各伝熱管バンク21~24には、水、蒸気等の熱媒体が流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われることが記載されている。
また、同【0026】には、生成ガスが各伝熱管バンク21~24に接触して熱交換を行い、これにより、熱交換部20の上方から下方に向かって生成ガスの温度が下がっていき、伝熱管バンク21,22は生成ガスが炭素質燃料のガラス転移点以上である範囲AR1内に配置され、前記ガラス転移点以上の生成ガスに接触して熱交換を行うことが記載されている。
また、同【図1】には、ガス化炉部10の出口10aから熱交換部20に入る生成ガスが、上流側から、伝熱管バンク21、伝熱管バンク22、伝熱管バンク23、伝熱管バンク24の順に熱交換されて、熱交換部20の下端部から出ること、が示されている。
してみると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「例えば石炭ガス化複合発電(IGCC)に利用される炭素質燃料ガス化装置のガス化部10で生成された生成ガスとの熱交換を行う複数の伝熱管バンク21~24が設けられた熱交換部20であって、
伝熱管バンク21~24で温度が低下した生成ガスは、熱交換部20の下端部からガスタービン等に供給され、
各伝熱管バンク21~24には、水、蒸気等の熱媒体が流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われ、
生成ガスはガス化炉部10の上部であるガス化炉出口10aを1000℃~1200℃程度の温度で通過して熱交換部20に流入し、
上流側の伝熱管バンク21,22は生成ガスが炭素質燃料のガラス転移点以上の範囲AR1内に配置される、熱交換部。」
第5 対比・判断
1 本願発明14
事案に鑑みて、本願発明14と引用発明を対比する。
引用発明の「例えば石炭ガス化複合発電(IGCC)に利用される炭素質燃料ガス化装置のガス化部10で生成された生成ガスとの熱交換を行う複数の伝熱管バンク21~24が設けられた熱交換部20」は、本願発明14の「間接又は直接ガス化装置からの合成ガスを冷却するための冷却システム」に相当する。
引用発明の「水、蒸気等の熱媒体が流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われ」る「複数の伝熱管バンク21~24」は、本願発明14の「ガスを、蒸気媒体である第1の媒体と、熱交換させる第1の熱交換器」及び「ガスを、蒸気媒体である最終媒体と、熱交換させる後続の最終熱交換器」に相当する。
引用発明の「生成ガス」を「熱交換部20に流入」させる「ガス化炉部10の上部であるガス化炉出口10a」は、本願発明14の「ガスを、前記第1の熱交換器に入れるための手段」に相当する。
引用発明の「生成ガス」を「ガスタービン等に供給」する「熱交換部20の下端部」は、本願発明14の「ガスを、」「前記最終熱交換器から出すための出口手段」に相当する。
引用発明の「各伝熱管バンク21~24には、水、蒸気等の熱媒体が流入し、伝熱管を介して熱媒体と生成ガスとの間で熱交換が行われ」は、本願発明14の「熱交換器は、蒸気による冷却を行う」に相当する。
そうすると、本願発明14と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「間接又は直接ガス化装置からの合成ガスを冷却するための冷却システムであって、前記冷却システムは、
-前記ガスを、蒸気媒体である第1の媒体と、熱交換させる第1の熱交換器と、
-前記ガスを、蒸気媒体である最終媒体と、熱交換させる後続の最終熱交換器と、
-前記ガスを、前記第1の熱交換器に入れるための手段と、
-前記ガスを、前記最終熱交換器から出すための出口手段と、
を備え、
熱交換器は、蒸気による冷却を行う、
冷却システム。」
<相違点1>
冷却システムが、本願発明14は「合成ガスの初期生成と清浄化との間で用いられ」るのに対し、引用発明は「ガス化部10」と「ガスタービン等」との間で用いられるものである点。
<相違点2>
最終熱交換器から出る合成ガスの温度範囲が、本願発明14は「流出温度範囲内で、灰又は鉱物凝固点未満で、かつ、炭化水素液化点より上」であるのに対し、引用発明は、その「上流側の伝熱管バンク21,22は生成ガスが炭素質燃料のガラス転移点以上である範囲AR1内に配置される」という構成からみて、「炭素質燃料のガラス転移点未満の範囲」である点。
<相違点3>
合成ガスを最終熱交換器から出すのが、本願発明14は「更に清浄化処理をするため」であるのに対し、引用発明は「ガスタービン等に供給」するためである点。
第6 判断
1 <相違点1>及び<相違点3>について
まず、<相違点1>及び<相違点3>について検討する。石炭ガス化複合発電(IGCC)において、生成した合成ガスを、熱交換器で冷却した後、ガスタービンで燃焼するまでの間に、チャー回収や精製等により清浄化することは、ごく普通に行われている一般技術である。このことは、例えば、引用文献2【0030】の「石炭ガス化装置14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17」との記載及び図3や、参考文献【0067】の「ガス冷却器3bを通過した生成ガス2は、チャー回収設備20へと導かれる」との記載及び図9からも明らかである。
