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特許異議申立

2021-700223

小動物防除性樹脂組成物及びこれを用いた小動物防除性樹脂成形体

審判番号
2021-700223
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-153208外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6750869
請求日
2021年03月01日
審決日
2021年10月15日
公報発行日
2022年03月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(A01N) / P1651.121-YAA(A01N) / P1651.537-YAA(A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6750869号発明「小動物防除性樹脂組成物及びこれを用いた小動物防除性樹脂成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6750869号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第6750869号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第6750869号は、平成28年8月3日に出願がされ、令和2年8月17日に特許権の設定登録がなされ、同年9月2日にその特許公報が発行され、その後、請求項1~4に係る特許に対して、令和3年3月1日に特許異議申立人 小倉千佳から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。 令和3年5月21日付け:取消理由通知 同年7月21日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者) 同年8月 6日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知 なお、令和3年7月21日提出の訂正の請求及び意見書に対する申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の可否 1 訂正の内容 令和3年7月21日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1~4は一群の請求項である。 訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の 「エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」を 「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」に訂正する。 訂正事項2:特許請求の範囲の請求項3の 「塗料、シーリング剤、またはクッション材として用いられる」を 「塗料またはシーリング剤として用いられる」に訂正する。 訂正事項3:明細書の【0010】の 「エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」を 「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」に訂正する。 訂正事項4:明細書の【0011】の 「エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」を 「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、」に訂正する。 訂正事項5:明細書の【0019】の 「塗料、シーリング剤、またはクッション材として用いられる」を 「塗料またはシーリング剤として用いられる」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、請求項1に係る発明で使用される「ベース樹脂」の選択肢のうち「ポリエチレン」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 訂正事項2は、請求項3に係る発明の用途の選択肢のうち「クッション材」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 訂正事項3及び4は請求項1の訂正に、訂正事項5は請求項3の訂正にそれぞれ倣い、各請求項の記載と明細書の記載との文言を揃えるものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。 第3 本件訂正後の請求項1~4に係る発明 本件訂正により訂正された訂正請求項1~4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明4」、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含むベース樹脂と、小動物防除剤と、分子量が330~530の炭化水素系化合物と、を少なくとも含むことを特徴とする小動物防除性樹脂組成物。 【請求項2】 前記炭化水素系化合物は、パラフィンオイルであることを特徴とする請求項1に記載の小動物防除性樹脂組成物。 【請求項3】 塗料またはシーリング剤として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の小動物防除性樹脂組成物。 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の小動物防除性樹脂組成物を成形材料として用い、これを所定の形状に成形して成ることを特徴とする小動物防除性樹脂成形体。」 