特許異議申立
2025-700415
コークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造
- 審判番号
- 2025-700415
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-077031
- 登録番号
- 7588745
- 請求日
- 2025年04月14日
- 審決日
- 2026年06月24日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日鉄エンジニアリング株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人創英
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】石坂 泰紀
- 【権利者代理人】中村 真生
- 【権利者代理人】松澤 寿昭
- 【異議申立人】大原 尚通
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 山田 貴之
- 審判官 東 裕子
- 分類
- P1651.121-YAA(C10B) / P1651.537-YAA(C10B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7588745号発明「コークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7588745号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕〔3~4〕について訂正することを認める。
特許第7588745号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7588745号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和6年5月10日に出願されたものであって、同年11月14日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年 4月14日に、全請求項に係る特許に対し、特許異議申立人 大原尚通(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。
以降の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和7年 7月15日付け 取消理由通知書
同年 9月 9日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年10月 9日 訂正請求書の手続補正書(方式)(特許権者)
同年11月25日 意見書(申立人)
同年12月18日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 2月16日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 3月23日 意見書(申立人)
なお、令和7年9月9日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、以下、令和8年2月16日にされた訂正請求を「本件訂正請求」ともいい、当該請求による訂正を「本件訂正」ともいう。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次の訂正事項1-1~2-7のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1-1~1-7
<訂正事項1-1>
特許請求の範囲の請求項1における、「位置する、コークス乾式消火設備。」との記載を、「位置しており、前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている、コークス乾式消火設備。」と訂正する。
<訂正事項1-2>
特許請求の範囲の請求項2における、「前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面」との記載を、「前記一の支持壁を含む鉛直断面」と訂正する。
<訂正事項1-3>
特許請求の範囲の請求項2における、「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載を、「前記第3の交差部」と訂正する。
<訂正事項1-4>
特許請求の範囲の請求項2における、「前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線」との記載を、「前記仮想直線」と訂正する。
<訂正事項1-5>
特許請求の範囲の請求項2における、「角度θは、70°以下」との記載を、「角度θは、50°以下」と訂正する。
<訂正事項1-6>
特許請求の範囲の請求項2における、「である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。」との記載を、「であり、前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。」と訂正する。
<訂正事項1-7>
願書に添付した明細書【0044】の「第2の交差部」との記載を、「第1の交差部」と訂正する。
(2)訂正事項2-1~2-7
<訂正事項2-1>
特許請求の範囲の請求項3における、「位置する、コークス乾式消火設備。」との記載を、「位置しており、前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている、コークス乾式消火設備。」と訂正する。
<訂正事項2-2>
特許請求の範囲の請求項4における、「前記複数の支持壁のうち一の支持壁」との記載を、「前記一の支持壁」と訂正する。
<訂正事項2-3>
特許請求の範囲の請求項4における、「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載を、「前記第3の交差部」と訂正する。
<訂正事項2-4>
特許請求の範囲の請求項4における、「前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線」との記載を、「前記仮想直線」と訂正する。
<訂正事項2-5>
特許請求の範囲の請求項4における、「70°以下」との記載を、「50°以下」と訂正する。
<訂正事項2-6>
特許請求の範囲の請求項4における、「である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。」との記載を、「であり、前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。」と訂正する。
<訂正事項2-7>
願書に添付した明細書の【0046】の「第2の交差部」との記載を、「第1の交差部」と訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1、2において、請求項2は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1-1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1、2は一群の請求項である。そうすると、訂正事項1-1~1-7による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
同様に、本件訂正前の請求項3、4において、請求項4は、請求項3を引用するものであって、訂正事項2-1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項3、4は一群の請求項である。そうすると、訂正事項2-1~2-7による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
3 訂正の適否についての当審の判断
以下、下線は合議体による。
(1)訂正事項1-1~1-7について
ア 訂正事項1-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に係る発明に対して、「前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている」との発明特定事項を追加したものであり、訂正前の請求項1に記載の「コークス乾式消火設備」における「第1の交差部」の位置関係を、上記「仮想直線」と「赤熱コークスの安息面」との比較により限定するものであるから、当該訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-1は、本件特許明細書の【0031】「図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、傾斜面S1と、冷却室101Bの上端部101bの内周面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P1」(第1の交差部)と称する。」、【0034】「図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、支持壁20(中間部22)の内周面と、予備室101Aの下端部101a2の下端面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P0」(第3の交差部)と称する」、及び【0035】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P1を通る仮想直線L1とがなす角度θは、例えば、70°以下であってもよいし、60°以下であってもよいし、50°以下であってもよい。角度θは、例えば、0°よりも大きくてもよいし、40°以上であってもよいし、50°以上であってもよい。角度θは、排気流路30内における赤熱コークスC1の安息角βよりも大きくてもよいし、安息角βと同等であってもよいし、安息角βよりも小さくてもよい。すなわち、仮想直線L1は、赤熱コークスC1の安息面S2の下側を延びていてもよいし、安息面S2内を延びていてもよいし、安息面S2の上側を延びていてもよい」との記載、及び「赤熱コークスC1の安息面S2」よりも下側に「仮想直線L1」が位置している図3の記載に基づいて、「仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延び」る態様に特定したものである。
