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特許拒絶査定不服審判

2021-018135

空調システム、及び空調システムにおけるリーク検出法

審判番号
2021-018135
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-109624外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月28日
審決日
2023年02月17日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-109624「空調システム、及び空調システムにおけるリーク検出法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日出願公開、特開2017-219304〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成29年6月2日(パリ優先権による優先権主張2016年6月8日、ドイツ)の出願であって、その後の手続の概要は、以下の通りである。

令和 3年 2月19日付け:拒絶理由通知

同年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出

同年 8月25日付け:拒絶査定

同年12月28日 :審判請求書の提出
令和 4年 6月29日付け:拒絶理由通知

同年10月 4日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和4年10月4日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
空調システム(10)であって、レジャー車輌向けであり、冷媒回路(11)を有し、
前記空調システム(10)は、冷媒の循環方向に沿って見たとき、周囲環境(14)と熱交換できる冷媒凝縮器(12)、冷媒スロットル(22)、空調される部屋(18)と熱交換できる冷媒蒸発器(15)、及び冷媒圧縮器(28)を含み、
前記空調システム(10)が、空調される部屋(18)の前記冷媒蒸発器(15)から空気インレット側(41)に上流における室温(TR)を検出するように形成された室温センサ(40)、前記冷媒蒸発器(15)の冷媒インレット(16)における冷媒温度を検出するように形成されたインレット温度センサ(34)、前記冷媒蒸発器(15)の冷媒アウトレット(17)における冷媒温度を検出するように形成されたアウトレット温度センサ(36)、及び前記室温センサ(40)、前記インレット温度センサ(34)、及び前記アウトレット温度センサ(36)と接続された演算ユニット(38)、を備えたリーク検出システム(32)を含み、
前記空調システム(10)はまた、少なくとも部分的には冷媒回路(11)を空調される部屋(18)から遮断するための冷媒密封性の分離装置を含み、
前記分離装置が、選択的に前記冷媒インレット(16)を遮断するように形成された冷媒インレットバルブ(25)、及び選択的に前記冷媒アウトレット(17)を遮断するように形成された冷媒アウトレットバルブ(31)を含み、
前記冷媒アウトレットバルブ(31)は逆流防止弁であり、前記冷媒蒸発器(15)の方向の冷媒の流れを止めるように取付られる、
空調システム。」

第3 当審の拒絶の理由

令和4年6月29日付けの当審の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

理由1(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項6~10の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2(進歩性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1~5に係る発明に対して:引用文献等1~3

・請求項6に係る発明に対して:引用文献等2~3

・請求項7~9に係る発明に対して:引用文献等1~3

・請求項7~8に係る発明に対して:引用文献等2~4

・請求項10に係る発明に対して:引用文献等1~5

<引用文献等一覧>

引用文献1.特開平9-104221号公報

引用文献2.特開平1-107070号公報

引用文献3.特開昭53-18847号公報

引用文献4.特開2008-281317号公報

引用文献5.特開2015-94513号公報

第4 引用文献

1 引用文献1について

(1) 引用文献1の記載事項

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当審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、「車両用空調装置」に関して、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付加した。また、「・・・」は省略を表す。以下同様。)

