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特許無効審判

2021-800045

レーザ加工装置

審判番号
2021-800045
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2006-069936
登録番号
3990711
請求日
2021年05月25日
審決日
2023年03月10日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 東京精密
  • 【請求人代理人】小林 浩
  • 【請求人代理人】服部 誠
  • 【請求人代理人】中村 閑
  • 【請求人代理人】柿本 祐依
  • 【請求人代理人】相田 義明
  • 【請求人代理人】山下 崇
  • 【被請求人】浜松ホトニクス 株式会社
  • 【被請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【被請求人代理人】小曳 満昭
  • 【被請求人代理人】柴田 昌聰
  • 【被請求人代理人】河合 哲志
  • 【被請求人代理人】設樂 隆一
  • 【被請求人代理人】今村 玲英子
  • 【被請求人代理人】尾関 孝彰
  • 【被請求人代理人】松本 直樹
  • 【被請求人代理人】大澤 恒夫
審判長/審判官
  • 審判長 見目 省二
  • 審判官 刈間 宏信
  • 審判官 大山 健
分類
P1113.121-Y (B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第44条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3990711号発明「レーザ加工装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第3990711号に係る特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許の設定登録までの経緯の概略 本件無効審判の請求に係る特許第3990711号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成14年3月12日(以下「優先日」という。)に出願された特願2002-67348号に基づく優先権を主張して、2003年(平成15年)3月11日に国際出願された特願2003-574373号(以下「原出願」といい、その出願日を「原出願日」という。)の一部を、特許法44条1項の規定により、平成18年3月14日に新たな特許出願としたものであり、平成19年7月27日に設定登録された。 2 本件特許(設定登録後)の手続の経緯の概略 (1)訂正審判の経緯 本件特許に係る訂正審判の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 平成30年4月24日 :訂正審判請求 (訂正2018-390075号) 同 年7月 3日付け:訂正審判の審決(訂正認容、確定済み) (2)本件無効審判の手続の経緯 本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和3年 5月25日 :審判請求書(以下「請求書」という。) の提出 同 年 9月17日 :答弁書の提出 令和4年 1月 6日付け:併合審理通知(無効2021- 800067号の審理を併合) 同 年 5月31日付け:審理事項通知 同 年 6月27日 :(請求人)口頭審理陳述要領書(以下 「請求人要領書」という。)の提出 同 年 7月15日 :(被請求人)口頭審理陳述要領書の提出 同月25日 :(請求人)上申書の提出 同月27日 :口頭審理 同 年 8月12日 :(被請求人)上申書の提出 同月29日 :(請求人)上申書の提出 同 年 9月15日 :(被請求人)上申書の提出 同 年11月 9日付け:併合分離通知(無効2021- 800067号の審理を分離) 第3 本件発明 1 本件発明の記載 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、上記訂正審判(上記第2の2(1))により訂正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び2の記載を分説すると、次のとおりである。(なお、上記訂正審判における訂正箇所を示す下線は省いて記載する。) 「【請求項1】 A:半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 B:前記半導体基板が載置される載置台と、 C:レーザ光を出射するレーザ光源と、 D:前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 E:前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 F:前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と、 G:前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と、 を備え、 H:前記切断予定ラインは、前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する、 I:ことを特徴とするレーザ加工装置。 【請求項2】 J:半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 K:前記半導体基板が載置される載置台と、 L:レーザ光を出射するレーザ光源と、 M:前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 N:前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 O:前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と、 P:前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と、 を備え、 Q:前記半導体基板はシリコン基板であり、 R:前記制御部は、前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する S:ことを特徴とするレーザ加工装置。」 (以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、これらを総称して「本件発明」という。また、分説した発明特定事項をいう場合は、「構成A」などという。) 2 本件明細書及び図面の記載 本件特許に係る明細書及び図面には、以下の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 半導体デバイスの製造工程においては、シリコンウェハ等の半導体基板上に複数の機能素子を形成した後に、ダイヤモンドブレードにより半導体基板を機能素子毎に切断し(切削加工)、半導体チップを得るのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 また、上記ダイヤモンドブレードによる切断に代えて、半導体基板に対して吸収性を有するレーザ光を半導体基板に照射し、加熱溶融により半導体基板を切断することもある(加熱溶融加工)(例えば、特許文献2参照)。 ・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、上述した切削加工や加熱溶融加工による半導体基板の切断は、半導体基板上に機能素子を形成した後に行われるため、例えば切断時に発生する熱を原因として機能素子が破壊されるおそれがある。 【0005】 そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても、機能素子が破壊されるのを防止して、半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工装置は、半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、半導体基板が載置される載置台と、レーザ光を出射するレーザ光源と、載置台に載置された半導体基板の内部に、レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で改質領域を形成させる集光用レンズと、改質領域を半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を半導体基板の内部に位置させた状態で、半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、載置台に載置された半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と、赤外透過照明により赤外線で照明された半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と、を備えることを特徴とする。 【0007】 これらのレーザ加工装置によれば、レーザ光の照射により改質領域が半導体基板の内部に形成されるが、このようなレーザ光の照射においては、半導体基板の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないため、半導体基板の表面が溶融することはない。したがって、例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても、機能素子が破壊されるのを防止することが可能となる。さらに、これらのレーザ加工装置及びレーザ加工方法よれば、改質領域が半導体基板の内部に形成される。半導体基板の内部に改質領域が形成されると、改質領域を起点として比較的小さな力で半導体基板に割れが発生するため、切断予定ラインに沿って高い精度で半導体基板を割って切断することができる。したがって、半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することが可能となる。 【発明の効果】 【0008】 本発明に係るレーザ加工装置は、例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても、機能素子が破壊されるのを防止して、半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にする。 ・・・ 【0027】 上述したレーザ加工方法に使用されるレーザ加工装置について、図9を参照して説明する。図9はレーザ加工装置100の概略構成図である。 ・・・ 【0029】 載置台107は、半導体基板1を赤外線で照明するために赤外線を発生する赤外透過照明116と、半導体基板1が赤外透過照明116による赤外線で照明されるよう、半導体基板1を赤外透過照明116上に支持する支持部107aとを有している。 ・・・ 【0033】 ・・・なお、半導体基板1を赤外透過照明116による赤外線で照明すると共に、後述する撮像データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の内部に合わせれば、半導体基板1の内部を撮像して半導体基板1の内部の撮像データを取得することもできる。 ・・・ 【0037】 [半導体基板の実施例1] ・・・ 【0048】 なお、半導体基板1を赤外透過照明116による赤外線で照明すると共に、撮像データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の内部に合わせれば、半導体基板1の内部に形成された切断起点領域9a及び切断起点領域9bを撮像して撮像データを取得し、モニタ129に表示させることもできる。 ・・・ 【0052】 なお、半導体基板1の内部に溶融処理領域が形成されると、意識的に外力を印加しなくても、溶融処理領域を起点として(すなわち、切断起点領域9a及び切断起点領域9bに沿って)、半導体基板1の内部に割れが発生する場合がある。この割れが半導体基板1の表面3及び裏面17に到達するか否かは、半導体基板1の厚さ方向における溶融処理領域の位置や、半導体基板1の厚さに対する溶融処理領域の大きさ等に関係する。したがって、半導体基板1の内部に形成する溶融処理領域の位置や大きさ等を調節することによって、半導体デバイスの製造工程において半導体基板1がハンドリングされたりヒートサイクルを経たりすることで、半導体基板1の表面3及び裏面17に割れが到達しないよう、或いは切断直前に半導体基板1の表面3及び裏面17に割れが到達するよう、種々の制御を行うことができる。 【0053】 [半導体基板の実施例2] ・・・ 【0054】 この半導体基板1は、外縁に沿った外縁部31(図15の2点鎖線の外側部分)を有し、この外縁部31の内側部分32(図15の2点鎖線の内側部分)の内部には、実施例1に係る半導体基板1と同様に、OF15と平行な方向に延びる複数本の切断起点領域9aと、OF15に垂直な方向に延びる複数本の切断起点領域9bとが形成されている。このように、内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが格子状に形成されることで、内側部分32は多数の矩形状の区画部33に仕切られる。 ・・・ 【0060】 なお、マスク36を用いずに、半導体基板1の内側部分32と外縁部31との境界付近に各切断予定ライン5の始点5a及び終点5bを位置させて、各切断予定ライン5に沿ってレーザ光の照射を行うことにより、内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bを形成することも可能である。 ・・・ 【0062】 しかも、半導体基板1の内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが形成され、外縁部31には切断起点領域9a,9bが形成されていないことから、半導体基板1全体としての機械的強度が向上することになる。したがって、半導体基板1の搬送工程や機能素子形成のための加熱工程等において、半導体基板1が不測の下に切断されてしまうという事態を防止することができる。 ・・・ 【0064】 また、図18に示すように、切断起点領域9a,9bは半導体基板1の内部に収まり、外部には露出しないため、切断起点領域9a,9bを構成する溶融処理領域を形成する際にガスが発生するようなことも防止される。」 図9 「 [図:0001411615000001.jpg] 」 図15 「 [図:0001411615000002.jpg] 」 図18 「 [図:0001411615000003.jpg] 」 3 本件発明の技術的意義等 (1)従来技術及び本件発明が解決しようとする課題 上記2の記載から、従来技術及び本件発明が解決しようとする課題について、以下の事項を認めることができる。 半導体デバイスの製造工程において半導体基板を切断する方法には、ダイヤモンドブレードにより基板を機能素子毎に切断する方法や半導体基板に対して吸収性を有するレーザ光を基板に照射し、加熱溶融により基板を切断する方法があるが、これらの方法による場合には、切断時に発生する熱を原因として半導体基板上に形成された機能素子が破壊されるおそれがあるという課題があった(【0002】~【0004】)。 (2)本件発明の技術的意義 本件発明は、上記(1)の従来技術の課題を解決するため、半導体基板上に複数の機能素子が形成されていても、機能素子が破壊されるのを防止して、基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供することを目的とするものであり、本件発明に係るレーザ加工装置は、基板の内部にレーザ光を集光させ、レーザ光の集光点を基板の内部に位置させた状態で、基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させるように制御することで、切断予定ラインに沿って基板内部に切断の起点となる改質領域を形成し、また、その基板内部における改質領域を赤外線で照明して撮像可能とするものである(【0005】、【0006】)。 本件発明に係るレーザ加工装置は、このような構成により、半導体基板の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので、基板の表面が溶融せず、基板上の機能素子が破壊されることを防止しながら、基板を切断することが可能となり、上記(1)の課題が解決される。 また、半導体基板内部における改質領域を起点として、比較的小さな力で基板に割れが発生するため、基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断できるという技術的意義が認められる(【0007】、【0008】)。 (3)構成F、G、O及びPの技術的意義 上記2の記載から、本件発明1の構成F及びG、並びに本件発明2の構成O及びPについて、以下の技術的意義を推認できる。 本件発明に係るレーザ加工装置によって、半導体基板内部に改質領域が形成されると、外力を加えなくても、改質領域を起点として基板の内部に割れが発生する場合があるが、この割れが基板の表面や裏面に到達するか否かは、基板の厚さ方向における改質領域の位置や、基板の厚さに対する改質領域の大きさ等に関係する(【0052】)。 そこで、半導体基板を赤外透過照明による赤外線で照明する(構成F又はO、【0029】)とともに、撮像素子の観察面を基板の内部に合わせて改質領域を撮像する(構成G又はP、【0033】、【0048】)ことで、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することができ、基板の内部に形成する溶融処理領域の位置や大きさ等を調節することが可能となり、その調節により、製造工程で基板が割れることがないように制御したり、切断直前に基板の表面及び裏面に割れが到達するように制御を行うことができる(【0052】)。 (4)構成Hの技術的意義 上記2の記載から、本件発明1の構成Hについて、以下の技術的意義を認めることができる。 本件発明1に係るレーザ加工装置によって、半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に切断予定ラインの始点及び終点を位置させて(構成H)レーザ光を照射することで、基板の内側部分の内部に切断起点領域が形成され(【0060】)、外縁部には切断起点領域が形成されないことから、半導体基板全体としての機械的強度が向上し、基板の搬送工程等において、基板が不測の下に切断される事態を防止できる(【0062】)。 また、切断起点領域は半導体基板の内部に収まり、外部には露出しないため、切断起点領域を構成する改質領域を形成する際にガスが発生するようなことも防止される(【0064】)。 そして、本件発明1の「外縁部」は、半導体基板を取り囲む端の一定の幅をもった部分(【0054】、図15)をいい、「内側部分」は、半導体基板の外縁部以外の部分をいうものと理解できる。 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 (1)無効理由1(甲第1号証に基づく進歩性欠如) ア 無効理由1の1(甲第1号証に基づく本件発明1の進歩性欠如) 本件発明1は、国内優先権の主張の効果(以下「優先権の効果」という。)が及ばないから、新規性・進歩性は原出願日(平成15年3月11日)を基準に判断されるべきであり、本件発明1は、本件特許の原出願日前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲第4~10号証、甲第21及び22号証、甲第12~14号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 イ 無効理由1の2(甲第1号証に基づく本件発明2の進歩性欠如) 本件発明2は、優先権の効果が及ばないから、新規性・進歩性は原出願日を基準に判断されるべきであり、本件発明2は、本件特許の原出願日前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲第4~10号証、甲第21及び22号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2)無効理由2(甲第2号証に基づく進歩性欠如) ア 無効理由2の1(甲第2号証に基づく本件発明1の進歩性欠如) 本件発明1は、本件特許の優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲第4~10号証、甲第21及び22号証、甲第12~14号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 イ 無効理由2の2(甲第2号証に基づく本件発明2の進歩性欠如) 本件発明2は、本件特許の優先日前に頒布された甲第2号証に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲第4~10号証、甲第21及び22号証、甲第17~18号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 2 証拠方法 (1)併合審理の通知前に提出されたもの 甲第 1号証:特開2002-192370号公報 甲第 2号証:特開平11-177137号公報 甲第 3号証:本件特許の優先権証明書(特願2002-67348号) 甲第 4号証:特公昭62-45965号公報 甲第 5号証:特開平8-220008号公報 甲第 6号証:特開平10-332332号公報 甲第 7号証:特開平8-264488号公報 甲第 8号証:特開平5-259275号公報 甲第 9号証:特開平9-17831号公報 甲第10号証:特開平11-121517号公報 甲第11号証:特開平4-172192号公報 甲第12号証:特開平6-224298号公報 甲第13号証:特開平11-224864号公報 甲第14号証:特開2002-43254号公報 甲第15号証:無効2019-800068号の審決の予告 甲第16号証:特開平11-163403号公報 甲第17号証:特開平6-120334号公報 甲第18号証:特開平3-276662号公報 (2)併合審理の通知後に提出されたもの ア 請求人要領書に添付したもの 甲第19号証:「PCT国際調査及び予備審査ガイドライン」 (2020年7月1日施行、日本語仮訳の抜粋) 甲第20号証:本件特許の侵害訴訟の控訴審(令和3年(ネ) 第10101号)において知的財産高等裁判所に提出した 請求人従業員の陳述書(乙第206号証) 甲第21号証:特開2002-192369号公報 甲第22号証:特開2003-10991号公報 甲第23号証:ボーデンハウゼン著「産業財産権に関するパリ条約」 (日本語訳の抜粋) 甲第24号証:特開平10-323778号公報 イ 令和4年7月25日の上申書に添付したもの 甲第25号証:久野耕司、「ステルスダイシングによる微細加工技術の 変遷と展望-24時間稼働できる高スループットレーザ 加工装置-」(レーザ加工学会誌、一般社団法人レーザ 加工学会、2019、Vol.26、No.2) 甲第26号証:別件特許権侵害訴訟(平成30年(ワ)第28929号、 平成30年(ワ)第28930号)において、被請求人が 裁判所に提出した「SD加工メカニズム、SD層の実態」 と題する資料(2枚目は黒塗りとしている) 甲第27号証:請求人の技術説明資料 ウ 令和4年8月29日の上申書に添付したもの 甲第28号証:実願昭53-113004号 (実開昭55-29549号)のマイクロフィルム (以下、各甲号証を「甲1」などという。) 第5 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 (1)無効理由1(甲1に基づく進歩性欠如) ア 無効理由1の1(甲1に基づく本件発明1の進歩性欠如) 本件発明1には、優先権の効果が及ばないことは認めるが、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲4~10、甲21及び22、甲12~14)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 無効理由1の2(甲1に基づく本件発明2の進歩性欠如) (ア)本件発明2については、その全体に優先権の効果が及ぶから、甲1は本件発明1の優先日前に頒布された刊行物に該当しない。 (イ)仮に、本件発明2の全体に優先権の効果が及ぶとはいえないとしても、優先権の基礎となる出願の明細書に記載されていた部分には、部分優先の効果(以下「部分優先の効果」という。)が認められる(すなわち、本件発明2の構成のうち、構成Nの「切断予定ライン」が「半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点、終点を有する切断予定ライン」を含まない部分については、部分優先の効果が認められる)から、甲1は、本件発明2のうちの部分優先の効果が認められる部分の優先日前に頒布された刊行物に該当しない。 また、本件発明2の構成のうち、構成Nの「切断予定ライン」が「半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点、終点を有する切断予定ライン」である部分についての新規性・進歩性の判断基準日は原出願日(平成15年3月11日)となるが、当該部分が甲1に記載された発明に対して進歩性を欠いているとはいえない限り、本件発明1の進歩性欠如は成り立たないといえるところ、当該部分は本件発明1と同様に、周知技術(甲12~14)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)無効理由2(甲2に基づく進歩性欠如) ア 無効理由2の1(甲2に基づく本件発明1の進歩性欠如) 本件発明1は、本件特許の優先日前に頒布された甲2に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲4~10、甲21及び22、甲12~14)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明1と甲2に記載された発明には、請求人が挙げていない相違点があり、それらの相違点も当業者が容易に想到できたものではない。 イ 無効理由2の2(甲2に基づく本件発明2の進歩性欠如) 本件発明2は、本件特許の優先日前に頒布された甲2に記載された発明、及び周知又は公知技術(甲4~10、甲21及び22、甲17~18)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明2と甲2に記載された発明には、請求人が挙げていない相違点があり、それらの相違点も当業者が容易に想到できたものではない。 2 証拠方法 (1)併合審理の通知前に提出されたもの 乙第1号証の1:高岡秀嗣、「極薄半導体ウェハのダイシングに最適な ステルスダイシング技術の原理と特徴」、電子材料、 工業調査会、2002年9月1日、Vol.41、 No.9、17-21ページ 乙第1号証の2:大島雅志、ほか2名、「浜松ホトニクスのステルス ダイシング技術について-開発意義を専門家に聞く-」 電子材料、工業調査会、2002年9月1日、 Vol.41、No.9、22-23ページ) 乙第1号証の3:「レーザー学会産業賞「優秀賞」受賞」と題する文書、 一般社団法人レーザー学会 乙第1号証の4:「浜松ホトニクス 透過性パルスレーザーの内部集光に よる切断加工システム」と題するウェブページ、 株式会社中日新聞社 <URL:http://www.chunichi.co.jp/info/award/ sangisho/minister_no24.html> 乙第1号証の5:「機械振興賞 受賞者 業績概要詳細」と題するウェブ ページ、 <URL:http://www.jspmi.or.jp/system/ l_cont.php?ctid=l30502&rid=1101> 乙第1号証の6:「レーザー加工技術 特許総合ランキング力トップ3は 浜松ホトニクス、ディスコ、三菱電機」と題するウェブ ページ <URL:https://www.patentresult.co.jp/news/2018/07/ laserprotech.html> 乙第2号証:特開平11-163403号公報 乙第3号証:知的財産高等裁判所 令和2年(行ケ)第10018号判決 (2)併合審理の通知後に提出されたもの ア 令和4年7月15日の口頭審理陳述要領書に添付したもの 乙第4号証:知的財産高等裁判所 令和3年(行ケ)第10111号判決 イ 令和4年9月15日の上申書に添付したもの 乙第5号証:知的財産高等裁判所 令和3年(ネ)第10101号判決 第6 当審の判断 1 甲号証の記載事項 (1)甲1の記載事項 本件特許に係る出願の原出願日(平成15年3月11日)前に頒布された刊行物である甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は、理解を容易にするために当審で付したものである。以下同じ。) 「【発明の属する技術分野】 【0002】本発明は、半導体材料基板、圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工方法に関する。」 「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する工程を備えることを特徴とする。」 「【0008】本発明に係るレーザ加工方法によれば、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射しかつ多光子吸収という現象を利用することにより、加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工方法によれば、改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより、加工対象物を切断することができる。よって、比較的小さな力で加工対象物を切断することができるので、加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。」 「【0033】さて、本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域として、次の(1)~(3)がある。 (1)改質領域が一つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合・・・」 「【0037】(2)改質領域が溶融処理領域の場合・・・」 「【0043】(3)改質領域が屈折率変化領域の場合・・・」 「【0044】次に、本実施形態の具体例を説明する。 [第1例]本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法について説明する。図14はこの方法に使用できるレーザ加工装置100の概略構成図である。レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と、これら三つのステージ109,111,113の移動を制御するステージ制御部115と、を備える。」 「【0048】レーザ加工装置100はさらに、載置台107に載置された加工対象物1を可視光線により照明するために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119と、を備える。・・・観察用光源117から発生した可視光線はビームスプリッタ119で約半分が反射され、この反射された可視光線がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表面3を照明する。 【0049】レーザ加工装置100はさらに、ビームスプリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子121及び結像レンズ123を備える。撮像素子121としては例えばCCD(charge-coupleddevice)カメラがある。切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像データとなる。 【0050】レーザ加工装置100はさらに、撮像素子121から出力された撮像データが入力される撮像データ処理部125と、レーザ加工装置100全体を制御する全体制御部127と、モニタ129と、を備える。撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うようにする。よって、撮像データ処理部125はオートフォーカスユニットとして機能する。・・・ 【0051】全体制御部127には、ステージ制御部115からのデータ、撮像データ処理部125からの画像データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部115を制御することにより、レーザ加工装置100全体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュータユニットとして機能する。 【0052】次に、図14及び図15を用いて、本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法を説明する。図15は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。加工対象物1はシリコンウェハである。 【0053】まず、加工対象物1の光吸収特性を図示しない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づいて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定する(S101)。次に、加工対象物1の厚さを測定する。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にして、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S103)。これは、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置するレーザ光Lの集光点を基準とした加工対象物1のZ軸方向の移動量である。この移動量を全体制御部127に入力される。 【0054】加工対象物1をレーザ加工装置100の載置台107に載置する。そして、観察用光源117から可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S105)。照明された切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3を撮像素子121により撮像する。この撮像データは撮像データ処理部125に送られる。この撮像データに基づいて撮像データ処理部125は観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点データを演算する(S107)。 【0055】この焦点データはステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置する。なお、撮像データ処理部125は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3の拡大画像データを演算する。この拡大画像データは全体制御部127を介してモニタ129に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5付近の拡大画像が表示される。 【0056】全体制御部127には予めステップS103で決定された移動量データが入力されており、この移動量データがステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。 【0057】次に、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。そして、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って曲げることにより、加工対象物1を切断する(S115)。これにより、加工対象物1をシリコンチップに分割する。 【0058】第1例の効果を説明する。これによれば、多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライン5に照射している。そして、X軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させている。これにより、改質領域(例えばクラック領域、溶融処理領域、屈折率変化領域)を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。よって、改質領域を起点として切断予定ライン5に沿って加工対象物1を割ることにより、比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。これにより、加工対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物1を切断することができる。」 「【0062】また、第1例によれば、加工対象物1の切断加工にレーザ光を用いるので、ダイヤモンドカッタを用いたダイシングよりも複雑な加工が可能となる。例えば、図16に示すように切断予定ライン5が複雑な形状であっても、第1例によれば切断加工が可能となる。これらの効果は後に説明する例でも同様である。」 「【0066】第2例に係る切断装置は、図14に示すレーザ加工装置100及び図19、図20に示す装置から構成される。図19及び図20に示す装置について説明する。圧電素子ウェハ31は、保持手段としてのウェハシート(フィルム)33に保持されている。このウェハシート33は、圧電素子ウェハ31を保持する側の面が粘着性を有する樹脂製テープ等からなり、弾性を有している。ウェハシート33は、サンプルホルダ35に挟持されて、載置台107上にセットされる。なお、圧電素子ウェハ31は、図19に示されるように、後に切断分離される多数個の圧電デバイスチップ37を含んでいる。各圧電デバイスチップ37は回路部39を有している。この回路部39は、圧電素子ウェハ31の表面に各圧電デバイスチップ37毎に形成されており、隣接する回路部39の間には所定の間隙α(80μm程度)が形成されている。なお、図20は、圧電素子ウェハ31の内部のみに改質部としての微小なクラック領域9が形成された状態を示している。」 「【0091】また、撮像素子121として赤外線用のものを用いることにより、レーザ光Lの反射光を利用してフォーカス調整を行うことができる。この場合には、ダイクロイックミラー103を用いる代わりにハーフミラーを用い、このハーフミラーとレーザ光源101との間にレーザ光源101への戻り光を抑制するような光学素子を配設する必要がある。なお、このとき、フォーカス調整を行うためのレーザ光Lにより切断対象材料にダメージが生じないように、フォーカス調整時にレーザ光源101から照射されるレーザ光Lの出力は、クラック形成のための出力よりも低いエネルギー値に設定ことが好ましい。」 図16 「 [図:0001411615000004.jpg] 」 図19 「 [図:0001411615000005.jpg] 」 図20 「 [図:0001411615000006.jpg] 」 (2)甲2の記載事項 本件特許に係る出願の優先日(平成14年3月12日)前に頒布された刊行物である甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は紫外域から橙色まで発光可能な発光ダイオードやレーザーダイオード、さらには高温においても駆動可能な3-5族半導体素子の製造方法に係わり、特に、基板上に窒化物半導体積層された半導体ウエハーから窒化物半導体素子を分割する製造方法に関する。」 「【0012】したがって、本発明は窒化物半導体ウエハーをより小さいチップ状に分割するに際し、切断面のクラック、チッピングの発生をより少なくする。また、窒化物半導体の結晶性を損なうことなく、かつ歩留りよく所望の形、サイズに分離された窒化物半導体素子を量産性良く形成することができる製造方法を提供することを目的とする。」 「【0019】 【発明の実施の形態】本発明者らは種々実験の結果、窒化物半導体素子を製造する場合において半導体ウエハーの特定箇所にレーザーを照射することにより、半導体特性を損傷することなく量産性に優れた窒化物半導体素子を製造することができることを見いだし本発明を成すに到った。 【0020】本発明の方法による分離端面がブレイクラインに沿って平坦に形成される理由は定かではないが溝部形成に伴って溝部近傍に内部応力が生ずること及びその内部応力とブレイクラインが切断端面形状に大きく関係していると考えられる。 【0021】即ち、ダイサーやダイヤモンドスクライバーなどにより機械的に削りとられた溝部は、その溝部形成時に内部応力が生ずる。特に、溝部の底面に沿ってダイヤモンドスクライバーによるスクライブ・ラインを形成する工程においてはスクライバーの刃先にかかる加重で溝部底以外にも広く歪みが増幅される。そのため、溝部形成後にダイヤモンドスクライバーで分離させると半導体ウエハー内に保持された応力によって所望通りの端面が形成されず、より正確に窒化物半導体ウエハーが分離できないと考えられる。 【0022】本発明はダイサーにより生じた内部応力に依存することなくレーザースクライバーにより分割に寄与する局所的な応力を発生させる。これにより端面が綺麗(平滑)であり量産性の良い窒化物半導体素子を製造することができると考えられる。また、窒化物半導体素子を分離されるためには半導体ウエハーの厚みが部分的に薄い溝部を形成させる。その溝部よりも狭いブレイク・ラインをレーザー照射により形成することで、極めて細いブレイク・ラインを所望の深さまで深く形成することができ量産性の良い窒化物半導体素子を分離できるものである。以下、本発明の製造方法例について説明する。」 「【0037】 【実施例】(実施例1)厚さ200μmであり洗浄されたサファイアを基板101としてMOCVD法を利用して窒化物半導体を積層させ窒化物半導体ウエハーを形成させた。・・・」 「【0042】半導体ウエハーに、RIE(Reactive Ion Etching)によって窒化物半導体表面側から溝部が形成されるサファイア基板との境界面が露出するまでエッチングさせ複数の島状窒化物半導体層が形成された半導体ウエハーを用いる。・・・(図1(A))。 【0043】こうして形成された窒化物半導体ウエハー100のサファイア基板101を100μmまで研磨した後、半導体ウエハー100のサファイア基板面111が上になるように水平方向に自由駆動可能なテーブル上に真空チャックを用いて固定させた。ブレード回転数30,000rpm、切断速度3mm/secでステージを移動させることによりサファイア基板101の底面に幅約30μm、深さ約15μmの溝を縦横に形成し溝部103とさせる。・・・(図1(B))。 【0044】次に、ダイサーの刃先など駆動部のみレーザー(356nm)が照射可能なYAGレーザー照射装置と入れ替えた(不示図)。窒化物半導体ウエハー100の固定は維持したままレーザーの焦点を窒化物半導体ウエハーの溝部103底面に結ばれるようレーザーの光学系を調節させる。調節したレーザー光線を16J/cm2で照射させながらステージを移動させることにより溝部103の底面に沿って深さ約3μmの更なる溝としての凹部104をブレイク・ラインとして形成する(図1(C))。 【0045】ブレイク・ラインに沿って、ローラー(不示図)により荷重をかけ、窒化物半導体ウエハー100を切断分離することができる。分離された窒化物半導体素子110の端面はいずれもチッピングやクラックのない窒化物半導体素子を形成することができる(図1(D))。」 「【0048】(実施例2)実施例1のレーザー照射装置における焦点深さをレーザーの光学系を調整させて深くさせた以外は実施例1と同様にしてブレイク・ラインを形成させた。形成されたブレイク・ラインは基板201の表面となる溝部203に凹部は形成されていないが基板201内部に加工変質部として形成されている(図2(C))。」 図1 「 [図:0001411615000007.jpg] 」 図2 「 [図:0001411615000008.jpg] 」 (3)甲4の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲4には、以下の事項が記載されている。 「本発明は特に半導体ウエハの結晶欠陥を観察するのに適した試料観察装置に関する。」(1欄14~15行) 「本発明は上記従来の光学顕微鏡が不鮮明であり、ピットと基板内部の対応付けが困難であるという事情に鑑みて為されたもので、試料表面像を得る、可視光を用いた微分干渉顕微鏡又は位相差顕微鏡と、透過赤外光を可視光に変換して試料内部像を得る手段と、ピント調整手段とを備え、試料表面像及び内部像を同一視野内でオーバーラップさせて観察するようにされてなり、以って従来より鮮明でかつピット像、内部欠陥両者の対応を容易につけることが出来る試料観察装置を提供するものである。 以下本発明を一実施例につき図面を参照して詳述する。 第1図は本実施例を説明する為の装置の概略的な断面図である。先ず透過赤外光を用いる微分干渉顕微鏡、落射可視光を用いる光学顕微鏡及びピント調整手段の各部に分けて説明する。 微分干渉顕微鏡では、第1のハロゲンランプ1から発した可視光はコンデンサレンズ2、ボラライザー(偏光板)3及び絞り4を径たのちハーフミラー5で試料6方向に直角に曲げられ、さらに断面がくさび状を為すウォラストンプリズム7、対物レンズ8を通って試料6上方より落射照明する。