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特許異議申立

2021-700926

表面処理銅箔および銅張積層基板

審判番号
2021-700926
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-541161
登録番号
6853370
請求日
2021年09月28日
審決日
2022年09月16日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サーキット フォイル ルクセンブルグ エス.エイ.アール.エル.
  • 【権利者代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】佐藤 武史
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-YAA(C25D) / P1651.121-YAA(C25D) / P1651.537-YAA(C25D) / P1651.536-YAA(C25D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6853370号発明「表面処理銅箔および銅張積層基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6853370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第6853370号の請求項2~5に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。 特許第6853370号の請求項1及び6~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6853370号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、2017年(平成29年)7月31日を国際出願日とする特許出願(特願2019-541161号)に係るものであって、令和3年3月15日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年3月31日である。)。 その後、令和3年9月28日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である佐藤武史(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 令和3年 9月28日提出 特許異議申立書 令和4年 1月24日付け 取消理由通知書 4月25日提出 意見書、訂正請求書 5月24日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知) 6月23日提出 意見書(申立人) 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和4年4月25日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記銅箔の厚さは、5μm~70μmであり、」と記載されているのを、「前記銅箔の厚さは、15μm超過70μm以下であり、」に訂正し、また、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、0.7μm~2.0μmであり、」と記載されているのを、「前記銅箔の厚さが15μm超過30μm以下である場合、前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは0.8μm~1.05μmであり、前記銅箔の厚さが30μm超過70μm以下である場合、前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが0.7μm~1.0μmである、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に「前記請求項1~8のいずれか1項に記載の銅箔と、」と記載されているのを、「前記請求項1、6~8のいずれか1項に記載の銅箔と、」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~10は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「銅箔の厚さ」について、「5μm~70μm」を「15μm超過70μm以下」とする訂正を含むものである。 この訂正は、「銅箔の厚さ」について、「5μm~70μm」を「15μm超過70μm以下」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「訂正前明細書等」という。)には、銅箔の厚さが、「15μm超過30μm以下」(請求項3、【0013】)、「30μm超過70μm以下」(請求項4、【0014】)であることが記載されており、訂正前明細書等には、銅箔の厚さが15μm超過70μm以下であることが記載されているといえるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1における「銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」について、「0.7μm~2.0μm」を、「銅箔の厚さが15μm超過30μm以下である場合」は、「0.8μm~1.05μm」とし、「銅箔の厚さが30μm超過70μm以下である場合」は、「0.7μm~1.0μm」とする訂正を含むものである。 この訂正は、上記アの訂正により銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」としたことに伴い、上記の平均粗さRz JISについて、訂正前の「0.7μm~2.0μm」を、銅箔の厚さに応じて、「銅箔の厚さが15μm超過30μm以下である場合」は、「0.8μm~1.05μm」に限定し、「銅箔の厚さが30μm超過70μm以下である場合」は、「0.7μm~1.0μm」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正前明細書等には、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合、上記の平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であること(請求項3、【0013】)、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合、上記の平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であること(請求項4、【0014】)が記載されているから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2~5について 訂正事項2~5に係る訂正は、それぞれ、訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、これらの訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項9における引用請求項について、「請求項1~8のいずれか1項」を、「請求項1、6~8のいずれか1項」に訂正するものである。 この訂正は、上記(2)の訂正事項2~5による請求項の削除に合わせて、引用請求項の一部を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~10について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 上記2のとおり、各訂正事項に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 銅箔のマット面を粗化処理して低(low)粗度特性を有する銅箔であって、 前記銅箔の厚さは、15μm超過70μm以下であり、 前記銅箔の厚さが15μm超過30μm以下である場合、前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは0.8μm~1.05μmであり、 前記銅箔の厚さが30μm超過70μm以下である場合、前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが0.7μm~1.0μmである、 前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり、 粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である、銅箔。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記銅箔の粗化処理された表面の粗化粒子の大きさは、0.1μm~2.0μmである、請求項1に記載の銅箔。 【請求項7】 前記銅箔の粗化処理された表面の粗化処理された粒子で形成された突起物の高さは、1.0μm~5.0μmである、請求項6に記載の銅箔。 【請求項8】 前記銅箔は、電解銅箔である、請求項1に記載の銅箔。 【請求項9】 前記請求項1、6~8のいずれか1項に記載の銅箔と、 前記銅箔の少なくとも一表面上に形成された樹脂層とを含む銅張積層基板。 【請求項10】 前記請求項9に記載の銅張積層基板を含む印刷回路基板。 第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件特許の請求項1~10に係る特許は、下記(1)~(14)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第11号証(以下、単に「甲1」等という。下記(15)を参照。)である。 (1)申立理由1-1(新規性) 本件訂正前の請求項1、4、5及び8~10に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、4、5及び8~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (2)申立理由1-2(新規性) 本件訂正前の請求項1~3、6及び8~10に係る発明は、甲2に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、6及び8~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (3)申立理由1-3(新規性) 本件訂正前の請求項1、2及び5~10に係る発明は、甲3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び5~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (4)申立理由1-4(新規性) 本件訂正前の請求項1、3、5及び8~10に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5及び8~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (5)申立理由1-5(新規性) 本件訂正前の請求項1、3、5及び8~10に係る発明は、甲5に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5及び8~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (6)申立理由1-6(新規性) 本件訂正前の請求項1、3及び5~10に係る発明は、甲6に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び5~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (7)申立理由2-1(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (8)申立理由2-2(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (9)申立理由2-3(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (10)申立理由2-4(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (11)申立理由2-5(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (12)申立理由2-6(進歩性) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 (13)申立理由3(サポート要件) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (14)申立理由4(実施可能要件) 本件訂正前の請求項1~10に係る発明については、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条4号に該当する。 (15)証拠方法 ・甲1 米国特許第9673646号明細書 ・甲2 「JPCA Show 2016 第46回国際電子回路産業展」のカタログ、JX金属株式会社、2016年6月1日 ・甲3 特開2006-103189号公報 ・甲4 特開2015-105440号公報 ・甲5 特開平9-143785号公報 ・甲6 国際公開第2016/174998号 ・甲7 特開2005-150265号公報 ・甲8 特開2011-168887号公報 ・甲9 特開2018-28147号公報 ・甲10 「電解銅箔 ED Copper CF-T4X-SV」のカタログ、福田金属箔粉工業株式会社、2016年5月20日 ・甲11 「VSP series 超高速伝送基板/低伝送損失材料用スムースプロファイル銅箔」のカタログ、三井金属鉱業株式会社、2015年1月 2 令和4年6月23日提出の意見書(申立人)とともに提出された証拠方法 ・参考文献1 IPC-4562 Metal Foil for Printed Wiring Applications、2000年5月、1~2頁 ・参考文献2 特開2007-217787号公報 3 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1-1(新規性) 上記1(3)の申立理由1-3(新規性)と同旨。 (2)取消理由1-2(新規性) 上記1(4)の申立理由1-4(新規性)と同旨。 (3)取消理由2-1(進歩性) 上記1(9)の申立理由2-3(進歩性)(うち、本件訂正前の請求項1~3及び5~10に対するもの。)と同旨。 (4)取消理由2-2(進歩性) 上記1(10)の申立理由2-4(進歩性)(うち、本件訂正前の請求項1~3、5及び8~10に対するもの。)と同旨。 第5 当審の判断 本件特許の請求項2~5が本件訂正により削除された結果、同請求項2~5に係る特許についての本件特許異議の申立ては対象を欠くこととなったため、特許法120条の8第1項において準用する同法135条の規定により決定をもって却下すべきものである。 また、以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由1-1(新規性)、申立理由1-3(新規性)、取消理由2-1(進歩性)、 申立理由2-3(進歩性) (1)甲3に記載された発明 甲3の記載(請求項1、5、8、【0001】、【0009】、【0014】、【0022】~【0026】、【0041】~【0058】、表1、2)によれば、特に、請求項1、5、8、【0009】の記載のほか、表1の実施例1、4、7、9、11(【0041】~【0045】、表1)にそれぞれ着目すると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 なお、以下の甲3発明1~5は、それぞれ、実施例1、4、7、9、11に対応するものであり、表1の「処理面」の欄における「M」 の表記は、粗化処理面がマット面であることを表しているものと解される。 「厚さ:12μm、マット面粗度:Rz(JIS B 0601-1994「表面粗さの定義と表示」の5.1十点平均粗さの定義に規定されたRz。以下同様。)=0.86μm、光沢面粗度:Rz=1.62μmの未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面の表面粗さRzが1.12μm、明度値が22である、表面処理銅箔。」(以下、「甲3発明1」という。) 「厚さ:12μm、マット面粗度:Rz=1.26μm、光沢面粗度:Rz=1.53μmの未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面の表面粗さRzが1.46μm、明度値が24である、表面処理銅箔。」(以下、「甲3発明2」という。) 「厚さ:12μm、マット面粗度:Rz=1.26μm、光沢面粗度:Rz=1.53μmの未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面の表面粗さRzが1.35μm、明度値が24である、表面処理銅箔。」(以下、「甲3発明3」という。) 「厚さ:12μm、マット面粗度:Rz=0.86μm、光沢面粗度:Rz=1.62μmの未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面の表面粗さRzが1.08μm、明度値が21である、表面処理銅箔。」(以下、「甲3発明4」という。) 「厚さ:12μm、マット面粗度:Rz=0.86μm、光沢面粗度:Rz=1.62μmの未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面の表面粗さRzが1.12μm、明度値が28である、表面処理銅箔。」(以下、「甲3発明5」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明1~5とを対比する。 (ア)甲3発明1~5における「未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した粗化処理面」は、本件発明1における「銅箔のマット面を粗化処理し」た「銅箔の粗化処理されたマット面」に相当する。 (イ)甲3発明1~5における「表面粗さRz」は、「JIS B 0601-1994「表面粗さの定義と表示」の5.1十点平均粗さの定義に規定されたRz」を意味するものである。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、本件明細書の「銅箔の粗化処理された表面の粗さRz JISは、ISO4287によって測定されたものであってもよい。」(【0044】)との記載及び技術常識に照らして、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものと解されるところ、当該「十点平均粗さRz JIS」が、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」と同義であることは、当業者にとって明らかである(JISを参照)。 そうすると、甲3発明1~5における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当する。 そして、本件発明1と甲3発明1~5とは、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは所定値」である限りで共通する。 (ウ)甲3発明1~5においては、未処理電解銅箔の厚さは、いずれも、「12μm」であるものの、表面処理銅箔の厚さは不明であるから、本件発明1と甲3発明1~5とは、「前記銅箔の厚さは、所定値」である限りで共通する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲3発明1~5とは、 「銅箔のマット面を粗化処理した銅箔であって、 前記銅箔の厚さは、所定値であり、 前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは所定値である、銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲3発明1~5では、未処理電解銅箔の厚さが、いずれも、「12μm」であるものの、表面処理銅箔の厚さは不明であり、表面処理銅箔の粗化処理面(マット面)の表面粗さRzが、それぞれ、「1.12μm」、「1.46μm」、「1.35μm」、「1.08μm」、「1.12μm」である点。 ・相違点3-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲3発明1~5では、「未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した」後の「光沢面粗度:Rz」が不明であるため、「粗化処理面」(マット面)の「表面粗さRz」が、「未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した」後の「光沢面粗度:Rz」より「低い」かどうか不明であり、また、「粗化処理面」(マット面)の「表面粗さRz」に対する、「未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した」後の「光沢面粗度:Rz」の「比率」が「1超過2以下」であるかどうか不明である点。 ・相違点3-3 本件発明1では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」のに対して、甲3発明1~5では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」かどうか不明である点。 イ 相違点3-1の検討 (ア)まず、相違点3-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲3発明1~5においては、未処理電解銅箔の厚さは、いずれも、「12μm」であるが、甲3には、未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した表面処理銅箔の厚さについては、明記されていない。 b ここで、甲3には、未処理銅箔表面に形成された粗化粒子の突起物について、その高さ(未処理銅箔の表面と突起物の頂点との距離)が0.3~3.0μmであること(請求項3、【0027】)が記載されている。 そうすると、甲3発明1~5における表面処理銅箔の厚さは、最大でも15μmであるから、マット面を粗化処理した銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」である本件発明1とは、異なるものである。 c 仮に、甲3発明1~5における表面処理銅箔の厚さが、15μmを超えることがあったとしても、その粗化処理面(マット面)の表面粗さRzは、それぞれ、「1.12μm」、「1.46μm」、「1.35μm」、「1.08μm」、「1.12μm」であるから、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、銅箔の粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」である本件発明1とは、やはり異なるものである(なお、甲3発明1~5における表面処理銅箔の厚さが「30μm超過」となることは、技術常識に照らして、想定しがたい。)。 d 以上によれば、相違点3-1は実質的な相違点である。 したがって、相違点3-2、3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点3-1の容易想到性について検討する。 a 甲3には、未処理銅箔の厚さが1μm~200μmであること(【0023】)、また、未処理銅箔の表面に粗化粒子を付着させた粗化処理面の表面粗さRzが0.6~2.0μmであること(【0025】)が記載されている。 