特許異議申立
2017-700204
スピーカ
- 審判番号
- 2017-700204
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-110983
- 登録番号
- 特許第5985006号(P5985006)
- 請求日
- 2017年02月28日
- 審決日
- 2017年09月15日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】オーツェイド株式会社
- 【権利者代理人】金子 宏
- 【異議申立人】能條 明奈
- 審判長/審判官
- 審判長 森川 幸俊
- 審判官 関谷 隆一
- 審判官 國分 直樹
- 分類
- P1651.113-ZC (H04R) / P1651.121-ZC (H04R) / P1651.536-ZC (H04R) / P1651.537-ZC (H04R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5985006号発明「スピーカ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5985006号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
同請求項4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5985006号に係る出願は、平成27年5月30日に出願され、平成28年8月12日にその発明について特許の設定登録がなされたものであって、手続の概要は以下のとおりである。
特許異議申立(全請求項 能條明奈)
:平成29年 2月28日
取消理由通知 :平成29年 5月15日(起案日)
なお、平成29年5月15日付け取消理由通知に対しては、指定した期間内に特許権者から応答がなかった。
第2 通知した取消理由の概要
1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
請求項1ないし3に対して引用文献1ないし3
引用文献1:株式会社村田製作所発行「圧電発音部品」カタログ(2000年3月29日発行)(記載内容について甲第1号証参照)
引用文献2:特開2001-339793号公報(甲第2号証)
引用文献3:理科年表机上版平成8年第69冊(国立天文台編、平成7年11月30日発行)448~449頁(甲第3号証)
2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
請求項1ないし3に対して引用文献1ないし3
(引用文献1ないし3は理由1と同じ)
第3 通知した取消理由1について
1.本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
圧電素子を金属板に貼付し、圧電素子の振動によって金属板に屈曲振動を発生させるスピーカにおいて、
金属板の縦弾性係数をE(kN/mm2)、密度をρ(g/cm3)とし、前記貼付が行われた貼付面における金属板の面積をSm、圧電素子の面積をSpとし、X=(Sp/Sm)・(ρ/E)とするとき、Xの値が、0.01~0.08であることを特徴とする、スピーカ。
【請求項2】
前記Xの値が、0.02~0.07であることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記貼付面において、前記金属板と前記圧電素子とが略相似形状であり、前記金属板と前記圧電素子の重心位置が略一致することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記圧電素子と前記金属板とを貫通する孔を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のスピーカ。」
2.引用文献
引用文献1には、「圧電発音部品」について、図表と共に、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。)
(1)「圧電発音部品は、最近の電子化時代にマッチした電子部品として特に注目され、家電製品をはじめOA機器・オーディオ・電話機など多くの分野で使用されています。また、その用途についても、機器の操作確認音のみではなく時報・警報・スピーカー・電話の送受話器・リンガーなど人と機械のインターフェースとして、幅広く応用展開されています。」(1頁「はじめに」)
(2)「1圧電体セラミックス材質
2金属板材質」(3頁「品名の表し方」)
(3)圧電振動板7BB-12-9について寸法(mm)φD「12.0」a「9.0」備考「黄銅板」(3頁「他励振タイプ製品一覧表」)
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
(a)引用文献1には、スピーカーを用途とする圧電発音部品が記載されている(摘示事項(1))。
(b)圧電振動子が、円板状の圧電セラミクス板の両面に電極を施してなる圧電素子を金属円板からなる振動板に貼り付けたものであることは、技術常識である(後述の引用文献2の摘示事項(5))から、3頁の「外形寸法図」に示された直径φDの円は摘示事項(2)の「金属板」を示し、同じく直径aの円は「圧電体セラミックス」を示すことは明らかである。