反射光は再び前記対物レンズ8、プリズム7、ハーフミラー5をこの順に通過したのち、アナライザー(偏光板)9、接眼レンズ10を経て光電変換手段である、可視光から赤外光にわたって感知するビジコン11(Pbo―Pbsビジコン、その他Siビジコン等)の入射面11aに結像し、白黒モニタテレビジョン12の画面上に試料表面像を写し出す。 ここでボラライザー3で直線偏光にされた可視光は、ウォラストンプリズム7で互いに偏向方向が直角な2つの成分を有する光となって試料に照射される。その反射光は試料表面の凹凸に応じた位相差を有し、アナライザー9を経てビジコン入射面11a上に形成された像には前記位相差に応じた色の分布が現われる。モニタテレビジョン12の試料表面像は色の分布が白黒の濃淡として現われる。即ち試料表面の微細な波長オーダーの凹凸が濃淡パターンとして観察される。 次に試料内部像を得る光学顕微鏡では、第2のハロゲンランプ13から発した赤外成分を含む光はコンデンサレンズ14a,14bを通過したのち、ミラー15で試料6方向に直角に曲げられ、赤外光のみを通過させるシリコンフィルタ15a、コンデンサレンズ16a,16bを介して試料6を裏面より赤外光を照射する。コンデンサレンズ16aと16b間には偏光観察可能にする偏光板17、及び絞り18が挿入されている。試料を通過した赤外光は、前記対物レンズ8、接眼レンズ10を経てビジコン入射面11aに結像し、ここで光電変換され、可視光に変換された試料内部像をモニタテレビジョン12の画面上に写し出す。」(2欄19行~4欄5行) 「試料は厚みを有しているので、試料表面からの試料内部物体面距離が、接眼レンズ10、対物レンズ8から成る光学系の焦点深度内に入っている場合には、ピント調整即ち試料台19の上下によってモニタテレビジョン12画面上に同一視野内で前述した光学顕微鏡によって得られる試料内部像及び前述した微分干渉顕微鏡から得られる表面像が同時にオーバーラップして観察される。」(4欄10~17行) 「 [図:0001411615000009.jpg] 」 (4)甲5の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲5には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、例えば半導体ウエハや光検出素子の欠陥、ならびに液晶パネルなどの被検体の欠陥を検査する装置の改良に関するものである。」 「【0005】この発明の実施例1による赤外検査装置は、上述のような問題点を解消するためになされたものであり、半導体ウエハなどの微少なクラックなどの欠陥の有無の検査を容易にかつ高い検出率で実施することができる装置を実現するものである。」 「【0010】 【課題を解決するための手段】この発明の実施例1による検査装置は、赤外線を透過する被検体の裏面側より赤外光を照射する手段を備えたものである。」 「【0015】 【作用】この発明の実施例1による赤外検査装置は、被検体の裏面より赤外光を照射することができるため、被検体の透過光を映像化することができる。このため例えばパターン焼き付け加工などを施す前の半導体ウエハの段階での、表面に現れる部分が微少なクラックをも検出することが可能となる。」 「【0020】 【実施例】 実施例1.図1は、この発明の実施例1を示す構成図であり、図において1は赤外光を透過する被検体、2は被検体を保持する微動台、10は別に設けた赤外光源、11は赤外光源に密着して設置した拡散器、12は拡散器から出射した赤外線、13は被検体を透過した赤外線、14は赤外線レンズ、15は赤外線レンズを装着した赤外線カメラ、そして16は赤外線カメラの映像信号を入力するモニタである。次に動作について説明する。赤外光源10からでた赤外線は、拡散器11によって空間的に均一にされて、出射した赤外線12となる。出射した赤外線12は被検体1を、その裏面から照射する。ここで被検体1は微動台2によって、この例では両側より保持されている。このため微動台を調整することにより、赤外線カメラに対して任意の水平および垂直の位置に被検体の位置を設定することができる。すなわち被検体の任意の位置を撮像すること、および被検体にピントを合わせることを行うことが可能となる。さて、出射した赤外線12は被検体1を裏面から照射して、表面へ通り抜けて、透過した赤外線13となる。透過した赤外線13は赤外線レンズ14によって赤外線カメラ15の内部の受光素子に被検体の像を結ぶ。赤外線カメラ15はこの像を光電変換した後、増幅、信号処理して規定のビデオ信号に変換する。モニタ16はこのビデオ信号を入力し、目視で確認できる映像にして表示する。ここで被検体1が、例えばパターン加工などを施す前の半導体のシリコンウエハとすると、その中に潜む微少なクラックを目視で確認することはすでに述べたように困難であるが、この装置を用いればクラックとその他の部分とは赤外線の透過状態が異なるために、容易にクラックを検出することが可能となる。詳細に説明すると、まずシリコンウエハは3~5μmの赤外線を透過する。ここでクラック以外の部分はシリコンの単結晶であるために、その赤外線画像は赤外線の透過状態が一定であるために、一様である。一方クラックの部分はその部分で赤外線の反射および吸収が生じるために、クラックと同じ形の「影」が発生する。このためモニタ画像を目視で検査することによって微少なクラックまでも容易に発見することができる。・・・」 図1 「 [図:0001411615000010.jpg] 」 (5)甲6の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲6には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線を利用した撮像により、半導体ウェーハ等の内部に形成された特定の領域を検出する方法に関し、詳しくは、深さ方向に複数積層された回路面の中から、特定の領域を検出するようにした領域の検出方法に関するものである。」 「【0006】赤外線の透過性を利用すれば、焦点の位置を調整することにより、半導体ウェーハの裏面や内部を撮像することもでき、検出すべき回路面が裏面や内部に形成されている場合にも、切削すべき領域を検出することができる。」 「【0015】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例として、半導体ウェーハを切削(ダイシング)する際に行う切削領域の検出について説明する。」 「【0018】アライメントユニット22は、図4に示すように、光を照射する照明手段23と、半導体ウェーハ10において反射した光を拡大する光学手段24と、光学手段24から供給される光を撮像する撮像手段25とから概略構成されている。 【0019】照明手段23は、内部に発光体26を備えており、この発光体26は、調光器27を介して電源(図示せず)に接続され、可視光線及び赤外線を発することができる。また、発光体26の下方には熱線吸収フィルタ28が取り付けられている。 【0020】光学手段24には、対物レンズ29と、ハーフミラー30と、赤外線狭帯域フィルタ31とを備えており、対物レンズ29は、半導体ウェーハ10と対峙する位置に配設され、その上方に配設されたハーフミラー30は、グラスファイバー32を介して照明手段23と接続されている。・・・ 【0021】撮像手段25は、例えば、光域が広く可視光線から赤外線までを認識可能なCCDカメラ等の撮像素子33を含んでおり、光学手段24に対して光軸が一致するよう配設されている。更に、撮像手段25には、半導体ウェーハ10の焦点位置を、例えばZ軸上の座標によって記憶させることができるメモリ等からなる記憶手段34を備え(制御装置内に備えてもよい)、この記憶手段34に記憶させた焦点位置に自動的に焦点を合わせる機能を有している。また、撮像手段25はモニター35に接続され、撮像した画像はモニター35に表示されるようになっている。」 「【0024】そして、照明手段23の発光体26から赤外線成分を含む光を半導体ウェーハ10に照射すると共に、対物レンズ29を上下動させる等して、予め記憶手段34に記憶させておいたZ軸上の焦点位置Dに撮像素子33の焦点を合わせると、モニター35には、図5に示したようなターゲット14を有する回路面11の画像が表示される。 【0025】図5に示した回路面において、ストリート14は、所定間隔を置いて格子状に配列された直線状領域であり、ストリート14によって区画された多数の矩形領域17には、回路パターンが施されている。また、ターゲット14は、ストリート13の切削位置の検出時の基準となる特徴点であり、ストリート13とターゲット14との位置関係は予め記憶手段34に記憶されている。従って、ターゲット14をパターンマッチング等で検出すれば、自動的にストリート13の位置を検出することができ、ストリート13と切削ブレード23との位置合わせ、即ち、アライメントが行われる。」 「【0031】なお、本発明に係る領域の検出方法は、上記説明したアライメント時の切削領域の検出だけでなく、切削途中における切削状況の監視等にも利用することができる。」 図4 「 [図:0001411615000011.jpg] 」 (6)甲7の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲7には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウェハからチップを切り出すためにウェハをスクライブするウェハスクライブ装置及び方法に関する。」 「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明のウェハスクライブ装置は、半導体ウェハをスクライブするツールと、半導体ウェハを固定し赤外光を透過するプレートと、前記プレートを一平面上で移動及び回転させるXYθテーブルと、前記半導体ウェハに向かって赤外光を出射する赤外光源と、前記赤外光による前記半導体ウェハの透過映像を撮像する赤外カメラと、前記赤外カメラで撮像した透過映像から前記半導体ウェハ上のチップ分割線の位置を認識する画像認識ユニットとを含み、前記ツールを前記チップ分割線に沿って移動させて前記半導体ウェハをスクライブすることを特徴とする。」 「【0009】本実施例は、半導体ウェハ1からチップ2を切り出すために半導体ウェハ1をスクライブするもので、半導体ウェハ1をスクライブするツール3と、半導体ウェハ1を吸着固定し、光を透過するガラスプレート4と、ガラスプレート4が固定され、ウェハ1を任意の位置及び向きへ位置決めするXYθテーブル5と、XYθテーブル5の下方よりウェハ1に向かって赤外光を出射する赤外光源6と、赤外光によるウェハ1の透過映像を撮像する赤外カメラ7と、赤外カメラ7で撮像した透過映像から切り出すべきチップ2の位置を認識する画像認識ユニット8とで構成される。」 「【0011】半導体ウェハ1を裏面が上側となるようにガラスプレート4に吸着固定させ、XYθテーブル5により赤外カメラ7の視野内に半導体ウェハ1を移動させる。次に赤外光源6から赤外光を半導体ウェハ1に出射し、その透過光を赤外カメラ7で撮像する。これにより半導体ウェハ1の表面に形成されたパターン画像を画像認識ユニット8に取り込み、分割線を示すマークに従ってスクライブする線を検出する。検出した半導体ウェハ1上の線に沿ってツール3がスクライブできるようにXYθテーブル5により半導体ウェハ1を位置決めし、ツール3を移動させて半導体ウェハ1の裏面をスクライブする。このように縦横に複数のスクライブラインを半導体ウェハ1に設ける。」 図1 「 [図:0001411615000012.jpg] 」 (7)甲8の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲8には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造方法にかかり、詳しくは、半導体ウエハを個々の半導体チップに分割する方法に関する。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明の半導体製造方法は、半導体ウエハを分割するための分割用切込みを半導体ウエハの一面に形成する際において、該一面を半導体素子が形成されていない面にしたことに特徴を有している。 【0007】なお、半導体ウエハを透過しうる光線を他面側から半導体ウエハに向かって照射し、該透過光線によって前記半導体素子の形成位置を確認しながら前記分割用切込みを形成することが好ましく、さらには、前記分割用切込みを形成するまえに、仮止シート材を半導体素子が形成されている面に設けることが好ましい。 【0008】 【作用】上記構成によれば、分割用切込みは、半導体素子が形成されていない面に形成されるので、分割用切込み形成時に発生するワレ、カケ等のキズが半導体形成面に発生することはなくなる。また、仮止シート材を半導体素子が形成されている面に設けると、分割時に発生するワレ、カケ等の破片が、半導体素子形成面に付着することがなくなる。 【0009】 【実施例】以下、本発明による半導体ウェハの製造方法の一実施例を、その手順にしたがって説明する。なお、第1図それぞれは手順ごとの半導体ウェハを示す説明図であり、これらの図における符号10は半導体ウエハ、11は半導体チップで、Aは半導体ウエハ10表面に形成された半導体素子である。 【0010】まず、図1(a)に示すように、半導体ウエハ10に伸張性を有する仮止シート材12を貼り付ける。貼付の際には、半導体ウエハ10の表面、すなわち、半導体素子が形成されている面10aと仮止シート材12とを向かい合わせ、仮止めシート材12によって表面10aが覆われるようにしておく。 【0011】仮止シート材12を張り付けたのち、ダイヤモンドカッタ13によって半導体ウエハ10の所定位置にスクライブライン(分割用切込み)14を形成する。スクライブライン14は半導体素子裏面、すなわち、半導体素子が形成されていない面10bに形成する。スクライブライン14刻設時には、シート材12外側に、赤外線ランプ15を、さらに、ウエハ10は挟んで(当審注:「ウエハ10を挟んで」の誤記と認める。)この赤外線ランプ15と対向する位置に赤外線カメラ16を配設しておく。そして、赤外線ランプ15から半導体ウエハ10に向かって赤外光Rを照射し、半導体ウエハ10を透過した赤外光Rを赤外線カメラ16によって捕らえる。捕られた(当審注:「捕らえられた」の誤記と認める。)透過赤外光RはCRTモニター17に映し出され、この透過赤外光Rによって、半導体ウエハ10上の半導体素子A配置構成が確認される。そのため、ウエハ裏面10bであるにもかかわらず、スクライブライン14を正確に形成することができる。また、スクライブライン14形成時には、従来と同様、ダイヤモンドカッタ13と接する部分に、ワレ、カケといった破損が生じることが考えられる。しかしながら、スクライブライン14は、ウエハ裏面10bに刻設されるので、ワレ、カケ等の破損によってチップ外見が損なれる(当審注:「損なわれる」の誤記と認める。)ことにはならない。また、このとき、半導体ウエハ10の表面10aは仮止シート材12によって覆われているため、これら破片が付着することも起こらない。 