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特許無効審判

2021-800050

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

審判番号
2021-800050
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2004-004304
登録番号
4509578
請求日
2021年06月22日
審決日
2022年08月09日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 東京精密
  • 【請求人代理人】小林 浩
  • 【請求人代理人】服部 誠
  • 【請求人代理人】中村 閑
  • 【請求人代理人】柿本 祐依
  • 【請求人代理人】相田 義明
  • 【請求人代理人】山下 崇
  • 【請求人代理人】新井 剛
  • 【被請求人】浜松ホトニクス 株式会社
  • 【被請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【被請求人代理人】小曳 満昭
  • 【被請求人代理人】柴田 昌聰
  • 【被請求人代理人】河合 哲志
  • 【被請求人代理人】佐藤 慧太
  • 【被請求人代理人】設樂 隆一
  • 【被請求人代理人】深沢 正志
  • 【被請求人代理人】今村 玲英子
  • 【被請求人代理人】尾関 孝彰
  • 【被請求人代理人】松本 直樹
  • 【被請求人代理人】大澤 恒夫
審判長/審判官
  • 審判長 見目 省二
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1123.121-Y (B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4509578号発明「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許第4509578号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る発明についての出願は、平成16年1月9日に出願したものであって、平成22年5月14日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされた。 2 令和3年6月22日に、請求人株式会社東京精密(以下、「請求人」という。)より「特許第4509578号の特許請求の範囲の請求項8、11に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との特許無効審判請求がなされた。 3 令和3年9月10日に、被請求人浜松ホトニクス株式会社(以下、「被請求人」という。)より答弁書が提出され、同年11月30日付けで審理事項通知がされ、同年12月24日に請求人より口頭審理陳述要領書(以下、「請求人陳述要領書」という。)が提出され、同日に被請求人より口頭審理陳述要領書(以下、「被請求人陳述要領書」という。)が提出され、同4年2月1日に口頭審理が行われた。同月22日に請求人より上申書(以下、「請求人上申書1」という。)が提出され、同日に被請求人より上申書(以下、「被請求人上申書」という。)が提出され、同月24日に請求人より上申書(以下、「請求人上申書2」という。)が提出された。 第2 本件発明 1 本件特許の特許請求の範囲に記載された発明のうち、本件無効審判請求の対象となる請求項8、11に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項8】 (1A) 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 (1B) 前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、 (1C) 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、 (1D) 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、 (1E) 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、 (1F) 前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、 (1G) 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、 (1H) 前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、 (1I) レーザ加工装置。」 「【請求項11】 (2A) 前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成し、 (2B) 更に、前記制御手段は前記レンズを前記主面に向かう方向に駆動させずに保持するように前記保持手段を制御すると共に、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御する、 (2C) 請求項8~10のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。」 (以下、請求項8、11に記載された発明をそれぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい、合わせて「本件発明」ともいう。本件発明について、請求人が請求書6-7ページで示す構成要素に従って、構成(1A)~(2C)に分説した。) 第3 請求の趣旨、請求人の主張する無効理由及び証拠方法 本件審判の請求の趣旨は、上記第1の2のとおりであり、請求人が審判請求書において主張する無効理由及び証拠方法は以下のとおりである(令和4年2月1日第1回口頭審理調書)。 1 無効理由1(進歩性欠如) ア 本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)に、甲第2号証ないし甲第7号証に記載の周知の課題を解決する手段である周知の技術的事項1(請求書17ページ(甲第3号証ないし甲第5号証))及び周知の技術的事項2(請求書18ページ(甲第6号証及び甲第7号証))を適用して、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 イ 周知の技術的事項1:請求書17ページ(甲第3号証ないし甲第5号証) 「レーザによるウェハ切断技術において、半導体ウェハの反りの影響によりレーザの集光点が相対的にずれていくことも本件特許の出願時における当業者にとって周知の課題であり、この課題の解決手段として、半導体ウェハの反りの状態を測定し、反りの状態に応じて集光用レンズを調整してレーザの集光点の位置を調整する技術」 ウ 周知の技術的事項2:請求書18ページ(甲第6号証及び甲第7号証) 「加工対象物であるシリコンウェハについて、本件特許の出願日において、ウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になることも周知の課題であり、そのような部分において合焦動作を一時的に停止させて焦点を固定することにより、光の合焦動作を改善すること」 2 証拠方法 請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第7号証を提出し、請求人陳述要領書に添付して甲第8-1号証ないし甲第13号証を提出し、請求人上申書1に添付して甲第14号証ないし甲第19号証を提出した。 甲第1号証 : 国際公開第02/22301号 甲第2号証 : 特開平6-122084号公報 甲第3号証 : 特開昭53-145564号公報 甲第4号証 : 特開平10-189496号公報 甲第5号証 : 特開2000-306865号公報 甲第6号証 : 特公平6-100711号公報 甲第7号証 : 特開平10-288734号公報 甲第8-1号証 : 志村 史夫著、「半導体シリコン結晶工学」、丸善株式会社、平成5年9月30日、p.104-111、144-151 甲第8-2号証 : (社)日本半導体製造装置協会、「半導体製造装置用語辞典」、第5版、日刊工業新聞社、2000年(平成12年)11月21日、p.136-137 甲第9号証 : 特開昭64-18594号公報 甲第10号証: 知財高裁平成28年(行ケ)第10119号判決 甲第11号証: 東京高裁平成14年(行ケ)第117号判決 甲第12号証: 「特技懇239号」、2005年(平成17年)11月14日、p.85-87 甲第13号証: 特開昭63-212911号公報 甲第14号証: 志村 史夫著、「半導体シリコン結晶工学」、丸善株式会社、平成5年9月30日、p.196-199 甲第15号証: 井入正博、古川章彦、「シリコンウエーハのそり」、応用物理、1977年(昭和52年)、第46巻、第12号、p.1211-1219 甲第16号証: 東京地裁平成30年(ワ)第28930号 原告第35準備書面 甲第17号証: 知財高裁平成27年(行ケ)第10149号判決 甲第18号証: 知財高裁平成26年(行ケ)第10079号判決 甲第19号証: 知財高裁平成27年(行ケ)第10094号判決 第4 答弁の趣旨、被請求人の主張の概要及び証拠方法 被請求人の答弁の趣旨は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」というものであり、その主張の概要及び証拠方法は以下のとおりである。 1 無効理由1(進歩性欠如)について 甲1発明のようなステルスダイシング技術を前提としたレーザ加工装置においては、「加工対象物の厚さ方向の集光点の位置を加工対象物の表面の変位に応じて制御しなければならない」という課題自体、あるいは、「加工対象物の厚さ方向の集光点の位置をそのように制御することが、切断品質の向上に有用である」という有用性自体が、全く知られていなかったものであるから、ステルスダイシング技術を前提としたレーザ加工装置の発明である甲1発明には、AF追従制御に係る構成(「前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成する、」という構成)を採用することに対する動機付けは皆無である。 したがって、甲1発明においては上記AF追従制御の構成を採用すること自体が容易想到ではなく、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到し得た構成ではない。 また、初期位置保持構成(「初期位置に前記レンズを保持した状態で前記第1のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除し」という構成)は、初期位置保持状態の解除後に上記AF追従制御がなされることを前提とした構成であるから、甲1発明において上記AF制御の構成を採用すること自体が容易想到でない以上、それだけで、初期位置保持構成を採用することも、当業者が容易に想到し得たことではない。 加えて、甲1発明のようなステルスダイシング技術を前提としたレーザ加工装置において、上記AF追従制御を採用しようとした場合に、加工対象物の端部において、集光レンズの動きのタイムラグにより、集光点の深さ方向の位置が、レーザ光で加工しようとしている深さ方向の位置とずれてしまうという課題が発生することも、そのような課題の解決手段も、本件特許の出願前には全く知られていなかったものである。 したがって、甲1発明において上記初期位置保持構成を採用することも、当業者が容易に想到し得たことではない。 2 証拠方法 被請求人は、証拠方法として、被請求人陳述要領書に添付して乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 乙第1号証 : 東京地裁平成30年(ワ)第28931号の甲第24号証として提出された被請求人社員の陳述書 乙第2号証 : 東京地裁平成30年(ワ)第28931号の甲第57号証として提出された被請求人社員の陳述書 乙第3号証 : 知財高裁平成27年(行ケ)第10149号判決 乙第4号証 : 知財高裁平成26年(行ケ)第10079号判決 乙第5号証 : 知財高裁平成27年(行ケ)第10094号判決 第5 甲第1号証ないし甲第7号証の記載 甲第1号証ないし甲第7号証は、請求人が上記第3の無効理由1で、本件発明1、2の進歩性欠如の根拠として提示した文献であるところ、それぞれ以下の事項が記載されている。 