したがって、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載の「コークス乾式消火設備」における「第1の交差部」と「第3の交差部」の位置関係を、「仮想直線」と「赤熱コークスの安息面」との比較により限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項1-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項2に係る発明における「前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面」との記載を「前記一の支持壁を含む鉛直断面」と訂正したものである。
訂正事項1-1により、訂正後の請求項1に「前記一の支持壁を含む鉛直断面において」との記載がされたところ、訂正事項1-2は、訂正後の請求項2における鉛直断面が、訂正後の請求項1における上記鉛直断面と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-2は、本件特許明細書【0035】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項1-3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-3は、訂正前の請求項2に係る発明における「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載を「前記第3の交差部」と訂正したものである。
訂正事項1-1により、訂正後の請求項1に「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載がされたところ、訂正事項1-3は、訂正後の請求項2における第3の交差部が、訂正後の請求項1における上記第3の交差部と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-3は、本件特許明細書【0034】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正事項1-4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-4は、訂正前の請求項2に係る発明における「前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線」との記載を「前記仮想直線」と訂正したものである。
訂正事項1-1により、訂正後の請求項1に「前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線」との記載がされたところ、訂正事項1-4は、訂正後の請求項2における仮想直線が、訂正後の請求項1における上記仮想直線と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-4は、本件特許明細書【0034】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
オ 訂正事項1-5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-5は、訂正前の請求項2に係る発明における「角度θは、70度以下」との記載を「角度θは、50°以下」と訂正したものであり、訂正前の請求項2に記載の角度θの範囲を、より狭い範囲に限定するものであるから、当該訂正事項1-5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-5は、本件特許明細書【0035】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P1を通る仮想直線L1とがなす角度θは、例えば、70°以下であってもよいし、60°以下であってもよいし、50°以下であってもよい。」の記載に基づいて、「角度θは、50°以下」の態様に特定したものである。
したがって、訂正事項1-5は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1-5は、訂正前の請求項2に記載の「角度θ」を70°以下から50°以下に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
カ 訂正事項1-6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-6は、訂正前の請求項2に係る発明に対して、「前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°である」との発明特定事項を追加したものであり、訂正前の請求項2に記載の「コークス乾式消火設備」における「第2の交差部」の位置を、「角度γ」の数値範囲により限定するものであるから、当該訂正事項1-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-6は、本件特許明細書【0037】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0、P2を通る仮想直線L2(一の支持壁20の内周面)とがなす角度γは、例えば、60°~80°程度であってもよい。」の記載、及び水平面に対して点P0から点P2を通る仮想線分が水平面に対してなす角「γ」の示された図3の記載に基づいて、「交差部P2」である「第2の交差部」(【0037】)の位置を特定したものである。
したがって、訂正事項1-6は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1-6は、訂正前の請求項1に記載の「第2の交差部」について、「前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°」の位置であることを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
キ 訂正事項1-7について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-7は、本件特許明細書【0044】の「予備室の下端部と一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θは、70°以下であってもよい」とされる「第2の交差部」を、「第1の交差部」と訂正するものである。
訂正前の上記【0044】には「第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θ」と記載されるが、「第1の交差部」が「交差部P1」であり(【0031】)、「第2の交差部」が「交差部P2」であり(【0036】)、「第3の交差部」が「交差部P0」であるところ(【0034】)、図3、【0035】及び【0040】に「角度θ」として示されるのは、「水平面」と「交差部P0、P1を通る仮想直線L1」とがなす「角度」であるから、訂正前の上記【0044】では、「第1の交差部」を「第2の交差部」と記載を誤っていたことが明らかである。
したがって、訂正事項1-7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-7は、上記(ア)のとおり、本件特許明細書の【0031】、【0034】、【0035】、【0036】、【0040】の記載及び図3に基づくものである。
したがって、訂正事項1-7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1-7は、誤記の訂正を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ク 明細書の訂正について
訂正事項1-7は、「角度θ」に係る記載を含む訂正前の請求項1、2に対応する明細書の記載を訂正するものであるところ、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、請求項1、2を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
(2)訂正事項2-1~2-7について
ア 訂正事項2-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項3に係る発明に対して、「前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている」との発明特定事項を追加したものであり、訂正前の請求項3に記載の「コークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造」における「第1の交差部」の位置関係を、上記「仮想直線」と「赤熱コークスの安息面」との比較により限定するものであるから、当該訂正事項2-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-1は、本件特許明細書の【0031】「図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、傾斜面S1と、冷却室101Bの上端部101bの内周面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P1」(第1の交差部)と称する。」、【0034】「図3に例示されるように、複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、支持壁20(中間部22)の内周面と、予備室101Aの下端部101a2の下端面とが交差する部分を、本明細書において「交差部P0」(第3の交差部)と称する」、及び【0035】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P1を通る仮想直線L1とがなす角度θは、例えば、70°以下であってもよいし、60°以下であってもよいし、50°以下であってもよい。角度θは、例えば、0°よりも大きくてもよいし、40°以上であってもよいし、50°以上であってもよい。角度θは、排気流路30内における赤熱コークスC1の安息角βよりも大きくてもよいし、安息角βと同等であってもよいし、安息角βよりも小さくてもよい。すなわち、仮想直線L1は、赤熱コークスC1の安息面S2の下側を延びていてもよいし、安息面S2内を延びていてもよいし、安息面S2の上側を延びていてもよい」との記載、及び「赤熱コークスC1の安息面S2」よりも下側に「仮想直線L1」が位置している図3の記載に基づいて、「仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延び」る態様に特定したものである。
