特許異議申立
2021-700747
パッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法
- 審判番号
- 2021-700747
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-199225
- 登録番号
- 6824858
- 請求日
- 2021年07月29日
- 審決日
- 2021年12月17日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】山田 鐘徳
- 【権利者代理人】南瀬 透
- 【権利者代理人】加藤 久
- 【権利者代理人】遠坂 啓太
- 【権利者代理人】宇野 智也
- 【異議申立人】板倉 昭夫
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 平野 崇
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1652.121-Y (A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6824858号発明「パッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6824858号の請求項6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6824858号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年10月13日(優先権主張:平成28年10月17日)に出願され、令和3年1月15日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月3日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項6に係る特許に対し、令和3年7月29日に特許異議申立人板倉昭夫(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6824858号の請求項6の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項6】
皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具を前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、
前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、
前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞すること
を含むパッチテスト方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証から甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)を提出し、本件発明は、甲1に記載された発明に基いて、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて、又は、甲1、甲2及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである旨主張する。
甲第1号証:特開昭61-293456号公報
甲第2号証:特表平09-506803号公報
甲第3号証:特開平02-049652号公報
第4 甲1~甲3の記載
1.甲1について
甲1には、次の事項が記載されている。以下、下線は、理解の便宜のため、当審が付した。
「第4図において、体取付け可能パッド部材40は、医療グレードの皮膚適合性接着剤のパッド42をプラスチック材料のディスク44に固着したことから成る。」(第5頁右上欄第5~8行)
「第4図
[図:0001384158000001.jpg]
」
「またディスク44の環状面は、創傷カバーを任意の各種方法で接着取付けするのに役立つ。」(第5頁右上欄第19~20行)
「また本発明の他の具体例を第11図に示すが、該図は患者の皮膚120に上述の如き医療用接着材料の体取付け可能パッド122を取付けた状態を示す概略断面図である。患者の創傷を124で示す。パッド122の穴123は、医療条件に応じて創傷124を好適に取り巻けるように切抜かれている。・・・(中略)・・・創傷カバー141は環状の薄いフラットなプレート144を有し、パッド122からなる体取付け可能部材と協同作動する。・・・(中略)・・・創傷124を検査しなければならない時などの必要な場合は、創傷カバー141を除去する。また使用したプラスター132は、その下プラスターの新しい接着剤面を露出させるため、除去する。次いで新しい創傷カバーを適用することができる。」(第6頁右上欄第15~右下欄第6行)
「第11図
[図:0001384158000002.jpg]
」
「以上詳述した各種の創傷処理具によれば、これまで利用できなかった手段が付与され、これによって、創傷のまわりに傷をつけることなく適当なパッドを取付けた状態にしておくことができ、しかもパッドを取外さなくとも、検査あるいは治療のため繰返して創傷に接近させることができる。」(第9頁左上欄第17行~右上欄第2行)