1 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、以下のとおり記載されている。(なお、下線部は、当審で付した。以下、同様。) (1)記載事項 ア 「レーザ応用の一つに切断があり、レーザによる一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウェハやガラス基板のような加工対象物の切断する箇所に、加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射し、レーザ光の吸収により切断する箇所において加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物を切断する。しかし、この方法では加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よって、加工対象物が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの表面に形成された半導体素子のうち、上記領域付近に位置する半導体素子が溶融する恐れがある。 ・・・加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面に、切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射していない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生することがある。」(1ページ9-最終行) イ 「本発明の目的は、加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することである。」(2ページ6-8行) ウ 「(1)本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する工程を備えることを特徴とする。」(2ページ9-11行) エ 「改質領域は、加工対象物の内部に合わされたレーザ光の集光点に対して、加工対象物を相対的に移動させることにより形成される。これによれば、上記相対的移動により、加工対象物の表面上の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成している。」(5ページ16-19行) オ 「(6)本発明に係るレーザ加工方法は、レーザ光の集光点を加工対象物のレーザ光の入射面を越して加工対象物の内部に合わせかつ加工対象物の厚み方向において厚みの半分の位置より入射面に近い位置又は遠い位置に調節して、加工対象物にレーザ光を照射することにより、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する工程を備えることを特徴とする。 本発明に係るレーザ加工方法によれば、レーザ光の集光点を加工対象物の厚み方向において厚みの半分の位置より入射面に近い位置に調節すると改質領域は加工対象物の内部中の入射面(例えば表面)側に形成され、一方、入射面に遠い位置に調節すると改質領域は加工対象物の内部中の入射面と対向する面(例えば裏面)側に形成される。切断予定ラインに沿った割れを加工対象物の表面又は裏面に生じさせると加工対象物を容易に切断できる。本発明に係るレーザ加工方法によれば、改質領域を加工対象物の内部中の表面側又は裏面側に形成できる。よって、切断予定ラインに沿った割れを表面又は裏面に形成されやすくすることができるので、容易に加工対象物を切断することができる。その結果、本発明に係るレーザ加工方法によれば効率のよい切断が可能となる。 本発明に係るレーザ加工方法おいて、入射面には電子デバイス及び電極パターンのうち少なくとも一方が形成されており、加工対象物に照射されるレーザ光の集光点は厚み方向において厚みの半分の位置より入射面に近い位置に調節される、ようにすることができる。本発明に係るレーザ加工方法によれば、改質領域からクラックを加工対象物の入射面(例えば表面)及び対向する面(例えば裏面)方向に成長させることにより、加工対象物が切断される。改質領域を入射面側に形成すると、改質領域と入射面の距離が比較的短いので、クラックの成長方向のずれを小さくできる。よって、加工対象物の入射面に電子デバイスや電極パターンが形成されている場合、電子デバイス等の損傷させることなく切断が可能となる。なお、電子デバイスとは半導体素子、液晶等の表示装置、圧電素子等を意味する。」(31ページ14行-32ページ14行) カ 「加工対象物に照射されるレーザ光の集光点の厚み方向における位置の調節は、加工対象物に照射されるレーザ光の集光点の厚み方向における所望の位置を入射面から内部までの距離とし、この距離を加工対象物に照射されるレーザ光に対する加工対象物の屈折率で除することにより、厚み方向における加工対象物の相対的移動量のデータを演算する演算工程と、加工対象物に照射されるレーザ光の集光点を入射面に位置させるのに必要な厚み方向における加工対象物の他の相対的移動量のデータを演算する他の演算工程と、他の相対的移動量のデータに基づいて加工対象物を厚み方向に相対的に移動させる移動工程と、移動工程後、相対的移動量のデータに基づいて加工対象物を厚み方向に相対的に移動させる他の移動工程と、を含むようにすることができる。これによれば、加工対象物の厚み方向におけるレーザ光の集光点の位置を、入射面を基準として加工対象物の内部の所定位置に調節している。すなわち、入射面を基準とする場合、加工対象物の厚み方向における加工対象物の相対的移動量と加工対象物に照射されるレーザ光に対する加工対象物の屈折率との積が入射面からレーザ光の集光点までの距離となる。よって、入射面から加工対象物の内部までの距離を、上記屈折率で除することにより得られた相対的移動量だけ加工対象物を移動させれば、レーザ光の集光点を加工対象物の厚み方向における所望の位置に合わせることができる。」(34ページ5-21行) キ 「これらの本発明に係るレーザ加工装置によれば、上記本発明に係るレーザ加工方法と同様の理由により、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることのないレーザ加工や、加工対象物の内部において加工対象物の厚み方向におけるパルスレーザ光の集光点の位置を制御したレーザ加工が可能となる。」(35ページ19-24行) ク 「(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm、外径4インチ)」(48ページ6行) ケ 「なお、上記条件により形成された溶融処理領域の厚さ方向の大きさは100μm程度である。」(48ページ24-25行) コ 「本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法について説明する。図14はこの方法に使用できるレーザ加工装置100の概略構成図である。レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90゜変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と、これら三つのステージ109、111、113の移動を制御するステージ制御部115と、を備える。」(50ページ17行-51ページ3行) サ 「Z軸方向は加工対象物1の表面3と直交する方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また、この集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が移動手段の一例となる。」(51ページ4-9行) シ 「第1例では加工対象物1の加工にパルスレーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。なお、本発明においてレーザ光はレーザビームを含む意味である。集光用レンズ105は集光手段の一例である。Z軸ステージ113はレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせる手段の一例である。集光用レンズ105をZ軸方向に移動させることによっても、レーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせることができる。」(51ページ16-21行) ス 「レーザ加工装置100はさらに、載置台107に載置された加工対象物1を可視光線により照明するために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119と、を備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ105との間にダイクロイックミラー103が配置されている。・・・可視光線がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表面3を照明する。 レーザ加工装置100はさらに、ビームスプリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子121及び結像レンズ123を備える。撮像素子121としては例えばCCD(charge-coupled device)カメラがある。切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像データとなる。 レーザ加工装置100はさらに、撮像素子121から出力された撮像データが入力される撮像データ処理部125と、レーザ加工装置100全体を制御する全体制御部127と、モニタ129と、を備える。撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うようにする。よって、撮像データ処理部125はオートフォーカスユニットとして機能する。・・・ 全体制御部127には、ステージ制御部115からのデータ、撮像データ処理部125からの画像データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部115を制御することにより、レーザ加工装置100全体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュータユニットとして機能する。 次に、図14及び図15を用いて、本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法を説明する。図15は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。加工対象物1はシリコンウェハである。 まず、加工対象物1の光吸収特性を図示しない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づいて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定する(S101)。次に、加工対象物1の厚さを測定する。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にして、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S103)。これは、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置するレーザ光Lの集光点を基準とした加工対象物1のZ軸方向の移動量である。この移動量を全体制御部127に入力される。 加工対象物1をレーザ加工装置100の載置台107に載置する。そして、観察用光源117から可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S105)。照明された切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3を撮像素子121により撮像する。この撮像データは撮像データ処理部125に送られる。この撮像データに基づいて撮像データ処理部125は観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点データを演算する(S107)。 