したがって、訂正事項2-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項2-1は、訂正前の請求項3に記載の「コークス乾式消火設備」における「第1の交差部」と「第3の交差部」の位置関係を、「仮想直線」と「赤熱コークスの安息面」との比較により限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項2-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-2は、訂正前の請求項4に係る発明における「前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面」との記載を「前記一の支持壁を含む鉛直断面」と訂正したものである。
訂正事項2-1により、訂正後の請求項4に「前記一の支持壁を含む鉛直断面において」との記載がされたところ、訂正事項2-2は、訂正後の請求項4における鉛直断面が、訂正後の請求項1における上記鉛直断面と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-2は、本件特許明細書【0035】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項2-3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-3は、訂正前の請求項4に係る発明における「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載を「前記第3の交差部」と訂正したものである。
訂正事項2-1により、訂正後の請求項3に「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」との記載がされたところ、訂正事項2-3は、訂正後の請求項4における第3の交差部が、訂正後の請求項3における上記第3の交差部と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-3は、本件特許明細書【0034】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2-3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正事項2-4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-4は、訂正前の請求項4に係る発明における「前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線」との記載を「前記仮想直線」と訂正したものである。
訂正事項2-1により、訂正後の請求項3に「前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線」との記載がされたところ、訂正事項2-4は、訂正後の請求項4における仮想直線が、訂正後の請求項3における上記仮想直線と同一のものを指すことを明確にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-4は、本件特許明細書【0034】の記載及び図3に基づくものであり、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2-4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
オ 訂正事項2-5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-5は、訂正前の請求項4に係る発明における「角度θは、70度以下」との記載を「角度θは、50°以下」と訂正したものであり、訂正前の請求項4に記載の角度θの範囲を、より狭い範囲に限定するものであるから、当該訂正事項2-5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-5は、本件特許明細書【0035】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0,P1を通る仮想直線L1とがなす角度θは、例えば、70°以下であってもよいし、60°以下であってもよいし、50°以下であってもよい。」の記載に基づいて、「角度θは、50°以下」の態様に特定したものである。
したがって、訂正事項2-5は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項2-5は、訂正前の請求項4に記載の「角度θ」を70°以下から50°以下に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
カ 訂正事項2-6について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-6は、訂正前の請求項4に係る発明に対して、「前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°である」との発明特定事項を追加したものであり、訂正前の請求項2に記載の「コークス乾式消火設備」における「第2の交差部」の位置を、「角度γ」の数値範囲により限定するものであるから、当該訂正事項2-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-6は、本件特許明細書の【0037】「複数の支持壁20のうち一の支持壁20を含む鉛直断面で見たときに、交差部P0を含む水平面Hと、交差部P0、P2を通る仮想直線L2(一の支持壁20の内周面)とがなす角度γは、例えば、60°~80°程度であってもよい。」の記載、及び水平面に対して点P0から点P2を通る仮想線分が水平面に対してなす角「γ」の示された図3の記載に基づいて、「交差部P2」である「第2の交差部」(【0037】)の位置を特定したものである。
したがって、訂正事項2-6は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項2-6は、訂正前の請求項3に記載の「第2の交差部」について、「前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線となす角度γは、60°~80°」の位置であることを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
キ 訂正事項2-7について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-7は、本件特許明細書【0046】の「予備室の下端部と一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を含む水平面と、第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θは、70°以下であってもよい」とされる「第2の交差部」を、「第1の交差部」と訂正するものである。
訂正前の上記【0046】には「第2の交差部及び第3の交差部を通る直線とがなす角度θ」と記載されるが、「第1の交差部」が「交差部P1」であり(【0031】)、「第2の交差部」が「交差部P2」であり(【0036】)、「第3の交差部」が「交差部P0」であるところ(【0034】)、図3、【0035】及び【0040】に「角度θ」として示されるのは、「水平面」と「交差部P0、P1を通る仮想直線L1」とがなす「角度」であるから、訂正前の上記【0046】では、「第1の交差部」を「第2の交差部」と記載を誤っていたことが明らかである。
したがって、訂正事項2-7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-7は、上記(ア)のとおり、本件特許明細書の【0031】、【0034】、【0035】、【0036】、【0040】の記載及び図3に基づくものである。
したがって、訂正事項2-7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項2-7は、誤記の訂正を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ク 明細書の訂正について
訂正事項2-7は、「角度θ」に係る記載を含む訂正前の請求項3、4に対応する明細書の記載を訂正するものであるところ、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、請求項3、4を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
4 独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の請求項1~4の全てに対して特許異議の申立がされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項ないし第6項に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」ともいう。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
筒状を呈する予備室と、前記予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトと、スローピングフリュー部とを含む冷却塔と、
前記スローピングフリュー部は、
前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、
耐火レンガによって構成され、前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面とを接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、
前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを含み、
前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて前記冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含み、