したがって、「圧電発音部品は、圧電体セラミックスを金属板に貼付した圧電振動板である」といえる。
(c)金属板直径は12.0mm、圧電セラミックスの寸法は9.0mm、金属板材質は黄銅板である(摘示事項(3))。
以上を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が記載されているものと認める。
「スピーカーを用途とする圧電発音部品であって、
圧電体セラミックスを金属板に貼付した圧電振動板であり、
金属板直径は12.0mm、圧電セラミックスの寸法は9.0mm、金属板材質は黄銅板である圧電発音部品。」
引用文献2には、「圧電音響装置」について、図面と共に、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。)
(4)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧電振動子を用い、音を発する圧電音響装置に関し、特に音圧レベルが高い圧電スピーカと呼ばれるタイプのものであって、音圧レベル及び音質が向上し、ダイナミックタイプスピーカに匹敵する高い音質が得られる圧電音響装置に関する。」
(5)「【0002】
【従来の技術】従来における圧電音響装置は、円板状の圧電セラミクス板の両面に電極を施してなる圧電素子を金属円板からなる振動板に貼り付けた圧電振動子を使用する。前記圧電素子の電極間に駆動電圧を印加し、この駆動電圧方向と直交する方向の変位を径方向の伸縮として取り出し、かつその伸縮により振動板に撓みを起こすことで圧電振動子を振動させることにより、音響的に有効な振動を取り出す。」
(6)「【0027】例えば、表1に示された材質の組み合わせにおいて、より具体的な圧電音響装置の例をあげる。チタン酸ジルコン酸鉛からなる直径15mm、厚み0.05mmの円板状の圧電セラミクスの両面をメタライズして電極を施した圧電素子12を用意し、この圧電素子12を直径17mm、厚み0.02mmの円板状のアルミニウム板からなる振動板11に貼り付けて、圧電振動子1を構成する。」
上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。
(d)引用文献2には、圧電振動子を用いた圧電音響装置であって、圧電スピーカと呼ばれるタイプのものが記載されている(摘示事項(4))。
(e)圧電音響装置は、円板状の圧電セラミクス板の両面に電極を施してなる圧電素子を金属円板からなる振動板に貼り付けた圧電振動子を使用する。前記圧電素子の電極間に駆動電圧を印加し、この駆動電圧方向と直交する方向の変位を径方向の伸縮として取り出し、かつその伸縮により振動板に撓みを起こすことで圧電振動子を振動させることにより、音響的に有効な振動を取り出す(摘示事項(5))。
(f)直径15mmの円板状の圧電セラミクスの両面をメタライズして電極を施した圧電素子12を用意し、この圧電素子12を直径17mmの円板状のアルミニウム板からなる振動板11に貼り付けて、圧電振動子1を構成する(摘示事項(6))。
以上を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用文献2発明」という。)が記載されているものと認める。
「圧電振動子を用いた圧電音響装置であって、圧電スピーカと呼ばれるタイプのものであり、
圧電音響装置は、円板状の圧電セラミクス板の両面に電極を施してなる圧電素子を金属円板からなる振動板に貼り付けた圧電振動子を使用し、前記圧電素子の電極間に駆動電圧を印加し、この駆動電圧方向と直交する方向の変位を径方向の伸縮として取り出し、かつその伸縮により振動板に撓みを起こすことで圧電振動子を振動させることにより、音響的に有効な振動を取り出すものであり、
直径15mmの円板状の圧電セラミクスの両面をメタライズして電極を施した圧電素子12を用意し、この圧電素子12を直径17mmの円板状のアルミニウム板からなる振動板11に貼り付けて、圧電振動子1を構成する圧電音響装置。」
3.対比・判断
まず、本件特許発明1と引用文献1発明とを対比する。
(1)スピーカ
引用文献1発明は、「スピーカーを用途とする圧電発音部品であって、圧電体セラミックスを金属板に貼付した圧電振動板であ」るから、圧電体セラミックスの振動によって金属板に屈曲振動を発生させるものであることは明らかである。そして、「圧電体セラミックス」は「圧電素子」といえる。
したがって、本件特許発明1と引用文献1発明とは、「圧電素子を金属板に貼付し、圧電素子の振動によって金属板に屈曲振動を発生させるスピーカ」である点で一致する。
(2)Xの値
金属板直径、圧電セラミックスの寸法、引用文献3に記載された7/3黄銅(C2600)及び6/4黄銅(C2801)の密度とヤング率の値を用いて本件特許の請求項1に記載されたXの値を計算すると、有効数字1桁で0.04~0.05となる。