この焦点データはステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置する。・・・ 全体制御部127には予めステップS103で決定された移動量データが入力されており、この移動量データがステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。 次に、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。そして、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って曲げることにより、加工対象物1を切断する(S115)。これにより、加工対象物1をシリコンチップに分割する。」(51ページ22行-54ページ13行) セ 「第1例によれば、加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば、半導体チップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留まりや生産性を向上させることができる。」(55ページ11-13行) ソ 「次に、図21に基づいて、第2例に係る光透過性材料の切断方法について説明する。・・・ 次に、切断対象材料の厚さを測定する(S205)。切断対象材料の厚さが測定されると、その測定結果に基づいて、レーザ光Lの集光点が切断対象材料の内部に位置するように、レーザ光Lの光軸方向における切断対象材料の表面(レーザ光Lの入射面)からのレーザ光Lの集光点の変位量(移動量)を決定する(S207)。レーザ光Lの集光点の変位量(移動量)は、切断対象材料の厚さ及び屈折率に対応して、たとえば切断対象材料の厚さの1/2の量に設定される。 図22に示されるように、実際のレーザ光Lの集光点Pの位置は、切断対象材料雰囲気(たとえば、空気)中の屈折率と切断対象材料の屈折率との違いにより、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lの集光点Qの位置よりも切断対象材料(圧電素子ウェハ31)の表面から深いところに位置するようになる。すなわち、空気中の場合、「レーザ光Lの光軸方向でのZ軸ステージ113の移動量×切断対象材料の屈折率=実際のレーザ光Lの集光点移動量」という関係が成り立つことになる。レーザ光Lの集光点の変位量(移動量)は、上述した関係(切断対象材料の厚さ及び屈折率)を考慮して設定される。その後、X-Y-Z軸ステージ(本実施形態においては、X軸ステージ109、Y軸ステージ111及びZ軸ステージ113により構成される)上に配置された載置台107に対してウェハシート33に保持された切断対象材料を載置する(S209)。切断対象材料の載置を終えると、観察用光源117から光を出射して、出射した光を切断対象材料に照射する。そして、撮像素子121での撮像結果に基づいて、レ一ザ光Lの集光点が切断対象材料の表面上に位置するようにZ軸ステージ113を移動させてフォーカス調整を行う(S21l)。ここでは、観察用光源117によって得られる圧電素子ウェハ31の表面観察像を撮像素子121により撮像し、撮像データ処理部125が、撮像結果に基づいて、観察用光源117から出射された光が切断対象材料の表面上で焦点を結ぶようにZ軸ステージ113の移動位置を決定し、ステージ制御部115に出力する。ステージ制御部115は、撮像データ処理部125からの出力信号に基づいて、Z軸ステージ113の移動位置が、観察用光源117から出射された光が切断対象材料の表面上に焦点を結ぶ、すなわちレーザ光Lの集光点を切断対象材料の表面上に位置させるための位置となるようにZ軸ステージ113を制御する。 観察用光源117から出射された光のフォーカス調整が終わると、レ一ザ光Lの集光点を切断対象材料の厚さ及び屈折率に対応した集光点に移動させる(S213)。ここでは、切断対象材料の厚さ及び屈折率に対応して決定されたレーザ光Lの集光点の変位量分だけZ軸ステージ113をレーザ光Lの光軸方向に移動させるように、全体制御部127がステージ制御部115に出力信号を送り、出力信号を受けたステージ制御部115がZ軸ステージ113の移動位置を制御する。上述したように、切断対象材料の厚さ及び屈折率に対応して決定されたレーザ光Lの集光点の変位量分だけZ軸ステージ113をレーザ光Lの光軸方向に移動させることにより、レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置が完了する(S215)。 レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置が完了すると、レーザ光Lを切断対象材料に照射すると共に、所望の切断パターンにしたがってX軸ステージ109及びY軸ステージ111を移動させる(S217)。」(57ページ9行-59ページ9行) タ 「また、レーザ加工装置100において、Z軸ステージ113を移動させることによりレーザ光Lのフォーカス調整を行うようにしているが、これに限られることなく、集光用レンズ105をレーザ光Lの光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うようにしてもよい。」(64ページ22-25行) チ 「また、撮像素子121として赤外線用のものを用いることにより、レーザ光Lの反射光を利用してフォーカス調整を行うことができる。この場合には、ダイクロイックミラー103を用いる代わりにハーフミラーを用い、このハーフミラーとレ一ザ光源101との間にレーザ光源101への戻り光を抑制するような光学素子を配設する必要がある。なお、このとき、フォーカス調整を行うためのレーザ光Lにより切断対象材料にダメージが生じないように、フォーカス調整時にレーザ光源101から照射されるレーザ光Lの出力は、クラック形成のための出力よりも低いエネルギー値に設定ことが好ましい。」(65ページ12-19行) ツ 「次に、図40及び図43を用いて、本実施形態の第3例に係るレーザ加工方法を説明する。図43は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。加工対象物1はシリコンウェハである。ステップS101~ステップS111までは図15に示す第1例と同じである。・・・レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3のY軸方向に延びた切断予定ライン5に照射する。図44は加工対象物1の平面図である。レーザ光Lの楕円偏光EPの楕円を表す長軸が加工対象物1の一番右の切断予定ライン5に沿うようにして、加工対象物1にレーザ光Lが照射される。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。切断予定ライン5に沿うようにY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する。 そして、X軸ステージ109を移動させてレーザ光Lを隣の切断予定ライン5に照射し、上記と同様にして溶融処理領域を隣の切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する。これを繰り返すことにより、右から順に各切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に溶融処理領域を形成する(S127)。」(76ページ14行-77ページ16行) テ 「次に、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3のX軸方向に延びた切断予定ライン5に照射する。図46は加工対象物1の平面図である。レーザ光Lの楕円偏光EPを表す楕円の長軸の方向が加工対象物1の一番下のX軸方向に延びた切断予定ライン5に沿うようにして、加工対象物1にレーザ光Lが照射される。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する。そして、Y軸ステージ111を移動させて、レーザ光Lがすぐ上の切断予定ライン5を照射するようにし、上記と同様にして溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する。これを繰り返すことにより、下から順に各切断予定ラインに沿って加工対象物1の内部に溶融処理領域を形成する(S131)。」(77ページ22行-78ページ8行) ト 「二つクラック領域9形成方法について簡単に説明する。まず、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の内部の裏面21付近に合わし、切断予定ライン5に沿って集光点を移動させながら加工対象物1にパルスレーザ光Lを照射する。これにより、クラック領域9(9A)が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部の裏面21付近に形成される。次に、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の内部の表面3付近に合わし、切断予定ライン5に沿って集光点を移動させながら加工対象物1にパルスレーザ光Lを照射する。この照射により、クラック領域9(9B)が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部の表面3付近に形成される。」(99ページ13-21行) ナ 「本実施形態の第9例に係るレーザ加工装置は、図14に示す第1例に係るレーザ加工装置100と同様の構成をしている。第9例においてZ軸ステージ113により加工対象物1の厚み方向における集光点Pの位置が調整される。これにより、例えば、集光点Pを加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より入射面(表面3)に近い位置又は遠い位置に調節したり、厚みの略半分の位置に調節したりすることができる。 ここでZ軸ステージによる加工対象物の厚み方向における集光点Pの位置の調節について図93及び図94を用いて説明する。本実施形態の第9例では加工対象物の厚み方向におけるレーザ光の集光点の位置を、加工対象物の表面(入射面)を基準として加工対象物の内部の所望の位置に調節している。図93はレーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の表面3に位置している状態を示している。図94に示すように、Z軸ステージを集光用レンズ105に向けてz移動させると、集光点Pは表面3から加工対象物1の内部に移動する。集光点Pの加工対象物1の内部における移動量はNzである(Nはレーザ光Lに対する加工対象物1の屈折率である)。よって、レーザ光Lに対する加工対象物1の屈折率を考慮してZ軸ステージを移動させることにより、加工対象物1の厚み方向における集光点Pの位置を制御することができる。つまり、集光点Pの加工対象物1の厚み方向における所望の位置を表面3から加工対象物1の内部までの距離(Nz)とする。この距離(Nz)を上記屈折率(N)で除することにより得られた移動量(z)だけ、加工対象物1を厚み方向に移動させる。これにより、上記所望の位置に集光点Pを合わせることができる。」(101ページ7行-102ページ1行) ニ 「本実施形態の第10例は、加工対象物の厚み方向におけるレーザ光の集光点の位置を調節することにより、加工対象物の厚み方向における改質領域の位置を制御している。」(104ページ7-9行) ヌ 「図98は図96と同様に本実施形態の第10例に係るレーザ加工方法を用いて形成されたクラック領域9を含む加工対象物1の斜視図である。図98に示すクラック領域9は、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より表面(入射面)3に近い位置に調節して形成されたものである。クラック領域9は加工対象物1の内部中の表面3側に形成される。図99は図98に示す加工対象物1の部分断面図である。クラック領域9が表面3側に形成されているので、自然に成長するクラック91は表面3又はその近傍に到達する。よって、切断予定ライン5に沿った割れが表面3に生じやすいので、加工対象物1を容易に切断することができる。」(104ページ26行-105ページ8行) ネ 「特に、加工対象物1の表面3に電子デバイスや電極パターンが形成されている場合、クラック領域9を表面3付近に形成すると、加工対象物1の切断において電子デバイス等の損傷を防ぐことができる。