以上の記載を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「医療用接着材料の体取付け可能パッドと、
体取付け可能パッドに固着され、創傷カバーを接着取付けする環状面を有するディスクと、
医療条件に応じて創傷を好適に取り巻けるように切抜かれた穴と、
創傷を検査しなければならない時などの必要な場合は除去することが可能な創傷カバーとを有する創傷処理具を用いた方法であって、
患者の皮膚に医療用接着材料の体取付け可能パッドを取り付けること、
検査あるいは治療のために繰り返して創傷に接近させることができるよう、創傷カバーを除去すること、
次いで新しい創傷カバーを適用することを含む方法。」
2.甲2について
甲2には、次の事項が記載されている。
「記載された装置により予期される本発明の創傷用包帯からは、最初に対象となる創傷を覆い保護する包帯を装着し、治療中の創傷の検査を行うために健康な組織を冒すことなく包帯をはがし、創傷を観察し、必要とされる薬物治療を施し、包帯を装着して再度創傷を覆い、保護するという連続的な処置が想像される。その際、包帯の密閉性の完全性に損失は生じない。」(第9頁第9~14行)
「図面、特に図1乃至図3を参照すると、健康な組織を冒さずに診察可能な使い捨て創傷用包帯は符号10により示される。図1は、粘着片22に固着する以前の密閉カバー部材20を示し、密閉カバー部材20が粘着片22に固着されると密閉カバー部材20の一端に蝶番が形成され、包帯を開け閉めする時に操作される。表皮粘着テープ片基材26は、創傷用包帯を患者の身体の皮膚に付着させ、また、創傷が創傷周囲画定開口21により周囲を画定されるような位置に配置される。符号24は、要求により薬物が使用され、又は、使用されていない任意の取り替え可能パッドを示し、そのパッドは創傷周囲画定開口21内で治療中の創傷を覆うように配置される。しかし、希望される他のあらゆる手段によって薬物の使用を行うこと、または、薬物の使用を行わないことも可能であり、図示のパッド24が装置の一般性を限定するものと解釈してはならない。図2に示す掛け金機構18は、それぞれ符号14及び16で示される掛け金及び小穴を備え、包帯の積極的な閉鎖及び密閉を実現する。
図2は、粘着片22に固着された後、相互にかみ合って掛け金機構18を構成する掛け金14及び小穴16からなる機構により閉められた状態の密閉カバー部材20を示し、これにより密閉カバー部材20を創傷周囲画定開口21上に固定し、創傷を保護し、適用される薬物の位置を固定する。
図3は、使用後に開けられた組み立て後の装置を示し、密閉カバー部材20を粘着片22により固定した状態の蝶番動作を示す。治療過程にある創傷を検査し、創傷に薬物を適用し、又は、要求される他の目的のために創傷用包帯を図示のように開き、その後包帯を開いた目的が達成された後に、元の密閉の完全性を損なうことなく再度密閉される。」(第10頁第24行~第11頁第17行)
「図1
[図:0001384158000003.jpg]
」
「図2
[図:0001384158000004.jpg]
」
「図3
[図:0001384158000005.jpg]
」
「次に、図4乃至図7に注目して、符号11で示される、健康な組織を冒さずに診察可能な使い捨て創傷用包帯の第2実施例を考察する。図4は、その包帯の組み立て前の構成部材を示す分解斜視図である。密閉カバー20は粘着片22により表皮粘着テープ片基材26に付着する。カバー20は表皮粘着テープ片基材26上の小穴16と噛み合う掛け金14を備える。薬物パッド24が治療中の創傷上に配置される。創傷は図示を省略する。隔離部材28は、密閉カバー20と表皮粘着テープ片基材26との間に配置され、テープ部材26の創傷周囲画定開口21に適合するようにそのサイズ及び位置が調整される。隔離部材28により実現される一つの目的は、創傷の治療において必要とされ、希望される、創傷に加わる圧力の軽減にある。
図5は、密閉カバー20により隔離部材28を覆うように閉じられ、掛け金機構18により固定された状態の包帯の構造を示す。密閉の完全性は、蝶番式に固定された密閉カバー部材20により維持され、また、掛け金機構18と協働する粘着部材26及び隔離部材28により粘着的に維持される。
図6は、観察、治療又は他の希望される目的での使用後に開けられた状態の包帯を示す。密閉カバー20は蝶番が解放された位置にあり、隔離部材28は表皮粘着テープ片基材26の創傷周囲画定開口21に適合している。
図7は、図5の視線7-7に沿った拡大断面を示す。隔離部材28に対する密閉カバー20の構造はこの拡大図によってより明確に理解でき、同様に創傷周囲画定開口21に対する隔離部材28の位置合わせが理解できる。さらに、付加的な観点として、掛け金機構18を構成する掛け金14と小穴16の協働が解説される。」(第11頁第18行~第12頁第9行)
「図4
[図:0001384158000006.jpg]
」
「図5
[図:0001384158000007.jpg]
」
「図6
[図:0001384158000008.jpg]
」
以上の記載を総合すると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
(甲2発明)
「創傷用包帯を患者の身体の皮膚に付着させる表皮粘着テープ片基材と、
創傷の周囲を画定する位置に配置された創傷周囲画定開口と、
掛け金機構により包帯の積極的な閉鎖及び密閉を実現し、創傷周囲画定開口上に固定されて、創傷の保護、適用される薬物の位置固定をする密閉カバー部材と、