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置しており、
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている、コークス乾式消火設備。
【請求項2】
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記仮想直線とがなす角度θは、50°以下であり、
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線とがなす角度γは、60~80°以下である、請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項3】
予備室と、前記予備室の下方に配置された冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトとを含む冷却塔とを備えるコークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造であって、
前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、
耐火レンガによって構成され、前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面とを接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、
前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを備え、
前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて外方に拡がる傾斜面を含み、
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置しており、
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第1の交差部及び前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている、コークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造。
【請求項4】
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記仮想直線とがなす角度θは、50°以下であり、
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記第3の交差部を含む水平面と、前記第2の交差部及び前記第3の交差部を通る別の仮想直線とがなす角度γは、60°~80°である、請求項3に記載のスローピングフリュー部構造。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
申立人は、後記1(1)~(2)の申立理由を主張し、その証拠方法として後記3の甲第1号証(以下「甲1」ともいう。)を提出した。甲1は、出願日よりも前に公開されたものである。
1 特許異議の申立ての理由の概要
(1)申立理由1:甲1を主引例とした進歩性
本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2:実施可能要件
本件特許に係る出願は、摩擦抵抗を低減する手段及び冷却能力を向上させる手段について、明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審合議体が通知した取消理由について
訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審において、令和7年12月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性)
本件発明1、3は、「前記第3の交差部」との記載より前に「第3の交差部」の記載がなく、「第3の交差部」の定義もないため、その記載が不明確であり、本件発明1、3を引用する2、4についても同様であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(甲1を主引例とした進歩性)(上記1(1)に対応)
本件発明1~4は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
3 証拠方法
(1)異議申立時に提出された資料
甲1号証:特許第6518860号公報(以下「甲1」とも記載する。)
(2)令和7年11月25日付け意見書(異議申立人)に添付された資料
参考資料1 特開2011-207919号公報(以下「参考例1」という。)
参考資料2 特許第6757111号公報(以下「参考例2」という。)
(3)令和8年3月23日付け意見書(異議申立人)に添付された資料
参考資料1 実公昭62-34975号公報(以下「参考例3」という。)
第5 取消理由通知に記載した理由について
当審は、次に示すとおり、上記第4の2の取消理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
なお、原文にない下線は、当審が付記したものである。
1 取消理由1(明確性要件)について
本件訂正前の、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた令和7年7月28日の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載の請求項1及び3における「前記第3の交差部」との記載に係る不備は、「第3の交差部」に係る定義が追加された本件訂正後の請求項1、3及びそれらを引用する請求項2、4において解消しており、その他明確でないとすべき点も存在しないことから、請求項1乃至4の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
よって、取消理由1によって本件特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲1を主引例とした進歩性、上記第4の1(1)に対応)
(1)甲1に記載された事項
「【請求項1】
コークスが充填された煉瓦積み構造体であり、上部にプレチャンバー、下部にクーリングチャンバー、その間の、クーリングチャンバー上部に放射状に設けられたスローピングフリューを備え、プレチャンバー上部から赤熱コークスを投入し、クーリングチャンバー下部から冷却したコークスを排出し、スローピングフリューから排出ガスをボイラー側に搬送するコークス乾式消火設備であって、
プレチャンバー内筒下部の安息面上端からクーリングチャンバー内側面の安息面下端までを安息面長さとしたリング状の安息面を特徴とし、
スローピングフリュー入口を安息面上端から安息面下端までの高さ内に設け、かつスローピングフリュー入口が安息面と仕切壁との間の空間で連通していることを特徴とし、
さらに、スローピングフリュー迫り出し長さが400mmを超えないことを特徴とするコークス乾式消火設備。」
「【0001】
本発明は、コークス冷却を行うコークス乾式消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に設備全体を示す。コークス乾式消火設備は製鉄所などに設置され、コークス炉で乾留された赤熱コークスを循環ガスで徐冷、消火しコークスの品質向上と発電などのエネルギー回収を行う設備である。
【0003】
コークスが充填される耐火物製煉瓦積みの円筒形容器であり、上部に赤熱コークスの予備槽となるプレチャンバー1、下部にコークスを徐冷するクーリングチャンバー2、その間に円周方向に放射状に配列されたスローピングフリュー3を備えている。赤熱コークスは、プレチャンバー1上部から投入されクーリングチャンバー2下部から排出される。
【0004】
排出ガスはスローピングフリュー3を通過しボイラー側に搬送される。排出ガスはクーリングチャンバー2経由の冷却ガスが主体であるが、プレチャンバー1内のコークスから発生した燃焼ガスも含まれている。排出ガスはコークス粉を含むために除塵設備9を通り、ボイラー設備10でエネルギー回収された後に再びクーリングチャンバー2下部へ循環される。
【0005】
スローピングフリュー3は、排出ガスをボイラー側に搬送するために、クーリングチャンバー2上部から放射状にリングダクト8まで配置されている。スローピングフリュー3の側面は、プレチャンバー内筒4を支える仕切壁5で構成されている。
【0006】
図2はスローピングフリューの断面である。プレチャンバー1に投入された高温のコークスは漸次下降し、一部がスローピングフリュー3内に堆積する。その後、クーリングチャンバー2内に戻り下降する。スローピングフリュー3内は、コークス層が漸次入れ替わりながら安息角を保ち斜面(以降、安息面6という)を形成している。スローピングフリュー入口7は安息面6以下の高さにある。
【0007】
冷却ガスは、クーリングチャンバー2下部に吹き込まれた後、クーリングチャンバー2内のコークス層の空隙を上昇し、さらにスローピングフリュー3内のコークス層の空隙を通過したのち、安息面6から噴き出す。これに加えて、プレチャンバー1内のコークスから発生した燃焼ガスも冷却ガスとともに安息面6から噴き出す。クーリングチャンバー2経由の冷却ガスにプレチャンバー1経由の燃焼ガスが混合されたものがスローピングフリュー3を通過する排出ガスであり、冷却ガス量と燃焼ガス量の合計が排出ガス量である。また、排出ガス量は安息面6の噴き出し量でもある。
【0008】
さらに最近の技術動向として、プレチャンバー2に燃焼空気または外部燃焼物を導入し、コークスの乾留促進または回収エネルギーの増加を図る傾向にあるため、スローピングフリュー3を通過する排出ガス量は増加する傾向にある。
【0009】
安息面6からは比較的小さな粒径のコークスが排ガスによってボイラー側に飛散搬送される。排出ガスの安息面の噴き出し流速はボイラー側に飛散搬送されるコークスの粒径に大きく影響する。
【0010】
安息面6の噴き出し流速は、次の式で表す。
安息面の噴き出し流速=(排出ガス流量)/(安息面積)
【0011】
図3から、安息面6の噴き出し流速を鉛直方向に分解した速度成分が、コークス粒の終末速度に等しいとき、コークス粉は安息面から離脱しボイラー側に飛散搬送されると考えられる。式で表すと、
安息面の噴き出し流速*cos安息角=境界粒径の終末速度
