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特許訂正審判

2021-390169

撮像装置とその製造方法

審判番号
2021-390169
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2019-150969
登録番号
6947204
請求日
2021年10月15日
審決日
2022年02月15日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ソニーグループ 株式会社
  • 【請求人代理人】宮田 正昭
審判長/審判官
  • 審判長 五十嵐 努
  • 審判官 畑中 高行
  • 審判官 樫本 剛
分類
P141 .852-Z (H04N) / P141 .855-Z (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項特許法126条6項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6947204号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第6947204号(以下、「本件特許」という。)は、平成27年3月24日に出願された特願2015-60659号の一部を、令和元年8月21日に新たな特許出願としたものであって、令和3年9月21日に特許権の設定登録がなされ、令和3年10月15日に本件訂正審判の請求がなされたものである。 そして、当審において、令和3年12月3日付け(発送日:令和3年12月8日)で訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、審判請求人からは何ら応答がなかった。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6947204号の明細書、特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。 第3 訂正事項 本件訂正審判の請求に係る訂正事項は以下のとおりである。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項1に「f/4.5」と記載されているのを「f/4.0」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する)。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項9に「f/4.5」と記載されているのを「f/4.0」に訂正する。 (請求項9の記載を引用する請求項10~16も同様に訂正する)。 [訂正事項3] 明細書の段落[0006][0008]にそれぞれ「f/4.5」と記載されているのを「f/4.0」に訂正する。 第4 当審の判断 1 訂正事項1及び訂正事項2について (1)訂正の目的について ア 誤記又は誤訳の訂正について 請求人は、「審判請求書2頁6(3)ア(ア)a」において、訂正事項1及び訂正事項2は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであると述べているので、以下、検討する。 (ア)「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。 また、誤記の訂正が認められるためには、設定登録時の明細書等の中の記載に誤記が存在することが必要である。 さらに、請求項中の記載が、それ自体で、又は設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書等の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないものでない。これに対し、出願当初の明細書又は外国語書面を参酌して、初めて正しい記載が定まるときは、改めて訂正前と訂正後の特許請求の範囲を対比し、訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものか否かを審理することを要する。 そこで、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び請求項9の「f/4.5」との記載(以下、「訂正前の記載」という。)が誤記であるかどうかについて検討する。 (イ)明細書等の記載 設定登録時の明細書等には以下の記載がある。(下線は、当審で付与した。) (イ-1)「【請求項1】 レンズを介して入射される被写体光を赤色、緑色、青色の成分に分離する色分解プリズムと、 前記色分解プリズムで分離された赤色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の赤色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された緑色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の緑色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された青色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の青色用の撮像素子と、 前記撮像素子で取得された撮像信号を処理する信号処理部と を備え、 前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い、前記信号処理部で生成されたテスト画像のコントラストが40%となるレジストレーション誤差を所定の閾値として、前記テスト画像で確認される前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第2の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であり、前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第3の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であるように前記色分解プリズムと前記3つの撮像素子が互いに固着される 撮像装置。」 (イ-2)「【請求項9】 レンズを介して入射される被写体光を赤色、緑色、青色の成分に分離する色分解プリズムと、 前記色分解プリズムで分離された赤色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の赤色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された緑色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の緑色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された青色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の青色用の撮像素子と、 前記撮像素子で取得された撮像信号を処理する信号処理部と を用いて、 前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い、前記信号処理部で生成されたテスト画像のコントラストが40%となるレジストレーション誤差を所定の閾値として、前記テスト画像で確認される前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第2の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であり、前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第3の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であるように前記色分解プリズムと前記3つの撮像素子が互いに固着されること を含む撮像装置の製造方法。」 (イ-3)「【0006】 この技術の第1の側面は、 レンズを介して入射される被写体光を赤色、緑色、青色の成分に分離する色分解プリズムと、 前記色分解プリズムで分離された赤色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の赤色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された緑色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の緑色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された青色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の青色用の撮像素子と、 前記撮像素子で取得された撮像信号を処理する信号処理部と を備え、 前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い、前記信号処理部で生成されたテスト画像のコントラストが40%となるレジストレーション誤差を所定の閾値として、前記テスト画像で確認される前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第2の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であり、前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第3の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であるように前記色分解プリズムと前記3つの撮像素子が互いに固着される 撮像装置にある。」 (イ-4)「【0008】 この技術の第2の側面は、 レンズを介して入射される被写体光を赤色、緑色、青色の成分に分離する色分解プリズムと、 前記色分解プリズムで分離された赤色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の赤色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された緑色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の緑色用の撮像素子と、 前記色分解プリズムで分離された青色成分の光を受光して光電変換をおこない撮像信号を生成する水平画素数が3840画素以上の青色用の撮像素子と、 前記撮像素子で取得された撮像信号を処理する信号処理部と を用いて、 前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い、前記信号処理部で生成されたテスト画像のコントラストが40%となるレジストレーション誤差を所定の閾値として、前記テスト画像で確認される前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第2の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であり、前記3つの撮像素子の内の第1の撮像素子と第3の撮像素子のレジストレーション誤差が前記所定の閾値に相当する前記撮像素子の画素サイズの20%以下であるように前記色分解プリズムと前記3つの撮像素子が互いに固着されること を含む撮像装置の製造方法にある。」 (イ-5)「【0034】 撮像装置10では、高精細な撮像画を提供できるように撮像素子31R,31G,31Bの解像度を4Kとする。また、既に数多く提供されているレンズを流用可能とするため撮像素子31R,31G,31Bのサイズは、従来の撮像素子のサイズと等しく2/3インチサイズとする。このような撮像素子では、4K解像度(3840画素×2160画素)であるとき、画素サイズは「2.5μm×2.5μm」となる。なお、4K解像度は「4096画素×2160画素」の場合も含み、このときの画素サイズは「2.5μm×2.5μm」よりも小さくなる。」 (イ-6)「【0035】 図5は、4K解像度におけるレジストレーション誤差とコントラストの関係を示している。なお、図5は、緑色の画素に対する赤色と青色の画素の位置ずれが同一方向で同一量であり、画素サイズが「2.5μm×2.5μm」の場合である。また、レジストレーション誤差が「0」の場合のコントラストを100パーセントとしている。ここで、コントラスト低下の下限をおおよそ90パーセントとすると、レジストレーション誤差は「±0.5μm」の範囲となる。」 (イ-7)「【0036】 また、収差のない理想レンズを用いた場合、コントラストは画素サイズおよび絞り値に応じて図6に示すように変化する。なお、図6は、理想レンズとe線(546nm)を用いたときの画素サイズとコントラストの関係を、絞り値毎に示している。なお、図6では、理想レンズのない状態でレジストレーション誤差が「0」の場合のコントラストを100パーセントとしている。ここで、動画の撮像時に多く使用されている絞り値「f/4.0」の場合、画素サイズが「5μm×5μm」であるときは、コントラストが70パーセント以上となり、画素サイズが「2.5μm×2.5μm」であるときは、50パーセント以下となる。」 (イ-8)「【0037】 図7は、理想レンズを用いた場合における4K解像度のレジストレーション誤差とコントラストの関係を絞り値毎に示している。撮像装置では、動画の撮像時において使用頻度の高い絞り値において、コントラストが所望のレベル以上となるようにレジストレーション誤差を制限する。ここで、絞り値は「f/4.0」に設定されることが多いことから、例えば絞り値が「f/4.0」であるときコントラストが所望のレベルである40パーセント以上となるようにレジストレーション誤差の誤差範囲を設定する。すなわち、撮像装置は、レジストレーション誤差を±0.5μmの誤差範囲内に制限する。ここで、4K解像度が「3840画素×2160画素」であるとき、±0.5μmの誤差範囲は、撮像素子における画素サイズの20パーセント以下の範囲に相当する。したがって、撮像装置は、レジストレーション誤差を±0.5μmの誤差範囲内である例えば画素サイズの20パーセント以下の範囲内に制限する。