すなわち、クラック領域9からクラック91を加工対象物1の表面3及び裏面21方向に成長させることにより、加工対象物1が切断される。クラック91の自然成長だけで切断できる場合もあるし、クラック91の自然成長に加えて人為的にクラック91を成長させて切断する場合もある。クラック領域9と表面3の距離が比較的長いと、表面3側においてクラック91の成長方向のずれが大きくなる。これにより、クラック91が電子デバイス等の形成領域に到達することがあり、この到達により電子デバイス等が損傷する。クラック領域9を表面3付近に形成すると、クラック領域9と表面3の距離が比較的短いので、クラック91の成長方向のずれを小さくできる。よって、電子デバイス等を損傷させることなく切断が可能となる。但し、表面3に近すぎる箇所にクラック領域9を形成するとクラック領域9が表面3に形成される。このため、クラック領域9そのもののランダムな形状が表面3に現れ、表面3のチッビングの原因となり、割断精度が悪くなる。」(105ページ9-23行) ノ 「加工対象物1が例えば半導体ウェハの場合、X軸方向及びY軸方向にそれぞれクラック領域9を平行に複数形成する。これにより、半導体ウェハ中にクラック領域9を格子状に形成され、格子状のクラック領域を起点として個々のチップに分割する。X軸方向のクラック領域9とY軸方向のクラック領域9がともに加工対象物1の厚さ方向における位置が同じであると、X軸方向のクラック領域9とY軸方向のクラック領域9とが直交する箇所が生じる。直交する箇所ではクラック領域9が重畳するので、X軸方向の切断面とY軸方向の切断面とを精度よく直交させることが困難となる。これにより、直交する箇所では加工対象物1の精密な切断が妨げられる。 これに対して、図100に示すように、加工対象物1の厚み方向において、X軸方向のクラック領域9の位置とY軸方向のクラック領域9の位置とを異ならせると、X軸方向のクラック領域9とY軸方向のクラック領域9とが重畳するのを防ぐことができる。よって、加工対象物1の精密な切断が可能となる。」(106ページ9-21行) ハ 「以上説明したように、本実施形態の第10例によれば、加工対象物の厚み方向におけるレーザ光の集光点の位置を調節することにより、加工対象物の厚み方向における改質領域の位置を制御できる。加工対象物の厚さや材質等を考慮して集光点の位置を変えることにより、加工対象物に応じたレ一ザ加工が可能となる。・・・ 本実施形態の第10例に係るレーザ加工装置は、図14に示す第1例に係るレーザ加工装置100と同様の構成をしている。第10例においてZ軸ステージ113により加工対象物1の厚み方向における集光点Pの位置が調節される。これにより、例えば、集光点Pを加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より入射面(表面3)に近い位置又は遠い位置に調節したり、厚みの略半分の位置に調節したりすることができる。なお、集光用レンズ105をZ軸方向に移動させることによっても、これらの調節やレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせることができる。よって、本発明では加工対象物1がその厚み方向に移動する場合及び集光用レンズ105が加工対象物1の厚み方向に移動する場合があるので、加工対象物1の厚み方向における加工対象物1の移動量は相対的移動量や他の相対的移動量としている。」(107ページ10行-108ページ1行) ヒ 「第10例においても撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うようにする。可視光の焦点が表面3に位置するZ軸ステージ113の位置において、レーザ光Lの集光点Pも表面3に位置するようにレーザ加工装置1は調整されている。よって、焦点データは、集光点Pを表面(入射面)3に位置させるのに必要な加工対象物1の厚み方向における加工対象物1の他の相対的移動量の一例である。撮像データ処理部125は、他の相対的移動量を演算する機能を有する。 全体制御部127は、図93及び図94で説明した移動量(z)のデータが入力され、記憶される。つまり、全体制御部127は、加工対象物1の厚み方向における加工対象物の相対的移動量のデータを記憶する機能を有する。全体制御部127、ステージ制御部115及びZ軸ステージ113により、集光用レンズ105により集光されたパルスレーザ光の集光点の位置は加工対象物1の厚みの範囲内で調節される。」(108ページ4-18行) フ 「本実施形態の第10例の効果を説明する。第10例によれば、加工対象物1の厚み方向における集光点Pの位置を調節して加工対象物1にパルスレーザ光Lを照射して改質領域を形成している。これにより、加工対象物1の厚み方向における改質領域の位置を制御することができる。よって、加工対象物1の材質、厚さ、加工の効果等に応じて加工対象物1の厚み方向における改質領域の位置を変えることにより、加工対象物1に応じた切断加工が可能となる。 産業上の利用可能性 本発明に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置によれば、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断することができる。よって、加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば、半導体チップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留まりや生産性を向上させることができる。」(109ページ26行-110ページ12行) 「 [図:0001406108000001.jpg] [図:0001406108000002.jpg] [図:0001406108000003.jpg] [図:0001406108000004.jpg] [図:0001406108000005.jpg] [図:0001406108000006.jpg] [図:0001406108000007.jpg] [図:0001406108000008.jpg] [図:0001406108000009.jpg] [図:0001406108000010.jpg] 」 (2)上記(1)から理解できる事項 ア 上記(1)スの「ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。・・・レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。」との記載、上記(1)シの「Z軸ステージ113はレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせる手段の一例である。集光用レンズ105をZ軸方向に移動させることによっても、レーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせることができる。」との記載及び図15から、甲第1号証に、集光用レンズ105を加工対象物の表面3に対して進退自在に保持する保持手段が記載されていることが理解できる。そして、集光用レンズ105の集光点が加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる調整された位置にレンズを保持するように保持手段を制御することも記載されているといえる。 イ 上記(1)スの「ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。・・・そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。」との記載及び図15から、加工対象物内部の調整された位置に集光点が位置するようにレンズ105を保持した状態でレーザ光Lを照射しながら、加工対象物とレンズ105とを加工対象物の表面3に沿って相対的に移動させるように前記X,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115を制御して前記切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成しているものであり、レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置を完了した後の切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する工程では、レーザ光Lの集光点のZ軸方向の位置は調整を受けないものであることが理解できる。他にも、上記(1)ソの「切断対象材料の厚さ及び屈折率に対応して決定されたレーザ光Lの集光点の変位量分だけZ軸ステージ113をレーザ光Lの光軸方向に移動させることにより、レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置が完了する(S215)。レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置が完了すると、レーザ光Lを切断対象材料に照射すると共に、所望の切断パターンにしたがってX軸ステージ109及びY軸ステージ111を移動させる(S217)。」との記載及び図21からも、改質領域7を形成する工程では、レーザ光Lの集光点のZ軸方向の位置は調整を受けないことが理解できる。 他方、甲第1号証の全体を見渡しても、切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する際にレーザ光Lの集光点のZ軸方向の位置を調整することをうかがわせる記載は見当たらない。 このことから、改質領域7を形成する工程では、レンズ105の集光点の加工対象物内部のZ軸方向の調整された位置は、切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する工程において固定されたもの(固定位置)であることが理解できる。 ウ 上記(1)スの「切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。」との記載があるところ、第1例と同じく切断予定ラインに沿うようにシリコンウェハの加工を行う第3例についての説明図である図44及び46の平面図には、切断予定ライン5が加工対象物1であるシリコンウェハの端部を含むことが図示され、第1例でも同様の切断予定ラインとなっていると認められることから、切断予定ライン5に沿って形成される改質領域(溶融処理領域)は、加工対象物1の一端部(切断予定ライン5の一端部)を含むことが理解できる。 (3)甲1発明 上記(1)、(2)を踏まえると、甲第1号証には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。 (1a)レーザ光Lを加工対象物1であるシリコンウェハの内部に集光点Pを合わせて照射し、前記シリコンウェハの切断予定ライン5に沿って前記シリコンウェハの内部に改質領域7を形成するレーザ加工装置100であって、 (1b)前記レーザ光Lを前記シリコンウェハに向けて集光するレンズ105と、 (1c)前記シリコンウェハと前記レンズ105とを前記シリコンウェハの表面3(レーザ光Lの入射面)に沿って移動させるX,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115と、 (1d)前記レンズ105を前記表面3に対して進退自在に保持する保持手段と、 (1e)前記X,Y軸ステージ109、111、ステージ制御部115、及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する全体制御部127と、を備え、 (1f’)前記全体制御部127は前記集光点Pが前記シリコンウェハ内部の所定の位置に合う状態となる調整された固定位置に前記レンズ105を保持するように前記保持手段を制御し、 (1g+1h’)シリコンウェハ内部の調整された固定位置に集光点Pが位置するように前記レンズ105を保持した状態で前記レーザ光Lを照射しながら、前記全体制御部127は前記シリコンウェハと前記レンズ105とを前記表面3に沿って相対的に移動させるように前記X,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115を制御して前記切断予定ライン5の一端部を含む前記切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する、 (1i)上記レーザ加工装置100。 ((1a)~(1i)の分説については、上記第2で示した本件発明の分説に対応付けて当審が行った。) 2 甲第2号証に記載された事項 (1)記載事項 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、圧延ロール等に用いるための円筒状回転体の表面に、微細な凹凸や孔を形成するためのレーザ加工装置の制御方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】レーザ光束により、円筒体の表面に微細な凹凸を形成したり、微細な孔を穿ったりする技術が、既に実用化されている(特開平2-11285号公報、特開昭55-94790号公報など参照)。このようなレーザ加工装置に於ける加工精度は、レーザ光の焦点距離の精度に依存するので、集光レンズと被加工面との間隔を、加工作業中は常に所定の範囲内に保つ必要がある。 ・・・ 【0013】さて、本装置に於ては、ロール1を所定の速度で回転させつつレーザスポットをパルス的にロール表面1aに照射することにより、所定のリード角をもつ螺旋状の仮想線上に微細な孔を連続的に穿つ加工が行われる。ここで孔径の精度は、焦点距離、即ち、レーザ加工ヘッド7に内蔵された集光レンズ(図示せず)とロール表面1aとの間隔の寸法精度に依存するので、これを極めて高精度に維持する必要がある。」 (2)甲第2号証に記載された技術的事項 レーザ加工装置おいて、円筒体の表面に微細な凹凸を形成したり、微細な孔を穿ったりする技術において、その加工精度は、レーザ光の焦点距離の精度に依存するので、集光レンズと被加工面との間隔を、加工作業中は常に所定の範囲内に保つ必要があること。 3 甲第3号証ないし甲第5号証に記載された事項 (1)甲第3号証の記載事項 ア 「本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に半導体ウエーハにレーザー光線を照射してスクライブを行なう方法の改良に関する。 トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等の半導体装置は、一般に第1図に示すように、一枚の半導体ウエーハ1に拡散等の処理によって多数の半導体素子2を形成し、各半導体素子2、2間にスクライブ溝3を形成したのち、半導体ウエーハ1に撓屈力を作用せしめて、前記スクライブ溝3から分割して多数の半導体素子ペレットを得ている。」(1ページ右下欄9行-最終行) イ 「しかしながら、近時半導体ウエーハはますます大径化に伴って、そのソリが目合せ時のマスクの密着性等から問題になっており、また前記したスクライブ溝3の形成時にも、もし半導体ウエーハ1にソリがあると、レーザー光線の焦点が微妙に変化し良好なスクライブを行ない難いという問題点がある。 このため、半導体ウエーハのソリを無くす方法が種々講じられているが、完全にソリを無くすことは不可能である。従ってもし半導体ウエーハにソリがあっても良好なスクライブを行なえるならば有利であろう。」(2ページ左上欄6-17行) ウ 「本発明は要約すると、レーザー光線の相対的な進行方行の前方の半導体ウエーハ表面に微弱な検出光線を照射し、その検出光線の反射光に応じてレーザー光線を制御することを特徴とするものである。」(2ページ右上欄1-5行) エ 「以上の構成において、まず、検出光線20を照射する半導体ウエーハ1の表面を顕微鏡で観察して集光レンズ16の焦点調整を行なう。続いて電源スイッチを入れQスイッチ13を開くと、大部分の光線は反射プリズム15で反射されて、集光レンズ16で集光されたレーザー光線17が半導体ウエーハ1に照射される。同時にプリズム15を透過した一部の光線が反射プリズム18で反射されて、集光レンズ19で集光された検出光線20が半導体ウエーハ1に照射され、その反射光22が受光器21で受光される。こゝで、半導体ウエーハ1にソリがあると、受光器21の受光光量が変化するので、それに応じて集光レンズ16の焦点調整が行なわれる。すなわち、受光器21の受光状態に応じて集光レンズ16の焦点調整が終了するまでの所要時間は、半導体ウエーハ1が検出光線20の照射点Aからレーザー光線17の照射点Bまでの距離l(筆記体のエル)だけ移動するのに要する時間に等しく設定される。従って半導体ウエーハ1にソリがあっても、レーザー光線17は常に最適な状態で照射され、良好なスクライブ溝3が形成されるのである。」(2ページ左下欄7行-右下欄7行) 「第2図及び第3図 [図:0001406108000011.jpg] 」 (2)甲第4号証の記載事項 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品の材料として使用される、シリコンやタングステンなどの金属からなるウェーハを所望の大きさに切断するウェーハ切断方法およびその装置に関する。 ・・・ 【0005】従来のウェーハの切断装置について説明すると、シリコンやタングステンなどの金属からなるウェーハが、XYテーブル上のウェーハ保持台に装着される。上方にはレンズが配設されていて、レーザ光の焦点がウェーハ表面に来る様に高さ方向に位置決めされる。この状態で、XYテーブルを作動させながらレーザ光を照射し続けると、例えば、図4に示されるように円形状をしたウェーハ1から、図5に示されるように円形状をしたチップ2を複数個切り出すことができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の装置は、ウェーハ1が反っていると、レーザ光の焦点が決まらず不安定となり、スプラッシュが多く発生して、ウェーハ1面に付着して不良にしたり、切断面にバリを発生させて、品位を損ねたり、ひいては切断できなくなるといった不具合が生じる。 ・・・ 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載された発明は、レーザ照射手段からレーザ光をウェーハに照射して、前記ウェーハから所望の大きさのチップを切り出すウェーハ切断方法において、前記ウェーハの反りを測定し、反りの測定値によって、前記ウェーハと前記レーザ照射手段との距離が所望の距離になるように、前記レーザ照射手段および前記ウェーハの少なくとも一方の位置を制御するウェーハ切断方法である。 【0010】そして、前記ウェーハの反り測定値に基づき、前記ウェーハと前記レーザ照射手段との距離が所望の距離になるように、前記レーザ照射手段と前記ウェーハの少なくとも一方の位置を制御し、前記レーザ光を照射してウェーハを切断するため、安価な設備で高速に、ウェーハ全域に渡って品位の良い切断ができる。 【0011】請求項2に記載された発明は、レーザ照射手段からレーザ光をウェーハに照射して、前記ウェーハから所望の大きさのチップを切り出すウェーハ切断方法において、あらかじめ前記ウェーハの反りを測定しておき、前記ウェーハの切断位置でのそれぞれの座標と、反りのデータを記憶しておき、前記データに基づいて、前記レーザ照射手段と前記ウェーハとの距離が所望の値になるように制御し、前記レーザ光を照射して、ウェーハを切断するウェーハ切断方法である。 【0012】そして、あらかじめ前記ウェーハの反りを測定して、前記ウェーハの切断位置でのそれぞれの座標と、反りのデータとを記憶しておき、前記データに基づいて、前記レーザ照射手段と前記ウェーハとの距離が所望の値になるように制御しながら、前記レーザ光をウェーハに照射して切断するため、高速に前記ウェーハ全域に渡って品位の良い切断ができる。 ・・・ 【0020】そして、共通の移動手段上で、ウェーハの反り測定と、レーザ光の照射とを同時に行う。 ・・・ 【0024】また、ブラケット14を介して、高さ方向に移動可能なZテーブル8が設けられ、このZテーブル8上には、レーザ照射手段6が配設されている。そして、前記レーザ照射手段6は、レーザ電源(図示せず)に接続され、光学系を介して、対物レンズ7からウェーハ1の表面に焦点が合った状態でレーザ光9が照射される。そして前記XYテーブル3Aは、前記ウェーハ1を保持したままX方向およびY方向に所望の動作を行い、前記ウェーハ1が切断される。 ・・・ 【0026】以上の実施形態の構成において、その作用について説明すると、前記レーザ距離計5のデータが、制御手段10に入力され、前記ウェーハ1と、前記対物レンズ7との距離が、所望の値になるように、Zテーブル8を移動させる。その後、レーザ光9を照射しながら、前記XYテーブル3Aを所望の軌跡になるように移動させる。前記XYテーブル3Aの制御は、円弧補間によって制御される。 ・・・ 【0028】すなわち、ウェーハ1が反っていても、レーザ照射手段6とウェーハ1との距離を測り、常にレーザ照射手段6と、ウェーハ1の表面との距離は一定になるように切断するため、レーザ光9の焦点が安定して、従来のように反りによる、スプラシュの増加や、切断不良がなくなる。そして、品位の良い安定した切断が可能となる。そして、安価で高速なウェーハ1切断装置を提供することができるメリットがある。 ・・・ 【0033】そして、切断されるウェーハ1Bと、計測されるウェーハ1Aは前記XYテーブル3Bに搭載されていて、同時に移動するようになっている。即ち、前記ウェーハ1BはポジションP2でレーザ光9を照射されると同時に、ポジションP1でウェーハ1Aの反りが測定される。」 「図1 [図:0001406108000012.jpg] 」 「図3 [図:0001406108000013.jpg] 」 (3)甲第5号証の記載事項 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ウェーハからチップを切り出すウェーハの切断方法およびその装置に関する。 ・・・ 【0004】これらを切断するに際しては、レーザ光によってウェーハから一個ずつ切り離す方法が採られているが、このウェーハは、炉によって熱処理をするため、熱工程を経ると、ウェーハ自体が反ってしまう。【0005】このため、例えばウェーハの反りを測定し、この測定結果のデータに基づいてレーザ変位計によりレーザ光の焦点がウェーハ表面に位置するように制御する自動焦点機構により、反ったウェーハでも確実にチップを切り出す構成が採られている。 ・・・ 【0015】さらに、ポスト7には先端がXYテーブル3の上方に位置する第2のブラケット11が突設され、この第2のブラケット11の先端部分にZ方向すなわち上下方向である高さ方向に移動可能な移動手段を構成するZテーブル12が設けられている。そして、このZテーブル12上に、レーザ照射手段13が配設されている。このレーザ照射手段13は、図示しないレーザ電源に接続され、光学系を介して、対物レンズ14からウェーハ4の表面に焦点が合った状態でレーザ光15が照射される。このレーザ光15としては、例えばヤグレーザ(YAG:Ndレーザ)などが利用される。 【0016】そして、XYテーブル3は、ウェーハ保持手段5によりウェーハ4を保持したままX方向およびY方向に所定の動作をし、ウェーハ4が切断される。 ・・・ 【0024】そして、制御手段17によりレーザ距離計9にてウェーハ4の反りを測定し、すなわちレーザ照射手段13の対物レンズ14からウェーハ4までの距離を測定し、ウェーハ4のそれぞれのXY座標におけるZ方向の高さのデータを記憶手段18に記憶する。なお、ウェーハ4上の平面データは、XY座標でも曲座標でも良い。 【0025】この後、制御手段17によりXYテーブル3およびZテーブル12を適宜動作させてウェーハ4とレーザ照射手段13の対物レンズ14との距離が所定の値になるように制御する。そして、レーザ照射手段13からレーザ光15を照射しつつ、XYテーブル3を所定の軌跡になるように移動して略円形にチップ22を切り出す。なお、XYテーブル3は、例えば円弧補間、すなわち、与えられた2点間を円弧に沿った点群で近似する方法によって制御する。 【0026】この1個のチップ22を切断した後、次のチップ22の切断位置に移動し、再びレーザ距離計9によって、ウェーハ4との距離を計測してウェーハ4の反りを測定し、レーザ照射手段13とウェーハ4との距離を所定の値に制御し、スプラシュの増加や切断不良などを防止して再びチップ22を切断する。 ・・・ 【0040】また、チップ22の切断位置での反りを切断毎に測定するほか、例えばチップ22の切断の際に、次の切断位置でレーザ距離計9にてウェーハ4の反りの測定を同時進行して、順次チップ22を切り出す構成によれば、チップ22の切り出し効率を向上できる。 