特許異議申立
2021-701088
刃物の製造方法
- 審判番号
- 2021-701088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-168910外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6872185
- 請求日
- 2021年11月18日
- 審決日
- 2022年03月03日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】武生特殊鋼材株式会社
- 【権利者代理人】戸川 委久子
- 【権利者代理人】岩堀 圭吾
- 【異議申立人】長谷川 一博
- 【異議申立人代理人】吉井 剛
- 分類
- P1651.121-Y (B26B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6872185号発明「刃物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6872185号の請求項1-7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6872185号の請求項1-7に係る特許についての出願は、平成29年9月1日に出願され、令和3年4月21日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年11月18日に特許異議申立人 長谷川 一博(以下「申立人」という。)により請求項1-7に係る特許に対する特許異議の申立てがなされた。
第2 本件特許発明
特許第6872185号の請求項1-7の特許に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
a 刃表面に複雑な模様を有する刃物の製造方法であって、
b 異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、切削による凹凸加工を行って内面に中間層が露出した複数の丸穴型の凹部を形成するステップと;
c この凹凸加工が施された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形すると共に、前記凹部が形成された前記傾斜面及びそれ以外の表面を平面化して丸形の模様を現出するステップと;
d この刀身形状に成形された多層金属板の傾斜面を研削加工して複雑な乱れ模様が現出した切刃を形成するステップとを含むことを特徴とする刃物の製造方法。
【請求項2】
e 凹凸加工時に多層金属板の表面に対し半球型または円錐型の凹部を形成することを特徴とする請求項1記載の刃物の製造方法。
【請求項3】
f 凹凸加工時に凹部の切削深さを多層金属板の全体厚みの20%以下に抑えることを特徴とする請求項1又は2に記載の刃物の製造方法。
【請求項4】
g 凹部の切削深さを1mm以下とし、かつ、多層金属板の表面層及び凹部内に露出する各中間層の厚みを0.01~0.2mmとすることを特徴とする請求項3記載の刃物の製造方法。
【請求項5】
h 多層金属板に切刃を形成した後、この切刃全体または少なくとも切刃の一部を腐食液に浸漬して、或いは切刃全体または少なくとも切刃の一部に腐食液を塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の刃物の製造方法。
【請求項6】
i 刃表面に複雑な模様を有する刃物の製造方法であって、
j 異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、圧縮による凹凸加工を行って複数の丸穴型の凹部を形成するステップと;
k この凹凸加工が施された多層金属板の表面を研削して表面を平面化して丸形の模様を現出するステップと;
l この研削により表面が平面化された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形するステップと;
m この刀身形状に成形された多層金属板の傾斜面を研削加工して複雑な乱れ模様が現出した切刃を形成するステップとを含むことを特徴とする刃物の製造方法。
【請求項7】
n 多層金属板に切刃を形成した後、この切刃全体または少なくとも切刃の一部を腐食液に浸漬して、或いは切刃全体または少なくとも切刃の一部に腐食液を塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする請求項6記載の刃物の製造方法。」
(構成a-nは、申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)5-7ページにおいて、分説したものである。)
第3 申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要、及び申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