のときに境界粒径以下のコークスがボイラー側に飛散搬送される。
【0012】
安息面6から噴き出す排出ガスは、仕切壁5に挟まれた楔型のコークス層によってクーリングチャンバー2の半径方向で偏流している。安息面6は炉芯から外側になるほど排出ガス流量は小さくなる。排出ガス量を増加し続ければ、あるレベルでスローピングフリュー3がコークスで閉塞してしまう。
【0013】
スローピングフリュー3がコークスで閉塞する過程は概ね図4のように変化する。
(1)冷却ガス流速が大きい安息面6の炉芯側から吹き上げられた微粉が流速の小さい炉外側へ堆積する。
(2)炉外側で安息面6を超える高さにコークスが堆積され偏流が増大する。
(3)コークス堆積と偏流の悪循環によりスローピングフリュー3が閉塞する。
【0014】
上記(1)~(3)の過程では、ボイラー側に飛散搬送されるコークス粒径も変動する。スローピングフリュー3がコークスで閉塞されれば復旧のために設備停止が必要になる。大粒径のコークスが飛散搬送されればボイラーチューブや除塵設備その他の付帯設備も損傷するため、建設コスト、保全コストは過剰にならざるを得ない。また設備稼働中に上記(1)~(3)を起こさせないためには、あらかじめコークスが安息面6を超えて堆積しない排出ガス量に抑制せざるを得ない。
【0015】
ところで、安息面長さW(図2)を大きくすれば安息面の噴き出し流速の平均値は低減できるが、流速の少ない炉外方向の面積が増えることになり増風効果は小さく偏流は増大する。また安息面長さWを大きくすることは仕切壁5の大型化になり、プレチャンバー内筒4を支える煉瓦積み構造体であるゆえに脆弱さを増し保全負荷が増大する。例えば、設備の停止時間の増加によるコークス品質と回収エネルギー量の低下、あるいは設備停止毎の仕切壁煉瓦の積み替え作業負荷と補修コストの増大である。
【0016】
このように、排出ガス量を増大させたうえでボイラー側に飛散搬送されるコークス粒径を制御することはコークス乾式消火設備の稼働当初からの課題であった。しかしながら従来のスローピングフリュー3の構造では、
(1)スローピングフリューでコークス閉塞を起こさないための風速制限があり、
(2)安息面6で排ガスの偏流があり、飛散搬送されるコークスの粒径が変動しやすい。(3)安息面積を増大すると仕切壁を大型化し脆弱さを増し、建設コスト、保全コストが増大する。
という因果関係があるために困難であった。
【0017】
これに対し、従来からスローピングフリュー3の排出ガス量の増加対策がなされてきた。例えば(特公平01-026396)では、プレチャンバー内筒4下端部の内側をリブ化することで安息面長さWを大きくし、また安息面6上部を部分的に連結させ、スローピングフリュー3内のコークス層を減ずる発明が開示されている。
【0018】
また(特公平03-120536)には、スローピングフリュー3を上下複数段に分割することにより安息するコークス層を減少させる構造が記されている。
【0019】
さらに(PCT/JP2008/068582)では、スローピングフリュー3の入り口下端部を炉芯側に配置することによりスローピングフリュー内のコークスが排出され充填されるスペースを作り出す発明が開示されている。」
「【0021】
これらの発明は、ガス排出量の増加には実用的で効果を発揮している。しかしながら、スローピングフリュー3内から安息面4が排除されていないために、排出ガス量の一定幅の増加はできるものの、スローピングフリュー3のコークス閉塞を防止するための排出ガス流速制限は解消されない。また、安息面6からの排出ガス噴き出しの偏流も一定の改善にとどまるために、集塵設備とボイラー設備の耐摩耗コストの低減までは期待できない。さらに、チャンバー内の構造を複雑にすることは、設備停止時間や保全コストを増大させる要因でもある。
【発明の概要】
【0022】
本発明はこのような背景に基づいたものであり、その第一の目的は、仕切壁の建設コスト、保全コストを増大させることなく、スローピングフリューの排出ガス流速制限を解消し、ガス排出量を増加させコークス冷却能力とエネルギー回収能力を増強することにある。
【0023】
第二の目的は、排出ガス流量を安定的に確保しつつ、飛散搬送されるコークスの粒径を制御し、ボイラー側の耐摩耗コストを抑制することにある。
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、第一に冷却ガス流速の制約となっているスローピングフリューから安息面を排除することにある。スローピングフリューの流速制限を解消しコークス閉塞を防止できれば、排出ガス量の増加が可能となる。
【0025】
第二の課題として、ボイラー側に飛散搬送されるコークスの分級点となる安息面の偏流を抑制することにある。偏流を抑制できれば、排出ガスを増加させてもボイラー側に飛散搬送されるコークス粒径を安定して制御でき、ボイラー設備と除塵設備の耐摩耗コストを低減でき、建設コストと保全コストの低減が可能になる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の構造の断面を図5に示す。プレチャンバー内筒下部の安息面上端21からクーリングチャンバー内側面の安息面下端22までを安息面長さWとし、安息面をリング状に形成することが望ましい。仕切壁と安息面との間に空間を設け、スローピングフリュー入口を安息面上端21から安息面下端22までの高さに位置させ、それぞれのスローピングフリュー入口を、安息面と仕切壁との間の空間で連通することが望ましい。
【0027】
排出ガスは、プレチャンバー内またはクーリングチャンバー内のコークス層の空隙を通過した後、偏流が格段に抑制されたリング状の安息面から噴き出した後、スローピングフリューからコークス層の通気抵抗を受けることなくボイラー側に排出される。
【0028】
コークスはプレチャンバーから漸次降下し、スローピングフリュー内に入り込むことなく、リング状の安息面を形成した後、クーリングチャンバーを降下する。
【0029】
さらに、本発明の安息面積は、ボイラー側に飛散搬送されるコークスの最大粒径に基づいた安息面の噴き出し流速と、排出ガス流量から求めることが望ましい。安息面積は、ボイラー側に飛散搬送されるコークスの最大粒径の終末速度を超えないための大きさを確保することが望ましい。
【0030】
図6に本発明のリング状の安息面の平面イメージを示す。上記で必要な面積を確保する一方で、仕切壁の強度や耐久性を確保することが望ましい。そこで、仕切壁による分断がないことと、安息面の偏流が格段に抑制されることから、安息面長さWを、従来に比べ大幅に短縮することが望ましい。安息面の長さWは、ボイラー側に飛散搬送されるコークスの最大粒径の終末速度を超えない安息面積を確保した上で、短くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の効果は、プレチャンバーとクーリングチャンバーを有するコークス乾式消火設備において、スローピングフリューの風速制限が解消され、安息面上の排出ガスの偏流を格段に抑制できることにある。その結果、排出ガス量を増加することができ、コークス冷却能力とエネルギー回収能力が向上する。
【0032】
さらには、偏流が格段に抑制された安息面で、安息面積をコークス粉の終末速度に基づき設定することにより、精度よく最大粒径以下のコークス粉を選択的にボイラー側に飛散搬送することが可能になる。その結果、ボイラー設備と除塵設備の安定した稼働と建設コストと保全コストの低減も可能になる。
【0033】
さらには、安息面長さWの短縮は、スローピングフリュー迫り出し長さLの短縮にもなり、プレチャンバー容積の拡大、さらには設備全体の高さの低減が期待できる。」
「【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コークス乾式消火設備の概略である。
【図2】従来のスローピングフリューの鉛直断面と、炉芯側から見たスローピングフリュー入口である。
【図3】安息面上の排ガス流速を説明している。
【図4】従来のスローピングフリューのコークス閉塞までの過程である。
【図5】本発明のスローピングフリューの鉛直断面と、炉芯側から見たスローピングフリュー入口である。
【図6】安息面を上から見たイメージである。左側が本発明、右側が従来である。
【図7】本発明の実施形態の例を示す。」
「【0035】
次に、本発明を適用する具体例を示す。
【実施例1】
【0036】
コークスの安息面でのボイラー側に飛散搬送されるコークスの最大粒径dの終末速度utは以下の式で表せる。
ut=d^2(ρs-ρf)*重力加速度/(18μf) (Re<2)
ut={(4/225)*(ρs-ρf)^2*重力加速度^2/(ρf*μf)}^(1/3)*d (2<Re<500)
ut={(4/3/0.44)*(ρs-ρf)*重力加速度*d/ρf}^(1/2) (500<Re<10^5)
ここで、Re=(d*ut*ρf)/μf ρf:排出ガス密度 ρs:コークス密度 μf:排ガス粘度
【0037】
スローピングフリューにおける排出ガスは通常500<Re<10^5であるため終末速度utは上記第3式で表される。そこで、排出ガス密度ρf、コークス密度ρs、は固定値で定められるから、最大粒径dを定めれば終末速度utは求まる。
【0038】
安息面の噴き出し流速が、最大粒径dから求められた終末速度utを超えないように、安息面積を確保することが望ましい。
【0039】
一方で、スローピングフリュー迫り出し長さLが過大にならないために、例えば寸法Lが400mmを超えない範囲に収めるために必要なクーリングチャンバー内径を確保することが望ましい。あるいは、クーリングチャンバー内径を拡大せずに安息面積を確保するために、安息面を上下複数段に配置しても良い。
【0040】
プレチャンバー内筒下部にぶら下がり部分を作らないために、スローピングフリュー入口の高さは、安息面上端高さを限度とすることが望ましい。また、スローピングフリュー内にコークス層を堆積させないために、スローピングフリュー入口下端を、安息面下端高さを限度とすることが望ましい。
【0041】
クーリングチャンバー煉瓦厚さの鉛直方向真上にプレチャンバー内筒厚さの一部または全部を重ねても良い。これはプレチャンバー容積の拡大または設備全体の高さ低減が期待できる。
【0042】
プレチャンバー内筒を支えるために、仕切壁の複数を従来のように、安息面よりも下方に延長し、リング状の安息面を複数に分割しても良い。
【0043】
仕切壁の上下面を面取りし、スローピングフリューの入出開口部をベルマウス状にし、排出ガス流の圧力損失を低減させても良い。