【0041】そしてさらに、あらかじめウェーハ4の反りを検知して制御手段17の記憶手段18に記憶しておき、レーザ距離計9にてレーザ光15の焦点がウェーハ4の表面に位置するように切断し、円形ピース21の位置では円形ピース21の厚さ寸法分の距離が短くなることから焦点が合わなくなるのでレーザ光15を照射しないようにして欠陥部の位置でチップ22の切り出しをしないようにしてもよい。」 「図1 [図:0001406108000014.jpg] 」 (4)甲第3号証ないし甲第5号証から把握される周知の技術的事項 上記(1)ないし(3)から、甲第3号証ないし甲第5号証はいずれも、半導体ウェーハの表面をレーザ加工する際における焦点の位置を調節することについて開示する一方で、半導体ウェーハの表面以外の部位を加工する際の課題及び解決手段についての記載はないことから、以下の技術事項が周知技術として認められる(以下、「周知の技術的事項1」という。)。 半導体ウェーハをレーザ加工する技術分野において、半導体ウェーハに反りがあると加工位置に対して加工用レーザ光の焦点がずれることから、測距用レーザ光を半導体ウェーハに照射し、半導体ウェーハの切断予定ラインに沿った表面(主面)の変位を取得して、取得した主面の変位に基づき、加工用レーザ光のレンズと半導体ウェーハの主面との間隔を調整することで、加工用レーザ光の焦点の位置を調整し、半導体ウェーハの表面を加工すること。 4 甲第6号証ないし甲第7号証に記載された事項 (1)甲第6号証の記載事項 ア 「近年の半導体産業の進展に伴い、ウエハ等の検査のために応答性がよく、精度の高い合焦装置を備えた検査装置の需要が高まってきている。」(1欄下から3-最終行) イ 「こうして、試料面1の段差部の境界ではサーボ系は発振状態となり、合焦動作が不可能となる。こうした試料面1に於ける段差状部分は、生ウエハ等の平坦な鏡面状試料の場合には外周部の端部にのみしか存在しないが、パターンの形成されたウエハや一般の金属標本等では断続的にこうした段差部を観察することになり、実用上非常に問題となる。」(3欄26-33行) ウ 「試料面に測定用光束を投射し、その反射光を検出して自動的に合焦動作を行う自動合焦装置において、試料面の段差部の高面と低面における上記測定用光束の結像状態の違いから段差部であることを検出し、該段差部における自動合焦動作を一時停止するようにして、自動合焦動作時の段差部による不都合な影響を除去するようにしたものである。」(4欄3-9行) エ 「本発明装置は上述の如く作用し、試料面B上の段差部に赤外スポットが当たっても、自動合焦動作が一時停止するだけで直前の合焦位置を保ち、赤外スポットが段差部からはずれると再び自動合焦動作を再開するので、段差部の多数存在する試料を観察する場合でも従来のようなサーボ系の発振、誤動作等の心配がなく、高精度な合焦が可能である。」(7欄18-24行)。 (2)甲第7号証の記載事項 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、被検物が半導体ウェハの場合、その上面の周縁部(エッジ)は、いわゆる研摩ダレのため、高さが10μm以上低くなっている。ここでウェハ交換等の際にAFを機能させたまま、ウェハを光学系の外に移動させた場合、AF装置がエッジのダレに追随して焦点位置を大きく変えてしまう。その後に次のウェハについて検査を行う場合、正規の被検部に合焦させるのに時間が長くかかり(例えば3~4秒)検査の能率が低下する。 【0005】この問題の解決手段として、被検物を検査ステージの外に移動させる際に、被検物の移動の前に予めAF動作を停止させておくことが考えられる。しかし、そうすると、AF装置の制御が組み込まれる検査装置全体(システム)の制御に依存することとなり、一度そのAF装置の動作を停止させると、次に動作を行わせる場合にシステムからの焦点合せ指示により動作を始めることになり、焦点合せまでの時間がかかってしまうことになる。また、AF系以外の系(X-Yテーブルや検査装置全体の制御装置)との信号のやり取りが生じて処理が複雑となる。できればAF装置自身の中で事態を処置できるようにすることが望ましい。 ・・・ 【0015】図2は、図1の半導体検査装置の観察視野とAFセンサ機構(スリット及びAF光学系)の位置関係の一例を示す平面図である。円形(径一例200μm)の観察視野31の両サイドの対向する位置に、2つのAFセンサ機構33が配置されている。観察視野がウェハから外れる時は、いずれか片方のセンサ機構がまずウェハエッジのダレにかかるので、他方のセンサ機構との位置検出信号のバランスがくずれる。そこで、その信号を後述のように処理することで、ウェハが取り外されつつあると判定してフォーカスアクチュエータの駆動を停止させる。なお、センサ機構の数は3以上であってもよい。 ・・・ 【0020】ステップ102がYESの場合は、ステップ103に進み、いずれかのセンサ機構の対象部位がウェハのエッジダレにかかったと考えて、フォーカスアクチュエータの作動を停止させる信号をフォーカスアクチュエータ駆動部(図1の20)に送り、アクチュエータ(Zステージ)のAF作動を停止させる。【0021】ステップ102がNOの場合、ステップ104に進んで{(a-b)+(a′-b′)}÷2=0か否かをチェックする。これがYESの場合はAF動作を終了する。NOの場合は105に進んでフォーカスアクチュエータを作動させ、ウェハの上面の位置をフォーカスの位置に合わせる。【0022】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、被検物を自動焦点位置検出範囲の外に移動させて再び検出範囲に戻したり、被検物を交換した場合において、新たに焦点位置を自動検出する際、位置検出について効率のよい動作が行われる。」 「図5 [図:0001406108000015.jpg] 」 (3)甲第6号証及び甲第7号証から把握される周知の技術的事項 上記(1)、(2)から、甲第6号証及び甲第7号証は、シリコンウェハを光学的に検査する際における自動合焦の技術について開示するものの、合焦動作を連続的にすることを前提とする技術が記載されており、また、対象物は加工されるものではない(加工対象物ではない)から、以下の技術事項が周知技術として認められる(以下、「周知の技術的事項2」という。)。 対象物であるシリコンウェハについて、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になることから、そのような部分において合焦動作を一時的に停止させて焦点を固定し、そのような部分を外れると合焦動作を再開することにより、光の合焦動作を改善すること。 第6 当審の判断 1 無効理由1についての検討 (1)本件発明1について ア 甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「レーザ光L」は本件発明1の「第一のレーザ光」に相当し、以下同様に、「加工対象物1であるシリコンウェハ」又は「シリコンウェハ」は「加工対象物」に、「集光点P」は「集光点」に、「切断予定ライン5」は「切断予定ライン」に、「改質領域7」は「改質領域」に、「レーザ加工装置100」は「レーザ加工装置」に、「レンズ105」は「レンズ」に、「前記シリコンウェハの表面3(レーザ光Lの入射面)」は「前記加工対象物の主面」に、「X,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115」は「前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段」に、「全体制御部127」は「制御手段」に、「集光点Pが位置するように前記レンズ105を保持した状態」は「前記レンズを保持した状態」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明の「調整された固定位置」は、上記第5の1(2)ア及びイより、レーザ光Lの集光点を加工対象物内部で改質領域7を形成する位置に配置する位置であるところ、本件発明1の「初期位置」と、「位置」である点では共通している。 また、改質領域について、甲1発明の「切断予定ライン5の一端部を含む前記切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成」することと、本件発明1の「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成」することとは、「切断予定ラインの一端部において改質領域を形成」する点では共通している。 イ してみると、本件発明1と、甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記第1のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は前記集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態となる位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、 当該位置に前記レンズを保持した状態で前記第一のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において改質領域を形成する、 レーザ加工装置。」 ウ 相違点 <相違点1> 本件発明1は、「初期位置」にレンズを保持した状態で「前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に、前記制御手段は前記レンズを前記初期位置に保持した状態を解除して前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して改質領域を形成する」ことを特定しているのに対して、甲1発明は、シリコンウェハ内部の調整された固定位置に集光点Pが位置するようにレンズ105を保持した状態でレーザ光Lを照射しながら、全体制御部127はシリコンウェハとレンズ105とを表面3に沿って相対的に移動させるようにX,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115を制御して切断予定ライン5の一端部を含む切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成することから、「前記切断予定ラインの一端部において改質領域が形成された後に」おいても、シリコンウェハ内部の調整された固定位置に集光点Pが位置するようにレンズ105を保持したままの状態で、改質領域7を形成する点。 エ 上記相違点1についての検討 甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することについて検討する。 (ア)甲1発明に周知の技術的事項1を適用することの動機付けについて 上記第5の3(4)に示したとおり、甲第3号証ないし甲第5号証から、半導体ウェーハをレーザ加工する技術分野において、半導体ウェーハに反りがあると加工位置に対して加工用レーザ光の焦点がずれることから、測距用レーザ光を半導体ウェーハに照射し、半導体ウェーハの切断予定ラインに沿った表面(主面)の変位を取得して、取得した主面の変位に基づき、加工用レーザ光のレンズと半導体ウェーハの主面との間隔を調整することで、加工用レーザ光の焦点の位置を調整し、半導体ウェーハの表面を加工することは周知の技術的事項(周知の技術的事項1)であると認められる。 しかしながら、甲第1号証は、加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物を切断する従来の方法では加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融されてしまうことを課題(例えば、上記第5の1(1)ア)として、レーザ光Lの集光点Pを加工対象物1の内部に位置させて、改質領域を加工対象物1の内部にのみ形成して加工対象物を切断する(例えば、上記第5の1(1)ス)ことが記載されているから、そもそも半導体ウェーハの表面に集光点を合わせて、(表面を)加工をするものである周知の技術的事項1を適用する動機付けがない。 