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、可燃性前記冷媒を用いた車両用空調装置に関するものである。」
「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施の形態について説明する。本実施形態を水冷エンジン搭載車両に用いた場合について説明する。図1は、本実施形態に係る空調装置の通風系および制御系の模式図であり、図1を用いて空調装置を説明する。
・・・
【0015】切替ドア5の下流側部位には、送風機7が配設されている。送風機7は、シロッコファン7aと、その駆動手段7b(具体的にはブロワモータ)によって駆動され、ファンの回転数、すなわち車室内への送風量は、ブロワモータ7bに印加されるブロワ電圧によって制御される。シロッコファン7aの下流側には、空気を冷却する蒸発器8が配設されており、この蒸発器8の下流側の空調ケーシング1には、車室外に連通したドレンパイプ32が設けられている。そして、ドレンパイプ32の下流側には、図示されていないエンジンの冷却水を熱源として、空気を加熱するヒータコア9が配設されている。なお、蒸発器8は、後述する冷凍サイクルを用いて、空気を冷却している。」
「【0018】また、22は、空調ケーシング1内に漏れ出した冷媒を検出するガスセンサで、このガスセンサ22は、蒸発器8の下流側の空調ケーシング1内に配置されている。そして、ガスセンサ22は、制御装置23と協働して、常時、冷媒の漏れを監視している。24は、冷媒漏れが発生した時に、乗員に冷媒漏れを警告する警告器で、例えば、ブザーや警告ランプ等の手段である。
【0019】次に、図2を用いて冷凍サイクルについて述べる。図2に示す冷凍サイクルは、プロパンガス等の可燃性冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルで、25は、図示されていない電磁クラッチを介してエンジンからの駆動力を得て冷媒を圧縮する圧縮機である。26は、冷媒の凝縮手段をなす凝縮器で、通常この凝縮器26は、エンジンルーム前方に配置されている。そして、凝縮器26の下流側には、凝縮圧力の異常上昇による凝縮器26の破損を防止する圧力スイッチ31が設けられており、この圧力スイッチ31は、凝縮器26内の圧力が異常上昇すると、電磁クラッチを切る(OFF)ことにより、圧縮機26の運転を停止し、凝縮器26内の圧力上昇を防止する。
【0020】27は、凝縮器26で凝縮された冷媒の減圧手段をなす膨張弁で、この膨張弁27により、低温低圧となった冷媒は、蒸発器8内で蒸発し、この蒸発潜熱により蒸発器8を通過する空気が冷却される。また、蒸発器8の流入ポート8a側の車室外には、電磁弁28が設けられており、流出ポート8b側の車室外には、蒸発器8に流入する冷媒を閉止する逆止弁29が設けられている。
・・・
【0022】次に、制御装置23による制御処理を図3のフローチャートに基づいて説明する。エアコンスイッチ30から信号により空調装置が稼働していると判定されると(ステップ100)、ガスセンサ22からの信号に基づいて冷媒漏れの有無を監視し始める(ステップ110)。ここで、冷媒が漏れていると判定されると、吹出口13、14、15が吹出口ドア16、17、18によってそれぞれ閉じられ(ステップ120)、送風機7が停止し(ステップ130)、外気導入口3が開かれ(ステップ140)、さらに電磁弁28が閉じられる(ステップ150)。
【0023】そして、電磁弁28が閉じてから所定時間が経過すると(ステップ160)、電磁クラッチが切られ(ステップ170)、圧縮機25が停止する。そして、乗員に冷媒漏れ警告が発せられる(ステップ180)。なお、上記の所定時間については後述する。また一方、ステップ110にて冷媒が漏れていないと判定されと、空調装置は稼働する。そして、エアコンスイッチ30により空調装置停止が指示されると(ステップ190)、電磁弁28が閉じられる(ステップ200)。そして、電磁弁28が閉じてから所定時間が経過すると(ステップ210)、電磁クラッチが切られ(ステップ220)、圧縮機25が停止する。
【0024】次に、本実施形態の特徴を述べる。車両用空調装置稼働中に冷媒の漏れが検出されると、吹出口13、14、15が吹出口ドア16、17、18によってそれぞれ閉じられるので、空調ケーシング1内に漏れ出した冷媒を、空調ケーシング1内に止めることができる。したがって、車室内に冷媒が充満することを防止することができる。
【0025】また、車両用空調装置稼働中に冷媒の漏れが検出されると、電磁弁28が閉じてから所定時間経過後に圧縮機25が停止するので、蒸発器8内の冷媒が吸引排除される。したがって、蒸発器8の損傷により空調ケーシング1内に漏れ出る冷媒量を少なくすることができるので、車室内に冷媒が充満することをさらに防止することができる。なお、電磁弁28が閉じられて冷媒が循環しないので、圧縮機25から吐出される冷媒量は減少する。したがって、凝縮器26内は減圧するので、圧力スイッチ31は作動しない。
【0026】ここで、所定時間とは、上述のように、蒸発器8内の冷媒を吸引するために必要な時間であり、本実施形態では約30秒である。また、車両用空調装置稼働中にエアコンスイッチ30により作動停止が指示れると、電磁弁28が閉じてから圧縮機25の稼働が所定時間経過後に停止されるので、蒸発器8内の冷媒が吸引排除される。したがって、車両用空調装置停止後、蒸発器8に冷媒が漏れ出すような損傷が発生しても、蒸発器8内の冷媒が吸引排除されているので、空調ケーシング1内に漏れ出る冷媒量を少なくすることができる。また、車両用空調装置稼働中に冷媒の漏れが検出されると、送風機が停止するので、空気流路1a内に車室内へ流れる強制的な空気流れが発生しない。したがって、漏れ出した冷媒が車室内に流れる込むことを抑制することができる。
【0027】また、蒸発器8の流出ポート8b側に逆止弁29が設けられてるので、蒸発器8に冷媒が流入することを防止することができる。したがって、車室内に漏れ出す冷媒量を抑制することができる。また、電磁弁28と逆止弁29とは車室外に配置されているので、冷媒が漏れ出す可能性の高い配管接続部は、車室外に配置される。したがって、漏れ出した冷媒が車室内に混入することを抑制することができる。」
「
[図:0001399898000001.jpg]
」
「
[図:0001399898000002.jpg]
」