【0012】スクライブライン14を形成したのち、図1(c)に示すように、仮止シート材外表面12aに沿って回転ローラ18(たとえば、ゴム製ローラ)を押圧状態で往来させ、これによって半導体ウエハ10を撓ませる。撓まされた半導体ウエハ10は、クライブライン(当審注:「スクライブライン」の誤記と認める。)14に沿って割れ、これによって半導体ウェハは各半導体チップ11毎に分割(ブレイク)される。」 図1 「 [図:0001411615000013.jpg] 」 (8)甲9の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲9には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はウエハプロービング装置に関し、特に、半導体LSIチップをウエハ状態で電気検査をする際に使うプロービング用の端子が形成されたプローブウエハを被検査ウエハ上に正確にアライメントし、プロービングを行なうウエハプロービング装置に関する。」 「【0021】図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図1に示すウエハプロービング装置は、被検査ウエハ10の裏面よりシリコンを透過する波長域の赤外光で照明する赤外光照明装置1と、被検査ウエハ10のパターン面側にプロービング用の端子を配置したシリコンをベースにしたプローブウエハ2と、プローブウエハ2を被検査ウエハ10の表面に対し垂直に移動させ、プローブウエハ2のプロービング端子を被検査ウエハ10に接触させたり離したりするプローブウエハ退避装置3と、シリコンを透過する赤外域の一波長において被検査ウエハ10のパターン面上に焦点が合い、シリコンを透過する赤外域の別の一波長でプローブウエハ退避装置3により退避状態であるプローブウエハ2のプロービング端子に焦点が合う色収差をもつ赤外対物レンズ4と、シリコンを透過する前記赤外域の一波長のみを透過する第一のダイクロイックフィルタ5と、シリコンを透過する前記赤外域の別の一波長のみを透過する第二のダイクロイックフィルタ6と、第一のダイクロイックフィルタ5と第二のダイクロイックフィルタ6を赤外対物レンズ4の光路中に交互に出し入れする切り換え装置7と、赤外対物レンズ4からの光束を結像する結像レンズ8と、結像レンズ8の結像面上に撮像面が位置する赤外カメラ9と、被検査ウエハ10のパターンとプローブウエハ2のプロービング端子の像より双方のずれ量を算出しアライメントする手段91と、を含んで構成される。 【0022】赤外光照明装置1にて被検査ウエハ10の裏面よりシリコンを透過する波長域の赤外光で照明し、被検査ウエハ10の表面よりプローブウエハを通して被検査ウエハ10のパターンと退避状態のプローブウエハ2のプロービング端子とをそれぞれ別の波長において同時に焦点が合う様な色収差をもった赤外対物レンズ4により観察する。 【0023】被検査ウエハ10のパターン面上に焦点があう光の波長のみ透過させる第一のダイクロイックフィルタ5とプローブウエハ退避装置3により退避状態であるプローブウエハ2のプロービング端子に焦点が合う光の波長のみ透過させる第二のダイクロイックフィルタ6を切り換え装置7により切り換えて、被検査ウエハ10のパターンと退避状態のプローブウエハ2のプロービング端子双方を同一の光学系で観察することで正確な相対位置を測定して、高精度なアライメントを実現する。 【0024】アライメントを取った後、プローブウエハ退避装置3によりプローブウエハ2を被検査ウエハ10上におろしプロービングを行なう。ここで被検査ウエハ10のパターンと退避状態のプローブウエハ2のプロービング端子の像は結像レンズ8により赤外カメラ9の撮像面上に結像される。被検査ウエハ10のパターンと退避状態のプローブウエハ2のプロービング端子それぞれの像は図示しない画像処理装置により処理され、相対位置から位置ズレ量が算出される。この位置ズレ量を補正するように被検査ウエハ10を保持する図示しない検査ステージを駆動して被検査ウエハ10を動かしアライメントを取る。」 図1 「 [図:0001411615000014.jpg] 」 (9)甲10の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲10には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器内の基板上へ半導体素子を搭載する半導体素子搭載装置および半導体素子搭載方法にかかわり、特に光を集光することによって局部的に加熱する局部加熱装置を用いることによって、短時間に局所的に加熱し、また位置合わせに透過画像方式を用いることによって、高精度な位置合わせを可能とした、基板への熱影響の少ない、高精度に半導体素子を搭載する半導体素子搭載装置および半導体素子搭載方法を提供するものである。」 「【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態を図1~図3を用いて説明する。ここでは、半導体素子として光デバイスを用いた例を示している。・・・ 【0016】光デバイス搭載装置100は、XYθステージ11と、吸着アーム13を有するハンド12と、赤外線カメラ14と、赤外線用光源15と、光ビーム照射用集光レンズ16と、シャッター17と、モニタ21と、制御系22と、操作パネル23と、プリアライメントステージ24とを有して構成されている。」 「【0025】次に本実施の形態にかかる光デバイス搭載装置の動作を説明する。まず、プリアライメントステージ24に光デバイス30をプリアライメントして載置し、ステージ11に位置合わせ用ピン111を用いて基板40を所定の位置に載置しておく。プリアライメントステージ24に載置されている光デバイス30を吸着ハンド12の吸着アーム13にて吸着し、ステージ11上に載置された基板40の上方に若干の隙間を空けて保持する。 【0026】光源15からの赤外線を基板40および光デバイス30に照射して得られた透過画像は、赤外線カメラ14によって撮影され、モニタ21に映し出されるとともに、透過画像データは制御系22に入力される。 【0027】モニタ21に映し出された透過画像中の基板40および光デバイス30の2対のパターンから、基板40および光デバイス30の相対的な位置関係を認識し、位置ズレ量および角度ズレ量を算出する。XYθステージ11に設けられたX軸可動部およびY軸可動部ならびにθ可動部を、制御系22を介して操作パネル23によって制御し、光デバイス30と基板40の精密な位置合わせを行う。このステージ11のX、Y、θの移動による位置合わせは、作業者がモニタを監視しながら操作パネル23から指令を入力する手動操作で行うことができ、また、得られたパターンを制御系22が認識して自動的に行うようにすることもできる。 【0028】精密位置合わせ後、基板40と光デバイス30の間に設けた若干の隙間を無くし、基板40と光デバイス30を接触させる。 【0029】その後、操作パネル23から加熱の指示を出すと、シャッター17が閉じ赤外線カメラ14を加熱光線から保護し、赤外線用光源15を局部加熱装置の照射用集光レンズ16と入れ替え、加熱用光を集光して接合個所を局部加熱し、あらかじめ形成しておいた基板40側または光デバイス30側のはんだ層を溶融し、基板40と光デバイス30を固定する。」 図2 「 [図:0001411615000015.jpg] 」 (10)甲11の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲11には、以下の事項が記載されている。 「LSIなどの金属配線を切断したり、あるいは多層薄膜回路基板の上層のみを除去する場合、これら切断や除去などの加工を正しく行うために、加工状態をモニタしてレーザパワーなどを制御する必要がある。」(1ページ右欄3~7行) (11)甲21の記載事項 本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲21には、以下の事項が記載されている。 「【0052】以上のように本実施形態によれば改質領域を多光子吸収により形成している。そして、本実施形態は、直線偏光をしたレーザ光の直線偏光の向きが加工対象物の切断予定ラインと沿うようにして、加工対象物にレーザ光を照射することにより、加工対象物に改質領域を形成している。これにより、レーザ光がパルスレーザ光の場合、1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射)で形成された改質スポットにおいて、切断予定ラインに沿った方向の寸法を相対的に大きくすることができる。これを本発明者は実験により確認した。実験条件は次ぎの通りである。 【0053】・・・ 加工対象物であるサンプル1、2の各々において、加工対象物の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を1パルスショットし、加工対象物の内部に多光子吸収によるクラック領域を形成した。サンプル1に直線偏光のパルスレーザ光を照射し、サンプル2に円偏光のパルスレーザ光を照射した。 【0054】図14はサンプル1の平面の写真を表した図であり、図15はサンプル2の平面の写真を表した図である。これらの平面はパルスレーザ光の入射面209である。記号LPは直線偏光を模式的に示しており、記号CPは円偏光を模式的に示している。そして、図16は図14に示すサンプル1のXVI-XVI線に沿った断面を模式的に表した図である。図17は図15に示すサンプル2のXVII-XVII線に沿った断面を模式的に表した図である。加工対象物であるガラスウェハ211の内部にクラックスポット90が形成されている。」 図14 「 [図:0001411615000016.jpg] 」 図15 「 [図:0001411615000017.jpg] 」 (12)甲22の記載事項 本件特許に係る出願の原出願日前に頒布された刊行物である甲22には、以下の事項が記載されている。 「【0029】以上のように本実施形態によれば改質領域を多光子吸収により形成している。そして、本実施形態は、直線偏光をしたレーザ光の直線偏光の向きが加工対象物の切断予定ラインと沿うようにして、加工対象物にレーザ光を照射することにより、加工対象物に改質領域を形成している。これにより、レーザ光がパルスレーザ光の場合、1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射)で形成された改質スポットにおいて、切断予定ラインに沿った方向の寸法を相対的に大きくすることができる。これを本発明者は実験により確認した。実験条件は次ぎの通りである。 【0030】・・・ 加工対象物であるサンプル1、2の各々において、加工対象物の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を1パルスショットし、加工対象物の内部に多光子吸収によるクラック領域を形成した。サンプル1に直線偏光のパルスレーザ光を照射し、サンプル2に円偏光のパルスレーザ光を照射した。 【0031】図14はサンプル1の平面の写真を表した図であり、図15はサンプル2の平面の写真を表した図である。これらの平面はパルスレーザ光の入射面209である。記号LPは直線偏光を模式的に示しており、記号CPは円偏光を模式的に示している。そして、図16は図14に示すサンプル1のXVI-XVI線に沿った断面を模式的に表した図である。図17は図15に示すサンプル2のXVII-XVII線に沿った断面を模式的に表した図である。加工対象物であるガラスウェハ211の内部にクラックスポット90が形成されている。」 図14 「 [図:0001411615000018.jpg] 」 図15 「 [図:0001411615000019.jpg] 」 2 甲号証に記載された発明及び技術的事項 (1)甲1に記載された技術的事項及び甲1発明 ア 甲1に記載された技術的事項 甲1の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 (ア)甲1には、半導体材料基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工方法(【0002】)が記載されており、当該加工方法は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成することを特徴とし(【0007】)、当該加工はレーザ加工装置100により行われる(【0044】)。 (イ)レーザ加工方法が特徴とする改質領域には、クラック領域の場合(【0033】)、溶融処理領域の場合(【0037】)及び屈折率変化領域の場合(【0043】)があり、改質領域を起点として加工対象物が割れることにより、加工対象物を切断できる(【0008】)。 (ウ)レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lを集光する集光用レンズ105と、加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107を移動させるためのX軸ステージ109、Y軸ステージ111、Z軸ステージ113と、これら三つのステージの移動を制御するステージ制御部115と、を備えている(【0044】)。 (エ)レーザ加工装置100はさらに、加工対象物1を可視光線により照明する観察用光源117(【0048】)と、撮像素子121(【0049】)を備え、撮像素子121から出力された撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点を表面3上に合わせるための焦点データを演算する(【0050】)。 (オ)レーザ光Lは、加工対象物1に照射されるが、レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、加工対象物1の内部に溶融処理領域が形成され、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(【0057】)。 (カ)レーザ加工装置100の加工対象物1は、具体的にはシリコンウェハである(【0052】)。 (キ)撮像素子121として赤外線用のものを用いることにより、レーザ光Lの反射光を利用してフォーカス調整を行うことができる(【0091】)。 イ 甲1発明 上記アの技術的事項を本件発明1の分説に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているということができる。(甲1発明の分説の符号は、本件発明1の分説の符号に対応して「1a」などと記載する。) 「1a: 加工対象物1(上記ア(カ))の内部に、切断の起点となる改質領域(上記ア(イ))を形成するレーザ加工装置(上記ア(ア))であって、 1b: 前記加工対象物1が載置される載置台107(上記ア(ウ))と、 1c: レーザ光Lを出射するレーザ光源101(上記ア(ウ))と、 1d: 前記載置台107に載置された前記加工対象物1の内部に、前記レーザ光源101から出射されたレーザ光Lを集光し、そのレーザ光Lの集光点の位置で前記改質領域を形成させる(上記ア(オ))集光用レンズ105(上記ア(ウ))と、 1e: 前記改質領域を前記加工対象物1の内部に形成するために、レーザ光Lの集光点を前記加工対象物1の内部に位置させた状態で、前記加工対象物1の切断予定ライン5に沿ってレーザ光Lの集光点を移動させる(上記ア(オ))ステージ制御部115(上記ア(ウ))と、 1g: 前記加工対象物1の表面を撮像する(上記ア(エ))赤外線用の撮像素子121(上記ア(キ))と、を備える、 1i: レーザ加工装置100。」 