1.申立人の示す証拠
申立人が提出した証拠である甲第1号証-甲第5号証は、以下のとおりである。(以下、各甲号証を「甲1」などという。)
甲1:特開2012-192163号公報
甲2:岩崎航介著,「刃物の見方」,三条金物青年会,昭和44年2月10日,p.94-97
甲3:岡本誠之著,「鋏」,東京・えくらん社,昭和34年9月15日,p.320-325
甲4:特開平2-265586号公報
甲5:特開平10-118353号公報
2.申立ての理由の概要
申立人は、請求項1-7に係る特許は、以下の理由(1)-(2)により取り消されるべきものである旨を主張する。
(1)本件発明1-5についての進歩性欠如
本件発明1-5は、甲1に記載された発明と、甲2及び甲3に記載された公知又は周知技術とを組み合わせて当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書10-12ページ)
(2)本件発明6-7についての進歩性欠如
本件発明6-7は、甲1に記載された発明と、甲3-甲5に記載された公知又は周知技術とを組み合わせて当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書12-13ページ)
第4 甲1-甲5の記載事項等について
1.甲1について
(1)甲1の記載事項(なお、下線部については当審で付した。以下同様。)
【0001】
本発明は、多層多紋構造刀身素型を処理・加工して形成する多層微細構造刃先を付けた打ち刃物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、包丁やナイフ、鋏のような刃物は、コアとなる肉厚硬質素材の少なくとも一面にクラッド層とよばれる軟鋼材を冶金的に表層して刀身素型を成型し、形状に応じた刃先を刃付けして形成する。
・・・
【0011】
そこで本発明は、コア層を要しない多層構造金属板を処理・加工することにより、メンテナンスも熟練した技術も必要とせず、簡単に砥ぎ直しができ、永切れする打ち刃物を提供すると共に、刃先部分まで斑点模様およびダマスカス模様からなる波紋模様が鮮明に表出する多層微細構造刃先を付けた打ち刃物を提供することを目的とする。
・・・
【0025】
本発明に係る多層微細構造刃先を付けた打ち刃物1は、図2(a)~(c)に示すように2種類以上の材料層により構成され、同種類の材料層を相互に連続しないように略同厚に積層して高圧で全体押圧した多層構造金属板500(図2(a))を処理・加工した、図2(c)のように切刃30と中子40および表面50と裏面60および刃先10と棟20、を有する打ち刃物1(図4(a))である。
【0026】
上記積層した材料層を高圧で全体押圧して多層構造金属板500(図2(a))を形成する際に、プレス金型に凹凸の型を設けて、その凹凸模様を多層構造金属板500の表面に転写して処理・加工することにより、下記波紋押し板510(図2(b))の全表面に斑点模様およびダマスカス模様からなる波紋模様を大まかに表出させることができる。
【0027】
さらに、多層構造金属板500の表面50と裏面60の少なくとも刃先10側に相当する部分を局所的に冷間鍛造して波紋押し板510(図2(b))を形成し、波紋押し板510を成型して図2(c)のような多層多紋構造刀身素型520を得る。上記のように、多層構造金属板500を全体押圧する際にプレス金型に凹凸の型を設けて、その凹凸模様を多層構造金属板500に転写しても大まかな波紋模様は表出するが、上記のように刃先10側に相当する部分を局所的に冷間鍛造することにより、より繊細で個性的な波紋模様(斑点模様およびダマスカス模様)が刃先10にまで表現された多層多紋構造刀身素型520を得ることができる。
【0028】
続いて図1(a)のように、少なくとも表面50を、棟20から刃先10に向けて鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の刃先10側を研磨して鏡面化した小刃12を形成して多層微細構造刃先100を付ける(図3)。図1(a)では波紋模様は省略したが、図4(a)に斑点模様およびダマスカス模様を含む波紋模様を表現した本発明の多層微細構造刃先を付けた打ち刃物1(側面図)を示した。
【0029】
上述のように、刃先10側に相当する部分を局所的に冷間鍛造することにより、図3のような多層微細構造をもった小刃12(多層微細構造刃先100)を得ることができる。なお、表面50に加えて裏面60(図1(b))においても、棟20から刃先10に向けて鋭利に仕上げてしのぎ14’(図4(c))を形成してもよい。
・・・
【0032】
更に小刃12を塩酸等の腐食液に浸漬し、小刃12の刃先10側をさらに研磨して多層微細構造刃先100を付けた打ち刃物1とするのがより望ましい。浸食度の異なる2種類以上の材料層を積層した多層多紋構造刀身素型520の小刃12を腐食液に浸漬するため、腐食の早い層と遅い層との境界、即ち多層構造断面がより急峻に立ち上がり、多層微細構造刃先100の階段構造をより鮮明で鋭いものにすることができ、永切れ性と切れ味を一層高めることができる。同時に、刃先10の端部まで表出される波紋模様(斑点模様およびダマスカス模様)を、より鮮明に浮かび上がらせることができる。