(2) 引用文献1の記載から認められる事項

(ア) 引用文献1には、「蒸発器8は、後述する冷凍サイクルを用いて、空気を冷却している。」(段落【0015】)と記載されていることから、蒸発器8は冷凍サイクルに用いられるものである。また、図2の記載から、及び技術常識として、冷凍サイクルにおける冷媒の循環方向は、凝縮器、膨張弁、蒸発器、圧縮機の順番であることを踏まえれば、引用文献1において、冷媒の循環方向は、凝縮器26、膨張弁27、蒸発器8、圧縮機25の順番であるといえる。

(イ) 引用文献1には「送風機7は、・・・すなわち車室内への送風量は、ブロワモータ7bに印加されるブロワ電圧によって制御される。」(段落【0015】)と記載されており、また、「シロッコファン7aの下流側には、空気を冷却する蒸発器8が配設されており」(段落【0015】)と記載されていることから、蒸発器8は車室内の空気を冷却するものであるといえる。

(ウ) 引用文献1の段落【0022】~【0027】の記載を踏まえると、車室内に冷媒が充満することを防止するための構成は、電磁弁28、逆止弁29、吹出口ドア16、17、18からなる部分であるといえる。

(3) 引用発明

上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「車両用空調装置であって、プロパンガス等の可燃性冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルを有し、
車両用空調装置は、冷媒の循環方向に沿って見たとき、エンジンルーム前方に配置されている凝縮器26、膨張弁27、車室内の空気を冷却する蒸発器8、及び圧縮機25を含み、
車両用空調装置が、漏れ出した冷媒を検出するガスセンサ22を含み、
車両用空調装置はまた、車室内に冷媒が充満することを防止するための、電磁弁28、逆止弁29、吹出口ドア16、17、18からなる部分を含み、
上記部分は、蒸発器8の流入ポート8a側の車室外に設けられ、制御装置23により閉じられる電磁弁28、及び蒸発器8の流出ポート8b側の車室外に設けられた逆止弁29を含み、
逆止弁29は、蒸発器8に冷媒が流入することを防止することができるように設けられる、
車両用空調装置。」