第4 取消理由の概要及びこれに対する当審の判断 1 取消理由の概要 請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和3年5月21日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。 A (新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 B (進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 引用例1:特開2011-126826号公報(甲第1号証) 参考資料:本件特許異議申立人小倉千佳が2021年2月22日付けで 作成した報告書に添付した、2021年1月22日付け実験 成績証明書(甲第4号証) 2 当審の判断 (1)引用例1の記載事項 ア「【請求項1】 オレフィン系重合体100重量部と、該オレフィン系重合体100重量部に対し、炭素数10~90の飽和鎖状炭化水素および/または流動パラフィン0.01~100重量部と、放出性活性化合物0.01~200重量部とを含む重合体組成物からなり、2倍以上に延伸されている成形体。 【請求項2】 前記放出性活性化合物が、害虫防除剤、滑剤、帯電防止剤および防曇剤からなる群より選ばれる化合物である請求項1に記載の成形体。 【請求項3】 前記放出性活性化合物が、ピレスロイド系化合物である請求項2に記載の成形体。 【請求項4】 前記オレフィン系重合体がエチレン系重合体である請求項1-3いずれかに記載の成形体。 【請求項5】 前記エチレン系重合体がエチレン-α-オレフィン共重合体であり、その密度が870~980kg/m3、MFRが0.1~20g/10minである、請求項4に記載の成形体。」 イ「【0004】 … したがって、長期間に渡って使用可能な成形体とするためには、重合体への飽和溶解量を超える量の活性化合物を配合した重合体組成物を用いる必要がある。しかしながら過飽和量の活性化合物を重合体に含有させた重合体組成物を用いて得られる成形体は、使用初期に多量に活性化合物がブリードしてしまい、所望の期間ブリード速度を維持できないことがあった。 … 【発明の効果】 【0006】 本発明によれば、活性化合物のブリード速度の低下を抑制することができるため、一定期間内にブリードする活性化合物量を増加させることができる成形体及びその製造方法を提供することができる。」 ウ「【0008】 本発明の放出性活性化合物における「放出性」とは、重合体組成物を用いて得られる成形体から活性化合物がブリードして成形体表面ににじみ出てくることを意味する。 【0009】 該放出性活性化合物は、本発明の重合体組成物を成形して得られる成形体の使用目的に応じて害虫防除、防菌、防黴、防汚、除草、植物成長調節、経皮治療、防錆、滑り性、界面活性、帯電防止等に対して活性を有する有機化合物であり、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。放出性活性化合物としては、害虫防除剤、滑剤、帯電防止剤および防曇剤からなる群より選ばれる化合物を用いることが好ましい。 … 【0012】 殺虫剤としては、ピレスロイド系化合物、有機燐系化合物、カーバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物等が挙げられる。ピレスロイド系化合物としては、ペルメトリン、アレスリン、d-アレスリン、dd-アレスリン、d-テトラメトリン、プラレスリン、サイフェノトリン、d-フェノトリン、d-レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパスリン、シハロトリン、サイフルトリン、エトフェンプロクス、トラロメスリン、エスビオスリン、ベンフルスリン、テラレスリン、デルタメスリン、サイパーメスリン、フェノトリン、テフルトリン、ビフェントリン、シフルトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン等が挙げられ、有機燐系化合物としては、フェニトロチオン、ジクロルボス、ナレド、フェンチオン、シアノホス、クロロピリホス、カルクロホス、サリチオン、ダイアジノン等が挙げられ、カーバメート系化合物としては、メトキシジアゾン、プロポクスル、フェノブカーブ、カルバリル等が挙げられ、フェニルピラゾール系化合物としてはフィプロニル等が挙げられる。 【0013】 昆虫成長制御剤としては、ピリプロキシフェン、メソプレン、ヒドロプレン、ジフルベンズロン、シロマジン、フェノキシカーブ、ルフェニュロン等が挙げられる。 【0014】 忌避剤としては、ジエチルトルアミド、ジブチルフタレート等が挙げられる。」 エ「【0046】 本発明の重合体組成物を成形して得られる成形体としては、フィルム、シート、壁紙、カーテン、床材、梱包材、ホース、テープ、チューブ、パイプ、バック、テント・ターフ、暖簾、日よけ、電線、ケーブル、シース、フィラメント、繊維、ネット・網類(蚊帳・網戸・防虫網等)、糸、ロープ、フィルター、カーペット、靴、鞄、衣類、電子機器、電気機器、家電製品、事務機器、車両機器、輸送機器、コンテナ・ケース等の物流資材;住宅用品および住宅用部品に用いられるもの;犬小屋、マット、シート、首輪、タグ類等のペット用品等が挙げられる。 【0047】 本発明の成形体は、2倍以上に延伸されている。ここで延伸とは、成形体を固体もしくは半溶融もしくは溶融状態で、公知の方法により、一軸または二軸に延伸することを意味する。例えばフィラメントの成形においては、押出機から押出された成形体を引き取り冷却して太いフィラメントを成形し、これを加熱水槽を通して前述の引き取り時の速度よりも速いスピードで引き取ることにより延伸を行うことができる。」 