また、甲第1号証には、全体を見渡しても、加工対象物に反りがあることについての記載は見当たらないし、甲1発明は、「シリコンウェハ内部の調整された固定位置に集光点Pが位置するように前記レンズ105を保持した状態で前記レーザ光Lを照射しながら、前記全体制御部127は前記シリコンウェハと前記レンズ105とを前記表面3に沿って相対的に移動させるように前記X,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115を制御して前記切断予定ライン5の一端部を含む前記切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する」ものであって、シリコンウェハに反りがあることを想定したものでないことは明らかであるから、該甲1発明に、加工対象物に反りがあることを課題とした解決手段である周知の技術的事項1を適用する動機付けも見いだせない。 加えて、仮に、甲第3号証ないし甲第5号証に記載されているように、半導体ウェーハが実際には反るものであるとしても、周知の技術的事項1では、半導体ウェーハの表面を加工するため、その位置の誤差の許容幅が小さいものとなり、正確な位置に集光点を合わせることに必然性を有するものと認められる一方、甲1発明は、上記のとおり改質領域を加工対象物1の内部にのみ形成するものであり、加工対象物1に厚みを有すること(加工される内部は許容範囲を有すること)を考慮すれば、周知の技術的事項1のように表面の加工を行うものと、甲1発明とでは集光点のZ軸方向の位置に係る条件が異なる。そして、甲1発明の「シリコンウェハ内部の調整された固定位置に前記レンズ105を保持した状態で前記レーザ光Lを照射しながら、前記全体制御部127は前記シリコンウェハと前記レンズ105とを前記表面3に沿って相対的に移動させるように前記X,Y軸ステージ109、111及びステージ制御部115を制御して前記切断予定ライン5の一端部を含む前記切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する」ことにより、例えばシリコンウェハの加工ができないような特段の事情は見当たらないから、甲1発明に上記周知の技術的事項1を適用する動機付けは見いだせない。 そうすると、甲1発明に周知の技術的事項1を適用することが当業者にとって容易になし得るものではないから、さらに周知の技術的事項2を適用して相違点1に至ることも、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用する改変について また、仮に、甲1発明に周知の技術的事項1を適用することができたとしても、以下に説示するとおり、甲1発明に周知の技術的事項1を適用した上で周知の技術的事項2を適用することは多段階の改変に該当し、そのような多段階の改変を要する本件発明1が、甲1発明に基づいて容易になし得たものということはできない。 甲第1号証には、光の合焦動作(フォーカス調整)(第5の1(1)ス等を参照。)を行うことの記載はあるものの、当該合焦動作がシリコンウェハの一端部に存在する平坦でない部分についても行われることは記載されていないし、加工対象物の平坦でない部分がフォーカス調整やレーザ加工に対して悪影響を及ぼすとの課題についての記載も見当たらない。 さらに甲第1号証には、加工対象物の表面に対してフォーカス調整を行った後に、Z軸ステージでレ一ザ光Lの集光点を加工対象物の内部に移動させて、X,Y軸ステージ109、111を制御して改質領域7を形成すること(第5の1(1)ス等を参照。)が記載されていると認められるから、該フォーカス調整は、改質領域の形成(加工)に先だって、加工対象物の内部における改質領域の厚さ方向の位置(固定位置)を定めるためだけに行われ、当該加工中は加工対象物の端部であるか否かに関わらず、全体に固定位置を維持するものであり、当該フォーカス調整は、加工対象物の表面の全体に沿って連続的に行うものではないから、そもそもシリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になるとの課題が甲第1号証に内在しているということもできない。 したがって、甲1発明に、合焦動作を連続的にすることを前提とする上記周知の技術的事項2(対象物であるシリコンウェハについて、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になることから、そのような部分において合焦動作を一時的に停止させて焦点を固定し、そのような部分を外れると合焦動作を再開することにより、光の合焦動作を改善すること)を適用する動機も見当たらない。 そして、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になるとの課題認識は、甲1発明に、フォーカス調整を、加工対象物の表面の切断予定ラインの全体に沿って連続的に行って加工対象物の表面の変位を取得して、取得した主面の変位に基づき、加工用レーザ光のレンズと半導体ウェーハの主面との間隔を調整することで、加工用レーザ光の集光点の位置を調整するとの技術的事項(例えば、周知の技術的事項1)を適用するという改変をした際に初めて生じるものであるから、仮に甲1発明に周知の技術的事項1を適用できたとしても、その改変によって新たに生じた課題を解決するために、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分については該フォーカス調整を一時的に停止させて焦点を固定し、当該平坦ではない部分を外れると合焦動作を再開するとの技術的事項(周知の技術的事項2)をさらに適用することは、多段階での改変に該当するものであることは明らかであり、このような多段階の改変が、当業者にとって容易に想到し得たということはできない。 (ウ)以上から、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することが当業者にとって容易になし得るものではない。 (エ)また、甲第2号証に、上記第5の2(2)のとおり、レーザ加工装置おいて、円筒体の表面に微細な凹凸を形成したり、微細な孔を穿ったりする技術において、その加工精度は、レーザ光の焦点距離の精度に依存するので、集光レンズと被加工面との間隔を、加工作業中は常に所定の範囲内に保つ必要があることが記載されているところ、甲第2号証は、被加工物である円筒体の表面の加工に関するものであって、その内部の加工をするものではないし、甲第3号証ないし甲第7号証をみても、被加工物の内部を加工する際の集光点の位置調整に関する課題を示すものではなく、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することが動機付けられるものではないから、上記の判断を左右するものではない。 オ 小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証ないし甲第7号証に記載を踏まえても、甲1発明、甲第3号証ないし甲第5号証に記載の周知の技術的事項1及び甲第6号証及び甲第7号証に記載の周知の技術的事項2に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえないから、無効理由1によって本件発明1に係る特許を無効とすることはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成を含んでさらに限定したものに相当し、本件発明2と、甲1発明とは、上記相違点1を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、無効理由1によって本件発明2に係る特許を無効とすることはできない。 (3)むすび よって、本件発明1及び2は、甲第2号証ないし甲第7号証に記載を踏まえても、甲1発明、甲第3号証ないし甲第5号証に記載の周知の技術的事項1及び甲第6号証及び甲第7号証に記載の周知の技術的事項2に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、無効理由1によってそれらの特許を無効にすることはできない。 第7 請求人の主張について 1 甲1発明の認定及び相違点 ア 請求人の主張 請求人は、甲第1号証には、レンズ105を所定(所望)の位置に調整することや、シリコンウェハの内部に高さの異なる改質領域を形成することが記載されているところ、改質領域の形成中にレンズ105の高さを固定することは記載されていないから、甲1発明及び相違点1においては、「調整された固定位置」ではなく、「調整された所定位置」などとするのが適切である旨主張している。(請求人陳述要領書3ページ) イ 主張に対する検討 甲第1号証には、上記第5の1(2)イのとおり、レーザ光Lの集光点の切断対象材料の内部への配置を完了した後の切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する工程では、レーザ光Lの集光点のZ軸方向の位置は調整を受けないものであることが理解できる一方、甲第1号証の全体を見渡しても、切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する際にレーザ光Lの集光点のZ軸方向の位置を調整することをうかがわせる記載は見当たらず、加工対象物内部の調整された位置は、切断予定ライン5に沿って改質領域7を形成する工程において固定されたもの(固定位置)と理解できるから、請求人の主張は採用できない。 2 本件発明の容易想到性について (1)甲第1号証に内在する課題及び動機付けの有無 ア 請求人の主張 請求人は、甲第1号証の課題及び周知の技術的事項を適用する動機付けに関し、以下の旨主張している。 甲第1号証には、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置が切断品質に影響することの記載がある。そして、実際のシリコンウェハは、反っており(甲第3~5号証、甲第8-1号証)、また、周縁端部には研磨ダレ部分等が存在する(甲第6号証~8-2号証)から、当業者は、甲1発明の加工対象物がシリコンウェハである場合、実際には、反りや研磨ダレ部分等が存在することを理解する(請求人陳述要領書17-18ページ)。また、シリコンウェハは、その表面にデバイス(積層部)が形成されると、シリコンの内部応力と積層部の内部応力との差に基因する反りが発生することが知られていた(乙第2号証、甲第14~15号証)ところ、甲第1号証には、加工対象物の載置台107に吸引チャックを用いる旨の記載もないから、甲第1号証に接した当業者は、吸引チャックを用いないでシリコンウェハをレーザ加工することも想起する。さらに、甲第1号証には、切断対象材料雰囲気と切断対象材料の屈折率の違いにより、レーザ光の集光点の位置は、集光用レンズで集光されたレーザ光の集光点の位置よりも切断対象材料の表面から深いところに位置するようになることが記載されており、シリコンウェハ内部の屈折率は赤外光に対して3.5程度であることは技術常識であるところ、吸引チャックが用いられていない場合、未加工のシリコンウェハの反りは、最大数十μmとなり、上述のシリコンウェハ内部の屈折率を考慮すると、厚さ方向におけるシリコンウェハ内部のレーザ光の集光点位置のずれは、最大百数十μm程度になりうることを当業者は予測する。仮に、吸引チャックを用いたとしても無視し得ない影響が生じ得る。 上記のとおり、甲第1号証には、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置が、切断品質に影響することが記載されているところ、その第10例では、改質領域を形成する高さ方向の位置について、改質領域(クラック領域)が、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より表面(入射面)3に近い位置に調節して形成されることにより、加工対象物を容易に切断する例が記載され、第1例では、加工対象物のシリコンウェハの厚さが「350μm」等とする記載があるから、シリコンウェハの「反り」の表面形状に応じて改質領域を形成するレーザ光の焦点(集光点)の高さ(厚さ方向の位置)を調整しなければ、(i)シリコンウェハの中央付近で、厚みの半分の位置に改質領域の焦点位置を合わせた場合は、端部においては表面と改質領域との距離が長くなって、電子デバイス等の損傷を引き起こすことになり、逆に、(ii)シリコンウェハの端付近で、厚みの半分の位置に改質領域の焦点位置を合わせた場合は、中央付近においては改質領域が表面に近すぎるため、改質領域が表面に形成されてしまい、改質領域そのもののランダムな形状が加工対象物の表面に現れ、表面のチッピングの原因となり、割断精度が悪くなってしまい、甲1発明の目的(課題)に反する結果となりうることが容易に想定される。 