2 引用文献2について

(1) 引用文献2の記載事項

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当審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、「空気調和機の冷媒不足検知方法」に関して、次の事項が記載されている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明は空気調和機の保護装置に係り、特に冷媒封入量が不足した場合、あるいは冷媒が漏洩した場合の圧縮機の焼損事故防止をはかる空気調和機の冷媒不足検知方法。」(公報第1ページ右下欄第2~6行)
「〔作用〕
(1)蒸発器入口出口の冷媒の温度差は、冷媒封入量が不足している場合には増大する特性があるのでこれを検出しある値より大きいときは冷媒封入量不足の信号とする。
(2)蒸発器出口冷媒の温度と蒸発器吸込空気の温度の差は、冷媒封入量が不足している場合には減少する特性があるのでどれを検出しある値より小さいときは冷媒封入量不足の信号とする。」(公報第2ページ左上欄13行~同ページ右上欄第1行)
「〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を第1図から第3図により説明する。第2図は空冷ヒートポンプ式パッケージエアコンの構成図で、室内機1と室外機2は冷媒配管3により接続され一個の冷凍サイクルを構成している。第1図は第2図の室内機1の内部構造図である。熱交換器6は冷房運転時には蒸発器、暖房運転時には凝縮器として作用する。サーミスタA9は熱交換器6の液冷媒集合配管7に、サーミスタB10はガス冷媒集合配管8に密着し冷媒の温度を検知するように取付られている。サーミスタC1lは空気吸込口4の内側に吸込空気の温度を検出するよう取付られている。なおサーミスタA、B、Cは制御装置12に接続されており、
冷房運転時は、
サーミスタC温度-サーミスタB温度≦6℃
暖房運転時は、
サーミスタA温度-サーミスタC温度≦10℃の条件を満足した場合は制御装置12により警報信号を発し警報ランプを点灯、あるいは運転を停止させるようになっている。第3図は冷凍サイクル中に封入した冷媒の量(正規量を100%とする)による、冷房運転中の蒸発器吸込空気温度と蒸発器出口ガス冷媒温度の差(温度差E)15、及び暖房運転中の凝縮器出口液冷媒温度と凝縮器吸込空気温度の差(温度差C)16、の一例を示すもので冷媒封入量が少ない場合は、上記の温度差が小さくなることを示している。第2図において冷房運転時に冷媒配管3等より冷媒が漏れ冷凍サイクル中の冷媒が減少した場合、第3図の温度差E15に示す如く、蒸発器吸込空気温度と蒸発器出口ガス冷媒温度の差(温度差E)15は冷媒の減少に従って小さくなり、冷媒封入量が正規封入量の60℃に迄減少するとこの温度差は6°Cとなり第1図のサーミスタC11とサーミスタB10及び制御装置12の作用により警報信号を発し、警報ランプを点灯あるいは運転を停止させる。」(公報第2ページ右上欄第18行~同ページ右下欄15行)
「
[図:0001399898000003.jpg]
」
「
[図:0001399898000004.jpg]
」
「
[図:0001399898000005.jpg]
」

(2) 引用文献2から把握できる技術事項

上記(1)を踏まえると、引用文献2から以下の技術事項(以下「引2技術」という。)が把握できる。

「空気調和機において、冷媒封入量が不足したこと、あるいは冷媒が漏洩したことを検知するために、
冷房運転時には蒸発器として作用する熱交換器6の空気流れ上流側において、室内からの吸込空気の温度を検出するサーミスタC11、
熱交換器6の液冷媒集合配管7に密着し冷媒の温度を検知するサーミスタA9、
熱交換器6のガス冷媒集合配管8に密着し冷媒の温度を検知するサーミスタB10、及び
サーミスタC11、サーミスタA9、及びサーミスタB10と接続された制御装置12、を備えさせる技術。」

3 引用文献3について

(1) 引用文献3の記載事項

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当審の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、「冷媒漏れ感知機能を有するカークーラ装置」に関して、次の事項が記載されている。