・・・
【0035】
本発明に係る多層微細構造刃先100を付けた打ち刃物1の製造方法は、
(a)2種類以上の材料層により構成され、同種類の材料層を相互に連続しないように略同厚に積層して高圧で全体押圧した多層構造金属板500を準備するステップ
(b)多層構造金属板500の少なくとも表面50の刃先10側を局所的に冷間鍛造して波紋押し板510を形成するステップ
(c)波紋押し板510を成型して、切刃30と中子40および表面50と裏面60および刃先10と棟20、を有する多層多紋構造刀身素型520を形成するステップ
(d)多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50を、棟20から刃先10に向けて鋭利に仕上げてしのぎ14を形成するステップ
(e)しのぎ14の刃先10側を研磨して鏡面化した小刃12を形成するステップ
を含む。
【0036】
さらに、多層微細構造刃先100を付けた打ち刃物1の製造方法は、
(f)少なくとも小刃12を腐食液に浸漬するステップ
(g)更に小刃12の刃先10側を研磨して微細構造化するステップ
の工程を加えるのが望ましい。
【0037】
上記製造工程を、以下、更に詳細に説明する。
【0038】
ステップ(a)
(1)100t~800tで全体押圧した多層構造金属板500を準備する。この際プレス金型に凹凸の型を設けて、その凹凸模様を多層構造金属板500に転写してもよい。
ステップ(b)
(2)多層構造金属板500の少なくとも表面50の刃先10側を、ベルトハンマー等を用いて常温で局所的に冷間鍛造し、波紋押し板510を得る。冷間鍛造は多層構造金属板500の両面50、60の全面に亘って行ってもよい。
ステップ(c)
(3)波紋押し板510を成型して、切刃30と中子40および表面50と裏面60および刃先10と棟20、を有する多層多紋構造刀身素型520を形成する。
ステップ(d)
(4)多層多紋構造刀身素型520を略900℃~1200℃に加熱後、常温で空冷して硬化させる(ステンレス鋼の焼き入れ)。
(5)多層多紋構造刀身素型520を180℃前後に30分程度以上熱し、徐冷で粘りを出す(焼き戻し)。
(6)得られた多層多紋構造刀身素型520の表面50又は両面50、60を、刃先10に向けて鋭利に仕上げ、しのぎ14(14’)を形成する(荒砥ぎ・中砥ぎ)。
ステップ(e)
(7)刃先10の部分を丹念に砥ぎあげる刃付けを、多層多紋構造刀身素型520(しのぎ14)の表面50に行い、小刃12を形成する。この時点で、さらに細かく小刃12の刃先10側を磨き上げ、多層微細構造刃先100(図3)を形成してもよい。
ステップ(f)
(8)多層多紋構造刀身素型520(しのぎ14(14’))の両面を腐食液(例えば塩酸)に30分以上浸漬し、腐食を早めるのが好ましい。
ステップ(g)
(9)さらに細かく小刃12の刃先10側を磨き上げ、図3のように多層微細構造刃先100を形成する。
・・・
【0042】
また、図4(b)は、図4(a)の多層微細構造刃先を付けた打ち刃物1のしのぎ14の部分の模様のみを抽出した側面図である。凹凸のプレス金型に加えて局所的な冷間鍛造を行ったため、表面50全体に多重円状の陥没穴が多数形成される。そして、棟20から刃先10に向けて研磨し鋭利に仕上げてしのぎ14を形成しても、しのぎ14の部分に刃先10から棟20に向かって異種類の材料層が相互に波紋状に積層して表出され、陥没穴の多重円状模様と融合して斑点模様およびダマスカス模様を織り成す多層微細構造が表出される。すなわち、しのぎ14の部分においても、棟20から刃先10に向かって、波状模様はだんだんと疎から密へと変化する一方、多重円状模様(斑点模様)は大から小へ、密から疎へと変化して、多重円状模様(斑点模様)の大きさ、多重度と疎密度および波状模様の疎密度が、棟20から刃先10に向かってなだらかに移り変わるグラデーションを表出している。したがって、しのぎ14部分の先端を構成する刃先10の部分においても、希薄に残存する上記斑点模様と、これを囲むように刃先と略平行に表出するダマスカス模様とが共存した、多層微細構造が表現される。
【0043】
上述のように、表面50に加えて裏面60(図1(b)参照)においても、棟20から刃先10に向けて鋭利に仕上げて、図4(c)のように表面50および裏面60にそれぞれしのぎ14および14’を形成してもよい。図4(c)は図4(b)のA-A断面の模式図であるが、一定の間隔で表面50および裏面60に陥没した浅い穴a、a、a、・・・はプレス金型による凹凸を、ランダムな間隔で陥没したより深い穴b、b、b、・・・は局所的な冷間鍛造による穴を想定して描いたものである。図4(c)において、刃先10に向かって斜め方向にしのぎ14、14’が形成されるが、その際に、プレス金型による浅い凹凸は削られて消失してしまうが、局所的な冷間鍛造による深い穴b、b、b、・・・は一定数が残存することが分かる。このため、本発明の多層微細構造刃先を付けた打ち刃物1においては、刃先10に至るまで斑点模様およびダマスカス模様からなる波紋模様が表現されると考えられる。」