密閉カバーと表皮粘着テープ片基材との間に配置され、創傷周囲画定開口に適合するようにそのサイズ及び位置が調整される隔離部材とを含む創傷用包帯を、
最初に対象となる創傷を覆い保護する包帯を装着し、
治療中の創傷を覆うように薬物を使用したパッドを配置するために創傷用包帯を開き、
その後包帯を開いた目的が達成された後に、元の密閉の完全性を損なうことなく再度密閉される方法。」
3.甲3について
甲3には、次の事項が記載されている。
「外皮膚プラスターは外皮膚テスト、特にアレルギー性接触性皮膚炎を明らかにするために使用される。この目的のために、テストすべき物質を外皮膚テストプラスターに塗り、次にこれを患者の皮膚の適当な場所に貼る。次に外皮膚テストプラスターを所定時間後取除く。」(第2頁左下欄第6~11行)
「原則として、外皮膚テストプラスターは、以下の構造を有する。吸収織物の形態の、例えば、織布又は非織布の形態の、或いは皮膚に向かって開放する容器の形態の活性物質吸収手段が、接触接着剤キャリヤ層に配置され、或いは、テスト物質を吸収することができる前記キャリヤ層内に形成される。皮膚と接触すべき外皮膚テストプラスター面は、貼る前は、剥離できる保護層で覆われている。」(第2頁左下欄第18行~右下欄第6行)
「第1図に略図的に示す本発明の外皮膚テストプラスター10の好ましい実施例の横断面は、支持フィルム11を示し、この支持フィルム1は、キャリアフィルム12の1方の縁を越えて突出し、従って、貼るときに把持部分すなわち握り部分を形成する。接触接着剤層13は、キャリヤフィルム12と同じ寸法形状を有している。活性物質吸収或いは収容手段14と係止リング15が、接触接着剤層に固定されている。2部分保護層16が、プラスター全体を貼るときまで覆う。保護層の2部分を部分的に重ねることによって、剥離補助部が形成される。
支持フィルム11の把持部分11′を、保護層を剥離した本発明のプラスター10の皮膚側の平面図で見ることができる。この場合、プラスター10は、5つの活性物質吸収手段14を有し、この吸収手段14は、列をなして配置さており、係止手段15と共に接触接着剤層13に固定れている。」(第4頁左下欄第8行~右下欄第6行)
「第1図
[図:0001384158000009.jpg]
」
第5 当審の判断
1.甲1発明を主引用発明とする理由について
ア 対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「医療用接着材料の体取付け可能パッドと、体取付け可能パッドに固着され、創傷カバーを接着取付けする環状面を有するディスクと、医療条件に応じて創傷を好適に取り巻けるように切抜かれた穴と、創傷を検査しなければならない時などの必要な場合は除去することが可能な創傷カバーとを有する創傷処理具」と、本件発明の「皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具」とは、「皮膚に取り付ける器具」という限りで一致する。
また、甲1発明の創傷処理具を用いて、「患者の皮膚に医療用接着材料の体取付け可能パッドを取り付けること、検査あるいは治療のために繰り返して創傷に接近させることができるよう、創傷カバーを除去すること、次いで新しい創傷カバーを適用することを含む方法」と、本件発明のパッチテスト用保護具を「前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞することを含むパッチテスト方法」とは、「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法」という限りで一致する。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違する。
(一致点)
「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法。」
(相違点1)
「皮膚に取り付ける器具」に関して、本件発明は、「皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具」であるのに対して、甲1発明は、「医療用接着材料の体取付け可能パッドと、体取付け可能パッドに固着され、創傷カバーを接着取付けする環状面を有するディスクと、医療条件に応じて創傷を好適に取り巻けるように切抜かれた穴と、創傷を検査しなければならない時などの必要な場合は除去することが可能な創傷カバーとを有する創傷処理具」である点。
(相違点2)
「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法」に関して、本件発明は、「前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞することを含むパッチテスト方法」であるのに対し、甲1発明は、「患者の皮膚に医療用接着材料の体取付け可能パッドを取り付けること、検査あるいは治療のために繰り返して創傷に接近させることができるよう、創傷カバーを除去すること、次いで新しい創傷カバーを適用することを含む方法」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2から検討する。
(ア)相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に係る技術的意義