オ「【0055】 〔実施例1〕 (1)放出性活性化合物保持体の調整 放出性活性化合物として、害虫防除剤であるペルメトリン(住友化学社製 商品名エクスミン)を用いた。ペルメトリン51重量部に、酸化防止剤2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、AO-1と記す。)1.5重量部を溶解させた。次に、ペルメトリンとAO-1との混合物52.5重量部と保持体である非晶性シリカ(鈴木油脂製商品名多孔質シリカ)47.5重量部(ペルメトリン100重量部あたり93.1重量部)とを攪拌混合し、放出性活性化合物保持体を調製した。 【0056】 (2)重合体組成物の調整 オレフィン系重合体として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 商品名:ハイゼックス440M;MFR=0.9g/10分、密度=948kg/m3)のペレット100重量部と、高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン G803)(以下、LDと記す。)のペレット9.8重量部とを混合した混合物を用いた(以下、オレフィン系重合体混合物と記す)。 オレフィン系重合体混合物100重量部と、該混合物オレフィン系重合体混合物100重量部に対し、酸化防止剤n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名Irganox1076を0.013重量部と、放出性活性化合物保持体4.4重量部と、パラフィン等として流動パラフィン(和光純薬工業製品 コードNo122-04775 密度=0.815~0.840g/m3)1.4重量部とを、バンバリーミキサーを用いて、約150℃で溶融混練し、フィラメント成形用重合体組成物を調製した。 【0057】 (3)モノフィラメントの製造 フィラメント成形用重合体組成物を、1mmφ-4穴ダイ付の20mmφ押出機を用いて、吐出量0.6kg/hr、ダイ設定温度200℃で押し出し、ライン速度14m/分で引き取り、加熱水槽に通して112m/分で引き取り延伸倍率を8倍延伸として、200デニールのモノフィラメントに成形した。 … 【0065】 【表1】 [図:0001382379000001.jpg] 」 (2)引用例1に記載された発明 引用例1の実施例1(上記(1)オ)から、引用例1には、以下の引用発明が記載されていると認められる。 「高密度ポリエチレン(プライムポリマー製 商品名:ハイゼックス440M;MFR=0.9g/10分、密度=948kg/m3)のペレット100重量部と、高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン G803)のペレット9.8重量部とを混合したオレフィン系重合体混合物100重量部と、該混合物オレフィン系重合体混合物100重量部に対し、酸化防止剤n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャルティケミカルズ社製 商品名Irganox1076)を0.013重量部と、 ペルメトリン51重量部に、酸化防止剤2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、AO-1と記す。)1.5重量部を溶解させ、ペルメトリンとAO-1との混合物52.5重量部と保持体である非晶性シリカ(鈴木油脂製商品名多孔質シリカ)47.5重量部(ペルメトリン100重量部あたり93.1重量部)とを攪拌混合して調製した放出性活性化合物保持体4.4重量部と、 パラフィン等として流動パラフィン(和光純薬工業製品 コードNo122-04775 密度=0.815~0.840g/m3)1.4重量部とを、 バンバリーミキサーを用いて、約150℃で溶融混練した、フィラメント成形用重合体組成物。」 (3)対比及び判断 ア 本件訂正発明1 引用発明の「放出性活性化合物保持体」に含有される「ペルメトリン」は本件訂正発明1の「小動物防除剤」に、引用発明の「重合体組成物」は本件発明の「樹脂組成物」に、それぞれ相当する。 引用発明の「流動パラフィン」については、参考資料の図1、図2、表3を参照すると、炭素数24~37程度の炭化水素化合物、すなわち本件訂正発明1でいう「分子量が330~530の炭化水素系化合物」が含有されていると解される。このため、引用発明の「流動パラフィン」は本件訂正発明1の「炭化水素系化合物」に相当する。 引用発明は「一定期間内にブリードする活性化合物量を増加させることができる成形体」(上記(1)イ)に関するものであり、既に述べたとおり、「ペルメトリン」は「小動物防除剤」であるから、引用発明の「重合体組成物」は小動物防除性を有するものと解される。 そして、引用発明の「オレフィン系重合体混合物」は樹脂であり、本件訂正発明1でいう「ベース樹脂」と解されるもの認められる。 そうすると本件訂正発明1と引用発明とは以下の点で一致する。 一致点: 「ベース樹脂と、小動物防除剤と、分子量が330~530の炭化水素系化合物と、を少なくとも含むことを特徴とする小動物防除性樹脂組成物。」 そして、両者は以下の点で相違する。 相違点: 「ベース樹脂」として本件訂正発明1は「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂のうちの少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、引用発明は「オレフィン系重合体混合物」である点。 イ 判断 相違点について検討する。 「オレフィン系重合体混合物」及びこれを構成する「高密度ポリエチレン」や「高圧法低密度ポリエチレン」は、「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂」のいずれにも相当せず、また、「高密度ポリエチレン」や「高圧法低密度ポリエチレン」等の「オレフィン系重合体」を用いているからといって、「エポキシ樹脂、ポリアミド、常温硬化シリコーン系樹脂、及び加熱硬化シリコーン系樹脂」のいずれかの使用を想起しうるとはいえず、また想起しうる根拠も存在しない。 