そこで、甲第1号証に接した当業者は、レーザ加工中に、加工対象物の厚さ方向における改質領域が形成される位置を調整する必要性を認識する。ここで、甲第1号証には、加工対象物の表面を照明した可視光の反射光を撮像素子で撮像したデータ(撮像データ)を用いて、可視光の焦点が表面に合うようにした上で(オートフォーカス機能)、加工対象物の表面を基準とした加工対象物のZ軸方向の移動量(z)を決定し、レーザ光の集光点が加工対象物の内部となる位置になるように集光用レンズ105の高さを調整することが記載されているところ、甲第1号証には、加工中にレンズの高さを変更することを可能とする技術が開示ないし示唆されているといえる。 以上のとおり、甲第1号証には、レーザ加工中に、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整するために加工中にレンズの高さを変更する必要性とそれを可能とする技術が開示されているから、レーザ加工中に、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整するために加工中にレンズの高さを変更することを示唆する記載があるといえる。また、甲第1号証には加工中にレンズの高さを変更することが明記されていないという点で、その示唆があるとはいえないとしても、同号証に接した当業者は、反りがあるシリコンウェハを加工しようとしたとき、甲1発明に周知の技術的事項1を適用して、加工中にレンズの高さを変更することに動機付けられる。(請求人上申書1の1.(3-16ページ)) イ 主張に対する検討 甲第1号証について、加工対象物の反りについての記載は一切見られず、加工対象物の載置台への固定方法についても記載のないことから、そもそも加工対象物の反りを全く想定するものではないし、そのオートフォーカス機能は、集光点の固定位置を設定するために用いられるものであって、加工中にレンズの高さを連続的に変更することまでを示唆するものとはいえない。そして、請求人は、甲1発明の加工対象物に反りがあることを前提として、その載置台へのチャック方法によっては反りが大きなものとなること、及び加工対象物の屈折率から集光点位置のずれが大きくなることから、周知の技術的事項1を適用する動機が存在するなどと主張するが、このような論理構成は、本件発明を見て初めて着想し得る、いわゆる後知恵というべきものであるし、上記第6の1(1)エ(ア)のとおり、甲1発明に周知の技術的事項1を適用する動機付けが見いだせない。 加えて、甲第1号証においては、可視光で観測した加工対象物1の表面3上の1点の位置からZ軸方向に移動させて、レーザ光Lの集光点Pの位置を固定位置に設定をすれば十分であり(上記第5の1(1)ス等を参照。)、その後は、改質領域の形成のために、X軸ステージ及びY軸ステージの制御のみ行えばよいものであるところ、周知の技術的事項1のように切断加工ライン全般において加工対象物1の表面3上の位置を取得し、当該取得した表面3上の位置に倣って集光点のZ軸方向の位置を制御することは、X軸ステージ及びY軸ステージの制御だけでなく、Z軸ステージ(又はレンズ)の制御を行う三軸制御となるから、そもそも制御対象が増加する上、可視光の照射による表面上の位置の取得と、レーザ光の照射の時のZ軸方向の位置の制御との位相(タイミング)を調整するような制御が必要になるなど、可視光、レーザ光及びステージ(又はレンズ)の制御が複雑になるものである。 それにもかかわらず、加工対象物上の切断加工ライン全般(複数の地点)において可視光の焦点を表面に合わせようとする動機は甲第1号証から見いだすことはできないことから、請求人の主張は採用できない。 (2)多段階の改変(容易の容易)にあたるか否か ア 請求人の主張 請求人は、本件発明が容易想到といえるかに関し、以下の旨主張している。 甲第1号証に接した当業者は、レーザ加工中に、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整する必要性を認識するところ、甲1発明と周知の技術的事項1は、いずれも、半導体ウェーハのレーザ加工技術であり、かつ、レーザ光を含む測距用の光の焦点が加工対象物(ウェーハ)の表面に位置するように合焦動作を行うことを前提とする点において、技術分野を共通にするから、甲1発明に周知の技術的事項1を適用して、より精度の高いレーザ加工を可能とするために、レーザ加工中に加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整することに動機付けられる。 また、甲第1号証の加工対象物であるシリコンウェハの反りに起因する周知な課題の観点からも、反りの影響を考慮して改質領域を形成することに技術的な必要性ないし合理性があり、甲1発明に内在する反りに関する課題を解決するために、当業者は甲1発明に周知の技術的事項1を適用することに動機付けられるといえる。また、甲1発明の加工対象物のシリコンウェハには、端部に研磨ダレ部分等が存在し、そのような部分では、オートフォーカス制御された光学系の焦点が大きく変わってしまうことは当業者にとって周知な課題であり、その解決手段も周知の技術的事項2として周知なものであるところ、甲1発明(ないし甲1発明に周知の技術的事項1を適用した発明)と周知の技術的事項2は、いずれも、測距用の光学系の焦点が加工対象物(ウェーハ)の表面に位置するように合焦動作を行うことを前提とする点において、技術分野を共通にするから、当業者は、周知の技術的事項1を甲1発明に適用するに際し、周知な課題を解決するために、当該課題の解決手段として周知であるとともに、技術分野を共通にする周知の技術的事項2を適用しようと容易に動機付けられる。 当業者は、甲1発明に周知の技術的事項1のオートフォーカス技術を適用して、より精度の高いレーザ加工を可能としようと考えるが、甲1発明は、ウェーハの端部を含む切断予定ラインに沿ってレーザを照射する技術であるから、周知の技術的事項1をそのまま甲1発明に適用しようとすると、必然的に、ウェーハの端部にもオートフォーカス作用させることになる。一方で、ウェーハの端部ではオートフォーカス機能がうまく動作しないこと、及び、端部ではオートフォーカスを停止させることにより(端部では焦点を固定とすることにより)オートフォーカスを有効に機能させることができることは周知である(周知の技術的事項2)。そうすると、当業者は、甲1発明に周知の技術的事項1を適用するに際して、周知の技術的事項2を参照し、ウェーハ端部でのオートフォーカス機能の問題を認識して、この問題を回避することを自然に思い付くから、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用する動機付けがあり、これは多段階の改変に当たらない。 また、甲第1号証の第3例(75-78ページ、図40-47)において、加工対象物1はシリコンウェハであり、例えば、図47では縦横に複数の切断予定ライン5が形成されており、レーザ加工の流れは次のとおりと理解できる。 (ア)「初期位置」(Z方向の位置)に集光用レンズ105を保持したまま、集光用レンズ105は、シリコンウエハ(加工対象物)の外側にある開始位置(XY方向の位置)から移動し(紙面向かって右方向)、加工用レーザを照射しながら、最初にシリコンウエハの端部(ベベル部分や研磨ダレ部分が存在する。)上に移動し、切断予定ライン5に沿ってシリコンウエハの内側に移動する。切断予定ライン5がシリコンウェハの端から端まで延在するから、シリコンウェハの端部においても改質領域は形成される。 (イ)一筆書きのように順に各切断予定ライン5に沿って集光用レンズ105が移動しながら、加工対象物の内部に改質領域が形成される。 主面の変位を予め取得する周知の技術的事項1を適用した甲1発明においては、レーザ光Lの照射前に、全体制御部127が、予め取得した主面の変位の情報に基づいて集光用レンズ105と表面3との間隔を調整しながら保持する構成となり、また、加工対象物の端部のベベル部分や研磨ダレ部分が存在する箇所では、これに周知の技術的事項2を適用し、レンズを保持して加工する。したがって、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することによって、本件発明の構成に至る。(請求人上申書1の2.(16-23ページ))。 イ 主張に対する検討 甲第1号証には、集光点を固定位置として設定して加工を行うことが記載されるのみであり、レーザ加工中において、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整することについては一切の記載も示唆もないところ、レーザ加工中における位置調整の必要性を認識するとはいえないし、甲第3号証ないし甲第5号証から認められる周知の技術的事項1は、上記第5の3(4)のとおり、半導体ウェーハの表面をレーザ加工する際における焦点の位置を調節することについてのものであって、半導体ウェーハの表面以外の部位を加工する際の課題及び解決手段についてのものではない。 また、周知の技術的事項2は、対象物であるシリコンウェハを検査する際に合焦動作(オートフォーカス)を連続的に行うものである一方で、加工対象物に関するもの、すなわち、レーザ加工中に合焦動作を行うものではないから、当業者であっても、加工対象物の表面のレーザ加工に関する周知の技術的事項1と、加工に関係のない周知の技術的事項2とを同時に適用することを想起するとはいえない。 そうすると、上記第6の1(1)エ(イ)のとおり、甲第1号証にはウェーハの端部を含む全体に対して、連続的にオートフォーカス動作をする記載はないから、オートフォーカス機能のウェーハ端部における問題を認識することもないし、そのような問題認識は、甲1発明に周知の技術的事項1を適用することによって初めて認識し得るものである。 このことから、甲1発明に、周知の技術的事項2を参照しつつ、周知の技術的事項1を適用する動機があるということはなく、請求人の甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用する動機付けがあり、多段階の改変に当たらないとの主張は採用できない。 上記のとおり、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することができないのであるから、請求人の甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することによって、本件発明の構成に至るとの主張も採用できない。 3 請求人の本件特許の出願時の認識 ア 請求人の主張 請求人は、被請求人の特許出願である特願2002-355652号の当初明細書には、「加工対象物の厚さ方向の集光点の位置を加工対象物の表面の変位に応じて制御すること」が記載され、同出願の出願日は、平成14年12月6日であって、本件特許の出願日である平成16年1月9日よりも1年以上前であるところ、同出願の発明者3名は本件特許の発明者と重複しているから、レーザ加工中に、加工対象物の厚さ方向における改質領域の位置を調整するために加工中にレンズの高さを変更する技術の必要性及び有用性は本件特許の出願日当時まで認識されていなかったわけではない旨を主張している(請求人上申書2)。 イ 主張に対する検討 本件発明が進歩性を欠如するものであるかは、本件特許の出願時点における公知技術に基づき判断されるべきものであるところ、同特願2002-355652号(出願公開日:平成16年7月8日)は、本件特許が出願された平成16年1月9日の時点では出願公開されていなかったものであり、その明細書に「加工対象物の厚さ方向の集光点の位置を加工対象物の表面の変位に応じて制御すること」が記載され、発明者に重複があるとしても、本件発明が、甲1発明等に基づいて容易になし得たものという根拠にはならない。 4 甲第9号証による請求の理由の補正 請求人は、請求人陳述要領書において、甲第9号証による請求の理由の補正を行ったが、当該補正は許可しないとの補正許否の決定がされている(令和4年2月1日第1回口頭審理調書)。 第8 結論 以上のとおりであるから、無効理由1によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 また、請求人の主張及び証拠によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800050

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