「【図2】
[図:0001384253000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001384253000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001384253000003.jpg]
」
(2)甲1から理解できる事項
ア 段落【0025】、【0026】及び図2(a)から、多層構造金属板500は、異種類の材料層を高圧で全体押圧して積層一体化されて成る平板状のものであることが理解できる。
イ 段落【0042】、【0043】及び図4(c)から、多層構造金属板500の表面50及び裏面60に対し、プレス加工の凹凸による浅い穴a及び局所的な冷間鍛造による深い穴bを形成することで多重円状の陥没穴を形成していることが理解できる。
ウ 段落【0038】、【0043】及び図4(c)から、刃先10に向かって斜め方向にしのぎ14が形成される際に、浅い凹凸は削られて消失するが、局所的な冷間鍛造による深い穴bが一定数残存することにより、刃先10に至るまで波紋模様が表現されることが理解できる。
エ 段落【0038】、図2(c)及び図4(b)(c)から、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより鋭利に仕上げてしのぎ14を形成することで、打ち刃物1が、大略、刀身形状に成形されることが理解できる。
(3)甲1発明
上記(1)及び(2)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「表面50及び裏面60に波紋模様を有する打ち刃物1の製造方法であって、
異種類の材料層を高圧で全体押圧して積層一体化されて成る平板状の多層構造金属板500の表面50及び裏面60に対し、プレス加工の凹凸による浅い穴a及び局所的な冷間鍛造による深い穴bを形成することで多重円状の陥没穴を形成するステップと;
このプレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させるステップと;
この多層多紋構造刀身素型520のしのぎ14の刃先10側を研磨して鏡面化した小刃12を形成し波紋模様を表現した多層微細構造刃先100を付けるステップとを含む打ち刃物1の製造方法。」
2.甲2について
(1)甲2の記載事項
ア 「肌模様の出し方
組み合わせた材料を打ち延ばして刀身を造る時、ある種の加工をすると、特別に美しい肌が人工的に現われて来る。第7図のように、・・・(2)錐で小さな穴をあけると、小杢目になり、(3)鏨で孔をあけると杢目になり、・・・。以上は江戸時代の新刀、特に江戸時代末期に近づいた頃の刀匠のやり方であって・・・。」(96ページ7-11行)
(2)甲2に記載された技術的事項
組み合わせた材料を打ち延ばして刀身を造る時、錐で小さな穴をあけると小杢目になり、鏨で孔をあけると杢目になり、刀身に美しい肌が人工的に現われて来ること。
3.甲3について
(1)甲3の記載事項
「(4)鍛造-型打ち
はさみの寸法・型態を均一にするために、型入れをする。すなわち、刃部だけを赤熱して鋼型の間に挟みこみ、ドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちをする。
こうしておけば、わずかの研りしろだけが残されるので、あとの研削、梳き、その他の加工がきわめて容易になる。
この型打ちは、上下二個の鋼型で鍛圧するために、型の合わせ目にはみでた部分が残る。これをバリというが、・・・これを切り落し、これでだいたいはさみの原型ができあがるのである。」(323ページ7行-324ページ5行)
(2)甲3に記載された技術的事項
はさみの刃部を赤熱して鋼型の間に挟みこみ、ドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちし、バリを切り落してはさみの原型を製造すること。
4.甲4について
(1)甲4の記載事項
「(実施例)
刃物鋼として高炭素鋼・・・、補強母材としてステンレス鋼・・・からなる複合3層板・・・の両面に模様固形物として、大鋸屑を・・・載置固着した。次に冷圧ロールで・・・圧下して・・・大鋸屑を母材表面に押し込み、しかるのち当該押し込まれた大鋸屑を焼却した後、酸洗バフ仕上げして3層構造のエンボス模様刃物用素材板を得たのち、(型抜き→熱処理→刃付→仕上げ)の行程を経、化粧刃物を得た・・・。」(2ページ右下欄8行-3ページ左上欄1行)
(2)甲4に記載された技術的事項
3層構造のエンボス模様刃物用素材板に対し、型抜き、熱処理、刃付及び仕上げの行程を経て化粧刃物を得ること。
5.甲5について