「そこで冷媒漏れの感知方法について説明する。
第1図は冷房装置のブロック図であり、1は圧縮器、2は凝縮器、3は受液器、4は膨張弁、5は蒸発器、6は蒸発器5の出口点の温度を検出するセンサにして、膨張弁4の開閉を制御するものである。以上は公知のシステムである。第2図は冷房システムの各点の温度特性である。イは蒸発器5の出口点、口は蒸発器5の中途点(U字配管上の点)、ハは蒸発器5の入口点で何れも配管上の表面温度を外部と熱絶縁して測定したものである。二は冷風吹出し点の温度特性、ホは空気吸込み点の温度特性を示している。そして上記各点間の温度変化相対関係を見れば、冷媒漏れの状況を知ることができる。
例えばハ点と二点との温度差に着目すれば、第2図からも判るように冷媒が50%以上漏れた状態では両者に大きな温度差が生じる。従ってこのように2点間の温度の相対関係の変化に着目すれば、冷媒漏れを感知することができる。
この発明は叙上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、室内温度制御用の温度センサを利用して冷媒漏れをも検知できるようにした冷媒漏れ感知機能を有するカークーラ装置を提供するにある。」(公報第2ページ左上欄第2行~右上欄第10行)
「
[図:0001399898000006.jpg]
」

(2) 引用文献3から把握できる技術事項

上記(1)を踏まえると、引用文献3から以下の技術事項(以下「引3技術」という。)が把握できる。

「圧縮器、凝縮器、膨張弁、蒸発器からなる冷房装置において、蒸発器5の入口点、蒸発器5の出口点、空気吸込み点の温度特性から、冷媒漏れの状況を知ることができるカークーラ装置。」

第5 対比

1 本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

引用発明における「プロパンガス等の可燃性冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクル」は、本願発明における「冷媒回路(11)」に相当し、以下同様に、

「車室内の空気を冷却する蒸発器8」は「空調される部屋(18)と熱交換できる冷媒蒸発器(15)」に、

「圧縮機25」は「冷媒圧縮器(28)」に、

「蒸発器8の流入ポート8a」は「冷媒蒸発器(15)の冷媒インレット(16)」に、

「蒸発器8の流出ポート8b」は「冷媒蒸発器(15)の冷媒アウトレット(17)」に、

それぞれ相当する。

引用発明における「車両用空調装置」と、本願発明における「レジャー車輌向けであ」る「空調システム(10)」とは、「車輌向け」である「空調システム」という限りにおいて、一致する。

引用発明における「凝縮器26」は、「エンジンルーム前方に配置されて」いるところ、本願発明における「周囲環境(14)と熱交換できる冷媒凝縮器(12)」に相当する。

引用発明における「膨張弁27」と、本願発明における「冷媒スロットル(22)」とは、「冷媒回路の膨張装置」という限りにおいて、一致する。

引用発明における「ガスセンサ22」は、「漏れ出した冷媒を検出する」ものであるため、本願発明における「リーク検出システム(32)」とは、「リークを検出するためのもの」という限りにおいて、一致する。

引用発明における「電磁弁28」は、「蒸発器8の流入ポート8a側の車室外に設けられ」「制御装置23により閉じられる」ものであるため、閉じる、つまり遮断する動作は、制御装置23により選択的に行われているといえる。そうすると、引用発明における「蒸発器8の流入ポート8a側の車室外に設けられ」「制御装置23により閉じられる」「電磁弁28」は、本願発明における「選択的に前記冷媒インレット(16)を遮断するように形成された冷媒インレットバルブ(25)」に相当するといえる。

引用発明における「逆止弁29」は、「蒸発器8の流出ポート8b側の車室外に」、「蒸発器8に冷媒が流入することを防止することができるように設けられる」ものである。逆止弁は、逆方向の流れを選択的に遮断するものであることが技術常識といえるから、引用発明における「蒸発器8の流出ポート8b側の車室外に」、「蒸発器8に冷媒が流入することを防止することができるように設けられる」「逆止弁29」は、本願発明における「選択的に前記冷媒アウトレット(17)を遮断するように形成され」、「逆流防止弁であり、前記冷媒蒸発器(15)の方向の冷媒の流れを止めるように取付られる」「冷媒アウトレットバルブ(31)」に相当するといえる。