本件特許の明細書には、発明が解決しようとする課題として、「上記特許文献1に記載の患部塗布薬保護帯は、傷口などの患部に塗布された薬を外界から保護するものであり、薬物過敏症の試験を行うテスト部位を保護するものではないが、仮にこの患部塗布薬保護帯を用いてテスト部位を保護しようとした場合、テスト部位に試験液を垂らした上で、凹型伏覆材を上から伏せて被せていくことになる。しかしながら、このとき、試験液を垂らしたテスト部位が伏せて被せようとする凹型伏覆材の陰に隠れるようになるため、凹型伏覆材が試験液を垂らしたテスト部位の中心に位置するように上から伏せて被せることは難しい。」(【0006】)ことを挙げ、「そこで、本発明においては、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが
可能なパッチテスト用保護具およびこれを用いたパッチテスト方法を提供することを目的とする。」(【0007】)ものである。
(イ)本件発明1の課題解決手段
そして、本件発明は、「皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具を前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着」し、「前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと」によって、テスト部位の中心位置に試験液を正確に垂らすことを実現するものである。
(ウ)甲1~3の検討
他方、甲1発明は、創傷処理具を用いた方法であって、パッチテスト用の保護具とは技術が異なること、甲2も同様に創傷用包帯を用いた方法であること、そして、甲3は、テストすべき物質を外皮膚テストプラスターに塗り、患者の皮膚の適当な場所に貼ることで外皮膚テストする方法であり、皮膚に装着した後に皮膚側へアクセスする手段を開示するものではなく、むしろ、パッチテストでは、そのようなアクセス手段を採用しないことを立証するものであり、パッチテストとして、甲1、2に係る開口及び蓋材を有する創傷用部材を採用することには、阻害理由があるといえる。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本件発明は、当業者であっても甲1発明に基いて、又は甲1発明と甲2~3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲2を例示し、「治療」として「皮膚上の覆われた一部位に液を適用する」ことは周知技術であって、甲1発明と甲2に記載の周知技術に基づき、皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすように試みることは、発明の具体的な実施の場面における設計の微差にすぎない旨、また、本件特許の背景技術にも記載されるとおり、試験液を皮膚上に垂らすパッチテスト方法は、公知であって、本件発明は、周知の「創傷処理具」を、公知のパッチテストの用途に応じた適切な方法で使用することは、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用か、又は、先行技術の単なる寄せ集めである旨、主張する。
当該主張について検討する。
甲2には、「符号24は、要求により薬物が使用され、又は、使用されていない任意の取り替え可能パッドを示し、そのパッドは創傷周囲画定開口21内で治療中の創傷を覆うように配置される。」(第11頁第2~4行)と記載されているように、薬物はパッドを介して使用されるものであって、「液体を垂らす」ものではない。また、公知とするパッチテスト方法には、テスト部位を覆う保護具が存在しないから、「パッチテスト用保護具を皮膚上のテスト部位に貼着」した後、「パッチテスト用保護具の開口を通じて試験液を垂らす」という手順は着想し得ない。
したがって、申立人のかかる主張には理由がない。
2.甲2発明を主引用発明とする理由について
ア 対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「創傷用包帯を患者の身体の皮膚に付着させる表皮粘着テープ片基材と、創傷の周囲を画定する位置に配置された創傷周囲画定開口と、掛け金機構により包帯の積極的な閉鎖及び密閉を実現し、創傷周囲画定開口上に固定されて、創傷の保護、適用される薬物の位置固定をする密閉カバー部材と、密閉カバーと表皮粘着テープ片基材との間に配置され、創傷周囲画定開口に適合するようにそのサイズ及び位置が調整される隔離部材とを含む創傷用包帯」と、本件発明の「皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具」とは、「皮膚に取り付ける器具」という限りで一致する。
また、甲2発明の創傷用包帯を用いて、「最初に対象となる創傷を覆い保護する包帯を装着し、治療中の創傷を覆うように薬物を使用したパッドを配置するために創傷用包帯を開き、その後包帯を開いた目的が達成された後に、元の密閉の完全性を損なうことなく再度密閉される方法」と、本件発明のパッチテスト用保護具を「前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞することを含むパッチテスト方法」とは、「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法」という限りで一致する。
そうすると、本件発明と甲2発明とは、次の一致点で一致し、相違する。
(一致点)
「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法。」
(相違点3)