(1)甲5の記載事項
「【請求項1】 刀身部Aと柄部Bを有する一対の鋏部品を形成して、これら一対の鋏部品を回動自在にヒンジ連結して鋏を製造するにあたり、
まず、異種金属を冶金的に積層しその片面に部分的に刃鋼材2を露出せしめた積層板材1を形成し、
次いで、この積層板材1を成形加工することにより刀身部Aの内側面A1のみが刃鋼材2から成る鋏部品素材を形成し、
然る後、この鋏部品素材に対し、所要の型打ち鍛造成形、表面加工、熱処理を施すことにより、刀身部Aの内側面A1には刃鋼材2が露出し、刀身部Aの外側面A2及び柄部Bの内外側面(B1・B2)には異種金属の積層断面模様が連続的に表出された一対の鋏部品を形成するようにしたことを特徴とする化粧鋏の製造方法。
・・・」
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鋏の装飾に関し上記の如き問題があったことに鑑みて為されたもので、刀身部の内側面を除く全ての表面に積層異種金属による断面縞模様が連続的に表出された化粧鋏を簡単に製することのできる化粧鋏の製造方法と、この製造方法により製された化粧鋏を提供することを技術的課題とする。
・・・
【0016】次いで、熱間圧延により得られた積層板材1に対し、打抜き加工を施すことにより、刀身部Aと柄部Bから成る所要形状の鋏部品素材E0を得る(図5~図7参照)。このとき、鋏部品素材E0の刀身部Aに積層板材1の刃鋼材2が位置するように鋏部品素材E0の打抜きを行うことによって(図5参照)、鋏部品素材E0の刀身部Aの内側面A1部分にのみ、刃鋼材2を露出させるのである(図6及び図7参照)。そして、この鋏部品素材E0に対し所望する鋏部品形状の全身型打ち鍛造成形を施し、このとき生じたバリを取り去る(図8及び図9参照)。
【0017】然る後、鋏部品素材E0に対し、所定の表面加工を施すことによって鋏部品素材E0の表面に異種金属の積層断面縞模様を表出させる(図10及び図11参照)。つまり、刃鋼材2が露出した刀身部Aの内側面A1を除く全ての表面に対して、即ち、鋏部品素材E0の刀身部A及び柄部Bの外側面(A2及びB2)、並びに柄部Bの内側面B1に対して、局部的にエンボス加工を行なうことにより、当該表面に所要の凹凸を形成して(図10参照)、そして、この凹凸面を平滑に研磨し金属積層断面を削り出すことにより、前記2種類のステンレス鋼材(SUS410、SUS310S)による変化に富むダマスカス模様状の縞模様を表出させるのである(図11参照)。
・・・
【0023】例えば、上記実施形態では、変化に富む断面縞模様を出すための凹凸を形成するエンボス加工を、全身型打ち鍛造成形を施してバリを取り去った後の鋏部品素材E0に対して行なっているが(図10参照)、勿論これに限定されるものではなく、この凹凸形成を全身型打ち鍛造成形時に行なうようにしても良い。こうすれば、比較的に同様な断面縞模様を表出する鋏部品Eを得ることが可能になる。
【0024】また、この変化に富む断面縞模様を、積層板材1の表面に予め表出させておくようにしても良い。即ち、前述した鋏部品素材E0に対して行なうのと同様に、この積層板材1の板面に対し、局部的にエンボス加工を施して当該板面に所要の凹凸を形成し、そして、この凹凸面を平滑に研磨し金属積層断面を削り出せば、この積層板材1上に変化に富む断面縞模様を表出させることが可能になる。このあと更に鋏部品素材E0に対してもエンボス加工を施すようにすれば、より変化に富む断面縞模様の表出が可能となる。」
(2)甲5に記載された技術的事項
刀身部の内側面を除く全ての表面に積層異種金属による断面縞模様が連続的に表出された化粧鋏を製造する製造方法において、エンボス加工を、全身型打ち鍛造成形後又は全身型打ち鍛造成形時に行うこと、及び、積層板材1の板面に所要の凹凸を形成し、この凹凸面を平滑に研磨し金属積層断面を削り出し、この積層板材1上に変化に富む断面縞模様を表出させること。
第5 当審の判断
1.本件発明1-5についての進歩性欠如(第3の2.(1))について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「表面50及び裏面60」は、本件発明1の「刃表面」又は「表面」に相当し、以下同様に、「波紋模様」は「複雑な模様」又は「複雑な乱れ模様」に、「打ち刃物1」は「刃物」に、「異種類の材料層を高圧で全体押圧して積層一体化されて成る平板状の多層構造金属板500」は「異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板」に、「プレス加工及び局所的な冷間鍛造」は、表面に穴を形成して凹凸にするとの機能に鑑みれば「凹凸加工」に、「プレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510」は「凹凸加工が施された多層金属板」に、「(しのぎが形成された)多層多紋構造刀身素型520」は「刀身形状に成形された多層金属板」に、「しのぎ14の刃先10側」は「傾斜面」に、「研磨」は「研削加工」に、「表現」は「現出」に、「鏡面化した小刃12を形成し波紋模様を表現した多層微細構造刃先100を付ける」は「複雑な乱れ模様が現出した切刃を形成する」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「プレス加工の凹凸による浅い穴a及び局所的な冷間鍛造による深い穴bを形成することで多重円状の陥没穴を形成する」ことと、本件発明1の「切削による凹凸加工を行って内面に中間層が露出した複数の丸穴型の凹部を形成する」こととは、「凹凸加工を行って複数の凹部を形成する」点で共通する。