しかしながら、甲3には、未処理銅箔の厚さ又は表面処理銅箔の厚さについて、特に「15μm超過70μm以下」が好ましいことについては記載されておらず、ましてや、未処理銅箔の厚さ又は表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」、「30μm超過70μm以下」である場合に、それぞれ、未処理銅箔表面の表面に粗化粒子を付着させた粗化処理面の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」、「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 b この点、本件明細書の実施例(【0094】~【0108】、表3)によれば、特に表3によれば、銅箔のマット面に熱硬化性樹脂を積層することによって製造された銅張積層基板の接着強度を測定すると、銅箔の厚さが大きいほど、接着強度が大きくなる傾向にあり、特に、銅箔の厚さが大きいと、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが低くても、接着強度が大きくなる傾向にあること(すなわち、接着強度の確保のためにマット面の平均粗さRz JISをそれほど高くする必要がないこと)が見て取れる(なお、銅箔の厚さが小さいものの中には、銅箔の厚さが大きいものよりも接着強度が大きいものが存在するが、これは、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが高いことが理由と考えられる。)。 そして、本件明細書の記載(【0007】、【0024】、【0105】)によれば、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが低いほど、電気的特性(例えば、挿入損失)に優れることが理解できる。 ところで、本件発明1は、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるというものであり、すなわち、銅箔の厚さが大きいほど、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが低い範囲に特定されたものである。 本件明細書の上記記載を踏まえると、本件発明1において、銅箔の厚さに応じて、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISを特定の範囲に特定したことには、接着強度と電気的特性(例えば、挿入損失)との両立を最適化する観点から、一定程度の技術的意義があるものと理解できる。 c 上記aで指摘した各証拠の記載のほか、上記bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、未処理電解銅箔の厚さが「12μm」である甲3発明1~5において、表面処理銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」とし、その上で、表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、表面処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 d さらにいえば、甲3発明1~5において、仮に、未処理電解銅箔の光沢面粗度:Rzが、未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した後であっても、実質的に変化しないとすると、甲3発明1~5においては、本件発明1と同様に、粗化処理面(マット面)の表面粗さRz(例えば甲3発明1では1.12μm)が、未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した後の光沢面粗度:Rz(同1.62μm)より「低い」ものであり、また、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzに対する、未処理電解銅箔のマット面に粗化粒子を付着させて粗化した後の光沢面粗度:Rzの比率が「1超過2以下」であるという関係を満たすといえる(相違点3-2を参照)。 しかしながら、甲3には、上記のような関係を満たすように制御することについては、何ら具体的に記載されていないから、甲3発明1~5において、上記のような関係を満たすよう維持したままで、表面処理銅箔の厚さに応じて、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzを変更すること(上記cを参照)がそもそも動機付けられるとはいえない。 e 以上によれば、甲3発明1~5において、表面処理銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」とし、その上で、表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、表面処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、粗化処理面(マット面)の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点3-2、3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び6~10は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲3に記載された発明並びに甲1、甲2、甲4~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、取消理由1-1(新規性)、申立理由1-3(新規性)、取消理由2-1(進歩性)、 申立理由2-3(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由1-2(新規性)、申立理由1-4(新規性)、取消理由2-2(進歩性)、申立理由2-4(進歩性) (1)甲4に記載された発明 甲4の記載(請求項1、【0011】、【0012】、【0032】、【0034】、【0035】、【0042】、【0044】、【0051】~【0060】、表1~3、図1~3)によれば、特に、【0051】の「なお、実施例1、9の表面処理は平滑めっき処理(粗化処理でない表面処理)に相当し、それ以外の実施例および比較例における表面処理は粗化処理に相当する。」との記載、【0056】の「<表面粗さRzの測定>」、「JIS B0601-1994に準拠して十点平均粗さを表面処理面について測定」、「表面処理前の粗さRzについてもあらかじめ測定」との記載、表3の「表面処理前粗さRz」、「表面処理後粗さRz」との記載のほか、実施例2~4(【0051】、表1~3)に着目すると、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 なお、以下の甲4発明1は実施例2、3に対応し、甲4発明2は実施例4に対応するものである。 「厚さ18μm、析出面の表面粗さRz(JIS B 0601-1994に準拠して測定した十点平均粗さRz。以下同様。)0.6μm、ドラム面の表面粗さRz1.5μmの電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った表面処理銅箔であって、 析出面の表面処理後の表面粗さRzが1.10μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲4発明1」という。) 「厚さ18μm、析出面の表面粗さRz0.6μm、ドラム面の表面粗さRz1.5μmの電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った表面処理銅箔であって、 析出面の表面処理後の表面粗さRzが1.20μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲4発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明1、2とを対比する。 (ア)甲4発明1、2における電解銅箔の「析出面」、「ドラム面」は、それぞれ、本件発明1における銅箔の「マット面」、「シャイニー面」に相当する。 また、甲4発明1、2において、「電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った」ことは、本件発明1において、「銅箔のマット面を粗化処理し」たことに相当する。 さらに、甲4発明1、2における粗化処理である「表面処理後」の「析出面」は、本件発明1における銅箔の「粗化処理されたマット面」に相当する。 (イ)甲4発明1、2における「表面粗さRz」は、「JIS B 0601-1994に準拠して測定した十点平均粗さRz」を意味するものである。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものと解されるところ、当該「十点平均粗さRz JIS」は、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」と同義である。 そうすると、甲4発明1、2における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当する。 そして、本件発明1と甲4発明1、2とは、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは所定値」である限りで共通する。 (ウ)甲4発明1、2においては、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の「厚さ」は、いずれも、「18μm」であるものの、表面処理銅箔の厚さは不明であるから、本件発明1と甲4発明1、2とは、「前記銅箔の厚さは、所定値」である限りで共通する。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲4発明1、2とは、 「銅箔のマット面を粗化処理した銅箔であって、 前記銅箔の厚さは、所定値であり、 前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは所定値である、銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲4発明1、2では、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さが、いずれも、「18μm」であるものの、表面処理銅箔の厚さは不明であり、析出面の表面処理後の表面粗さRzが、それぞれ、「1.10μm」、「1.20μm」である点。 ・相違点4-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲4発明1、2では、「電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った」後の「ドラム面の表面粗さRz」が不明であるため、析出面の表面処理後の「表面粗さRz」が、「電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った」後の「ドラム面の表面粗さRz」より「低い」かどうか不明であり、また、析出面の表面処理後の「表面粗さRz」に対する、「電解銅箔の析出面に、粗化処理である表面処理としてめっきを行った」後の「ドラム面の表面粗さRz」の「比率」が「1超過2以下」であるかどうか不明である点。 ・相違点4-3 本件発明1では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」のに対して、甲4発明1、2では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」かどうか不明である点。 