そうすると、引用発明の「例えば石炭ガス化複合発電(IGCC)に利用される炭素質燃料ガス化装置のガス化部10で生成された生成ガスとの熱交換を行う複数の伝熱管バンク21~24が設けられた熱交換部20」からの合成ガスを、ガスタービンに供給する前に清浄化すること、すなわち、冷却システムによる熱交換を、合成ガスの生成と清浄化の間に行うように構成することや、冷却システムの出口手段(熱交換部20の下端部)から、さらに清浄化処理をするために出すことは、当業者が容易になし得たことである。
2 <相違点2>について
次に、<相違点2>について検討する。引用発明の「炭素質燃料のガラス転移点未満の範囲」は、引用発明が常温よりも温度を下げるようなタイプの冷却装置を備えていないことを考慮すれば、熱交換器に流入する前の1000~1200℃よりは十分に低く、常温以上の温度の範囲と考えられる。
ここで、本願発明14の「灰又は鉱物凝固点」は、石炭灰や鉱物の凝固点を意味し、例えば石炭灰に含まれる金属酸化物や鉱物である石英の凝固点は、1000℃よりも高い温度領域である。
また、本願発明14の「炭化水素」は広範な化合物を包含する(本願明細書の段落【0024】の「・・・炭化水素原料(石炭、・・・アスファルト、又は天然ガス)・・・」という記載参照。)が、典型的な炭化水素であるメタンやプロパンは、例えば、1気圧における液化点が、それぞれ-162℃、-42℃程度であり、高圧にするほど、液化点は低下する。よって、本願発明の「炭化水素液化点」は、常温よりも低い温度領域を含むものである。
してみると、引用発明の、1000~1200℃よりは十分に低く、常温以上の「炭素質燃料のガラス転移点未満の範囲」は、本願発明14の「流出温度範囲内で、灰又は鉱物凝固点未満で、かつ、炭化水素液化点より上」を満たしていると解されるから、上記<相違点2>の点について、本願発明14と引用発明との間に差異はない。
3 小括
したがって、本願発明14は、引用発明及び一般技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「請求項1に係る発明においては、熱交換器の出口において、合成ガスの温度は、『タール凝縮または固形物堆積を防止する温度であり、かつ、実質的に450℃以上500℃以下であ』るのに対し、引用文献1においては、煤が固化する温度以下となっているのであるから、引用文献1の方が熱交換器出口において、ガス温度が低くなっている点で相違する。」と主張する。
しかしながら、熱交換器の出口の合成ガスの温度について、本願発明14は、「流出温度範囲内で、灰又は鉱物凝固点未満で、かつ、炭化水素液化点より上」と特定するのみであって、具体的な温度範囲を特定していないから、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基いたものとはいえない。
なお、本願発明14の「炭化水素液化点」について、「炭化水素液化点」という用語自体は、上記したとおり、メタンやプロパンを含む炭化水素の液化点という意味で明確であり、特定の炭化水素の液化点を指すものとは解されない。
また、本願明細書の【0016】に「本発明による更なる態様は、間接又は直接ガス化装置からの、初期生成とその清浄化との間のようなガス化ガス等の合成ガスを冷却するための冷却システムであって、方法は、
-ガスが、熱を第1の媒体、好ましくは、蒸気媒体に対して交換することを可能にするための第1の熱交換器と、
-ガスが、熱を最終媒体、好ましくはまた、蒸気媒体に対して交換することを可能にするための後続の最終熱交換器と、
-ガスが、好ましくは初期生成手段及び又は初期冷却手段から、前記第1の熱交換器に入ることを可能にするためのインクルード手段と、
-ガスが、流出温度範囲内で、好ましくは灰又は鉱物凝固点未満で、更に好ましくは炭化水素液化点より上で、好ましくは清浄化処理等の更なる処理を可能にするために、最終熱交換器を出ることを可能にするための出口手段と、を備える冷却システムを提供する。かかる冷却システムは、合成ガスを処理するための方法に関して上記で説明したものと同様の利点を提供する。」との記載があるが、この記載中の「炭化水素液化点」と「上記で説明したものと同様の利点」の関係は必ずしも明らかでなく、「炭化水素液化点」を、例えば「タール凝縮又は固形物堆積を防止する温度」と同義と解釈すべき事情は見当たらない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明14は、引用文献1に記載された発明及び一般技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項についてさらに検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-006824