なお、理想レンズを考慮した場合におけるコントラストの所望のレベルは、実際に撮像を行った場合において、レジストレーション誤差によってコントラストが低下しても許容できるレベルに相当する。」 (イ-9)「【図5】 [図:0001383996000001.jpg] 」 (イ-10)「【図6】 [図:0001383996000002.jpg] 」 (イ-11)「【図7】 [図:0001383996000003.jpg] 」 (ウ)訂正前の記載について (ウ-1)上記(イ-1)及び(イ-3)には、撮像装置において、「f/4.5」とした場合について記載され、上記(イ-2)及び(イ-4)には、撮像装置の製造方法において、「f/4.5」とした場合について記載されている。 (ウ-2)上記(イ-5)には、4K解像度は「4096画素×2160画素」の場合も含み、このときの画素サイズは「2.5μm×2.5μm」よりも小さくなることが記載され、上記(イ-6)には、画素サイズが「2.5μm×2.5μm」の場合に、コントラスト低下の下限をおおよそ90パーセントとすると、レジストレーション誤差は「±0.5μm」の範囲となることが記載されているが、一般に画素サイズが小さくなると所定のコントラストを得るためのレジストレーション誤差は小さくなるから、上記(イ-9)の図5を参照すると、上記コントラスト低下の下限をおおよそ90パーセントとすると、レジストレーション誤差は「±0.5μm」よりも小さくなることが分かる。なお、上記(イ-1)及び(イ-2)に記載されているように、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1及び請求項9では、撮像素子は、水平画素数が3840画素以上であるから、上記「4096画素×2160画素」の場合も、当該請求項1及び請求項9の撮像素子の画素サイズに対応する。 (ウ-3)上記(イ-8)には、「例えば絞り値が「f/4.0」であるときコントラストが所望のレベルである40パーセント以上となるようにレジストレーション誤差の誤差範囲を設定する」ことは、そのレジストレーション誤差の誤差範囲を、±0.5μm内に制限することであり、ここで、4K解像度が「3840画素×2160画素」であるときには、±0.5μmの誤差範囲は、撮像素子における画素サイズの20パーセント以下の範囲に相当するから、撮像装置は、レジストレーション誤差を±0.5μmの誤差範囲内である「例えば画素サイズの20パーセント以下の範囲内に制限する」旨記載されている。このことは、上記(イ-11)の図7を参照すると、絞り値が「f/4.0」でコントラストが40パーセントの場合、レジストレーション誤差は、±0.5μmであることとも整合している。そして、上記絞り値が「f/4.0」である場合と上記画素サイズの20パーセント以下の範囲内に制限することとは、ともに「例えば」との記載があることから、ともに例示であることが分かる。 (ウ-4)絞り値が「f/4.5」である場合について、当該絞り値の値が設定される場合があることは、いわゆる大陸絞りの系列の中の値として周知であり、当該絞り値が「f/4.5」である場合、上記(イ-11)の図7を参照すると、絞り値が「f/4.0」の場合のラインよりもやや下にラインができることが分かり、当該絞り値が「f/4.5」である場合でコントラストが40パーセントの場合、レジストレーション誤差は、±0.5μmよりも小さい値であることが分かる。 (ウ-5)上記(ウ-2)のように、画素サイズが「2.5μm×2.5μm」よりも小さくなる場合、所定のコントラストを得るためのレジストレーション誤差は、画素サイズが「2.5μm×2.5μm」の場合よりも小さくなる。そして、上記画素サイズが「2.5μm×2.5μm」よりも小さくなる場合を、上記(ウ-4)の絞り値が「f/4.5」の場合に適用すると、レジストレーション誤差は、±0.5μmよりも小さい値となることから、当該±0.5μmよりも小さい値は、上記画素サイズが「2.5μm×2.5μm」よりも小さくなる場合の画素サイズに対して、具体的な数値の例示はないものの、少なくとも20パーセント以下のどこかの値の範囲内に制限することにあたり、上記(ウ-1)を考慮しないとしても、絞り値が「f/4.5」である場合も設定登録時の明細書等に記載されているに等しい事項である。 (ウ-6)以上のことから、訂正前の記載に対応する構成は、設定登録時の明細書等に記載されているか、記載されているに等しいため、当該訂正前の記載に誤記が存在するとは認められない。 (エ)訂正後の記載について 訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の記載における「f/4.5」を「f/4.0」(以下、「訂正後の記載」という。)に訂正するものである。 上記(イ-7)及び(イ-10)には、収差のない理想レンズを用いた場合で、絞り値が「f/4.0」の場合の画素サイズとコントラストの関係が記載され、上記(イ-8)及び(イ-11)には、理想レンズを用いた場合で、絞り値が「f/4.0」の場合のレジストレーション誤差とコントラストの関係が記載されている。 以上のことから、訂正後の記載に対応する構成は、設定登録時の明細書等に記載されている。 (オ)訂正事項1及び訂正事項2の目的について 上記(ウ)及び(エ)のとおり、設定登録時の明細書等には、訂正前の記載である「f/4.5」も、訂正後の記載である「f/4.0」もいずれも記載されているか記載されているに等しいと認められる。 そうすると、設定登録時の明細書等の記載に誤記が存在するとはいえず、また、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであるともいえず、訂正前の記載は正しくは訂正後の記載であることが自明な事項として定まるものであるともいえないから、訂正前の記載を訂正後の記載に訂正する訂正事項1は、誤記の訂正を目的としたものとはいえない。 また、訂正事項1及び訂正事項2は、誤訳の訂正を目的とするものにも該当しないことは明らかである。 (カ)請求人の主張について 請求人は、審判請求書2頁6(3)ア(ア)aにおいて以下のように主張している。 「補正前の請求項1と請求項9において、「f/4.5」は誤記であり、明細書の段落[0036][0037]の記載に基づき、補正後の請求項1と請求項9では「f/4.0」に訂正することを目的としており、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正に適合するものである。」 しかしながら、上記(オ)で検討したように、訂正前の記載に誤りがあるとも、訂正前の記載が正しくは訂正後の記載であるともいえず、また、訂正事項1及び訂正事項2は、誤訳の訂正を目的とするものにも該当しないことは明らかであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。 イ 明瞭でない記載の釈明について 訂正前の請求項1及び請求項9の「前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い」という記載(訂正前の記載)は、それ自体の意味は明瞭である。 