したがって、本件特許発明1と引用文献1発明とは、「金属板の縦弾性係数をE(kN/mm2)、密度をρ(g/cm3)とし、前記貼付が行われた貼付面における金属板の面積をSm、圧電素子の面積をSpとし、X=(Sp/Sm)・(ρ/E)とするとき、Xの値が、0.04~0.05である」点で一致する。
そうすると、本件特許発明1と引用文献1発明とは、全ての点で一致し、相違点を有しない。
圧電振動板7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれについても、それぞれのφD及びaの値と、引用文献3に記載された7/3黄銅(C2600)、6/4黄銅(C2801)、析出硬化型ステンレス鋼(SUS631)、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)及びオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)のρ及びEの値とを用いて本件特許の請求項1に記載されたXの値を計算すると、有効数字1桁で0.02~0.04となる。
したがって、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)である。
次に、本件特許発明1と引用文献2発明とを対比する。
(1)スピーカ
引用文献2発明は、「圧電スピーカと呼ばれるタイプのものであり、」「円板状の圧電セラミクス板の両面に電極を施してなる圧電素子を金属円板からなる振動板に貼り付けた圧電振動子を使用し、前記圧電素子の電極間に駆動電圧を印加し、この駆動電圧方向と直交する方向の変位を径方向の伸縮として取り出し、かつその伸縮により振動板に撓みを起こすことで圧電振動子を振動させることにより、音響的に有効な振動を取り出す」圧電音響装置である。
したがって、本件特許発明1と刊行物2発明とは、「圧電素子を金属板に貼付し、圧電素子の振動によって金属板に屈曲振動を発生させるスピーカ」である点で一致する。
(2)Xの値
圧電素子の直径、振動板の直径、引用文献3に記載された工業用アルミニウム(A1085P)の密度とヤング率の値を用いて本件特許の請求項1に記載されたXの値を計算すると、有効数字1桁で0.03となる。
したがって、本件特許発明1と引用文献2発明とは、「金属板の縦弾性係数をE(kN/mm2)、密度をρ(g/cm3)とし、前記貼付が行われた貼付面における金属板の面積をSm、圧電素子の面積をSpとし、X=(Sp/Sm)・(ρ/E)とするとき、Xの値が、0.03である」点で一致する。
そうすると、本件特許発明1と引用文献2発明とは、全ての点で一致し、相違点を有しない。
したがって、本件特許発明1は、引用文献2に記載された発明(引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子)である。
本件特許発明2は、本件特許発明1のスピーカにおいて、Xの値が、0.02~0.07であるものであるから、引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)であり、引用文献2に記載された発明(引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子)である。
引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)は、3頁の外形寸法図より、「貼付面において、金属板と圧電素子とが略相似形状であり、金属板と圧電素子の重心位置が略一致する」といえる。
また、引用文献2に記載された発明(引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子)は、図1より、「貼付面において、金属板と圧電素子とが略相似形状であり、金属板と圧電素子の重心位置が略一致する」といえる。
したがって、本件特許発明3は、引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)であり、引用文献2に記載された発明(引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子)である。
第4 通知した取消理由2について
引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)において、それぞれのφD及びaの値をそれに近いものに変更すること、及び、金属板の材料を類似のものに変更することは、いずれも当業者が適宜なし得ることである。
したがって、本件特許発明1ないし3は、引用文献1に記載された発明(引用文献1に記載された圧電振動板7BB-12-9、7BB15-6、7BB-20-3、7BB-20-6、7BB-27-3、7BB-27-3R5、7BB-27-4、7BB-35-3、7BB-41-2及び7SB-20-7のそれぞれ)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子において、その圧電素子の直径及び振動板の直径の値をそれに近いものに変更すること、及び、振動板の材料を類似のものに変更することは、いずれも当業者が適宜なし得ることである。