イ 相違点4-1の検討 (ア)まず、相違点4-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合について 甲4発明1、2においては、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さは、いずれも、「18μm」であるが、甲4には、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った表面処理銅箔の厚さについては、明記されていない。 もっとも、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行ったとしても、技術常識に照らして、その厚さが70μmを超えることはなく、また、30μmを超えることもないと解されるから、甲4発明1、2における表面処理銅箔の厚さは、本件発明1における銅箔の厚さ「15μm超過70μm以下」、「15μm超過30μm以下である場合」を満たすといえる。 しかしながら、甲4発明1、2における析出面の表面処理後の表面粗さRzは、それぞれ、「1.10μm」、「1.20μm」であるから、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、銅箔の粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」である本件発明1とは、異なるものである。 b 銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合について 甲4発明1、2においては、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さは、いずれも、「18μm」であるが、甲4には、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った表面処理銅箔の厚さについては、明記されていない。 また、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った場合、技術常識に照らして、その厚さが70μmを超えることはないとしても、30μmを超えることもないと解されるから、甲4発明1、2における表面処理銅箔の厚さは、本件発明1における銅箔の厚さ「15μm超過70μm以下」を満たすとしても、「30μm超過70μm以下である場合」を満たすとはいえない。 また、甲4発明1、2における析出面の表面処理後の表面粗さRzは、それぞれ、「1.10μm」、「1.20μm」であるから、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、銅箔の粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」である本件発明1とは、異なるものである。 c 小括 以上によれば、相違点4-1は実質的な相違点である。 したがって、相違点4-2、4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点4-1の容易想到性について検討する。 a 甲4には、銅箔基材(粗化処理である表面処理前の電解銅箔)の厚さについて、例えば1~300μm、あるいは3~100μm、あるいは5μm~70μm、あるいは6μm~35μm、あるいは9μm~18μmであること(【0034】)、また、析出面の表面処理後の表面粗さRz(Rz JIS)について、2.2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下、典型的には0.5~2.2μm以下であること(【0042】)が記載されている。 しかしながら、甲4には、銅箔基材(粗化処理である表面処理前の電解銅箔)の厚さ又は表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、析出面の表面処理後の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、銅箔基材(粗化処理である表面処理前の電解銅箔)の厚さ又は表面処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、析出面の表面処理後の表面粗さRzを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さが「18μm」である甲4発明1、2において、析出面の表面処理後の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とする動機付けがあるとはいえない。 同様に、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さが「18μm」である甲4発明1、2において、表面処理銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、析出面の表面処理後の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 b また、甲4発明1、2においては、析出面の表面処理後の表面粗さRzが、それぞれ、「1.10μm」、「1.20μm」であるところ、上記aのとおり、甲4においてさらに好ましいとされる「1.2μm以下」を満たすものとなっていることから、甲4発明1、2において、析出面の表面処理後の表面粗さRzをさらに低くし、「0.8μm~1.05μm」、「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 c さらにいえば、甲4発明1、2において、仮に、粗化処理である表面処理前の電解銅箔のドラム面の表面粗さRzが、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った後であっても、実質的に変化しないとすると、甲4発明1、2においては、本件発明1と同様に、析出面の表面処理後の表面粗さRz(それぞれ1.10μm、1.20μm)が、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った後のドラム面の表面粗さRz(いずれも1.5μm)より「低い」ものであり、また、析出面の表面処理後の表面粗さRzに対する、電解銅箔の析出面に粗化処理である表面処理としてめっきを行った後のドラム面の表面粗さRzの比率が「1超過2以下」であるという関係を満たすといえる(相違点4-2を参照)。 しかしながら、甲4には、上記のような関係を満たすように制御することについては、何ら具体的に記載されていないから、甲4発明1、2において、上記のような関係を満たすよう維持したままで、析出面の表面処理後の表面粗さRzを変更すること(上記a、bを参照)がそもそも動機付けられるとはいえない。 d 以上によれば、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さが「18μm」である甲4発明1、2において、析出面の表面処理後の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 同様に、粗化処理である表面処理前の電解銅箔の厚さが「18μm」である甲4発明1、2において、表面処理銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、析出面の表面処理後の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点4-2、4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び8~10は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲4に記載された発明並びに甲1~3、甲5~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、取消理由1-2(新規性)、申立理由1-4(新規性)、取消理由2-2(進歩性)、申立理由2-4(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性) (1)甲1に記載された発明 甲1の訳文として、甲9を用いる。甲9は、甲1に係る米国特許出願(15/241264)を基礎としてパリ条約による優先権主張がされた、特願2017-156457号の公開公報である。以下、記載箇所の特定は、甲1と甲9に基づいて行う。 甲1の記載(13欄18~37行、13欄44行~14欄12行、1欄9~13行、2欄22~30行、2欄45~48行、2欄下から2行~3欄12行、4欄下から12行~5欄16行、6欄下から14行~12欄30行、FIG.18、FIG.19)(甲9の請求項1、2、7~13、【0001】、【0010】、【0011】、【0014】、【0017】~【0019】、【0028】、【0043】~【0065】、図18、図19)によれば、特に、13欄18~34行、14欄5~12行、5欄15~16行(甲9の請求項1、10~13、【0028】)の記載を前提として、Example1(6欄下から12行~8欄32行、TABLE1,2)、FIG.18、FIG.19(甲9の実施例1(【0043】~【0053】、表1、2)、図18、図19)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「厚さ60μmの電解銅箔(生銅箔)のマット面に、銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し、 前記電解銅箔(生銅箔)の光沢面に、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施した表面処理銅箔であって、 前記表面処理銅箔の厚さは、60.1μmであり、 前記表面処理銅箔の積層面であるマット面の表面粗さRz(JIS B 0601-1994に基づくRz。以下同様。)が0.77μmであり、 前記表面処理銅箔の前記積層面とは反対する側にあるレジスト面である光沢面の表面粗さRzが1.06μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「マット面」、「光沢面」、「銅ノジュールめっき処理」は、それぞれ、本件発明1における「マット面」、「シャイニー面」、「粗化処理」に相当する。 本件発明1における「マット面を粗化処理し」た「銅箔」と、甲1発明における「マット面に、銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し」た「表面処理銅箔」とは、「マット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔」である限りで共通する。 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「銅箔のマット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲1発明では、表面処理銅箔の厚さが「60.1μm」であり、表面処理銅箔の積層面であるマット面の表面粗さRzが「0.77μm」である点。 ・相違点1-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲1発明では、表面処理銅箔の積層面であるマット面の表面粗さRzが「0.77μm」であり、表面処理銅箔の積層面とは反対する側にあるレジスト面である光沢面の表面粗さRzが「1.06μm」である点。 ・相違点1-3 本件発明1では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」のに対して、甲1発明では、表面処理銅箔が「低(low)粗度特性を有する」かどうか不明である点。 ・相違点1-4 本件発明1では、銅箔が「マット面を粗化処理し」たものであるのに対して、甲1発明では、表面処理銅箔が「マット面に、銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し」たものである点。 