また、上記ア(イ)及び(ウ)で検討したとおり、訂正前の記載は、明細書の段落0006及び0008に記載されており、また、明細書の段落0034、0035、0037及び図5、図7に記載されているに等しい事項であり、明細書の記載と対応するものであるから、「前記レンズの絞り値をf/4.5として各々の前記撮像素子で取得された前記被写体光として入射されたテスト画の撮像信号の処理を前記信号処理部で行い」との記載は、明細書等の他の記載との関係で不合理を 生じているために不明瞭となっているともいえない。 よって、訂正事項1及び訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。 ウ 特許請求の範囲の減縮等について 訂正事項1及び訂正事項9は、訂正前に、「レンズの絞り値をf/4.5として」とあったものを、訂正後に「レンズの絞り値をf/4.0として」と訂正するものである。 この訂正は、レンズの絞り値の1の数値を訂正したものであり、数値範囲を減縮するものではなく、特許請求の範囲の他の構成を減縮するものでもないから、特許請求の範囲の減縮に該当しないことは明らかである。 よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 エ 請求項間の引用関係の解消について 訂正事項1及び訂正事項2は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものに該当しないことは明らかである。 オ よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、請求項間の引用関係の解消のいずれにも該当しないものであるから、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 (2)新規事項の追加の有無について 訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正後の記載は、上記(1)ア(エ)に述べたとおり、設定登録時の明細書等に記載されたものである。 なお、上記(1)ア(オ)に述べたとおり、訂正事項1及び訂正事項2は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当しないため、訂正事項1及び訂正事項2が、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かの判断を要しない。 したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、願書に添付した(設定登録時の)明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した(設定登録時の)明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更について ア 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて 「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。 また、「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正の例としては、以下のようなものがある。 (ア)請求項に記載された発明を特定するための事項において、直列的要素を一部削除するもの (イ)請求項に記載された発明を特定するための事項において、択一的記載の要素を追加するもの (ウ)請求項に記載された発明を特定するための事項の上位概念への変更 (エ)請求項に記載された発明を特定するための事項の入れ替え (オ)請求項に記載された数値限定が広がるか又はずれるもの (カ)「方法の発明」又は「物を生産する方法の発明」を「物の発明」へカテゴリーを変更するもの (キ)発明の詳細な説明中の記載の訂正が、請求項に記載された事項の解釈に影響を与え、その結果、実質上、上記(ア)~(カ)のいずれかに該当するに至ったもの。 そこで、訂正前の記載における「f/4.5」を訂正後の記載における「f/4.0」に訂正することが、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。 イ 特許請求の範囲の拡張について 訂正前の記載における「f/4.5」を訂正後の記載における「f/4.0」に訂正することは、レンズの絞り値の数値を4.5から4.0に変更する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものでないことは明らかである。 ウ 特許請求の範囲の変更について 上記イのように、訂正前の記載における「f/4.5」を訂正後の記載における「f/4.0」に訂正することは、レンズの絞り値の数値を4.5から4.0に変更する訂正であり、上記アの実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正の例のうち、(オ)の請求項に記載された数値限定がずれるものに相当する。 してみると、上記訂正は、特許請求の範囲を変更するものである。 したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第126条第6項の規定に適合しない。 (4)訂正事項1及び訂正事項2についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、また、同法第126条第6項の規定にも適合しないから、訂正事項1及び訂正事項2の訂正は認められない。 2 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と整合させる明細書の訂正であるが、訂正事項1及び訂正事項2と同様に、願書に添付した(設定登録時の)明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるものの、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、請求項間の引用関係の解消のいずれにも該当しないものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合するものの、同法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 よって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、訂正事項3の訂正は認められない。 第5 むすび 以上のとおり、訂正事項1及び訂正事項2はいずれも、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、また、同法第126条第6項の規定にも適合しない。 また、訂正事項3は、同法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 したがって、訂正事項1~訂正事項3は、いずれも訂正が認められない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-390169

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