したがって、本件特許発明1ないし3は、引用文献2に記載された発明(引用文献2の表1及び【0027】に記載された圧電振動子)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 特許異議申立人が主張するその他の取消理由について
1.本件特許発明4が特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない理由
特許異議申立人は、
(1)本件特許発明4と甲第6号証(大韓民国登録実用新案公報第20-0476280号)に記載された発明とは、「圧電素子と金属板とを貫通する孔を有する」点で一致し、所望の音質を求めて、金属板内の音伝導を改善するために圧電素子や金属板の密度および弾性係数をもとに圧電素子や金属板の材質および面積を選択することは設計的事項である。
(2)また、周波数特性を低周波数帯域から高周波数帯域にかけてフラットにするという課題を解決するために、圧電素子と振動板との長さを異なるものとすることで複数の共振周波数を発生させるということは当業者にとって周知技術であり(甲第4号証(特開2004-23436号公報))、甲第1号証および甲第2号証に記載のスピーカにおいて、そのような周知技術を適用し、複数の共振周波数を発生させるために、甲第6号証に記載されるような孔を設け、「孔に区切られた区間の長さの相違により、多様な共振周波数を持」たせることは、当業者にとって容易に想到し得るものである。
(3)したがって、本件特許発明4は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明、ならびに甲第4号証および甲第6号使用に記載された発明から容易に想到し得る発明である。
と主張する(特許異議申立書23~24頁)。
しかしながら、甲第6号証に記載されたスピーカは、低音域を具現するダイナミックスピーカと高音域を具現する圧電素子を用いて高音質を提供できるスピーカであって([0001])、圧電素子(30)の中央に形成される孔(36)と圧電素子(30)の縁部に沿って形成される1つまたは2つ以上の孔(37)とは、ダイナミックスピーカの振動板(28)から発生した音が通過できるように形成される孔である([0020])から、本件特許発明4の孔とは大きく異なる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
2.記載不備の理由
特許異議申立人は、
(1)本件特許発明の課題は、「金属板と圧電素子を貼付したスピーカにおいて、出力音の歪率が低いものを提供すること」であると認められる。当該課題について、解決できることを当業者が認識できるように記載されている範囲は、実施例において実験結果が示されている範囲である。すなわち、示されているのは孔3を設けない場合の実験結果のみであり、実際に孔を設けたスピーカを作製した実験結果について何ら記載されていない。このため、孔を設けたスピーカにおいて所望の音質を求めるためには、具体的に孔を開ける場所や大きさを選択するなど、当業者が過度の試行錯誤を要するものである。
したがって本件特許発明4がいわゆる当業者がその実施をすることができる程度に発明の詳細な説明において明確かつ十分に記載されているとはいえないため、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)また、本件特許発明4については、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えており、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載したものとが、実質的に対応しているとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
と主張する(特許異議申立書24~25頁)。
しかしながら、図1には孔3が記載され、【0021】には、「金属板1及び圧電素子2には、孔3を設けてもよい。孔3は、金属板1及び圧電素子2を貫通している。これにより、振動板が、孔に区切られた区間の長さの相違により、多様な共振周波数を持つ。圧電素子2についても孔3が貫通しているので、金属板1の共振周波数(金属板1及び圧電素子2全体としての共振周波数)は、多様になる。周波数特性がフラットになり、特定の周波数に尖出した歪が緩和される。」との記載があるから、当業者は、これらの記載を参照して、具体的に孔を開ける場所や大きさを選択することが可能であり、孔を設けることにより「周波数特性がフラットになり、特定の周波数に尖出した歪が緩和される」ことを認識できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし3に係る特許は、同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、甲第2号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項4に係る発明については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700204