ウ 甲1発明の認定に対する請求人の主張について (ア)請求人の主張の概要 甲1の【0062】、【0066】、図16、19及び20を参照すると、本件発明1の構成Hは開示されているといえる。(請求人要領書3~5ページ) (イ)請求人の主張の検討 a 本件発明1の構成Hの技術的意義は、半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に切断予定ラインの始点及び終点を位置させてレーザ光を照射することで、基板の内側部分の内部に切断起点領域が形成され、外縁部には切断起点領域が形成されないことから、半導体基板全体としての機械的強度が向上し、基板の搬送工程等において、基板が不測の下に切断される事態を防止でき、また、切断起点領域は半導体基板の内部に収まり、外部には露出しないため、切断起点領域を構成する改質領域を形成する際にガスが発生するようなことも防止される、というものと認められる(上記第3の3(4))。 b これに対して、甲1には、外縁部に切断起点領域を形成しないことで、半導体基板全体として機械的強度を向上させることや、切断起点領域を半導体基板の内部に収めることで、改質領域を形成する際のガスの発生を防止することについて、何ら記載されておらず、切断予定ライン5が加工対象物1(半導体基板)のどの部分に位置するのかを特定する記載もない。 c そして、甲1の図19及び20を参照しても、切断予定ライン5が加工対象物1のどの部分に位置するのかは明らかでない。 また、図16を参照すると、加工対象物1(半導体基板)に切断予定ライン5を設けることが示されているが、図16には、「外縁部」(半導体基板を取り囲む端の一定の幅をもった部分)に当たる部分は特定されておらず、そのため、「内側部分」(半導体基板の外縁部以外の部分)がどこであるかは不明であって、切断予定ライン5が加工対象物1の「外縁部」にかからないように「内側部分」に設定されていることを見て取ることはできない。 d したがって、請求人の上記(ア)の主張は採用できない。 (2)甲2に記載された技術的事項及び甲2発明 ア 甲2に記載された技術的事項 甲2の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 (ア)甲2には、基板上に窒化物半導体が積層された半導体ウエハーから窒化物半導体素子を分割する製造方法(【0001】)が記載されており、当該加工方法は、窒化物半導体ウエハーを分割する際に、切断面のクラック、チッピングの発生をより少なくし、歩留りよく所望の形、サイズに分離された窒化物半導体素子を量産性良く形成することができる製造方法を提供することを目的とする(【0012】)。 (イ)上記(ア)の目的は、半導体ウエハーの特定箇所にレーザーを照射することにより達成される(【0019】)ところ、分離端面がブレイクラインに沿って平坦に形成される理由は、溝部形成に伴って溝部近傍に内部応力が生じ、その内部応力とブレイク・ラインが切断端面形状に大きく関係していると考えられ(【0020】)、ダイサーにより形成された溝部に生じる内部応力のみに依存するのではなく、レーザースクライバーにより発生する局所的な応力と相まって、分離端面を平滑にし、量産性の良い窒化物半導体素子を製造することができる(【0022】)。 (ウ)実施例1は、ダイサーにより窒化物半導体ウエハーに溝部103を形成し(【0043】)、YAGレーザー照射装置のレーザーの焦点を溝部103底面に集光するようにレーザーの光学系を調節させ、レーザー光線を照射させながらステージを移動させることにより溝部103の底面に沿った凹部となるように、ブレイク・ライン104を形成する(【0044】)。 (エ)実施例2は、実施例1のレーザー照射装置における焦点深さをレーザーの光学系を調整させて深くさせた以外は、実施例1と同様にしてブレイク・ラインを形成させること(【0048】)で、ブレイク・ライン204は基板201の表面となる溝部203に凹部は形成されていないが、基板201内部に加工変質部として形成されている(図2(C))。 (オ)実施例2は実施例1のレーザー照射装置の焦点深さを深くした以外は実施例1と同様であるから、実施例2の基板201の上方の表面には、実施例1の溝部103と同様の溝部203が形成され、基板201の他方の表面には、島状窒化物半導体102(【0042】)と同様の島状窒化物半導体202が形成されており、ブレイク・ライン204を形成する際には、実施例1のブレイク・ライン104と同様に、YAGレーザー照射装置による照射や、レーザー光学系による集光、ステージの移動が行われている。 (カ)甲2には、レーザー照射装置の制御やステージの移動を制御するための制御装置は明記されていないが、そのような制御装置が存在することは、当業者にとって自明な事項といえる。 イ 甲2発明 上記アの技術的事項のうち、実施例2に係る事項を本件発明1の分説に合わせて整理すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているということができる。(甲2発明の分説の符号は、本件発明1の分説の符号に対応して「2a」などと記載する。) 「2a:基板201の上方の表面に溝部203が形成され、他方の表面に島状窒化物半導体202が形成された半導体ウエハー200の基板201(上記ア(オ))の溝部203の内部に、加工変質部を形成する(上記ア(エ))レーザー加工機であって、 2b:前記基板201が載置されるステージ(上記ア(オ))と、 2c:レーザー光線を照射するYAGレーザー照射装置(上記ア(オ))と、 2d:前記ステージに載置された前記基板201上の溝部203の内部側に、YAGレーザー照射装置から発振されたレーザー光線を集光し、そのレーザー光線の焦点の位置で前記加工変質部を形成させるレーザーの光学系(上記ア(オ))と、 2e:前記加工変質部を前記基板201上の溝部203の内部側に形成するために、YAGレーザー照射装置から発振されたレーザー光線の焦点を前記基板201上の溝部203の内部側に位置させた状態で、前記基板201のブレイク・ライン204に沿ってYAGレーザー照射装置から発振されたレーザー光線の焦点を移動させる制御部(上記ア(カ))と、を備える、 2i:レーザー加工機。」 ウ 甲2発明の認定に対する請求人の主張について (ア)請求人の主張の概要 a 甲2には、ダイサーにより基板に予め溝部を形成しておくと、切断面の形状に関係する内部応力を生じさせることになり、ダイヤモンドスクライバーでは正確にウェハーを分離できなくなることから、ダイサーにより生じた内部応力に依存することなく、レーザースクライバーによる基板の分割に寄与する局所的な応力を発生することによって、切断端面が綺麗であり量産性の良い窒化物半導体素子を製造できることが記載されている。 b 甲2の【0022】の前段と後段との間が、「また」という接続詞で接続されているが、前段において、「端面が綺麗(平滑)であり量産性の良い窒化物半導体素子を製造することができる」と記載されており、溝を設けない構成であっても課題を解決し効果を奏することのできる1つの発明として記載されていることを理解でき、「また」以下で記載されているのは、半導体ウェハーの厚みを薄くするために「溝」を形成することであって、内部応力を生じさせるために溝を形成することではない(十分に薄い半導体ウェハーであれば、溝を形成する必要はない)。 c 以上のとおり、甲2に記載の発明において、基板に溝部203を設けることを必須の構成と捉えるのは誤りである。(請求人要領書38~40ページ) (イ)請求人の主張の検討 a 甲2の【0020】は、「本発明の方法による分離端面がブレイクラインに沿って平坦に形成される理由は定かではないが溝部形成に伴って溝部近傍に内部応力が生ずること及びその内部応力とブレイクラインが切断端面形状に大きく関係していると考えられる。」と記載しており、分離端面が平坦に形成される理由について、溝部形成に伴う内部応力と、レーザー照射により形成されるブレイク・ラインの双方が関与していることを示している。 b そして、甲2の【0020】ないし【0022】の記載は一連のものとなっており、【0020】のとおり、溝部の形成により生じた内部応力も割断に作用することを前提とした上で、ダイサーやダイヤモンドスクライバー等により溝部を形成し、溝部の底面に沿ってダイヤモンドスクライバーによるスクライブ・ラインを形成する場合に、溝部形成により生じ、半導体ウエハー内に保持された応力により所望どおりの端面が形成されないという問題点(【0021】)について、【0022】前段で、ダイサーによる溝部形成のために生じた内部応力のみに依存するのではなく、レーザースクライバーにより発生した局所的な応力と相まって、端面がきれいで量産性のよい窒化物半導体を製造することが記載されていると理解できる。 c そうすると、甲2の【0022】前段は、溝部を形成し、溝部にスクライブ・ラインを形成する発明を前提としてその改善を図るものであることは明らかであり、甲2発明において溝部を形成しないことが想定されているとはいえない。 d したがって、請求人の上記(ア)の主張は採用できない。 (3)甲4に記載された技術事項 甲4の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 半導体ウエハの結晶欠陥を観察するために、試料表面像を微分干渉顕微鏡により観測し、試料内部像を光学顕微鏡で観測し、これらの像を同一視野内でオーバーラップさせて観察できる試料観察装置であって、光学顕微鏡の第2のハロゲンランプ13からの赤外光が試料6(半導体ウエハ)の裏面から試料6に照射されて試料6を透過し、対物レンズ8、接眼レンズ10等を経て、試料6の内部像としてモニタテレビジョン12の画面上に写し出され、他に、微分干渉顕微鏡により観測された試料6の表面像とオーバーラップして、試料6の結晶欠陥を観察できる試料観察装置。 (4)甲5に記載された技術事項 甲5の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 半導体ウエハ等の微少なクラックなどの欠陥を検査する赤外検査装置(【0005】)であって、検査装置の赤外光源10から出射した赤外線12は、被検体1を裏面から照射して、透過した赤外線13となり、赤外線レンズ14によって被検体の像となって、赤外線カメラ15でビデオ信号に変換されて、モニタ16で映像にして表示されるが、クラックの部分とそれ以外の部分とは赤外線の透過状態が異なるために、モニタ画像を目視で検査することで微少なクラックも容易に発見することができる(【0020】)赤外検査装置。 (5)甲6に記載された技術事項 甲6の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 赤外線を利用した撮像により、半導体ウェーハ等の内部に形成された回路面の領域を検出する方法(【0001】)であって、発光体26が赤外線成分を含む光を半導体ウェーハ10に照射し、光学手段24の対物レンズ29が半導体ウェーハ10において反射した光の焦点位置を、予め設定した半導体ウェーハ10の回路面のZ軸上の位置に合わせて、撮像手段25によって撮像することで、半導体ウェーハ等の内部に形成された回路面の領域を検出する(【0024】)方法。 この方法は、半導体ウェーハを切削(ダイシング)する際に行う切削領域の検出や、切削領域であるストリート13と切削ブレード23との位置合わせ(アライメント)、切削途中における切削状況の監視等に利用できる(【0031】)。 (6)甲7に記載された技術事項 甲7の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 半導体ウェハからチップを切り出すためにウェハをスクライブするウェハスクライブ装置(【0001】)であって、半導体ウェハ1をスクライブするツール3、半導体ウェハ1を吸着固定するガラスプレート4、ウェハ1を位置決めするXYθテーブル5、赤外光を出射する赤外光源6、赤外光による半導体ウェハ1の透過映像を撮像する赤外カメラ7、及び、赤外カメラ7で撮像した透過映像から切り出すべきチップ2の位置を認識する画像認識ユニット8で構成され(【0009】)、赤外光源6から赤外光を半導体ウェハ1に出射し、その透過光を赤外カメラ7で撮像することでスクライブする線を検出し、XYθテーブル5により半導体ウェハ1を位置決めし、ツール3で半導体ウェハ1の裏面をスクライブする(【0011】)スクライブ装置。 (7)甲8に記載された技術事項 甲8の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 半導体ウエハを個々の半導体チップに分割する方法(【0001】)であって、半導体ウエハ10の半導体素子Aが形成されている面10aが覆われるように仮止シート材12を貼り付け(【0010】)、シート材12外側に赤外線ランプ15を配設し、ウエハ10を挟んで赤外線ランプ15と対向する位置に赤外線カメラ16を配設し、赤外線ランプ15から半導体ウエハ10に向かって赤外光Rを照射し、半導体ウエハ10を透過した赤外光Rを赤外線カメラ16によって捕らえてCRTモニター17に映し出して、半導体ウエハ10上の半導体素子Aの配置構成を確認して、ダイヤモンドカッタ13によって半導体ウエハ10の半導体素子が形成されていない面10bにスクライブライン(分割用切込み)14を形成し(【0011】)、回転ローラ18で半導体ウエハ10を撓ませて、半導体ウエハ10をスクライブライン14に沿って各半導体チップ11毎に分割する(【0012】)方法。 (8)甲9に記載された技術事項 甲9の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 半導体LSIチップをウエハ状態で電気検査をする際に使うプロービング用の端子が形成されたプローブウエハを被検査ウエハ上に正確にアライメントし、プロービングを行なうウエハプロービング装置(【0001】)であって、赤外光照明装置1で被検査ウエハ10の裏面から赤外光を照射し、対物レンズ4に、被検査ウエハ10及びプローブウエハ2を透過した赤外光を通過させ、当該対物レンズ4は、被検査ウエハ10のパターン面の焦点とプローブウエハ2のプロービング端子の焦点が、それぞれ別の波長において同時に合うような色収差を持つように構成されている(【0022】)ことから、被検査ウエハ10のパターン面上に焦点があう光の波長のみを透過するダイクロイックフィルタ5(【0023】)を通して被検査ウエハ10のパターンの像を撮像し、プローブウエハ2のプロービング端子に焦点が合う光の波長のみを透過するダイクロイックフィルタ6(【0023】)を通してプローブウエハ2のプロービング端子の像を撮像することができ、それぞれの像を画像処理装置で処理して、相対位置から位置ズレ量を算出して、位置ズレ量を補正するように検査ステージを駆動してアライメントして(【0024】)、プロービングを行なうウエハプロービング装置。 (9)甲10に記載された技術事項 甲10の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 基板上へ半導体素子を搭載する半導体素子搭載装置(【0001】)であって、半導体素子搭載装置100は、XYθステージ11と、吸着アーム13を有するハンド12と、赤外線カメラ14と、赤外線用光源15と、光ビーム照射用集光レンズ16と、シャッター17と、モニタ21と、制御系22と、操作パネル23と、プリアライメントステージ24とを有して構成され(【0016】)、光デバイス30を吸着ハンド12の吸着アーム13で吸着して、基板40の上方に若干の隙間を空けて保持し(【0025】)、光源15からの赤外線を基板40及び光デバイス30に照射して、透過画像を赤外線カメラ14で撮影してモニタ21に映し出し(【0026】)、透過画像中の基板40及び光デバイス30の2対のパターンから、基板40及び光デバイス30の位置ズレ量及び角度ズレ量を算出し、XYθステージ11を操作パネル23で制御し、光デバイス30と基板40の精密な位置合わせを行い(【0027】)、位置合わせ後、基板40と光デバイス30の間に設けた若干の隙間を無くして、基板40と光デバイス30を接触させて(【0028】)、加熱用光を集光して接合個所を局部加熱してはんだ層を溶融し、基板40と光デバイス30を固定する(【0029】)半導体素子搭載装置。 (10)甲11に記載された技術事項 甲11の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 LSIなどの金属配線を切断したり、多層薄膜回路基板の上層のみを除去する場合、これら切断や除去などの加工を正しく行うために、加工状態をモニタしてレーザパワーなどを制御する必要があること。 (11)甲21に記載された技術事項 甲21の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 直線偏光をしたレーザ光の向きが、加工対象物の切断予定ラインと沿うようにして、レーザ光を照射することにより、1パルスのレーザ照射で形成された改質スポットの切断予定ラインに沿った方向の寸法を相対的に大きくすることができることを実験的に確認する(【0052】)ために、直線偏光のパルスレーザ光を照射したサンプル1(図14)と、円偏光のパルスレーザ光を照射したサンプル2(図15)の平面の写真を撮像すること。 (12)甲22に記載された技術事項 甲22の記載事項からみて、以下の技術的事項を理解できる。 直線偏光をしたレーザ光の向きが、加工対象物の切断予定ラインと沿うようにして、レーザ光を照射することにより、1パルスのレーザ照射で形成された改質スポットの切断予定ラインに沿った方向の寸法を相対的に大きくすることができることを実験的に確認する(【0029】)ために、直線偏光のパルスレーザ光を照射したサンプル1(図14)と、円偏光のパルスレーザ光を照射したサンプル2(図15)の平面の写真を撮像すること。 3 無効理由1(甲1に基づく進歩性欠如について) (1)無効理由1の1(甲1に基づく本件発明1の進歩性欠如について) ア 本件発明1と甲1発明の対比 (ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、次の甲1発明の欄に記載した甲1発明の各構成は、本件発明1の欄に記載した本件発明1の構成に、それぞれ相当する。 <甲1発明> <本件発明1> (構成1a) (構成A) 加工対象物1・・・・・・・・・・・・半導体基板 切断の起点となる改質領域・・・・・・切断の起点となる改質領域 レーザ加工装置・・・・・・・・・・・レーザ加工装置 (構成1b) (構成B) 載置台107・・・・・・・・・・・・載置台 (構成1c) (構成C) レーザ光L・・・・・・・・・・・・・レーザ光 レーザ光源101・・・・・・・・・・レーザ光源 (構成1d) (構成D) 集光用レンズ105・・・・・・・・・集光用レンズ (構成1e) (構成E) 切断予定ライン5・・・・・・・・・・切断予定ライン ステージ制御部115・・・・・・・・制御部 (構成1i) (構成I) レーザ加工装置100・・・・・・・・レーザ加工装置 (イ)また、甲1発明の構成1gの「前記加工対象物1の表面を撮像する赤外線用の撮像素子121」と、本件発明1の構成Gの「前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」を対比すると、「前記半導体基板の赤外線を撮像可能な撮像素子」という点で一致する。 (ウ)そうすると、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致し、次の点で相違する。 <一致点> 「半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記半導体基板が載置される載置台と、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 前記半導体基板の赤外線を撮像可能な撮像素子と、 を備えた、 レーザ加工装置。」 <相違点1> 本件発明1は、「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と、前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」(構成F及びG)を備えているのに対して、甲1発明は、「前記加工対象物1の表面を撮像する赤外線用の撮像素子121」(構成1g)を備えているものの本件発明1の構成F及びGを備えていない点。 <相違点2> 本件発明1は、「前記切断予定ラインは、前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」(構成H)のに対して、甲1発明は、切断予定ライン5の始点や終点がどの位置なのか不明な点。 イ 相違点1の判断 (ア)相違点1に係る本件発明1の構成F及びGの技術的意義は、半導体基板を赤外透過照明による赤外線で照明するとともに、改質領域を撮像素子で撮像することで、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することができ、溶融処理領域の位置や大きさ等を調節することが可能となり、その調節により、基板の表面及び裏面に割れが到達しないように制御したり、切断直前に基板の表面及び裏面に割れが到達するように制御を行うことができる、というものと認められる(上記第3の3(3))。 (イ)他方、甲1には、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する必要性について、明示的には全く記載されておらず、甲1発明の撮像素子121は、レーザ光Lの反射光を利用してフォーカス調整を行うためのものにすぎない(上記2(1)ア(キ))から、甲1に接した当業者が、相違点1に係る構成F及びGを採用する動機があるとはいえない。 (ウ)また、甲4~10に記載された技術的事項は、上記2(3)~(9)に示すとおりであるところ、改質領域を撮像することや、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することについて、明示的には全く記載されておらず、ましてや、当該確認に基づき基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを調節することにより、基板の表面及び裏面に割れが到達しないように制御したり、切断直前に基板の表面及び裏面に割れが到達するように制御を行うことについては記載も示唆もないから、甲4~10に接した当業者が、甲4~10に記載された技術的事項について、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認するための手段として認識するとはいえない。 したがって、仮に、甲1に基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する動機があったとしても、当業者が、そのための手段として、甲4~10に記載された技術的事項を採用することを想到するとはいえない。 (エ)次に、甲21~22に記載された技術的事項は、上記2(11)~(12)に示すとおりであって、改質領域を写真で撮影することが示されている。しかし、当該写真は、直線偏光をしたレーザ光の向きを、加工対象物の切断予定ラインと沿うようにして照射することにより、切断予定ラインに沿った方向(平面的な方向)の改質領域の寸法(平面的な方向の長さ)を相対的に大きくできることを確認するために撮影されたものである。すなわち、甲21~22の写真は、切断予定ラインに沿った平面的な方向の改質領域の長さを確認するためのものであって、当該写真によって、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することまでは示されていない。 したがって、甲21~22に接した当業者が、甲21~22に記載された技術的事項について、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する手段として認識するとはいえない。 (オ)また、甲21~22の写真は、直線偏光のレーザ光による加工と、その加工により生じる切断予定ラインに沿った方向の改質領域の寸法の関係を「実験的」に明らかにすることを目的として撮影されたものであるから、直線偏光のレーザ光により切断予定ラインに沿った方向の改質領域の寸法を大きくできることが明らかになれば、繰り返して写真を撮影する必要はなく、甲21~22に接した当業者は、甲21~22に記載された技術的事項について、レーザ加工装置に常設して、定常的に撮影を行う手段として認識するとはいえない。 したがって、仮に、甲1に基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する動機があったとしても、当業者が、そのための手段として、甲21~22に記載された技術的事項を採用することを想到するとはいえない。 (カ)そして、請求人が提出したその他の甲号証を参照しても、改質領域を撮像することや、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することについて、記載や示唆はない。 (キ)上記(イ)~(カ)に示すとおり、甲1には、相違点1に係る構成を採用する動機が示されておらず、甲4~10、甲21及び22、並びに、その他の甲号証に接した当業者が、それらに記載された技術的事項を甲1発明に適用することを想到するとはいえないから、相違点1は、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ 相違点1に対する請求人の主張について (ア)請求人の主張の概要 a ウェハ状の加工対象物を切断する技術の分野において、赤外光(赤外線)を半導体ウェハに照射して、半導体ウェハを透過した赤外光を測定することで、半導体ウェハ内部の状態を観察することは、優先日以前より普通に行われていたこと(甲4~5)であり、レーザ光の照射により加工対象物を切断するものにおいて、加工対象物を透過する赤外線の照射により、切断時の検査・観察を行うことも周知技術(甲6~10)であり、また、ウェハのレーザ加工時に加工状態を観察する課題は、優先日当時において、当業者にとって自明である(甲11)。 b 甲1発明は、シリコンウェハの内部にレーザ光を集光させて、「改質領域」を生成させるものであるところ、ウェハのレーザ加工時に加工状態を観察する課題は、優先日当時に自明であるから、甲1発明において、外部から視認し得ない「改質領域」の様子を、赤外線により検査・観察して、所望どおりに改質領域が生成されているかどうか確認する必要がある。 c したがって、当業者であれば、甲1発明において、レーザ加工時の加工状態を観察するために、上記aの周知技術を考慮して、シリコンウエハを赤外線で照明する赤外透過照明を設け、シリコンウエハを透過した赤外線が赤外線用の撮像素子121に入射するよう構成することは当業者にとって容易である。 d そして、内部に改質領域が形成されたシリコンウエハを透過した赤外線は、シリコンウエハ内部の改質領域の情報を含むのであるから、赤外線用の撮像素子121はシリコンウエハ内部の改質領域を撮像可能である。 よって、当業者が、甲1発明において相違点1に係る構成に想到することは容易である。(請求書25~29ページ) e 甲1の赤外線用の撮像素子121は、シリコン基板の内部に撮像素子121のフォーカスを合わせることで、シリコンウェハ内部の改質領域を撮像可能である。(請求人要領書26ページ) f また、甲1には、改質領域を撮像することは必要でないとは記載されておらず、甲1に接した当業者は、改質領域を撮像することを当然に想起する。 すなわち、甲1発明は、シリコンウェハの内部にレーザ光を集光させて、「改質領域」を生成させるものであり、甲1の【0035】及び図7には、レーザ光で形成される改質領域の大きさと、レーザ光のピークパワー密度との関係が示されていることから、改質領域の大きさを調整する必要があることを開示ないし示唆しており、改質領域の大きさを調整する甲1に接した当業者は、外部から視認できない改質領域の様子を、赤外線等により検査・観察して、所望どおりに改質領域が生成されているかどうか確認する必要があると認識する。(請求人要領書27~32及び34ページ) g 甲1の【0054】~【0056】、【0072】には、レーザ光の集光点の位置に応じてレーザ光を調整することが記載されているから、レーザ光の集光点の位置すなわち改質領域の配置を確認しつつ、レーザ光や光学系を各種調整する必要があることが開示ないし示唆されているといえる。(請求人要領書33ページ) h 本件特許に係る出願の原出願日前に公開された甲21~22には、加工対象物の内部に形成された改質領域を撮影した写真が記載されており、加工対象物の内部に改質領域が形成されること及び改質領域の形状等を確認するために加工対象物の内部を観察することは、本件特許に係る出願の原出願日(及び優先日)前に当業者が当然に行っていたことである。(請求人要領書35~36ページ) i 甲1の【0035】、【0005】、【0038】、【0093】等によれば、シリコンウェハ内部における改質領域の形成状況(大きさや位置)を確認すべき必要性があることが理解できる。 そして、シリコンウェハの内部における改質領域の形成状況を目で視認することはできないものの、甲1の【0091】には、撮像素子121が、赤外線としてのレーザ光Lの照明光を撮像する例が記載されていること、及び、甲1の図13には、赤外光の波長を調整することでシリコン基板における赤外光の内部透過率が上昇することが記載されていることから、上記のとおり、シリコン基板の内部に形成される改質領域の大きさや位置を調整する必要があることを認識した当業者は、上記の甲1の記載から、シリコン基板を透過する赤外光を利用してその内部に形成される改質領域を撮像素子121で撮像することを直ちに想起するといえ、甲1は、実質的には、「半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明」を開示していると解される。 そして、甲1の記載から、シリコンウェハ内部における改質領域の形成状況を確認すべき必要性があることが理解でき、赤外光を用いればシリコンウェハ内部を観察できることは周知技術であるから、甲1に接した当業者は、甲1発明に周知技術を適用することに動機付けられる。