また、甲1発明の「このプレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させる」ことと、本件発明1の「この凹凸加工が施された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形すると共に、前記凹部が形成された前記傾斜面及びそれ以外の表面を平面化して丸形の模様を現出する」こととは、「この凹凸加工が施された多層金属板を、刀身形状に成形する」限りで共通する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「刃表面に複雑な模様を有する刃物の製造方法であって、
異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、凹凸加工を行って複数の凹部を形成するステップと;
この凹凸加工が施された多層金属板を、刀身形状に成形するステップと;
この刀身形状に成形された多層金属板の傾斜面を研削加工して複雑な乱れ模様が現出した切刃を形成するステップとを含む刃物の製造方法。」
<相違点1>
「異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、凹凸加工を行って複数の凹部を形成するステップ」における、「凹凸加工を行って複数の凹部を形成する」ことに関して、本件発明1は、「切削による凹凸加工」を行って「内面に中間層が露出した複数の丸穴型の凹部」を形成しているのに対し、甲1発明では、プレス加工の凹凸による浅い穴a及び局所的な冷間鍛造による深い穴bを形成することで多重円状の陥没穴を形成している点。
<相違点2>
「凹凸加工が施された多層金属板を、刀身形状に成形するステップ」が、本件発明1は、「凹凸加工が施された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形すると共に、前記凹部が形成された前記傾斜面及びそれ以外の表面を平面化して丸形の模様を現出するステップ」であるのに対し、甲1発明は、プレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させるステップである点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑みて、相違点2について検討する。
刀身形状を成型することに関連して、甲3には、はさみの刃部を赤熱して鋼型の間に挟みこみ、ドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちし、バリを切り落してはさみの原型を製造するとの技術的事項(上記第4の3.(2)を参照。)が記載されている。
他方、甲1発明は、プレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させるものである。
そして、甲1の段落【0043】に、「図4(c)において、刃先10に向かって斜め方向にしのぎ14、14’が形成されるが、その際に、プレス金型による浅い凹凸は削られて消失してしまうが、局所的な冷間鍛造による深い穴b、b、b、・・・は一定数が残存することが分かる。このため、本発明の多層微細構造刃先を付けた打ち刃物1においては、刃先10に至るまで斑点模様およびダマスカス模様からなる波紋模様が表現される・・・。」と記載されていることに鑑みれば、甲1発明において、荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させることは、波紋模様を現出させる上で必須の構成要件と解釈できる。
しかしながら、甲1発明の荒砥ぎ、中砥ぎにより削ってしのぎを形成することに替えて、上記甲3に記載された技術的事項を適用して、多層多紋構造刀身素型520をドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちした場合には、多層多紋構造刀身素型520は圧縮されてしまうこと(例えば、本件特許の図1(c)を参照されたい。)により、局所的な冷間鍛造による深い穴bが残存できず、甲1発明の特徴である波紋模様を現出させることができないと考えるのが自然である。
このことから、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を適用することには、阻害事由があるといわざるを得ない。