引用発明における「電磁弁28、逆止弁29、吹出口ドア16、17、18などからなる部分」は、「車室内に冷媒が充満することを防止するための」ものであり、「電磁弁28」及び「逆止弁29」を含むから、その機能からみて、本願発明における「少なくとも部分的には冷媒回路(11)を空調される部屋(18)から遮断するための冷媒密封性の分離装置」であるといえる。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]

「空調システム(10)であって、車輌向けであり、冷媒回路(11)を有し、
前記空調システム(10)は、冷媒の循環方向に沿って見たとき、周囲環境(14)と熱交換できる冷媒凝縮器(12)、冷媒回路の膨張装置、空調される部屋(18)と熱交換できる冷媒蒸発器(15)、及び冷媒圧縮器(28)を含み、
リークを検出するためのものを含み、
前記空調システム(10)はまた、少なくとも部分的には冷媒回路(11)を空調される部屋(18)から遮断するための冷媒密封性の分離装置を含み、
前記分離装置が、選択的に前記冷媒インレット(16)を遮断するように形成された冷媒インレットバルブ(25)、及び選択的に前記冷媒アウトレット(17)を遮断するように形成された冷媒アウトレットバルブ(31)を含み、
前記冷媒アウトレットバルブ(31)は逆流防止弁であり、前記冷媒蒸発器(15)の方向の冷媒の流れを止めるように取付られる、
空調システム。」

[相違点1]

車輌向けである空調システムが、本願発明では、「レジャー車輌向けであ」るのに対し、引用発明では、どのような車輌向けであるのかまでは特定されていない点。

[相違点2]

冷媒回路の膨張装置が、本願発明では、「冷媒スロットル(22)」であるのに対し、引用発明では、「膨張弁27」である点。

[相違点3]

空調システムにおいてリークを検出するためのものが、

本願発明では、「空調される部屋(18)の前記冷媒蒸発器(15)から空気インレット側(41)に上流における室温(TR)を検出するように形成された室温センサ(40)、前記冷媒蒸発器(15)の冷媒インレット(16)における冷媒温度を検出するように形成されたインレット温度センサ(34)、前記冷媒蒸発器(15)の冷媒アウトレット(17)における冷媒温度を検出するように形成されたアウトレット温度センサ(36)、及び前記室温センサ(40)、前記インレット温度センサ(34)、及び前記アウトレット温度センサ(36)と接続された演算ユニット(38)、を備えたリーク検出システム(32)」

であるのに対し、

引用発明では、「ガスセンサ22」である点。

第6 判断

1 相違点1~3についての検討

(1) 上記相違点1について検討する。

引用発明は、「車両用空調装置」の発明であるところ、その対象とする「車両」には、その用途を問わず車両全般が該当すると認められ、レジャー用などの用途で分類される車両が排される理由が見当たらない。

そして、「レジャー用」との用途限定を付した本願発明は、明細書及び図面の記載を参酌しても、その用途に特に適した構造を意味するとは解されない。

よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2) 上記相違点2について検討する。

一般的に、「スロットル」とは、「絞り弁」を意味するところ(新村出、広辞苑第6版参照。)、本願発明における「冷媒スロットル(22)」は、冷媒の流路に絞り弁を設けたものであるといえる。そして、当該構成は、冷凍サイクルにおいて技術常識である膨張弁の構成であるといえる。