このため、本件訂正発明1は引用発明とはいえず、また、参考資料を参照しても、本件訂正発明1は引用発明から容易になしえたものとはいえない。 (4)本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1は引用発明とはいえず、また、参考資料を参照しても、本件訂正発明1は引用発明から容易になしえたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2~4も引用発明とはいえず、また、参考資料を参照しても、本件訂正発明2~4は引用発明から容易になしえたものとはいえない。 3 まとめ よって、当審が令和3年5月21日付け取消理由通知で示した取消理由には、理由がない。 第5 異議申立ての理由について 1 申立人の異議申立ての理由について 申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2011-126826号公報 甲第2号証:富士フイルム和光純薬株式会社、安全データシート 「流動パラフィン[密度(20℃)0.815~ 0.840g/ml]」、改訂日令和2年1月20日 甲第3号証:富士フイルム和光純薬株式会社、製品規格書「流動パラフィン [密度(20℃)0.815~0.840g/mL]」、 改訂日令和元年11月15日 甲第4号証:作成者不詳、「特開2011-126826号公報の実施例1 で用いられている流動パラフィン(和光純薬工業製品 コード No122-04775 密度=0.815~0.840g/ m3(決定注:流動パラフィンの密度として「0.815~ 0.840g/m3」という値はあり得ないため、甲第2号 証及び甲第3号証の記載から、「g/m3」は「g/ml」 の誤記と解した。)…)の分子量を確認」したとされる 実験成績証明書、令和3年1月22日付け 甲第5号証:住友化学株式会社、製品安全データシート「バイオスリン」、 平成26年11月11日改訂 甲第6号証:ベルギー王国、Regulation(EU)no528/2012 concerning the making available on the market and use of biocidal products Evaluation of active substances Assessment Report EMPENTHRIN Product-Type 18(Insecticide) 2019年3月改訂版、及びその抄訳 甲第7号証:住友化学株式会社、安全データシート「エミネンス」、 改訂日平成25年8月22日 甲第8号証:住友化学株式会社、安全データシート「フェアリテール」、 改訂日平成25年12月3日 甲第9号証:Y.D.Lee,et al., Korean J Environ Agric, 2011 30(4) 432-439、及びその抄訳 甲第10号証:氏原一哉他、技術誌 住友化学、2010-II 13-23 甲第11号証:秋野順治他、日本応用動物昆虫学会誌、2012 56(4) 141-149 甲第12号証:山岡亮平、日本生態学会誌、1994 44(2) 201-210 甲第13号証:武川恒他、日本環境動物昆虫学会誌、1990 2(1) 31-38 (以下、甲第1~13号証を「甲1」~「甲13」という。) <特許異議申立書における異議申立ての理由> (1)取消理由1(新規性・進歩性欠如) 本件特許発明1~4は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものであるから、あるいは、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(サポート要件違反) 本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、特許法第36条第6項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消されるべきものである。 2 検討 (1)取消理由1について 本件訂正発明1~4と甲1に記載された発明とは、上記第4 2(3)アに示した相違点が存在する。 そして、同(3)イ及び(4)で検討したことと同様、相違点において、本件訂正発明1~4と甲1に記載された発明とは相違しており、また、甲1に記載された発明から容易になしえたものとはいえない。 よって、申立人が主張する取消理由1には、理由がない。 (2)取消理由2について ア 申立人の主張第5 3(2)アについて (ア)申立人は、以下のように主張する。 「本件発明の小動物防除剤には様々な薬剤が含まれており、中には揮散性が高いものもある。そして、揮散性の高い小動物防除剤を含む本件発明は、課題を解決することができない。 … 上記のように、「小動物防除剤」として例示されているピレスロイド系化合物の中には、エトフェンプロックスよりも蒸気圧が約500倍~約20000倍も高い化合物が含まれている。 そして、蒸気圧が高いピレスロイド系化合物は、樹脂成形体の表面に留まることなく、空気中に揮散していく。例えば、エンペントリン、メトフルトリン、プロフルトリンは、高い常温揮散性を利用して衣料用防虫剤等として使用されている(甲10)。 このような揮散性の高いピレスロイド系化合物を本件発明の小動物防除剤として用いても、樹脂組成物や樹脂成形体の表面に留まらずに揮散していくから、小動物防除性樹脂組成物又は小動物防除性樹脂成形体に接触した小動物の体表面に小動物防除剤を効率よく移行させることはできない。 