さらに、甲1発明は、打ち刃物に関する発明であり、すなわち軟鉄とハガネなどを炉で熱してハンマーで打ち、形状を作り上げる製法を前提とするものであり、しのぎの形成においては上記のとおりのステップを有することで波紋模様を表現させるものであるから、型打ちして刃部を形成する甲3に記載された技術的事項を組み合わせる動機はなく、このようなことは容易に想到し得るとはいえない。
また、「凹凸加工が施された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形すると共に、前記凹部が形成された前記傾斜面及びそれ以外の表面を平面化して丸形の模様を現出するステップ」によって刀身形状に成形する技術は、甲2等、その他の証拠にも見当たらない。
したがって、相違点2に係る本件発明1は、甲1発明と、甲2及び甲3に記載された技術的事項とを組み合わせて、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(3)申立人の主張について
申立人は、相違点2に関連して、申立書の10ページ下から4行-11ページ2行において、「熱間若しくは温間の型鍛造により傾斜面を有する刀身形状に成形する点」は、古来から刃物を製造する場合のごく一般的な成型方法に過ぎず、公知又は周知技術である(甲3の323ページ「(4)鍛造-型打ち」等参照)旨を主張している。
しかしながら、上記(2)でも検討したとおり、熱間又は温間の型鍛造により傾斜面を有する刀身形状に成形することが古来から刃物を製造する場合のごく一般的な成型方法であるとしても、甲1発明に型鍛造を適用した場合には、多層多紋構造刀身素型520は圧縮されてしまうことにより、局所的な冷間鍛造による深い穴bが残存できず、甲1発明の特徴である波紋模様を現出させることができないと考えるのが自然であるから、甲1発明に型鍛造を適用することには、阻害事由がある。また、甲1発明のしのぎの形成に、型鍛造の技術を適用する動機付けも見いだせない。
(4)本件発明2-5について
本件発明2-5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、少なくとも、甲1発明と上記(1)に示した相違点1及び相違点2を有するものである。
したがって、上記(2)で示したのと同様の理由により、本件発明2-5は、甲1発明と、甲2及び甲3に記載された技術的事項とを組み合わせて、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(5)小括
したがって、相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1-5は、甲1発明、甲2及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。
2.本件発明6-7についての進歩性欠如(第3の2.(2))について
(1)本件発明6と甲1発明との対比
上記1.(1)の本件発明1と甲1発明との対比に加えて、
甲1発明の「異種類の材料層を高圧で全体押圧して積層一体化されて成る平板状の多層構造金属板500の表面50及び裏面60に対し、プレス加工の凹凸による浅い穴a及び局所的な冷間鍛造による深い穴bを形成することで多重円状の陥没穴を形成するステップ」と、本件発明6の「異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、圧縮による凹凸加工を行って複数の丸穴型の凹部を形成するステップ」とは、「異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、圧縮による凹凸加工を行って複数の凹部を形成するステップ」である限りで共通する。
また、甲1発明の「このプレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させるステップ」と、本件発明6の「この凹凸加工が施された多層金属板の表面を研削して表面を平面化して丸形の模様を現出するステップと;この研削により表面が平面化された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形するステップ」とは、「この凹凸加工が施された多層金属板を刀身形状に成形するステップ」である限りで共通している。
<一致点>
「刃表面に複雑な模様を有する刃物の製造方法であって、
異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、圧縮による凹凸加工を行って複数の凹部を形成するステップと;
この凹凸加工が施された多層金属板を刀身形状に成形するステップと;
この刀身形状に成形された多層金属板の傾斜面を研削加工して複雑な乱れ模様が現出した切刃を形成するステップとを含む刃物の製造方法。」
<相違点3>