【0044】
安息面とスローピングフリュー入口は、安息面上の排出ガスの水平方向の風圧によるコークス粉の巻き上げが無視できる範囲内で、クーリングチャンバー入口の円周方向の配置を変化させても良い。安息面とスローピングフリュー入口は、クーリングチャンバー全周に均等に配置されなくても良い。」
「【符号の説明】
【0047】
1 プレチャンバー
2 クーリングチャンバー
3 スローピングフリュー
4 プレチャンバー内筒
5 仕切壁
6 安息面
7 スローピングフリュー入口
8 リングダクト
9 集塵設備
10 ボイラー設備
21 安息面上端
22 安息面下端
W 安息面長さ
L スローピングフリューの迫り出し長さ」
「【図1】
[図:0001439189000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001439189000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001439189000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001439189000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001439189000005.jpg]
」
「【図6】
[図:0001439189000006.jpg]
」
「【図7】
[図:0001439189000007.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1の図1、図5に、明細書中の符号の説明(【0047】等)を合わせ看れば、
コークス乾式消火設備の円筒型容器(【0002】【0003】)は、プレチャンバー内筒4下端部を外側から取り囲むように、クーリングチャンバー2の上部から上方に向けて延びる環状壁部分を有すること(図1、図5)、その環状壁部分の内面は、クーリングチャンバー2内周面の上端部を始点として、上方に向かうにつれてクーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる、傾斜面を備えること(図1、図5)、その環状壁部分の上には、プレチャンバーを外側から 取り囲むようにリングダクト8が配置されていること(図5)、
スローピングフリュー3の側面の仕切壁5(【0005】)は、プレチャンバー内筒4と円筒形容器の内面の上記傾斜面との間に、クーリングチャンバー2の径方向に延び、且つ周方向に沿って並ぶように配置されており(図5)、
スローピングフリュー3は、円筒状容器の周方向において隣り合う仕切壁5と、プレチャンバー内筒4と、円筒形容器の上記環状壁部分とによって画定された、クーリングチャンバー2とリングダクト8とを接続する、複数の流路を備えており(図5)、
スローピングフリュー3の鉛直断面(【0034】、図5)において、クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面との交差部は、クーリングチャンバー2の内周面と仕切壁5との交差部と一致しており(図5)、
上記鉛直断面において、クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面との交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部の下端部とを通る交差部とを通る仮想直線は、安息面6よりも上側を伸びていること(図5)、
を看てとれるから、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」、「甲1B発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1A発明)
「コークス乾式消火設備において(【0002】)、
コークスが充填される耐火物製煉瓦積みの円筒形容器は、上部に赤熱コークスの予備槽となるプレチャンバー1、下部にコークスを徐冷するクーリングチャンバー2、その間のクーリングチャンバー2上部に円周方向に放射状に配列されたスローピングフリュー3を備え(請求項1、【0003】)、
スローピングフリュー3は、排出ガスをボイラー側に搬送するために、クーリングチャンバー2上部から放射状にリングダクト8まで配置されており(【0005】)、
円筒形容器は、プレチャンバー内筒4下端部を外側から取り囲むように、クーリングチャンバー2上部から上方に向けて延びる環状壁部分を有し(図1、図5)、その環状壁部分の上には、プレチャンバーを外側から取り囲むようにリングダクト8が配置されており(図5)、
その環状壁部分の内面は、クーリングチャンバー2内周面の上端部を始点として、上方に向かうにつれてクーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる、傾斜面を備えており(図1、図5)、
スローピングフリュー3の側面は、プレチャンバー内筒4を支える仕切壁5で構成されており(【0005】)、仕切壁5は、プレチャンバー内筒4と円筒形容器内面の上記傾斜面との間に、クーリングチャンバー2の径方向に延び、且つ周方向に沿って並ぶように配置されており(図5)、
スローピングフリュー3は、円筒状容器の周方向において隣り合う仕切壁5と、プレチャンバー内筒4と、円筒形容器の環状壁部分とによって画定された、クーリングチャンバー2とリングダクト8とを接続する、複数の流路を有し(図5)、
スローピングフリュー3の鉛直断面において(【0034】、図5)、クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部とを通る、仮想直線は、安息面6よりも上側を伸びている(図5)、コークス乾式消火設備。」
(甲1B発明)
「甲1A発明のコークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造。」
(3)対比・判断
ア 本件訂正発明1
(ア)対比
甲1A発明の「プレチャンバー1」、「クーリングチャンバー2」、「リングダクト8」及び「スローピングフリュー3」は、それぞれ、本件訂正発明1の「予備室」、「冷却室」、「環状ダクト」及び「スローピングフリュー部」に相当し、甲1A発明の「耐火物製煉瓦積みの円筒形容器」は、「上部に赤熱コークスの予備槽となるプレチャンバー1、下部にコークスを徐冷するクーリングチャンバー2、その間のクーリングチャンバー2上部に円周方向に放射状に配列されたスローピングフリュー3を備え」るとともに、「プレチャンバーを外側から取り囲むようにリングダクト8が配置」されているから、本件発明1の「筒状を呈する予備室と、前記予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトと、スローピングフリュー部とを含む冷却塔」に相当する。
甲1A発明の円筒形容器における「プレチャンバー内筒4下端部を外側から取り囲むように、クーリングチャンバー2上部から上方に向けて延びる環状壁部分」は、本件訂正発明1の「前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁」に相当する。
甲1A発明の「仕切壁5」は「プレチャンバー内筒4と円筒形容器内面の上記傾斜面との間に、クーリングチャンバー2の径方向に延び、且つ周方向に沿って並ぶように配置されて」いるので、本件訂正発明1の「前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面とを接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁」に相当する。また、甲1A発明の仕切り壁は、耐火物性煉瓦積みの円筒径容器の一部であるから、本件訂正発明1の支持壁が「耐火レンガによって構成され」る点を充足している。
甲1A発明のスローピンググフリュー3の、「円筒状容器の周方向において隣り合う仕切壁5と、プレチャンバー内筒4と、円筒形容器の環状壁部分とによって画定された、クーリングチャンバー2とリングダクト8とを接続する、複数の流路」は、「排出ガスをボイラー側に搬送するために、クーリングチャンバー2上部から放射状にリングダクト8まで配置されて」いるものであるから、本件訂正発明1の、「前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路」に、相当する。
甲1A発明の「環状壁部分の内面」は、「クーリングチャンバー2内周面の上端部を始点として、上方に向かうにつれてクーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる、傾斜面を備えて」いるものであるから、本件訂正発明1の「前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて前記冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含み」に相当する。
甲1A発明の「スローピングフリュー3の鉛直断面」における「クリーニングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2の内周面との交差部」は、本件訂正発明1の「前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部」に相当する。
甲1A発明の「スローピングフリュー3の鉛直断面」における「クーリングチャンバー2の内周面と仕切壁5との交差部」は、本件訂正発明1の「前記一の支持壁を含む鉛直断面」における「前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部」に相当する。
甲1A発明の「スローピングフリュー3の鉛直断面」における「プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部」は、本件訂正発明1の「前記一の支持壁を含む鉛直断面」における「前記予備室の下端部と前記一の支持壁の内周面とが交差する第3の交差部」に相当する。
甲1A発明の「安息面6」は、「赤熱コークス」のものであるから、本件訂正発明1の「赤熱コークスの安息面」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「筒状を呈する予備室と、前記予備室の下方に配置され且つ筒状を呈する冷却室と、前記予備室の周囲に形成された環状ダクトと、スローピングフリュー部とを含む冷却塔と、
前記スローピングフリュー部は、