したがって、このような揮散性の高いピレスロイド系化合物を含む本件発明に係る小動物防除性樹脂組成物又は小動物防除性樹脂成形体は、本件発明の課題を解決できないと解される。」(申立ての理由第5 3(2)ア(イ)) 「小動物防除剤の中には炭化水素系化合物への溶解性が低い薬剤が含まれており、そのような小動物防除剤を含む本件発明は課題を解決することができない。 … このような炭化水素系化合物への溶解性が低いピレスロイド系化合物を本件発明の小動物防除剤として用いても、小動物の体表面に小動物防除剤を効率よく移行させることはできない。 したがって、このような炭化水素系化合物への溶解性が低いピレスロイド系化合物を含む本件発明に係る小動物防除性樹脂組成物又は小動物防除性樹脂成形体は、本件発明の課題を解決できないと解される。」(同(ウ)) 「本件明細書の実施例において、接触による小動物防除効果を確認されているのは、小動物防除剤としてエトフェンプロックスを含む樹脂組成物のみである…。 … 本件明細書の発明の詳細な説明には、エトフェンプロックス以外の小動物防除剤が、エトフェンプロックスと同様に接触による小動物防除効果を奏することを理解させるような説明はない。 さらに、本件特許の出願当時、エトフェンプロックス以外の小動物防除剤が、エトフェンプロックスと同様に接触による小動物防除効果を奏することを裏付けるような技術常識はなかった。」(同(エ)) 「以上のように、本件明細書の記載や技術常識から、当業者が、エトフェンプロックス以外の小動物防除剤を含む小動物防除性樹脂組成物や小動物防除性樹脂成形体が課題を解決できることを認識できるとはいえない。 よって、本件特許はサポート要件を満たしていない。」(同(オ)) (イ)上記主張について検討する。 本件明細書【0029】~【0036】には、「小動物防除剤」についての説明がある。本件実施例で試験されている「エトフェンプロックス」は、その例示物質の中の一つとして記載されており、本件実施例においてその有効性が確認されている。 そして、上記「小動物防除剤」におけるその余の例示物質が本件訂正発明に用いられた際に、係る例示物質の揮散性や炭化水素系化合物への溶解性の相違によって、本件訂正発明の課題を解決することができないと解される根拠を、本件明細書あるいは甲各号証から見いだすことはできない。 したがって、申立人の上記主張には理由がない。 イ 申立人の主張第5 3(2)イについて (ア)申立人は、以下のように主張する。 「小動物のうち、例えば、昆虫は、体表面を覆うクチクラワックスとして、種ごとに異なる炭化水素成分を含んでいる。また、ゴキブリについても、チャバネゴキブリとそれ以外のゴキブリとでは、体表面を覆うクチクラワックスが異なっている。」(申立ての理由第5 3(2)イ(イ)) 「本件発明の小動物防除性樹脂組成物や小動物防除性樹脂成形体が対象とする小動物には、上記のチャバネゴキブリ以外にも、様々な虫や哺乳類が多数含まれており、それらの体表の蝋を構成する化合物は、チャバネゴキブリとは異なっている。 … そして…、何故、炭化水素系化合物と生物の体表面との親和性が高められるかについての説明は一切なされていない。 そうすると、小動物の体表面を覆う蝋と炭化水素系化合物との親和性は、実際に小動物に対して炭化水素系化合物を接触させる試験をしないと確認することができない。 しかしながら、本件明細書の実施例において、接触による小動物防除効果を確認されているのは、チャバネゴキブリに対して、炭化水素系化合物として所定範囲の分子量及び動粘度を有するパラフィンオイルを用いた実施例のみである…。 したがって、当業者は、技術常識を参酌したうえで本件明細書の記載を見ても、チャバネゴキブリ以外の小動物に対して、炭化水素系化合物として所定範囲の分子量及び動粘度を有するパラフィンオイルを用いた場合に、実施例と同様の効果が得られるのか理解できない。同様に、チャバネゴキブリを含む小動物に対して、所定範囲の分子量及び動粘度を有するパラフィンオイル以外の炭化水素系を用いた場合に、実施例と同様の効果が得られるのか理解できない。」(同(ウ)) 「以上のように、本件明細書の記載や技術常識から、当業者が、チャバネゴキブリ以外の小動物を対象とする本件発明に係る小動物防除性樹脂組成物や小動物防除性樹脂成形体が本件発明の課題を解決できることを認識できるとはいえないし、所定範囲の分子量及び動粘度を有するパラフィンオイル以外の炭化水素系化合物を含む本件発明に係る小動物防除性樹脂組成物や小動物防除性樹脂成形体が本件発明の課題を解決できることを認識できるとはいえない。 よって、本件特許は、サポート要件を満たしていない。」(同(エ)) (イ)上記主張について検討する。 本件明細書【0027】~【0028】には、本件訂正発明に係る「炭化水素系化合物」についての説明がある。そのうち、分子量330~530の炭化水素が好適なのは、「小動物の体孔から小動物の体内に容易に侵入するからである」と説示されている。また、本件実施例において、分子量330~530のパラフィンオイルを用いて試験し、その有効性が確認されている。 そして、パラフィンオイル以外の炭化水素系化合物を含む本件訂正発明が、その課題を解決することができないと解される根拠を、本件明細書あるいは甲各号証から見いだすことができない。 ウ まとめ よって、本件訂正発明1~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、特許法第36条第6項の規定を満たしているといえるから、申立人が主張する取消理由2には理由がない。 3 まとめ 以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1~4に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700223

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