「異種金属が積層一体化されて成る平板状の多層金属板の表面に対し、圧縮による凹凸加工を行って複数の凹部を形成するステップ」について、本件発明6では、「凹部」が「丸穴型」であるのに対し、甲1発明では、丸穴型かどうか不明な点。
<相違点4>
「凹凸加工が施された多層金属板を刀身形状に成形するステップ」が、本件発明6は、「この凹凸加工が施された多層金属板の表面を研削して表面を平面化して丸形の模様を現出するステップと;この研削により表面が平面化された多層金属板を、熱間若しくは温間の型鍛造によって傾斜面を有する刀身形状に成形するステップ」であるのに対し、甲1発明は、プレス加工及び局所的な冷間鍛造が施されて形成された波紋押し板510を、成型して多層多紋構造刀身素型520を得て、多層多紋構造刀身素型520の少なくとも表面50及び裏面60を、棟20から刃先10に向けて荒砥ぎ、中砥ぎにより削って、鋭利に仕上げてしのぎ14を形成し、しのぎ14の形成後も局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させるステップである点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑みて、相違点4について検討する。
刀身形状を成型することに関連して、甲3には、はさみの刃部を赤熱して鋼型の間に挟みこみ、ドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちし、バリを切り落してはさみの原型を製造するとの技術的事項(上記第4の3.(2)を参照。)が記載されている。
しかしながら、上記1.(2)で示したとおり、甲1発明において、多層多紋構造刀身素型520に、局所的な冷間鍛造による深い穴bを一定数残存させることは、波紋模様を現出させる上で必須の構成要件と認められるため、甲1発明に上記甲3に記載された技術的事項を適用して、多層多紋構造刀身素型520をドロップ・ハンマー(落下槌機)などで型打ちすることには、阻害事由があるといわざるを得ない。
また、甲1発明に、甲4又は甲5に記載の技術的事項(上記第4の4.(2)及び5.(2)を参照。)を適用しても、相違点4に係る本件発明6の構成とすることが容易になし得るものとはいえない。
したがって、相違点4に係る本件発明6は、甲1発明と、甲3-甲5に記載された技術的事項とを組み合わせて、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(3)申立人の主張について
申立人は、申立書の12ページ15行-13ページ6行において、凹凸加工をした後、研削して平面化し、その後鍛造を行う点は、30年以上前に本件特許の出願人自身により出願された甲4の実施例に記載されているように、公知又は周知の技術であり、平面化後に鍛造を行うか、鍛造後に平面化を行うかは当業者が適宜選択できる事項に過ぎないし、その順序の差による効果の差異もない。なお、25年以上前に本件特許の出願人自身により出願された甲5の段落【0024】にも同様の点が開示されている。また、「熱間若しくは温間の型鍛造により傾斜面を有する刀身形状に成形する点」は、古来から刃物を製造する場合のごく一般的な成型方法に過ぎず、公知又は周知技術である(甲3の323頁「(4)鍛造-型打ち」等参照)旨を主張している。
しかしながら、凹凸加工をした後、研削して平面化し、その後鍛造を行うことが甲4又は甲5に記載されているかどうかはさておき、凹凸加工をした後、研削して平面化し、その後鍛造を行うことや、熱間若しくは温間の型鍛造により傾斜面を有する刀身形状に成形することが仮に公知又は周知技術であるとしても、甲1発明に型鍛造を適用した場合には、多層多紋構造刀身素型520は圧縮されてしまうことにより、局所的な冷間鍛造による深い穴bが残存できず、甲1発明の特徴である波紋模様を現出させることができないと考えるのが自然であることから、甲1発明に型鍛造を適用することには、阻害事由がある。また、甲1発明は、打ち刃物に関する発明であるから、型鍛造の技術を適用する動機付けも見いだせない。
(4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を直接に引用するものであるから、少なくとも、甲1発明と上記(1)に示した相違点3及び相違点4を有するものである。
したがって、上記(2)で示したのと同様の理由により、本件発明7は、甲1発明と、甲3-甲5に記載された技術的事項とを組み合わせて、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(5)小括
したがって、相違点4に係る本件発明6の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明6-7は、甲1発明及び甲3-甲5に記載の技術的事項に基いて容易になし得るものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1-7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701088