前記予備室の下端部を外側から取り囲むように前記冷却室の上端部から上方に向けて延びる環状壁と、
耐火レンガによって構成され、前記予備室の下端部の外周面と前記冷却室の上端部の内周面及び前記環状壁の内周面とを接続するようにこれらの間において前記冷却室の径方向に延び、且つ、前記冷却室の周方向に沿って並ぶように配置された、複数の支持壁と、
前記複数の支持壁のうち前記周方向において隣り合う支持壁と、前記予備室の下端部と、前記環状壁とによって画定され、且つ、前記冷却室と前記環状ダクトとを流体的に接続するように構成された、複数の排気流路とを含み、
前記環状壁の内周面は、上方に向かうにつれて前記冷却室の径方向外方に拡がる傾斜面を含み、
前記複数の支持壁のうち一の支持壁を含む鉛直断面において、前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部と、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部、
前記一の支持壁を含む鉛直断面において、前記予備室の下端部と前記一の支持壁のない周面とが交差する第3の交差部、及び
赤熱コークスの安息面」を有する「コークス乾式消火設備。」
<相違点1>
本件訂正発明1において、「前記傾斜面と前記冷却室の内周面とが交差する第1の交差部は、前記一の支持壁の下端と前記冷却室の内周面とが交差する第2の交差部よりも上方に位置しており、前記第1の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線は、赤熱コークスの安息面よりも下側を延びている」のに対し、甲1A発明においては、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面との交差部は、クーリングチャンバー2の内周面と仕切壁5との交差部と一致」しており、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部とを通る、仮想直線は、安息面6よりも上側を伸びている」、すなわち、第1の交差部は、第2の交差部と一致しており、第1の交差部と第3の交差部とを通る仮想直線は、安息面6よりも上側を延びている点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点1のうち、まず「前記第1の交差部及び前記第3の交差部を通る仮想直線」と「赤熱コークスの案側面」との位置関係について、検討する。
a 第1の交差部及び第3の交差部について
甲1には、図5に「本発明のスローピングフリューの鉛直断面と、炉芯側から見たスローピングフリュー入口」(【0034】)が示されている。
その鉛直断面における「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」が本件訂正発明1の「第1の交差部」に相当することは上で対比したとおりである。
また、「プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部」は、図5より、「プレチャンバー内筒4の外側面の下端部の角部」であり、これが本件訂正発明1の「第3の交差部」に相当する位置であるといえる。
b 甲1に記載された安息面長さについて
甲1A発明における、前記仮想直線と安息面の位置関係について、甲1には、「プレチャンバー内筒下部の安息面上端からクーリングチャンバー内側面の安息面下端までを安息面長さ」とすることが記載されており(請求項1、【0026】)、図5にも、「安息面上端」の「21」がプレチャンバー内筒4の内側面の最下部の角部に接し、「安息面下端」の「22」がクーリングチャンバー2の内側面上にある状態が示されるとともに、クーリングチャンバー2の内側面の最上部は「クーリングチャンバーの径方向外方に拡がる傾斜面」の始まる角部であることが示されている。すなわち、甲1には、安息面の上端は、「プレチャンバー内筒4の内周面の最下部の角部」にあり、安息面の下端は、「クーリングチャンバーの内側面」上にあり、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」と同じか下側にあることが記載されているといえる。
c 上記a及びbの記載を踏まえた検討
上記a及びbを踏まえると、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」(第1の交差部)と、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と同じかその下側」(安息面下端)との間には、距離は無いか、又は、後者が「その下側」に下がった分の距離が存在するといえる。
また、「プレチャンバー内筒4の外側面の下端部の角部」(第3の交差部)と、「プレチャンバー内筒4の内周面の最下部の角部」(安息面上端)との間には、プレチャンバー内筒4の厚み分の距離が存在するといえる。
そして、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」(第1の交差部)及び「プレチャンバー内筒4の外側面の下端部の角部」(第3の交差部)を通る「仮想直線」は、安息面下端「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と同じかその下側」から、安息面上端「プレチャンバー内筒4の内周面の最下部の角部」までの線分で示される安息面に対して、下端部では接するかその上を通り、その後、上端部までその上を通るものとして記載されている。
そうすると、甲1の安息面長さの記載を考慮しても、本件訂正発明1の定義する仮想直線は、甲1では安息面よりも上方に位置するものとして示されているのであって、安息面よりも下方に位置するものとすることについては記載も示唆もない。
d 甲1のスローピングフリュー入口に関する記載を踏まえた検討
甲1には、スローピングフリュー入口について、「安息面上端から安息面下端部までの高さ内に設け、かつスローピングフリュー入口が安息面と仕切り壁との間の空間で連通していること」が記載されており(請求項1)、図5によれば、スローピングフリュー入口7上端は、プレチャンバー内筒下部の幅を利用して、プレチャンバー内筒4の外側面の最下部の角までの仕切壁5が、プレチャンバー内筒4内側面の最下部の角にある安息面上端から、距離をおいており、同時に、スローピングフリュー入口7下端は、仕切壁5が、「クーリングチャンバーの径方向外方に拡がる傾斜面」最下部が、クーリングチャンバー2内側面最上部と接する角止まりであるので、クーリングチャンバー2内側面上の安息面下端から、距離をおくことで、上記連通空間が設けられているものと解される。すなわち、甲1には、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部とを通る、仮想直線」が、「安息面6」よりも上側を延びている構成が示されていることが、看てとれる。
ここで、その仮想直線を、赤熱コークスの安息面に対して、上下関係を逆転させて、その下側を延びるものとすることは、上記連通空間をなくそうとするものにほかならないから、本件訂正発明1のようにすることは、当業者に動機付けられるものでなく、設計的事項であるともいえない。
e 甲1の【0042】の記載を踏まえた検討
甲1の【0042】には、「プレチャンバー内筒を支えるために、仕切壁の複数を従来のように、安息面よりも下方に延長」しても良いことが記載されており、これは、仕切壁5の下部を、安息面下端よりも下方に延長しても良いことを示唆するものと解される。
しかし、甲1A発明において、仕切壁5の下部を安息面よりも下方に延長したとしても、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」(第1の交差部)と安息面下端との位置関係に変化はないから、この記載により、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部とを通る、仮想直線」が、「安息面6」よりも下側を伸びるようにすることが当業者にとって容易になし得たものであるということはできない。
むしろ、甲1には、従来例として示される図2や図4において、スローピングフリュー入口の下端部が安息面下端よりも下にあり、スローピングフリュー入口全体が安息面以下にある例が示され、「スローピングフリュー3内から安息面4が排除されていないために」「スローピングフリュー3のコークス閉塞を防止するための排出ガス流速制限は解消され」ず「安息面6からの排出ガス吹き出しの偏流も一定の改善にとどまる」こと(【0021】)等の問題があったことが記載される。
このような従来技術の問題を解決するために、甲1は、コークスがスローピングフリュー内に入り込むことなく、安息面6をリング状に形成しており(【0025】【0026】)、これにより、リング状の安息面6から噴出される排出ガスは、偏流が格段に抑制されて、スローピングフリューからコークス層の通気抵抗を受けることなくボイラー側に排出されるので、排出ガスを増加させてもボイラー側に飛散搬送されるコークス粒径を安定して制御でき、ボイラー設備と除塵設備の耐摩耗コストが低減されることとなる(【0025】【0027】)ようにしたことが記載されている。
当該記載に基づけば、甲1A発明において、スローピングフリュー入口が、赤熱コークスの安息面6に完全に埋没するようにすることは、改善前の従来技術であって(図2、図4等)、望ましくは、仕切壁と安息面との間に空間を設けるとともに、スローピングフリュー入口を赤熱コークスの安息面の上端から下端までの高さに位置させるものであるから(【0026】)、スローピングフリュー入口の上端部は、赤熱コークスの安息面の上端との間の空間を維持することが、甲1に記載された技術思想であるというべきである。
そうすると、甲1の記載に基づき、甲1A発明の「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部と、プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部とを通る、仮想直線」が、「安息面6」よりも上側を伸びているスローピングフリュー部の構造を、それとは逆の、本件訂正発明1の位置関係とすることが動機づけられるということはできない。
f まとめ