そうすると、引用発明における「膨張弁27」と本願発明における「冷媒スロットル(22)」とは、実質的に相違しないものである。

(3) 上記相違点3について検討する。

引2技術は、「空気調和機において、冷媒封入量が不足したこと、あるいは冷媒が漏洩したことを検知するために、

冷房運転時には蒸発器として作用する熱交換器6の空気流れ上流側において、室内からの吸込空気の温度を検出するサーミスタC11、

熱交換器6の液冷媒集合配管7に密着し冷媒の温度を検知するサーミスタA9、

熱交換器6のガス冷媒集合配管8に密着し冷媒の温度を検知するサーミスタB10、及び

サーミスタC11、サーミスタA9、及びサーミスタB10と接続された制御装置12、を備えさせる技術」であって、

引2技術における「サーミスタC11」は、本願発明における「室温センサ(40)」に相当し、以下同様に、「サーミスタA9」は、「インレット温度センサ(34)」に、「サーミスタB10」は、「アウトレット温度センサ(36)」に、「制御装置12」は「演算ユニット(38)」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明と引2技術とは、空調装置において冷媒が漏洩したことを検知するものである点において技術分野、課題及び漏洩検知機能が共通しているため、引用発明において、「漏れ出した冷媒を検出するガスセンサ22」に代えて、「サーミスタC11、サーミスタA9、及びサーミスタB10」、「制御装置」により冷媒が漏洩したことを検知する技術である引2技術を採用することには、動機があるといえる。

なお、引2技術は、冷媒回路を有する空調システムにおける、冷凍サイクルの一般的性質を利用した冷媒漏洩検知技術であって、その仕組みに鑑みると、当該冷媒回路を有する空調システムの設置先が建物であるか車両であるかを問わずに利用可能な技術である。このことは、例えば、引3技術において、冷凍サイクルの同様の性質を利用した同様の仕組みによる同様の技術が車両用空調装置に用いられていることからも明らかである。つまり、引用発明に引2技術を適用することに特段の不都合はないといえる。

よって、引用発明に引2技術を適用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) また、上記相違点1~3を総合的に判断しても、本願発明が格別顕著な作用ないし効果を奏するとは認められない。

2 請求人の主張について

請求人は、令和4年10月4日提出の意見書(第2ページ第7~25行)において、以下のとおり主張している。

「(3-2-1)独立請求項1に記載の発明について
拒絶理由通知書において、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明および引用文献2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、と指摘された。ここで、拒絶理由通知書において請求項1に係る発明と引用文献1に記載の発明とを比較した結果、空調システムにおいてリークを検出するためのものが異なることを相違点3として認めている。そのうえで、引用文献2に記載の技術を採用することにより、請求項1の発明特定事項に想到し得た、と指摘している。
これに対し、まず、引用文献1に記載の発明においては、ガスセンサ22が冷媒ガスのリークを検出するように構成されている、と記載されている。すなわち1つのセンサを用いてガスのリークを直接測定するという比較的簡単な手段で、必要とされる機能が十分に果たされている。しかしながら、引用文献2に記載の発明においては、ガスのリーク検出の方法として、3つのセンサ、A9、B10、C11を使用して様々な温度測定を実施したうえで、その測定結果にさらなる計算や分析を加える必要があることが記載されている。
してみると、当業者が、引用文献1に記載の検出方法に代えて、より複雑な引用文献2に記載の検出方法を採用する動機付けがないことは明らかである。このことは引用文献3に記載の発明に関しても同様である。
したがって、当業者が引用文献1~3に記載の発明を組み合わせて、容易に請求項1に記載の発明に想到できたことはない、と思料する。」

当該主張について検討するに、冷媒のリークを検出するためのものとして、引用発明のように、ガスセンサ22を用いるか、引2技術のように、温度を検知する3つのサーミスタA9、B10、C11を使用して温度を検知し、その検知結果を制御装置12で処理するかについて、全体構成としてどちらが複雑かは、各センサから出力される情報の精度や処理内容、各センサの構成や配置等によって変わるものであり、一概にどちらか一方が複雑とは言えない。また、コスト等を勘案して、高価なガスセンサ22に代えて、引2技術における、温度を検知する3つのサーミスタA9、B10、C11を採用することも、十分あり得る。

そして、上記の1(3)で検討したとおり、引用発明と引2技術とは、技術分野、課題及び漏洩検知機能が共通しているため、引用発明において、「漏れ出した冷媒を検出するガスセンサ22」に代えて、「冷媒が漏洩したことを検知する」技術である引2技術を採用することには、動機があるといえる。また、上記の1(3)で検討したとおり、引用発明に引2技術を適用することについて、例えば、引3技術を踏まえると、特段の不都合はないといえる。

よって、請求人の主張は採用することができない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引2技術並びに引3技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明、及び他の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-018135

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