イ 相違点1-1、1-4の検討 事案に鑑み、相違点1-1、1-4をまとめて検討する。 (ア)まず、相違点1-1、1-4が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲1発明に係る表面処理銅箔は、「マット面に、銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し」たものであり、本件発明1に係る銅箔のように、銅ノジュールめっき処理(本件発明1における「粗化処理」に相当する。)のみを施したものではない。 b 甲1発明における「表面粗さRz」は、「JIS B 0601-1994に基づくRz」を意味するものである。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものと解されるところ、当該「十点平均粗さRz JIS」が、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」と同義である。 そうすると、甲1発明における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当する。 しかしながら、甲1発明における表面粗さRzは、「銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し」たマット面について測定されたものと解され、本件発明1のように、銅ノジュールめっき処理を施したマット面について測定されたものとは解されない。 c 以上によれば、相違点1-1、1-4は実質的な相違点である。 したがって、相違点1-2、1-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点1-1、1-4の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aで述べたとおり、甲1発明に係る表面処理銅箔は、「マット面に、銅ノジュールめっき処理、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)を施し、さらにシラン処理を施し」たものである。 このような甲1発明において、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)、シラン処理を施さず、銅ノジュールめっき処理のみを施すとする動機付けがあるとはいえない。 b 仮に、そのような動機付けがあるとしても、甲1には、表面粗さRzについて、「0.7~3.0μm」と記載されているにすぎない(4欄下から9~8行(甲9の【0028】))。甲1には、未処理銅箔又は表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、マット面の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、未処理銅箔又は表面処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、マット面の表面粗さRzを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない(そもそも、上記記載が、銅ノジュールめっき処理のみを施したマット面について説明したものであるかどうかも、明らかではない。)。 また、甲2~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、(銅ノジュールめっき処理のみを施した場合には、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」に該当すると解される)甲1発明において、銅ノジュールめっき処理のみが施されたマット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1には、銅箔の厚さについて、「35~210μm」、「35~75μm」と記載されているにすぎないから(6欄16~28行(甲9の【0039】))、甲1発明において、(銅ノジュールめっき処理のみを施した場合の)銅箔の厚さを「15μm超過30μm以下」とし、その上で、銅ノジュールめっき処理のみが施されたマット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とする動機付けがあるとはいえない。 c 以上によれば、甲1発明において、ニッケルめっき処理(コバルト、亜鉛を含む合金処理)、亜鉛めっき処理(防錆処理)、クロメート処理(防錆処理)、シラン処理を施さず、銅ノジュールめっき処理のみを施すこととし、その上で、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、マット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、マット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点1-2、1-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び8~10は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲1に記載された発明並びに甲2~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性) (1)甲2に記載された発明 甲2には、微細配線用電解銅箔について記載されているところ(頁数は明示されていないが、表紙を入れて10番目の頁を参照。)、微細低粗化処理やフラットベース箔によるマット面のロープロファイル化(lowering matte side profile)で、微細配線形成が可能となることが記載されている。 甲2の同頁上部の表(以下「上表」という。)には、「Double Flat Foil」として、「JXHLP-II 12,18μm」が記載されている。 また、甲2の同頁下部の表(以下「下表」という。)には、厚さが12μm、18μmである「JXHLP-II」について記載されているところ、「Roughness」の欄のうち、左側の「Bond side Rz」の欄に、それぞれ、「0.7μm」、「0.5μm」と記載され、同右側の「Bond side Rz」の欄に、それぞれ、「1.3μm」、「1.3μm」と記載されている。 ここで、甲2の上表における「JXHLP-II 12,18μm」については、表面粗さを意味すると考えられる「Rz」が「1μm~」(1μm以下又は1μm未満を意味する。以下同様。)の欄に矢印で示されているところ、上記のとおり、甲2に記載される電解銅箔は、微細低粗化処理によりマット面をロープロファイル化したものであることから、上表における「Rz」は、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さを表しているものと解される。 そして、甲2の下表には、上記のとおり、左側の欄と右側の欄の2種類の「Bond side Rz」が記載されているが、このうち、「1μm~」に該当するのは、左側の欄に記載されたものであるから、左側の欄に記載されているのは、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzであると認められる。 これに対して、右側の欄は、中央の欄の「Resist side Ra」との記載を考慮すると、正しくは、「Resist side Rz」の誤記と考えられるから、右側の欄に記載されているのは、マット面とは反対側の面であるシャイニー面の表面粗さRzであると認められる。 甲2の上記記載によれば、特に「JXHLP-II」に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「微細低粗化処理によりマット面がロープロファイル化された、JXHLP-IIという名称の微細配線用電解銅箔であって、 前記電解銅箔の厚さは、12μmであり、 前記電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが0.7μmであり、 前記電解銅箔のシャイニー面の表面粗さRzが1.3μmである、微細配線用電解銅箔。」(以下、「甲2発明1」という。) 「微細低粗化処理によりマット面がロープロファイル化された、JXHLP-IIという名称の微細配線用電解銅箔であって、 前記電解銅箔の厚さは、18μmであり、 前記電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが0.5μmであり、 前記電解銅箔のシャイニー面の表面粗さRzが1.3μmである、微細配線用電解銅箔。」(以下、「甲2発明2」という。) (2)本件発明1について ア 甲2発明1との対比 (ア)対比 本件発明1と甲2発明1とを対比する。 甲2発明1における「マット面」、「シャイニー面」、「微細低粗化処理」、「ロープロファイル化された」、「JXHLP-IIという名称の微細配線用電解銅箔」は、それぞれ、本件発明1における「マット面」、「シャイニー面」、「粗化処理」、「低(low)粗度特性を有する」、「銅箔」に相当する。 以上によれば、本件発明1と甲2発明1とは、 「銅箔のマット面を粗化処理して低(low)粗度特性を有する銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲2発明1では、電解銅箔の厚さが「12μm」であり、電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが「0.7μm」である点。 ・相違点2-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲2発明1では、電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが「0.7μm」であり、電解銅箔のシャイニー面の表面粗さRzが「1.3μm」である点。 (イ)相違点2-1の検討 a まず、相違点2-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 (a)甲2発明1における「表面粗さRz」は、その定義が不明であるから、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するものといえるかどうかは、不明である。 (b)また、甲2発明1における「表面粗さRz」は、上記のとおり、その定義は不明であるものの、甲2が2016年に公知となったものであることを踏まえると、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」を意味するものではなく、「JIS B 0601-2001」で定義された「最大高さRz」を意味するものと解するのが自然である。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものと解されるところ、当該「十点平均粗さRz JIS」が、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」と同義である。 そうすると、甲2発明1における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するものとはいえない。 (c)仮に、甲2発明1における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとしても、甲2発明1における電解銅箔の厚さは「12μm」であり、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzは「0.7μm」であるから、相違点2-1に係る構成を備える本件発明1とは、異なるものである。 (d)以上によれば、相違点2-1は実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 b 次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。 (a)甲2には、JXHLP-IIという名称の微細配線用電解銅箔の厚さが12μm、18μmであり、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが0.7μm、0.5μmであること(上表、下表)が記載されている。 しかしながら、甲2には、電解銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、電解銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1、甲3~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、仮に、甲2発明1における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとしても、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、電解銅箔の厚さが「12μm」である甲2発明1において、電解銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」とし、その上で、電解銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、電解銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 (b)また、仮に、甲2発明1における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとすれば、甲2発明1においては、本件発明1と同様に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRz(0.7μm)が、シャイニー面の表面粗さRz(1.3μm)より「低い」ものであり、また、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzに対する、シャイニー面の表面粗さRzの比率が「1超過2以下」であるという関係を満たすものである(相違点2-2を参照)。 しかしながら、甲2には、上記のような関係を満たすように制御することについては、何ら具体的に記載されていないから、甲2発明1において、上記のような関係を満たすよう維持したままで、電解銅箔の厚さに応じて、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを変更すること(上記(a)を参照)がそもそも動機付けられるとはいえない。 (c)以上によれば、甲2発明1において、電解銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」とし、その上で、電解銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、電解銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲2発明2との対比 (ア)対比 本件発明1と甲2発明2とを対比すると、上記ア(ア)と同様に、両者は、 「銅箔のマット面を粗化処理して低(low)粗度特性を有する銅箔であって、 前記銅箔の厚さは、15μm超過70μm以下である、銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2-1’ 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲2発明2では、電解銅箔の厚さが「18μm」であり、電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが「0.5μm」である点。 ・相違点2-2’ 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲2発明2では、電解銅箔の微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが「0.5μm」であり、電解銅箔のシャイニー面の表面粗さRzが「1.3μm」である点。 (イ)相違点2-1’の検討 a まず、相違点2-1’が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 (a)甲2発明2における「表面粗さRz」は、その定義が不明であるから、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するものといえるかどうかは、不明である。 (b)上記ア(イ)a(b)で述べたのと同様の理由により、甲2発明2における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するものとはいえない。 (c)仮に、甲2発明2における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとしても、甲2発明2における電解銅箔の厚さは「18μm」であり、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzは「0.5μm」であるから、相違点2-1’に係る構成を備える本件発明1とは、異なるものである。 (d)以上によれば、相違点2-1’は実質的な相違点である。 したがって、相違点2-2’について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 b 次に、相違点2-1’の容易想到性について検討する。 (a)甲2には、JXHLP-IIという名称の微細配線用電解銅箔の厚さが12μm、18μmであり、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzが0.7μm、0.5μmであること(上表、下表)が記載されている。 しかしながら、甲2には、電解銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、電解銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1、甲3~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、仮に、甲2発明2における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとしても、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、電解銅箔の厚さが「18μm」である甲2発明2において、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とする動機付けがあるとはいえない。 同様に、電解銅箔の厚さが「18μm」である甲2発明2において、電解銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 (b)また、仮に、甲2発明2における「表面粗さRz」が、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当するとすれば、甲2発明2においては、本件発明1と同様に、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRz(0.5μm)が、シャイニー面の表面粗さRz(1.3μm)より「低い」ものであるものの、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzに対する、シャイニー面の表面粗さRzの比率が「1超過2以下」であるという関係を満たすものではない(相違点2-2’を参照)。 甲2には、本件発明1のような上記の関係を満たすように制御することについては、何ら具体的に記載されていないから、甲2発明2において、本件発明1のような上記の関係を満たすように、電解銅箔の厚さに応じて、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを変更すること(上記(a)を参照)がそもそも動機付けられるとはいえない。 (c)以上によれば、電解銅箔の厚さが「18μm」である甲2発明2において、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 同様に、電解銅箔の厚さが「18μm」である甲2発明2において、電解銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、微細低粗化処理されたマット面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点2-2’について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び8~10は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲2に記載された発明並びに甲1、甲3~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性) (1)甲5に記載された発明 甲5の記載(請求項1、【0001】、【0015】、【0016】、【0025】~【0041】、表1~3、図1~3)によれば、特に、実施例1、3、4(【0025】~【0034】、表2、表3)に着目すると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。 なお、以下の甲5発明1~3は、それぞれ、実施例1、3、4に対応するものである。 「厚さが18μm、粗面の表面粗さRz(JIS B 0601-1994「表面粗さの定義と表示」に規定されたRz。以下同様。)が1.3μm、光沢面の表面粗さRzが2.0μmの未処理銅箔の粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施して製造された表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzが1.8μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲5発明1」という。) 「厚さが18μm、粗面の表面粗さRzが1.1μm、光沢面の表面粗さRzが1.8μmの未処理銅箔の粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施して製造された表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzが1.6μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲5発明2」という。) 「厚さが18μm、粗面の表面粗さRzが0.6μm、光沢面の表面粗さRzが1.4μmの未処理銅箔の粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施して製造された表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzが1.1μmである、表面処理銅箔。」(以下、「甲5発明3」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明1~3とを対比する。 甲5発明1~3における「粗面」、「光沢面」、「粗化処理」は、それぞれ、本件発明1における「マット面」、「シャイニー面」、「粗化処理」に相当する。 本件発明1における「マット面を粗化処理し」た「銅箔」と、甲5発明1~3における「粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施して製造された表面処理銅箔」とは、「マット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔」である限りで共通する。 