(令和4年8月29日の上申書4~7ページ) (イ)請求人の主張の検討 a 請求人は、甲11に基づいて、ウェハのレーザ加工時に加工状態を観察する課題は、優先日当時において当業者にとって自明であると説明し、これを前提に、半導体ウェハ内部の状態を観察することが普通に行われており(甲4~5)、加工対象物を透過する赤外線の照射により、切断時の検査・観察を行うことも周知技術(甲6~10)であるから、甲1発明において相違点1に係る構成に想到することは容易である旨を説明している(上記(ア)a~e) しかし、甲11に記載された技術的事項は、上記2(10)のとおりであって、改質領域を観察することについては全く記載されていないから、改質領域を観察する課題が、優先日当時において当業者にとって自明であったとはいえない。 また、甲4~10に記載された技術的事項は、上記2(3)~(9)のとおりであって、改質領域を観察することについては全く記載されていないから、当業者が甲4~10に記載された技術的事項について、改質領域を観察するための手段として認識するとはいえない。 したがって、請求人の上記(ア)a~dの主張は採用できない。 b 請求人は、上記(ア)eにおいて、甲1の赤外線用の撮像素子121によりシリコンウェハ内部の改質領域を撮像可能である旨を主張しているところ、当該主張は、甲1の撮像素子121が、本件発明1の「改質領域を撮像可能な撮像素子」に相当することを意味すると解される。 しかし、甲1の赤外線用の撮像素子121は、仮に、シリコン基板の内部にフォーカスを合わせることが可能であれば、改質領域を撮像できたというものにすぎず、実際に、シリコン基板の内部にフォーカスを合わせることが可能であるかどうかは不明というほかない。 したがって、請求人の上記(ア)eの主張は採用できない。 c 請求人は、甲1の記載から、甲1に接した当業者は、改質領域を撮像することを当然に想起する旨を説明している(上記(ア)f、g、i)が、甲1には、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することや、その必要性について、何ら記載がないから、請求人の当該主張は採用できない。 d 請求人は、甲21~22に基づいて、改質領域の形状等を確認するために加工対象物の内部を観察することは、当業者が当然に行っていたことである旨を説明している(上記(ア)h)が、上記イ(エ)及び(オ)に説示するように、当業者は、甲21~22に記載された技術的事項について、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する手段として認識するとはいえないし、また、レーザ加工装置に常設して、定常的に撮影を行う手段として認識するとはいえないから、請求人の上記(ア)hの主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおり、相違点1は、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、請求人の無効理由1の1により、本件発明1に係る特許を無効とすることはできない。 (2)無効理由1の2(甲1に基づく本件発明2の進歩性欠如について) ア 本件発明2と甲1発明の対比 甲1発明の「加工対象物1」は、具体的にはシリコンウェハであること(上記2(1)ア(カ))から、甲1発明は、本件発明2の構成Qに相当する構成を実質的に備えているということができる。 また、甲1発明の「ステージ制御部115」が「載置台107」の移動を制御することは明らかであるから、甲1発明は、本件発明2の構成Rに相当する構成を実質的に備えているということができる。 そして、甲1発明のその他の構成は、本件発明1の対比(上記(1)ア(ア)及び(イ))と同様に対比することができるところ、本件発明2と甲1発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記半導体基板が載置される載置台と、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 前記半導体基板の赤外線を撮像可能な撮像素子と、 を備え、 前記半導体基板はシリコン基板であり、 前記制御部は、前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する レーザ加工装置。」 一方、本件発明2は、本件発明1の構成F及びGと同様の構成O及びPを備えているから、本件発明2と甲1発明は、上記(1)ア(ウ)に示す相違点1と同様の点で相違する。 イ 相違点1の判断 上記(1)イ(ア)~(キ)に説示する理由と同様の理由により、仮に、本件発明2の全部又は一部について優先権の効果が及ばないとしても、相違点1は、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ 小括 相違点1は、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明2は、仮に、本件発明2の全部又は一部について優先権の効果が及ばないとしても、甲1発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、請求人の無効理由1の2により、本件発明2に係る特許を無効とすることはできない。 4 無効理由2(甲2に基づく進歩性欠如について) (1)無効理由2の1(甲2に基づく本件発明1の進歩性欠如について) ア 本件発明1と甲2発明の対比 (ア)本件発明1と甲2発明を対比すると、次の甲2発明の欄に記載した甲2発明の各構成は、本件発明1の欄に記載した本件発明1の構成に、それぞれ相当する。 <甲2発明> <本件発明1> (構成2a) (構成A) 基板201の上方の表面に 溝部203が形成され、他方の表面に 島状窒化物半導体202が形成された 半導体ウエハー200の基板201・・・半導体基板 溝部203の内部・・・・・・・・・・・内部 加工変質部・・・・・・・・・・・・・切断の起点となる改質領域 レーザー加工機・・・・・・・・・・・レーザ加工装置 (構成2b) (構成B) ステージ・・・・・・・・・・・・・・載置台 (構成2c) (構成C) レーザー光線を照射する・・・・・・・レーザ光を出射する YAGレーザー照射装置・・・・・・・レーザ光源 (構成2d) (構成D) レーザーの光学系・・・・・・・・・・集光用レンズ (構成2e) (構成E) 焦点・・・・・・・・・・・・・・・・集光点 ブレイク・ライン204・・・・・・・切断予定ライン 制御部・・・・・・・・・・・・・・・制御部 (構成2i) (構成I) レーザ加工機・・・・・・・・・・・・レーザ加工装置 (イ)そうすると、本件発明1と甲2発明は、次の点で一致し、次の点で相違する。 <一致点> 「半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記半導体基板が載置される載置台と、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 を備えた、 レーザ加工装置。」 <相違点3> 本件発明1は、「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と、前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」を備えているのに対して、甲2発明は、赤外透過照明や撮像素子を備えていない点。 <相違点4> 本件発明1は、「前記切断予定ラインは、前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する、」のに対して、甲2発明は、ブレイク・ライン204の始点や終点がどの位置なのか不明な点。 イ 相違点3の判断 (ア)相違点3に係る本件発明1の構成F及びGの技術的意義は、上記第3の3(3)に示すとおりであるが、甲2には、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する必要性について、明示的には何ら記載されていないから、甲2に接した当業者が、相違点3に係る構成F及びGを採用する動機があるとはいえない。 (イ)また、相違点1について説示したように、甲4~10に接した当業者が、甲4~10に記載された技術的事項について、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認するための手段として認識するとはいえないから、仮に、甲2に基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する動機があったとしても、当業者が、そのための手段として、甲4~10に記載された技術的事項を採用することを想到するとはいえない。 (ウ)さらに、相違点1について説示したように、甲21~22に接した当業者が、甲21~22に記載された技術的事項について、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認するための手段として認識するとはいえないし、甲21~22に記載された技術的事項について、レーザ加工装置に常設して、定常的に撮影を行う手段として認識するとはいえないから、仮に、甲2に基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認する動機があったとしても、当業者が、そのための手段として、甲21~22に記載された技術的事項を採用することを想到するとはいえない。 (エ)そして、請求人が提出したその他の甲号証を参照しても、改質領域を撮像することや、基板の厚さ方向における改質領域の位置や大きさを確認することについて、記載や示唆はない。 (オ)上記(ア)~(エ)に示すとおり、甲2には、相違点3に係る構成を採用する動機が示されておらず、甲4~10、甲21及び22、並びに、その他の甲号証に接した当業者が、それらに記載された技術的事項を甲2発明に適用することを想到するとはいえないから、相違点3は、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ 相違点3に対する請求人の主張について (ア)請求人の主張の概要 a ウェハ状の加工対象物を切断する技術の分野において、赤外光(赤外線)を半導体ウェハに照射して、半導体ウェハを透過した赤外光を測定することで、半導体ウェハ内部の状態を観察することは、優先日以前より普通に行われていたこと(甲4~5)であり、レーザ光の照射により加工対象物を切断するものにおいて、加工対象物を透過する赤外線の照射により、切断時の検査・観察を行うことも周知技術(甲6~10)であり、また、ウェハのレーザ加工時に加工状態を観察する課題は、優先日当時において、当業者にとって自明である(甲11)。 b 甲2発明は、窒化物半導体が形成された半導体ウェハーの内部にレーザ光を集光させて、その部分に「加工変質部」を生成させるものであり、外部から視認し得ない当該「加工変質部」の様子を、半導体ウェーハーを透過する赤外線により検査・観察して、所望どおりに加工変質部が生成されているかどうか確認する必要がある。 c したがって、甲2発明において、加工対象物を透過する赤外線の照射により、切断時の検査・観察を行う上記aの周知技術を採用し、加工対象物の切断時の検査・観察を行う構成を付加すること(すなわち、相違点3に係る構成とすること)は、当業者が容易に想到できたものである。(請求書35~39ページ) (イ)請求人の主張の検討 請求人の主張は、無効理由1の1における主張(上記3(1)ウ(ア)a~c)と同趣旨のものであるから、上記3(1)ウ(イ)aに説示する理由と同様の理由により、採用できない。 エ 小括 以上のとおり、相違点3は、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえないから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、請求人の無効理由2の1により、本件発明1に係る特許を無効とすることはできない。 (2)無効理由2の2(甲2に基づく本件発明2の進歩性欠如について) ア 本件発明2と甲2発明の対比 甲2発明の「制御部」が「レーザー光線の焦点」の移動を制御することは明らかであるから、甲2発明は、本件発明2の構成Rに相当する構成を実質的に備えているということができる。 そして、甲2発明のその他の構成は、本件発明1の対比(上記(1)ア(ア)及び(イ))と同様に対比することができるところ、本件発明2と甲2発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「半導体基板の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記半導体基板が載置される載置台と、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために、レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で、前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と、 を備え、 前記制御部は、前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する レーザ加工装置。」 一方、本件発明2は、本件発明1の構成F及びGと同様の構成O及びPを備えているから、本件発明2と甲2発明は、上記(1)ア(イ)に示す相違点3と同様の点で相違し、さらに以下の点でも相違する。 <相違点5> 本件発明2の半導体基板は、「シリコン基板」であるのに対して、甲2発明の「半導体ウエハー200の基板201」は、シリコン基板ではない点。 イ 相違点3の判断 上記(1)イ(ア)~(オ)に説示する理由と同様の理由により、仮に、本件発明2の全部又は一部について優先権の効果が及ばないとしても、相違点3は、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ 小括 相違点3は、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて、本件特許に係る出願の原出願日当時の当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明2は、仮に、本件発明2の全部又は一部について優先権の効果が及ばないとしても、甲2発明、甲4~10、甲21及び22並びにその他の甲号証に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、請求人の無効理由2の2により、本件発明2に係る特許を無効とすることはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、無効理由1の1~2の2はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1及び2についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800045

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