「皮膚に取り付ける器具」に関して、本件発明は、「皮膚上のテスト部位に触れないように当該テスト部位を被覆する被覆部であり、中心部に開口部を有する被覆部と、前記開口部を閉塞可能な蓋部と、前記被覆部を前記皮膚上に貼着可能にする貼着部とを含むパッチテスト用保護具」であるのに対して、甲2発明は、「創傷用包帯を患者の身体の皮膚に付着させる表皮粘着テープ片基材と、創傷の周囲を画定する位置に配置された創傷周囲画定開口と、掛け金機構により包帯の積極的な閉鎖及び密閉を実現し、創傷周囲画定開口上に固定されて、創傷の保護、適用される薬物の位置固定をする密閉カバー部材と、密閉カバーと表皮粘着テープ片基材との間に配置され、創傷周囲画定開口に適合するようにそのサイズ及び位置が調整される隔離部材とを含む創傷用包帯」である点。
(相違点4)
「皮膚に取り付ける器具の開口部を通じて皮膚の特定部位に対し処置を行う方法」に関して、本件発明は、「前記貼着部により前記皮膚上のテスト部位に貼着すること、前記被覆部の開口部を通じて前記皮膚上のテスト部位に試験液を垂らすこと、前記被覆部の開口部を前記蓋部により閉塞することを含むパッチテスト方法」であるのに対し、甲2発明は、「最初に対象となる創傷を覆い保護する包帯を装着し、治療中の創傷を覆うように薬物を使用したパッドを配置するために創傷用包帯を開き、その後包帯を開いた目的が達成された後に、元の密閉の完全性を損なうことなく再度密閉される方法」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点4から検討する。
第5 1.イで検討したとおり、甲2発明は、甲1発明と同様に、創傷用包帯を用いた方法であって、パッチテスト用の保護具とは技術が異なること、そして、甲3は、テストすべき物質を外皮膚テストプラスターに塗り、患者の皮膚の適当な場所に貼ることで外皮膚テストする方法であり、皮膚に装着した後に皮膚側へアクセスする手段を開示するものではなく、むしろ、パッチテストでは、そのようなアクセス手段を採用しないことを立証するものであり、パッチテストとして、甲2に係る開口及び蓋材を有する創傷用部材を採用することには、阻害理由があるといえる。
したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本件発明は、当業者であっても甲2発明と甲1、3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、治療として、創傷部位に対し、消毒液等の薬液を垂らす、塗る等して「液を適用する」ことは、一般的に行われており、周知技術である旨、主張する。
当該主張について検討する。
仮に、甲2発明に申立人が主張する周知技術を適用したとしても、創傷部位に対して治療を行う前に、創傷用包帯を装着した後、開口部を通して治療を行うという一連の手順は特定できないから、甲2発明をパッチテスト方法に転用し得たとしても、テスト部位に対して試験液を垂らす前に、保護具を皮膚上に取付け、保護具の開口部を通じて試験液を垂らすという手順を採用する動機付けが存在しない。
したがって、申立人のかかる主張には理由がない。
3.甲3に基づく理由について
ア 対比・判断
申立人は、甲3の外皮膚プラスターを使用した外皮膚テストの方法の発明(以下「甲3発明」という。)と、甲1発明又は甲2発明は関連する技術分野であり、甲1発明の創傷処理具又は甲2発明の創傷用包帯を、甲3発明のパッチテスト用保護具として用いることは、当業者にとって容易に成し得たものである旨主張する。
しかし、甲3発明は、テストすべき物質を外皮膚プラスターを用いて患者の皮膚に当ててテストするパッチテスト方法に関するものであるのに対して、甲1発明と甲2発明は、いずれも傷口の保護を目的とした発明であるから、甲3発明の外皮膚プラスターを用いたパッチテスト方法において、甲1発明又は甲2発明の傷口に対する保護具を採用する動機付けがない。
よって、本件発明は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
イ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲3に記載された「係止リング」、「支持フィルム及びキャリアフィルム」は、それぞれ、本件発明の「被覆部」、「蓋部」に相当すると主張する。
しかし、本件発明は、「被覆部」が「中心部に開口部を有」し、その「開口部を閉塞可能な蓋部」を備えることにより、「被覆部の中心部に開口部を有するため、皮膚上に試験液を垂らす前に、貼着部により皮膚上のテスト部位に貼着した後、被覆部の開口部を通じてテスト部位の中心位置に試験液を正確に垂らすことが可能である。そして、試験液を垂らした後は、被覆部の開口部を蓋部により閉塞することで、試験液を垂らしたテスト部位を中心にして保護することが可能となる。」(【0009】)ものであるところ、甲3の係止リングには、本件発明のように、貼着部により皮膚上のテスト部位に貼着した後、皮膚から離れた側から、開口部を通じてテスト部位の中心位置に試験液を正確に垂らすことを可能とするものではないから、甲3の「係止リング」は、本件発明の「開口部」に相当するものを有しておらず、本件発明の「被覆部」に相当しない。また、「支持フィルム及びキャリアフィルム」も「開口部」を閉塞する「蓋部」に相当するものではない。
したがって、申立人のかかる主張には理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700747