以上によれば、本件発明1と甲5発明1~3とは、 「銅箔のマット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点5-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲5発明1~3では、未処理銅箔の厚さが、いずれも、「18μm」であるものの、表面処理銅箔の厚さは不明であり、表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzが、それぞれ、「1.8μm」、「1.6μm」、「1.1μm」である点。 ・相違点5-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲5発明1~3では、表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzが、それぞれ、「1.8μm」、「1.6μm」、「1.1μm」であり、未処理銅箔の光沢面の表面粗さRzが、それぞれ、「2.0μm」、「1.8μm」、「1.4μm」であるものの、「未処理銅箔の粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施し」た後の光沢面の表面粗さRzは不明である点。 ・相違点5-3 本件発明1では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」のに対して、甲5発明1~3では、表面処理銅箔が「低(low)粗度特性を有する」かどうか不明である点。 ・相違点5-4 本件発明1では、銅箔が「マット面を粗化処理し」たものであるのに対して、甲5発明1~3では、表面処理銅箔が「粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施し」たものである点。 イ 相違点5-1、5-4の検討 事案に鑑み、相違点5-1、5-4をまとめて検討する。 (ア)まず、相違点5-1、5-4が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲5発明1~3に係る表面処理銅箔は、「粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施し」たものであり、本件発明1に係る銅箔のように、粗化処理のみを施したものではない。 b 甲5発明1~3における「表面粗さRz」は、「JIS B 0601-1994「表面粗さの定義と表示」に規定されたRz」を意味するものである。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものと解されるところ、当該「十点平均粗さRz JIS」が、「JIS B 0601-1994」で定義された「十点平均粗さRz」と同義である。 そうすると、甲5発明1~3における「表面粗さRz」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当する。 しかしながら、甲5発明1~3における表面粗さRzは、「粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施し」た粗面について測定されたものと解され、本件発明1のように、粗化処理を施したマット面について測定されたものとは解されない。 c 以上によれば、相違点5-1、5-4は実質的な相違点である。 したがって、相違点5-2、5-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点5-1、5-4の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aで述べたとおり、甲5発明1~3に係る表面処理銅箔は、「粗面に粗化処理を行い、粗化処理後、さらに防錆処理を施し」たものである。 このような甲5発明1~3において防錆処理を施さず、粗化処理のみを施すとする動機付けがあるとはいえない。 b 仮に、そのような動機付けがあるとしても、甲5には、表面処理銅箔の粗化処理面の表面粗さRzについて、1.8μm、2.2μm、1.6μm、1.1μm、3.7μm.7.3μm、4.6μmと記載されているにすぎない(表3)。甲5には、未処理銅箔又は表面処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、粗面の表面粗さRzを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、未処理銅箔又は表面処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、粗面の表面粗さRzを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、(粗化処理のみを施した場合には、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」に該当すると解される)甲5発明1~3において、粗化処理のみが施された粗面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲5には、未処理銅箔の厚さについて、18μmと記載されているにすぎないから(【0025】)、甲5発明1~3において、(粗化処理のみを施した場合の)銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、粗化処理のみが施された粗面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 c 以上によれば、甲5発明1~3において、防錆処理を施さず、粗化処理のみを施すこととし、その上で、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、粗面の表面粗さRzを「0.8μm~1.05μm」とし、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、粗面の表面粗さRzを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点5-2、5-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び8~10は、甲5に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲5に記載された発明並びに甲1~4、甲6~8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 6 申立理由1-6(新規性)、申立理由2-6(進歩性) (1)甲6に記載された発明 甲6の記載(請求項1、[0001]、[0008]、[0017]、[0019]、[0024]、[0039]~[0062]、表1A~2、図1~4)によれば、特に、[0046]、[0049]、[0050]の「電解銅箔の電極面側(すなわち析出面側と反対側、Rzjis:1.5μm)」との記載、表1Aの「電解銅箔表面の十点平均粗さRzjis(μm)」の欄における例5、7、8の「1.5(電極面)」との記載のほか、例1、4([0039]~[0045]、表1A~2)に着目すると、甲6には、以下の発明が記載されていると認められる。 なお、以下の甲6発明1、2は、それぞれ、例1、4に対応するものである。 「厚さが18μm、析出面の十点平均粗さRzjis(JIS B0601-2001に準拠して測定される表面粗さ。以下同様。)が0.6μm、電極面の十点平均粗さRzjisが1.5μmの電解銅箔が備える析出面に、 3段階のプロセスで粗化処理を行い、微細粗化処理を行い、微細粗化処理後、電解銅箔の両面に、無機防錆処理及びクロメート処理からなる防錆処理を行い、上記防錆処理が施された銅箔を水洗し、その後直ちにシランカップリング剤処理を行い、シランカップリング剤の吸着後、水分を蒸発させ、得られた、 厚さ18μmの粗化処理銅箔の粗化処理面の十点平均粗さRzjisが1.1μmである、粗化処理銅箔。」(以下、「甲6発明1」という。) 「厚さが18μm、析出面の十点平均粗さRzjisが0.6μm、電極面の十点平均粗さRzjisが1.5μmの電解銅箔が備える析出面に、 3段階のプロセスで粗化処理を行い、電解銅箔の両面に、無機防錆処理及びクロメート処理からなる防錆処理を行い、上記防錆処理が施された銅箔を水洗し、その後直ちにシランカップリング剤処理を行い、シランカップリング剤の吸着後、水分を蒸発させ、得られた、 厚さ18μmの粗化処理銅箔の粗化処理面の十点平均粗さRzjisが1.1μmである、粗化処理銅箔。」(以下、「甲6発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲6発明1、2とを対比する。 甲6発明1、2における「析出面」、「電極面」、「粗化処理」は、それぞれ、本件発明1における「マット面」、「シャイニー面」、「粗化処理」に相当する。 本件発明1における「マット面を粗化処理し」た「銅箔」と、甲6発明1、2における「析出面に、3段階のプロセスで粗化処理を行い、微細粗化処理を行い、微細粗化処理後、電解銅箔の両面に、無機防錆処理及びクロメート処理からなる防錆処理を行い、上記防錆処理が施された銅箔を水洗し、その後直ちにシランカップリング剤処理を行い、シランカップリング剤の吸着後、水分を蒸発させ、得られた」「粗化処理銅箔」(ただし、甲6発明2では「微細粗化処理」は行われない。)とは、「マット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔」である限りで共通する。 (なお、甲6発明1、2における「3段階のプロセスで粗化処理」以降に行われる、「微細粗化処理」、「無機防錆処理及びクロメート処理からなる防錆処理」、「水洗」、「シランカップリング剤処理」、「水分を蒸発」(ただし、甲6発明2においては、「微細粗化処理」を含まない。)については、以下、「各種の後処理」と簡略的に記載することとする。) 以上によれば、本件発明1と甲6発明1、2とは、 「銅箔のマット面に粗化処理を含む表面処理を施した銅箔であって、 前記銅箔の厚さは、15μm超過70μm以下である、銅箔。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6-1 本件発明1では、銅箔の厚さが「15μm超過70μm以下」であり、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.8μm~1.05μm」であり、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISが「0.7μm~1.0μm」であるのに対して、甲6発明1、2では、粗化処理銅箔の厚さが、いずれも、「18μm」であり、粗化処理銅箔の粗化処理面(析出面)の十点平均粗さRzjisが、いずれも、「1.1μm」である点。 ・相違点6-2 本件発明1では、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いものであり」、また、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率が1超過2以下である」のに対して、甲6発明1、2では、粗化処理銅箔の粗化処理面(析出面)の十点平均粗さRzjisが、いずれも、「1.1μm」であり、電解銅箔の電極面の十点平均粗さRzjisが、いずれも、「1.5μm」であるものの、「3段階のプロセスで粗化処理」、「各種の後処理」が行われた後の電極面の十点平均粗さRzjisは不明である点。 ・相違点6-3 本件発明1では、銅箔が「低(low)粗度特性を有する」のに対して、甲6発明1、2では、粗化処理銅箔が「低(low)粗度特性を有する」かどうか不明である点。 ・相違点6-4 本件発明1では、銅箔が「マット面を粗化処理し」たものであるのに対して、甲6発明1では、粗化処理銅箔が「析出面に」「3段階のプロセスで粗化処理」、「各種の後処理」が行われたものである点。 イ 相違点6-1、6-4の検討 事案に鑑み、相違点6-1、6-4をまとめて検討する。 (ア)まず、相違点6-1、6-4が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲6発明1、2に係る粗化処理銅箔は、析出面に3段階のプロセスでの粗化処理、各種の後処理が行われたものであり、本件発明1に係る銅箔のように、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみが行われたものではない。 b 甲6発明1、2における「十点平均粗さRzjis」は、「JIS B0601-2001に準拠して測定される表面粗さ」を意味するものである。 一方、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」は、上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、国際規格である「ISO4287」に対応する国内規格である「JIS B 0601-2001」で定義された「十点平均粗さRz JIS」を意味するものである。 そうすると、甲6発明1、2における「十点平均粗さRzjis」は、本件発明1における「プロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」に相当する。 しかしながら、甲6発明1、2における十点平均粗さRzjisは、析出面に3段階のプロセスでの粗化処理、各種の後処理が行われた析出面について測定されたものと解され、本件発明1のように、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)が行われた析出面について測定されたものとは解されない。 c 以上によれば、相違点6-1、6-4は実質的な相違点である。 したがって、相違点6-2、6-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点6-1、6-4の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aで述べたとおり、甲6発明1、2に係る粗化処理銅箔は、析出面に3段階のプロセスでの粗化処理、各種の後処理が行われたものである。 このような甲6発明1、2において、各種の後処理を行わず、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみを行うとする動機付けがあるとはいえない。 b 仮に、そのような動機付けがあるとしても、甲6には、粗化処理面の十点平均粗さRzjisについて、0.6~1.7μmであり、好ましくは0.7~1.6μmであり、より好ましくは0.9~1.5μmであることが記載されているにすぎない([0019])。甲6には、粗化処理銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、粗化処理面(析出面)の十点平均粗さRzjisを、特に「0.8μm~1.05μm」とすることが好ましいことや、粗化処理銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、粗化処理面(析出面)の十点平均粗さRzjisを、特に「0.7μm~1.0μm」とすることが好ましいことは記載されていない。 また、甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11についても、そのような記載は見当たらない。 そうすると、上記1(2)イ(イ)bで述べた本件発明1の技術的意義も踏まえると、(粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみを行った場合には、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」に該当すると解される)甲6発明1、2において、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみが行われた析出面の十点平均粗さRzjisを「0.8μm~1.05μm」とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲6には、粗化処理銅箔の厚さについて、0.1~35μmが好ましく、より好ましくは0.5~18μmであることが記載されているにすぎないから([0024])、甲6発明1、2において、(粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみを行った場合の)銅箔の厚さを「30μm超過70μm以下」とし、その上で、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみが行われた析出面の十点平均粗さRzjisを「0.7μm~1.0μm」とする動機付けがあるとはいえない。 c 以上によれば、甲6発明1、2において、各種の後処理を行わず、粗化処理(3段階のプロセスでの粗化処理)のみを行うこととし、その上で、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合に、析出面の十点平均粗さRzjisを「0.8μm~1.05μm」とし、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合に、析出面の十点平均粗さRzjisを「0.7μm~1.0μm」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点6-2、6-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲6に記載された発明であるとはいえず、また、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲6に記載された発明であるとはいえず、また、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6~10についても同様に、甲6に記載された発明であるとはいえず、また、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1及び6~10は、甲6に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1及び6~10は、甲6に記載された発明並びに甲1~5、甲7、甲8、甲10及び甲11に記載された事項及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-6(新規性)、申立理由2-6(進歩性)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由3(サポート要件) (1)申立人は、本件訂正前の請求項1における粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISは、「0.7μm~2.0μm」であるところ、実施例では、「1.25μm」(実施例2)が上限の数値となっており、この数値以上については、データがなく、請求項1で規定している「0.7μm~2.0μm」のうち、「1.25μmを超え2.0μm以下」の範囲については、具体的な数値がなく、この範囲まで発明を拡張することはできないと主張する。 しかしながら、本件訂正後の本件発明1においては、銅箔の厚さに応じて、粗化処理されたマット面の平均粗さRz JISは、「0.8μm~1.05μm」、「0.7μm~1.0μm」に限定されたから、「1.25μmを超え2.0μm以下」の範囲について具体的な数値がない旨の申立人の主張は、理由がないものとなった。 よって、申立人の主張は、採用できない。 (2)なお、念のため検討すると、本件明細書の記載(【0007】、【0008】)によれば、本件発明1が解決しようとする課題は、表面粗化によりマット面の非常に低い粗度を有し、かつ、樹脂との優れた接着強度及び優れた電気的特性を有する銅箔を提供することであると認められる。 そして、本件明細書の記載(【0011】~【0018】、【0024】、【0025】、【0029】~【0031】、【0037】~【0044】、【0094】~【0111】、表1~4)によれば、上記課題は、銅箔のマット面を粗化処理して低(low)粗度特性を有する銅箔において、銅箔の厚さを「15μm超過70μm以下」とし、銅箔の厚さが「15μm超過30μm以下」である場合は、「銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」を「0.8μm~1.05μm」とし、銅箔の厚さが「30μm超過70μm以下」である場合は、「銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JIS」を「0.7μm~1.0μm」とし、さらに、「前記銅箔の粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISは、前記銅箔のシャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さRz JISより低いもの」とし、「粗化処理されたマット面のプロフィロメータで測定された平均粗さに対する、シャイニー面のプロフィロメータで測定された平均粗さの比率」を「1超過2以下」とすることによって、解決できることが理解できる。 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって、本件発明1については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明6~10についても同様である。 (3)したがって、申立理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 8 申立理由4(実施可能要件) (1)申立人は、本件発明の特徴は、粗化処理後マット面Rz JIS<シャイニー面であるところ、本件明細書の【0108】(当審注:「【0107】」の誤記と思われる。)には、比較例3、4は、この関係を満たさないため、電気的特性が非常に悪かったことが記載されているが、当技術分野の技術常識では、シャイニー面が粗化処理されていない限りは、この関係を満たさなくても挿入損失が悪くなることはなく、また、本件明細書の実施例、比較例において、どのような測定方法で、どのような測定結果であったか記載がないため、どのように発明を実施するのか理解できないと主張する。 しかしながら、申立人が主張する、シャイニー面が粗化処理されていない限りは、この関係を満たさなくても挿入損失が悪くなることはない旨の技術的事項が、実際に当技術分野の技術常識であるかどうかは、本件証拠上、不明である。 また、本件明細書の実施例、比較例において、測定方法について具体的な記載がないとしても、当業者であれば、通常の測定方法により、電気的特性(挿入損失)を測定することができるといえる。 また、その測定結果についても、本件明細書に、「本発明の銅箔は非常に優れた電気的特性(例えば、低い挿入損失)を示した。」(【0105】)と記載されており、具体的な測定結果は不明ながらも、本件発明の銅箔が電気的特性(挿入損失)に優れることが理解できる。 以上のとおりであるから、申立人の主張は、採用できない。 (2)したがって、申立理由4(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項2~5が本件訂正により削除された結果、同請求項2~5に係る特許についての本件特許異議の申立ては対象を欠くこととなったため、特許法120条の8第1項において準用する同法135条の規定により決定をもって却下すべきものである。 また、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1及び6~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700926

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