よって、甲1A発明において、少なくとも、「クーリングチャンバー2の径方向外方に拡がる上記傾斜面及びクーリングチャンバー2内周面の交差部」と「プレチャンバー内筒4の下端部及び仕切壁5の交差部であるプレチャンバー内筒4の外側面の下端部の角部」を通る仮想直線が、「赤熱コークスの安息面よりも下側に延びている」ものとして、スローピングフリュー入口7を、安息面よりも下に、完全に埋没させることは、当業者が容易に想到し得たことではないから、「第1の交差部」と「第3の交差部」を通る「仮想直線が、赤熱コークスの安息面よりも下側に延びている」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
以上より、本件訂正発明1は、甲1A発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件訂正発明2
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであるから、少なくとも相違点1の点で相違する。
そして、上記アで説示したように、相違点1は当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。甲1に記載された事項及び本件特許出願時の技術常識を検討しても、同様である。
してみれば、本件訂正発明2は、甲1A発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明3
本件訂正発明3と甲1B発明を対比すると、それぞれ、対応する「コークス乾式消火設備」である本件訂正発明1と甲1A発明の、「スローピングフリュー部構造」に係る発明であるから、本件訂正発明3と甲1B発明も、上記相違点1で相違する。
したがって、上記アでの検討と同様に、本件訂正発明3も、甲1B発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1B発明を対比すると、それぞれ、対応する「コークス乾式消火設備」である本件訂正発明2と甲1B発明の、「スローピングフリュー部構造」に係る発明である。
したがって、上記イでの検討と同様に、本件訂正発明4も、甲1B発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~4は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、取消理由2には、理由がない。
3 特許異議申立人の意見について
(1)申立人は、令和8年3月23日付けで提出した意見書において、甲1のスローピングフリュー入口上端部の位置(すなわち第3の交差部)について、安息面上端部であるプレチャンバー内筒内面下端と一致する配置は、参考例3の第1図に示されるように公知であることを主張する。
しかし、安息面とスローピングフリュー入口との間に空間を設けることが甲1の技術的思想であり、スローピングフリュー入口下端部を安息面下端以下の位置にしたうえで、さらに、スローピングフリュー入口上端部を、安息面上端と一致させるようにすることは、安息面とスローピングフリュー入口との間に空間がなくなり、上記技術的思想に相反する構成とすることになるから、上記1(3)ア(イ)で検討したとおり、甲1にはそのようにする動機づけはなく、そのようにすることが設計的事項であるともいえない。
(2)申立人は、異議申立書において、本件明細書に記載された、「スローピングフリュー部1からの赤熱コークスC1の排出を促進すること」と「冷却室の処理能力(冷却能力)向上」との本件発明の効果は、総合的にみて存在するか疑問である点を主張するとともに、令和7年11月25日付けで提出した意見書において、「第1の交差部」が「第2の交差部」よりも「上方に位置」することによる効果が顕著であるか否かの検証は本件明細書においてなされていない点を主張する。
しかし、甲1A発明に基づき本件訂正発明を容易に想到することのできないことは上記1(3)に示したとおりであるから、申立人が主張する前記構成による効果が示されていないことは、当該構成に係る発明の進歩性判断を直ちに左右するものではない。
(3)申立人は、令和8年3月23日付けで提出した意見書において、本件訂正発明2及び4において、「第1の交差部と第3の交差部とを通る仮想直線が赤熱コークスの安息面よりも下側を延び、かつ角度θは50°以下である」構成が、発明の詳細な説明において、効果との関係が示されないまま、恣意的に抽出されており、当該訂正は、発明の進歩性を基礎付けるものではない旨を主張する。
しかし、上記第2の3に示したように、申立人が主張する上記構成は、本件明細書に記載された事項に基づきなされた適法なものであり、当該構成による効果が示されていないことは、当該構成に係る発明の進歩性判断を直ちに左右するものではない。
(4)申立人は、令和8年3月23日付けで提出した意見書において、本件訂正により、本件訂正発明1~4において、「仮想直線L」が、赤熱コークスの安息面よりも下側を伸びており、「仮想直線L1」は、灼熱コークスの安息面よりも下側の仮想直線Lよりもさらに下側を伸びるものであるとされたが、本件明細書【0035】によれば「角度θは0°~70°であってもよいし、仮想直線L1は安息面S2との関係に関わらず全範囲でよい」ことが示されていることから、上記の訂正事項は、発明の詳細な説明に無い削除条件の追加であり、技術的裏付けがないものである点を主張する。
しかし、上記第2の3に示したように、申立人の指摘する訂正事項は、上記【0035】に記載され、具体的に図5に示された態様でもあるから、技術的裏付けがないものではない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、申立人の主張はいずれも採用することができない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、「特許法第36条第4項第1号について(同法第113条第4号)」として、本件特許発明【発明の詳細な説明】のスローピングフリュー部内の赤熱コークスC1への摩擦抵抗を低減する」手段及び「赤熱コークスC1の処理能力(冷却能力)を大きく向上させる」手段についての記載には不備があり、本件特許発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものである」として、具体的には、以下の2点を主張する。
(a)本件明細書には、訂正前の本件発明が特定するスローピングフリュー構造へと変更することで、「環状壁10の傾斜面S1の長さが比較的小さく」なり、「赤熱コークスC1が傾斜面S1から受ける摩擦抵抗が低下」するので、「排気流路30から赤熱コークスC1の排出を促進することが可能となる」(【0039】)ことが記載されるとともに、図3にもその変更が図示される。
しかし、上記した変更に伴い、支持壁の側面積は増加し(図3の鉛直断面において、傾斜面S1の仮想的な延長線よりも下の、支持壁側面部分)、摩擦抵抗もその分が新たに増加する点を考慮していないため、傾斜面S1の短縮が赤熱コークスの排出を促進することになるか不明であるから、請求項1~4の記載は、本件技術分野における通常の知識を有する者が「スローピングフリュー部1からの赤熱コークスC1の排出を促進する」ことができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
(b)本件明細書には、「排気流路30から赤熱コークスC1が下方に流下しやすく」なり「スローピングフリュー部1からの赤熱コークスの排出を促進する」ことにより、「赤熱コークスC1による排気流路30の閉塞が抑制されるので、冷却室101Bに供給される冷却ガスG1の流量を高めることができる」こと、及び、「冷却室101Bの内周面が比較的外方に位置するため、冷却室101Bの容量が比較的大きくなる」ことが記載され、それら2点(「冷却ガスG1の流量増大と、冷却室101Bの容量増大」)により、「冷却室101Bにおける赤熱コークスC1の処理能力(冷却能力)を大きく向上させることが可能となる」こと(【0039】)が記載される。
しかし、上記(a)のとおり排出促進は不明であり、仮に明確であるとしてもそれは非定常状態での排出促進を述べるに止まるので、定常状態での「冷却ガスの流量増大による処理能力(冷却能力)増大」があるとはいえない。一方、冷却室の容量の増大が処理量増大をもたらすことは公然の記載に過ぎない。
そうすると、この分野の通常の知識を有する者が、本件特許発明が主張するところの処理能力(冷却能力)増大をすることが出来る程度に論理的かつ十分な記載がなされているとはいえず、請求項1及び請求項3は、本件特許発明が主張するところの「処理能力(冷却能力)を増大する方法」の論理的かつ明確な記載とはいえず、さらに「角度θ」を特定する請求項2及び請求項4には、請求項1及び請求項3から独立した処理能力(冷却能力)増大との関係について特段の記載がないのであるから、赤熱コークスC1の処理能力(冷却能力)を向上させる記載として明確かつ十分であるとはいえない。
そこで、申立人の主張について検討する。
物の発明において、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があることを要する。
そして、本件特許は、「コークス乾式消火設備」及び「コークス乾式消火設備のスローピングフリュー部構造」という物の発明であるので、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ使用することができる程度の記載があることを要する。
これに対して、本件特許の明細書の【0008】、【0011】~【0037】、【0041】~【0046】には、本件訂正発明1~4に係るコークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造について記載されている。してみると、当業者は、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、本件発明1~4に係る物を生産し、かつ使用することができる程度の記載があるということができるものであり、その際に過度の試行錯誤を要するものともいえない。
申立人の主張は、本件特許の明細書に示された、本系訂正発明1~4に係るコークス乾式消火設備及びそのスローピングフリュー部構造のもたらす作用に関する記載内容(【0038】~【0040】)に不足ないしは不明な点があることを指摘するにとどまり、本件発明1~4に係る物を生産ないしは使用することができないことを説明するものではないから、上記判断基準に基づく検討内容を左右するものではない。
よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するものといえる。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700415